説明

粒子密度測定プローブ及び粒子密度測定装置

【課題】プラズマの状態を乱すことなく、粒子密度を正確に測定できるようにすること。
【解決手段】プラズマ雰囲気の原子又は分子密度を吸光分光により測定する粒子密度測定プローブである。プラズマ雰囲気に設けられる円柱状の導光体20であって、その先端部13に、導光体を伝搬した光を反射する反射板14と、その反射板の手前に、導光体の長手方向に垂直な断面において一部の壁面が欠落した部分が長手方向に所定長だけ形成され、この部分を通過する光とプラズマ雰囲気の原子又は分子とが接触可能にしたプラズマ導入部15を有する。光伝搬体32は、プラズマ導入部15の手前に位置し側壁による全反射により光を軸方向に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ雰囲気の原子又は分子などの粒子の密度を測定するプローブ及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原料ガスをラジカル化して被処理体に原料ガス成分の薄膜を成膜したり、被処理体をエッチング処理する場合に、これらの処理を精密に制御するためには、プラズマ雰囲気のラジカルなどの原子密度を測定して、プラズマの発生を制御することが必要である。このためには、光をプラズマ雰囲気に照射して、この光の吸光特性から、原子密度を測定することが行われている。
【0003】
原子密度を測定する装置としては、下記特許文献1に記載の装置が知られている。その装置によると、筒状体の先端部にラジカルを導入する空洞部と、その先に放電光源を設け、この光源からの光を空洞部を通過させて、根元に設けた分光器で分光分析するものである。この装置では、管状体の内部にレンズを設けて、光を管状体の内部で直線状に進行させるものである。また、管状体の先端の反射板に対向するように、管状体の根元に放電光源を設け、管状体の先端に設けられた空洞部にラジカルを導入して、光をラジカルを通過させて反射板で反射させ、管状体の根元に設けられたハーフミラーで90度方向に反射させて、光源とは90度の角度を成す位置に分光器を設けたものも開示されている。この装置においても、管状体の内部にハーフミラーが設けられ、管状体の軸に沿って、光は直線状に進行させるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−354055
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の装置は、いずれも、管状体は光を導くものではなく、先端に設けた放電光源や反射板を支持し、ラジカルを導入する空洞部を反応装置の外部からプラズマ雰囲気中に突出させる筐体を役割を果たしているに過ぎない。また、管状体の内部にはレンズやハーフミラーが存在しており、必然的に、管状体の径が大きくなるという問題がある。この結果、プラズマ雰囲気の状態を、この管状体が乱すことになり、管状体が存在しない時の真のプラズマ雰囲気におけるラジカル密度を正確に測定することはできなかった。また、この管状体を移動させて、プラズマ雰囲気中のラジカル密度分布を測定する場合においても、管状体が太いために、プラズマの状態を乱すことになり、正確なラジカル密度分布を測定できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した従来の欠点を解決するために発明されたものであり、その目的は、プラズマ雰囲気の状態を乱すことがない原子密度を測定する小型のプローブと、そのプローブを用いた原子密度測定装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、プラズマ雰囲気の原子又は分子の密度を吸光分光により測定する粒子密度測定プローブにおいて、プラズマ雰囲気に設けられる円柱状の導光体であって、その先端部に、導光体を伝搬した光を反射する反射板と、その反射板の手前に、導光体の長手方向に垂直な断面において一部の壁面が欠落した部分が長手方向に所定長だけ形成され、この部分を通過する光とプラズマ雰囲気の原子又は分子とが接触可能にしたプラズマ導入部と、そのプラズマ導入部の手前に位置し側壁による全反射により光を軸方向に案内する本体とを有する粒子密度測定プローブである。
【0008】
プラズマは、電子、原子ラジカル、分子ラジカル、原子イオン、分子イオンなどの中性粒子や荷電粒子の集合体である。本発明は、特定のスペクトルの吸光特性を有する粒子のプラズマ雰囲気における密度を測定するプローブ及び装置である。したがって、原子ラジカル、分子ラジカル、原子イオン、分子イオンの密度の測定を行うことができる。本発明は、先端に反射板と、その手前にプラズマを導入するプラズマ導入部とを設け、本体を全反射を利用して軸方向に光を伝搬させるようにしたことが特徴である。この結果として、プローブの径を極めて小さく構成でき、プラズマ雰囲気に挿入して、プラズマの状態を乱すことなく、プラズマ雰囲気の粒子密度分布を正確に測定することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、導光体の本体は、内面に反射膜が形成された中空管状体から成り、この反射膜による全反射を用いて光を軸方向に導くことを特徴とする。この発明では、本体を管状体で構成し、その内壁に反射膜を形成して、この反射膜による全反射を用いて、光を軸方向に進行させるようにしたものである。この結果、本体の径を小さくでき、プラズマの状態を乱すことなく、プラズマ雰囲気における粒子密度分布を正確に測定することができる。この中空管状体の内直径は、2mmφ以下が望ましい。さらに望ましくは、1mmφ以下である。このようにプローブを細く構成できるので、プラズマの状態を乱すことなく、粒子密度を正確に測定することができる。反射膜は、アルミニウム、金、銀など、反射率の高い金属を蒸着して形成する。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、導光体の本体は、光を導くコアと、このコアの屈折率よりも小さい屈折率を有したクラッドとから成るファイバーであって、コアとクラッドとの界面で全反射させて、光を軸方向に導くことを特徴とする。この発明では、本体をファイバーとして、クラッドの壁面で全反射をさせて、軸方向に光を進行させるようにしたことが特徴である。この結果、本体の径を小さくでき、プラズマの状態を乱すことなく、プラズマ雰囲気における粒子密度分布を正確に測定することができる。ファイバーのコアの直径は、2mmφ以下が望ましい。さらに望ましくは、1mmφ以下である。このようにプローブを細く構成できるので、プラズマの状態を乱すことなく、粒子密度を正確に測定することができる。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3の何れかの発明において、導光体は、光を伝搬する光伝搬体と、その光伝搬体を外周から支持する円筒状の支持体とから成り、プラズマ導入部は、支持体の長手方向に垂直な断面において一部の壁面が欠落し、光伝搬体が存在しない部分が長手方向に所定長だけ形成されたものであることを特徴とする。すなわち、光伝搬体を外周から支持する円筒状の支持体を設けることで、その支持体の先端部に、壁面が欠落し、光伝搬体が存在しない領域であって、プラズマを導入できるプラズマ導入部が形成されている。このプラズマ導入部の軸方向の長さを変化させることで、吸光量を調整することができる。すなわち、粒子密度が高い場合には、このプラズマ導入部の長さを短くすることで、吸光に関与する粒子数を減少させることで、光吸収の飽和を防止できる。また、粒子密度が低い場合には、このプラズマ導入部の長さを長くすることで、導入する粒子数を増大させて、測定感度を向上させることができる。この構成では、プローブの外径は、光伝搬体の外径と支持体の肉厚の和となる。光伝搬体の外径を2.5mmφ以下とし、支持体の肉厚を1mmとすれば、プローブの外径は2.7mmφ以下が実現できる。また、光伝搬体の外径を1.5mmφ以下とすれば、プローブの外径は、1.7mmφ以下となり、プラズマ雰囲気の状態を乱すことなく、粒子密度を正確に測定することが可能となる。プローブの外径は、プラブマの状態を乱さないためには、1〜2.5mmφの範囲で使用することが望ましい。本発明によると、この範囲が実現できる。
【0012】
第5の発明は、第1乃至第3の何れかの発明において、粒子密度測定プローブと、
本体の、反射板の設置側とは反対側に位置し、光を入射させると共に反射板からの反射光を出射させる入出力端面に光を入射させる光学系であって、光源と、この光源からの光を平行光線とする第1レンズと、この第1レンズを通過した光を入出力端面に集光させる第2レンズと、第2レンズを通過した光を入出力端面に反射させ、入出力端面から出射した光を分光器に向けて透過させ、角度調整可能なハーフミラーと、光源と第1レンズとの相対距離を変更する移動機構とを有することを特徴とする。
【0013】
この装置では、柱状の粒子密度測定プローブを雰囲気を生成する反応装置の外部から、プラズマ雰囲気中に挿入するだけで、粒子密度を測定することができる。粒子密度測定プローブ以外の光学系は、反応装置の外部に設けられる。径の細い粒子密度測定プローブを用いることで、プラズマの状態を乱すことなく、粒子密度の空間分布を精度良く測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粒子密度測定プローブは、直径をたとえば、2.7mm以下、望ましくは、1.7mm以下にすることができるので、プラズマの状態を乱すことなく、粒子密度の空間分布を精度良く測定することができる。また、プラズマ導入部の軸方向の長さを調整することで、測定感度を最大にして測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、その実施例から把握される技術的思想が、発明の範囲である。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例に係る粒子密度測定プローブ10の構成を示している。(a)は、上面図であり、(b)は、その上面図における軸方向b−bに沿った断面図である。導光体20は、筒状の光伝搬体32と、その光伝搬体32の外周を覆う、筒状の支持体12、その支持体の先端に設けられた反射板14、反射板14の手前に設けられ、プラズマを導入するプラズマ導入部15、そのプラズマ導入部15よりも光入射側である本体30とから構成されている。
【0017】
筒状の支持体12は、プラズマ雰囲気に対する耐熱性を持たせるために、セラミックスで構成されている。もちろん、支持体12は、ステンレスで構成しても良い。内径は1.7mmφ、外径は2.7mmφ、肉厚が0.5mm、長さは300mmである。この支持体12の先端部は、軸に垂直な図2の断面図に示すように、壁面が一部欠落して、プラズマを導入できるプラズマ導入部15が形成されている。プラズマ導入部15の上部が壁面がなく窓16を構成している。
【0018】
プラズマ導入部15に続いて、支持体12の先端に設けられた反射板14は、石英から成る直径1.7mmφ、厚さ0.5mmの円板にAlとMgFを蒸着して形成されている。本体30は、支持体20と、その中に配設された光伝搬体32とから成り、中空管状体を構成している。
【0019】
光伝搬体32は、中空の筒状体であり、中空ガラスで構成されている。この光伝搬体32は、内径1mmφ、外径1.6mmφ、肉厚0.3mmである。光伝搬体32は外径を1mmφ以下に構成することも可能である。この光伝搬体32の内面には、アルミニウムが被覆されている。また、光伝搬体32の先端は、外径1.6mmφ、厚さ1mmのMgFから成る円板状の窓材34が接合されている。これにより、光伝搬体32の円筒内部空間は、外部と遮断されている。
【0020】
以上が粒子密度測定プローブ10の構成である。次に、この粒子密度測定プローブ10の入出力端面36に光を入射させる光学系について説明する。図4に示すように、この光学系は、プラズマを生成する反応装置の外部に設けられている。光学系の光路は、筐体66内に設けられている。この筐体66の内部は、真空に排気されている。したがって、光伝搬体32の中空の内部も、真空に排気されており、この内部は、プラズマ導入部15に対して負圧になっている。このように、光路を真空にすることで、真空紫外光の減衰がないようにしている。
【0021】
XYZ軸方向に設けられたボールネジ52で、設置台53をXYZ軸方向に移動可能にした移動機構51が設けられている。この移動機構51の設置台53の上に光源54が配設されている。この光源54から放射された光は、第1レンズ55、それに続く第2レンズ56に入射する。第1レンズ55は、焦点距離が50mmで直径20mmφであり、光源54からの光を平行光線にするレンズである。第2レンズ56は、焦点距離が250mmで直径20mmφであり、第1レンズ55を通過した平行光線を、光伝搬体36の入出力端面36に、光線を絞って、光軸に対する入射角を1度以下にして、入射させるためのレンズである。
【0022】
第2レンズ56から入出力端面36までの光路には、ハーフミラー60が設けられている。ハーフミラー60は、そのミラーの回転角と傾斜角と空間上の位置とを調整できる位置及び角度調整装置62により、ハーフミラー60の光路上の位置及び反射角や透過角を可変できるように、ミラーの回転角及び傾斜角が調整されるようになっている。この角度調整装置62により、ハーフミラー60の位置、回転角及び傾斜角を調整することで、第2レンズ56を通過した光源56から光は、ハーフミラー60で90度方向に反射されて、光伝搬体32の入出力端面36に対する入射位置や入射角が、正確に調整できる。ハーフミラー60は、図3に示すように、MgFから成る円板の上にAlをドット状に蒸着したものである。または、Alを一様に円板に蒸着して、Alが形成されていない微細な孔をエッチングにより形成しても良い。この構成により、ハーフミラーを構成することができる。
【0023】
反射板14で反射した光は、ハーフミラー60を透過して、第3レンズ57に入射するようになっている。この第3レンズ57は、XYZ軸方向移動機構51と同一の装置58により、その空間上の位置が調整可能になっている。第3レンズ57は、焦点距離56mm、直径15mmφである。そして、第3レンズ57を通過した光は、分光装置64に入射する。第3レンズ57は、分光装置64のスリット65への反射光の入射位置、光線の径を調整するものである。これにより、光源54の波長の相違による焦点距離の波長依存性を補正することができる。
【0024】
このような光学系を用いて、XYZ方向移動機構51、位置及び角度調整装置62を調整することで、光源54の光を光伝搬体32の入出力端面36から、光線を絞り、且つ、光軸に対する入射角を1度以下にして、光伝搬体32の光軸に沿って、入射させることができる。これにより、光は、光伝搬体32の中空管体の内壁に形成されている反射膜で、全反射しながら、光軸方向に沿って伝搬し、窓材34からプラズマ導入部15に出射される。この光は、この領域で特定の粒子により吸収され、反射板14で反射されて、再度、特定の粒子により吸収され、窓材34から光伝搬体32に入射する。そして、全反射により光伝搬体32を光軸方向に伝搬して、入出力端面36からハーフミラー60に向けて出射される。その光は、ハーフミラー60を直進方向に透過して、第3レンズ57を通過して、スリット65を介して分光装置64に入射する。この分光装置64により、スペクトル分析されて、吸光度が測定される。
【0025】
吸光度は、プラズマ導入領域15を真空状態にして、光源54からの光を同一に調整された光学系を用いて、反射板14からの反射光を、分光装置64で分光した時の強度に対する比率で求められる。また、光源54の光の波長は、測定する粒子で吸収される波長が用いられている。たとえば、Nラジカルの密度を測定するのであれば、光源54は窒素ガスを放電させて得られる光、Hラジカルの密度を測定するのであれば、光源54は水素ガスを放電させて得られる光を用いることで、同一原子の発光準位による光吸収を利用して、吸光度を測定することができる。
【0026】
まず、Hラジカル密度を測定するのであれば、プラズマ発光のHラジカル発光のスペクトルからHラジカルの自発光強度を測定する。次に、光源54からの光を同一プラズマ中に照射して、プラズマを透過した光の強度から透過光強度を測定する。透過光強度から自発光強度を減算すれば、Hラジカルによる吸収された後の真の透過光強度を求めることができる。そして、光源54の光源強度から真の透過光強度を減算すれば、Hラジカルによる吸収光度が求められ、これと光源強度との比からHラジカルによる吸収率を測定することができる。一方、Hラジカルに近いスペクトルを有するN原子からの発光を用いて、同様な方法により、背景吸収率を求める。次に、プラズマによる光の吸収は、既知の光路長L(吸収長)と吸収係数との積の指数関数で減少する。この関数を用いて、背景吸収率と吸収長Lとから、背景吸収係数を求める。なお、吸収長Lは、プラズマ導入領域15の軸方向の長さの2倍である。次に、Hラジカル中を通過する光は、Hラジカルによる吸収係数と背景吸収係数との和と吸収長Lとの積の指数関数で減衰する。この減衰関数の値、吸収率を与える。したがって、測定された吸収率と、この減衰関数とを用いて、Hラジカルによる吸収係数が求まる。この吸収係数とHラジカルの密度とは、比例関係にあるから、この吸収係数から、Hラジカルの密度を測定することができる。この方法は、公知であり、特開2004−354055号に記載されているので、詳述を省略する。
【0027】
次に、本粒子密度測定装置を用いて、実際に、粒子密度を測定した。実際の実験装置は、図5に示すものである。反応室70に、それに繋がるラジカル発生室71で、窒素ガスの高周波放電によりプラズマを発生させて、Nラジカルを反応室70に導いた。イオン種は、公知のようにメッシュで除去して、Nラジカルのみを反応室70に導いた。粒子密度測定プローブ10のXYZ方向の空間位置を移動させながら、Nラジカル密度を測定した。なお、粒子密度測定プローブ10及びその光学系は、筐体内部に設置されており、内部は、真空に排気されている。すなわち、真空紫外光を減衰なく伝搬させることができるように構成されている。その測定結果を図6に示す。横軸はラジカル源からの距離である。このように、プラズマの状態を乱すことなく、Nラジカル密度分布を精度良く測定することができた。
【0028】
また、反応室の圧力を変化させて、Nラジカル密度を測定した。結果を図7に示す。同様に、水素ガスの放電により得られるプラズマからHラジカルだけを反応室に導き、反応室の圧力を変化させて、Hラジカル密度を測定した。結果を図8に示す。同様に、得ることができる。酸素ガスの放電により得られるプラズマからOラジカルだけを反応室に導き、反応室の圧力を変化させて、Oラジカル密度を測定した。結果を図8に示す。これらの測定においては、光源54には、それぞれ、窒素ガス、水素ガス、酸素ガスを放電させて得られる光を用いた。このように、本発明の粒子密度測定プローブ及び粒子密度測定装置によれば、プラズマの状態を乱すことなく、粒子密度の空間分布を正確に測定することができる。
【0029】
〔変形例〕
光伝搬体32の先端に設けられた窓材34は、MgFから成る円板状に構成している。この場合には、この窓材34に外面にプラズマ粒子が付着して、検出光の透光性が低下するので、窓材34の清掃を必要とする。そこで、この窓材34を、図10に示すように、厚さ1mm、直径1.6mmφのガラス板35に、直径20μmφ程度の孔を多数設けたキャピラリープレートとする。たとえば、孔の総合面積のガラス板の全面積に対する割合(開口率)を50%程度とする。そして、筐体66の内部を真空引きして、光伝搬対32の内部空間を真空にする。光源54からの光は、ガラスで吸収されるので、この孔37のみを通過し、孔37の存在しないガラス板を通過しない。したがって、プラズマ粒子が、ガラス板35の外面に付着するが、孔37には、付着しない。したがって、測定の経過と共に、光の透過率が減衰することがないので、清掃などを頻繁に行うことなく、精度の高い測定が可能となる。光伝搬体32の中空内部は、真空であるので、孔37をプラズマ粒子が通過するとしても、その孔37の内側面には、堆積し難い。したがって、孔37の内側面にプラズマ粒子が付着して、孔37を直径が小さくなるまで、測定を精度良くすることができる。また、この孔37でラジカルが消滅し、光の吸収長Lをガラス板35と反射板14との間の距離の2倍に正確に一定に保持することが可能となるため、測定精度が向上する。
【0030】
また、窓材34やガラス板35を設けずに、光伝搬体32の先端を開口させておいても良い。この場合も、光伝搬体32の中空内部は真空引きされているので、そのコンダクタンスのために、プラズマ粒子は内部空間に入り難い。このため、吸収長Lを、上記のように一定にすることができる。
【0031】
さらに、反射板14においても、プラズマ粒子が付着して、その反射率が低下する。このために、図10に示したガラス板と同様に、厚さ1mm程度のガラス板に、同様な構成の直径(20μm程度)の小さい多数の孔を有した板を、反射板14の前に設置する。この場合に、孔の長さ/直径(アスペクト比)を大きくすることで、ラジカルを、孔の内壁に付着させて、反射板14の面には到達させないようにすることができる。このため、反射板14の反射率を低減させることがないので、清掃なく使用できる時間を長期化することができる。
【0032】
また、図11(b)に示すように、支持体12において、プラズマ導入部15の両端、すなわち、窓材34と反射板14の側に、長さ5mm程度のリング状のひさし121、122を、それぞれ、設けても良い。これによっても、窓材34や反射板14に、プラズマ粒子が付着することが防止できる。
【0033】
また、反射板14は、図11(b)に示すように、凹面鏡141にしても良い。これにより、光伝搬体32の端面(窓材34)から出射して発散した光を凹面鏡141で反射させて、光伝搬体32の端面(窓材34)に集光して、損失を小さくして、入射させることができる。これにより、精度の高い測定が可能となる。
【実施例2】
【0034】
本実施例は、光伝搬体を、中空管状体ではなく、図12に示すように、コア81とそのコア81より屈折率の小さなクラッド82とから成るガラスファイバー80で構成している。このガラスファイバー80が、実施例1と同一の支持体12の中に挿入されている。支持体12の先端に配設された反射板14、その手前のプラズマ導入部15の構成は実施例1と同一である。コア81の外径は0.7mmφ、クラッドの外径は1.1mmφ、支持体12の肉厚は0.2mmの硬質ガラスで構成できる。これにより、プローブの外径は、1.5mmとすることができる。このプローブを用いても、プラズマ状態を乱すことなく、粒子密度の空間分布を正確に求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、プラズマ処理装置やプラズマを用いた成膜、エッチングを精度良く実行するためにプラズマ雰囲気の粒子密度を正確に測定することに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の具体的な一実施例に係る粒子密度測定プローブを示した構成図。
【図2】粒子測定プローブの支持体の断面図。
【図3】ハーフミラーの構成を示した平面図。
【図4】本実施例に係る粒子密度測定装置を示した構成図。
【図5】原子ラジカル密度の測定に用いた反応装置、粒子密度測定プローブ及び粒子密度測定装置を示した構成図。
【図6】同反応装置内部の原子ラジカル密度の空間分布を測定した特性図。
【図7】プラズマ雰囲気の圧力と窒素ラジカル密度との関係の測定した特性図。
【図8】プラズマ雰囲気の圧力と水素ラジカル密度との関係の測定した特性図。
【図9】プラズマ雰囲気の圧力と酸素ラジカル密度との関係を測定した特性図。
【図10】本実施例に係る粒子密度測定プローブにおける光伝搬体の端面の窓材の他の例を示した構成図。
【図11】本実施例に係る粒子密度測定プローブにおける支持体の他の例を示した構成図。
【図12】実施例2に係る粒子密度測定プローブの構成図。
【符号の説明】
【0037】
10…粒子密度測定プローブ
12…支持体
14…反射板
15…プラズマ導入部
30…本体
20…導光体
32…光伝搬体
16…窓
36…入出力端面
34…窓材
60…ハーフミラー
121,122…ひさし
141…凹面鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ雰囲気の原子又は分子密度を吸光分光により測定する粒子密度測定プローブにおいて、
前記プラズマ雰囲気に設けられる円柱状の導光体であって、その先端部に、前記導光体を伝搬した光を反射する反射板と、その反射板の手前に、前記導光体の長手方向に垂直な断面において一部の壁面が欠落した部分が長手方向に所定長だけ形成され、この部分を通過する前記光と前記プラズマ雰囲気の原子又は分子とが接触可能にしたプラズマ導入部と、そのプラズマ導入部の手前に位置し側壁による全反射により光を軸方向に案内する本体と
を有する粒子密度測定プローブ。
【請求項2】
前記導光体の前記本体は、内面に反射膜が形成された中空管状体から成り、この反射膜による全反射を用いて光を軸方向に導くことを特徴とする請求項1に記載の粒子密測定プローブ。
【請求項3】
前記導光体の前記本体は、光を導くコアと、このコアの屈折率よりも小さい屈折率を有したクラッドとから成るファイバーであって、コアとクラッドとの界面で全反射させて、光を軸方向に導くことを特徴とする請求項1に記載の粒子密度測定プローブ。
【請求項4】
前記導光体は、光を伝搬する光伝搬体と、その光伝搬体を外周から支持する円筒状の支持体とから成り、前記プラズマ導入部は、前記支持体の長手方向に垂直な断面において一部の壁面が欠落し、前記光伝搬体が存在しない部分が長手方向に所定長だけ形成されたものである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の粒子密度測定プローブ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の粒子密度測定プローブと、
前記本体の、前記反射板の設置側とは反対側に位置し、光を入射させると共に前記反射板からの反射光を出射させる入出力端面に光を入射させる光学系であって、光源と、この光源からの光を平行光線とする第1レンズと、該第1レンズを通過した光を前記入出力端面に集光させる第2レンズと、第2レンズを通過した光を前記入出力端面に反射させ、前記入出力端面から出射した光を分光器に向けて透過させ、角度調整可能なハーフミラーと、前記光源と前記第1レンズとの相対距離を変更する移動機構と、
を有することを特徴とする粒子密度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−93364(P2012−93364A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266282(P2011−266282)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2007−78267(P2007−78267)の分割
【原出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年11月29日 The Institute of Electrical Engineers of Japan発行の「PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON DRY PROCESS」に発表
【出願人】(304036008)NUエコ・エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(501111902)株式会社片桐エンジニアリング (11)
【Fターム(参考)】