説明

粒子数計測システム

【課題】粒子数計測システムにおいて粒子数計測装置の計測結果である希釈後の粒子数濃度だけでなく、希釈前の粒子数濃度を表示可能にするとともに、ユーザの使い勝手を良くする。
【解決手段】粒子数計測システム100において、粒子数計測装置2の計測結果による希釈後の粒子数情報、及び希釈後の粒子数情報と希釈ユニットによる希釈比とから得られる希釈前の粒子数情報を切り替え可能に表示する情報処理装置4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排出ガスに含まれるPM等の固体粒子数を計測する粒子数計測システムに関し、特に当該粒子数計測システムの画面表示に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンからの排出物質の1つである粒子状物質(PM:Particulate Matters)の測定方法としては、フィルタを用いてPMを捕集し、そのPM質量を図るフィルタ質量法が周知である。ところで、PM排出量が微量となり、フィルタ重量法では精度面で厳しい状況となってきている。そのような状況のもと、フィルタ重量法の代替法として開発されたものが、排出ガス中のPMの数を計測する手法である。その具体的なシステム構成としては、例えば粒子数計測装置の前段に、エンジンの排出ガスをエア等で希釈する希釈ユニットを設け、その希釈した排出ガスの一部を当該粒子数計測装置に導いて、その中に含まれる粒子数をカウントするようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
従来、このようなシステムにおいて、粒子数計測装置によって計測された固体粒子数濃度が、情報処理装置のディスプレイ上に表示されるように構成されている。
【0004】
しかしながら、希釈前の排出ガスに含まれる固体粒子数濃度をユーザが知りたい場合には、希釈ユニットの希釈比と粒子数計測装置によって計測された固体粒子数濃度とをユーザが手計算によって乗じる必要がある。また、粒子数計測装置の測定結果は時々刻々と変化するものであり、リアルタイムに希釈前の固体粒子数濃度を手計算で算出する作業は極めて煩雑である。
【0005】
一方で、ディスプレイ上に種類の異なる粒子数濃度を表示すると、各粒子数濃度表示スペースが小さくなってしまう上に、ユーザの見間違い等を招きやすく、ユーザにとって使い勝手が悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−194726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、粒子数計測システムにおいて粒子数計測装置の計測結果である希釈後の粒子数濃度だけでなく、希釈前の粒子数濃度を表示可能にするとともに、ユーザの使い勝手を良くすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る粒子数計測システムは、エンジンの排出ガスを導入するための排出ガス導入ポートと、希釈ガスを導入するための希釈ガス導入ポートと、内部に導入された排出ガスに希釈ガスを所定の希釈比で混合することによりその排出ガスを希釈する希釈ユニットと、前記希釈ユニットにより希釈された排出ガス中の固体粒子数を計測する粒子数計測装置と、前記粒子数計測装置の計測結果による希釈後の粒子数情報、及びその希釈後の粒子数情報と前記希釈ユニットの希釈比とから得られる希釈前の粒子数情報を切り替え可能にディスプレイ上に表示する情報処理装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、希釈後の排出ガスにおける粒子数情報だけでなく、希釈前の排出ガスにおける粒子数情報を表示することができ、ユーザが手計算により希釈前の粒子数情報を算出する手間を不要とすることができ、ユーザにとって使い勝手を良くすることができる。また、希釈後の粒子数情報及び希釈前の粒子数情報を切り替え可能に表示することによって、画面表示を煩雑にすることなく又各表示スペースを小さくする必要もなく、ユーザが各粒子数情報を見間違えることを防止することができ、粒子数計測システムの使い勝手を良くすることができる。
【0010】
粒子数計測システムが、排出ガス中の揮発性粒子を気化させる蒸発器をさらに備える場合においては、蒸発器及びその近傍、特に蒸発器と希釈ユニットとの間の配管では、例えば熱泳動現象により排出ガス中に含まれる粒子が配管に付着してしまうという問題がある。そこで、配管への粒子の付着等による粒子損失を考慮した粒子数情報を表示するためには、前記情報処理装置が、前記希釈後の粒子数情報及び前記希釈前の粒子数情報に加えて、前記希釈後の粒子数情報と前記希釈ユニットの希釈比及びこの希釈比における少なくとも前記蒸発器を粒子が通過した後の粒子数損失から定められる粒子損失係数とから得られる損失補正後の粒子数情報を切り替え可能にディスプレイ上に表示するものであることが望ましい。なお、ここで、粒子損失係数は、例えばECE基準(ECE Regulation)において定義されているPCRF(Particle Concentration Regulation Factor)である。これならば、希釈後の粒子数情報、希釈前の粒子数情報及び損失補正後の粒子数情報を表示できるだけでなく、ユーザが各粒子数情報を見間違えることを防止することができ、表示スペースを小さくする必要もなく、粒子数計測システムの使い勝手を良くすることができる。
【0011】
また、前記情報処理装置が、前記希釈後の粒子数情報及び前記希釈前の粒子数情報を切り替え可能な第1表示画面と、前記希釈後の粒子数情報、前記希釈前の粒子数情報及び前記損失補償後の粒子数情報を切り替え可能な第2表示画面とをユーザが選択するための選択用表示をディスプレイ上に表示するものであり、さらに、その選択用表示により選択された表示画面をディスプレイ上に表示するものであることが望ましい。これならば、ユーザが意図的に第1表示画面及び第2表示画面を選択できるようになり、画面上に表示されている粒子数情報を取り違えることを防止し易くできる。
【0012】
前記情報処理装置が、前記選択用表示としての選択チェックボックスを含み、前記希釈ユニットの希釈比を設定するための希釈比設定画面を表示するものであり、ユーザが前記第2の粒子数情報表示画面を選択した場合において、前記希釈比設定画面上に粒子損失係数が予め定められた希釈比のみを選択可能に表示するものであることが望ましい。これならば、損失補正後の希釈前粒子数情報を表示させる場合において、粒子損失係数が設定されていない希釈比を選択することを未然に防止することができ、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0013】
ユーザの使い勝手を一層良くするためには、前記情報処理装置が、前記希釈ユニットの希釈比を設定するための希釈比設定画面を表示するものであり、前記希釈比設定画面に入力された希釈比に基づいて、前記希釈後の粒子数情報及び前記希釈前の粒子数情報を切り替え可能な第1表示画面と、前記希釈後の粒子数情報、前記希釈前の粒子数情報及び前記損失補償後の粒子数情報を切り替え可能な第2表示画面とのいずれか一方の表示画面をディスプレイ上に表示するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、粒子数計測システムにおいて粒子数計測装置の計測結果である希釈後の粒子数濃度だけでなく、希釈前の粒子数濃度を表示可能にするとともに、ユーザの使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る粒子数計測システムの全体構成図である。
【図2】同実施形態における情報の流れを示す情報伝達図である。
【図3】粒子損失係数を用いない場合の希釈率設定画面である。
【図4】粒子損失係数を用いる場合の希釈率設定画面である。
【図5】粒子損失係数を用いない場合の粒子数情報表示画面である。
【図6】粒子損失係数を用いる場合の粒子数情報表示画面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明に係る粒子数計測システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る粒子数計測システム100は、図1に示すように、排出ガス導入ポートPT1から内部に設けたメイン流路MLにエンジンの排出ガスを導いて、それに希釈や気化等を施した後、メイン流路MLに設けた粒子数計測装置2で前記排出ガス中の固体粒子であるPMを測定するものである。
【0017】
前記排出ガス導入ポートPT1は、図示しないエンジンからの排気ラインに接続されており、この排出ガス導入ポートPT1に、例えばエンジンからの直接の排出ガスもしくは全流希釈トンネルや分流希釈トンネルで希釈された排出ガスが導かれるように構成している。なお、以下で排出ガスというときは、上述したような希釈された排出ガスも含む意味で用いることとする。
【0018】
本実施形態の排ガス導入ポートPT1には、複数のサンプルラインSL1、SL2(直接の排出ガスもしくは全流希釈トンネルや分流希釈トンネル)を切り替え可能なライン選択機構SCUが設けられている。このライン選択機構SCUは、各サンプルラインSL1、SL2に接続される複数(図1では2本)の分岐管BPと、当該分岐管BP上に設けられたボールバルブBV1、BV2と、分岐管BPが合流する主管MP上に設けられ、排出ガスの圧力が一定値となるように調整する弁、例えばリリーフ弁RVと、当該リリーフ弁RVの下流側に設けられた例えばサイクロン型の集塵器DCとを備えている。そして、主管MPが排出ガス導入ポートPT1に接続される。ボールバルブBV1、BV2は、後述するレギュレータREGから与えられる圧縮エア(希釈ガス)により駆動される。これにより、ボールバルブBV1、BV2の一方を開放することによって、複数のサンプルラインSL1、SL2の一方から排出ガス導入ポートPT1に排出ガスが導入されるように構成している。これならば、サンプルライン変更に伴うサンプルラインの接続のやり直し作業の手間を省略することができる。また、排出ガスが流れる流路上に設けられるバルブがボールバルブであり、バルブによる粒子損失を可及的に抑制することができる。さらに、調整弁RVを設けることにより、例えばエンジンからの直接の排出ガスからサンプリングの際に起こる圧力変動にも対応できるように構成されている。
【0019】
また、ライン選択機構SCUの分岐管BP及び主管MPは、柔軟性を有し、静電気が帯電しにくい材料、例えば導電性加工の施されたテフロン(登録商標)製の管により構成されている。またテフロン(登録商標)製のものであれば、耐熱性を有するので、分岐管BP及び主管MPを例えば約190度に加熱する場合でも好適に用いることができる。また、分岐管BP及び主管MPの外面には断熱材を被覆しており、外部からの温度影響又は外部への温度影響を防止すると共に、分岐管BP及び主管MPが屈曲することにより排出ガス中の粒子が滞留することを防止することができる。なお、分岐管BP及び主管MPとしては、テフロン(登録商標)製のもの以外に、ウレタン製、塩化ビニール製、ナイロン製又はシリコン製のものであっても良い。
【0020】
この排出ガス導入ポートPT1から開閉バルブV1を介して内部に導入された排出ガスは、一部は第1バイパス路BL1から排出され、その残りが、直列に設けた複数段(本実施形態では2段)の希釈器PND1、PND2に導かれて希釈ガスであるエアによって希釈される。開閉バルブV1は、ボールバルブであり、レギュレータREGから与えられる圧縮エア(希釈ガス)により駆動される。
【0021】
なお、エアは、希釈ガス導入ポートPT2からレギュレータREGを介して複数の希釈ガス流路DL1〜DL3を経て、メイン流路MLの各所又は第2バイパス流路BL2に供給される。
【0022】
また、第1バイパス流路BL1は、後述する粒子数計測装置2の下流においてメイン流路MLと合流しており、開閉バルブV2、及びバイパス流路BL1を流れる流量を一定に保つ、クリティカルオリフィス等の定流量器CFO1がこの順で設けられている。
【0023】
さらに、メイン流路ML及びバイパス流路(第1バイパス流路BL1の他、後述するその他のバイパス流路BL2、BL3も含む。)の合流点下流には、メイン流路ML及びバイパス流路BL1〜BL3を負圧にして排出ガスを導入するための吸引ポンプPが接続されている。また、吸引ポンプPの上流側近傍には、吸引ポンプPの吸引力の変動を平滑化するためのバッファチャンバBCが設けられている。
【0024】
第1希釈器PND1は、メイン流路MLと希釈ガス流路DLとの接続点又はその下流近傍に設けられており、第1希釈器PND1に導入された排出ガスを加熱するとともにその排出ガスを希釈するものである。
【0025】
この第1希釈器PND1に導入される被希釈ガスである排出ガスは、その質量流量が第1希釈器PND1の上流、より具体的には接続点上流に設けられた流量測定機構3により測定されている。
【0026】
この流量測定機構3は、流体抵抗となるオリフィス部31と、そのオリフィス部31の差圧を測定する圧力センサ32と、上流側の絶対圧を測定する圧力センサ33と、流体の温度を調整する温調器34とを備えており、オリフィス部31の上下流の圧力情報及び温調器34からの温度情報に基づいて、別に設けた情報処理装置4(特に図2参照)が、第1希釈器PND1に導入される排出ガスの質量流量を算出できるように構成されている。情報処理装置4は、CPU、メモリ、入力手段、ディスプレイ等を備え、メモリに格納した所定プログラムにしたがってCPUや周辺機器が協働して動作する汎用乃至専用のいわゆるコンピュータである。
【0027】
また、第1希釈器PND1に導入される希釈ガスは、希釈ガス流路DL1上に設けられた希釈ガス流量制御部MFC1によりその質量流量が制御されている。この希釈ガス流量制御部MFC1は、前記情報処理装置4から目標流量データを与えられると、内部に設けた流量センサ(図示しない)で測定される実流量が、目標流量データの値(以下、目標流量とも言う)となるように、内部のバルブ(図示しない)を調整してローカルで流量制御するものである。この目標流量は、前記情報処理装置4によって、希釈比から算出される。なお、上述した第1希釈器PND1及び希釈ガス流量制御部MFC1により第1希釈ユニットが構成される。
【0028】
また、第1希釈器PND1の下流には、揮発性粒子を気化させるために例えば350℃に設定された蒸発器EUが設けられている。また、第1希釈器PND1及び蒸発器EUの間から分岐して、粒子数計測装置2の下流においてメイン流路MLに合流する第2バイパス流路BL2が設けられている。このバイパス流路BL2には、希釈ガス流量制御部MFC2が設けられた希釈ガス流路DL2が接続されている。またバイパス流路BL2には、開閉バルブV3、バイパス流路BL2を流れる流量を一定に保つ、クリティカルオリフィス等の定流量器CFO2がこの順で設けられている。このような構成により、希釈ガス流量制御部MFC2が情報処理装置4によって制御されることにより、バイパス流路BL2に流入する希釈ガスが調整され、その結果、メイン流路MLからバイパス流路BL2に流入する排出ガスの質量流量を調節する。
【0029】
第2希釈器PND2は、蒸発器EUより下流側は加熱されていない常温のメイン流路MLと希釈ガス流路DL3との接続点又はその下流近傍に設けられており、第2希釈器PND2に導入される排出ガスを冷却するとともにその排出ガスを希釈するものである。
【0030】
第2希釈器PND2に導入される希釈ガスは、希釈ガス流路DL3に設けられた希釈ガス流量制御部MFC3によりその質量流量が制御されている。この希釈ガス流量制御部MFC3は、前記希釈ガス流量制御部MFC1と同様に、前記情報処理装置4から目標流量データを与えられると、内部に設けた流量センサ(図示しない)で測定される実流量が、目標流量データの値(以下、目標流量とも言う)となるように、内部のバルブ(図示しない)を調整してローカルで流量制御するものである。この目標流量は、前記情報処理装置4によって、希釈比から算出される。なお、上述した第2希釈器PND2及び希釈ガス流量制御部MFC2により第2希釈ユニットが構成される。また、上述した流量測定機構3、第1希釈ユニット、蒸発器EU及び第2希釈ユニットにより揮発性粒子除去装置(VPR)が構成される。
【0031】
このような構成において、第1希釈器PND1及びその近傍から第2希釈器PND2に至る配管を図示しないヒータ等の加熱手段を有する温度調節器により、例えば150度以上に加熱されている。これにより、配管内壁へのPMの付着や凝集等を防止して、計数誤差を抑制している。
【0032】
また、第2希釈器PND2の下流には、第1希釈器PND1及び第2希釈器PND2により希釈された排出ガス中の固体粒子数を計測する粒子数計測装置2が開閉バルブV5を介して設けられている。開閉バルブV5は、ボールバルブであり、レギュレータREGから与えられる圧縮エア(希釈ガス)により駆動される。また、第2希釈器PND2及び粒子数計測装置2の間、具体的には開閉バルブV5上流から分岐して、粒子数計測装置2の下流においてメイン流路MLと合流する第3バイパス流路BL3が設けられている。このバイパス流路BL3には、バイパス流路BL3を流れる流量を一定に保つ、クリティカルオリフィス等の定流量器CFO3及び開閉バルブV4がこの順で設けられている。なお、開閉バルブV5及び粒子数計測装置3の間には、開閉バルブV6及びフィルタをこの順で設けた大気開放通路ALが形成されており、吸引ポンプPの停止時などに開閉バルブV5が閉じられる際に、開閉バルブV6を開けて粒子数計測装置2内を大気開放させる。
【0033】
粒子数計測装置2は、アルコールやブタノールなどの有機ガスを過飽和状態で混入させて排出ガス中のPMに付着させることにより、このPMを大きな径に成長させ、成長したPMをスリットから排出して、出てきた粒子にレーザ光にて計数するものである。この粒子数計測装置2は、成長したPMをスリットから排出するように構成していることから、そのスリットが定流量器としての機能を有し、粒子測定装置2には一定流量の排出ガスが流れることになる。
【0034】
このような構成により、2段の希釈器PND1、PND2で希釈された排出ガスの一部が粒子数計測装置2に導かれ、その排出ガスに含まれる固体粒子数が計数される。そして、粒子数計測装置2で測定された計数データは、前記情報処理装置4に出力されて適宜処理され、粒子数濃度等が算出される。
【0035】
しかして本実施形態の粒子数計測システム100の情報処理装置4は、粒子数計測装置2の計測結果により得られた希釈後の粒子数情報と、その希釈後の粒子数情報及び希釈ユニットの希釈比から得られる希釈前の粒子数情報と、希釈後の粒子数情報及び粒子損失係数から得られる損失補正後の粒子数情報と、を切り替え可能にディスプレイ上に表示する。本実施形態では、粒子数情報として粒子数濃度[個/cm]の例を示している。また、希釈前の粒子数情報は、希釈後の粒子数情報と希釈ユニットの希釈比(具体的には第1希釈器PND1及び第2希釈器PND2の全体希釈比)とを乗じた情報である。損失補正後の粒子数情報とは、希釈後の粒子数情報と粒子損失係数とを乗じた情報である。なお、粒子損失係数とは、希釈ユニットの希釈比及びこの希釈比における少なくとも蒸発器EUを粒子が通過した後の粒子数損失から定められる係数である。つまり、粒子損失係数は、希釈ユニットの希釈比とこの希釈比における少なくとも蒸発器EUを粒子が通過した後の粒子数損失とを組み合わせた係数であり、各希釈比毎に定められる。粒子損失係数に関して言うと、少なくとも蒸発器EU付近での粒子損失から得られるものであるが、蒸発器EUによる粒子損失だけでなく配管曲がり等による粒子損失も考慮するため、本実施形態では、排出ガス導入ポートPT1から粒子数計測装置CPCを接続する配管(当該配管に設けられた蒸発器EU等の各種機器を含む。)での粒子損失を考慮して定められている。
【0036】
具体的に情報処理装置4は、排出ガスの粒子数濃度開始前等の希釈率設定において、図3に示す希釈率設定画面W1をディスプレイ上に表示する。この希釈率設定画面W1は、第1希釈ユニット(第1希釈器PND1)の希釈率及び第2希釈ユニット(第2希釈器PND2)の希釈率を設定するための画面である。なお、本実施形態では、第2希釈器PND2の希釈比は固定値(図3において15倍)であり、希釈率設定画面W1は、第1希釈器PND1の希釈比を設定するための画面である。この第1希釈器PND1の希釈比は、希釈比入力ボックスW11にユーザがテキスト入力することによって10倍〜200倍の間で任意に設定可能である。なお、図3において符号W13は、希釈率を決定するための決定ボタンであり、符号W14は希釈比設定を終了するための終了ボタンである。
【0037】
この希釈率設定画面W1には、第1表示画面W2(図5参照)及び第2表示画面W3(図6参照)をユーザが選択するための選択用表示、具体的には選択チェックボックスW12が表示されている。そして、ユーザがポインティングディバイスを用いて選択チェックボックスW12をチェックした場合(図4参照)には、情報処理装置4が第2表示画面W3をディスプレイ上に表示する。一方、選択チェックボックスW12をチェックしない場合には、情報処理装置4は、第1表示画面W2をディスプレイ上に表示する。
【0038】
ここで、第1表示画面W2は、図5に示すように、希釈後の粒子数濃度及び希釈前の粒子数濃度を切り替え可能な表示画面であり、希釈後の粒子数濃度(図5中「Raw Count」)と、希釈前の粒子数濃度(図5中「Count×Total DF」)とを切り替えるための表示切替部W21と、当該表示切替部W21により選択された粒子数濃度を例えばリアルタイムに表示するための粒子数情報表示領域W22と、を備えている。表示切替部W21は、ユーザがポインティングディバイスによって選択するとプルダウンメニューにより希釈後の粒子数濃度(Raw Count)と希釈前の粒子数濃度(Count×Total DF)とを選択可能にするものである。また、第1表示画面W2は、粒子数計測中の希釈ユニットの希釈比を表示する希釈比表示領域W23及び粒子数濃度の経時的変化を示す時系列データ表示領域W24を有している。具体的に希釈比表示領域W23は、第1希釈器PND1の希釈比と、第2希釈器PND2の希釈比と、それら2つの希釈器PND1、PND2による全体希釈比とが表示される。なお、第1表示画面W2は、ライン選択機構SCUにより選択されているサンプルラインを表示するステータス表示領域W25も有している。
【0039】
また、第2表示画面W3は、図6に示すように、希釈後の粒子数濃度、希釈前の粒子数濃度及び損失補正後の粒子数濃度を切り替え可能な表示画面であり、希釈後の粒子数濃度(図6中「CPC Count」)と希釈前の粒子数濃度(図6中「Count×Total DF」)と損失補正後の粒子数濃度(図6中「Count×PCRF」)とを切り替えるための表示切替部W31と、当該表示切替部W31によって選択された粒子数濃度を例えばリアルタイムに表示するための粒子数情報表示領域W32と、を備えている。その他の構成は、第1表示画面W2と同様であり、符号W33は希釈比表示領域であり、符号W34は時系列データ表示領域である。なお、第2表示画面W3は、ライン選択機構SCUにより選択されているサンプルラインを表示するステータス表示領域W35も有している。また、図6において粒子数情報表示領域W32は、表示切替部W31のプルダウンメニューにより隠れている。
【0040】
また、希釈率設定画面W1において、選択チェックボックスW12をチェックした場合には、希釈比入力ボックスW11は、粒子損失係数が予め定められた希釈比のみが選択可能となる。具体的に情報処理装置4は、選択チェックボックスW12がチェックされた場合には、希釈比入力ボックスW11に粒子損失係数が予め定められた希釈比のみ選択可能とするために、それら希釈比が含まれたプルダウンメニューを表示する。そして、このプルダウンメニューに含まれる希釈比が選択されることによって第1希釈器PND1の希釈比が設定される。
【0041】
次に、本実施形態の粒子数計測システム100における粒子損失係数の校正機器5及び校正方法について説明する。
【0042】
校正機器5は、単位時間あたり既知の粒子を発生する粒子発生器51と、当該粒子発生器51により発生された粒子を所定径の粒子に分級する分級器52とを備えており、この校正機器5は、第1希釈ユニット上流側(具体的には排出ガス導入ポートPT1)、又は第2希釈ユニットの下流側において粒子数計測装置2に接続される。なお、図1においては、校正機器5が排ガス導入ポートPT1に接続された状態を示している。
【0043】
次に校正方法について具体的に説明する。
粒子損失係数の校正方法は、粒子損失係数が設定されるべき希釈比毎に行われるものであり、本実施形態では粒子損失係数が設定されるべき第1希釈器PND1の希釈比は10倍、20倍、50倍、100倍、200倍である。
【0044】
そして、以下の手順により各希釈比毎の粒子損失係数の校正を行う。
まず、校正機器5を粒子数計測装置2に接続し、校正機器5の分級器52により所定径(例えば30nm、50nm、100nm)毎の粒子を粒子数計測装置2に供給して、その粒子数濃度を測定する(以下、この粒子数濃度を「生の粒子数濃度」という。)。
【0045】
次に、校正機器5を排出ガス導入ポートPT1に接続し、所定の希釈比(10倍、20倍、50倍又は100倍)に希釈させて粒子数計測装置2により粒子数濃度を測定する(以下、この粒子数濃度を「粒子損失有りの粒子数濃度」という。)。この粒子損失有りの粒子数濃度は、前記所定の希釈比で希釈した粒子数濃度よりも小さくなる。なぜならば、分級器52から排出ガス導入ポートPT1に導入された粒子は、粒子数計測装置2に到達するまでにメイン流路MLを構成する配管、蒸発器EU及び希釈ユニット内に付着してその粒子数が減少するからである。この粒子数減少及び希釈比を考慮して定められる係数が粒子損失係数である。なお、本実施形態では、蒸発器EUによる粒子損失だけでなく、メイン流路MLを構成する配管の曲がり部等による粒子損失も考慮して粒子損失係数を設定するものであるが、蒸発器EU及びその下流側配管における粒子損失を考慮して粒子損失係数を設定するようにしても良いし、蒸発器EUの粒子損失のみを考慮して粒子損失係数を設定するようにしても良い。
【0046】
そして、各粒子径毎(例えば30nm、50nm、100nm)に上記各計測を行った後、各粒子径毎の損失係数(pcef30、pcef50、pcef100)を計算する。この損失係数は、(生の粒子数濃度[個/cm])/(粒子損失有りの粒子数濃度[個/cm])により求められる。このように各粒子径毎に求められた損失係数をパラメータとして粒子損失係数(PCRF)が求められる。具体的には、各粒子径毎に求められた損失係数(pcef30、pcef50、pcef100)の平均値が粒子損失係数(PCRF)として定められる。なお、この情報処理装置4のメモリ内には、上記校正を行うための校正プログラムが格納されている。また、上記校正は、粒子数計測システムの出荷前又はメンテナンス時等に行われる。
【0047】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る粒子数計測システム100によれば、希釈後の粒子数濃度、希釈前の粒子数濃度及び損失補正後の粒子数濃度を表示することができ、ユーザが手計算により希釈前の粒子数濃度及び損失補正後の粒子数濃度を算出する手間を不要とし、ユーザの使い勝手を良くすることができる。また、希釈後の粒子数濃度、希釈前の粒子数濃度及び損失補正後の粒子数濃度を切り替え可能に表示することによって、画面表示を煩雑にすることなく又表示スペースを小さくする必要もなく、ユーザが各粒子数濃度を見間違えることを防止することができ、粒子数計測システムの使い勝手を良くすることができる。
【0048】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0049】
例えば、前記実施形態の第2希釈器の希釈比が固定値であったが、第1希釈器と同様、ユーザが任意に設定可能にしても良い。
【0050】
また、粒子損失係数を求める際の粒子径は、30nm、50nm及び100nmに限られず、その他の粒子径であっても良い。
【0051】
粒子損失係数に関して言うと、前記実施形態では、各粒子径毎に求められた損失係数の平均値(相加平均)としているが、測定する排出ガスの性質に応じて、各粒子径毎に求められた損失係数の加重平均を用いても良い。
【0052】
さらに、前記実施形態では選択チェックボックスをチェックすると、プルダウンメニューにより第1希釈器の希釈比が選択可能となるように構成されているが、その他テキスト入力できるようにしても良い。この場合、粒子損失係数が設定されていない希釈比が入力された場合には、その入力された希釈比に最も近い、粒子損失係数が設定された希釈比が設定されるようにすることが考えられる。
【0053】
加えて、希釈率設定画面が選択チェックボックスを有さないものであっても良く、この場合、希釈比入力ボックスに入力された希釈比が粒子損失係数が予め定められたものであれば、情報処理装置は、自動的に第2表示画面をディスプレイ上に表示するようにしても良い。これならば、ユーザの操作を簡略化することができる。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100 ・・・粒子数計測システム
PT1 ・・・排出ガス導入ポート
PT2 ・・・希釈ガス導入ポート
ML ・・・メイン流路
DL ・・・希釈ガス流路
2 ・・・粒子数計測装置
PND1・・・第1希釈器
PND2・・・第2希釈器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排出ガスを導入するための排出ガス導入ポートと、
希釈ガスを導入するための希釈ガス導入ポートと、
内部に導入された排出ガスに希釈ガスを所定の希釈比で混合することによりその排出ガスを希釈する希釈ユニットと、
前記希釈ユニットにより希釈された排出ガス中の固体粒子数を計測する粒子数計測装置と、
前記粒子数計測装置の計測結果による希釈後の粒子数情報、及びその希釈後の粒子数情報と前記希釈ユニットの希釈比とから得られる希釈前の粒子数情報を切り替え可能にディスプレイ上に表示する情報処理装置と、を備える粒子数計測システム。
【請求項2】
前記排出ガス中の揮発性粒子を気化させる蒸発器をさらに備え、
前記情報処理装置が、前記希釈後の粒子数情報及び前記希釈前の粒子数情報に加えて、前記希釈後の粒子数情報と前記希釈ユニットの希釈比及びこの希釈比における少なくとも前記蒸発器を粒子が通過した後の粒子数損失から定められる粒子損失係数とから得られる損失補正後の粒子数情報を切り替え可能にディスプレイ上に表示するものである請求項1記載の粒子数計測システム。
【請求項3】
前記情報処理装置が、前記希釈後の粒子数情報及び前記希釈前の粒子数情報を切り替え可能な第1表示画面と、前記希釈後の粒子数情報、前記希釈前の粒子数情報及び前記損失補償後の粒子数情報を切り替え可能な第2表示画面とをユーザが選択するための選択用表示をディスプレイ上に表示するものであり、さらに、その選択用表示により選択された表示画面をディスプレイ上に表示するものである請求項2記載の粒子数計測システム。
【請求項4】
前記情報処理装置が、前記希釈ユニットの希釈比を設定するための希釈比設定画面を表示するものであり、前記希釈比設定画面に入力された希釈比に基づいて、前記希釈後の粒子数情報及び前記希釈前の粒子数情報を切り替え可能な第1表示画面と、前記希釈後の粒子数情報、前記希釈前の粒子数情報及び前記損失補償後の粒子数情報を切り替え可能な第2表示画面とのいずれか一方の表示画面をディスプレイ上に表示するものである請求項2記載の粒子数計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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