説明

粒子加工方法

【課題】酸性領域で化学的に不安定な物質について、製剤操作上、簡便かつ安全性の高い方法で、安定に長期保持できる粒子の加工方法、及びその方法を利用して製造した錠剤を提供すること。
【解決手段】酸に不安定な物質を、アルカリ性水系の安定化処理と造粒操作とを連続的に行う粒子加工法を提供するとともに、その粒子加工法により造粒した粒子表面に中間層を形成し、次いで腸溶性被覆を行うことで、胃部で効力を失活することなく腸で吸収できる錠剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の製剤技術、すなわち医薬含有の粒子加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬によっては、水分、湿気、温度や他の材料と配合・接触することで化学的に不安定化が助長され、分解、失活等が生じる場合がある(このような医薬を、以下「不安定物質」という。)。不安定物質の粒子加工(造粒・コーティング、打錠等)を行う場合に、その安定性に影響を及ぼさない添加剤の選定に多大の労力、費用を要する。また、その加工粒子の品質を安定させるためには、複雑な粒子加工方法が採用され、生産性は極めて悪く加工費は高くなっている。
【0003】
従来汎用されている最も一般的な流動層造粒法によれば、流動層容器に投入された原料粉末が、容器底部通気路より吹き込まれた流動化空気により流動化され、ここに上部に敷設した結合剤液用スプレーノズルより噴霧されたミストが、原料粉末の表面に付着し近傍を浮遊・流動する粒子と接触することで粒子相互の付着・凝集が進行する。より具体的には、浮遊・流動する不安定物質と賦形剤に結合剤液(例えばヒドロキシプロピルセルロース水溶液、もしくはヒドロキシプロピルセルロースのアルコール溶液)のミストが付着し粒子の付着・凝集が進行し次第に造粒されて、後の工程のコーティングに適した核物質が得られる。
【0004】
しかし、流動状態にある酸に不安定物質や賦形剤の微粒子にノズルからスプレー添加された結合剤水溶液ミストにより湿潤されると、水溶液中の水と接触・結合することにより不安定物質は分解・変質する。このため比較的安定なエタノール等が薬物の物性に応じて採用されている。しかし多くの賦形剤は不安定物質と配合・接触することで安定性は損なわれる。
また、酸に不安定物質と安定化剤と賦形剤を配合して撹拌造粒すると、結合剤液の添加と機械的な撹拌力により混練されるが、この時、酸に不安定物質と安定化剤が付着・結合するとともに、不安定物質が安定化剤に付着するよりも、先行して酸に不安定物質が賦形剤に付着する確率も高い。この場合は不安定化が進行した後、安定化剤と付着・結合する。同様な現象は流動層造粒に於いても生じる。
また、エタノールは水に比較し高価であり、更に可燃性溶剤であるため引火・爆発等の危険度も高く、設備も防爆型にする必要がある。また、最近の地球環境問題からも可燃性溶剤の排出は好ましくない。その意味で、スプレー用の溶媒としては水が好ましい。
【0005】
従来技術の具体例としては、酸に不安定物質と安定化剤を配合した核物質を定法により製造する方法が開示されている(特許文献1及び2)。
また、後の工程のコーティングに適した核物質の製造に当たり、不安定薬物の品質劣化を防止するために、他の粉粒体を配合しないで不安定物質のみ、又は安定化剤粉末を配合して流動させ、ここに当該不安定物質を溶解した水溶液をスプレー添加することが提案されている(特許文献3)。しかし、不安定物質が水に不安定な場合は、水に溶解すると不安定化が進行し、不都合である。
【0006】
【特許文献1】特公平7−68125号公報
【特許文献2】特開2000−355540号公報
【特許文献3】特開2006−131548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、酸性領域で化学的に不安定な物質について、製剤操作上、簡便かつ安全性の高い方法で、安定に長期保持できる粒子の加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、流動状態にある酸に不安定物質に、水酸化ナトリウム水溶液をスプレー添加する操作条件の選択で、結晶質が非晶質に移行することなく安定性が確保できることを見いだし、さらに検討し本発明を完成することができた。
【0009】
すなわち、本発明によれば、下記(1)〜(10)に記載の粒子加工方法と(11)に記載の錠剤の製造方法を提供することができる。
(1)酸に不安定な物質を処理容器に仕込み、流動・撹拌させ、ここにアルカリ性安定化剤の水溶液若しくはアルカリ性安定化剤を水に懸濁した液をスプレー添加することにより、造粒し、コーティングすることを特徴とする不安定物質含有の粒子加工方法。
(2)酸に不安定な物質と添加剤を配合した原料微粒子を処理容器に仕込み、流動・撹拌させながら、アルカリ性安定化剤の水溶液若しくはアルカリ性安定化剤を水に懸濁した液に高分子結合剤を溶解した液をスプレー添加することにより造粒し、コーティングすることを特徴とする不安定物質含有の粒子加工方法。
(3)酸に不安定物質と添加剤を配合した原料微粒子を処理容器に仕込み、流動・撹拌させながら、安定化剤の水溶液若しくは安定化剤を水に懸濁した液
に高分子結合剤と不安定物質を溶解した液を結合剤としてスプレー添加することにより、造粒し、コーティングすることを特徴とする不安定物質含有の粒子加工方法。
(4)酸に不安定物質が、ラベプラゾールナトリウム、オメプラゾール又はランソプラゾールである前記(1)〜(3)の何れかに記載の粒子加工方法。
(5)安定化剤が粒子加工後の粒子の0.01〜10重量%含まれるようにした前記(1)〜(4)の何れかに記載の粒子加工方法。
(6)安定化剤の水溶液の濃度が0.1〜33重量%である(1)〜(5)の何れかに記載の粒子加工方法。
(7)安定化剤が、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムである前記(1)〜(6)の何れかに記載の粒子加工方法。
(8)添加剤が、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、部分アルファー化澱粉、D−マンニトール、白糖、ショ糖及びブドウ糖からなる群から選ばれた1種又は2種以上である前記(1)〜(7)の何れかに記載の粒子加工方法。
(9)前記(1)〜(8)の何れかに記載の粒子加工法により得られた粒子の表面に、水系の高分子膜剤を溶解又は分散・懸濁させた液を用いて、単層もしくは複数層の被膜をコーティングし、次に溶出制御のための膜剤をコーティングすることを特徴とする粒子加工方法。
(10)水系の高分子膜剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E,RS)、メタクリル酸コポリマー(L,LD、S)、メトローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセル
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート及びエチルセルロース系化合物からなる群から選ばれた一種又は二種以上である前記(9)に記載の粒子加工法。
(11)前記(9)又は(10)の何れかに記載の粒子加工法により得られた粒子を他の添加剤と混合し、そのまま打錠、又はさらに造粒して打錠する錠剤の製造方法。
【0010】
本発明において高分子膜剤として使用し得る前記ポリビニルアルコールコポリマーとは、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メエチル共重合体を意味し、詳しくは平均重合度300〜3000の部分けん化ポリビニルアルコール、メチルメタクリレート及びアクリル酸とを重量比60〜90:7〜38:0.5〜12の割合で共重合させて得られるコポリマーを意味する(以下において、同じ。)。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、酸に不安定物質にアルカリ性安定化剤を溶解した水溶液をスプレー添加することで、スプレーにより形成されたミストは不安定物質表面にランダムに付着し、表面改質(安定化処理)をしながら、この結合剤ミストを介して不安定物質微粒子は付着・凝集を繰り返し次第に粒子成長(造粒・コーティング)が進行する。
粒子表面をアルカリ性安定化剤水溶液ミストで被覆・隠蔽することで、他の添加剤(賦形剤)と配合しても分解・変質することは防止できる。より効果を高めるために安定化剤を配合した中間層被覆を行うことで、大気中の水分を吸着することも抑制され、次に得られた粒子表面に腸溶性被覆を行うことで、腸溶性膜剤と薬物が直接に接触することによる薬物の変質・失活を防止する。
本発明において酸に不安定薬物の表面改質をする具体的方法は、特に困難はなく、流動状態にある酸に不安定物質の微粒子に水酸化ナトリウム水溶液を結合剤としてスプレー添加することで、ミストは不安定物質の粒子表面にランダムに付着し、表面改質(安定化処理)をしながら、この結合剤ミストを介して微粒子は付着・凝集を繰り返し次第に粒子成長(造粒・コーティング)が進行する。
さらに、安定化処理(表面改質)された当該薬物の造粒物表面に腸溶性膜剤との接触・干渉を防止するとともに、大気中の水分吸着を抑制する中間層被膜層を形成する。
その結果、不安定物質の長期安定保持が可能となる。
なお、アルカリに不安定な薬物についても、酸性の安定化剤を選択し同様な粒子加工をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の不安定物質とは、例えば、ラベプラゾールナトリウム、ランソプラゾール、オメプラゾール等の所謂プロトン・ポンプ阻害剤を挙げることができる。
また、アルカリ性安定化剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物又は炭酸塩等が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等を挙げることができ、好ましくは、水酸化ナトリウムである。
アルカリ性安定化剤として水酸化ナトリウムを使用する場合、その使用量は、造粒物の全重量に対して0.01〜10重量%、好ましくは、0.05〜7.5重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。その水溶液として使用する場合の濃度は、0.1〜33重量%、好ましくは0.5〜25重量%、より好ましくは1〜20重量%である。
【0013】
本発明において、アルカリ性安定化剤の水溶液を結合剤としてスプレー添加することで、スプレーにより形成されたミストは不安定物質表面にランダムに付着し、表面改質(安定化処理)をしながら、この結合剤ミストを介して不安定物質微粒子は付着・凝集を繰り返し次第に粒子成長(造粒)が進行する。
粒子表面を安定化剤水溶液ミストで被覆・隠蔽(コーティングによる表面改質)することで、他の添加剤(賦形剤)と配合しても分解・変質することは防止できる。より効果を高めるために安定化剤を配合した中間層被覆を行うことで、大気中の水分を吸着することも抑制され、次に得られた粒子表面に腸溶性被覆を行うことで、腸溶性膜剤と薬物が直接に接触することによる不安定物質の変質・失活を防止する(腸溶性膜剤のpH調整のために安定化剤を添加することもある)。
本発明において不安定物質の表面改質をする具体的方法は、特に困難はなく、流動状態にある不安定物質の微粒子に水酸化ナトリウム水溶液を結合剤としてスプレー添加することで、ミストは不安定物質の粒子表面にランダムに付着し、表面改質(安定化処理)をしながら、この結合剤ミストを介して微粒子は付着・凝集を繰り返し次第に粒子成長(造粒・コーティング)が進行する、
さらに、安定化処理(表面改質)された当該薬物の造粒物表面に腸溶性膜剤との接触・干渉を防止するとともに、大気中の水分吸着を抑制する中間層被膜層を形成する。
【0014】
本発明において使用される水系高分子膜剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー等を挙げることができ、なかでもヒドロキシプロピルメチルセルロースやポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマーが好ましい。さらに、タルク等の添加剤を配合してもよい。
これらの水系高分子の使用量は、造粒物又は錠剤全重量の1%〜50%が好ましく、より好ましくは、3%〜30%である。
【0015】
その他、本発明において使用することができる製剤上の添加物としては、通常使用されている賦形剤、崩壊剤、結合剤、矯味剤等その他の添加剤が使用できる。
例えば賦形剤としては、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、部分アルファー化澱粉、D−マンニトール、白糖、ショ糖、ブドウ糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これら賦形剤はその一部、またはすべてを結合剤(膜剤)液中に溶解もしくは分散・懸濁しても良い。さらに好ましくは、これら賦形剤を同様な処理方法で安定化処理(表面改質)した後添加する。
結合剤・膜剤としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E,RS)、メタクリル酸コポリマー(L,LD、S)、メトローズ及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、エチルセルロース系水分散液等を挙げることができこれら膜剤を1種もしくは複数配合してもよい。
崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化澱粉等を挙げることができる。
【実施例】
【0016】
実施例1
平均粒子径5μmのラベプラゾールナトリウム800.0gを噴流流動層造粒機(パウレック製:MP−01−SPC型)に投入し、水酸化ナトリウム80.0gを精製水720.0gに溶解した液をスプレーし造粒した後乾燥し、JIS24メッシュの篩にて篩過整粒した。得られた整粒品88.0gにD−マンニトール744.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40.0g及びステアリン酸マグネシウム8.0gを加え、タンブラー混合機(昭和技研製:TM−15S)で混合した後、ロータリー式打錠機(菊水製作所製:VIRGO型)で圧縮成型し、ラベプラゾールナトリウム10mgを含有する1錠110mgの錠剤を得た。
得られた錠剤220gを錠剤コーティング機(パウレック製:DRC−200型)に投入し、メチルセルロースを用いて被覆層1をコーティングし、次いでポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及びタルクを用いて被覆層2をコーティングし、さらに、メタアクリル酸コポリマーLD、タルク及びクエン酸トリエチルを用いて被覆層3をコーティングし、下記組成のフイルムコーティング錠を得た。
[成 分] [1錠131mg当たりの重量(mg)]
ラベプラゾールナトリウム 10.0
水酸化ナトリウム 1.0
D−マンニトール 93.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
ステアリン酸マグネシウム 1.0
メチルセルロース 5.0
タルク 6.2
ポリビニルアルコール・アクリル酸・
メタクリル酸メチル共重合体 3.0
メタアクリル酸コポリマーLD 6.2
クエン酸トリエチル 0.6
【0017】
実施例2
平均粒子径5μmのラベプラゾールナトリウム100.0g及びD−マンニトール930.0gを噴流流動層造粒機に投入し、水酸化ナトリウム10.0gを精製水990.0gに溶解した液をスプレーし造粒した後乾燥し、JIS24メッシュの篩にて篩過整粒した。得られた整粒品1040.0gに、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース50.0g及びステアリン酸マグネシウム10.0gを加え、タンブラー混合機で混合した後、ロータリー式打錠機で圧縮成型し、ラベプラゾールナトリウム10mgを含有する1錠110mgの錠剤を得た。
得られた錠剤220gを錠剤コーティング機に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて被覆層1をコーティングし、次いでポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及びタルクを用いて被覆層2をコーティングし、さらに、メタアクリル酸コポリマーLD、タルク及びクエン酸トリエチルを用いて被覆層3をコーティングし、下記組成のフイルムコーティング錠を得た。
[成 分] [1錠131mg当たりの重量(mg)]
ラベプラゾールナトリウム 10.0
水酸化ナトリウム 1.0
D−マンニトール 93.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
ステアリン酸マグネシウム 1.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 5.0
タルク 6.2
ポリビニルアルコール・アクリル酸・
メタクリル酸メチル共重合体 3.0
メタアクリル酸コポリマーLD 6.2
クエン酸トリエチル 0.6
【0018】
実施例3
平均粒子径5μmのラベプラゾールナトリウム100.0g及び乳糖水和物930.0gを噴流流動層造粒機に投入し、水酸化ナトリウム10.0gを精製水990.0gに溶解した液をスプレーし造粒した後乾燥し、JIS24メッシュの篩にて篩過整粒した。以下、実施例2と同様に操作し、ラベプラゾールナトリウム10mgを含有する1錠110mgの錠剤を得た。
得られた錠剤220gを錠剤コーティング機に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びタルクを用いて被覆層1をコーティングし、次いでポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及びタルクを用いて被覆層2をコーティングし、さらに、メタアクリル酸コポリマーLD、タルク及びクエン酸トリエチルを用いて被覆層3をコーティングし、下記組成のフイルムコーティング錠を得た。
[成 分] [1錠131mg当たりの重量(mg)]
ラベプラゾールナトリウム 10.0
水酸化ナトリウム 1.0
D−マンニトール 93.0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
ステアリン酸マグネシウム 1.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 4.5
タルク 6.7
ポリビニルアルコール・アクリル酸・
メタクリル酸メチル共重合体 3.0
メタアクリル酸コポリマーLD 6.2
クエン酸トリエチル 0.6
【0019】
実施例4
平均粒子径5μmのラベプラゾールナトリウム100.0g及びD−マンニトールを噴流流動層造粒機に投入し、水酸化ナトリウム10.0gを精製水990.0gに溶解した液をスプレーし造粒した後乾燥した。乾燥後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びタルクを用いて被覆層1をコーティングし、次いでポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体及びタルクを用いて被覆層2をコーティングし、さらに、メタアクリル酸コポリマーLD、タルク及びクエン酸トリエチルを用いて被覆層3をコーティングした後乾燥した。得られた乾燥品418.0g及びD−マンニトール542.0gを噴流流動層造粒機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース40.0gを精製水760.0gに溶解した液を用いて造粒した後乾燥し、ラベプラゾールナトリウムを20%含有する下記組成のフイルムコーティング顆粒を得た。
[成 分] [顆粒500mg当たりの重量(mg)]
ラベプラゾールナトリウム 10.0
水酸化ナトリウム 1.0
D−マンニトール 93.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 13.5
タルク 35.7
ポリビニルアルコール・アクリル酸・
メタクリル酸メチル共重合体 15.0
メタアクリル酸コポリマーLD 37.2
クエン酸トリエチル 3.6
D−マンニトール 271.0
ヒドロキシプロピルセルロース 20.0
【0020】
試験例1(苛酷試験での製剤中のラベプラゾールナトリウム残存率測定)
実施例1から4で得た錠剤及び顆粒を褐色ガラス瓶に入れ、ガーゼをかぶせて封をしたもの(開放)及びについて、同様に錠剤及び顆粒を褐色ガラス瓶に入れ、密栓したもの(密封)について温度60℃、相対湿度75%の条件下に保存した。保存開始から7日経過後、各錠剤中のラベプラゾールナトリウム含量を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、開始時を100%としてラベプラゾールナトリウム残存率を算出した。結果を表1に示す。
【表1】

【0021】
表1の結果から、本発明に係る実施例1から実施例4の錠剤及び顆粒は、市販製剤に比べ、ラベプラゾールナトリウムを安定に保持し得ることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、不安定な薬物を含有する製品において、水系の安定化処理を行うことで、品質の安定が確保できる。また、エタノール等有機溶剤を用いないため、爆発や大気汚染等の問題もなく、作業者の労働災害も防止でき、生産性の向上がはかれる。従って本発明により産業上の利用価値は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸に不安定な物質を処理容器に仕込み、流動・撹拌させ、ここにアルカリ性安定化剤の水溶液若しくはアルカリ性安定化剤を水に懸濁した液をスプレー添加することにより、造粒し、コーティングすることを特徴とする不安定物質含有の粒子加工方法。
【請求項2】
酸に不安定な物質と添加剤を配合した原料微粒子を処理容器に仕込み、流動・撹拌させながら、アルカリ性安定化剤の水溶液若しくはアルカリ性安定化剤を水に懸濁した液に高分子結合剤を溶解した液をスプレー添加することにより造粒し、コーティングすることを特徴とする不安定物質含有の粒子加工方法。
【請求項3】
酸に不安定物質と添加剤を配合した原料微粒子を処理容器に仕込み、流動・撹拌させながら、安定化剤の水溶液若しくは安定化剤を水に懸濁した液に高分子結合剤と不安定物質を溶解した液をスプレー添加することにより、造粒し、コーティングすることを特徴とする不安定物質含有の粒子加工方法。
【請求項4】
酸に不安定物質が、ラベプラゾールナトリウム、オメプラゾール又はランソプラゾールである請求項1〜3の何れかに記載の粒子加工方法。
【請求項5】
安定化剤が粒子加工後の粒子の0.01〜10重量%含まれるようにした請求項1〜4の何れかに記載の粒子加工方法。
【請求項6】
安定化剤の水溶液の濃度が0.1〜33重量%である請求項1〜5の何れかに記載の粒子加工方法。
【請求項7】
安定化剤が、水酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムである請求項1〜6の何れかに記載の粒子加工方法。
【請求項8】
添加剤が、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシ澱粉、バレイショ澱粉、部分アルファー化澱粉、D−マンニトール、白糖、ショ糖及びブドウ糖からなる群から選ばれた1種又は2種以上である請求項1〜7の何れかに記載の粒子加工方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の粒子加工法により得られた粒子の表面に、水系の高分子膜剤を溶解又は分散・懸濁させた液を用いて、単層もしくは複数層の被膜をコーティングし、次に溶出制御のための膜剤をコーティングすることを特徴とする粒子加工方法。
【請求項10】
水系の高分子膜剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E,RS)、メタクリル酸コポリマー(L,LD、S)、メトローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート及びエチルセルロース系化合物からなる群から選ばれた一種又は二種以上である請求項9に記載の粒子加工法。
【請求項11】
請求項9又は10の何れかに記載の粒子加工法により得られた粒子を他の添加剤と混合し、そのまま打錠、又はさらに造粒して打錠する錠剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−298707(P2009−298707A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152511(P2008−152511)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】