説明

粒子加速器

【課題】軸部材の摺動面の潤滑性を維持しつつ、真空容器へ空気の進入を防止して装置の信頼性の向上を図ることが可能な粒子加速器を提供すること。
【解決手段】本発明の粒子加速器は、真空容器の壁体3aを貫通して容器内の真空環境に達すると共に進退可能である軸部材21の周面21a上に潤滑剤を供給すると共に、軸部材21の周面21a上に形成された空孔38Aに対して真空排気を行う軸封装置30を有する構成とする。これにより、供給された潤滑剤によって軸部材の潤滑性を維持し、軸部材21の周面上21aに形成された空孔38Aに対して真空排気を行うことで、真空容器への空気の進入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子加速器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷電粒子を加速させるサイクロトロン等の粒子加速器では、荷電粒子を加速させる環境である真空環境を形成する真空容器を備え、真空容器の外側から真空容器を貫通する軸部材(棒状部材)を有するものがある。外部から真空容器内へ貫通する軸部材として、回転退避型ビームプローブを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のビームプローブは、荷電粒子ビームが渦巻状に回転運動する平面において回転の中心に向かう直線に配置され、真空容器を真空封止状態で貫通して設けられた軸部材(ねじ軸)を備えている。この軸部材は、荷電粒子ビームの回転運動中心に向かう直線上で進退可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−42489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、軸部材との摩擦によって真空容器を真空封止するためのシール部材が経年的に劣化し、軸部材の進退時に空気が真空容器内に進入するという問題がある。そのため、軸部材の摺動面の潤滑性を維持し、真空容器内の真空度の悪化を回避することが求められている。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決することを目的としており、軸部材の摺動面の潤滑性を維持しつつ、真空容器へ空気の進入を防止して装置の信頼性の向上を図ることが可能な粒子加速器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、荷電粒子を加速する粒子加速器において、加速粒子が加速する真空環境を内部に形成する真空容器と、真空容器の壁体を貫通して真空容器内の真空環境まで達すると共に進退可能である軸部材と、真空容器と軸部材との間を封止する軸封装置とを備え、軸封装置は、軸部材の周面上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段と、軸部材の周面と接する内周面上に形成された空孔に対して真空排気を行う排気手段とを有することを特徴としている。
【0007】
このような粒子加速器によれば、真空容器の壁体を貫通し内部の真空環境まで達すると共に進退可能である軸部材の周面上に潤滑剤を供給すると共に、軸部材の周面上に形成された空孔に対して真空排気を行う軸封装置を有する構成であるため、供給された潤滑剤によって軸部材の潤滑性を維持できると共に、軸部材の周面上に形成された空孔に対して真空排気を行うことで、真空容器への空気の進入を防止することができる。
【0008】
また、潤滑剤供給手段は、排気手段によって真空排気が行われる空孔である第1の空孔とは異なる第2の空孔に潤滑剤を供給することが好ましい。このように、真空排気が行われる第1の空孔と、潤滑剤が供給される第2の空孔とが別個に形成されていると、同一の空孔に潤滑剤が供給されて真空排気が行わる構成と比較して、良好な油膜が形成され、潤滑性の維持がより確実なものとなる。その結果、シール部材の機能が好適に発揮され、真空容器内の真空度の悪化を回避することができる。
【0009】
また、軸部材の長手方向において、真空容器に近い方に第1の空孔が配置され、遠い方に第2の空孔が配置されていることが好適である。このように、潤滑剤が供給される第2の空孔と真空容器との間に、第1の空孔が形成され、この第1の空孔に対して真空排気が行われるため、第2の空孔に供給された潤滑剤の真空容器内への進入を防止することができる。例えば、潤滑剤が真空容器内に入ることで引き起こされる不具合を防止することができ、装置の信頼性を向上することができる。
【0010】
例えば、潤滑剤が真空容器内に入って蒸発すると、その発生したガスによりRF(高周波)放電するおそれがあるが、第1の空孔に対して真空排気を行い第1の空孔内の余分な潤滑剤を取り除くことで、潤滑剤の真空容器内への浸入を防止して放電を回避することができる。
【0011】
また、潤滑剤供給手段は、排気手段によって真空排気が行われる空孔に潤滑剤を供給する構成であることが好適であり、このような構成により、軸部材の潤滑性を維持しつつ、真空容器への空気の進入を防止することができる。また、潤滑剤が供給される空孔と、真空排気が行われる空孔とが共通であるため、簡素な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る粒子加速器によれば、軸部材の摺動面の潤滑性を維持しつつ、真空容器内への空気の進入を防止して信頼性の向上された粒子加速器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るサイクロトロンの内部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るラジアルプローブのシール構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るラジアルプローブのシール構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る粒子加速器の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。本実施形態では、粒子加速器をサイクロトロンとした場合について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るサイクロトロンについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るサイクロトロンの内部を示す斜視図であり、図2は、第1実施形態に係るビームプローブのシール構造を示す断面図である。図1では、サイクロトロンの上部側を取外して、内蔵部品が見えるように図示している。
【0016】
図1に示すように、サイクロトロン1は、陽子ビーム(荷電粒子ビーム)を生成するものであり、イオン源(不図示)から供給されるイオン(水素の陽イオン)を真空容器3の内部で加速させて、陽子ビームを生成し、出射する。真空容器3は、円筒状の側壁(壁体)3aを有する構成とされている。真空容器3は、例えば、ステンレス鋼などにより形成されている。また、真空容器3には、図示しない真空ポンプが接続されている。真空容器3は、イオン(加速粒子)が加速する真空環境を内部に形成する。
【0017】
サイクロトロン1は、上下に対向して配置された鉄心(ヨーク)4、真空容器3内に磁場を形成する励磁コイル(メインコイル)5、イオンにエネルギーを付与するために、高周波電圧(RF)を発生させるRFキャビティ6、RFキャビティ6の共振周波数を調整するRFチューナー11を備えている。鉄心4及び励磁コイル5によって真空容器3内に磁場が形成され、RFキャビティ6によって高周波電圧が付与されることにより、イオンがらせん状の軌道で周回運動し、周回軌道の半径が大きくなるにつれてイオンの進行速度が増加する。なお、図1では、下側の鉄心4を図示し、上側の鉄心4の図示を省略している。
【0018】
また、サイクロトロン1には、真空容器3の側壁3aの内面側に設置されて、加速された陽子ビームを引き出すためのデフレクター(偏向器)7と、磁場勾配を補正するグラリアントコレクター(勾配補正器)8と、陽子ビームを所定の方向(水平方向)に出射するコリメーター9と、出射された陽子ビームの焦点を調整するパーマネントクワドロポールマグネット(四極子)10とが設けられている。真空容器3内で加速された陽子ビームは、デフレクター7によって引き出され、グライアントコレクター8によって磁場勾配が補正されて、コリメーター9によって出射方向が調整される。出射された陽子ビームはパーマネントクワドロポールマグネット10によってビームの焦点が調整される。
【0019】
(ラジアルプローブ)
また、サイクロトロン1では、真空容器3内のビーム電流値を測定するラジアルプローブ20を備えている。真空容器3内では、イオンが残留気体に衝突したり、内蔵部品に衝突したりすることで、ビーム電流値が低下する。ラジアルプローブ20は、ビーム診断プローブとして機能するものであり、ビーム量、ビーム形状を計測することができる。
【0020】
ラジアルプローブ20は、真空容器3の側壁3aを貫通し、真空容器3の半径方向(イオンの周回軌道の中心に向かう方向)に進退可能な軸部材21、軸部材21の先端に設けられた検出片22、軸部材21を駆動させるための駆動源23、真空容器3の側壁3aと軸部材21との間を封止する軸封装置(差動排気手段)30を備えている。軸部材21は、真空容器3の側壁3aを板厚方向に貫通し、大気圧環境の真空容器3外から真空環境の真空容器3内まで延在している。
【0021】
軸部材21は、例えば円筒状のステンレス鋼によって形成されており、イオンの周回軌道平面と平行な面においてイオンの周回軌道の中心に向かう線上に配置されている。検出片22は、ビームが衝突する部分であり、衝突したビームの電流値を計測する検出部として機能する。駆動源23は、真空容器3の外部に配置され、軸部材21を軸方向に往復動させるものである。駆動源23としては、例えば、エアーシリンダーを採用することが可能である。軸部材21の軸線方向のストロークは、例えば1700mm程度である。
【0022】
(軸封装置)
軸封装置30は、真空容器3の側壁3aに設けられた開口部3bに装着された軸受け31と、側壁3aに固定され軸部材21を軸線方向Lに摺動可能に支持する軸封装置本体32と、軸部材21の周面21aと接触する複数(本実施形態では3個)のシール部材33A〜33C、軸部材21の周面21a上に形成された第1の空孔38Aに対して真空排気を行う排気手段34と、軸部材21の周面21a上に形成された第2の空孔38Bに対して潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段35とを備えている。
【0023】
軸受け31は、軸部材21を軸方向に摺動可能に支持するものである。軸封装置本体32は、例えばステンレス製のブロック体であり、軸封装置本体32を側壁3aに固定するためのフランジ32aが形成されている。フランジ32aが真空容器3にボルト固定されることで、軸封装置本体32が真空容器3に固定されている。
【0024】
軸封装置本体32の内部には、軸部材21の軸線方向Lに貫通する貫通孔36、及びこの貫通孔36を画成する内壁面に形成され、シール部材33A〜33Cを収容する溝部37A〜37Cが形成されている。溝部37A〜37Cは、リング状のシール部材33A〜33Cを収容可能とすべく内壁面の全周において形成されている。軸封装置本体32には、軸線方向Lに所定の間隔で配置された3つのシール部材33A〜33Cによって仕切られた、2つの空孔(第1の空孔、第2の空孔)38A,38Bが形成されている。これらの空孔38A,38Bは、軸部材21の周面21a上に隙間を形成するものである。空孔38A,38Bは、軸封装置本体32の内壁面(軸部材21の周面と接する内周面)の全周にわたって形成されている。また、軸封装置本体32には、第1の空孔38Aに連通する通路38Aと、第2の空孔38Bに連通する通路39Bが設けられている。
【0025】
シール部材33A〜33Cは、例えばゴム系のシール部材である。シール部材33A〜33Cとしては、Oリング、Xリング(商品名)、Quad−Ring(商品名)を使用することができる。シール部材33A〜33Cは、軸封装置本体32の溝部37A〜37Cに装着され、軸部材21の周面21aと接触して、真空容器3と軸部材21の周面21aとの間をシールする。
【0026】
排気手段34は、図示しない真空ポンプと、真空ポンプと連通する通路39Aと、第1の空孔38Aとを有する。排気手段34は、真空ポンプを作動させ第1の空孔38A(排気ポート)に対して真空排気を行う。これにより、第1の空孔38Aを真空環境に維持する。
【0027】
潤滑剤供給手段35は、図示しない潤滑剤供給ポンプと、潤滑剤供給ポンプと連通する通路39Bと、第2の空孔38Bとを有する。潤滑剤供給手段35は、潤滑剤供給ポンプ作動させ第2の空孔38B(潤滑ポート)に対して潤滑剤を供給する。潤滑剤としては、真空環境で使用可能な真空用潤滑油を使用することができる。第2の空孔38Bには、供給された潤滑油によって液溜まりが形成される。これにより、軸部材21の周面21a上に油膜が形成され、軸部材21の潤滑性を維持することができる。その結果、シール部材33A〜33Cの磨耗を軽減することができる。
【0028】
また、本実施形態の軸封装置30では、真空容器3に近い方に第1の空孔38Aが形成され、第1の空孔38Aよりも遠い方に第2の空孔38Bが形成されている。すなわち、軸部材21の軸線方向Lにおいて、潤滑剤が供給される第2の空孔38Bと真空容器3との間に、第1の空孔38Aが配置され、この第1の空孔38Aに対して真空排気(差動排気)を実施可能な構成とされている。
【0029】
(作用)
次に、本実施形態のラジアルプローブ20を備えたサイクロトロン1の作用について説明する。サイクロトロン1は、イオン源(図示無し)から発生したイオンを真空容器3内でらせん状に加速する。加速されたイオンは、デフレクター7によって引き出され、サイクロトロン1は陽子ビームを出射する。
【0030】
このようなサイクロトロン1では、始動時(例えば使用する日の朝)に、陽子ビームを試しに加速し、真空容器3の半径方向におけるビーム電流の分布が定常状態であるか否かを判定するために、ラジアルプローブ20が使用される。ラジアルプローブ20は、真空容器3の中央部から半径方向の外側に移動しながら、検出片22に衝突するビームの電流値を計測し、ビームのプロファイルを取得する。これにより、半径方向に分布するビームの電流値が正常状態であれば、サイクロトロン1としての通常の使用を開始する。
【0031】
このラジアルプローブ20の往復動の際には、第2の空孔38Bに潤滑剤が満たされており、第1の空孔38Aに対しては真空排気が行われている。例えば、第2の空孔38Bに潤滑剤を充填する際には、下方に設けられた通路39Bのバルブ(不図示)を緩めに閉めておき、下方からエアーを抜きながら、上方の通路39Bを通じて潤滑剤を充填する。潤滑剤の充填後に潤滑剤の供給を停止し、通路39Bに設けられたバルブを閉止する。
【0032】
このようなサイクロトロン1によれば、真空容器3の側壁3aを貫通する軸部材21の周面21a上に潤滑剤を供給する共に、軸部材21の周面21a上に形成された第1の空孔38Aに対して真空排気を行う軸封装置30を有する構成であるため、供給された潤滑剤によって軸部材21の潤滑性を維持し、軸部材21の周面21a上に形成されて第2の空孔38Bに対して真空排気を行うことで、真空容器3への空気の進入を防止することができる。
【0033】
ここで、潤滑剤供給手段35は、真空排気が行われる第1の空孔38Aとは異なる第2の空孔38Bに潤滑剤を供給する構成であるため、同一の空孔に潤滑剤が供給されて真空排気が行わる構成と比較して、良好な油膜が形成される。従って、潤滑性の維持がより確実なものとなり、シール部材33A〜33Cの機能が好適に発揮され、真空容器3内の真空度の悪化を回避することができる。空孔が別々に形成されているため、真空排気により油膜が形成されないという問題を回避することができる。
【0034】
また、軸部材21の長手方向において、真空容器3に近い方に第1の空孔が38A配置され、遠い方に第2の空孔38Bが配置されているため、潤滑剤が供給される第2の空孔38Bと真空容器3との間に、第1の空孔38Aが形成されることになる。この第1の空孔38Aに対して真空排気を行うことで、第2の空孔38Bに供給された潤滑剤の真空容器3内への進入を防止することができる。例えば、潤滑剤が真空容器3内に入って蒸発すると、その発生したガスによりRF(高周波)放電するおそれがあるが、第1の空孔38Aに対して真空排気を行い第1の空孔38A内の余分な潤滑剤を取り除くことで、潤滑剤の真空容器3内への浸入を防止して放電を回避することができる。その結果、サイクロトロン1を安定的に稼動させることができる。
【0035】
このように本実施形態のサイクロトロン1によれば、軸部材21の駆動による真空度の悪化を回避することができるため、サイクロトロン1の運転の安定化を図り、装置の信頼性の向上を図ることができる。また、軸部材21の周面21a上に一様に油膜を形成することができるため、潤滑が確実に確保され、シール部材の寿命を延ばすことができる。これにより、メンテナンスコストを削減することが可能である。また、シール部材の不具合による真空度の悪化を回避することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係るサイクロトロンについて説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係るラジアルプローブのシール構造を示す断面図である。第2実施形態のサイクロトロンが、第1実施形態のサイクロトロンと違う点は、ラジアルプローブ20のシール構造が異なる点である。具体的には、共通の空孔38Aに対して、潤滑剤を供給すると共に、真空排気を行う構成とされている。このように構成された軸封装置30Bを備えるサイクロトロン1であっても、潤滑性を維持し、真空度の悪化を回避することができる。第2実施形態の軸封装置30Bでは、シール部材の使用個数の削減することができる。また、一つの空孔38Aを備える構成であるため、軸封装置本体32の小型化を図ることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。また、粒子加速器はサイクロトロンに限定されず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロンでも良い。また、粒子線(荷電粒子)は陽子ビームに限定されず、炭素ビーム(重粒子ビーム)などでも良い。
【0038】
また、粒子加速器中で加速するイオンは陰イオンでも良く、陰イオンの場合は、加速器から出射する際に、フォイルストリッパー等で陰イオンから電子をはぎとった上で陽イオンを出射する。
【0039】
また、上記実施形態では、軸封装置30をラジアルプローブ20のシール構造として採用しているが、その他の部品のシール構造として適用してもよい。例えば、デフレクター7やRFチューナー11を駆動させるための軸部材周りのシール構造として、軸封装置30を採用してもよい。例えば、駆動量が20〜30mm程度であるとベローズ機構を採用することができるが、ベローズ(蛇腹)を採用せずに本発明を適用した場合には、ベローズを用いないためシール構造のコンパクト化を図ることができる。
【0040】
また、本発明に係る軸封装置30は、駆動量が300mm〜3000mm程度の軸部材21に対して特に有効である。また、軸部材の移動方向は、水平方向に限定されず、上下方向(イオンの周回軌道の平面と直交する方向)に駆動されるものでもよく、側壁に対して傾斜する方向に駆動される軸部材に対して軸封装置30を適用してもよい。また、軸部材21が往復駆動されるものに限定されず、回転軸周りに回転する回転駆動部に、軸封装置30を用いてもよい。例えば、ビームシャッターの駆動部に軸封装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…サイクロトロン(粒子加速器)、3…真空容器、3a…真空容器の側壁(壁体)、4…鉄心、5…励磁コイル、6…RFキャビティ、7…デフレクター、8…グラリアントコレクター、9…コリメーター、10…パーマネントクワドロポールマグネット、11…RFチューナー、20…ラジアルプローブ、21…軸部材、22…検出片、23…駆動源、30,30B…軸封装置、31…軸受け、32…軸封装置本体、33A〜33C…シール部材、34…排気手段、35…潤滑剤供給手段、36…貫通孔、37A〜37C…シール部材収容溝部、38A…第1の空孔、38B…第2の空孔、39A,39B…通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を加速する粒子加速器において、
前記加速粒子が加速する真空環境を内部に形成する真空容器と、
前記真空容器の壁体を貫通して前記真空容器内の前記真空環境まで達すると共に進退可能である軸部材と、
前記真空容器と軸部材との間を封止する軸封装置とを備え、
前記軸封装置は、前記軸部材の周面上に潤滑剤を供給する潤滑剤供給手段と、
前記軸部材の周面と接する内周面上に形成された空孔に対して真空排気を行う排気手段とを有することを特徴とする粒子加速器。
【請求項2】
前記潤滑剤供給手段は、前記排気手段によって真空排気が行われる前記空孔である第1の空孔とは異なる第2の空孔に前記潤滑剤を供給することを特徴とする請求項1に記載の粒子加速器。
【請求項3】
前記軸部材の長手方向において、前記真空容器に近い方に前記第1の空孔が配置され、遠い方に前記第2の空孔が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の粒子加速器。
【請求項4】
前記潤滑剤供給手段は、前記排気手段によって真空排気が行われる前記空孔に前記潤滑剤を供給することを特徴とする請求項1に記載の粒子加速器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−195083(P2012−195083A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56639(P2011−56639)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】