粒子強化重合体組成物
粒子で強化された重合体組成物は、基礎重合体配合物および多数の強化用粒子を含有する。特定の態様における基礎重合体配合物は、ビスマレイミドまたは高温で使用可能な他の重合体樹脂を含有する。1番目の多数の強化用粒子はコアシェルゴムを含有していてもよい。2番目の多数の強化用粒子は多様な重合体組成物から選択可能であり、それにはポリイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンオキサイドが含まれる。前記コアシェルゴムの濃度を高くすると当該組成物の熱特性、例えばガラス転移温度などが維持されながら当該組成物が示すじん性が向上し得ることが分かる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、高温使用に適した重合体組成物、特に多数の強化用粒子を含有して成る粒子強化重合体組成物、およびこれから生じさせたプレプレグおよび複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
積層重合体マトリクス複合構造物(PMC)が数多くの用途で幅広く用いられるようになってきている。例えば、複合構造物は高性能航空宇宙用途で益々用いられてきている。PMCでは選択的に配向させた繊維を組み合わせてそれらを取り囲む重合体マトリクス材料の中に封じ込めている。そのような複合構造物は重量に関して良好な機械的特性(例えば強度、剛性、じん性)を示すばかりでなく幅広い使用温度範囲および製造の容易さも示すことで、それらは航空宇宙用途に良好に適する。
【0003】
大部分の重合体複合材料には、エポキシによってもたらされる幅広い温度範囲に渡る機械的特性と部品製造の容易さの良好な組み合わせが理由でエポキシ樹脂が用いられている。
【0004】
しかしながら、ある種の複合材料用途では、完成複合材料が高い熱耐久性を示すことが要求されるが、極端な環境、例えば高温用途などで用いられるPMC部品は充分な熱耐久性を示さない可能性がある。例えば、エポキシは高温に長時間さらされると有意な重量損失を示す可能性がある。現在のところ、そのような極端な環境に耐え得る費用効果的な重合体マトリクス複合材料は存在しない。
【0005】
エポキシ樹脂の能力を超える使用温度が要求される航空宇宙用途では、ビスマレイミド(BMI)などの如き重合体が受け入れられてきている。BMIの方がエポキシよりも高いガラス転移温度Tgを示しかつ熱老化中に示す重量損失の度合も相対的に低い。BMIはまたエポキシのような加工特性および高温耐久性も示す。結果として、BMI樹脂が基になった複合材料は約149から232℃の範囲内の温度で良好な機械的特性を示す。
【0006】
しかしながら、BMIが示すガラス転移温度の方がエポキシのそれよりも高いが、BMIはまた相対的に堅い。結果として、BMI複合材料が示す損傷許容性は劣りかつ温度サイクル微小亀裂に対する抵抗も劣る傾向がある。
【0007】
その上、添加剤を用いてBMIを強化する試みは相対的に成功しないことが確認されている。例えば、エポキシ組成物で典型的に用いられる強化剤、例えばカルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、ブタジエンおよびスチレン型ゴムなどはTgを低下させるか或は熱老化中の大きな重量損失を助長することが観察された。また、そのような種類のゴムは熱にさらされると有効性が低下する可能性もある。
【0008】
従って、この上に示したことが理由で、高温で長時間機能し得る丈夫な複合材料の必要性が継続して存在する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様では、高温使用に適した粒子強化重合体組成物およびプレプレグを提供する。1つの態様における重合体組成物は、重合体材料および1番目と2番目の強化用粒子を含有して成る。特定の態様における重合体材料はビスマレイミドを含有して成る。
【0010】
本プレプレグは1番目および2番目の領域を含有して成り得る。特定の態様における1番目の領域は、1番目の重合体材料および1番目の多数の粒子を含有する1番目の重合体組成物および多数の繊維を含有して成り得る一方、2番目の領域は、2番目の重合体材料および2番目の多数の粒子を含有する2番目の重合体組成物を含有して成る。さらなる態様として、また、前記1番目の多数の粒子は前記2番目の重合体組成物の中にも存在していてもよいが、但し前記1番目の多数の粒子が前記2番目の重合体材料と前記2番目の多数の粒子の間に起こる1種以上の相互作用を実質的に妨害しないことを条件とする。さらなる態様として、本プレプレグを用いて複合材料を生じさせることができる。
【0011】
1つの態様では、粒子強化重合体組成物を提供する。この組成物は、基礎重合体配合物、コアシェルゴムを含有して成る1番目の多数の粒子および2番目の多数の粒子を含有して成る。
【0012】
別の態様では、粒子強化組成物を製造する方法を提供する。この方法は、基礎重合体配合物を準備し、その基礎重合体配合物に1番目の多数の粒子(この1番目の多数の粒子はコアシェルゴムを含有して成る)を添加しそして前記基礎重合体配合物に2番目の多数の粒子を添加することを含んで成る。
【0013】
別の態様では、プレプレグを提供する。このプレプレグは1番目の領域および2番目の領域を含有して成る。前記1番目の領域は、多数の繊維および1番目の重合体組成物を含有して成る。前記1番目の重合体組成物は、前記繊維の少なくとも一部を取り囲んでいる1番目の重合体材料および前記1番目の重合体材料の中に位置する1番目の多数の粒子を含有して成る。前記2番目の領域は2番目の重合体組成物を含有して成る。前記2番目の重合体組成物は、2番目の重合体材料および前記2番目の重合体材料の中に位置する2番目の多数の粒子を含有して成る。前記1番目の多数の粒子は実質的に前記2番目の領域の中には位置しない。
【0014】
さらなる態様でもプレプレグを提供する。このプレプレグは1番目の領域と2番目の領域を含有して成る。前記1番目の領域は、多数の繊維および1番目の重合体組成物を含有して成る。前記1番目の重合体組成物は、前記繊維の少なくとも一部を取り囲んでいる1番目の重合体材料および前記1番目の重合体組成物の中に位置する1番目の多数の粒子を含有して成る。前記2番目の重合体組成物は、2番目の重合体材料、前記2番目の重合体材料の中に位置する前記1番目の多数の粒子および前記2番目の重合体材料の中に位置する2番目の多数の粒子を含有して成る。前記1番目の多数の粒子は、前記2番目の多数の粒子と前記2番目の重合体材料の間に起こる相互作用を実質的に妨害しない。
【0015】
追加的態様では、プレプレグを製造する方法を提供する。この方法は、本プレプレグの1番目の領域を生じさせそして2番目の領域を生じさせることを含んで成る。前記1番目の領域は多数の繊維および1番目の重合体組成物を含有して成る。前記1番目の重合体組成物は、前記繊維の少なくとも一部を取り囲む1番目の重合体材料および前記1番目の重合体材料の中に位置する1番目の多数の粒子を含有して成る。このような複合材料の2番目の領域は2番目の重合体組成物を含有して成り、これは、前記1番目の多数の粒子および前記2番目の重合体材料の中に位置する2番目の多数の粒子の中の少なくとも一方および2番目の重合体材料を含有して成る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、高温使用に適した粒子強化組成物の態様を示す略図である。
【図2】図2は、図1に示した重合体組成物を製造する方法の態様である。
【図3A−3B】図3A−3Bは、一次および二次強化用粒子を含有して成る繊維強化粒子強化重合体組成物の態様を示す略図であり、(A)一次強化用粒子が複合材料の繊維領域の中に存在し、(B)一次強化用粒子が複合材料の繊維および中間層領域の中に存在する。
【図4A−4B】図4A−4Bに、図3A−3Bに示した重合体複合材料を製造する方法の態様を例示する。
【図5A−5B】図5A−5Bに、図3A−3Bに示した重合体複合材料を生じさせるための装置の態様を例示する。
【図6】図6は、粒子強化BMI組成物の態様が示すじん性をCSR濃度の濃度関数としてプロットした図であり、この組成物は一次強化用コアシェルゴム(CSR)粒子および二次強化用ポリイミド粒子を含有して成る。
【図7】図7は、粒子強化BMI組成物の態様が示すガラス転移温度(Tg)をCSR濃度の関数としてプロットした図であり、この組成物は一次強化用CSR粒子および二次強化用ポリイミド粒子を含有して成る。
【図8】図8は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すじん性を二次強化用ポリイミド粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は二次強化用ポリイミド粒子を繊維層間の中間層領域の中に含有して成る。
【図9】図9は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示す衝撃後圧縮強度(CAI)を二次強化用ポリイミド粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は二次強化用ポリイミド粒子を繊維層間の中間層領域の中に含有して成る。
【図10】図10は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すじん性を一次強化用CSR粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有して成る。
【図11】図11は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すCAI強度を一次強化用CSR粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有して成る。
【図12】図12は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すじん性をCSR濃度の関数としてプロットした図であり、1番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を中間層領域の中に含有して成り(丸と実線)、2番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域と中間層領域の両方の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有して成る(四角と破線)。
【図13】図13は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すCAI強度をCSR濃度の関数としてプロットした図であり、1番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を中間層領域の中に含有して成り(丸と実線)、2番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域と中間層領域の両方の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有して成る(四角と破線)。
【図14A−14C】図14A−14Cは、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示す熱安定性をプロットした図であり、1番目の複合材料は二次ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有し、そして2番目の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有しかつ2番目の強化用ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有して成り、(A)275℃、(B)300℃、(C)350℃。
【詳細な説明】
【0017】
本明細書で用いる如き用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、ある量が示した量に近いことを表し、その量でも所望の機能が実施されるか或は所望の結果が達成される。例えば、用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、示した量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満および0.01%未満の量を指し得る。
【0018】
本明細書で用いる如き用語「室温」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには約16℃(60度F)から32℃(90度F)の範囲内の温度が含まれ得る。
【0019】
本明細書で用いる如き用語「繊維」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには複合材料の強化に適応した1種以上の繊維材料が含まれ得る。繊維が取り得る形態はホイスカ、短繊維、連続繊維、フィラメント、トウ、束、シート、層およびこれらの組み合わせであり得る。連続繊維は更に1方向、多次元(例えば二次元または三次元)、不織、織り、編み、縫合、巻きおよび編組み形態ばかりでなく渦巻きマット、フェルトマットおよび細断マット構造のいずれかであり得る。織り繊維構造物は、フィラメント数が約1000未満、フィラメント数が約3000未満、フィラメント数が約6000未満、フィラメント数が約12000未満、フィラメント数が約24000未満、フィラメント数が約48000未満、フィラメント数が約56000未満およびフィラメント数が約125000未満の多数の織トウを含有して成り得る。さらなる態様では、そのようなトウをクロストウステッチ、横糸挿入編みステッチまたは少量の樹脂、例えば熱可塑性樹脂などで適当な場所に保持してもよい。
【0020】
繊維の組成を必要に応じて変えることができる。繊維組成の態様には、これらに限定するものでないが、ガラス、炭素、アラミド、石英、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、ホウ素、ポリアミド、グラファイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、Astroquartz(商標)、Tyranno(商標)、Nextel(商標)、Nicalon(商標)およびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0021】
本明細書で用いる如き用語「硬化する」または「硬化」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、重合および/または架橋過程が含まれ得る。硬化は、これらに限定するものでないが、加熱、紫外線暴露および放射線暴露などを包含する工程で実施可能である。特定の態様では、硬化を重合体マトリクスまたは樹脂の中で起こさせてもよい。硬化前のマトリクスもしくは樹脂に更に1種以上の化合物を含有させることも可能であり、そのような化合物はほぼ室温で液体、半固体、結晶性固体およびこれらの組み合わせである。さらなる態様では、マトリクスもしくは樹脂をある程度硬化させることでそれが選択した粘着性または粘性を示すようにすることも可能である。特定の態様では、強固と硬化を単一の工程として実施してもよい。
【0022】
本明細書で用いる如き用語「強固」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、樹脂もしくはマトリクス材料が繊維内および隣接する繊維の間の空隙をなくすように流れ込む工程が含まれ得る。例えば、「強固」には、これらに限定するものでないが、マトリクスが繊維およびプレプレグの間およびそれらの中に存在する空隙の中に流れ込むこと、等々が含まれ得る。更に、「強固」を熱、真空および圧力をかけることの中の1つ以上の作用の下で起こさせることも可能である。
【0023】
本明細書で用いる如き用語「含浸」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、マトリクスもしくは樹脂材料を1本以上の繊維の間またはそれらに隣接させて導入することが含まれ得る。そのようなマトリクスもしくは樹脂が取り得る形態はフィルム、粉末、液体およびこれらの組み合わせである。熱、圧力および溶媒の中の1つ以上を加えることで含浸を助長することができる。
【0024】
本明細書で用いる如き用語「プレプレグ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、マトリクスもしくは樹脂材料による含浸を受けた繊維のシートもしくは層が含まれ得る。また、そのようなマトリクスもしくは樹脂もある程度硬化した状態で存在させてもよい。
【0025】
本明細書で用いる如き用語「レイアップ」および「プレプレグレイアップ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、互いに隣接して位置する1つ以上のプレプレグ層が含まれ得る。特定の態様では、そのようなレイアップの中のプレプレグ層を互いに関して選択した配向に位置させてもよい。例えば、プレプレグレイアップは、繊維がレイアップの最大寸法方向、例えば長さ方向などに関して0゜、90゜、選択した角度θおよびこれらの組み合わせの方向に配向している1方向繊維構造を有するプレプレグ層を含有して成り得る。更に、特定の態様では、繊維構造のいずれかの組み合わせ、例えば1方向および多次元などの組み合わせを有するプレプレグを組み合わせてプレプレグレイアップを生じさせることができることも理解され得るであろう。
【0026】
さらなる態様では、プレプレグ層が選択した配向から相対的に動かないようにする目的で、場合により、縫い合わせ材料を用いてそれらを一緒に縫い合わせることも可能である。レイアップの製造は、これらに限定するものでないが、ハンドレイアップ、自動化テープレイアップ(ATL)、最新型繊維配置(AFP)およびフィラメント巻き取りなどを包含し得る技術を用いて実施可能である。
【0027】
本開示の態様では、粒子強化重合体組成物およびそれから生じさせた繊維強化粒子強化複合材料を考察するが、それらは高温使用に適する。特別な態様における重合体組成物および複合材料はビスマレイミドを含有して成り得る。
【0028】
特定の態様における強化重合体組成物は、基礎重合体配合物および少なくとも2種類の多数の強化用粒子を含有して成り得る。例えば、そのような組成物は、1番目の多数の強化用粒子および2番目の多数の強化用粒子(また、一次および二次強化用粒子とも呼ぶ)を含有して成り得る。そのような強化用粒子は、当該重合体組成物が示す1種以上の機械的特性を向上させる熱および弾性特性を示し得る。そのような機械的特性の例には、これらに限定するものでないが、モードIの臨界歪みエネルギー解放率またはGic(じん性)が含まれ得る。その上、当該重合体組成物が示す熱特性、例えばガラス転移温度などは当該強化用粒子の存在によって実質的な影響を受けない可能性もある。
【0029】
さらなる態様では、また、重合体組成物の態様を用いて複合材料を生じさせることも可能である。そのような複合材料は繊維領域および中間層領域(繊維含有領域の間に存在)を含有して成り得る。1つの形態における繊維領域は基礎重合体配合物および2番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る一方、中間層は基礎重合体配合物および1番目および2番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る。別の形態の繊維領域は基礎重合体配合物および1番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る一方、中間層は基礎重合体配合物および1番目および2番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る。
【0030】
以下に考察するように、複合材料の中に存在させる1番目と2番目の多数の強化用粒子
の相対的な位置によってその複合材料の機械的特性が有意な影響を受け得ることが分かる。例えば、特定の態様では、1番目の多数の強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ2番目の多数の強化用粒子を中間層領域の中に存在させるとCAI強度が維持されながら当該複合材料のじん性が向上し得る。本開示の前記および他の利点を以下に詳細に考察する。
【0031】
図1に、基礎重合体配合物102、1番目の多数の強化用粒子104および2番目の多数の強化用粒子106を含有して成る強化重合体組成物100の1つの態様を示す。図2に、組成物100を生じさせるための方法200の1つの態様を示す。方法200の操作を図2に示す順とは異なる順で実施することも可能でありかつより少ないか或はより多い操作を制限無しに実施してもよいことは理解され得るであろう。
【0032】
方法200のブロック202で基礎重合体配合物102を生じさせる。1つの態様における基礎重合体配合物102は1種以上の重合体樹脂を含有して成り得る。重合体樹脂の例には、これらに限定するものでないが、ビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾオキサジンおよびシアン酸エステルが含まれ得る。あらゆる重合体樹脂の総量を重合体組成物100の総重量を基準にして約35−41重量%の範囲の濃度にしてもよい。
【0033】
1つの態様における基礎重合体配合物102は1種以上のビスマレイミド樹脂を重合体樹脂として含有して成り得る。適切なビスマレイミドの例が米国特許第4,644,039号および5,003,018号(これらは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている。重合体樹脂として用いるに適したビスマレイミドのさらなる態様には、これらに限定するものでないが、トルエンジアミンビスマレイミド(TDA−BMI)および4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン(例えばMatrimid
5292A、Huntsman Corp.)が含まれ得る。
【0034】
1つの態様における基礎重合体配合物102で用いる重合体樹脂は更にナジシミドも含有していてもよく、それはビスマレイミドと密に関係している。例えば、基礎重合体配合物102は、ビスマレイミドに加えトルエンジアミン、脂肪族アミン、メチレンジアニリン、脂肪族ジアミン、イソホロンジアミンなどのナジシミドを含有して成っていてもよい。
【0035】
追加的態様における基礎重合体配合物102は更にジ−およびポリアミンの脂肪族BMIも含有して成っていてもよい。脂肪族BMIの例には、これらに限定するものでないが、トリメチルヘキサンジアミンから生じたBMI(TMH−BMI)、ヘキサンジアミンから生じたBMI(ヘキサメチレンジアミンビスマレイミドまたはHMDA−BMI)、オクタンジアミン、デカンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンから生じたBMIが含まれ得る。そのような脂肪族BMIを重合体組成物100の総重量を基準にして約5から10重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0036】
基礎重合体配合物102の態様に更に基礎重合体樹脂の1種以上の共反応体も含有させることも可能である。特定の態様における共反応体には、o,o’−ジアリビスフェノールおよびo,o’−ジプロペニルビスフェノールまたはアリルフェノキシ、プロペニルフェノキシ、アリルフェニルおよびプロペニルフェニル末端を有するオリゴマー状化合物が含まれ得る。例にはo,o’−ジアリルビスフェノールA(例えばMatrimid 5292B、Huntsman Corp)、o,o’−ジイソプロペニルビスフェノールA、アリルエウゲノール、アルケニルフェノキシベンゾフェノンなどが含まれる。そのような共反応体化合物を重合体組成物100の総重量を基準にして約24から30重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0037】
配合物102の態様にまた1種以上の低粘度エポキシ樹脂も少量含有させることも可能である。そのようなエポキシ樹脂の例には、これらに限定するものでないが、ビスフェノールAが基になったエポキシ、ビスフェノールFが基になったエポキシまたはレゾルシノールが基になったエポキシが含まれ得る。他の例には、LeeおよびNevilleによるHandbook of Epoxy Resins(McGraw−Hill)およびMay編集のEpoxy Resins,Chemistry and Technology(Marcel Dekker、1973)(これらは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されている液状エポキシ樹脂が含まれ得る。そのようなエポキシ樹脂をBMI配合物の総重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。さらなる例として、エポキシ樹脂を重合体組成物100の総重量を基準にして約3から7重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0038】
配合物102の態様にまたこの配合物の成分の反応性を低くする1種以上の抑制剤化合物も含有させることも可能である。適切な抑制剤は当該技術分野で公知であり、本発明に更に米国特許第5,955,566号(これは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)により詳細に記述されている如き抑制剤の使用も組み込むことも可能である。具体的例には、これらに限定するものでないが、ヒドロキノン、例えば1,4−ナフトキノンの水化物などが含まれ得る。そのような抑制剤化合物を重合体組成物100の総重量を基準にして約0.5から1重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0039】
追加的に、配合物102の態様に当該組成物の粘度を調整するに適した1種以上の流れ調節剤も含有させることも可能である。そのような流れ調節剤には熱可塑性プラスチックが含まれ得る。そのような熱可塑性プラスチックの例には、これらに限定するものでないが、ポリイミドが含まれ得る。そのような流れ調節剤を重合体組成物100の総重量を基準にして約0.5から3重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0040】
この上で考察した成分に加えて組成物100に更に他の非反応性システム補助成分も含有させることも可能であり、そのような成分には、これらに限定するものでないが、可塑剤、充填剤、顔料、他の熱可塑性強化剤、他の流動調節剤、粘着付与剤などが含まれる。
【0041】
方法200のブロック204および206で重合体組成物100に1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106を添加する。1つの態様で選択する強化用粒子104、106が示すガラス転移温度は選択した値に等しいか或はそれ以上であってもよい。このようにして、多数の強化用粒子104、106は高温で実質的な劣化を起こすことなく使用に耐え得る。1つの態様における強化用粒子104、106の各々が示すガラス転移温度は約200℃に等しいか或はそれ以上であり得る。別の態様における強化用粒子104、106が示すガラス転移温度は約300℃に等しいか或はそれ以上であり得る。
【0042】
さらなる態様では、そのような1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106の選択をそれらが組成物100を強化する範囲内の弾性特性を有するように行ってもよい。1つの態様における1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106が示す弾性率はおおよそ硬化後の基礎重合体配合物102が示すそれよりも低い可能性がある。他の態様における1番目および2番目の強化用粒子が示す弾性率は硬化後の配合物102が示す弾性率の約1/3未満である。別の態様における1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106が示す弾性率は硬化後の配合物102が示す弾性率の約1/100から1/3の範囲である。特定の態様では、配合物102に熱処理を約420度Fで約6時間受けさせることでそれを硬化した状態にしてもよい。
【0043】
1つの態様では、1番目の多数の強化用粒子104を重合体組成物100の総重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で供給してもよい。別の態様では、1番目の多
数の強化用粒子104を約2から7重量%の範囲の濃度で供給してもよい。他の態様では、1番目の多数の強化用粒子104を約3.5から7重量%の範囲の濃度で供給してもよい。2番目の多数の強化用粒子106を重合体組成物100の総重量を基準にして約10から25重量%の範囲の濃度で供給してもよい。
【0044】
追加的態様では、1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106の選択をそれらが指定範囲内の大きさを有するように行ってもよい。1つの態様では、1番目の多数の強化用粒子104の直径を約1μm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の強化用粒子104の直径を約500nm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の強化用粒子104の直径を約300nm未満にしてもよい。さらなる態様では、2番目の多数の強化用粒子106の直径を約75μm未満にしてもよい。追加的態様では、2番目の多数の強化用粒子106の直径を約1−75μmの範囲にしてもよい。
【0045】
1つの態様における1番目の多数の強化用粒子104はコア−シェル粒子を含有して成り得る。コアシェル粒子は内部のコア部分と前記内部のコア部分を実質的に包み込んでいる外側のシェル部分を含有して成り得る。1つの態様における1番目の多数の強化用粒子104のコア部分はシリコーンゴムを含有して成っていてもよい。そのような1番目の多数の強化用粒子の外側シェルはアクリル樹脂を含有して成っていてもよい。そのようなコアシェル粒子の例には、Kaneka Corp.が製造しているMX660が含まれる。
【0046】
別の態様における2番目の多数の強化用粒子106は熱可塑性材料の粒子を含有して成り得る。強化用粒子106として用いるに適した熱可塑性プラスチックの例には、これらに限定するものでないが、ポリイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンオキサイド(PPO)が含まれ得る。
【0047】
強化用粒子104、106を含有させた重合体組成物100にさらなる成形をブロック210で受けさせることで所望の製品を生じさせることができる。重合体組成物100を鋳型または他の選択した形状を有する封じ込め容器の中に入れた後、高温で場合により加圧下で硬化させてもよい。組成物100を約80から110psiの範囲の圧力下約375から440度Fの範囲の温度で約6から12時間硬化させてもよい。
【0048】
組成物100の態様を複合材料の製造で用いることも同様に可能である。図3A−3Bに、繊維強化粒子強化複合材料300、350の態様を例示する。1つの態様として、図3Aに示す複合材料300は1番目の領域302および2番目の領域304を含有して成り得る。その1番目の領域302は多数の繊維310および1番目の重合体配合物306を含有して成り得、代わりに、それを複合材料300の繊維領域302と呼ぶこともあり得る。2番目の領域304は繊維領域302の間に位置していて2番目の重合体配合物312を含有して成る。代わりに、その2番目の領域304を複合材料300の中間層領域304と呼ぶこともあり得る。特定の態様における1番目と2番目の重合体配合物306、312は同じであり得る。代替態様における1番目と2番目の重合体配合物306、312は異なり得る。
【0049】
複合材料300の特定態様では、1番目の多数の強化用粒子104の一部が繊維領域302から中間層領域304の中に比較的短い距離だけ広がっている可能性がある。例えば、1番目の強化用粒子104は繊維領域302の縁から約25μm未満の距離だけ広がっている可能性がある。
【0050】
代替態様では、図3Bに例示する如き複合材料350を生じさせてもよい。複合材料3
50は繊維および中間層領域302’および304’を含有して成り得る。繊維領域302’は1番目の重合体配合物306’(この上で考察した基礎重合体配合物102を包含)および1番目の多数の強化用粒子104を含有して成り得る。中間層領域304’は2番目の重合体配合物312’(この上で考察した基礎重合体配合物102を包含)および1番目と2番目の両方の多数の強化用粒子104、106を含有して成り得る。
【0051】
特定の態様では、1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106を別々の領域の中に有する複合材料300(図3Aに例示する如き)を生じさせるのも有利であり得る。以下に考察するように、コアシェルゴムを複合材料300の繊維領域302の中に含有しかつ強化用ポリイミド粒子を中間層領域304の中に含有して成る複合材料の態様はコアシェル濃度に伴って向上したじん性を示すと同時にCAI強度は相対的にそのままである。対照的に、コアシェルゴムを複合材料300の繊維領域302の中に含有しかつコアシェルゴムと強化用ポリイミド粒子の両方を中間層領域304の中に含有して成る複合材料の態様はコアシェル濃度に伴って向上したじん性を示しはするが、CAI強度は低い。
【0052】
理論で範囲を限定するものでないが、CSR粒子を中間層領域304の中に存在させると2番目の多数の強化用粒子106と2番目の重合体配合物312の間に起こる1種以上の相互作用が実質的に妨害される可能性があると考えている。CAI強度の低下はそのような妨害に起因する。相互作用の例には、これらに限定するものでないが、2番目の多数の強化用粒子が湿ることおよび/または二次的粒子が基礎重合体配合物の一部を吸収することが含まれ得る。特定の態様において、相互作用が実質的に抑制されることは、1番目と2番目の両方の多数の粒子104、106をまた2番目の重合体配合物312の中にも存在させた時の相互作用が1番目の多数の粒子104を2番目の重合体配合物312の中に存在させない時の同じ相互作用に比べて10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上および90%以上低下すると理解することができる。
【0053】
しかしながら、他の態様では、複合材料350をこの上で図3Bに関して考察したようにして生じさせることも可能であり、その場合、1番目および2番目の強化用粒子104、106を中間層領域304’の中に位置させる。そのような態様では、2番目の多数の強化用粒子106の選択を2番目の重合体配合物312’と2番目の多数の強化用粒子106の間に起こる相互作用が1番目の多数の強化用粒子104を2番目の重合体配合物312’の中に存在させることによって実質的に抑制されないように行ってもよい。複合材料350用の2番目の多数の強化用粒子106の態様には、これらに限定するものでないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエーテルイミドおよびポリエーテルスルホンが含まれ得る。
【0054】
図4A−4Bに、複合材料300、350を生じさせるための方法400、450の態様を例示する。方法400、450の操作は異なる順でも実施可能でありかつ図4A−4Bに例示する操作の数よりも少ないか或は多い数の操作を制限無しに実施してもよいことは理解され得るであろう。
【0055】
方法400のブロック402で1番目および2番目のマトリクス材料306および312のそれぞれを複合材料300の1番目および2番目の領域302、304用として生じさせる。同様に、方法450のブロック452で1番目および2番目のマトリクス材料306’および312’のそれぞれを複合材料350の1番目および2番目の領域302’、304’用として生じさせる。特定の態様では、そのような1番目および2番目の重合体配合物306、312と306’、312’は同じであってもよい。他の態様では、1番目および2番目の重合体配合物306、312と306’、312’は互いに異なって
もよい。1つの態様における1番目および2番目の重合体配合物306、312と306’、312’はこの上で考察した基礎重合体配合物102を含有して成っていてもよく、同様な様式で製造可能である。
【0056】
方法400のブロック404−406で1番目および2番目の強化用粒子104、106をそれぞれの重合体配合物306、312に添加することで1番目および2番目の重合体組成物308、314を生じさせることができる。複合材料300では、1番目の多数の粒子104を繊維領域302の中に1番目の重合体組成物308の重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で入れてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104を1番目の重合体組成物308の重量を基準にして約2から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。他の態様では、1番目の多数の粒子104を1番目の重合体組成物308の重量を基準にして約3.5から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。2番目の多数の粒子106を2番目の重合体組成物314の重量を基準にして約15から25重量%の範囲の濃度で入れてもよい。
【0057】
同様にして、方法450のブロック454−456で1番目および2番目の強化用粒子104、106をそれぞれの重合体配合物306’、312’に添加することで1番目および2番目の重合体組成物308’、314’を生じさせることができる。複合材料350では、1番目の多数の粒子104を繊維領域と中間層領域302’、304’の両方の中にそれぞれ1番目または2番目の重合体組成物308’、314’の総重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で入れてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104を繊維領域と中間層領域302’、304’の両方の中にそれぞれ1番目または2番目の重合体組成物308’、314’の総重量を基準にして約2から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。他の態様では、1番目の多数の粒子104を繊維領域と中間層領域302’、304’の両方の中にそれぞれ1番目または2番目の重合体組成物308’、314’の総重量を基準にして約3.5から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。2番目の多数の粒子106を2番目の重合体組成物314’の重量を基準にして約15から25重量%の範囲の濃度で入れてもよい。
【0058】
1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106の大きさを指定範囲内に入るように選択してもよい。1つの態様では、1番目の多数の粒子104の直径を約1μm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104の直径を約500nm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104の直径を約300nm未満にしてもよい。
【0059】
さらなる態様では、2番目の多数の粒子106の直径を複合材料300の繊維領域302に含まれる繊維310間の平均分離距離よりも大きくなるように選択してもよい。1つの態様では、2番目の多数の粒子106の直径を約75μm未満にしてもよい。追加的態様では、2番目の多数の粒子106の直径を約1−75μmの範囲にしてもよい。
【0060】
ブロック410および460で複合材料300、350用のプレプレグを生じさせてもよい。図5Aに、複合材料300用のプレプレグ512を生じさせるための装置500の態様を例示する。この装置500で繊維310および多数の1番目および2番目のフィルム504および506を受け取る。その1番目の多数のフィルム504は1番目の重合体組成物308’(例えば重合体配合物306および1番目の多数の強化用粒子104)のフィルムを含有して成っていてもよい。2番目の多数のフィルム506は2番目の重合体組成物314(例えば重合体配合物312および2番目の多数の強化用粒子106)のフィルムを含有して成っていてもよい。前記1番目および2番目の多数のフィルム504、506を更にローラー502で導いてフィルム504、506を繊維310の供給材料に押し付けることでフィルム504、506を繊維310の中に取り込ませることができる
。特定の態様では、1番目および2番目の多数のフィルム504、506の加熱を繊維310に接触させる前、接触中または接触後にフィルム504、506が柔らかくなるに充分な温度で行ってもよい。
【0061】
例えば、図5Aに例示するように、繊維310を1番目の多数のフィルム504を担持しているローラー502Aに隣接させて移動させながら前記フィルムを繊維310の上部および下部に押し付けてもよい。結果として、1番目の多数の強化用粒子104を含有する1番目のフィルム504が繊維310の中に少なくともある程度染み込むことで含浸繊維510が生じ得る。更に図5Aに例示するように、次に、2番目の多数のフィルム506を含浸繊維510の上部および下部にローラー502Bで押し付けることでプレプレグ512を生じさせることができる。1つの態様では、1番目の多数のフィルム504を繊維310の中に約210から280度Fの範囲の温度で染み込ませる一方で2番目の多数のフィルム506を含浸繊維510の中に約140から150度Fの範囲の温度で取り込ませてもよい。
【0062】
図5Bに、複合材料350用のプレプレグ566を生じさせるための装置550の態様を例示する。この装置550で繊維310および多数の1番目および2番目のフィルム554および556を受け取る。その1番目の多数のフィルム554は、方法400に関して上で考察したように、1番目の重合体組成物308’(例えば重合体配合物306’および1番目の多数の強化用粒子104)のフィルムを含有して成っていてもよい。2番目の多数のフィルム556は2番目の重合体組成物314’(例えば重合体配合物312’および1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106)のフィルムを含有して成っていてもよい。
【0063】
前記1番目および2番目のフィルム554、556を下記の様式で繊維310に組み込むことでプレプレグ566を生じさせることができる。1番目のフィルム554を1個以上のローラー562Aの前方で少なくともある程度溶融させておいた後、そのローラーが1番目のフィルム504の溶融ビード560と繊維310の両方を受け取るようにする。ローラー562Aでビード560に圧力をかけてビード560が繊維310の中に少なくともある程度染み込むようにすることで含浸繊維564を生じさせる。その後、2番目の多数のフィルム506をローラー562Bで含浸繊維564の上部および下部に押し付けることでプレプレグ566を生じさせることができる。
【0064】
そのようにして生じさせた512、566をブロック412、462で組み立ててレイアップにした後に硬化させることで複合材料を生じさせることができる。特定の態様では、そのレイアップを選択した形状を最終的な複合製品に与えるための工具の上に置いてもよい。レイアップに温度および圧力の中の1つ以上をかけることでさらなる硬化を起こさせてもよい。例えば、硬化は約375から440度Fの範囲の温度で約6から12時間実施可能である。圧力をかける場合にはそれを約80から110psiの範囲にしてもよい。その結果として生じた複合材料が含有する繊維の体積分率は約60から70体積%の範囲であり得る。
【実施例】
【0065】
以下の実施例では、本開示の強化BMI組成物およびBMI複合材料の態様が示す熱および機械的性能を詳細に考察する。特に、モードIの臨界エネルギー解放率(じん性)を包含する機械的特性、衝撃後圧縮強度、ガラス転移温度および長期熱耐久性を調査する。注目すべきは、選択した強化用粒子を添加すると熱安定性が維持されながらじん性および衝撃後圧縮強度の中の少なくとも一方が向上し得ることを見いだした。本実施例は例示の目的で考察するものであり、開示する態様の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0066】
粒子強化BMI組成物
(a)調製
多数のビスマレイミド樹脂、脂肪族BMI、BMI共反応体、低粘度エポキシ、抑制剤および流れ調節剤を一緒にすることで基礎重合体組成物を生じさせた。この重合体組成物の成分を混合槽に添加して実質的に均一になるまで例えば約50か200rpmの範囲の速度で一緒に混合した。その混合過程を補助する目的で、前記混合物を約250度Fに及ぶ温度に約30から60分の範囲の時間加熱した。
【0067】
この組成物では2種類のBMI樹脂、即ちヘキサメチレンジアミンビスマレイミド[HMDA−BMI(GP−207R、Cymer)]および4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン(Matrimid 5292B、Huntsman)を用いた。用いた脂肪族BMIはトルエンジアミンBMI、即ちTDA−BMI(SR 10572、Evonic)であった。BMI共反応体はo,o−ジアリルビスフェノールA(Matrimid 5292B、Huntsman)であった。用いた低粘度エポキシはビスフェノールF(GY 285、Huntsman)であった。抑制剤は1,4−ナフトキノン水化物であった。流れ調節剤は熱可塑性ポリイミド(Matrimid 9725、Huntsman)を含有して成っていた。
【0068】
前記基礎重合体組成物を生じさせた後、その組成物に一次および二次強化用粒子を添加して混合を前記粒子が前記組成物の中に実質的に均一に分布するまで継続した。前記一次粒子はシリコーンゴムコアとアクリルシェルを有していて平均直径が約100から300nmの範囲のコアシェルゴム粒子(MX660、Kaneka Corp)を含有して成っていた。二次粒子は平均サイズが約1200メッシュ(約10から20μm)のポリイミド粒子を含有して成っていた。
【0069】
強化用粒子を包含する前記成分およびそれらの濃度を当該組成物の総重量を基準にして以下の表1に例示する。ポリイミド粒子の濃度をほぼ一定に維持しながら前記コアシェル粒子の濃度を変えることでコアシェル充填率の影響を検査した。
【0070】
【表1】
【0071】
(b)粒子強化BMI組成物がコアシェルゴム濃度の関数として示すじん性
コアシェルゴムの濃度が様々な粒子強化BMI組成物の態様が示すじん性の評価をASTM D5528「Standard Test Method for Mode I
Interlaminar Fracture Toughness of Unidirectional Fiber−Reinforced Polymer Matrix Composites」に従って実施した。じん性試験の結果を図6に例示する。
【0072】
BMI組成物が示すじん性は一般にコアシェルゴム粒子の濃度を高くするにつれて向上することが分かる。例えば、CSRによる強化を全く受けさせていない対照サンプルが示したじん性は約1.5−1.8インチ・ポンドf/平方インチの範囲であった。CSR粒子を前記組成物に約5重量%の濃度に及んで添加するとBMI組成物のじん性が約2.9インチ・ポンドf/平方インチ上昇し、上昇率は約70%であった。
【0073】
(c)粒子強化BMI組成物がコアシェルゴム濃度の関数として示すガラス転移温度(Tg)
コアシェルゴムの濃度が様々な粒子強化BMI組成物の態様が示すガラス転移温度の評価をASTM E1545「Standard Test Method for Assignment of the Glass Transition Temperature by Thermomechanical Analysis」(これは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に従って実施した。この試験の結果を図7に例示する。
【0074】
コアシェルゴムの濃度を高くしてもBMI組成物が示すガラス転移温度はほぼ一定であることが分かる。例えば、CSRによる強化を全く受けさせていない対照サンプルが示したTgは約225℃であることが分かる。CSRを約5重量%に及んで添加するとBMI複合材料が示すTgはそのレベルのままか或は若干低くなることが分かる。
【0075】
(d)組成物試験結果の要約
選択した強化用粒子による強化を受けさせたBMI組成物は機械的特性と熱特性の良好な均衡を示すことを見いだした。前記粒子は約70%に及んでBMI組成物を強化することが分かる一方、ガラス転移温度には実質的に悪影響は観察されない。そのような観察は、この開示する粒子強化BMI組成物の態様を大部分のBMI用途ばかりでなく高いじん性が要求されるエポキシ用途でもBMIの代わりに用いることが可能であることを示している。
【実施例2】
【0076】
粒子強化BMI組成物を含有させた繊維強化複合材料
前記粒子がBMI複合材料の機械的および熱性能に対して示す効果を立証する目的で様々な形態の強化用粒子を用いてBMI複合材料を調製した。
【0077】
(a)調製
一次強化用コアシェル粒子および二次強化用粒子を添加する前に、実施例1に関してこの上で考察したようにして基礎BMI組成物を調製した。方法400、450および図5Aおよび5Bに関してこの上で考察したフィルム成形方法を用いて、そのような基礎BMI組成物から複合材料を生じさせた。一次強化用粒子であるコアシェルゴムの濃度を約2から7重量%の範囲で変えそして二次強化用粒子であるポリイミドの濃度を約15から25重量%の範囲で変えた。16個の試験用サンプルに評価を下記のようにして受けさせた:
・ 試験1−4には、一次粒子を繊維領域の中に存在させずかつ二次強化用粒子を中間層の中に存在させないで生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
・ 試験5−8には、一次強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ二次強化用粒子を中間層領域の中に存在させないで生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
・ 試験9−12には、一次強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ二次強化用粒子を
中間層領域の中に存在させて生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
・ 試験13−16には、一次強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ一次および二次両方の強化用粒子を中間層領域の中に存在させて生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
【0078】
(b)試験1−4:二次強化用粒子を中間層内に有する複合材料
二次強化用ポリイミド粒子が複合材料の性能に対して果たす役割を検査する目的で、二次強化用粒子が中間層領域内に存在しかつ一次強化用粒子が繊維領域内に存在しないBMI複合材料を製造した。試験1の複合材料は、P84もコアシェル粒子も存在しない繊維強化BMI組成物を含有して成る対照材料であった。試験2−4の複合材料は、P84ポリイミド粒子が中間層領域の中に重合体組成物を基準にして15、20および25重量%存在する繊維強化BMI組成物を含有して成っていた。
【0079】
そのような材料が示す機械的性能を評価する目的で、じん性試験をこの上の実施例1で考察したようにして実施した。また、CAI試験もASTM D7137「Standard Test Method for Compressive Residual Strength Properties of Damaged Polymer Matrix Composite Plates」(これは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に従って実施した。その試験結果を以下の表2および図8および9に例示する。
【0080】
【表2】
【0081】
そのような試験結果から、じん性は約1.8インチ・ポンドf/平方インチでほぼ一定のままであることを観察することができる。しかしながら、同時に、P84の濃度を15−25重量%にまで高くするにつれて衝撃後圧縮強度が対照が示した30ksiから約38−39にまで有意に上昇することが観察され、上昇率は約25%である。このように、ポリイミド粒子を中間層の中に存在させてもじん性には有意な影響は示されなかったが、衝撃後圧縮強度には有意に有益であることが分かる。
【0082】
(c)試験5−8:一次強化用粒子を繊維領域内に有する複合材料
一次強化用CSR粒子が示す効果を検査する目的で、一次強化用CSR粒子が複合材料の繊維領域内に存在しかつ二次強化用ポリイミド粒子が中間層領域内に存在しないBMI複合材料を製造した。試験5−8の複合材料は、CSR粒子が繊維部分の中に繊維部分の総重量を基準にして約2、3.5、5および7重量%存在する繊維強化BMI組成物を含有して成っていた。その試験結果を以下の表3および図10および11に例示する。更に、P84もCSR粒子も存在しない試験1の対照複合材料も比較の目的で例示する。
【0083】
【表3】
【0084】
そのような試験結果から、CSRの濃度を高くしても衝撃後圧縮強度は約30ksiでほぼ一定のままであることを観察することができる(図11)。しかしながら、CSR濃度を高くするにつれてじん性が対照値である1.8インチ・ポンドf/平方インチに比べて大きく上昇することが観察される(図10)。例えば、CSRを約2重量%にした時にじん性値が対照に比べて約10%上昇して約2インチ・ポンドf/平方インチになる。CSR濃度を更に高くして約7重量%にするとじん性が約60%上昇して約2.9インチ・ポンドf/平方インチになる。このように、繊維領域の中に存在させたCSR粒子はCAIに有意な影響を示しはしないが、じん性には有意に有益であることが分かる。
【0085】
(d)試験9−16:サブミクロン規模の粒子を繊維領域内に有しかつ一次および二次粒子を中間層領域内に有する複合材料
一次強化用CSR粒子と二次強化用ポリイミド粒子を組み合わせた時の影響を検査する目的で、一次強化用粒子が繊維領域内に存在しかつ一次粒子のみが中間層領域内に存在するか或は一次と二次の両方の強化用粒子が中間層領域内に存在するBMI複合材料を製造した。試験9−12の複合材料は、一次強化用CSR粒子を繊維領域内に繊維領域内の重合体組成物の重量を基準にして約2、3.5、5および7重量%含有しかつ二次ポリイミド粒子を中間層領域内に約20重量%含有していた。試験13−16の複合材料は、一次強化用CSR粒子を繊維領域または中間層領域の中にそれぞれ繊維領域もしくは中間層領域内の重合体組成物の重量を基準にして約2、3.5、5および7重量%含有しかつ二次ポリイミド粒子を中間層領域内に約20重量%含有していた。その試験結果を以下の表4および図12および13に例示する。この2組の試験を比較することで、一次および二次強化用粒子の個々の位置が重要であることを観察することができる。
【0086】
【表4】
【0087】
そのような試験結果から、CSR粒子の濃度を約2から7重量%まで高くするとCSR粒子を繊維部分の中に存在させた時および繊維領域および中間層領域の中に存在させた時の両方とも複合材料が示すじん性が有意に向上することが観察されることが分かるであろう。例えば、じん性が約2から2.9インチ・ポンドf/平方インチまで上昇し、上昇率は約60%である。
【0088】
CSR粒子を繊維領域の中に位置させた試験9−12では、CSR粒子の濃度を高くしてもCAI強度はほぼ一定のままで約34−35ksiであることが分かる。対照的に、CSR粒子を繊維領域と中間層領域の両方に位置させた試験13−16では、CSR粒子の濃度を高くするにつれてCAI強度が有意な低下を示し、CSR粒子濃度が約2重量%の時の約34ksiからCSR粒子濃度が約7重量%の時の約20ksiまで降下した。
【0089】
(e)熱安定性
また、CSRおよび強化用ポリイミド粒子が複合材料の態様が示す熱安定性に対して示す影響を評価する目的で長期熱耐久性試験も実施した。二次強化用P84粒子を複合材料の中間層領域内に約20重量%含有する試験3の複合材料および二次強化用P84粒子を中間層領域内に約20%含有しかつ一次強化用CSR粒子を繊維領域内に約5重量%含有する試験11の複合材料に関して長期熱耐久性試験を実施した。各複合材料が示す熱安定性の評価を約275、300および350度Fの温度で約150日間実施して、その試験結果を図14A−14Cに例示する。
【0090】
図14A−14Bに、275度Fおよび300度Fの時の試験結果を例示する。前記複合材料を約275度Fにさらしている間に各々が示した重量損失は約150日に及んで(約150日を包含)実質的にゼロであることを観察することができる。前記複合材料を約300度Fにさらしている間に各々が示した重量損失は約75から80日に及んで実質的にゼロである。約75−80日後に複合材料の各々が若干の重量損失を示したが、ある温度で追加的時間が経過しても重量損失は約0.2%未満であった。二次強化用P84粒子を単独で含有して成る試験3の複合材料が約150日後に示した重量損失は約0.15%であった。一次強化用CSR粒子と二次強化用P84粒子の両方を含有して成る試験11の複合材料が約150日後に示した重量損失は約0.1%未満であった。
【0091】
図14Cに、325度Fで約150日間に及ぶ熱安定性試験の結果を例示する。前記組成物は各々がほぼ試験開始時から始まって重量低下を示しかつ重量損失の度合はさらす時間に伴って大きくなった。前記2種類の組成物が約40から45日までに示した重量損失はほぼ同じであった。さらす時間が約40から45日よりも長くなると、二次強化用P84粒子のみを含有して成る複合材料である試験3が示した重量低下の方が一次強化用CSR粒子と二次強化用P84粒子を含有して成る試験11の複合材料が示したそれよりも低かった。前記組成物は各々がそのような重量損失を示しはしたが、約150日後の損失の度合は元々の重量の約1.5%未満であることが分かる。
【0092】
(f)複合材料試験結果の要約
一次強化用CSR粒子および二次強化用ポリイミド粒子を様々な組成で有するBMI複合材料に各々が複合材料の熱および機械的特性に対して示す役割を調査する試験を受けさせた。このような調査は、二次粒子を中間層内に存在させても複合材料が示すじん性には実質的な影響が生じなかったが、それを存在させると複合材料が示すCAI強度が有意に向上することを示している。また、一次CSR粒子を複合材料の繊維領域に添加すると、そのようなミクロン規模の粒子が存在しない組成物に比べて、CAI強度が維持されながら複合材料のじん性が向上することも分かる。
【0093】
更に、一次と二次の両方の強化用粒子を複合材料に存在させるとそのような粒子の場所によってその複合材料の機械的特性が影響を受けることも観察される。注目すべきは、一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に位置させると、CSR濃度を高くしてもCAI強度はほぼ一定のままであるがそれによって複合材料のじん性が向上することが分かる。しかしながら、一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域と中間層領域の両方に位置させた時でもCSR濃度を高くするにつれてじん性の向上が得られたが、CAI強度は有意に低くなる。
【0094】
理論で範囲を限定するものでないが、CAI強度の低下は中間層領域内の二次P84粒子と基礎重合体配合物が起こす1種以上の相互作用を一次強化用CSR粒子が妨害することに起因する可能性がある。そのような相互作用には、基礎重合体配合物が二次強化用P84粒子を湿らすことおよび/または二次強化用P84粒子が基礎重合体配合物の一部を吸収することが含まれ得る。
【0095】
この上で行った説明で本教示の新規な基本的特徴を示し、記述しそして指摘してきたが、当業者は本教示の範囲から逸脱することなくその示した如き装置ばかりでなくそれの使用の詳細な形態に関して様々な省略、置換、変更および/または付加を行うことができることは理解されるであろう。従って、本教示の範囲をこの上で行った考察に限定すべきでなく、添付請求項によって限定すべきである。
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、高温使用に適した重合体組成物、特に多数の強化用粒子を含有して成る粒子強化重合体組成物、およびこれから生じさせたプレプレグおよび複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
積層重合体マトリクス複合構造物(PMC)が数多くの用途で幅広く用いられるようになってきている。例えば、複合構造物は高性能航空宇宙用途で益々用いられてきている。PMCでは選択的に配向させた繊維を組み合わせてそれらを取り囲む重合体マトリクス材料の中に封じ込めている。そのような複合構造物は重量に関して良好な機械的特性(例えば強度、剛性、じん性)を示すばかりでなく幅広い使用温度範囲および製造の容易さも示すことで、それらは航空宇宙用途に良好に適する。
【0003】
大部分の重合体複合材料には、エポキシによってもたらされる幅広い温度範囲に渡る機械的特性と部品製造の容易さの良好な組み合わせが理由でエポキシ樹脂が用いられている。
【0004】
しかしながら、ある種の複合材料用途では、完成複合材料が高い熱耐久性を示すことが要求されるが、極端な環境、例えば高温用途などで用いられるPMC部品は充分な熱耐久性を示さない可能性がある。例えば、エポキシは高温に長時間さらされると有意な重量損失を示す可能性がある。現在のところ、そのような極端な環境に耐え得る費用効果的な重合体マトリクス複合材料は存在しない。
【0005】
エポキシ樹脂の能力を超える使用温度が要求される航空宇宙用途では、ビスマレイミド(BMI)などの如き重合体が受け入れられてきている。BMIの方がエポキシよりも高いガラス転移温度Tgを示しかつ熱老化中に示す重量損失の度合も相対的に低い。BMIはまたエポキシのような加工特性および高温耐久性も示す。結果として、BMI樹脂が基になった複合材料は約149から232℃の範囲内の温度で良好な機械的特性を示す。
【0006】
しかしながら、BMIが示すガラス転移温度の方がエポキシのそれよりも高いが、BMIはまた相対的に堅い。結果として、BMI複合材料が示す損傷許容性は劣りかつ温度サイクル微小亀裂に対する抵抗も劣る傾向がある。
【0007】
その上、添加剤を用いてBMIを強化する試みは相対的に成功しないことが確認されている。例えば、エポキシ組成物で典型的に用いられる強化剤、例えばカルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、ブタジエンおよびスチレン型ゴムなどはTgを低下させるか或は熱老化中の大きな重量損失を助長することが観察された。また、そのような種類のゴムは熱にさらされると有効性が低下する可能性もある。
【0008】
従って、この上に示したことが理由で、高温で長時間機能し得る丈夫な複合材料の必要性が継続して存在する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の態様では、高温使用に適した粒子強化重合体組成物およびプレプレグを提供する。1つの態様における重合体組成物は、重合体材料および1番目と2番目の強化用粒子を含有して成る。特定の態様における重合体材料はビスマレイミドを含有して成る。
【0010】
本プレプレグは1番目および2番目の領域を含有して成り得る。特定の態様における1番目の領域は、1番目の重合体材料および1番目の多数の粒子を含有する1番目の重合体組成物および多数の繊維を含有して成り得る一方、2番目の領域は、2番目の重合体材料および2番目の多数の粒子を含有する2番目の重合体組成物を含有して成る。さらなる態様として、また、前記1番目の多数の粒子は前記2番目の重合体組成物の中にも存在していてもよいが、但し前記1番目の多数の粒子が前記2番目の重合体材料と前記2番目の多数の粒子の間に起こる1種以上の相互作用を実質的に妨害しないことを条件とする。さらなる態様として、本プレプレグを用いて複合材料を生じさせることができる。
【0011】
1つの態様では、粒子強化重合体組成物を提供する。この組成物は、基礎重合体配合物、コアシェルゴムを含有して成る1番目の多数の粒子および2番目の多数の粒子を含有して成る。
【0012】
別の態様では、粒子強化組成物を製造する方法を提供する。この方法は、基礎重合体配合物を準備し、その基礎重合体配合物に1番目の多数の粒子(この1番目の多数の粒子はコアシェルゴムを含有して成る)を添加しそして前記基礎重合体配合物に2番目の多数の粒子を添加することを含んで成る。
【0013】
別の態様では、プレプレグを提供する。このプレプレグは1番目の領域および2番目の領域を含有して成る。前記1番目の領域は、多数の繊維および1番目の重合体組成物を含有して成る。前記1番目の重合体組成物は、前記繊維の少なくとも一部を取り囲んでいる1番目の重合体材料および前記1番目の重合体材料の中に位置する1番目の多数の粒子を含有して成る。前記2番目の領域は2番目の重合体組成物を含有して成る。前記2番目の重合体組成物は、2番目の重合体材料および前記2番目の重合体材料の中に位置する2番目の多数の粒子を含有して成る。前記1番目の多数の粒子は実質的に前記2番目の領域の中には位置しない。
【0014】
さらなる態様でもプレプレグを提供する。このプレプレグは1番目の領域と2番目の領域を含有して成る。前記1番目の領域は、多数の繊維および1番目の重合体組成物を含有して成る。前記1番目の重合体組成物は、前記繊維の少なくとも一部を取り囲んでいる1番目の重合体材料および前記1番目の重合体組成物の中に位置する1番目の多数の粒子を含有して成る。前記2番目の重合体組成物は、2番目の重合体材料、前記2番目の重合体材料の中に位置する前記1番目の多数の粒子および前記2番目の重合体材料の中に位置する2番目の多数の粒子を含有して成る。前記1番目の多数の粒子は、前記2番目の多数の粒子と前記2番目の重合体材料の間に起こる相互作用を実質的に妨害しない。
【0015】
追加的態様では、プレプレグを製造する方法を提供する。この方法は、本プレプレグの1番目の領域を生じさせそして2番目の領域を生じさせることを含んで成る。前記1番目の領域は多数の繊維および1番目の重合体組成物を含有して成る。前記1番目の重合体組成物は、前記繊維の少なくとも一部を取り囲む1番目の重合体材料および前記1番目の重合体材料の中に位置する1番目の多数の粒子を含有して成る。このような複合材料の2番目の領域は2番目の重合体組成物を含有して成り、これは、前記1番目の多数の粒子および前記2番目の重合体材料の中に位置する2番目の多数の粒子の中の少なくとも一方および2番目の重合体材料を含有して成る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、高温使用に適した粒子強化組成物の態様を示す略図である。
【図2】図2は、図1に示した重合体組成物を製造する方法の態様である。
【図3A−3B】図3A−3Bは、一次および二次強化用粒子を含有して成る繊維強化粒子強化重合体組成物の態様を示す略図であり、(A)一次強化用粒子が複合材料の繊維領域の中に存在し、(B)一次強化用粒子が複合材料の繊維および中間層領域の中に存在する。
【図4A−4B】図4A−4Bに、図3A−3Bに示した重合体複合材料を製造する方法の態様を例示する。
【図5A−5B】図5A−5Bに、図3A−3Bに示した重合体複合材料を生じさせるための装置の態様を例示する。
【図6】図6は、粒子強化BMI組成物の態様が示すじん性をCSR濃度の濃度関数としてプロットした図であり、この組成物は一次強化用コアシェルゴム(CSR)粒子および二次強化用ポリイミド粒子を含有して成る。
【図7】図7は、粒子強化BMI組成物の態様が示すガラス転移温度(Tg)をCSR濃度の関数としてプロットした図であり、この組成物は一次強化用CSR粒子および二次強化用ポリイミド粒子を含有して成る。
【図8】図8は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すじん性を二次強化用ポリイミド粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は二次強化用ポリイミド粒子を繊維層間の中間層領域の中に含有して成る。
【図9】図9は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示す衝撃後圧縮強度(CAI)を二次強化用ポリイミド粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は二次強化用ポリイミド粒子を繊維層間の中間層領域の中に含有して成る。
【図10】図10は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すじん性を一次強化用CSR粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有して成る。
【図11】図11は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すCAI強度を一次強化用CSR粒子の濃度の関数としてプロットした図であり、この複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有して成る。
【図12】図12は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すじん性をCSR濃度の関数としてプロットした図であり、1番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を中間層領域の中に含有して成り(丸と実線)、2番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域と中間層領域の両方の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有して成る(四角と破線)。
【図13】図13は、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示すCAI強度をCSR濃度の関数としてプロットした図であり、1番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を中間層領域の中に含有して成り(丸と実線)、2番目の組の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域と中間層領域の両方の中に含有しかつ二次強化用ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有して成る(四角と破線)。
【図14A−14C】図14A−14Cは、繊維強化粒子強化BMI複合材料の態様が示す熱安定性をプロットした図であり、1番目の複合材料は二次ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有し、そして2番目の複合材料は一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に含有しかつ2番目の強化用ポリイミド粒子を複合材料の中間層領域の中に含有して成り、(A)275℃、(B)300℃、(C)350℃。
【詳細な説明】
【0017】
本明細書で用いる如き用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、ある量が示した量に近いことを表し、その量でも所望の機能が実施されるか或は所望の結果が達成される。例えば、用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、示した量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満および0.01%未満の量を指し得る。
【0018】
本明細書で用いる如き用語「室温」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには約16℃(60度F)から32℃(90度F)の範囲内の温度が含まれ得る。
【0019】
本明細書で用いる如き用語「繊維」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには複合材料の強化に適応した1種以上の繊維材料が含まれ得る。繊維が取り得る形態はホイスカ、短繊維、連続繊維、フィラメント、トウ、束、シート、層およびこれらの組み合わせであり得る。連続繊維は更に1方向、多次元(例えば二次元または三次元)、不織、織り、編み、縫合、巻きおよび編組み形態ばかりでなく渦巻きマット、フェルトマットおよび細断マット構造のいずれかであり得る。織り繊維構造物は、フィラメント数が約1000未満、フィラメント数が約3000未満、フィラメント数が約6000未満、フィラメント数が約12000未満、フィラメント数が約24000未満、フィラメント数が約48000未満、フィラメント数が約56000未満およびフィラメント数が約125000未満の多数の織トウを含有して成り得る。さらなる態様では、そのようなトウをクロストウステッチ、横糸挿入編みステッチまたは少量の樹脂、例えば熱可塑性樹脂などで適当な場所に保持してもよい。
【0020】
繊維の組成を必要に応じて変えることができる。繊維組成の態様には、これらに限定するものでないが、ガラス、炭素、アラミド、石英、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、ホウ素、ポリアミド、グラファイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、Astroquartz(商標)、Tyranno(商標)、Nextel(商標)、Nicalon(商標)およびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0021】
本明細書で用いる如き用語「硬化する」または「硬化」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、重合および/または架橋過程が含まれ得る。硬化は、これらに限定するものでないが、加熱、紫外線暴露および放射線暴露などを包含する工程で実施可能である。特定の態様では、硬化を重合体マトリクスまたは樹脂の中で起こさせてもよい。硬化前のマトリクスもしくは樹脂に更に1種以上の化合物を含有させることも可能であり、そのような化合物はほぼ室温で液体、半固体、結晶性固体およびこれらの組み合わせである。さらなる態様では、マトリクスもしくは樹脂をある程度硬化させることでそれが選択した粘着性または粘性を示すようにすることも可能である。特定の態様では、強固と硬化を単一の工程として実施してもよい。
【0022】
本明細書で用いる如き用語「強固」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、樹脂もしくはマトリクス材料が繊維内および隣接する繊維の間の空隙をなくすように流れ込む工程が含まれ得る。例えば、「強固」には、これらに限定するものでないが、マトリクスが繊維およびプレプレグの間およびそれらの中に存在する空隙の中に流れ込むこと、等々が含まれ得る。更に、「強固」を熱、真空および圧力をかけることの中の1つ以上の作用の下で起こさせることも可能である。
【0023】
本明細書で用いる如き用語「含浸」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、マトリクスもしくは樹脂材料を1本以上の繊維の間またはそれらに隣接させて導入することが含まれ得る。そのようなマトリクスもしくは樹脂が取り得る形態はフィルム、粉末、液体およびこれらの組み合わせである。熱、圧力および溶媒の中の1つ以上を加えることで含浸を助長することができる。
【0024】
本明細書で用いる如き用語「プレプレグ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、マトリクスもしくは樹脂材料による含浸を受けた繊維のシートもしくは層が含まれ得る。また、そのようなマトリクスもしくは樹脂もある程度硬化した状態で存在させてもよい。
【0025】
本明細書で用いる如き用語「レイアップ」および「プレプレグレイアップ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、互いに隣接して位置する1つ以上のプレプレグ層が含まれ得る。特定の態様では、そのようなレイアップの中のプレプレグ層を互いに関して選択した配向に位置させてもよい。例えば、プレプレグレイアップは、繊維がレイアップの最大寸法方向、例えば長さ方向などに関して0゜、90゜、選択した角度θおよびこれらの組み合わせの方向に配向している1方向繊維構造を有するプレプレグ層を含有して成り得る。更に、特定の態様では、繊維構造のいずれかの組み合わせ、例えば1方向および多次元などの組み合わせを有するプレプレグを組み合わせてプレプレグレイアップを生じさせることができることも理解され得るであろう。
【0026】
さらなる態様では、プレプレグ層が選択した配向から相対的に動かないようにする目的で、場合により、縫い合わせ材料を用いてそれらを一緒に縫い合わせることも可能である。レイアップの製造は、これらに限定するものでないが、ハンドレイアップ、自動化テープレイアップ(ATL)、最新型繊維配置(AFP)およびフィラメント巻き取りなどを包含し得る技術を用いて実施可能である。
【0027】
本開示の態様では、粒子強化重合体組成物およびそれから生じさせた繊維強化粒子強化複合材料を考察するが、それらは高温使用に適する。特別な態様における重合体組成物および複合材料はビスマレイミドを含有して成り得る。
【0028】
特定の態様における強化重合体組成物は、基礎重合体配合物および少なくとも2種類の多数の強化用粒子を含有して成り得る。例えば、そのような組成物は、1番目の多数の強化用粒子および2番目の多数の強化用粒子(また、一次および二次強化用粒子とも呼ぶ)を含有して成り得る。そのような強化用粒子は、当該重合体組成物が示す1種以上の機械的特性を向上させる熱および弾性特性を示し得る。そのような機械的特性の例には、これらに限定するものでないが、モードIの臨界歪みエネルギー解放率またはGic(じん性)が含まれ得る。その上、当該重合体組成物が示す熱特性、例えばガラス転移温度などは当該強化用粒子の存在によって実質的な影響を受けない可能性もある。
【0029】
さらなる態様では、また、重合体組成物の態様を用いて複合材料を生じさせることも可能である。そのような複合材料は繊維領域および中間層領域(繊維含有領域の間に存在)を含有して成り得る。1つの形態における繊維領域は基礎重合体配合物および2番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る一方、中間層は基礎重合体配合物および1番目および2番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る。別の形態の繊維領域は基礎重合体配合物および1番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る一方、中間層は基礎重合体配合物および1番目および2番目の多数の強化用粒子を含有して成り得る。
【0030】
以下に考察するように、複合材料の中に存在させる1番目と2番目の多数の強化用粒子
の相対的な位置によってその複合材料の機械的特性が有意な影響を受け得ることが分かる。例えば、特定の態様では、1番目の多数の強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ2番目の多数の強化用粒子を中間層領域の中に存在させるとCAI強度が維持されながら当該複合材料のじん性が向上し得る。本開示の前記および他の利点を以下に詳細に考察する。
【0031】
図1に、基礎重合体配合物102、1番目の多数の強化用粒子104および2番目の多数の強化用粒子106を含有して成る強化重合体組成物100の1つの態様を示す。図2に、組成物100を生じさせるための方法200の1つの態様を示す。方法200の操作を図2に示す順とは異なる順で実施することも可能でありかつより少ないか或はより多い操作を制限無しに実施してもよいことは理解され得るであろう。
【0032】
方法200のブロック202で基礎重合体配合物102を生じさせる。1つの態様における基礎重合体配合物102は1種以上の重合体樹脂を含有して成り得る。重合体樹脂の例には、これらに限定するものでないが、ビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾオキサジンおよびシアン酸エステルが含まれ得る。あらゆる重合体樹脂の総量を重合体組成物100の総重量を基準にして約35−41重量%の範囲の濃度にしてもよい。
【0033】
1つの態様における基礎重合体配合物102は1種以上のビスマレイミド樹脂を重合体樹脂として含有して成り得る。適切なビスマレイミドの例が米国特許第4,644,039号および5,003,018号(これらは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されている。重合体樹脂として用いるに適したビスマレイミドのさらなる態様には、これらに限定するものでないが、トルエンジアミンビスマレイミド(TDA−BMI)および4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン(例えばMatrimid
5292A、Huntsman Corp.)が含まれ得る。
【0034】
1つの態様における基礎重合体配合物102で用いる重合体樹脂は更にナジシミドも含有していてもよく、それはビスマレイミドと密に関係している。例えば、基礎重合体配合物102は、ビスマレイミドに加えトルエンジアミン、脂肪族アミン、メチレンジアニリン、脂肪族ジアミン、イソホロンジアミンなどのナジシミドを含有して成っていてもよい。
【0035】
追加的態様における基礎重合体配合物102は更にジ−およびポリアミンの脂肪族BMIも含有して成っていてもよい。脂肪族BMIの例には、これらに限定するものでないが、トリメチルヘキサンジアミンから生じたBMI(TMH−BMI)、ヘキサンジアミンから生じたBMI(ヘキサメチレンジアミンビスマレイミドまたはHMDA−BMI)、オクタンジアミン、デカンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンから生じたBMIが含まれ得る。そのような脂肪族BMIを重合体組成物100の総重量を基準にして約5から10重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0036】
基礎重合体配合物102の態様に更に基礎重合体樹脂の1種以上の共反応体も含有させることも可能である。特定の態様における共反応体には、o,o’−ジアリビスフェノールおよびo,o’−ジプロペニルビスフェノールまたはアリルフェノキシ、プロペニルフェノキシ、アリルフェニルおよびプロペニルフェニル末端を有するオリゴマー状化合物が含まれ得る。例にはo,o’−ジアリルビスフェノールA(例えばMatrimid 5292B、Huntsman Corp)、o,o’−ジイソプロペニルビスフェノールA、アリルエウゲノール、アルケニルフェノキシベンゾフェノンなどが含まれる。そのような共反応体化合物を重合体組成物100の総重量を基準にして約24から30重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0037】
配合物102の態様にまた1種以上の低粘度エポキシ樹脂も少量含有させることも可能である。そのようなエポキシ樹脂の例には、これらに限定するものでないが、ビスフェノールAが基になったエポキシ、ビスフェノールFが基になったエポキシまたはレゾルシノールが基になったエポキシが含まれ得る。他の例には、LeeおよびNevilleによるHandbook of Epoxy Resins(McGraw−Hill)およびMay編集のEpoxy Resins,Chemistry and Technology(Marcel Dekker、1973)(これらは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されている液状エポキシ樹脂が含まれ得る。そのようなエポキシ樹脂をBMI配合物の総重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。さらなる例として、エポキシ樹脂を重合体組成物100の総重量を基準にして約3から7重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0038】
配合物102の態様にまたこの配合物の成分の反応性を低くする1種以上の抑制剤化合物も含有させることも可能である。適切な抑制剤は当該技術分野で公知であり、本発明に更に米国特許第5,955,566号(これは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)により詳細に記述されている如き抑制剤の使用も組み込むことも可能である。具体的例には、これらに限定するものでないが、ヒドロキノン、例えば1,4−ナフトキノンの水化物などが含まれ得る。そのような抑制剤化合物を重合体組成物100の総重量を基準にして約0.5から1重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0039】
追加的に、配合物102の態様に当該組成物の粘度を調整するに適した1種以上の流れ調節剤も含有させることも可能である。そのような流れ調節剤には熱可塑性プラスチックが含まれ得る。そのような熱可塑性プラスチックの例には、これらに限定するものでないが、ポリイミドが含まれ得る。そのような流れ調節剤を重合体組成物100の総重量を基準にして約0.5から3重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0040】
この上で考察した成分に加えて組成物100に更に他の非反応性システム補助成分も含有させることも可能であり、そのような成分には、これらに限定するものでないが、可塑剤、充填剤、顔料、他の熱可塑性強化剤、他の流動調節剤、粘着付与剤などが含まれる。
【0041】
方法200のブロック204および206で重合体組成物100に1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106を添加する。1つの態様で選択する強化用粒子104、106が示すガラス転移温度は選択した値に等しいか或はそれ以上であってもよい。このようにして、多数の強化用粒子104、106は高温で実質的な劣化を起こすことなく使用に耐え得る。1つの態様における強化用粒子104、106の各々が示すガラス転移温度は約200℃に等しいか或はそれ以上であり得る。別の態様における強化用粒子104、106が示すガラス転移温度は約300℃に等しいか或はそれ以上であり得る。
【0042】
さらなる態様では、そのような1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106の選択をそれらが組成物100を強化する範囲内の弾性特性を有するように行ってもよい。1つの態様における1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106が示す弾性率はおおよそ硬化後の基礎重合体配合物102が示すそれよりも低い可能性がある。他の態様における1番目および2番目の強化用粒子が示す弾性率は硬化後の配合物102が示す弾性率の約1/3未満である。別の態様における1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106が示す弾性率は硬化後の配合物102が示す弾性率の約1/100から1/3の範囲である。特定の態様では、配合物102に熱処理を約420度Fで約6時間受けさせることでそれを硬化した状態にしてもよい。
【0043】
1つの態様では、1番目の多数の強化用粒子104を重合体組成物100の総重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で供給してもよい。別の態様では、1番目の多
数の強化用粒子104を約2から7重量%の範囲の濃度で供給してもよい。他の態様では、1番目の多数の強化用粒子104を約3.5から7重量%の範囲の濃度で供給してもよい。2番目の多数の強化用粒子106を重合体組成物100の総重量を基準にして約10から25重量%の範囲の濃度で供給してもよい。
【0044】
追加的態様では、1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106の選択をそれらが指定範囲内の大きさを有するように行ってもよい。1つの態様では、1番目の多数の強化用粒子104の直径を約1μm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の強化用粒子104の直径を約500nm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の強化用粒子104の直径を約300nm未満にしてもよい。さらなる態様では、2番目の多数の強化用粒子106の直径を約75μm未満にしてもよい。追加的態様では、2番目の多数の強化用粒子106の直径を約1−75μmの範囲にしてもよい。
【0045】
1つの態様における1番目の多数の強化用粒子104はコア−シェル粒子を含有して成り得る。コアシェル粒子は内部のコア部分と前記内部のコア部分を実質的に包み込んでいる外側のシェル部分を含有して成り得る。1つの態様における1番目の多数の強化用粒子104のコア部分はシリコーンゴムを含有して成っていてもよい。そのような1番目の多数の強化用粒子の外側シェルはアクリル樹脂を含有して成っていてもよい。そのようなコアシェル粒子の例には、Kaneka Corp.が製造しているMX660が含まれる。
【0046】
別の態様における2番目の多数の強化用粒子106は熱可塑性材料の粒子を含有して成り得る。強化用粒子106として用いるに適した熱可塑性プラスチックの例には、これらに限定するものでないが、ポリイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンオキサイド(PPO)が含まれ得る。
【0047】
強化用粒子104、106を含有させた重合体組成物100にさらなる成形をブロック210で受けさせることで所望の製品を生じさせることができる。重合体組成物100を鋳型または他の選択した形状を有する封じ込め容器の中に入れた後、高温で場合により加圧下で硬化させてもよい。組成物100を約80から110psiの範囲の圧力下約375から440度Fの範囲の温度で約6から12時間硬化させてもよい。
【0048】
組成物100の態様を複合材料の製造で用いることも同様に可能である。図3A−3Bに、繊維強化粒子強化複合材料300、350の態様を例示する。1つの態様として、図3Aに示す複合材料300は1番目の領域302および2番目の領域304を含有して成り得る。その1番目の領域302は多数の繊維310および1番目の重合体配合物306を含有して成り得、代わりに、それを複合材料300の繊維領域302と呼ぶこともあり得る。2番目の領域304は繊維領域302の間に位置していて2番目の重合体配合物312を含有して成る。代わりに、その2番目の領域304を複合材料300の中間層領域304と呼ぶこともあり得る。特定の態様における1番目と2番目の重合体配合物306、312は同じであり得る。代替態様における1番目と2番目の重合体配合物306、312は異なり得る。
【0049】
複合材料300の特定態様では、1番目の多数の強化用粒子104の一部が繊維領域302から中間層領域304の中に比較的短い距離だけ広がっている可能性がある。例えば、1番目の強化用粒子104は繊維領域302の縁から約25μm未満の距離だけ広がっている可能性がある。
【0050】
代替態様では、図3Bに例示する如き複合材料350を生じさせてもよい。複合材料3
50は繊維および中間層領域302’および304’を含有して成り得る。繊維領域302’は1番目の重合体配合物306’(この上で考察した基礎重合体配合物102を包含)および1番目の多数の強化用粒子104を含有して成り得る。中間層領域304’は2番目の重合体配合物312’(この上で考察した基礎重合体配合物102を包含)および1番目と2番目の両方の多数の強化用粒子104、106を含有して成り得る。
【0051】
特定の態様では、1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106を別々の領域の中に有する複合材料300(図3Aに例示する如き)を生じさせるのも有利であり得る。以下に考察するように、コアシェルゴムを複合材料300の繊維領域302の中に含有しかつ強化用ポリイミド粒子を中間層領域304の中に含有して成る複合材料の態様はコアシェル濃度に伴って向上したじん性を示すと同時にCAI強度は相対的にそのままである。対照的に、コアシェルゴムを複合材料300の繊維領域302の中に含有しかつコアシェルゴムと強化用ポリイミド粒子の両方を中間層領域304の中に含有して成る複合材料の態様はコアシェル濃度に伴って向上したじん性を示しはするが、CAI強度は低い。
【0052】
理論で範囲を限定するものでないが、CSR粒子を中間層領域304の中に存在させると2番目の多数の強化用粒子106と2番目の重合体配合物312の間に起こる1種以上の相互作用が実質的に妨害される可能性があると考えている。CAI強度の低下はそのような妨害に起因する。相互作用の例には、これらに限定するものでないが、2番目の多数の強化用粒子が湿ることおよび/または二次的粒子が基礎重合体配合物の一部を吸収することが含まれ得る。特定の態様において、相互作用が実質的に抑制されることは、1番目と2番目の両方の多数の粒子104、106をまた2番目の重合体配合物312の中にも存在させた時の相互作用が1番目の多数の粒子104を2番目の重合体配合物312の中に存在させない時の同じ相互作用に比べて10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上および90%以上低下すると理解することができる。
【0053】
しかしながら、他の態様では、複合材料350をこの上で図3Bに関して考察したようにして生じさせることも可能であり、その場合、1番目および2番目の強化用粒子104、106を中間層領域304’の中に位置させる。そのような態様では、2番目の多数の強化用粒子106の選択を2番目の重合体配合物312’と2番目の多数の強化用粒子106の間に起こる相互作用が1番目の多数の強化用粒子104を2番目の重合体配合物312’の中に存在させることによって実質的に抑制されないように行ってもよい。複合材料350用の2番目の多数の強化用粒子106の態様には、これらに限定するものでないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエーテルイミドおよびポリエーテルスルホンが含まれ得る。
【0054】
図4A−4Bに、複合材料300、350を生じさせるための方法400、450の態様を例示する。方法400、450の操作は異なる順でも実施可能でありかつ図4A−4Bに例示する操作の数よりも少ないか或は多い数の操作を制限無しに実施してもよいことは理解され得るであろう。
【0055】
方法400のブロック402で1番目および2番目のマトリクス材料306および312のそれぞれを複合材料300の1番目および2番目の領域302、304用として生じさせる。同様に、方法450のブロック452で1番目および2番目のマトリクス材料306’および312’のそれぞれを複合材料350の1番目および2番目の領域302’、304’用として生じさせる。特定の態様では、そのような1番目および2番目の重合体配合物306、312と306’、312’は同じであってもよい。他の態様では、1番目および2番目の重合体配合物306、312と306’、312’は互いに異なって
もよい。1つの態様における1番目および2番目の重合体配合物306、312と306’、312’はこの上で考察した基礎重合体配合物102を含有して成っていてもよく、同様な様式で製造可能である。
【0056】
方法400のブロック404−406で1番目および2番目の強化用粒子104、106をそれぞれの重合体配合物306、312に添加することで1番目および2番目の重合体組成物308、314を生じさせることができる。複合材料300では、1番目の多数の粒子104を繊維領域302の中に1番目の重合体組成物308の重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で入れてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104を1番目の重合体組成物308の重量を基準にして約2から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。他の態様では、1番目の多数の粒子104を1番目の重合体組成物308の重量を基準にして約3.5から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。2番目の多数の粒子106を2番目の重合体組成物314の重量を基準にして約15から25重量%の範囲の濃度で入れてもよい。
【0057】
同様にして、方法450のブロック454−456で1番目および2番目の強化用粒子104、106をそれぞれの重合体配合物306’、312’に添加することで1番目および2番目の重合体組成物308’、314’を生じさせることができる。複合材料350では、1番目の多数の粒子104を繊維領域と中間層領域302’、304’の両方の中にそれぞれ1番目または2番目の重合体組成物308’、314’の総重量を基準にして約2から10重量%の範囲の濃度で入れてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104を繊維領域と中間層領域302’、304’の両方の中にそれぞれ1番目または2番目の重合体組成物308’、314’の総重量を基準にして約2から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。他の態様では、1番目の多数の粒子104を繊維領域と中間層領域302’、304’の両方の中にそれぞれ1番目または2番目の重合体組成物308’、314’の総重量を基準にして約3.5から7重量%の範囲の濃度で入れてもよい。2番目の多数の粒子106を2番目の重合体組成物314’の重量を基準にして約15から25重量%の範囲の濃度で入れてもよい。
【0058】
1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106の大きさを指定範囲内に入るように選択してもよい。1つの態様では、1番目の多数の粒子104の直径を約1μm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104の直径を約500nm未満にしてもよい。別の態様では、1番目の多数の粒子104の直径を約300nm未満にしてもよい。
【0059】
さらなる態様では、2番目の多数の粒子106の直径を複合材料300の繊維領域302に含まれる繊維310間の平均分離距離よりも大きくなるように選択してもよい。1つの態様では、2番目の多数の粒子106の直径を約75μm未満にしてもよい。追加的態様では、2番目の多数の粒子106の直径を約1−75μmの範囲にしてもよい。
【0060】
ブロック410および460で複合材料300、350用のプレプレグを生じさせてもよい。図5Aに、複合材料300用のプレプレグ512を生じさせるための装置500の態様を例示する。この装置500で繊維310および多数の1番目および2番目のフィルム504および506を受け取る。その1番目の多数のフィルム504は1番目の重合体組成物308’(例えば重合体配合物306および1番目の多数の強化用粒子104)のフィルムを含有して成っていてもよい。2番目の多数のフィルム506は2番目の重合体組成物314(例えば重合体配合物312および2番目の多数の強化用粒子106)のフィルムを含有して成っていてもよい。前記1番目および2番目の多数のフィルム504、506を更にローラー502で導いてフィルム504、506を繊維310の供給材料に押し付けることでフィルム504、506を繊維310の中に取り込ませることができる
。特定の態様では、1番目および2番目の多数のフィルム504、506の加熱を繊維310に接触させる前、接触中または接触後にフィルム504、506が柔らかくなるに充分な温度で行ってもよい。
【0061】
例えば、図5Aに例示するように、繊維310を1番目の多数のフィルム504を担持しているローラー502Aに隣接させて移動させながら前記フィルムを繊維310の上部および下部に押し付けてもよい。結果として、1番目の多数の強化用粒子104を含有する1番目のフィルム504が繊維310の中に少なくともある程度染み込むことで含浸繊維510が生じ得る。更に図5Aに例示するように、次に、2番目の多数のフィルム506を含浸繊維510の上部および下部にローラー502Bで押し付けることでプレプレグ512を生じさせることができる。1つの態様では、1番目の多数のフィルム504を繊維310の中に約210から280度Fの範囲の温度で染み込ませる一方で2番目の多数のフィルム506を含浸繊維510の中に約140から150度Fの範囲の温度で取り込ませてもよい。
【0062】
図5Bに、複合材料350用のプレプレグ566を生じさせるための装置550の態様を例示する。この装置550で繊維310および多数の1番目および2番目のフィルム554および556を受け取る。その1番目の多数のフィルム554は、方法400に関して上で考察したように、1番目の重合体組成物308’(例えば重合体配合物306’および1番目の多数の強化用粒子104)のフィルムを含有して成っていてもよい。2番目の多数のフィルム556は2番目の重合体組成物314’(例えば重合体配合物312’および1番目および2番目の多数の強化用粒子104、106)のフィルムを含有して成っていてもよい。
【0063】
前記1番目および2番目のフィルム554、556を下記の様式で繊維310に組み込むことでプレプレグ566を生じさせることができる。1番目のフィルム554を1個以上のローラー562Aの前方で少なくともある程度溶融させておいた後、そのローラーが1番目のフィルム504の溶融ビード560と繊維310の両方を受け取るようにする。ローラー562Aでビード560に圧力をかけてビード560が繊維310の中に少なくともある程度染み込むようにすることで含浸繊維564を生じさせる。その後、2番目の多数のフィルム506をローラー562Bで含浸繊維564の上部および下部に押し付けることでプレプレグ566を生じさせることができる。
【0064】
そのようにして生じさせた512、566をブロック412、462で組み立ててレイアップにした後に硬化させることで複合材料を生じさせることができる。特定の態様では、そのレイアップを選択した形状を最終的な複合製品に与えるための工具の上に置いてもよい。レイアップに温度および圧力の中の1つ以上をかけることでさらなる硬化を起こさせてもよい。例えば、硬化は約375から440度Fの範囲の温度で約6から12時間実施可能である。圧力をかける場合にはそれを約80から110psiの範囲にしてもよい。その結果として生じた複合材料が含有する繊維の体積分率は約60から70体積%の範囲であり得る。
【実施例】
【0065】
以下の実施例では、本開示の強化BMI組成物およびBMI複合材料の態様が示す熱および機械的性能を詳細に考察する。特に、モードIの臨界エネルギー解放率(じん性)を包含する機械的特性、衝撃後圧縮強度、ガラス転移温度および長期熱耐久性を調査する。注目すべきは、選択した強化用粒子を添加すると熱安定性が維持されながらじん性および衝撃後圧縮強度の中の少なくとも一方が向上し得ることを見いだした。本実施例は例示の目的で考察するものであり、開示する態様の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0066】
粒子強化BMI組成物
(a)調製
多数のビスマレイミド樹脂、脂肪族BMI、BMI共反応体、低粘度エポキシ、抑制剤および流れ調節剤を一緒にすることで基礎重合体組成物を生じさせた。この重合体組成物の成分を混合槽に添加して実質的に均一になるまで例えば約50か200rpmの範囲の速度で一緒に混合した。その混合過程を補助する目的で、前記混合物を約250度Fに及ぶ温度に約30から60分の範囲の時間加熱した。
【0067】
この組成物では2種類のBMI樹脂、即ちヘキサメチレンジアミンビスマレイミド[HMDA−BMI(GP−207R、Cymer)]および4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン(Matrimid 5292B、Huntsman)を用いた。用いた脂肪族BMIはトルエンジアミンBMI、即ちTDA−BMI(SR 10572、Evonic)であった。BMI共反応体はo,o−ジアリルビスフェノールA(Matrimid 5292B、Huntsman)であった。用いた低粘度エポキシはビスフェノールF(GY 285、Huntsman)であった。抑制剤は1,4−ナフトキノン水化物であった。流れ調節剤は熱可塑性ポリイミド(Matrimid 9725、Huntsman)を含有して成っていた。
【0068】
前記基礎重合体組成物を生じさせた後、その組成物に一次および二次強化用粒子を添加して混合を前記粒子が前記組成物の中に実質的に均一に分布するまで継続した。前記一次粒子はシリコーンゴムコアとアクリルシェルを有していて平均直径が約100から300nmの範囲のコアシェルゴム粒子(MX660、Kaneka Corp)を含有して成っていた。二次粒子は平均サイズが約1200メッシュ(約10から20μm)のポリイミド粒子を含有して成っていた。
【0069】
強化用粒子を包含する前記成分およびそれらの濃度を当該組成物の総重量を基準にして以下の表1に例示する。ポリイミド粒子の濃度をほぼ一定に維持しながら前記コアシェル粒子の濃度を変えることでコアシェル充填率の影響を検査した。
【0070】
【表1】
【0071】
(b)粒子強化BMI組成物がコアシェルゴム濃度の関数として示すじん性
コアシェルゴムの濃度が様々な粒子強化BMI組成物の態様が示すじん性の評価をASTM D5528「Standard Test Method for Mode I
Interlaminar Fracture Toughness of Unidirectional Fiber−Reinforced Polymer Matrix Composites」に従って実施した。じん性試験の結果を図6に例示する。
【0072】
BMI組成物が示すじん性は一般にコアシェルゴム粒子の濃度を高くするにつれて向上することが分かる。例えば、CSRによる強化を全く受けさせていない対照サンプルが示したじん性は約1.5−1.8インチ・ポンドf/平方インチの範囲であった。CSR粒子を前記組成物に約5重量%の濃度に及んで添加するとBMI組成物のじん性が約2.9インチ・ポンドf/平方インチ上昇し、上昇率は約70%であった。
【0073】
(c)粒子強化BMI組成物がコアシェルゴム濃度の関数として示すガラス転移温度(Tg)
コアシェルゴムの濃度が様々な粒子強化BMI組成物の態様が示すガラス転移温度の評価をASTM E1545「Standard Test Method for Assignment of the Glass Transition Temperature by Thermomechanical Analysis」(これは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に従って実施した。この試験の結果を図7に例示する。
【0074】
コアシェルゴムの濃度を高くしてもBMI組成物が示すガラス転移温度はほぼ一定であることが分かる。例えば、CSRによる強化を全く受けさせていない対照サンプルが示したTgは約225℃であることが分かる。CSRを約5重量%に及んで添加するとBMI複合材料が示すTgはそのレベルのままか或は若干低くなることが分かる。
【0075】
(d)組成物試験結果の要約
選択した強化用粒子による強化を受けさせたBMI組成物は機械的特性と熱特性の良好な均衡を示すことを見いだした。前記粒子は約70%に及んでBMI組成物を強化することが分かる一方、ガラス転移温度には実質的に悪影響は観察されない。そのような観察は、この開示する粒子強化BMI組成物の態様を大部分のBMI用途ばかりでなく高いじん性が要求されるエポキシ用途でもBMIの代わりに用いることが可能であることを示している。
【実施例2】
【0076】
粒子強化BMI組成物を含有させた繊維強化複合材料
前記粒子がBMI複合材料の機械的および熱性能に対して示す効果を立証する目的で様々な形態の強化用粒子を用いてBMI複合材料を調製した。
【0077】
(a)調製
一次強化用コアシェル粒子および二次強化用粒子を添加する前に、実施例1に関してこの上で考察したようにして基礎BMI組成物を調製した。方法400、450および図5Aおよび5Bに関してこの上で考察したフィルム成形方法を用いて、そのような基礎BMI組成物から複合材料を生じさせた。一次強化用粒子であるコアシェルゴムの濃度を約2から7重量%の範囲で変えそして二次強化用粒子であるポリイミドの濃度を約15から25重量%の範囲で変えた。16個の試験用サンプルに評価を下記のようにして受けさせた:
・ 試験1−4には、一次粒子を繊維領域の中に存在させずかつ二次強化用粒子を中間層の中に存在させないで生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
・ 試験5−8には、一次強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ二次強化用粒子を中間層領域の中に存在させないで生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
・ 試験9−12には、一次強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ二次強化用粒子を
中間層領域の中に存在させて生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
・ 試験13−16には、一次強化用粒子を繊維領域の中に存在させかつ一次および二次両方の強化用粒子を中間層領域の中に存在させて生じさせた複合材料が示した試験結果を例示する。
【0078】
(b)試験1−4:二次強化用粒子を中間層内に有する複合材料
二次強化用ポリイミド粒子が複合材料の性能に対して果たす役割を検査する目的で、二次強化用粒子が中間層領域内に存在しかつ一次強化用粒子が繊維領域内に存在しないBMI複合材料を製造した。試験1の複合材料は、P84もコアシェル粒子も存在しない繊維強化BMI組成物を含有して成る対照材料であった。試験2−4の複合材料は、P84ポリイミド粒子が中間層領域の中に重合体組成物を基準にして15、20および25重量%存在する繊維強化BMI組成物を含有して成っていた。
【0079】
そのような材料が示す機械的性能を評価する目的で、じん性試験をこの上の実施例1で考察したようにして実施した。また、CAI試験もASTM D7137「Standard Test Method for Compressive Residual Strength Properties of Damaged Polymer Matrix Composite Plates」(これは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に従って実施した。その試験結果を以下の表2および図8および9に例示する。
【0080】
【表2】
【0081】
そのような試験結果から、じん性は約1.8インチ・ポンドf/平方インチでほぼ一定のままであることを観察することができる。しかしながら、同時に、P84の濃度を15−25重量%にまで高くするにつれて衝撃後圧縮強度が対照が示した30ksiから約38−39にまで有意に上昇することが観察され、上昇率は約25%である。このように、ポリイミド粒子を中間層の中に存在させてもじん性には有意な影響は示されなかったが、衝撃後圧縮強度には有意に有益であることが分かる。
【0082】
(c)試験5−8:一次強化用粒子を繊維領域内に有する複合材料
一次強化用CSR粒子が示す効果を検査する目的で、一次強化用CSR粒子が複合材料の繊維領域内に存在しかつ二次強化用ポリイミド粒子が中間層領域内に存在しないBMI複合材料を製造した。試験5−8の複合材料は、CSR粒子が繊維部分の中に繊維部分の総重量を基準にして約2、3.5、5および7重量%存在する繊維強化BMI組成物を含有して成っていた。その試験結果を以下の表3および図10および11に例示する。更に、P84もCSR粒子も存在しない試験1の対照複合材料も比較の目的で例示する。
【0083】
【表3】
【0084】
そのような試験結果から、CSRの濃度を高くしても衝撃後圧縮強度は約30ksiでほぼ一定のままであることを観察することができる(図11)。しかしながら、CSR濃度を高くするにつれてじん性が対照値である1.8インチ・ポンドf/平方インチに比べて大きく上昇することが観察される(図10)。例えば、CSRを約2重量%にした時にじん性値が対照に比べて約10%上昇して約2インチ・ポンドf/平方インチになる。CSR濃度を更に高くして約7重量%にするとじん性が約60%上昇して約2.9インチ・ポンドf/平方インチになる。このように、繊維領域の中に存在させたCSR粒子はCAIに有意な影響を示しはしないが、じん性には有意に有益であることが分かる。
【0085】
(d)試験9−16:サブミクロン規模の粒子を繊維領域内に有しかつ一次および二次粒子を中間層領域内に有する複合材料
一次強化用CSR粒子と二次強化用ポリイミド粒子を組み合わせた時の影響を検査する目的で、一次強化用粒子が繊維領域内に存在しかつ一次粒子のみが中間層領域内に存在するか或は一次と二次の両方の強化用粒子が中間層領域内に存在するBMI複合材料を製造した。試験9−12の複合材料は、一次強化用CSR粒子を繊維領域内に繊維領域内の重合体組成物の重量を基準にして約2、3.5、5および7重量%含有しかつ二次ポリイミド粒子を中間層領域内に約20重量%含有していた。試験13−16の複合材料は、一次強化用CSR粒子を繊維領域または中間層領域の中にそれぞれ繊維領域もしくは中間層領域内の重合体組成物の重量を基準にして約2、3.5、5および7重量%含有しかつ二次ポリイミド粒子を中間層領域内に約20重量%含有していた。その試験結果を以下の表4および図12および13に例示する。この2組の試験を比較することで、一次および二次強化用粒子の個々の位置が重要であることを観察することができる。
【0086】
【表4】
【0087】
そのような試験結果から、CSR粒子の濃度を約2から7重量%まで高くするとCSR粒子を繊維部分の中に存在させた時および繊維領域および中間層領域の中に存在させた時の両方とも複合材料が示すじん性が有意に向上することが観察されることが分かるであろう。例えば、じん性が約2から2.9インチ・ポンドf/平方インチまで上昇し、上昇率は約60%である。
【0088】
CSR粒子を繊維領域の中に位置させた試験9−12では、CSR粒子の濃度を高くしてもCAI強度はほぼ一定のままで約34−35ksiであることが分かる。対照的に、CSR粒子を繊維領域と中間層領域の両方に位置させた試験13−16では、CSR粒子の濃度を高くするにつれてCAI強度が有意な低下を示し、CSR粒子濃度が約2重量%の時の約34ksiからCSR粒子濃度が約7重量%の時の約20ksiまで降下した。
【0089】
(e)熱安定性
また、CSRおよび強化用ポリイミド粒子が複合材料の態様が示す熱安定性に対して示す影響を評価する目的で長期熱耐久性試験も実施した。二次強化用P84粒子を複合材料の中間層領域内に約20重量%含有する試験3の複合材料および二次強化用P84粒子を中間層領域内に約20%含有しかつ一次強化用CSR粒子を繊維領域内に約5重量%含有する試験11の複合材料に関して長期熱耐久性試験を実施した。各複合材料が示す熱安定性の評価を約275、300および350度Fの温度で約150日間実施して、その試験結果を図14A−14Cに例示する。
【0090】
図14A−14Bに、275度Fおよび300度Fの時の試験結果を例示する。前記複合材料を約275度Fにさらしている間に各々が示した重量損失は約150日に及んで(約150日を包含)実質的にゼロであることを観察することができる。前記複合材料を約300度Fにさらしている間に各々が示した重量損失は約75から80日に及んで実質的にゼロである。約75−80日後に複合材料の各々が若干の重量損失を示したが、ある温度で追加的時間が経過しても重量損失は約0.2%未満であった。二次強化用P84粒子を単独で含有して成る試験3の複合材料が約150日後に示した重量損失は約0.15%であった。一次強化用CSR粒子と二次強化用P84粒子の両方を含有して成る試験11の複合材料が約150日後に示した重量損失は約0.1%未満であった。
【0091】
図14Cに、325度Fで約150日間に及ぶ熱安定性試験の結果を例示する。前記組成物は各々がほぼ試験開始時から始まって重量低下を示しかつ重量損失の度合はさらす時間に伴って大きくなった。前記2種類の組成物が約40から45日までに示した重量損失はほぼ同じであった。さらす時間が約40から45日よりも長くなると、二次強化用P84粒子のみを含有して成る複合材料である試験3が示した重量低下の方が一次強化用CSR粒子と二次強化用P84粒子を含有して成る試験11の複合材料が示したそれよりも低かった。前記組成物は各々がそのような重量損失を示しはしたが、約150日後の損失の度合は元々の重量の約1.5%未満であることが分かる。
【0092】
(f)複合材料試験結果の要約
一次強化用CSR粒子および二次強化用ポリイミド粒子を様々な組成で有するBMI複合材料に各々が複合材料の熱および機械的特性に対して示す役割を調査する試験を受けさせた。このような調査は、二次粒子を中間層内に存在させても複合材料が示すじん性には実質的な影響が生じなかったが、それを存在させると複合材料が示すCAI強度が有意に向上することを示している。また、一次CSR粒子を複合材料の繊維領域に添加すると、そのようなミクロン規模の粒子が存在しない組成物に比べて、CAI強度が維持されながら複合材料のじん性が向上することも分かる。
【0093】
更に、一次と二次の両方の強化用粒子を複合材料に存在させるとそのような粒子の場所によってその複合材料の機械的特性が影響を受けることも観察される。注目すべきは、一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域の中に位置させると、CSR濃度を高くしてもCAI強度はほぼ一定のままであるがそれによって複合材料のじん性が向上することが分かる。しかしながら、一次強化用CSR粒子を複合材料の繊維領域と中間層領域の両方に位置させた時でもCSR濃度を高くするにつれてじん性の向上が得られたが、CAI強度は有意に低くなる。
【0094】
理論で範囲を限定するものでないが、CAI強度の低下は中間層領域内の二次P84粒子と基礎重合体配合物が起こす1種以上の相互作用を一次強化用CSR粒子が妨害することに起因する可能性がある。そのような相互作用には、基礎重合体配合物が二次強化用P84粒子を湿らすことおよび/または二次強化用P84粒子が基礎重合体配合物の一部を吸収することが含まれ得る。
【0095】
この上で行った説明で本教示の新規な基本的特徴を示し、記述しそして指摘してきたが、当業者は本教示の範囲から逸脱することなくその示した如き装置ばかりでなくそれの使用の詳細な形態に関して様々な省略、置換、変更および/または付加を行うことができることは理解されるであろう。従って、本教示の範囲をこの上で行った考察に限定すべきでなく、添付請求項によって限定すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子強化重合体組成物であって、
基礎重合体配合物、
コアシェルゴムを含有して成る1番目の多数の粒子、および
2番目の多数の粒子、
を含有して成る組成物。
【請求項2】
前記基礎重合体配合物がビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾオキサジンおよびシアン酸エステルの中の1種以上を含有して成る請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記基礎重合体配合物が脂肪族ビスマレイミドを含有して成る請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ビスマレイミドが前記重合体組成物の重量を基準にして約5から10重量%の範囲の濃度で存在する請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記基礎重合体配合物が抑制剤を含有して成る請求項1−4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
前記抑制剤が少なくとも1種の1,4−ナフトキノン水化物を含有して成る請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記抑制剤が前記重合体組成物の重量を基準にして約0.5から1重量%の範囲の濃度で存在する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記1番目の多数の粒子の直径が約1μm未満である請求項1−7のいずれか記載の組成物。
【請求項9】
前記1番目の多数の粒子の直径が約300nm未満である請求項1−8のいずれか記載の組成物。
【請求項10】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率の方が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率よりも低い請求項1−9のいずれか記載の組成物。
【請求項11】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/3未満である請求項1−10のいずれか記載の組成物。
【請求項12】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/100から1/3の範囲である請求項1−11のいずれか記載の組成物。
【請求項13】
前記コアシェルゴムが
シリコーンゴムを含有して成る内部コア、および
アクリル樹脂を含有して成る外側シェル、
を含有して成る請求項1−12のいずれか記載の組成物。
【請求項14】
前記1番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約2から10%の範囲である請求項1−13のいずれか記載の組成物。
【請求項15】
前記1番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約2から7%の範囲である請求項1−14のいずれか記載の組成物。
【請求項16】
前記1番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約3.5から7%の範囲である請求項1−13のいずれか記載の組成物。
【請求項17】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約200℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項1−16のいずれか記載の組成物。
【請求項18】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約300℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項1−17のいずれか記載の組成物。
【請求項19】
前記2番目の多数の粒子がポリイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンオキサイドの中の少なくとも1種を含有して成る請求項1−18のいずれか記載の組成物。
【請求項20】
前記2番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約15から25%の範囲である請求項1−19のいずれか記載の組成物。
【請求項21】
前記2番目の多数の粒子の直径が約75μm未満である請求項1−20のいずれか記載の組成物。
【請求項22】
前記2番目の多数の粒子の直径が約1から75μmの範囲である請求項1−21のいずれか記載の組成物。
【請求項23】
前記2番目の多数の粒子が示す弾性率の方が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率よりも低い請求項1−22のいずれか記載の組成物。
【請求項24】
前記2番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率の約1/3未満である請求項1−23のいずれか記載の組成物。
【請求項25】
ASTM D5528に従って測定した時に約2J/m2以上のモードIの臨界エネルギー解放率を示す請求項1−24のいずれか記載の組成物。
【請求項26】
粒子強化組成物の製造方法であって、
基礎重合体配合物を準備し、
前記基礎重合体配合物にコアシェルゴムを含有して成る1番目の多数の粒子を添加し、そして
前記基礎重合体配合物に2番目の多数の粒子を添加する、
ことを含んで成る方法。
【請求項27】
前記基礎重合体配合物がビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾオキサジンおよびシアン酸エステルの中の1種以上を含有して成る請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記基礎重合体組成物が脂肪族ビスマレイミドを含有して成る請求項26−27のいずれか記載の方法。
【請求項29】
前記脂肪族ビスマレイミドを前記1番目もしくは2番目のマトリクス材料の総重量を基準にして約5から10重量%の範囲の濃度で存在させる請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記基礎重合体組成物が抑制剤を含有して成る請求項26−29のいずれか記載の方法。
【請求項31】
前記抑制剤が1,4−ナフトキノン水化物を含有して成る請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記抑制剤を前記重合体組成物の重量を基準にして約0.5から1重量%の範囲の濃度で存在させる請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記基礎重合体組成物が流れ調節剤を含有して成る請求項26−32のいずれか記載の方法。
【請求項34】
前記基礎重合体組成物が熱可塑性プラスチックを含有して成る請求項26−33のいずれか記載の方法。
【請求項35】
前記熱可塑性プラスチックがポリイミドを含有して成る請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記熱可塑性プラスチックを前記重合体組成物の重量を基準にして約0.5−20重量%の範囲の濃度で存在させる請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記1番目の多数の粒子の直径が約1μm未満である請求項26−36のいずれか記載の方法。
【請求項38】
前記1番目の多数の粒子の直径が約300nm未満である請求項26−37のいずれか記載の方法。
【請求項39】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/3未満である請求項26−38のいずれか記載の方法。
【請求項40】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/100から1/3の範囲である請求項26−39のいずれか記載の方法。
【請求項41】
前記コアシェルゴムが
シリコーンゴムを含有して成る内部コア、および
アクリル樹脂を含有して成る外側シェル、
を含有して成る請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記1番目の多数の粒子の濃度を前記重合体組成物の重量を基準にして約2から10%の範囲にする請求項26−41のいずれか記載の方法。
【請求項43】
前記1番目の多数の粒子の濃度を前記重合体組成物の重量を基準にして約2から7%の範囲にする請求項26−42のいずれか記載の方法。
【請求項44】
前記1番目の多数の粒子の濃度を前記重合体組成物の重量を基準にして約3.5から7%の範囲にする請求項26−43のいずれか記載の方法。
【請求項45】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約200℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項26−44のいずれか記載の方法。
【請求項46】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約300℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項26−45のいずれか記載の方法。
【請求項47】
前記2番目の多数の粒子がポリイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテル
エーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンオキサイドの中の少なくとも1種を含有して成る請求項26−46のいずれか記載の方法。
【請求項48】
前記2番目の多数の粒子の濃度を前記基礎重合体組成物の重量を基準にして約15から25%の範囲にする請求項26−47のいずれか記載の方法。
【請求項49】
前記2番目の多数の粒子の直径が約75μm未満である請求項26−48のいずれか記載の方法。
【請求項50】
前記2番目の多数の粒子の直径が約1から75μmの範囲である請求項26−49のいずれか記載の方法。
【請求項51】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率の方が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率よりも低い請求項26−50のいずれか記載の方法。
【請求項52】
前記2番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率の約1/3未満である請求項26−51のいずれか記載の方法。
【請求項53】
前記組成物がASTM D5528に従って測定した時に約2J/m2以上のモードIの臨界エネルギー解放率を示す請求項26−52のいずれか記載の方法。
【請求項1】
粒子強化重合体組成物であって、
基礎重合体配合物、
コアシェルゴムを含有して成る1番目の多数の粒子、および
2番目の多数の粒子、
を含有して成る組成物。
【請求項2】
前記基礎重合体配合物がビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾオキサジンおよびシアン酸エステルの中の1種以上を含有して成る請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記基礎重合体配合物が脂肪族ビスマレイミドを含有して成る請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ビスマレイミドが前記重合体組成物の重量を基準にして約5から10重量%の範囲の濃度で存在する請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記基礎重合体配合物が抑制剤を含有して成る請求項1−4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
前記抑制剤が少なくとも1種の1,4−ナフトキノン水化物を含有して成る請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記抑制剤が前記重合体組成物の重量を基準にして約0.5から1重量%の範囲の濃度で存在する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記1番目の多数の粒子の直径が約1μm未満である請求項1−7のいずれか記載の組成物。
【請求項9】
前記1番目の多数の粒子の直径が約300nm未満である請求項1−8のいずれか記載の組成物。
【請求項10】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率の方が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率よりも低い請求項1−9のいずれか記載の組成物。
【請求項11】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/3未満である請求項1−10のいずれか記載の組成物。
【請求項12】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/100から1/3の範囲である請求項1−11のいずれか記載の組成物。
【請求項13】
前記コアシェルゴムが
シリコーンゴムを含有して成る内部コア、および
アクリル樹脂を含有して成る外側シェル、
を含有して成る請求項1−12のいずれか記載の組成物。
【請求項14】
前記1番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約2から10%の範囲である請求項1−13のいずれか記載の組成物。
【請求項15】
前記1番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約2から7%の範囲である請求項1−14のいずれか記載の組成物。
【請求項16】
前記1番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約3.5から7%の範囲である請求項1−13のいずれか記載の組成物。
【請求項17】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約200℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項1−16のいずれか記載の組成物。
【請求項18】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約300℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項1−17のいずれか記載の組成物。
【請求項19】
前記2番目の多数の粒子がポリイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンオキサイドの中の少なくとも1種を含有して成る請求項1−18のいずれか記載の組成物。
【請求項20】
前記2番目の多数の粒子の濃度が前記重合体組成物の重量を基準にして約15から25%の範囲である請求項1−19のいずれか記載の組成物。
【請求項21】
前記2番目の多数の粒子の直径が約75μm未満である請求項1−20のいずれか記載の組成物。
【請求項22】
前記2番目の多数の粒子の直径が約1から75μmの範囲である請求項1−21のいずれか記載の組成物。
【請求項23】
前記2番目の多数の粒子が示す弾性率の方が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率よりも低い請求項1−22のいずれか記載の組成物。
【請求項24】
前記2番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率の約1/3未満である請求項1−23のいずれか記載の組成物。
【請求項25】
ASTM D5528に従って測定した時に約2J/m2以上のモードIの臨界エネルギー解放率を示す請求項1−24のいずれか記載の組成物。
【請求項26】
粒子強化組成物の製造方法であって、
基礎重合体配合物を準備し、
前記基礎重合体配合物にコアシェルゴムを含有して成る1番目の多数の粒子を添加し、そして
前記基礎重合体配合物に2番目の多数の粒子を添加する、
ことを含んで成る方法。
【請求項27】
前記基礎重合体配合物がビスマレイミド、ポリイミド、ベンゾオキサジンおよびシアン酸エステルの中の1種以上を含有して成る請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記基礎重合体組成物が脂肪族ビスマレイミドを含有して成る請求項26−27のいずれか記載の方法。
【請求項29】
前記脂肪族ビスマレイミドを前記1番目もしくは2番目のマトリクス材料の総重量を基準にして約5から10重量%の範囲の濃度で存在させる請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記基礎重合体組成物が抑制剤を含有して成る請求項26−29のいずれか記載の方法。
【請求項31】
前記抑制剤が1,4−ナフトキノン水化物を含有して成る請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記抑制剤を前記重合体組成物の重量を基準にして約0.5から1重量%の範囲の濃度で存在させる請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記基礎重合体組成物が流れ調節剤を含有して成る請求項26−32のいずれか記載の方法。
【請求項34】
前記基礎重合体組成物が熱可塑性プラスチックを含有して成る請求項26−33のいずれか記載の方法。
【請求項35】
前記熱可塑性プラスチックがポリイミドを含有して成る請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記熱可塑性プラスチックを前記重合体組成物の重量を基準にして約0.5−20重量%の範囲の濃度で存在させる請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記1番目の多数の粒子の直径が約1μm未満である請求項26−36のいずれか記載の方法。
【請求項38】
前記1番目の多数の粒子の直径が約300nm未満である請求項26−37のいずれか記載の方法。
【請求項39】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/3未満である請求項26−38のいずれか記載の方法。
【請求項40】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示すそれの約1/100から1/3の範囲である請求項26−39のいずれか記載の方法。
【請求項41】
前記コアシェルゴムが
シリコーンゴムを含有して成る内部コア、および
アクリル樹脂を含有して成る外側シェル、
を含有して成る請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記1番目の多数の粒子の濃度を前記重合体組成物の重量を基準にして約2から10%の範囲にする請求項26−41のいずれか記載の方法。
【請求項43】
前記1番目の多数の粒子の濃度を前記重合体組成物の重量を基準にして約2から7%の範囲にする請求項26−42のいずれか記載の方法。
【請求項44】
前記1番目の多数の粒子の濃度を前記重合体組成物の重量を基準にして約3.5から7%の範囲にする請求項26−43のいずれか記載の方法。
【請求項45】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約200℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項26−44のいずれか記載の方法。
【請求項46】
前記2番目の多数の粒子がガラス転移温度が約300℃以上の熱可塑性材料を含有して成る請求項26−45のいずれか記載の方法。
【請求項47】
前記2番目の多数の粒子がポリイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテル
エーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニレンオキサイドの中の少なくとも1種を含有して成る請求項26−46のいずれか記載の方法。
【請求項48】
前記2番目の多数の粒子の濃度を前記基礎重合体組成物の重量を基準にして約15から25%の範囲にする請求項26−47のいずれか記載の方法。
【請求項49】
前記2番目の多数の粒子の直径が約75μm未満である請求項26−48のいずれか記載の方法。
【請求項50】
前記2番目の多数の粒子の直径が約1から75μmの範囲である請求項26−49のいずれか記載の方法。
【請求項51】
前記1番目の多数の粒子が示す弾性率の方が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率よりも低い請求項26−50のいずれか記載の方法。
【請求項52】
前記2番目の多数の粒子が示す弾性率が硬化後の前記基礎重合体配合物が示す弾性率の約1/3未満である請求項26−51のいずれか記載の方法。
【請求項53】
前記組成物がASTM D5528に従って測定した時に約2J/m2以上のモードIの臨界エネルギー解放率を示す請求項26−52のいずれか記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【公表番号】特表2012−528237(P2012−528237A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513191(P2012−513191)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036154
【国際公開番号】WO2010/138556
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036154
【国際公開番号】WO2010/138556
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】
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