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粒子加速方法および粒子加速装置ならびにミュオン生成・加速システム
説明

粒子加速方法および粒子加速装置ならびにミュオン生成・加速システム

【課題】 質量が大きい粒子であってもレーザー航跡場加速法により充分加速することができる粒子加速装置を提供する。
【解決手段】 レーザー航跡場加速法によりミュオンμを加速する粒子加速装置であって、ミュオンμの入射側を基準にプラズマ電子密度が高い高圧ガス3Cを噴射させる領域からプラズマ電子密度が低い低圧ガス3Dを噴射させる領域に向け、ミュオンμの進行方向に沿って順に高圧ガス噴射領域3Aおよび低圧ガス噴射領域3Bを並設したガスジェット発生装置100と、高圧および低圧ガス3C,3Dをプラズマ化するレーザー光Lを照射するためのレーザー装置1と、ミュオンμの進行方向にレーザー装置1から照射するレーザー光Lの光軸が一致するようにレーザー光Lの光路を調整するミラー2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子加速方法および粒子加速装置ならびにミュオン生成・加速システムに関し、特に電子の207倍というはるかに大きい質量を有するミュオン等の短寿命素粒子を加速する場合に適用するとともに、加速した素粒子の透過性等を利用して各種の探査等を行う可搬式のシステムを構築する際に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
ミュオンは、寿命が50万分の1秒程度の不安定な素粒子の一種であり、他の粒子に較べて極めて高い透過率を有している。かかるミュオンの透過性を利用して、例えば火山等の巨大物体の内部構造の解析(特許文献1参照)等にその応用が考えられている。また、ミュオンを雷雲に照射して、より確実に雷放電を誘発させる誘雷方法(特許文献2参照)も提案されている。
【0003】
ただ、ミュオンは自然界には安定しては存在せず、宇宙線として飛来するだけで、いつ、どの方向から飛来するのかを予測することは困難である。さらに、宇宙線として飛来するミュオンはその粒子数が少ないため、ノイズとの区別が難しい。
【0004】
したがって、上述の如き巨大物体の内部構造の解析やミュオン誘雷を実現するためには、人工的にミュオンを生成させる必要がある。そこで、従来より粒子加速器を用いて粒子を加速することにより人工的にミュオンを生成させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−101892号公報
【特許文献2】特開2005−251553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如き粒子加速器は、一般にその径が数kmにもおよぶ(例えばスプリング8等)極めて大型の設備であり、可搬性を具備するものではない。
【0007】
一方、ミュオンの高い透過性という特性を活かし、その応用範囲を広げるためにはミュオンが生成される場所を容易に移動させ得る可搬性を有するように構成することが肝要である。これには、小型の装置で生成させたエネルギーが小さいミュオンを所定のエネルギーを持つように加速するという方法も考えられる。
【0008】
ここで、電子等の粒子の加速器としてレーザー航跡場加速装置が知られている。これは、所定のガス中へのレーザー光の照射により生成されたプラズマ波に加速対象となる粒子を入射することによりこの粒子を加速するものであり、フェムト秒台のパルス幅を持つレーザー装置の出現により実用的な大加速勾配をもつものが提案されている。このため、ノズル部から所定のガスをパルス的に噴出するためのガスジェット発生装置と、このガスジェット発生装置から噴出されたガス中にフェムト秒台のパルス幅を持つレーザー光を照射するレーザー装置とを有している。
【0009】
ところが、従来技術に係るレーザー航跡場加速装置は電子を加速することを前提として提案されているので、電子よりも質量がはるかに大きいミュオンを充分な速度にまでは加速できない。かかる事情は他の短寿命素粒子、例えば荷電パイ中間子、荷電K中間子等でも同様である。
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑み、質量が大きい粒子であってもレーザー航跡場加速法により充分加速することができ、小型の生成装置で生成された粒子であっても充分実用的なレベルにまで加速することができる可搬式のシステムとして実現し得る粒子加速方法および粒子加速装置ならびにミュオン生成・加速システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
レーザー光の照射によりプラズマ化されたガスの中に、加速対象である粒子を入射することによりレーザー航跡場加速法により前記粒子を加速する粒子加速方法であって、
前記粒子の入射側を基準にプラズマ電子密度が高いガスから順にプラズマ電子密度が低いガスに向かって前記粒子を複数種類のプラズマ電子密度のガスを通過させて順次加速することを特徴とする粒子加速方法にある。
【0012】
本態様によれば、質量が大きい素粒子であっても段階的に徐々に加速することができるので、最終的には所定の速度にまで加速することができ、大きなエネルギーを有する素粒子とすることが可能になる。
【0013】
本発明の第2の態様は、
レーザー光の照射によりプラズマ化されたガスの中に、加速対象である粒子を入射することによりレーザー航跡場加速法により前記粒子を加速する粒子加速装置であって、
前記粒子の入射側を基準にプラズマ電子密度が高いガスを噴射させるガス噴射領域からプラズマ電子密度が低いガスを噴射させるガス噴射領域に向け、前記粒子の進行方向に沿って順に複数の前記ガス噴射領域を並設した多段の加速ガスジェット発生装置と、
前記各ガス噴射領域で噴射されるガスをプラズマ化するレーザー光を照射するためのレーザー装置と、
前記粒子の進行方向に前記レーザー装置から照射するレーザー光の光軸が一致するように前記レーザー光の光路を調整する光路調整手段とを有することを特徴とする粒子加速装置にある。
【0014】
本態様によれば、レーザー光の光軸に一致するように多段加速ガスジェット発生装置のガス中に粒子を入射することで、前記粒子を段階的に加速することができる。このため、粒子が、例えばミュオン等、質量が大きな素粒子であっても、これを良好に加速することができる。
【0015】
本発明の第3の態様は、
第2の態様に記載する粒子加速装置と、
レーザー光の照射によりミュオンを生成させるレーザー光によるミュオン生成装置とを組み合わせて前記ミュオンを前記粒子加速装置で加速するように構成したことを特徴とするミュオン生成・加速システムにある。
【0016】
本態様によれば、ミュオン生成装置で生成させたミュオンを多段加速ガスジェット発生装置に向けて入射することによりミュオンを段階的に加速することができ、レーザー光で生成させた低いエネルギーのミュオンであっても所定の大きなエネルギー、すなわち透過力を有するミュオンを生成させることが可能になる。この結果、大きなエネルギーを有するミュオンをレーザー装置により小型の可搬式のシステムとして構築することができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、
第3の態様に記載するミュオン生成装置が、
レーザー光を照射するレーザー装置と、
電子を生成するため前記レーザー光で照射されるターゲットと、
前記電子の衝突によりミュオンを生成するコンバーターとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システムにある。
【0018】
本態様によれば、レーザー装置、電子を生成するターゲットおよびコンバーターでミュオンを生成させることができるので、可搬性を備えた小型の装置を構築するのに資することができる。
【0019】
本発明の第5の態様は、
第3の態様に記載するミュオン生成装置が、
レーザー光を照射するレーザー装置と、
イオンを生成するため前記レーザー光で照射されるターゲットと、
前記イオンの衝突によりミュオンを生成するコンバーターとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システムにある。
【0020】
本態様によれば、レーザー装置、イオンを生成させるターゲットおよびコンバーターでミュオンを生成させることができるので、可搬性を備えた小型の装置を構築するのに資することができる。
【0021】
本発明の第6の態様は、
第3の態様に記載するミュオン生成装置が、
レーザー光を相対向する両側から相互に逆向きに照射するレーザー装置と、
各レーザー光の光路上に配設され、照射されたレーザー光によりイオンをそれぞれ生成させるとともに生成されたイオンを衝突させてミュオンを生成させる相対向する一対のターゲットとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システムにある。
【0022】
本態様によれば、相対向する一対のターゲットにレーザー光が照射されることにより生成されたイオン同士が衝突することでミュオンが生成される。すなわち、レーザー装置とイオンコライダーを形成する一対のターゲットとで所定のミュオン生成装置を構築することができるので、上記態様と同様に、可搬性を備えた小型の装置とすることができる。
【0023】
ここで、イオンを生成させるレーザー光の口径は光学系により十μm以下にまで絞り込むことができ、且つフェムト秒(fs)のオーダーまで短パルス化することで高エネルギー強度のレーザー光を照射することができるので、粒子加速器を用いた場合よりもイオンの生成密度を一桁程度向上させることができる。この結果、イオンの高密度化により衝突の確率もその分向上させることができ、より容易にミュオンを生成させることができる。また、互いに所定の運動エネルギーを有するイオン同士の衝突によりミュオンを得ているので、その分イオンのエネルギーが小さくてもミュオンを生成させることができる。
【0024】
本発明の第7の態様は、
第3の態様に記載するミュオン生成装置が、
相対向する両側からレーザー光を相互に逆向きに照射するレーザー装置と、
各レーザー光の光路上に配設され、相対向する面にそれぞれ照射されたレーザー光によりその内部にイオンを生成させるとともに生成されたイオンを衝突させてミュオンを生成させるターゲットとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システムにある。
【0025】
本態様によれば、ターゲットの相対向する各面にレーザー光が照射されることによりターゲット内でイオンが生成され、生成されたイオン同士がターゲット内で衝突することでミュオンが生成される。すなわち、イオンコライダーを形成してミュオンを人工的に生成させることができる。本形態でもレーザー装置とターゲットとで所定のミュオン生成装置を構築しているので、可搬性を備えた小型の装置とすることができる。
【0026】
ここで、本態様におけるミュオンの生成は、一つのターゲットの内部に生成されるイオンのターゲットの内部における衝突を利用しているため、高い確率でイオン同士を衝突させることができる。この結果、その分ミュオンの生成確率も高くすることが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、段階的にプラズマ電子密度が大きいガスから順に小さいプラズマ電子密度のガスに向かって通過するように粒子をガス中に入射しているので、前記粒子が多段に加速される。この結果、前記粒子が質量の大きいミュオン等の短寿命素粒子であっても良好に所定のエネルギーまで加速させることが小型の装置で容易に可能になる。
【0028】
また、レーザー光の照射によりミュオンを生成させるレーザー光によるミュオン生成装置と組み合わせた場合には、充分なエネルギーを有する粒子を可搬性を有する小型のシステムで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るミュオン生成・加速システムを示すブロック線図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。
【図3】図2に示すレーザー装置の詳細を示すブロック線図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。
【図6】本発明の第4の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、加速対象をミュオンとするミュオン生成・加速システムとして説明するが、加速対象はミュオンに限定するものではない。ミュオンと同様に質量が大きい短寿命素粒子に同様に適用することができる。この種の短寿命素粒子として例えば荷電パイ中間子、荷電K中間子がある。また、各図において同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
<実施の形態>
図1は本発明の実施の形態に係るミュオン生成・加速システムを示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係るミュオン生成・加速システムは、後に詳述する第1〜第4の実施例に係るミュオン生成装置I〜IVとレーザー航跡場加速装置100とを組み合わせ、ミュオン生成装置I〜IVで生成されたミュオンμを加速してそのエネルギーを増大させるものである。すなわち、本形態ではミュオン生成装置I〜IVで別途生成されたミュオンμをレーザー光Lとともにガスジェット発生装置3から噴出されたガス中に打ち込むことにより所定の加速を行うようになっている。
【0032】
このため、本形態に係るミュオン生成・加速システムは、レーザー装置1と、ミュオンμの入射方向とレーザー装置1から照射されるレーザー光Lの光軸とを一致させるための放物面を有するミラー2と、ガスジェット発生装置3とを有している。
【0033】
ここで、ガスジェット発生装置3は,本形態の場合、電子の207倍という大きい質量を有するミュオンを所定通り円滑に加速するため多段加速(図には2段加速の場合を示している。)を行うように構成してある。具体的には、ガスジェット発生装置3が高圧ガスを噴射する高圧ガス噴射領域3Aと低圧ガス噴射領域3Bとの二つの領域を有しており、これら二種類の領域がレーザー光Lの照射側から高圧ガス噴射領域3A、低圧ガス噴射領域3Bとして並設されている。かくして最初に高圧ガス噴射領域3Aから噴射されレーザー光Lの照射により高プラズマ電子密度となっている高圧ガス3C中でプレ加速を行い、その後低圧ガス噴射領域3Bから噴射されて低プラズマ電子密度となっている低圧ガス3D中でメイン加速を行う。ここで、高圧ガスとしては、質量が大きい、例えばAr,Xeが好適であり、また低圧ガスとしては、質量が小さい、例えばHeが好適である。また、高圧ガス3Cは、例えば電子密度n<1020cm−3で幅が数百μm程度の領域、低圧ガス3Dは、例えば電子密度n<1018cm−3で幅が数mm程度の領域を有するものが好適である。
【0034】
本実施形態において、ミュオン生成装置I〜IVで生成されてレーザー航跡場加速装置100に供給されたミュオンμは、レーザー装置1から照射されミラー2で反射されるレーザー光Lの光軸方向に沿って入射され、ガスジェット発生装置3の高圧ガス3C中に供給される。このとき同時に高圧ガス3Cおよび低圧ガス3Dにはレーザー光Lが照射されるので高圧ガス3Cおよび低圧ガス3Dがプラズマ化される。この結果、大きな質量のミュオンμであっても、まずレーザー光Lの照射により高プラズマ電子密度となっている高圧ガス3C中でプレ加速され、その後低プラズマ電子密度となっている低圧ガス3D中でメイン加速される。かくしてミュオン生成装置I〜IVから入射されたミュオンμを100〜1000倍程度にまで加速することができる。すなわち、MeVオーダーのミュオンμであってもGeVオーダーのエネルギーを持たせることができる。
【0035】
この結果、本形態に係るミュオン生成システムは、ミュオン生成装置I〜IVで生成されたミュオンμのエネルギーが1MeV程度であっても1GeV程度のエネルギーを持たせることができ、巨大物体の探査等、その透過性等の性質を利用した種々の応用に供し得る。すなわち、当該ミュオン生成システムは船舶に積載し得る程度にまで小型化が可能であるため、例えばこれを船舶に積載して所定の場所まで搬送し、図1に示すように海中11に向かってミュオンμを照射することにより海底12の地殻13、天然ガス等の資源14の探査を有効に行うことができる。すなわち、密度が異なる物質の境界部分で散乱される散乱ミュオンμ′を計測することにより、ミュオンμの照射時点と散乱ミュオンμ′の時間差により前記境界部分の様子を特定することができる。
【0036】
他にも、種々の応用範囲が考えられるが、例えば地殻、地盤調査において複数地点からの計測データを得て所定の演算をすることによりトモグラフィー計測が可能になり、原子力設備における大型構造物、例えば原子炉、炉心部のリアルモニターが、可能になる。すなわち、シングルビームであれば通常の透過画像、複数ビームであればCTスキャンと同等の用途に供し得る。当然火山透過画像、ミュオン誘雷にも適用できる。
なお、上記実施の形態におけるミュオンμの加速は、勿論2段に限定するものではない。必要に応じ多段に構成することができる。この場合、レーザー光Lの照射側から順にガス圧が低下するように各ガス噴射領域を並設すれば良い。この場合、隣接するガス噴射領域がミュオンμの入射方向に関して連続して形成されている必要もない。
【0037】
次に、上記実施の形態に係るミュオン生成装置の具体的な構成例として第1〜第4の実施例を説明する。
【0038】
<第1の実施例>
図2は第1の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本実施例に係るミュオン生成装置Iは、レーザー光L1を照射するレーザー装置21と、照射されたレーザー光L1で電子Eを生成するターゲット22と、電子Eの衝突によりミュオンμを生成するコンバーター23とを有する。ここで、ターゲット22はガスターゲットで好適に構成することができる。このガスターゲットとは、レーザー光L1の照射に同期してその光路の途中に所定のガスを噴射するものである。このガスにレーザー光L1が照射されることで電子Eが生成される。なお、ターゲット22は固体(例えばAl,Cuの金属薄膜や、ポリイミドなどのプラスチック薄膜等)ターゲットで構成することもできる。ただ、ガスターゲットの方が得られる電子Eの電子エネルギーが高いので、本実施の形態に適用する場合にはより好ましい。また、コンバーター23としては、鉛、タングステン、タンタル等、原子番号が大きい材料が好適である。
【0039】
また、この場合の電子Eのエネルギーは200〜500MeV程度であれば良い。電子Eのエネルギーが200〜500MeVの場合、1MeV程度のミュオンμが生成される。この程度のミュオンμであれば、レーザー航跡場加速装置100で100〜1000倍程度にまで加速することが可能であるので、巨大物体の探査等に充分適用できると考えられる。
【0040】
図3はレーザー装置21のさらに詳細なブロック線図である。同図に示すように、本実施例におけるレーザー装置21は、レーザー発振器26、パルス拡張器27、増幅器28、パルス圧縮器29および光学系30からなる。レーザー発振器26は極短パルスのレーザー光を照射する。この極短パルスのレーザー光は、例えばパルス幅が20fs、エネルギーが5nJ、出力が250kWである。レーザー発振器26から照射されたレーザー光はパルス拡張器27で、パルス幅が、例えば300psに引き伸ばされる。この結果、出力は17Wとなる。かかるパルスレーザー光は増幅器28で増幅されることにより、エネルギーが、例えば1Jとなる。最後に、かかるパルスレーザー光のパルス幅をパルス圧縮器29で元の20fsに圧縮して照射する。この結果、パルス圧縮器29から出力されるレーザー光は、本例の場合、パルス幅が50fs、エネルギーが1J、出力が20TWと極短パルス幅の大出力パルスとなる。かかる大出力パルスのレーザー光は、光学系30で集光させてビーム径を十μm以下にまで絞ってターゲット22(図2参照)に向けて照射される。
【0041】
なお、パルス圧縮器29よりもターゲット側はターゲット22(図2参照)やコンバーター23(図2参照)も含め真空容器等に収納されて真空系Vを構成している。
【0042】
<第2の実施例>
図4は第2の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係るミュオン生成装置IIは、レーザー光L1を照射するレーザー装置21と、照射されたレーザー光L1でプロトンPを生成するターゲット44と、プロトンPの衝突によりミュオンμを生成するコンバーター45とを有する。
【0043】
本例では、ターゲット44でプロトンPを生成させ、このプロトンPをコンバーター45に衝突させる点が異なるだけで、第1の実施例と同様な態様で、レーザー光L1によりミュオンμを得ている。
【0044】
ここで、本例におけるターゲット44は固体薄膜ターゲットやクラスターターゲットで好適に形成し得る。なお、本形態の如くプロトンを生成させる場合には、ガスターゲットよりも固体ターゲットやクラスターターゲットを用いるのが一般的である。また、コンバーター45としては金属や、O,Fを含むプラスチック等の高密度(イオン密度が1022〜1023cm−3)物質で好適に形成することができる。
【0045】
この場合のプロトンPのエネルギーは100MeV程度であれば良い。プロトンPのエネルギーが100MeV程度の場合、1MeV程度のミュオンμが生成される。この程度のミュオンμであれば、レーザー航跡場加速装置100で100〜1000倍程度にまで加速することが可能であるので、巨大物体の探査等に充分適用できると考えられる。
【0046】
<第3の実施例>
図5は本発明の第3の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本例に係るミュオン生成装置IIIは、レーザー光L2,L3を照射するレーザー装置211,212と、照射されたレーザー光L2,L3でプロトンP1,P2を生成するターゲット441,442とを有する。すなわち、第2の実施例に係るミュオン生成装置IIを線対称な位置に2台配設することによりプロトンコライダーを形成したものである。したがって、レーザー装置211,212はレーザー装置21と同様の構成のものであり、ターゲット441,442はターゲット44と同様の構成とすることができる。
【0047】
本例によれば、相対向する一対のターゲット441,442にレーザー光L2,L3が照射されることにより生成されたプロトンP1,P2同士が衝突することでミュオンμが生成される。
【0048】
ここで、プロトンP1,P2を生成させるレーザー光L2、L3の口径は光学系10()により十μm以下にまで絞り込むことができ、且つフェムト秒(fs)のオーダーまで短パルス化することで高エネルギー強度のレーザー光L2,L3を照射することができるので、粒子加速器を用いた場合よりもプロトンの生成密度を一桁程度向上させることができる。この結果、プロトンP1,P2の高密度化により衝突の確率もその分向上させることができ、より容易にミュオンμを生成させることができる。
【0049】
また、互いに所定の運動エネルギーを有するプロトンP1,P2同士の衝突によりミュオンμを得ているので、その分プロトンP1,P2のエネルギーが小さくてもミュオンμを生成させることができる。ちなみに、第2の実施の形態の場合は、ターゲット44にレーザー光L1を照射することで停止しているプロトンPに運動エネルギーを与えてターゲット44から放出しているので、その分プロトンPの生成に大きなエネルギーを要する。
【0050】
一方、この場合のプロトンPのエネルギーは、第2の実施例と同様に、100MeV程度であれば良い。プロトンPのエネルギーが100MeV程度の場合、1MeV程度のミュオンμが生成される。この程度のミュオンμであれば、レーザー航跡場加速装置100で100〜1000倍程度にまで加速することが可能であるので、巨大物体の探査等に充分適用できると考えられる。
【0051】
<第4の実施例>
図6は本発明の第4の実施例に係るミュオン生成装置を示すブロック線図である。同図に示すように、本例に係るミュオン生成装置IVは、2台のレーザー装置211,212とターゲット451とからなる。ここで、レーザー装置211,212は、一本の直線に沿うレーザー光L2,L3を相対向する左右両側から相互に逆向きにそれぞれ照射する。ターゲット451は、各レーザー装置211,212の間で両者の中央に配設されてレーザー装置211,212からそれぞれ照射されたレーザー光L2,L3によりその内部にプロトンP1,P2を生成させるとともに生成されたプロトンP1,P2を衝突させてミュオンμを生成させる。この場合のプロトンP1,P2のエネルギーは100MeV程度であれば良い。プロトンP1,P2のエネルギーが100MeV程度であれば1MeV程度のミュオンμが生成される。この程度のミュオンμであれば、レーザー航跡場加速装置100で100〜1000倍程度にまで加速することが可能であるので、巨大物体の探査等に充分適用できると考えられる。
【0052】
本例におけるターゲット451としては第2の実施例におけるコンバーター45と同様に、金属や、O,Fを含むプラスチック等の高密度(イオン密度が1022〜1023cm−3)物質で好適に形成することができる。また、厚さは数μm程度の薄膜で好適に形成することができる。
【0053】
本例によれば、ターゲット451の相対向する各面にレーザー光L2,L3が照射されることによりターゲット451内でプロトンP1,P2が生成され、生成されたプロトンP1,P2同士がターゲット451内で衝突することでミュオンμが生成される。
【0054】
ここで、本例におけるミュオンμの生成は、薄膜で形成することができるターゲット451の内部に生成されるプロトンP1,P2の衝突を利用しているため、高い確率でプロトンP1,P2同士を衝突させることができる。この結果、ターゲット451である高エネルギー粒子発生部のコンパクト化を図り得るばかりでなく、ミュオンμの生成確率も向上させることが可能になる。
【0055】
また、第3の実施例におけるターゲット441,442で得るプロトンP1,P2を衝突させるためのプロトン伝送制御よりも、本例のようにレーザー光L2,L3をターゲット451に照射させるためのレーザー光伝送制御のほうがはるかに行い易い。
【0056】
<他の実施例>
上記第3および第4の実施例においてはレーザー装置211,212と、2台のレーザー装置を用いたが、これに限るものではない。相対向するターゲット441,442の両面またはターゲット451にそれぞれレーザー光L2,L3が照射されるような構成になっていれば良い。したがって、一台のレーザー装置から照射したレーザー光を途中で分岐させてレーザー光L2,L3が形成されるような構成でも構わない。また、入射角度は必ずしも180°でなくても良い。
【0057】
さらに、各ミュオン生成装置I〜IVは同様の構成で、他の素粒子、例えば荷電パイ中間子、荷電K中間子の生成装置としても適用し得る。
【0058】
なお、上記実施の形態は、ミュオン生成装置と粒子加速装置とを組み合わせた場合であるが、ミュオン生成装置I〜IVは単独で利用することもできる。この場合の構成および作用効果は次の通りである。
【0059】
ミュオン生成装置Iは、
レーザー光を照射するレーザー装置と、
電子を生成するため前記レーザー光で照射されるターゲットと、
前記電子の衝突によりミュオンを生成するコンバーターとを有することを特徴とする。
【0060】
本態様によれば、レーザー装置、電子を生成するターゲットおよびコンバーターでミュオンを生成させることができるので、可搬性を備えた小型の装置を容易に構成することができる。
【0061】
この場合の電子Eのエネルギーは6〜8GeV以上が望ましい。電子Eのエネルギーが6〜8GeVの場合、100MeV程度のミュオンμが生成される。この程度のミュオンμであれば、巨大物体の探査等に充分適用できると考えられる。
【0062】
ミュオン生成装置IIは、
レーザー光を照射するレーザー装置と、
プロトンを生成するため前記レーザー光で照射されるターゲットと、
前記プロトンの衝突によりミュオンを生成するコンバーターとを有することを特徴とする。
【0063】
この場合のプロトンPのエネルギーは1GeV以上が望ましい。プロトンPのエネルギーが1GeV以上の場合、100MeV程度のミュオンμが生成される。この程度のミュオンμであれば、巨大物体の探査等に充分適用できると考えられる。
【0064】
本態様によれば、レーザー装置、プロトンを生成させるターゲットおよびコンバーターでミュオンを生成させることができるので、可搬性を備えた小型の装置を容易に構成することができる。
【0065】
ミュオン生成装置IIIは、
レーザー光を相対向する両側から相互に逆向きに照射するレーザー装置と、
各レーザー光の光路上に配設され、照射されたレーザー光によりプロトンをそれぞれ生成させるとともに生成されたプロトンを衝突させてミュオンを生成させる相対向する一対のターゲットとを有することを特徴とするレーザー光によるミュオン生成装置にある。
【0066】
本態様によれば、相対向する一対のターゲットにレーザー光が照射されることにより生成されたプロトン同士が衝突することでミュオンが生成される。すなわち、レーザー装置とプロトンコライダーを形成する一対のターゲットとで所定のミュオン生成装置を構築することができるので、上記態様と同様に、可搬性を備えた小型の装置とすることができる。
【0067】
ここで、プロトンを生成させるレーザー光の口径は光学系により十μm以下にまで絞り込むことができ、且つフェムト秒(fs)のオーダーまで短パルス化することで高エネルギー強度のレーザー光を照射することができるので、粒子加速器を用いた場合よりもプロトンの生成密度を一桁程度向上させることができる。この結果、プロトンの高密度化により衝突の確率も向上させることができ、より容易にミュオンを生成させることができる。また、互いに所定の運動エネルギーを有するプロトン同士の衝突によりミュオンを得ているので、プロトンのエネルギーが小さくてもミュオンを生成させることができる。
【0068】
この場合のプロトンPのエネルギーは1GeV以上が望ましい。プロトンPのエネルギーが1GeV以上の場合、100MeV程度のミュオンμが生成される。この程度のミュオンμであれば、巨大物体の探査等に充分適用できると考えられる。
【0069】
ミュオン生成装置IVは、
相対向する両側からレーザー光を相互に逆向きに照射するレーザー装置と、
各レーザー光の光路上に配設され、相対向する面にそれぞれ照射されたレーザー光によりその内部にプロトンを生成させるとともに生成されたプロトンを衝突させてミュオンを生成させるターゲットとを有することを特徴とする。
【0070】
本態様によれば、ターゲットの相対向する各面にレーザー光が照射されることによりターゲット内でプロトンが生成され、生成されたプロトン同士がターゲット内で衝突することでミュオンが生成される。すなわち、プロトンコライダーを形成してミュオンを人工的に生成させることができる。本形態でもレーザー装置とターゲットとで所定のミュオン生成装置を構築しているので、可搬性を備えた小型の装置とすることができる。
【0071】
ここで、本態様におけるミュオンの生成は、一つのターゲットの内部に生成されるプロトンのターゲットの内部における衝突を利用しているため、高い確率でプロトン同士を衝突させることができる。この結果、その分ミュオンの生成確率も高くすることが可能になる。
【0072】
この場合のプロトンPのエネルギーは1GeV以上が望ましい。プロトンPのエネルギーが1GeV以上の場合、100MeV程度のミュオンμが生成される。
【0073】
これらのミュオン生成装置IないしIVとを組み合わせる加速器は必ずしも多段でなくても良い。
【0074】
上述の如き、単体のミュオン生成装置I〜IVではレーザー光の照射によりミュオンを生成させているので、従来の粒子加速器に較べて飛躍的に装置の小型化を図ることができる。この結果、船舶や車両に積載した状態で任意の場所に搬送することが可能になる。すなわち、人工的なミュオンの生成を任意の場所で簡易に行わせることができる。この結果、例えば火山等の巨大物体の内部構造の解析、海底探査等、ミュオンの透過性を利用した応用範囲に適確に適用し得るシステムの構築を容易に行うことができる。
【0075】
なお、上記第2〜第4の実施例および他の実施例においては、ミュオンμの生成にプロトンP,P1,P2の衝突を利用したが、一般に高エネルギーをもつイオンであれば、同様の衝突によりミュオンμを生成させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、ミュオン等、質量が大きい短寿命素粒子の加速し、その透過性を利用する大型構造物の探査等の産業分野に好適に適用し得る。
【符号の説明】
【0077】
I,II,III,IV ミュオン生成装置
1,21,211,212 レーザー装置
2 ミラー
3 ガスジェット発生装置
3A 高圧ガス噴射領域
3B 低圧ガス噴射領域
3C 高圧ガス
3D 低圧ガス
22,44,441,442,451 ターゲット
23,45 コンバーター
100 レーザー航跡場加速装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光の照射によりプラズマ化されたガスの中に、加速対象である粒子を入射することによりレーザー航跡場加速法により前記粒子を加速する粒子加速方法であって、
前記粒子の入射側を基準にプラズマ電子密度が高いガスから順にプラズマ電子密度が低いガスに向かって前記粒子を複数種類のプラズマ電子密度のガスを通過させて順次加速することを特徴とする粒子加速方法。
【請求項2】
レーザー光の照射によりプラズマ化されたガスの中に、加速対象である粒子を入射することによりレーザー航跡場加速法により前記粒子を加速する粒子加速装置であって、
前記粒子の入射側を基準にプラズマ電子密度が高いガスを噴射させるガス噴射領域からプラズマ電子密度が低いガスを噴射させるガス噴射領域に向け、前記粒子の進行方向に沿って順に複数の前記ガス噴射領域を並設した多段加速のガスジェット発生装置と、
前記各ガス噴射領域で噴射されるガスをプラズマ化するレーザー光を照射するためのレーザー装置と、
前記粒子の進行方向に前記レーザー装置から照射するレーザー光の光軸が一致するように前記レーザー光の光路を調整する光路調整手段とを有することを特徴とする粒子加速装置。
【請求項3】
請求項2に記載する粒子加速装置と、
レーザー光の照射によりミュオンを生成させるレーザー光によるミュオン生成装置とを組み合わせて前記ミュオンを前記粒子加速装置で加速するように構成したことを特徴とするミュオン生成・加速システム。
【請求項4】
請求項3に記載するミュオン生成装置は、
レーザー光を照射するレーザー装置と、
電子を生成するため前記レーザー光で照射されるターゲットと、
前記電子の衝突によりミュオンを生成するコンバーターとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システム。
【請求項5】
請求項3に記載するミュオン生成装置は、
レーザー光を照射するレーザー装置と、
イオンを生成するため前記レーザー光で照射されるターゲットと、
前記イオンの衝突によりミュオンを生成するコンバーターとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システム。
【請求項6】
請求項3に記載するミュオン生成装置は、
レーザー光を相対向する両側から相互に逆向きに照射するレーザー装置と、
各レーザー光の光路上に配設され、照射されたレーザー光によりイオンをそれぞれ生成させるとともに生成されたイオンを衝突させてミュオンを生成させる相対向する一対のターゲットとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システム。
【請求項7】
請求項3に記載するミュオン生成装置は、
相対向する両側からレーザー光を相互に逆向きに照射するレーザー装置と、
各レーザー光の光路上に配設され、相対向する面にそれぞれ照射されたレーザー光によりその内部にイオンを生成させるとともに生成されたイオンを衝突させてミュオンを生成させるターゲットとを有することを特徴とするミュオン生成・加速システム。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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