説明

粒子分離計測装置および粒子分離計測方法

【課題】粒径毎に粒子の個数を計測できる粒子分離計測装置および粒子分離計測方法を提供する。
【解決手段】ふるい11、12、13は、粒子が移動する方向に低くなるように階段状にずらして配置され、かつ、ふるいの目が後段に行くにしたがって大きくなるように配置されて、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるい分ける。センサ18、19、20は、ふるいの下に配置され、ふるいから落下する粒子の衝突を検知する。センサ21は、水路板17から落下する粒子の衝突を検知する。アナライザ22は、センサ18、19、20、21に接続され、衝突回数を計測して移動土砂量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体によって運ばれる粒子の量を計測する粒子分離計測装置および粒子分離計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荒廃した山地をはじめとする土地から土砂が流出すると、河床が上昇して河川の流れが変わることがある。また、ダム等により土砂の供給が遮断されると、水みちが固定したり、河床が低下したりする。このような現象は、河川の形を変えて周囲への被害を与えるばかりでなく、生活用水を取水することが不便になる場合も少なくない。このようなことから、河川での土砂の管理が重要な課題となってきている。
河川での土砂の管理を行うことは、河川を構成する水という流体の中で、土砂という粒子を管理することであり、土砂粒子の粒径と分量を分離して計測することが必要になる。粒径と分量を測定(モニタリング)することで、ダムの放水量を決定したり、河川を改修したりするデータとすることができるからである。
【0003】
このような河川での土砂の管理を行うことを目的として、ハイドロフォンと呼ばれる方法が従来知られていた(非特許文献1参照)。この方法は、土砂の衝突音と衝突回数を測定できるセンサを河床等の所定の場所に設置し、土砂がセンサに衝突する衝突音とその数を音の大きさ毎に集計して、その集計値から土砂量や粒径に変換する方法である。
【非特許文献1】小竹 利明、他“魚野川上流域におけるハイドロフォンを用いた流砂量観測について”、[平成20年2月4日検索]、インターネット<URL:http://www.hrr.mlit.go.jp/library/kenkyukai/h19/pdf/e/e_07.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイドロフォンの方法により土砂量や粒径を測定することが一応は可能であったが、この方法で実際に観測している物理量は、センサへの粒子の衝突音の回数(以下「パルス数」という。)とその音の大きさのみである。そこで、パルス数から土砂量および粒径に変換するためには、あらかじめキャリブレーション式を構築しておくなどの工程が不可欠であり、その時々の条件や河川の流速、場所による粒子の分布などの影響を受けるという欠点があった。また、直接の測定ではないので粒径および土砂量については推定値であった。そこで、粒径毎に粒子の個数を計測して土砂量を測定できる装置や方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、粒径毎に粒子の個数を計測できる粒子分離計測装置および粒子分離計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の粒子分離計測装置は、粒子が移動する方向に低くなるように階段状にずらして配置され、かつ、ふるいの目が後段に行くにしたがって大きくなるように配置されて、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるい分ける複数個のふるいと、前記ふるいの下に配置され、ふるいから落ちる粒子の衝突を検知するセンサ手段と、前記センサ手段と結線されて信号を受信して粒子の数を計測する計測手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記ふるいは、粒子を前記ふるいに導くための粒子載置手段を、前記ふるいと同じ高さで備えることが好ましい。
【0008】
また、本発明の粒子分離計測装置は、粒子が移動する方向に低くなるように傾斜させるとともに階段状にずらして配置され、かつ、間隔自体を粒径として小さい順番に並べるように配置されて、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるい分ける複数個の粒子載置手段と、前記粒子載置手段の間隔でふるい分けられた粒子の衝突を検知するセンサ手段と、前記センサ手段と結線されて信号を受信して粒子の数を計測する計測手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記センサ手段は、粒子が衝突すると反射波が変化するFBGセンサであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の粒子分離計測方法は、一方向に移動する流体中に複数個のふるいを、ふるいの目が小さい順に並ぶように設置し、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるいの目の大きさの順に分離し、分離されたそれぞれの粒子の数を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、流体によって運ばれる粒子を粒径によって分離できるので、粒径毎に粒子の個数を計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の粒子分離計測装置の一例を説明する図である。図1に示す粒子分離計測装置は、1段目のふるい11と、2段目のふるい12と、3段目のふるい13を備えており、ふるい11、12、13は、粒子が移動する方向に低くなるように階段状にずらして配置され、かつ、ふるいの目が後段に行くにしたがって大きくなるように配置されて、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるい分ける。それぞれのふるい11、12、13には、粒子をふるいに導くための水路板14、15、16(粒子載置手段)が、それぞれふるいと同じ高さで配置されている。また、3段目のふるい13の後にも、水路板17が階段状に段差を設けて配置されている。また、ふるい11、12、13の下には、ふるいから落ちる粒子の衝突を検知するセンサ18、19、20(センサ手段)が配置され、さらに、水路板17の後にも水路板17から落ちる粒子の衝突を検知するセンサ21が配置されている。さらに、センサ18、19、20、21にはアナライザ22(計測手段)が接続されている。
【0013】
ふるい11、12、13と水路板14、15、16、17の配置は、縦方向に同一の高さで配置することも可能であるが、図1に示すようにふるいの目の大きさ程度の段差をつけると重力による沈降と分離が可能になるため、より好ましい。
また、水路板17の後にセンサ21を配置したが、これを配置しない構成も考えられる。
【0014】
ふるいの目は後段に行くにしたがって大きくなるようにしており、1段目のふるい11は、粒径2mm以下の土砂を分離できる大きさとし、2段目のふるい12は、粒径4.8mm以下の土砂を分離できる大きさとし、3段目のふるい13は、粒径19mm以下の土砂を分離できる大きさとした。この際の2mm、4.8mm、19mmは例示であって、適宜設計により変更できるが、土木工学・地質学では一般に粒径2mm以下の土砂を砂、それより大きく粒径4.8mm程度以下の土砂を細礫、それより大きく粒径19mm以下の土砂を中礫と呼んで区別しているので、工学的分類のためには本実施の形態のような粒径の分け方が望ましい。
【0015】
ふるい11、12、13の下、および水路板17の後には、土砂が衝突すると反応するセンサが備えられている。このセンサには一般のセンサが広く適用できるが、最も好ましいのはFBG(Fiber Bragg Grating)センサである。図2は、FBGセンサを説明する図であり、光ファイバ25に設けられたFBGセンサ部24を拡大して示している。FBGセンサでは、1本の光ファイバ25に直列に複数のFBGセンサ部24を設けることができる。FBGセンサとは、光ファイバ25のコア部26の屈折率を一定の周期Λで変化させたもので、特定の波長(Bragg波長)の光のみを選択的に反射するものである。屈折率を一定の周期Λで変化させたグレーティング部27に土砂などの粒子が衝突し、歪みが与えられると、Bragg波長がシフトするため、衝突を光信号に変換してカウントすることができる。
【0016】
図3は、FBGセンサの一例を示す図である。FBGセンサ31は、FBG加工された光ファイバを1本以上有し、耐衝撃性のある硬質ゴム物体(望ましくは管、箱)32の上部に、または挟まれて、設置されることにより、防水性を有しているとともに、上部からの粒子の衝突を光の歪みとして信号化して外部に伝えることができる。
【0017】
4つのセンサ(好ましくはFBGセンサ)18、19、20、21により得られた光信号は電気信号に変換されて、または光信号のまま、粒子の数を計測する計測手段であるアナライザ(コンピュータ)22に入力される。アナライザ(コンピュータ)22は、各センサからの電気または光の信号を計測して、どのふるいの位置に何回の土砂が落ちたか、位置情報と衝突回数を記録する。
【0018】
上述した本発明の粒子分離計測装置は、一方向に移動する流体中に、ふるいの目が小さい順に並ぶように設置される。具体的には、第1段目のふるいが、河川の上流側となるように本発明の粒子分離計測装置は設置される。河川における土砂の粒子は、水により運搬されるが、この粒子分離計測装置を土砂とともに水が流れて通るとき、ふるいの部分で目の大きさにあわせ、当該の目より小さい土砂は重力の作用で沈降してふるいの下に設置されたセンサに衝突することになる。センサは衝突の刺激を受けると、これを信号としてアナライザ(コンピュータ)に伝え、アナライザ(コンピュータ)は集計を行う。これにより、粒径と土砂量を分離して記録することができる。
【0019】
図4は、本発明の粒子分離計測装置の他の例を説明する図である。上述した実施の形態では、ふるいを用いて粒子の選別を行ったが、図4に示すように、水路板の間隔自体を粒径として粒子の選別を行うようにしてもよい。
複数の水路板14、15、16、17(粒子載置手段)は、粒子が移動する方向に低くなるように傾斜させるとともに階段状にずらして配置され、かつ、水路板の間隔自体を粒径として小さい順番に並べるように配置されて、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるい分ける。
水路板14と水路板15との間隔を2mmとし、水路板15と水路板16との間隔を4.8mmとし、水路板16と水路板17との間隔を19mmとした。
さらに、水路板と水路板との間の段差部には、水路板の間隔でふるい分けられた粒子の衝突を検知するセンサ18、19、20、21(センサ手段)が配置され、センサ18、19、20、21にはアナライザ22(計測手段)が接続されている。
【0020】
なお、上述した実施の形態では、ふるいの段数を3段としたが、段数は複数であれば4段でも5段でもよい。
また、上述した実施の形態では、水と土砂を例示しているものの、その対象は流体と粒子であればよく、ふるいの目およびセンサの感度を適宜適切な値に変更することにより、本発明の粒子分離計測装置は、水と土砂以外の系に対しても適用が可能である。例えば、大気中でのゴミの大きさによる分別などにも利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の粒子分離計測装置の一例を説明する図である。
【図2】FBGセンサを説明する図である。
【図3】FBGセンサの一例を示す図である。
【図4】本発明の粒子分離計測装置の他の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
11,12,13 ふるい
14,15,16,17 水路板
18,19,20,21 センサ
22 アナライザ
24 FBGセンサ部
25 光ファイバ
26 コア部
27 グレーティング部
31 FBGセンサ
32 硬質ゴム物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が移動する方向に低くなるように階段状にずらして配置され、かつ、ふるいの目が後段に行くにしたがって大きくなるように配置されて、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるい分ける複数個のふるいと、
前記ふるいの下に配置され、ふるいから落ちる粒子の衝突を検知するセンサ手段と、
前記センサ手段と結線されて信号を受信して粒子の数を計測する計測手段と、
を備えることを特徴とする粒子分離計測装置。
【請求項2】
前記ふるいは、粒子を前記ふるいに導くための粒子載置手段を、前記ふるいと同じ高さで備えることを特徴とする請求項1に記載の粒子分離計測装置。
【請求項3】
粒子が移動する方向に低くなるように傾斜させるとともに階段状にずらして配置され、かつ、間隔自体を粒径として小さい順番に並べるように配置されて、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるい分ける複数個の粒子載置手段と、
前記粒子載置手段の間隔でふるい分けられた粒子の衝突を検知するセンサ手段と、
前記センサ手段と結線されて信号を受信して粒子の数を計測する計測手段と、
を備えることを特徴とする粒子分離計測装置。
【請求項4】
前記センサ手段は、粒子が衝突すると反射波が変化するFBGセンサであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粒子分離計測装置。
【請求項5】
一方向に移動する流体中に複数個のふるいを、ふるいの目が小さい順に並ぶように設置し、流体中に混合している、あるいは混合した状態にある粒子をふるいの目の大きさの順に分離し、分離されたそれぞれの粒子の数を計測することを特徴とする粒子分離計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−236563(P2009−236563A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80558(P2008−80558)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(500140127)エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社 (61)
【Fターム(参考)】