粒子捕捉装置、並びに粒子配列方法及び粒子配列装置
【課題】 数10μm〜数mm程度の直径を有する生体物質を固定した粒子を、1種類の粒子捕捉ノズルで、確実に1個ずつ捕捉し、操作する。
【解決手段】 複数の粒子3と溶液14を納める複数の収納部1を有する粒子収納プレート2と、粒子収納プレート2を設置する粒子収納プレート用ステージ6が取り付けられた振動発生機7と、吸引ポンプ9と連結された先端に粒子3を捕捉する粒子捕捉ノズル8を用いて、(1)粒子の直径よりも小さい内径を有し、吸引ポンプにより内部を負圧にした粒子捕捉ノズルを溶液中に挿入し、収納部の粒子群に粒子捕捉ノズルを接触させ、(2)振動発生機により、粒子収納プレートに振動を印加し、(3)粒子捕捉ノズルを溶液から大気中へ抜き出すことで、粒子を1個だけ粒子捕捉ノズルの先端に捕捉する。
【解決手段】 複数の粒子3と溶液14を納める複数の収納部1を有する粒子収納プレート2と、粒子収納プレート2を設置する粒子収納プレート用ステージ6が取り付けられた振動発生機7と、吸引ポンプ9と連結された先端に粒子3を捕捉する粒子捕捉ノズル8を用いて、(1)粒子の直径よりも小さい内径を有し、吸引ポンプにより内部を負圧にした粒子捕捉ノズルを溶液中に挿入し、収納部の粒子群に粒子捕捉ノズルを接触させ、(2)振動発生機により、粒子収納プレートに振動を印加し、(3)粒子捕捉ノズルを溶液から大気中へ抜き出すことで、粒子を1個だけ粒子捕捉ノズルの先端に捕捉する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にDNA、RNA、タンパク質などの生体分子プローブが固定された粒子を1個ずつ操作するための粒子捕捉装置、及び複数の粒子を1個ずつ操作して容器内に配列するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム計画の進展とともにDNAレベルで生体を理解し、病気の検査や生命現象を理解しようとする動きが活発化してきた。生命現象の理解や遺伝子の働きを調べるには遺伝子の発現状況を調べることが有効である。この遺伝子の発現状況を調べるのに有力な方法として、スライドガラス等の固体表面上に数多くのDNAプローブを種類毎に区分けして固定したプローブアレイ、いわゆるDNAチップが用いられてきている。DNAチップを作る方法としては、光化学反応と半導体工業で広く使用されるリソグラフィーを用いて、区画された多数のセルに設計された配列のオリゴマーを1塩基ずつ合成していく方法(Science 251, 767-773 (1991))、及び複数種類のDNAプローブを各区画に1つ1つ植え込んでいく方法(Science 270, 467-470 (1995); Nat. Biotechnol. 18, 438-441 (2000))がある。
【0003】
DNAチップの作製にあたっては、何れの方法も1枚1枚のアレイ毎に、DNAプローブを固定するか、オリゴマーを1塩基ずつ合成する必要があり、製作に手間と時間がかかり、コスト高になる。また、プローブを固体表面に液滴としてのせて固定化するので、区画ごとにばらつきが出る、プローブ種の組み合わせの変更が容易でない、使用者が容易に操作できない、等の難点がある。
【0004】
以上の課題を解決するために、粒子にDNAプローブを固定したものを用意し、これら複数種類の粒子を集めたプローブアレイ、すなわち粒子アレイが提案されている(Clinical Chemistry 43, 1749-1756 (1997); Nucleic Acids Research 30, e87 (2002);米国特許第6,023,540号明細書)。粒子を用いたプローブアレイの利点は、溶液中の化学反応を利用したプローブ固定方法が利用できるため、粒子毎にプローブ密度にばらつきのないプローブアレイを作製することができることである。
【0005】
DNAチップでは、オリゴマー作製位置もしくは各DNAプローブのスポット位置によりプローブ種を識別する方法をとっているが、プローブ固定化粒子を用いたプローブアレイでは、プローブ毎に色分けした粒子を用いる方法(Clinical Chemistry 43, 1749-1756 (1997); 米国特許第6,023,540号明細書)、又はキャピラリ内に並べる順序でプローブ種を識別する方法(Nucleic Acids Research 30, e87 (2002))をとっている。
【0006】
DNAチップでは、計測試料中に含まれる複数種類のDNAの同定、定量解析に、半日から一日の時間を費やして、チップ上に固定したオリゴマー又はDNAと反応させる。一方、キャピラリ内に粒子を並べたプローブアレイ、即ち粒子アレイでは、計測試料をキャピラリ内に強制的に流す。粒子アレイは、従来法と比較して遺伝子検査時間を短縮できるため、病院など、臨床現場での使用に適した計測技術である。例えば、緊急な診断が要求される感染症、細菌検査等での病原微生物ゲノムの自己に存在しない外来遺伝子の迅速な検出手段として使用することが期待できる。
【0007】
キャピラリ内に並べる順序でプローブ種を識別する方法(Nucleic Acids Research 30, e87 (2002))をとる粒子アレイの実用化にあたっては、任意のプローブ固定化粒子を検査用途に合わせて選択し、思い通りに配列する方法を確立することが必須であり、幾つかの方法が提案された。例えば、粒子を1個ずつ制御しながら液体の流れを利用してキャピラリ内に流し込む方法(特開平11-243997号公報)や、粒子が1つしか入らない微細な穴が設けられたシート上に、溶媒とともに導入された複数の粒子の中から1つの粒子だけを保持して、保持したままシートをキャピラリあるいは平板に設けた溝の位置まで移動して並べていく方法(特開2000-346842号公報)がある。しかしながら、これらの方法は、気泡の影響で粒子をうまく取り込めない場合が多く、確実性や操作性に問題があった。
【0008】
そこで、粒子捕捉ノズルを用いて、同一プローブが固定された複数の粒子の中から粒子を1個だけ、粒子捕捉ノズルの先端吸引部に捕捉する方法が提案された(特許第3593525号、特開2005-17224号公報、Analytical Chemistry 75, 3250-3255 (2003))。この方法によると、意図した順番に粒子を配列することができる。粒子捕捉ノズルの先端吸引部のみに粒子を1つだけ捕捉するためには、粒子捕捉ノズルの側面に静電気等の原因で付着する余分な粒子を取り除く必要があり、そのための手段として、空気と溶液の境界に生じる気液界面の表面張力を用いている。粒子捕捉ノズル側壁に付着した余分な粒子は、粒子捕捉ノズルを溶液から空気中へ抜き出す際に、界面を通過できず界面の溶液側に保持される。界面に保持された粒子は空気中へ移動できないため、側壁に付着した粒子は、粒子捕捉ノズルの側壁に沿ってすべり落ち、溶液中に残される。その結果、粒子捕捉ノズルを空気中へ抜き出すことで、吸引により捕捉されている粒子1個のみが、粒子捕捉ノズルに捕捉されることになる。ただし、ノズルの先端面は気液界面の力を受けないため、先端面に付着した粒子は、空気中へ取り出されてしまう。これを防ぐために、吸引部以外で粒子が付着するスペースを先端面に設けないようにする必要があり、粒子の直径と同程度の外径を有する粒子捕捉ノズルを用いる必要があった。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,023,540号明細書
【特許文献2】特開平11-243997号公報
【特許文献3】特開2000-346842号公報
【特許文献4】特許第3593525号
【特許文献5】特開2005-17224号公報
【非特許文献1】Science 251, 767-773 (1991)
【非特許文献2】Science 270, 467-470 (1995)
【非特許文献3】Nat. Biotechnol. 18, 438-441 (2000)
【非特許文献4】Clinical Chemistry 43, 1749-1756 (1997)
【非特許文献5】Nucleic Acids Research 30, e87 (2002)
【非特許文献6】Analytical Chemistry 75, 3250-3255 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、生体物質の固定に用いるガラス製粒子やプラスティック製粒子では、大きさにばらつきがあり、予め粒子の大きさに合わせて用意した粒子捕捉ノズルを用いても、2個以上の粒子が粒子捕捉ノズルの先端面に捕捉される場合があった。また、一方で、異なる直径の粒子を同一アレイ上に配列する場合、粒子の直径によって粒子捕捉ノズルの外径が制限されるため、従来の粒子捕捉ノズルを用いた方法では、捕捉する粒子の大きさ毎に適した粒子捕捉ノズルを各々用意する必要があった。
【0011】
本発明は、粒子の外径によらず粒子を確実に1個ずつ捕捉し、操作することができる単一粒子捕捉装置を提供すること、及びその単一粒子捕捉装置を用いた粒子配列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、複数の粒子と溶液を納める複数の容器を有する粒子収納プレートと、粒子収納プレートを設置するステージが取り付けられた振動発生機と、吸引ポンプと連結され先端に粒子を吸引して操作する粒子捕捉ノズルを用いる。
【0013】
本発明の単一粒子捕捉装置は、複数の粒子の入った溶液を収納する容器と、容器を振動させるための振動発生機と、先端に粒子を捕捉する細長い粒子捕捉ノズルと、粒子捕捉ノズルに連結した吸引機と、粒子捕捉ノズルの先端部を容器中の溶液に挿入し、引き上げるためのアクチュエータとを有する。粒子捕捉ノズルの先端に開口する孔は粒子の直径より小さく、粒子捕捉ノズルの先端の外径は粒子の直径より大きい。振動発生機は周波数20Hz以上の振動を発生する。振動の振幅は0.1mm以上であることが好ましい。
【0014】
本発明による粒子配列方法は、生体分子プローブを表面に固定した粒子が複数入った溶液中に、先端に粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルを挿入する工程と、粒子捕捉ノズルの先端に吸引力を作用させる工程と、容器を振動させる工程と、先端に1個の粒子を吸引保持した粒子捕捉ノズルを容器の溶液から引き出す工程と、粒子捕捉ノズルの先端に吸引保持している粒子を粒子配列容器に導入する工程とを有する。
【0015】
本発明による粒子配列装置は、それぞれ複数の粒子が入った溶液を収納する複数の容器を保持するステージと、先端に前記粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルと、粒子捕捉ノズルを駆動するアクチュエータと、粒子捕捉ノズルの先端に正又は負の圧力を発生させる吸引加圧手段と、ステージを振動させる手段と、粒子を収容する粒子配列容器を保持する粒子配列容器保持部と、制御部とを備え、制御部は、アクチュエータを制御して、振動しているステージ上の容器に粒子補足ノズルを挿入し、吸引加圧手段を制御して粒子捕捉ノズルの先端に負の圧力を発生させて先端に1個の粒子を捕捉した状態で、アクチュエータを制御して粒子捕捉ノズルを容器から引き上げ、次に、アクチュエータを制御して、先端に1個の粒子を捕捉した粒子補足ノズルを粒子配列容器の位置に移動させ、吸引加圧手段を制御して先端に正の圧力を発生させて捕捉した粒子を粒子配列容器に導入する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生体分子を固定した粒子を確実に1個だけ捕捉でき、捕捉した粒子を並べた粒子アレイを、低い製造コストで効率よく作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
まず、図1を用いて、表面に生体分子を固定した粒子の調製方法について説明する。m×n個の収納部1を有する粒子収納プレート2と、粒子群と、粒子3を修飾する複数種のDNA、RNA又はタンパク質等の生体分子プローブとを用意する。用意する粒子収納プレート2上の収納部1は、x方向に第1の中心間隔で等間隔に配置されており、x方向と直交するy方向に第2の間隔で等間隔に配置されている。収納部1は円形の上部開口を持ち、z方向に平行な中心軸を持ち、底部を持つ円柱、又は円錐の形状をしている。このような複数の収納部1を有する粒子収納プレート2としては、例えば市販の384穴マイクロタイタープレートを用いることができる。粒子3のサイズは、ガラスキャピラリを粒子捕捉に用いる場合、好適には直径10μm以上の球状のものを使用するのが好ましいが、半導体のエッチング技術で微細加工した専用の粒子捕捉ノズルを使用すれば、直径数μmの粒子も使用できる。
【0018】
粒子容器4から、薬さじを用いて粒子収納プレート2の各収納部1に、数mg単位で用意した粒子3を分配し、収納部1の1列を単位として、又は各収納部1に、異なる種類のプローブを導入して、全ての粒子表面にプローブを固定させる。これにより、収納部1の位置によりプローブの種類が対応づけられたプローブ固定化粒子5を複数種保持した粒子収納プレート2を用意できる。本例では、n種類の生体分子プローブを用意し、第1列のm個の収納部にはNo.1の生体分子プローブを、第2列のm個の収納部にはNo.2の生体分子プローブを、‥‥、第n列のm個の収納部にはNo.nの生体分子プローブを導入して、各収納部1に収納された粒子3にプローブを固定した。粒子収納プレート2は、粒子3に固定したプローブがDNA等の化学的に比較的安定な生体分子の場合、一度作製した粒子収納プレート2をデシケータ内で保存、もしくは冷蔵庫で保存できるため、作り置きが可能である。各収納部1に純水等の溶液を導入した粒子収納プレート2は、後述する単一粒子捕捉装置ならびに粒子配列装置の粒子収納プレート用ステージ6に設置される。
【0019】
図2は、本発明による単一粒子捕捉装置の例を示す概略説明図である。この単一粒子捕捉装置は、粒子収納プレート2を設置する粒子収納プレート用ステージ6が取り付けられた振動発生機7、粒子捕捉ノズル8、吸引ポンプ9、粒子捕捉ノズル8をz方向に駆動する第1の電動アクチュエータ12及びxy方向に駆動する第2の電動アクチュエータ13を有する。粒子捕捉ノズル8は、電動アクチュエータ12に固定された粒子捕捉ノズル保持部材11に保持され、チューブ10によって吸引ポンプに接続されている。振動発生機7は、振幅と振動周波数を可変できる。単一粒子捕捉装置を具備した粒子アレイ作製装置の構成については、後述する。
【0020】
振動発生機7は、図3に示すように、粒子収納プレート用ステージ6をx軸又は、y軸の向きに動かし、粒子収納プレート2を振動させる。図3(A)、(B)、(C)は、x軸方向に往復で揺れを生じさせる場合を示している。振動発生機7は、図4(A)〜(F)に示すように、粒子収納プレート2を、ある中心を基点にして回転駆動するようにしてもよい。また、z方向に振幅が加わる形態でも良い。しかし、粒子収納プレート2をz方向に振動させると、収納部1内の溶液が溢れやすく、粒子捕捉ノズル8と収納部1の底部とがぶつかり合う危険があり、装置を安全に稼動させるという面では好ましくない。また、粒子捕捉ノズル8に振動を与える形態でも良いが、粒子捕捉ノズル保持部材11の位置決め精度の劣化と、粒子捕捉ノズル8先端の位置再現性が劣化するため、装置を安定に運転させるという観点では、好適ではない。
【0021】
図14(A)、(B)は、粒子捕捉ノズル8の形態を模式的に示したものである。図14(A)は、先端から終端まで、内径、外径に変化がない典型的な粒子捕捉ノズル8の構造を示し、この構造の粒子捕捉ノズルは市販のキャピラリで代用できる。図14(B)は、先端部がテーパー状に細くなっている粒子捕捉ノズルの構造を示し、この構造の粒子捕捉ノズルは半導体製造に用いるワイヤーボンディング用キャピラリで代用できる。また、半導体のエッチング加工によっても、これらのノズルは作製可能である。ノズルの材質には、ステンレス、ガラス、セラミック、ルビー、シリコンなどが用いられる。以下の実施例では、図14(A)に示したような平坦な先端形状を有する粒子捕捉ノズルを使用した。
【0022】
図5A〜図5Eは、図2の単一粒子捕捉装置を用いて、収納部1に溶液14とともに収納された複数の粒子から1個の粒子3だけを取り出す工程を示す断面模式図である。溶液14は、ここでは純水である。
【0023】
図5Aは、目的とする粒子3を保持している収納部1の開口部が粒子捕捉ノズル8の開口部とz方向で対向する位置になるように、第2の電動アクチュエータ13で粒子捕捉ノズル8を移動した状態を示している。図は、まさに、目的とする収納部1へ粒子捕捉ノズル8が挿入されるところである。このとき、粒子捕捉ノズル8に連結した吸引ポンプ9が駆動し、粒子捕捉ノズル8の先端を負圧状態にする。又は、吸引ポンプ9は常時駆動させておき、粒子捕捉ノズル8と吸引ポンプ9の間に電磁弁15を挿入しておき、電磁弁15を開閉制御するようにしても良い。
【0024】
図5Bは、第1の電動アクチュエータ12の制御により、粒子捕捉ノズル保持部材11がz方向に下降し、内部を負圧にした粒子捕捉ノズル8の下端が収納部1の内部に挿入された状態を示している。挿入した状態では、粒子捕捉ノズル8の先端面が、収納部1の底に接する程度が良い。これは、粒子3の収納量が少ない場合に、粒子捕捉ノズル8の先端が粒子3と接触できず、捕捉効率が低下するのを防ぐためである。
【0025】
図5Cは、振動発生機7を駆動し、粒子収納プレート2を所定の周波数、所定の振幅で振動させた状態を示している。図は、x軸方向にのみ振動させている状態を示している。加える振動は、溶液14の液面が揺れる程度で十分であり、粒子3が攪拌される必要はない。つまり、沈殿した粒子群全体に一定の振動が与えられている状態である。ここで与える周波数と振幅の上限と下限については、図6の実験結果をもとに後述する。なお、図5Cでは、粒子捕捉ノズル8を挿入した後に、振動発生機7を駆動しているが、図5Aの時点から、振動発生機7を駆動した状態にしておいても良い。
【0026】
図5Dは、第1の電動アクチュエータ12を制御して、粒子捕捉ノズル8が収納部1の底に沈殿している粒子群からまさに離れた瞬間を示している。この時、ノズル先端に粒子3が1個だけ捕捉される。後で説明する下限以下の周波数での振幅の場合、粒子3は、先端面に複数付着する。また、粒子捕捉ノズル8の側壁にも粒子3が吸着する。
【0027】
図5Eは、図5Dの状態より、さらにz方向に粒子捕捉ノズル8を動かした状態を示しており、粒子捕捉ノズル8の先端部が、溶液14と大気の界面を通過し、収納部1の溶液14から、粒子捕捉ノズル8の先端が完全に大気中へ抜き出された状態を示している。
【0028】
図5A〜図5Eで説明した工程により、確実に、粒子捕捉ノズル8の先端に粒子3が1個だけ保持される。
【0029】
[実施例1]
図6は、振動周波数と捕捉された粒子3の個数との関係を示した図である。図5Cのx軸方向に振動させる周波数及び振幅を変化させた時の粒子の捕捉状況を示したものである。実験では、直径0.1mmの粒子を用い、内径0.05mm、外径0.4mmの粒子捕捉ノズル8を用いた。また、収納部1としては、開口部の直径が3.5mmの384穴マイクロタイタープレートのウェルを用いた。収納部1には、薬さじで粒子3を3mg導入し、純水14を60μL加えた。周波数ごとに粒子を補足する操作を10回繰り返し、捕捉された粒子数の平均を算出してグラフ化した。
【0030】
図6には、周波数が高いほど、振幅が小さくて済むことが示されている。しかし、振幅が0.1mm未満では、周波数を高くしても粒子3を1個だけ捕捉することができないことが示されている。このことから、周波数20Hz、振幅0.1mm以上が、単一粒子捕捉に必要な振動の下限値であるといえる。また、振幅0.4mm以上の範囲では、20Hz以上の振幅周波数を印加することで、確実に粒子を1個だけ捕捉できることが示されている。これは、ノズルの外径以上の振幅を与えれば、20Hz程度の周波数で粒子3を1個だけ捕捉できるという結果を示している。
【0031】
振動の周波数が1000Hz以上では、何れの振幅においても、粒子3が取りづらくなっていることがわかる。ただし、粒子捕捉ノズル8の内部構造において、内径を大きく、さらに、先端部以外の内径を大きくして、吸引路の流路抵抗を小さくし、流速を早くする等の変更を行えば1000Hz以上でも粒子を捕捉することが可能であると期待される。また、振幅は、収納部1の関係上、3mmまでしか変化させていないが、本結果から、振幅3mm以上でも粒子が捕捉できることは明らかである。
【0032】
振幅0.1mmから3mmの範囲で、粒子の制御が可能であったが、粒子捕捉ノズル8が粒子群中に挿入されているときに大きな振幅を与えると、粒子捕捉ノズルに負荷がかかり、先端部が曲がってしまう、さらには、先端部が破損する可能性があるため、振幅は小さく設定した方が良い。
【0033】
図7及び図8は、本発明の単一粒子捕捉装置を用いた粒子捕捉の様子を示したものである。図7は、振動発生機7により振動を与えた時の粒子捕捉工程を示す連続顕微鏡写真の一部である。振動の条件は、周波数20Hzで、振幅は0.4mmである。図7(A)は、内部を負圧にした粒子捕捉ノズル8が収納部1内の微粒子群16内へ挿入された状態を示す顕微鏡像である。図7(B)は、粒子捕捉ノズル8が収納部1の底に沈殿している粒子群16から離れた瞬間の顕微鏡像である。この時点で、粒子捕捉ノズル8の先端のみに粒子3が1個だけ捕捉されているのがわかる。図7(C)は、粒子捕捉ノズル8の先端を大気中へ抜き出した状態を示す顕微鏡像である。図7(C)から、気液界面を通過させた後でも、粒子捕捉ノズル8の先端に粒子3が1個だけ捕捉されているのがわかる。
【0034】
図8は、振動発生機7による振動の周波数が20Hz未満である時の粒子捕捉結果を示す連続顕微鏡撮影の一部である。振動の条件は、周波数10Hz、振幅0.3mmである。図8(A)は、内部を負圧にした粒子捕捉ノズル8が収納部1内の微粒子群16内へ挿入された状態を示す顕微鏡像である。図8(B)は、粒子捕捉ノズル8が収納部1の底に沈殿している粒子群16から離れた瞬間の顕微鏡像である。図8(B)から、溶液14中では、粒子捕捉ノズル8の側面、及び先端面の吸引部以外の個所にも粒子が複数個付着しているのがわかる。図8(C)は、粒子捕捉ノズル8の先端を大気中へ抜き出した状態を示す顕微鏡像である。大気中に粒子捕捉ノズル8を抜き出した結果、側面の粒子は、気液界面17の表面張力により除去されているが、先端面には、余分な粒子3が付着したままであるのがわかる。
【0035】
図7と図8の結果は、収納部1である粒子と溶液を含む容器に適切な振動を印加することで、粒子群16から粒子3を1個だけ、粒子捕捉ノズル8の先端に吸着して捕捉することができることを示している。
【0036】
[実施例2]
図9A、図9Bは本発明による単一粒子捕捉装置を具備した粒子アレイ作製装置の構成を示す模式図であり、図9Aは斜視図、図9Bは断面図である。板状の基台18には、本発明の単一粒子捕捉装置を構成する、振動発生機7、粒子収納プレート用ステージ6が設けられ、その上方には、粒子捕捉ノズル保持部材11に保持された粒子捕捉ノズル8が配置されている。粒子捕捉ノズル8は、吸引加圧ポンプ23に接続されている。また、粒子捕捉ノズル保持部材11は、第1の電動アクチュエータ12と第2の電動アクチュエータ13によって駆動される。基台18には移動補助貫通孔19が設けられ、第1の画像センサ20、第2の画像センサ21、粒子導入用吸引ポンプ22が設けられている。24は制御用コンピュータである。
【0037】
単一粒子捕捉装置の詳細に関しては、図1から図4で説明したが、本実施例では、粒子捕捉ノズル8を複数本並べた構成をとっている。粒子捕捉ノズル8はy軸方向に平行に、且つ、粒子収納プレート2の収納部1と同じ間隔でn個設けられている。図の例では、5本であるが、直径3.5mm、深さ9.6mmの収納部1をx軸方向に24個(m=24)、y軸方向に16個(n=16)、合計384個配置したマイクロタイタープレートを使用する場合には、y軸方向に平行に16本の粒子捕捉ノズル8を設置するのが好ましい。これらの粒子捕捉ノズル8の先端部の位置をz軸方向でそろえ、且つ、群として扱えるように、粒子捕捉ノズル保持部材11により固着保持する。また、粒子捕捉ノズルは吸引だけでなく加圧が可能な吸引加圧ポンプ23に接続されており、弁の切り替えにより、吸引と加圧を任意に選択できるようになっている。
【0038】
移動補助貫通孔19は、粒子収納プレート2のy軸方向に配列された収納部1と平行、且つ、同じ間隔でn個設けられている。移動補助貫通孔19は断面が円形であり、z軸と平行な中心軸を持つ。移動補助貫通孔19は、後述するように、複数の粒子捕捉ノズル8と複数の粒子アレイ用キャピラリ25をガイドして、粒子捕捉ノズル8の先端の開口部に吸着されている粒子3を粒子アレイ用キャピラリ25に注入する補助を行うものであるから、その内径は、粒子アレイ用キャピラリ25と粒子捕捉ノズル8が安全に動くことができるものとされる。例えば、粒子捕捉ノズル8が外径0.4mm、内径0.05mmであるときには、移動補助貫通孔19の内径は0.5mmとする。
【0039】
第1の画像センサ20は、移動補助貫通孔19に平行して隣接した位置に設けられる。この画像センサ20は、粒子捕捉ノズル8が移動補助貫通孔19に導入される前に、粒子捕捉ノズル8の先端に粒子3が1個ずつ捕捉されているかどうか確認するために使用される。第1の画像センサ20の出力により、粒子3が捕捉されていない粒子捕捉ノズル8があることがわかったときは、粒子捕捉ノズル8による粒子捕捉操作をやり直す。
【0040】
第2の画像センサ21は、第1の画像センサ20と対向する位置で、基台18の下面側に設けられ、粒子アレイ用キャピラリ25に粒子3が導入されたかどうかを確認するために使用される。
【0041】
粒子アレイ用キャピラリ25は、y軸方向に平行に、且つ、粒子収納プレート2の収納部1と同じ間隔でn個設けられており、粒子捕捉ノズル8とも対応している。図の例では、5個であるが、上述のタイタープレートの例の構成では、y軸方向に平行に16個設けられる。粒子アレイ用キャピラリ25の一端は開口部とされ、他端は、チューブを介して粒子導入用吸引ポンプ22につながれ、吸引されている。粒子アレイ用キャピラリ25の端部とチューブとは、ソケット26を介して接続するのが良い。ここで、ソケット26は粒子3が通過できないように、粒子3の外径よりも小さい内径を持つ。
【0042】
図9の粒子アレイ作製装置を用いて、粒子アレイ用キャピラリ25の内部に粒子3を1つずつ順次吸引して、吸引される順序を保持した状態で、内部に複数の粒子3を配列する。
【0043】
また、粒子3の直径をRとする時、粒子アレイ用キャピラリ25の内径IDは、R<ID<2Rなる関係を満たしている。粒子3の直径が0.1mmであるときは、粒子アレイ用キャピラリ25の内径0.15mm、外径0.38mmとすれば良い。
【0044】
粒子アレイ用キャピラリ25の開口部側の端部は、これらの粒子アレイ用キャピラリ25の先端部の位置をz軸方向でそろえ、且つ、群として扱えるように、ホルダ27により固着的に保持するのが良い。勿論、必要な粒子3が挿入された後では、ホルダ27による保持を解除して、個々の粒子アレイ用キャピラリ25として取り扱えるようにするのが良い。
【0045】
図1及び図2を用いて既に説明した単一粒子捕捉装置の動作工程を経て、粒子捕捉ノズル8の先端開口部に粒子3を吸着した後、第1の電動アクチュエータ12と第2の電動アクチュエータ13で粒子捕捉ノズル8を移動させて、粒子捕捉ノズル8の先端開口部と粒子アレイ用キャピラリ25の開口部とを、移動補助貫通孔19内で対向させる。その後、粒子捕捉ノズル8の接続されているチューブを加圧状態にして、先端の開口部に吸着している粒子3を開放し、粒子アレイ用キャピラリ25に移動させる。このとき、粒子アレイ用キャピラリ25の内部を吸引することで、効率よく粒子3を粒子アレイ用キャピラリ25内部へ誘導する。
【0046】
図10は、本実施例により、m×n個の収納部1を持った粒子収納プレート2を用いて得られる複数本の粒子アレイ用キャピラリ25の例を模式的に示した断面図である。この段階では、キャピラリ内に導入した粒子3がこぼれ出さず、且つ、整然と配列された状態を保つように、キャピラリ内径を外径とする中空の細管を両端に挿入して粒子3の移動を阻止するようにするが、図示では左側に挿入される細管を図示省略した。これは、粒子アレイキャピラリ25のキャピラリ内には試料を導入する必要があるからである。
【0047】
図9の粒子アレイ作成装置の例により、24種類のDNA固定化粒子を順番に配列し、作製した任意の順のDNAプローブ付きの粒子アレイ用キャピラリにより、蛍光標識を施した特定のターゲットDNAを、DNAプローブアレイ上でハイブリダイズさせる使用例を図11(A)、図11(B)を参照して説明する。
【0048】
図11(A)、図11(B)では、塩基配列の異なる24種類の5’−チオール基修飾した18ベースの合成オリゴヌクレオチドの24種類のプローブDNAのうち、配列1を有する一本鎖DNAプローブ28を固定した粒子及び配列2を有する一本鎖DNAプローブ29を固定した粒子をそれぞれ有する粒子アレイ用キャピラリ25に、配列1に相補的なCy3標識した配列3を有する一本鎖ターゲットDNA30及び配列2に相補的な配列4を有するTexasRed標識した一本鎖ターゲットDNA31を含む試料を流して、プローブDNAにターゲットDNAが意図のとおりに結合するかどうかを検証した。
(配列1)5’-thiol-ATCTGACT・・・GCTCCTC-3’
(配列2)5’-thiol-CTACCTGC・・・CTGGACG-3’
(配列3)5’-Cy3-GAGGAGCC・・・GTCAGAT-3’
(配列4)5’-TexasRed-CGTCCAGG・・・CAGGTAG-3’
【0049】
一本鎖ターゲットDNA30と一本鎖ターゲットDNA31をそれぞれ1μMの濃度で含んだ20mMリン酸バッファー(pH7.0)溶液32を、図11(A)に示すように、DNAプローブアレイが作製されている粒子アレイ用キャピラリ25内に流し、45℃でハイブリダイゼーション反応を行った。キャピラリ内への送液は、シリンジポンプを用いて行った。反応後、ハイブリダイゼーション反応に寄与しなかった残留ターゲットDNAを20mMリン酸バッファー(pH7.0)溶液32と純水で順に洗浄し乾燥させた。その後、水銀ランプを光源とし、Cy3とTexasRedの発光波長を中心としたCy3用ロングパスフィルターとTexasRed用ロングパスフィルターを順に用いて、粒子アレイ用キャピラリ内の各粒子を蛍光顕微鏡33により観察した。
【0050】
その結果、図11(B)に示す通り、並んだ粒子のうち、所定の粒子がCy3の蛍光34を、さらに他の所定の粒子がTexasRedの蛍光35をそれぞれ発しているのを観察した。このことは、一本鎖DNAプローブ28に対して一本鎖ターゲットDNA30が、一本鎖DNAプローブ29に対して一本鎖ターゲットDNA31が確実にハイブリダイズしたことを示しており、この粒子アレイ作製装置により、任意の順列で、プローブに影響を与えず、粒子アレイ用キャピラリ25内にDNAプローブアレイを作製できることを確認した。
【0051】
[実施例3]
生体分子プローブを固定するガラス粒子やプラスティック粒子は、大きさにばらつきがあるものが多い。また、遺伝子検査のアッセイ系の違いにより、使用する粒子の大きさが異なる。ここでは、1種類の粒子捕捉ノズル8で、粒子捕捉ノズルの先端孔径よりも大きく、粒子捕捉ノズル8の外径以下である様々な粒子を操作したモデル実験について説明する。
【0052】
実験では、単一粒子捕捉装置に外径が1mm、内径が0.04mmの粒子捕捉ノズル8をマウントした図13の粒子配列装置を用いて、0.05mmの粒子36、0.1mmの粒子37、0.3mmの粒子38、0.5mmの粒子39、1mmの粒子40を、5本の異なる流路断面積を持つ流路チップ41上に粒子の大きさ別に配列した。図12(A)は粒子配列前の流路チップの模式図であり、図12(B)は粒子配列後のチップの模式図である。
【0053】
チップ上の5本の流路の断面形状は、四角でも、円形でも良い。本実施例では、断面が正方形の流路を有するチップを用いた。具体的には、1辺が0.07mmの四角流路43、1辺が0.13mmの四角流路44、1辺が0.35mmの四角流路45、1辺が0.6mmの四角流路46、1辺が1.2mmの四角流路47と、5本の流路を持つチップ41を用いた。また、各流路内には、粒子のストッパとして堰48が設けられており、粒子導入口49と呼ぶ円形上で流路に繋がる穴を通じて、粒子が導入される。50は、配管取付け口であり、粒子アレイチップ42を作製する時は、この口とチューブを繋ぎ、さらに、吸引ポンプに繋げることで、流路内を吸引する。つまり、配管取付け口50側から、吸引効果により粒子を流路内へ効率よく導入することができる。
【0054】
図13は、粒子アレイチップ作製装置の構成を模式的に示した図である。図9に示した装置と基本構成は同じであるが、流路チップ41の流路一端に位置する粒子導入口48に直接、単一粒子捕捉装置で捕捉した粒子を導入する形態となっており、さらに、配管取付け口50側がチューブを介して、粒子導入用吸引ポンプ22が繋がっている。
【0055】
外径1mm、内径0.04mmの粒子捕捉ノズル8を5本設置し、粒子収納プレート2には、図13のx軸方向の4列には同じ直径の粒子を収納し、図13のy軸方向の5列には異なる直径の粒子を収納し、m列方向の各収納部から粒子捕捉ノズル8によって1個ずつ粒子を取り出し、5本の流路を持つ流路チップ41に導入する。単一粒子捕捉装置の振動条件は、振動周波数20Hz、振幅1mmとした。
【0056】
配列後の2次元粒子アレイチップ42の模式図を図12(B)に示す。1辺が0.07mmの四角流路43には直径0.05mmの粒子36が、1辺が0.13mmの四角流路43には直径0.1mmの粒子36が、1辺が0.35mmの四角流路44には直径0.3mmの粒子37が、1辺が0.6mmの四角流路45には直径0.5mmの粒子38が、1辺が1.2mmの四角流路47には直径1mmの粒子40がそれぞれ配列されており、配列個数が同じであることから、1個ずつ粒子を捕捉して導入していることが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】粒子の調製法及び粒子収納プレートの構成例の説明図。
【図2】本発明による単一粒子捕捉装置の概略説明図。
【図3】横揺れ振動を説明する図。
【図4】回転揺れ振動を説明する図。
【図5A】粒子捕捉ノズルを収納部へ挿入する直前の様子を示す模式図。
【図5B】粒子捕捉ノズルを収納部へ挿入した様子を示す模式図。
【図5C】収納部に振動を印加した様子を示す模式図。
【図5D】粒子捕捉ノズルを沈殿している粒子群から離した瞬間の様子を示す模式図。
【図5E】粒子捕捉ノズルを収納部から外へ抜き出した様子を示す模式図。
【図6】粒子の捕捉個数と振動周波数との関係を示すグラフ。
【図7】粒子捕捉の様子を示す顕微鏡写真。
【図8】粒子捕捉の様子を示す顕微鏡写真。
【図9A】本発明による粒子アレイ作製装置の構成例を示す模式図。
【図9B】本発明による粒子アレイ作製装置の構成例を示す断面模式図。
【図10】本発明の粒子アレイ作製装置を用いて作製した複数本の粒子アレイを示す模式図。
【図11】粒子アレイを用いてハイブリダイゼーション実験を行う方法と反応結果を示す模式図。
【図12】複数の流路に異なる直径の粒子を配置した粒子アレイチップ示す模式図。
【図13】本発明による粒子アレイチップ作製装置の構成例を示す模式図。
【図14】粒子捕捉ノズルの模式図。
【符号の説明】
【0058】
1…収納部、2…粒子収納プレート、3…粒子、4…粒子容器、5…プローブ固定化粒子、6…粒子収納プレート用ステージ、7…振動発生機、8…粒子捕捉ノズル、9…吸引ポンプ、10…チューブ、11…粒子捕捉ノズル保持部材、12…第1の電動アクチュエータ、13…第2の電動アクチュエータ、14…溶液、15…電磁弁、16…粒子群、17…気液界面、18…基台、19…移動補助貫通孔、20…第1の画像センサ、21…第2の画像センサ、22…粒子導入用吸引ポンプ、23…吸引加圧ポンプ、24…制御用コンピュータ、25…粒子アレイ用キャピラリ、26…ソケット、27…ホルダ、33…蛍光顕微鏡、46…流路チップ、47…粒子アレイチップ、48…堰、49…粒子導入口、50…配管取付け口
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にDNA、RNA、タンパク質などの生体分子プローブが固定された粒子を1個ずつ操作するための粒子捕捉装置、及び複数の粒子を1個ずつ操作して容器内に配列するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム計画の進展とともにDNAレベルで生体を理解し、病気の検査や生命現象を理解しようとする動きが活発化してきた。生命現象の理解や遺伝子の働きを調べるには遺伝子の発現状況を調べることが有効である。この遺伝子の発現状況を調べるのに有力な方法として、スライドガラス等の固体表面上に数多くのDNAプローブを種類毎に区分けして固定したプローブアレイ、いわゆるDNAチップが用いられてきている。DNAチップを作る方法としては、光化学反応と半導体工業で広く使用されるリソグラフィーを用いて、区画された多数のセルに設計された配列のオリゴマーを1塩基ずつ合成していく方法(Science 251, 767-773 (1991))、及び複数種類のDNAプローブを各区画に1つ1つ植え込んでいく方法(Science 270, 467-470 (1995); Nat. Biotechnol. 18, 438-441 (2000))がある。
【0003】
DNAチップの作製にあたっては、何れの方法も1枚1枚のアレイ毎に、DNAプローブを固定するか、オリゴマーを1塩基ずつ合成する必要があり、製作に手間と時間がかかり、コスト高になる。また、プローブを固体表面に液滴としてのせて固定化するので、区画ごとにばらつきが出る、プローブ種の組み合わせの変更が容易でない、使用者が容易に操作できない、等の難点がある。
【0004】
以上の課題を解決するために、粒子にDNAプローブを固定したものを用意し、これら複数種類の粒子を集めたプローブアレイ、すなわち粒子アレイが提案されている(Clinical Chemistry 43, 1749-1756 (1997); Nucleic Acids Research 30, e87 (2002);米国特許第6,023,540号明細書)。粒子を用いたプローブアレイの利点は、溶液中の化学反応を利用したプローブ固定方法が利用できるため、粒子毎にプローブ密度にばらつきのないプローブアレイを作製することができることである。
【0005】
DNAチップでは、オリゴマー作製位置もしくは各DNAプローブのスポット位置によりプローブ種を識別する方法をとっているが、プローブ固定化粒子を用いたプローブアレイでは、プローブ毎に色分けした粒子を用いる方法(Clinical Chemistry 43, 1749-1756 (1997); 米国特許第6,023,540号明細書)、又はキャピラリ内に並べる順序でプローブ種を識別する方法(Nucleic Acids Research 30, e87 (2002))をとっている。
【0006】
DNAチップでは、計測試料中に含まれる複数種類のDNAの同定、定量解析に、半日から一日の時間を費やして、チップ上に固定したオリゴマー又はDNAと反応させる。一方、キャピラリ内に粒子を並べたプローブアレイ、即ち粒子アレイでは、計測試料をキャピラリ内に強制的に流す。粒子アレイは、従来法と比較して遺伝子検査時間を短縮できるため、病院など、臨床現場での使用に適した計測技術である。例えば、緊急な診断が要求される感染症、細菌検査等での病原微生物ゲノムの自己に存在しない外来遺伝子の迅速な検出手段として使用することが期待できる。
【0007】
キャピラリ内に並べる順序でプローブ種を識別する方法(Nucleic Acids Research 30, e87 (2002))をとる粒子アレイの実用化にあたっては、任意のプローブ固定化粒子を検査用途に合わせて選択し、思い通りに配列する方法を確立することが必須であり、幾つかの方法が提案された。例えば、粒子を1個ずつ制御しながら液体の流れを利用してキャピラリ内に流し込む方法(特開平11-243997号公報)や、粒子が1つしか入らない微細な穴が設けられたシート上に、溶媒とともに導入された複数の粒子の中から1つの粒子だけを保持して、保持したままシートをキャピラリあるいは平板に設けた溝の位置まで移動して並べていく方法(特開2000-346842号公報)がある。しかしながら、これらの方法は、気泡の影響で粒子をうまく取り込めない場合が多く、確実性や操作性に問題があった。
【0008】
そこで、粒子捕捉ノズルを用いて、同一プローブが固定された複数の粒子の中から粒子を1個だけ、粒子捕捉ノズルの先端吸引部に捕捉する方法が提案された(特許第3593525号、特開2005-17224号公報、Analytical Chemistry 75, 3250-3255 (2003))。この方法によると、意図した順番に粒子を配列することができる。粒子捕捉ノズルの先端吸引部のみに粒子を1つだけ捕捉するためには、粒子捕捉ノズルの側面に静電気等の原因で付着する余分な粒子を取り除く必要があり、そのための手段として、空気と溶液の境界に生じる気液界面の表面張力を用いている。粒子捕捉ノズル側壁に付着した余分な粒子は、粒子捕捉ノズルを溶液から空気中へ抜き出す際に、界面を通過できず界面の溶液側に保持される。界面に保持された粒子は空気中へ移動できないため、側壁に付着した粒子は、粒子捕捉ノズルの側壁に沿ってすべり落ち、溶液中に残される。その結果、粒子捕捉ノズルを空気中へ抜き出すことで、吸引により捕捉されている粒子1個のみが、粒子捕捉ノズルに捕捉されることになる。ただし、ノズルの先端面は気液界面の力を受けないため、先端面に付着した粒子は、空気中へ取り出されてしまう。これを防ぐために、吸引部以外で粒子が付着するスペースを先端面に設けないようにする必要があり、粒子の直径と同程度の外径を有する粒子捕捉ノズルを用いる必要があった。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,023,540号明細書
【特許文献2】特開平11-243997号公報
【特許文献3】特開2000-346842号公報
【特許文献4】特許第3593525号
【特許文献5】特開2005-17224号公報
【非特許文献1】Science 251, 767-773 (1991)
【非特許文献2】Science 270, 467-470 (1995)
【非特許文献3】Nat. Biotechnol. 18, 438-441 (2000)
【非特許文献4】Clinical Chemistry 43, 1749-1756 (1997)
【非特許文献5】Nucleic Acids Research 30, e87 (2002)
【非特許文献6】Analytical Chemistry 75, 3250-3255 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、生体物質の固定に用いるガラス製粒子やプラスティック製粒子では、大きさにばらつきがあり、予め粒子の大きさに合わせて用意した粒子捕捉ノズルを用いても、2個以上の粒子が粒子捕捉ノズルの先端面に捕捉される場合があった。また、一方で、異なる直径の粒子を同一アレイ上に配列する場合、粒子の直径によって粒子捕捉ノズルの外径が制限されるため、従来の粒子捕捉ノズルを用いた方法では、捕捉する粒子の大きさ毎に適した粒子捕捉ノズルを各々用意する必要があった。
【0011】
本発明は、粒子の外径によらず粒子を確実に1個ずつ捕捉し、操作することができる単一粒子捕捉装置を提供すること、及びその単一粒子捕捉装置を用いた粒子配列装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、複数の粒子と溶液を納める複数の容器を有する粒子収納プレートと、粒子収納プレートを設置するステージが取り付けられた振動発生機と、吸引ポンプと連結され先端に粒子を吸引して操作する粒子捕捉ノズルを用いる。
【0013】
本発明の単一粒子捕捉装置は、複数の粒子の入った溶液を収納する容器と、容器を振動させるための振動発生機と、先端に粒子を捕捉する細長い粒子捕捉ノズルと、粒子捕捉ノズルに連結した吸引機と、粒子捕捉ノズルの先端部を容器中の溶液に挿入し、引き上げるためのアクチュエータとを有する。粒子捕捉ノズルの先端に開口する孔は粒子の直径より小さく、粒子捕捉ノズルの先端の外径は粒子の直径より大きい。振動発生機は周波数20Hz以上の振動を発生する。振動の振幅は0.1mm以上であることが好ましい。
【0014】
本発明による粒子配列方法は、生体分子プローブを表面に固定した粒子が複数入った溶液中に、先端に粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルを挿入する工程と、粒子捕捉ノズルの先端に吸引力を作用させる工程と、容器を振動させる工程と、先端に1個の粒子を吸引保持した粒子捕捉ノズルを容器の溶液から引き出す工程と、粒子捕捉ノズルの先端に吸引保持している粒子を粒子配列容器に導入する工程とを有する。
【0015】
本発明による粒子配列装置は、それぞれ複数の粒子が入った溶液を収納する複数の容器を保持するステージと、先端に前記粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルと、粒子捕捉ノズルを駆動するアクチュエータと、粒子捕捉ノズルの先端に正又は負の圧力を発生させる吸引加圧手段と、ステージを振動させる手段と、粒子を収容する粒子配列容器を保持する粒子配列容器保持部と、制御部とを備え、制御部は、アクチュエータを制御して、振動しているステージ上の容器に粒子補足ノズルを挿入し、吸引加圧手段を制御して粒子捕捉ノズルの先端に負の圧力を発生させて先端に1個の粒子を捕捉した状態で、アクチュエータを制御して粒子捕捉ノズルを容器から引き上げ、次に、アクチュエータを制御して、先端に1個の粒子を捕捉した粒子補足ノズルを粒子配列容器の位置に移動させ、吸引加圧手段を制御して先端に正の圧力を発生させて捕捉した粒子を粒子配列容器に導入する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生体分子を固定した粒子を確実に1個だけ捕捉でき、捕捉した粒子を並べた粒子アレイを、低い製造コストで効率よく作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
まず、図1を用いて、表面に生体分子を固定した粒子の調製方法について説明する。m×n個の収納部1を有する粒子収納プレート2と、粒子群と、粒子3を修飾する複数種のDNA、RNA又はタンパク質等の生体分子プローブとを用意する。用意する粒子収納プレート2上の収納部1は、x方向に第1の中心間隔で等間隔に配置されており、x方向と直交するy方向に第2の間隔で等間隔に配置されている。収納部1は円形の上部開口を持ち、z方向に平行な中心軸を持ち、底部を持つ円柱、又は円錐の形状をしている。このような複数の収納部1を有する粒子収納プレート2としては、例えば市販の384穴マイクロタイタープレートを用いることができる。粒子3のサイズは、ガラスキャピラリを粒子捕捉に用いる場合、好適には直径10μm以上の球状のものを使用するのが好ましいが、半導体のエッチング技術で微細加工した専用の粒子捕捉ノズルを使用すれば、直径数μmの粒子も使用できる。
【0018】
粒子容器4から、薬さじを用いて粒子収納プレート2の各収納部1に、数mg単位で用意した粒子3を分配し、収納部1の1列を単位として、又は各収納部1に、異なる種類のプローブを導入して、全ての粒子表面にプローブを固定させる。これにより、収納部1の位置によりプローブの種類が対応づけられたプローブ固定化粒子5を複数種保持した粒子収納プレート2を用意できる。本例では、n種類の生体分子プローブを用意し、第1列のm個の収納部にはNo.1の生体分子プローブを、第2列のm個の収納部にはNo.2の生体分子プローブを、‥‥、第n列のm個の収納部にはNo.nの生体分子プローブを導入して、各収納部1に収納された粒子3にプローブを固定した。粒子収納プレート2は、粒子3に固定したプローブがDNA等の化学的に比較的安定な生体分子の場合、一度作製した粒子収納プレート2をデシケータ内で保存、もしくは冷蔵庫で保存できるため、作り置きが可能である。各収納部1に純水等の溶液を導入した粒子収納プレート2は、後述する単一粒子捕捉装置ならびに粒子配列装置の粒子収納プレート用ステージ6に設置される。
【0019】
図2は、本発明による単一粒子捕捉装置の例を示す概略説明図である。この単一粒子捕捉装置は、粒子収納プレート2を設置する粒子収納プレート用ステージ6が取り付けられた振動発生機7、粒子捕捉ノズル8、吸引ポンプ9、粒子捕捉ノズル8をz方向に駆動する第1の電動アクチュエータ12及びxy方向に駆動する第2の電動アクチュエータ13を有する。粒子捕捉ノズル8は、電動アクチュエータ12に固定された粒子捕捉ノズル保持部材11に保持され、チューブ10によって吸引ポンプに接続されている。振動発生機7は、振幅と振動周波数を可変できる。単一粒子捕捉装置を具備した粒子アレイ作製装置の構成については、後述する。
【0020】
振動発生機7は、図3に示すように、粒子収納プレート用ステージ6をx軸又は、y軸の向きに動かし、粒子収納プレート2を振動させる。図3(A)、(B)、(C)は、x軸方向に往復で揺れを生じさせる場合を示している。振動発生機7は、図4(A)〜(F)に示すように、粒子収納プレート2を、ある中心を基点にして回転駆動するようにしてもよい。また、z方向に振幅が加わる形態でも良い。しかし、粒子収納プレート2をz方向に振動させると、収納部1内の溶液が溢れやすく、粒子捕捉ノズル8と収納部1の底部とがぶつかり合う危険があり、装置を安全に稼動させるという面では好ましくない。また、粒子捕捉ノズル8に振動を与える形態でも良いが、粒子捕捉ノズル保持部材11の位置決め精度の劣化と、粒子捕捉ノズル8先端の位置再現性が劣化するため、装置を安定に運転させるという観点では、好適ではない。
【0021】
図14(A)、(B)は、粒子捕捉ノズル8の形態を模式的に示したものである。図14(A)は、先端から終端まで、内径、外径に変化がない典型的な粒子捕捉ノズル8の構造を示し、この構造の粒子捕捉ノズルは市販のキャピラリで代用できる。図14(B)は、先端部がテーパー状に細くなっている粒子捕捉ノズルの構造を示し、この構造の粒子捕捉ノズルは半導体製造に用いるワイヤーボンディング用キャピラリで代用できる。また、半導体のエッチング加工によっても、これらのノズルは作製可能である。ノズルの材質には、ステンレス、ガラス、セラミック、ルビー、シリコンなどが用いられる。以下の実施例では、図14(A)に示したような平坦な先端形状を有する粒子捕捉ノズルを使用した。
【0022】
図5A〜図5Eは、図2の単一粒子捕捉装置を用いて、収納部1に溶液14とともに収納された複数の粒子から1個の粒子3だけを取り出す工程を示す断面模式図である。溶液14は、ここでは純水である。
【0023】
図5Aは、目的とする粒子3を保持している収納部1の開口部が粒子捕捉ノズル8の開口部とz方向で対向する位置になるように、第2の電動アクチュエータ13で粒子捕捉ノズル8を移動した状態を示している。図は、まさに、目的とする収納部1へ粒子捕捉ノズル8が挿入されるところである。このとき、粒子捕捉ノズル8に連結した吸引ポンプ9が駆動し、粒子捕捉ノズル8の先端を負圧状態にする。又は、吸引ポンプ9は常時駆動させておき、粒子捕捉ノズル8と吸引ポンプ9の間に電磁弁15を挿入しておき、電磁弁15を開閉制御するようにしても良い。
【0024】
図5Bは、第1の電動アクチュエータ12の制御により、粒子捕捉ノズル保持部材11がz方向に下降し、内部を負圧にした粒子捕捉ノズル8の下端が収納部1の内部に挿入された状態を示している。挿入した状態では、粒子捕捉ノズル8の先端面が、収納部1の底に接する程度が良い。これは、粒子3の収納量が少ない場合に、粒子捕捉ノズル8の先端が粒子3と接触できず、捕捉効率が低下するのを防ぐためである。
【0025】
図5Cは、振動発生機7を駆動し、粒子収納プレート2を所定の周波数、所定の振幅で振動させた状態を示している。図は、x軸方向にのみ振動させている状態を示している。加える振動は、溶液14の液面が揺れる程度で十分であり、粒子3が攪拌される必要はない。つまり、沈殿した粒子群全体に一定の振動が与えられている状態である。ここで与える周波数と振幅の上限と下限については、図6の実験結果をもとに後述する。なお、図5Cでは、粒子捕捉ノズル8を挿入した後に、振動発生機7を駆動しているが、図5Aの時点から、振動発生機7を駆動した状態にしておいても良い。
【0026】
図5Dは、第1の電動アクチュエータ12を制御して、粒子捕捉ノズル8が収納部1の底に沈殿している粒子群からまさに離れた瞬間を示している。この時、ノズル先端に粒子3が1個だけ捕捉される。後で説明する下限以下の周波数での振幅の場合、粒子3は、先端面に複数付着する。また、粒子捕捉ノズル8の側壁にも粒子3が吸着する。
【0027】
図5Eは、図5Dの状態より、さらにz方向に粒子捕捉ノズル8を動かした状態を示しており、粒子捕捉ノズル8の先端部が、溶液14と大気の界面を通過し、収納部1の溶液14から、粒子捕捉ノズル8の先端が完全に大気中へ抜き出された状態を示している。
【0028】
図5A〜図5Eで説明した工程により、確実に、粒子捕捉ノズル8の先端に粒子3が1個だけ保持される。
【0029】
[実施例1]
図6は、振動周波数と捕捉された粒子3の個数との関係を示した図である。図5Cのx軸方向に振動させる周波数及び振幅を変化させた時の粒子の捕捉状況を示したものである。実験では、直径0.1mmの粒子を用い、内径0.05mm、外径0.4mmの粒子捕捉ノズル8を用いた。また、収納部1としては、開口部の直径が3.5mmの384穴マイクロタイタープレートのウェルを用いた。収納部1には、薬さじで粒子3を3mg導入し、純水14を60μL加えた。周波数ごとに粒子を補足する操作を10回繰り返し、捕捉された粒子数の平均を算出してグラフ化した。
【0030】
図6には、周波数が高いほど、振幅が小さくて済むことが示されている。しかし、振幅が0.1mm未満では、周波数を高くしても粒子3を1個だけ捕捉することができないことが示されている。このことから、周波数20Hz、振幅0.1mm以上が、単一粒子捕捉に必要な振動の下限値であるといえる。また、振幅0.4mm以上の範囲では、20Hz以上の振幅周波数を印加することで、確実に粒子を1個だけ捕捉できることが示されている。これは、ノズルの外径以上の振幅を与えれば、20Hz程度の周波数で粒子3を1個だけ捕捉できるという結果を示している。
【0031】
振動の周波数が1000Hz以上では、何れの振幅においても、粒子3が取りづらくなっていることがわかる。ただし、粒子捕捉ノズル8の内部構造において、内径を大きく、さらに、先端部以外の内径を大きくして、吸引路の流路抵抗を小さくし、流速を早くする等の変更を行えば1000Hz以上でも粒子を捕捉することが可能であると期待される。また、振幅は、収納部1の関係上、3mmまでしか変化させていないが、本結果から、振幅3mm以上でも粒子が捕捉できることは明らかである。
【0032】
振幅0.1mmから3mmの範囲で、粒子の制御が可能であったが、粒子捕捉ノズル8が粒子群中に挿入されているときに大きな振幅を与えると、粒子捕捉ノズルに負荷がかかり、先端部が曲がってしまう、さらには、先端部が破損する可能性があるため、振幅は小さく設定した方が良い。
【0033】
図7及び図8は、本発明の単一粒子捕捉装置を用いた粒子捕捉の様子を示したものである。図7は、振動発生機7により振動を与えた時の粒子捕捉工程を示す連続顕微鏡写真の一部である。振動の条件は、周波数20Hzで、振幅は0.4mmである。図7(A)は、内部を負圧にした粒子捕捉ノズル8が収納部1内の微粒子群16内へ挿入された状態を示す顕微鏡像である。図7(B)は、粒子捕捉ノズル8が収納部1の底に沈殿している粒子群16から離れた瞬間の顕微鏡像である。この時点で、粒子捕捉ノズル8の先端のみに粒子3が1個だけ捕捉されているのがわかる。図7(C)は、粒子捕捉ノズル8の先端を大気中へ抜き出した状態を示す顕微鏡像である。図7(C)から、気液界面を通過させた後でも、粒子捕捉ノズル8の先端に粒子3が1個だけ捕捉されているのがわかる。
【0034】
図8は、振動発生機7による振動の周波数が20Hz未満である時の粒子捕捉結果を示す連続顕微鏡撮影の一部である。振動の条件は、周波数10Hz、振幅0.3mmである。図8(A)は、内部を負圧にした粒子捕捉ノズル8が収納部1内の微粒子群16内へ挿入された状態を示す顕微鏡像である。図8(B)は、粒子捕捉ノズル8が収納部1の底に沈殿している粒子群16から離れた瞬間の顕微鏡像である。図8(B)から、溶液14中では、粒子捕捉ノズル8の側面、及び先端面の吸引部以外の個所にも粒子が複数個付着しているのがわかる。図8(C)は、粒子捕捉ノズル8の先端を大気中へ抜き出した状態を示す顕微鏡像である。大気中に粒子捕捉ノズル8を抜き出した結果、側面の粒子は、気液界面17の表面張力により除去されているが、先端面には、余分な粒子3が付着したままであるのがわかる。
【0035】
図7と図8の結果は、収納部1である粒子と溶液を含む容器に適切な振動を印加することで、粒子群16から粒子3を1個だけ、粒子捕捉ノズル8の先端に吸着して捕捉することができることを示している。
【0036】
[実施例2]
図9A、図9Bは本発明による単一粒子捕捉装置を具備した粒子アレイ作製装置の構成を示す模式図であり、図9Aは斜視図、図9Bは断面図である。板状の基台18には、本発明の単一粒子捕捉装置を構成する、振動発生機7、粒子収納プレート用ステージ6が設けられ、その上方には、粒子捕捉ノズル保持部材11に保持された粒子捕捉ノズル8が配置されている。粒子捕捉ノズル8は、吸引加圧ポンプ23に接続されている。また、粒子捕捉ノズル保持部材11は、第1の電動アクチュエータ12と第2の電動アクチュエータ13によって駆動される。基台18には移動補助貫通孔19が設けられ、第1の画像センサ20、第2の画像センサ21、粒子導入用吸引ポンプ22が設けられている。24は制御用コンピュータである。
【0037】
単一粒子捕捉装置の詳細に関しては、図1から図4で説明したが、本実施例では、粒子捕捉ノズル8を複数本並べた構成をとっている。粒子捕捉ノズル8はy軸方向に平行に、且つ、粒子収納プレート2の収納部1と同じ間隔でn個設けられている。図の例では、5本であるが、直径3.5mm、深さ9.6mmの収納部1をx軸方向に24個(m=24)、y軸方向に16個(n=16)、合計384個配置したマイクロタイタープレートを使用する場合には、y軸方向に平行に16本の粒子捕捉ノズル8を設置するのが好ましい。これらの粒子捕捉ノズル8の先端部の位置をz軸方向でそろえ、且つ、群として扱えるように、粒子捕捉ノズル保持部材11により固着保持する。また、粒子捕捉ノズルは吸引だけでなく加圧が可能な吸引加圧ポンプ23に接続されており、弁の切り替えにより、吸引と加圧を任意に選択できるようになっている。
【0038】
移動補助貫通孔19は、粒子収納プレート2のy軸方向に配列された収納部1と平行、且つ、同じ間隔でn個設けられている。移動補助貫通孔19は断面が円形であり、z軸と平行な中心軸を持つ。移動補助貫通孔19は、後述するように、複数の粒子捕捉ノズル8と複数の粒子アレイ用キャピラリ25をガイドして、粒子捕捉ノズル8の先端の開口部に吸着されている粒子3を粒子アレイ用キャピラリ25に注入する補助を行うものであるから、その内径は、粒子アレイ用キャピラリ25と粒子捕捉ノズル8が安全に動くことができるものとされる。例えば、粒子捕捉ノズル8が外径0.4mm、内径0.05mmであるときには、移動補助貫通孔19の内径は0.5mmとする。
【0039】
第1の画像センサ20は、移動補助貫通孔19に平行して隣接した位置に設けられる。この画像センサ20は、粒子捕捉ノズル8が移動補助貫通孔19に導入される前に、粒子捕捉ノズル8の先端に粒子3が1個ずつ捕捉されているかどうか確認するために使用される。第1の画像センサ20の出力により、粒子3が捕捉されていない粒子捕捉ノズル8があることがわかったときは、粒子捕捉ノズル8による粒子捕捉操作をやり直す。
【0040】
第2の画像センサ21は、第1の画像センサ20と対向する位置で、基台18の下面側に設けられ、粒子アレイ用キャピラリ25に粒子3が導入されたかどうかを確認するために使用される。
【0041】
粒子アレイ用キャピラリ25は、y軸方向に平行に、且つ、粒子収納プレート2の収納部1と同じ間隔でn個設けられており、粒子捕捉ノズル8とも対応している。図の例では、5個であるが、上述のタイタープレートの例の構成では、y軸方向に平行に16個設けられる。粒子アレイ用キャピラリ25の一端は開口部とされ、他端は、チューブを介して粒子導入用吸引ポンプ22につながれ、吸引されている。粒子アレイ用キャピラリ25の端部とチューブとは、ソケット26を介して接続するのが良い。ここで、ソケット26は粒子3が通過できないように、粒子3の外径よりも小さい内径を持つ。
【0042】
図9の粒子アレイ作製装置を用いて、粒子アレイ用キャピラリ25の内部に粒子3を1つずつ順次吸引して、吸引される順序を保持した状態で、内部に複数の粒子3を配列する。
【0043】
また、粒子3の直径をRとする時、粒子アレイ用キャピラリ25の内径IDは、R<ID<2Rなる関係を満たしている。粒子3の直径が0.1mmであるときは、粒子アレイ用キャピラリ25の内径0.15mm、外径0.38mmとすれば良い。
【0044】
粒子アレイ用キャピラリ25の開口部側の端部は、これらの粒子アレイ用キャピラリ25の先端部の位置をz軸方向でそろえ、且つ、群として扱えるように、ホルダ27により固着的に保持するのが良い。勿論、必要な粒子3が挿入された後では、ホルダ27による保持を解除して、個々の粒子アレイ用キャピラリ25として取り扱えるようにするのが良い。
【0045】
図1及び図2を用いて既に説明した単一粒子捕捉装置の動作工程を経て、粒子捕捉ノズル8の先端開口部に粒子3を吸着した後、第1の電動アクチュエータ12と第2の電動アクチュエータ13で粒子捕捉ノズル8を移動させて、粒子捕捉ノズル8の先端開口部と粒子アレイ用キャピラリ25の開口部とを、移動補助貫通孔19内で対向させる。その後、粒子捕捉ノズル8の接続されているチューブを加圧状態にして、先端の開口部に吸着している粒子3を開放し、粒子アレイ用キャピラリ25に移動させる。このとき、粒子アレイ用キャピラリ25の内部を吸引することで、効率よく粒子3を粒子アレイ用キャピラリ25内部へ誘導する。
【0046】
図10は、本実施例により、m×n個の収納部1を持った粒子収納プレート2を用いて得られる複数本の粒子アレイ用キャピラリ25の例を模式的に示した断面図である。この段階では、キャピラリ内に導入した粒子3がこぼれ出さず、且つ、整然と配列された状態を保つように、キャピラリ内径を外径とする中空の細管を両端に挿入して粒子3の移動を阻止するようにするが、図示では左側に挿入される細管を図示省略した。これは、粒子アレイキャピラリ25のキャピラリ内には試料を導入する必要があるからである。
【0047】
図9の粒子アレイ作成装置の例により、24種類のDNA固定化粒子を順番に配列し、作製した任意の順のDNAプローブ付きの粒子アレイ用キャピラリにより、蛍光標識を施した特定のターゲットDNAを、DNAプローブアレイ上でハイブリダイズさせる使用例を図11(A)、図11(B)を参照して説明する。
【0048】
図11(A)、図11(B)では、塩基配列の異なる24種類の5’−チオール基修飾した18ベースの合成オリゴヌクレオチドの24種類のプローブDNAのうち、配列1を有する一本鎖DNAプローブ28を固定した粒子及び配列2を有する一本鎖DNAプローブ29を固定した粒子をそれぞれ有する粒子アレイ用キャピラリ25に、配列1に相補的なCy3標識した配列3を有する一本鎖ターゲットDNA30及び配列2に相補的な配列4を有するTexasRed標識した一本鎖ターゲットDNA31を含む試料を流して、プローブDNAにターゲットDNAが意図のとおりに結合するかどうかを検証した。
(配列1)5’-thiol-ATCTGACT・・・GCTCCTC-3’
(配列2)5’-thiol-CTACCTGC・・・CTGGACG-3’
(配列3)5’-Cy3-GAGGAGCC・・・GTCAGAT-3’
(配列4)5’-TexasRed-CGTCCAGG・・・CAGGTAG-3’
【0049】
一本鎖ターゲットDNA30と一本鎖ターゲットDNA31をそれぞれ1μMの濃度で含んだ20mMリン酸バッファー(pH7.0)溶液32を、図11(A)に示すように、DNAプローブアレイが作製されている粒子アレイ用キャピラリ25内に流し、45℃でハイブリダイゼーション反応を行った。キャピラリ内への送液は、シリンジポンプを用いて行った。反応後、ハイブリダイゼーション反応に寄与しなかった残留ターゲットDNAを20mMリン酸バッファー(pH7.0)溶液32と純水で順に洗浄し乾燥させた。その後、水銀ランプを光源とし、Cy3とTexasRedの発光波長を中心としたCy3用ロングパスフィルターとTexasRed用ロングパスフィルターを順に用いて、粒子アレイ用キャピラリ内の各粒子を蛍光顕微鏡33により観察した。
【0050】
その結果、図11(B)に示す通り、並んだ粒子のうち、所定の粒子がCy3の蛍光34を、さらに他の所定の粒子がTexasRedの蛍光35をそれぞれ発しているのを観察した。このことは、一本鎖DNAプローブ28に対して一本鎖ターゲットDNA30が、一本鎖DNAプローブ29に対して一本鎖ターゲットDNA31が確実にハイブリダイズしたことを示しており、この粒子アレイ作製装置により、任意の順列で、プローブに影響を与えず、粒子アレイ用キャピラリ25内にDNAプローブアレイを作製できることを確認した。
【0051】
[実施例3]
生体分子プローブを固定するガラス粒子やプラスティック粒子は、大きさにばらつきがあるものが多い。また、遺伝子検査のアッセイ系の違いにより、使用する粒子の大きさが異なる。ここでは、1種類の粒子捕捉ノズル8で、粒子捕捉ノズルの先端孔径よりも大きく、粒子捕捉ノズル8の外径以下である様々な粒子を操作したモデル実験について説明する。
【0052】
実験では、単一粒子捕捉装置に外径が1mm、内径が0.04mmの粒子捕捉ノズル8をマウントした図13の粒子配列装置を用いて、0.05mmの粒子36、0.1mmの粒子37、0.3mmの粒子38、0.5mmの粒子39、1mmの粒子40を、5本の異なる流路断面積を持つ流路チップ41上に粒子の大きさ別に配列した。図12(A)は粒子配列前の流路チップの模式図であり、図12(B)は粒子配列後のチップの模式図である。
【0053】
チップ上の5本の流路の断面形状は、四角でも、円形でも良い。本実施例では、断面が正方形の流路を有するチップを用いた。具体的には、1辺が0.07mmの四角流路43、1辺が0.13mmの四角流路44、1辺が0.35mmの四角流路45、1辺が0.6mmの四角流路46、1辺が1.2mmの四角流路47と、5本の流路を持つチップ41を用いた。また、各流路内には、粒子のストッパとして堰48が設けられており、粒子導入口49と呼ぶ円形上で流路に繋がる穴を通じて、粒子が導入される。50は、配管取付け口であり、粒子アレイチップ42を作製する時は、この口とチューブを繋ぎ、さらに、吸引ポンプに繋げることで、流路内を吸引する。つまり、配管取付け口50側から、吸引効果により粒子を流路内へ効率よく導入することができる。
【0054】
図13は、粒子アレイチップ作製装置の構成を模式的に示した図である。図9に示した装置と基本構成は同じであるが、流路チップ41の流路一端に位置する粒子導入口48に直接、単一粒子捕捉装置で捕捉した粒子を導入する形態となっており、さらに、配管取付け口50側がチューブを介して、粒子導入用吸引ポンプ22が繋がっている。
【0055】
外径1mm、内径0.04mmの粒子捕捉ノズル8を5本設置し、粒子収納プレート2には、図13のx軸方向の4列には同じ直径の粒子を収納し、図13のy軸方向の5列には異なる直径の粒子を収納し、m列方向の各収納部から粒子捕捉ノズル8によって1個ずつ粒子を取り出し、5本の流路を持つ流路チップ41に導入する。単一粒子捕捉装置の振動条件は、振動周波数20Hz、振幅1mmとした。
【0056】
配列後の2次元粒子アレイチップ42の模式図を図12(B)に示す。1辺が0.07mmの四角流路43には直径0.05mmの粒子36が、1辺が0.13mmの四角流路43には直径0.1mmの粒子36が、1辺が0.35mmの四角流路44には直径0.3mmの粒子37が、1辺が0.6mmの四角流路45には直径0.5mmの粒子38が、1辺が1.2mmの四角流路47には直径1mmの粒子40がそれぞれ配列されており、配列個数が同じであることから、1個ずつ粒子を捕捉して導入していることが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】粒子の調製法及び粒子収納プレートの構成例の説明図。
【図2】本発明による単一粒子捕捉装置の概略説明図。
【図3】横揺れ振動を説明する図。
【図4】回転揺れ振動を説明する図。
【図5A】粒子捕捉ノズルを収納部へ挿入する直前の様子を示す模式図。
【図5B】粒子捕捉ノズルを収納部へ挿入した様子を示す模式図。
【図5C】収納部に振動を印加した様子を示す模式図。
【図5D】粒子捕捉ノズルを沈殿している粒子群から離した瞬間の様子を示す模式図。
【図5E】粒子捕捉ノズルを収納部から外へ抜き出した様子を示す模式図。
【図6】粒子の捕捉個数と振動周波数との関係を示すグラフ。
【図7】粒子捕捉の様子を示す顕微鏡写真。
【図8】粒子捕捉の様子を示す顕微鏡写真。
【図9A】本発明による粒子アレイ作製装置の構成例を示す模式図。
【図9B】本発明による粒子アレイ作製装置の構成例を示す断面模式図。
【図10】本発明の粒子アレイ作製装置を用いて作製した複数本の粒子アレイを示す模式図。
【図11】粒子アレイを用いてハイブリダイゼーション実験を行う方法と反応結果を示す模式図。
【図12】複数の流路に異なる直径の粒子を配置した粒子アレイチップ示す模式図。
【図13】本発明による粒子アレイチップ作製装置の構成例を示す模式図。
【図14】粒子捕捉ノズルの模式図。
【符号の説明】
【0058】
1…収納部、2…粒子収納プレート、3…粒子、4…粒子容器、5…プローブ固定化粒子、6…粒子収納プレート用ステージ、7…振動発生機、8…粒子捕捉ノズル、9…吸引ポンプ、10…チューブ、11…粒子捕捉ノズル保持部材、12…第1の電動アクチュエータ、13…第2の電動アクチュエータ、14…溶液、15…電磁弁、16…粒子群、17…気液界面、18…基台、19…移動補助貫通孔、20…第1の画像センサ、21…第2の画像センサ、22…粒子導入用吸引ポンプ、23…吸引加圧ポンプ、24…制御用コンピュータ、25…粒子アレイ用キャピラリ、26…ソケット、27…ホルダ、33…蛍光顕微鏡、46…流路チップ、47…粒子アレイチップ、48…堰、49…粒子導入口、50…配管取付け口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子の入った溶液を収納する容器と、
前記容器を振動させるための振動発生機と、
先端に粒子を捕捉する細長い粒子捕捉ノズルと、
前記粒子捕捉ノズルに連結した吸引機と、
前記粒子捕捉ノズルの先端部を前記容器中の溶液に挿入し、引き上げるためのアクチュエータと
を有することを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項2】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記粒子捕捉ノズルの先端に開口する孔は前記粒子の直径より小さく、前記粒子捕捉ノズルの先端の外径は前記粒子の直径より大きいことを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項3】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機は周波数20Hz以上の振動を発生することを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項4】
請求項3記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機が発生する振動の振幅は0.1mm以上であることを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項5】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機は、前記容器を前記粒子捕捉ノズルの軸方向に対して垂直な方向に振動させることを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項6】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機は、前記容器の中心が前記粒子捕捉ノズルの軸方向に垂直な面内で回転するような振動を発生することを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項7】
生体分子プローブを表面に固定した粒子が複数入った溶液中に、先端に前記粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が前記粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルを挿入する工程と、
前記粒子捕捉ノズルの先端に吸引力を作用させる工程と、
前記容器を振動させる工程と、
先端に1個の粒子を吸引保持した前記粒子捕捉ノズルを前記容器の溶液から引き出す工程と、
前記粒子捕捉ノズルの先端に吸引保持している粒子を粒子配列容器に導入する工程と
を有することを特徴とする粒子配列方法。
【請求項8】
請求項7記載の粒子配列方法において、前記粒子配列容器中に、異なる生体分子プローブを固定した粒子を複数種類、順番を制御して1列に配列することを特徴とする粒子配列方法。
【請求項9】
請求項7記載の粒子配列方法において、前記粒子配列容器は同一チップ上に形成された内径寸法が異なる複数の流路を有し、前記複数の流路のそれぞれに、各内径に対応する異なる直径の粒子を導入することを特徴とする粒子配列方法。
【請求項10】
請求項7記載の粒子配列方法において、前記容器を振動させる工程では、前記容器に周波数20Hz以上の振動を与えることを特徴とする粒子配列方法。
【請求項11】
請求項10記載の粒子配列方法において、前記振動の振幅は0.1mm以上であることを特徴とする粒子配列方法。
【請求項12】
それぞれ複数の粒子が入った溶液を収納する複数の容器を保持するステージと、
先端に前記粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が前記粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルと、
前記粒子捕捉ノズルを駆動するアクチュエータと、
前記粒子捕捉ノズルの先端に正又は負の圧力を発生させる吸引加圧手段と、
前記ステージを振動させる手段と、
粒子を収容する粒子配列容器を保持する粒子配列容器保持部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記アクチュエータを制御して、振動している前記ステージ上の容器に前記粒子補足ノズルを挿入し、前記吸引加圧手段を制御して前記粒子捕捉ノズルの先端に負の圧力を発生させて先端に1個の粒子を捕捉した状態で、前記アクチュエータを制御して前記粒子捕捉ノズルを前記容器から引き上げ、次に、前記アクチュエータを制御して、先端に1個の粒子を捕捉した前記粒子補足ノズルを前記粒子配列容器の位置に移動させ、前記吸引加圧手段を制御して前記先端に正の圧力を発生させて捕捉した粒子を前記粒子配列容器に導入することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項13】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子捕捉ノズルが複数配置され、前記粒子配列容器保持部は、前記粒子捕捉ノズルと同数の粒子配列容器を保持することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項14】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子がノズル先端に保持されている状態を検出する手段を有することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項15】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子が前記粒子配列容器内に導入されている状態を検出する手段を有することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項16】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子配列容器保持部は、同一チップ上に内径寸法が異なる複数の流路を有する粒子配列容器を保持することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項1】
複数の粒子の入った溶液を収納する容器と、
前記容器を振動させるための振動発生機と、
先端に粒子を捕捉する細長い粒子捕捉ノズルと、
前記粒子捕捉ノズルに連結した吸引機と、
前記粒子捕捉ノズルの先端部を前記容器中の溶液に挿入し、引き上げるためのアクチュエータと
を有することを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項2】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記粒子捕捉ノズルの先端に開口する孔は前記粒子の直径より小さく、前記粒子捕捉ノズルの先端の外径は前記粒子の直径より大きいことを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項3】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機は周波数20Hz以上の振動を発生することを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項4】
請求項3記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機が発生する振動の振幅は0.1mm以上であることを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項5】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機は、前記容器を前記粒子捕捉ノズルの軸方向に対して垂直な方向に振動させることを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項6】
請求項1記載の粒子捕捉装置において、前記振動発生機は、前記容器の中心が前記粒子捕捉ノズルの軸方向に垂直な面内で回転するような振動を発生することを特徴とする粒子捕捉装置。
【請求項7】
生体分子プローブを表面に固定した粒子が複数入った溶液中に、先端に前記粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が前記粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルを挿入する工程と、
前記粒子捕捉ノズルの先端に吸引力を作用させる工程と、
前記容器を振動させる工程と、
先端に1個の粒子を吸引保持した前記粒子捕捉ノズルを前記容器の溶液から引き出す工程と、
前記粒子捕捉ノズルの先端に吸引保持している粒子を粒子配列容器に導入する工程と
を有することを特徴とする粒子配列方法。
【請求項8】
請求項7記載の粒子配列方法において、前記粒子配列容器中に、異なる生体分子プローブを固定した粒子を複数種類、順番を制御して1列に配列することを特徴とする粒子配列方法。
【請求項9】
請求項7記載の粒子配列方法において、前記粒子配列容器は同一チップ上に形成された内径寸法が異なる複数の流路を有し、前記複数の流路のそれぞれに、各内径に対応する異なる直径の粒子を導入することを特徴とする粒子配列方法。
【請求項10】
請求項7記載の粒子配列方法において、前記容器を振動させる工程では、前記容器に周波数20Hz以上の振動を与えることを特徴とする粒子配列方法。
【請求項11】
請求項10記載の粒子配列方法において、前記振動の振幅は0.1mm以上であることを特徴とする粒子配列方法。
【請求項12】
それぞれ複数の粒子が入った溶液を収納する複数の容器を保持するステージと、
先端に前記粒子の直径より小さい孔が開口し、先端の外径が前記粒子の直径より大きい粒子捕捉ノズルと、
前記粒子捕捉ノズルを駆動するアクチュエータと、
前記粒子捕捉ノズルの先端に正又は負の圧力を発生させる吸引加圧手段と、
前記ステージを振動させる手段と、
粒子を収容する粒子配列容器を保持する粒子配列容器保持部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記アクチュエータを制御して、振動している前記ステージ上の容器に前記粒子補足ノズルを挿入し、前記吸引加圧手段を制御して前記粒子捕捉ノズルの先端に負の圧力を発生させて先端に1個の粒子を捕捉した状態で、前記アクチュエータを制御して前記粒子捕捉ノズルを前記容器から引き上げ、次に、前記アクチュエータを制御して、先端に1個の粒子を捕捉した前記粒子補足ノズルを前記粒子配列容器の位置に移動させ、前記吸引加圧手段を制御して前記先端に正の圧力を発生させて捕捉した粒子を前記粒子配列容器に導入することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項13】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子捕捉ノズルが複数配置され、前記粒子配列容器保持部は、前記粒子捕捉ノズルと同数の粒子配列容器を保持することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項14】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子がノズル先端に保持されている状態を検出する手段を有することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項15】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子が前記粒子配列容器内に導入されている状態を検出する手段を有することを特徴とする粒子配列装置。
【請求項16】
請求項12記載の粒子配列装置において、前記粒子配列容器保持部は、同一チップ上に内径寸法が異なる複数の流路を有する粒子配列容器を保持することを特徴とする粒子配列装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−317345(P2006−317345A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141569(P2005−141569)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
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