説明

粒子数計測システム

【課題】粒子数計測システムにおいてメイン流路を構成する配管の構成をコンパクトにしながらも配管の流路方向を変更可能にし、また、システム全体として複雑な構造にすることを防止するとともに排出ガスと希釈ガスとを十分に混合可能にする。
【解決手段】粒子数計測システム100の下流側希釈器PND2が、一端から他端に行くに従って漸次縮径する回転体形状の内部空間Sを有するボディ5と、内部空間Sの中心軸C上に沿って設けられ、排出ガス及び希釈ガスを内部空間S内に導入する導入管6と、導入管6に直交して設けられ、内部空間S内の旋回流により希釈された排出ガスを内部空間S外に導出する導出管7とを有し、ボディ5が内部空間Sの中心軸Cが略水平となるように設けられ、導入管6が蒸発器EUに接続され、導出管7が粒子数計測装置2に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排出ガスに含まれるPM等の固体粒子数を計測する粒子数計測システムに関し、特に当該粒子数計測システムに用いられる希釈器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンからの排出物質の1つである粒子状物質(PM:Particulate Matters)の測定方法としては、フィルタを用いてPMを捕集し、そのPM質量を図るフィルタ質量法が周知である。ところで、PM排出量が微量となり、フィルタ重量法では精度面で厳しい状況となってきている。そのような状況のもと、フィルタ重量法の代替法として開発されたものが、排出ガス中のPMの数を計測する手法である。その具体的なシステム構成としては、例えば粒子数計測装置の前段に、エンジンの排出ガスをエア等で希釈する希釈ユニットを設け、その希釈した排出ガスの一部を当該粒子数計測装置に導いて、その中に含まれる粒子数をカウントするようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
従来、このようなシステムにおいて、希釈ユニットは、特許文献2に示すように、排ガスが流れるメイン流路と希釈ガスが流れる希釈ガス流路との接続点又はその下流近傍に設けた希釈器(混合器)と、その希釈器に導入される排出ガスの質量流量を測定するための流量測定機構と、希釈器に同じく導入される希釈ガスの質量流量を制御する希釈ガス流量制御部と、排出ガスの質量流量を可変させる排出ガス流量制御部と、を備えている。そして、この希釈ユニットに流れ込んでくる排出ガスの流量を、前記流量測定機構で測定するとともに、排出ガス流量制御部で制御して、所望の希釈比を実現するように構成されている。
【0004】
そして、この混合器は、メイン流路と希釈ガス流路との接続点から、その接続点で混合された排出ガス及び希釈ガスが十分に混合されるように、所定長さの配管を設けることによって構成している。この希釈器を構成する配管は、直管状をなすもの、又は螺旋状をなすものが用いられている。
【0005】
しかしながら、このような希釈器を用いて排出ガス及び希釈ガスを均一に混合させるためには、配管長さを十分にとる必要があり、粒子数計測システムが大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
また、従来の粒子数計測システムにおいては、メイン流路を構成する配管を湾曲させることによって、流路方向を変更するように構成しているが、配管内に固体粒子を含む排出ガスを流す場合、配管湾曲部において、粒子損失が発生してしまう。その結果、排出ガスに含まれる固体粒子を精度よく測定することが難しいという問題がある。ここで、配管内を流れる排出ガスの流速範囲に基づいて配管の曲げ半径を決定することによって、粒子損失を抑えることが可能であるが、配管が占める体積を低減することは難しく、システムサイズが大きくならざるを得ない。
【0007】
さらに、粒子数計測システムにおいては、排出ガス中に含まれる揮発性粒子を気化させる蒸発器が設けられており、この蒸発器及び粒子数計測装置の間に希釈器が設けられている。この構成において、希釈器を構成する配管を上記のとおり直管状又は螺旋状とすると共に、この希釈器と蒸発器及び粒子数計測装置とを接続するとなると、配管が複雑になってしまい、システム全体として複雑な構造となってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−194726号公報
【特許文献2】特開2008−164446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、粒子数計測システムにおいてメイン流路を構成する配管の構成をコンパクトにしながらも配管の流路方向を変更可能にし、また、システム全体として複雑な構造にすることを防止するとともに排出ガスと希釈ガスとを十分に混合可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る粒子数計測システムは、エンジンの排出ガスを導入する排出ガス導入ポートに一端が接続されたメイン流路と、希釈ガスを導入する希釈ガス導入ポートに一端が接続され、他端が前記メイン流路に接続された希釈ガス流路と、前記メイン流路に設けられ、排出ガス中の揮発性粒子を気化させる蒸発器と、前記蒸発器の下流側に設けられ、前記蒸発器を通過した排出ガスに希釈ガスを混合することによりその排出ガスを希釈する下流側希釈器と、前記下流側希釈器により希釈された排出ガス中の固体粒子数を計測する粒子数計測装置と、を備え、前記下流側希釈器が、一端から他端に行くに従って縮径する回転体形状の内部空間を有するボディと、前記内部空間の中心軸上に沿って又は前記中心軸に直交して設けられ、排出ガス及び希釈ガスを前記内部空間内に導入する導入管と、前記導入管に直交して設けられ、前記内部空間内で生じる旋回流により希釈された排出ガスを内部空間外に導出する導出管と、を有し、前記ボディが、その内部空間の中心軸が略水平となるように設けられるとともに、前記導入管が前記蒸発器に接続され、前記導出管が前記粒子数計測装置に接続されていることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、下流側希釈器が互いに直交する導入管及び導出管を有し、導出管が、ボディの内部空間内で旋回流により希釈された排出ガスを導出するので、当該下流側希釈器によって排出ガスと希釈ガスとを充分に混合するとともに流路方向を変更することができるので、従来のように流速に基づく曲げ半径による配管の占める体積を不要にすることができ、コンパクトに流路方向を変換することができる。特に、下流側希釈器では、内部空間の中心軸を略水平となるように設けるため、下流側希釈器から粒子数計測装置への配管を直管形状とした状態で、その配管内での粒子たまり等を生じさせることなく、希釈された排出ガスを粒子数計測装置へ送ることができる。また、容量及び重量の大きな粒子数計測装置の鉛直方向下側に下流側希釈器を設置しない構造によりシステム全体として複雑な構造にすることを防止できる。さらに、下流側希釈器及びその下流は、排出ガス及び配管を加熱する構造を持たず常温であるため温度が下がり配管に粒子が付着することが考えられるが、配管を短くすることができることで、粒子が配管に付着することを防ぐことができる。加えて、排出ガス及び希釈ガスを内部空間内で旋回流とすることによって、排出ガス及び希釈ガスが混合される流路を長くとることができ、さらに、旋回流によって他端から一端に向かって逆流した排出ガス及び希釈ガスを導出口から外部に導出されるようにしているので、排出ガス及び希釈ガスを、配管を長くすることなく十分に混合することができる。
【0012】
前記下流側希釈器の導入管及び導出管を直管形状とすることにより、それら管内における粒子損失を抑制するためには、前記蒸発器における導入管接続部と、前記粒子数計測装置における導出管接続部とが直交して配置されていることが望ましい。
【0013】
粒子数計測システム全体としてさらにコンパクトに構成するためには、前記蒸発器の上流側に設けられ、内部に導入された排出ガスに希釈ガスを混合することによりその排出ガスを希釈する上流側希釈器をさらに備え、前記上流側希釈器が、一端から他端に行くに従って縮径する回転体形状の内部空間を有するボディと、前記内部空間の中心軸上に沿って又は前記中心軸上に直交して設けられ、排出ガス及び希釈ガスを前記内部空間内に導入する導入管と、前記導入管に直交して設けられ、前記内部空間内で生じる旋回流により希釈された排出ガスを内部空間外に導出する導出管と、を有し、前記上流側希釈器が加熱されるとともに、前記下流側希釈器が冷却されており、前記上流側希釈器において、前記ボディの外壁に、ヒータが取り付けられる取付平面が形成されていることが望ましい。
【0014】
また、前段である上流側希釈器では、排出ガスに測定対象物質以外の異物や所定粒子径よりも大きな固体粒子が含まれていることがあり、この異物や大きな粒子を好適に除去するためには、前記上流側希釈器において、その内部空間が鉛直下方に行くに従って漸次縮径する回転体形状をなすものであり、当該内部空間の下方に集塵部が設けられていることが望ましい。このとき、上流側希釈器は、測定対象物質のサイズよりも大きい異物や固体粒子を除去する機能を備えさせることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、粒子数計測システムにおいてメイン流路を構成する配管の構成をコンパクトにしながらも配管の流路方向を変更可能にし、また、システム全体として複雑な構造にすることを防止するとともに排出ガスと希釈ガスとを十分に混合可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る粒子数計測システムの全体構成図である。
【図2】同実施形態における情報の流れを示す情報伝達図である。
【図3】同実施形態の第1希釈器の斜視図である。
【図4】同実施形態の第2希釈器の斜視図である。
【図5】同実施形態の希釈器の内部空間の中心軸に沿った縦断面図である。
【図6】同実施形態の希釈器の導入管の中心軸に沿った縦断面図である。
【図7】同実施形態の希釈器の導入管の中心軸に沿った横断面図である。
【図8】同実施形態の第1希釈器、第2希釈器、蒸発器及び粒子数計測装置の配置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る粒子数計測システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る粒子数計測システム100は、図1に示すように、排出ガス導入ポートPT1から内部に設けたメイン流路MLにエンジンの排出ガスを導いて、それに希釈や気化等を施した後、メイン流路MLに設けた粒子数計測装置2で前記排出ガス中の固体粒子であるPMを測定するものである。
【0019】
前記排出ガス導入ポートPT1は、図示しないエンジンからの排気ラインに接続されており、この排出ガス導入ポートPT1に、例えばエンジンからの直接の排出ガスもしくは全流希釈トンネルや分流希釈トンネルで希釈された排出ガスが導かれるように構成している。なお、以下で排出ガスというときは、上述したような希釈された排出ガスも含む意味で用いることとする。
【0020】
この排出ガス導入ポートPT1から開閉バルブV1を介して内部に導入された排出ガスは、一部は第1バイパス路BL1から排出され、その残りが、直列に設けた複数段(本実施形態では2段)の希釈器PND1、PND2に導かれて希釈ガスであるエアによって希釈される。
【0021】
なお、エアは、希釈ガス導入ポートPT2からレギュレータREGを介して複数の希釈ガス流路DL1〜DL3を経て、メイン流路MLの各所又は第2バイパス流路BL2に供給される。
【0022】
また、第1バイパス流路BL1は、後述する粒子数計測装置2の下流においてメイン流路MLと合流しており、開閉バルブV2、及びバイパス流路BL1を流れる流量を一定に保つ、クリティカルオリフィス等の定流量器CFO1がこの順で設けられている。
【0023】
さらに、メイン流路ML及びバイパス流路(第1バイパス流路BL1の他、後述するその他のバイパス流路BL2、BL3も含む。)の合流点下流には、メイン流路ML及びバイパス流路BL1〜BL3を負圧にして排出ガスを導入するための吸引ポンプPが接続されている。また、吸引ポンプPの上流側近傍には、吸引ポンプPの吸引力の変動を平滑化するためのバッファチャンバVCが設けられている。
【0024】
第1希釈器(上流側希釈器)PND1は、メイン流路MLと希釈ガス流路DLとの接続点又はその下流近傍に設けられており、第1希釈器PND1に導入された排出ガスを加熱するとともにその排出ガスを希釈するものである。
【0025】
この第1希釈器PND1に導入される被希釈ガスである排出ガスは、その質量流量が第1希釈器PND1の上流、より具体的には接続点上流に設けられた流量測定機構3により測定されている。
【0026】
この流量測定機構3は、流体抵抗となるオリフィス部31と、そのオリフィス部31の差圧を測定する圧力センサ32と、上流側の絶対圧を測定する圧力センサ33と、流体の温度を調整する温調器34とを備えており、オリフィス部31の上下流の圧力情報及び温調器34からの温度情報に基づいて、別に設けた情報処理装置4(特に図2参照)が、第1希釈器PND1に導入される排出ガスの質量流量を算出できるように構成されている。情報処理装置4は、CPU、メモリ、入力手段、ディスプレイ等を備え、メモリに格納した所定プログラムにしたがってCPUや周辺機器が協働して動作する汎用乃至専用のいわゆるコンピュータである。
【0027】
また、第1希釈器PND1に導入される希釈ガスは、希釈ガス流路DL1上に設けられた希釈ガス流量制御部MFC1によりその質量流量が制御されている。この希釈ガス流量制御部MFC1は、前記情報処理装置4から目標流量データを与えられると、内部に設けた流量センサ(図示しない)で測定される実流量が、目標流量データの値(以下、目標流量とも言う)となるように、内部のバルブ(図示しない)を調整してローカルで流量制御するものである。この目標流量は、前記情報処理装置4によって、希釈比率から算出される。
【0028】
また、第1希釈器PND1の下流には、揮発性粒子を気化させるための蒸発器EUが設けられている。また、第1希釈器PND1及び蒸発器EUの間から分岐して、粒子数計測装置2の下流においてメイン流路MLに合流する第2バイパス流路BL2が設けられている。このバイパス流路BL2には、希釈ガス流量制御部MFC2が設けられた希釈ガス流路DL2が接続されている。またバイパス流路BL2には、開閉バルブV3、バイパス流路BL2を流れる流量を一定に保つ、クリティカルオリフィス等の定流量器CFO2がこの順で設けられている。このような構成により、希釈ガス流量制御部MFC2が情報処理装置4によって制御されることにより、バイパス流路BL2に流入する希釈ガスが調整され、その結果、メイン流路MLからバイパス流路BL2に流入する排出ガスの質量流量を調節する。
【0029】
第2希釈器(下流側希釈器)PND2は、メイン流路MLと希釈ガス流路DL3との接続点又はその下流近傍に設けられており、第2希釈器PND2に導入される排出ガスを冷却するとともにその排出ガスを希釈するものである。
【0030】
第2希釈器PND2に導入される希釈ガスは、希釈ガス流路DL3に設けられた希釈ガス流量制御部MFC3によりその質量流量が制御されている。この希釈ガス流量制御部MFC3は、前記希釈ガス流量制御部MFC1と同様に、前記情報処理装置4から目標流量データを与えられると、内部に設けた流量センサ(図示しない)で測定される実流量が、目標流量データの値(以下、目標流量とも言う)となるように、内部のバルブ(図示しない)を調整してローカルで流量制御するものである。この目標流量は、前記情報処理装置4によって、希釈比率から算出される。
【0031】
このような構成において、第1希釈器PND1及びその近傍から第2希釈器PND2に至る配管を図示しないヒータ等の加熱手段を有する温度調節器により、例えば150度以上に加熱されている。これにより、配管内壁へのPMの付着や凝集等を防止して、計数誤差を抑制している。
【0032】
また、第2希釈器PND2の下流には、第1希釈器PND1及び第2希釈器PND2により希釈された排出ガス中の固体粒子数を計測する粒子数計測装置2が開閉バルブV5を介して設けられている。また、第2希釈器PND2及び粒子数計測装置2の間、具体的には開閉バルブV5上流から分岐して、粒子数計測装置2の下流においてメイン流路MLと合流する第3バイパス流路BL3が設けられている。このバイパス流路BL3には、バイパス流路BL3を流れる流量を一定に保つ、クリティカルオリフィス等の定流量器CFO3及び開閉バルブV4がこの順で設けられている。なお、開閉バルブV5及び粒子数計測装置2の間には、開閉バルブV6及びフィルタをこの順で設けた大気開放通路ALが形成されており、吸引ポンプPの停止時などに開閉バルブV5が閉じられる際に、開閉バルブV6を開けて粒子数計測装置2内を大気開放させる。
【0033】
粒子数計測装置2は、アルコールやブタノールなどの有機ガスを過飽和状態で混入させて排出ガス中のPMに付着させることにより、このPMを大きな径に成長させ、成長したPMをスリットから排出して、出てきた粒子にレーザ光にて計数するものである。この粒子数計測装置2は、成長したPMをスリットから排出するように構成していることから、そのスリットが定流量器としての機能を有し、粒子測定装置2には一定流量の排出ガスが流れることになる。
【0034】
このような構成により、2段の希釈器PND1、PND2で希釈された排出ガスの一部が粒子数計測装置2に導かれ、その排出ガスに含まれる固体粒子数が計数される。そして、粒子数計測装置2で測定された計数データは、前記情報処理装置4に出力されて適宜処理される。
【0035】
しかして、本実施形態の第1希釈器PND1及び第2希釈器PND2は、図3及び図4に示すように、排出ガス及び希釈ガスが導入される内部空間Sを有するボディ5と、当該ボディ5の内部空間Sに排出ガス及び希釈ガスを導入する導入管6と、内部空間Sから希釈された排出ガスを導出するための導出管7とを備えている。なお、図3は第1希釈器PND1を示し、図4は第2希釈器PND2を示しており、第1希釈器PND1及び第2希釈器PND2の構成は、導出管7以外において同一としている。
【0036】
ボディ5は、図5に示すように、一端から他端に行くに従って漸次縮径するテーパ部を有する回転体形状の内部空間Sが形成されている。具体的に内部空間Sは、円柱状空間部S1と円錐状空間部S2とからなる。そして、その内部空間Sの他端部には、内部空間Sに連通するように、内部空間S内に導入された排出ガスに含まれる塵を収集するための集塵部8が設けられている。
【0037】
また、ボディ5の外壁には、第1希釈器PND1に用いた場合に、内部空間S内に導入された排出ガスを加熱するためのヒータを取り付けるための取付平面5Aが形成されている。
【0038】
導入管6は、排出ガス及び希釈ガスがボディ5の内周壁に沿って下方(他端側)に向かう旋回流となるように、内部空間S内に排出ガス及び希釈ガスを希釈器PND1、PND2の円筒部から導入するものである。具体的には、導入管6は、図6に示すように、内部空間Sにおけるテーパ部(円錐状空間部S2)より上部の円筒状空間部S1において内部空間Sの中心軸Cに直交するように設けられ、さらに図7に示すように、排出ガス及び希釈ガスの流入方向がボディ5の内周壁である円筒壁501に対し接線方向となる位置に設けられている。導入管6から流入した排出ガス及び希釈ガスは、円筒状空間部S1で直線流から渦流に変わり、円筒壁501に沿って回転しながら下降し(他端へ向かい)、円錐状空間部S2に達すると回転速度を増加しながら、さらに下降し(他端へ向かい)、円錐状空間部S2の下端近くで方向を反転し、中心部を回転しながら上昇し、導出管7を経て排出される。
【0039】
導出管7は、図5に示すように、少なくとも内部空間S内において内部空間Sの中心軸C上に沿って設けられるとともに、その導出口7aが内部空間S内(具体的には円柱状空間部S1内)に配置され、内部空間S内で生じる旋回流により希釈された排出ガスを内部空間S外に導出するものである。つまり、内部空間S内における導出管7と導入管6とは、直交するように設けられている。これにより、希釈器PND1、PND2においてメイン流路MLを構成する配管の流路方向を変更する構成としている。さらに、導出管7の導出口7aは、導入管6の開口よりも下方に位置するようにし、導入管6から直接導出管7に排出ガス及び希釈ガスが流れないように構成している。
【0040】
また、本実施形態では、第1希釈器PND1の導出管7は、図3に示すように、内部空間S外において湾曲する湾曲管であり、第2希釈器PND2の導出管7は、図4に示すように、内部空間S外において直線状をなす直管である。
【0041】
このように構成された希釈器PND1、PND2において、第1希釈器PND1は、その内部空間Sが鉛直下方に行くに従って漸次縮径する配置となるように設けられている。つまり、第1希釈器PND1は、その内部空間Sの中心軸Cが略鉛直となるように配置される。これにより、第1希釈器PND1に導入された排出ガスに含まれる塵は遠心分離されて集塵部8に収容される。この第1希釈器PND1は、排出ガスに含まれる固体粒子の粒径よりも大きい(例えば2.5μmより大きい)の粒子を除去する機能を有するものである。一方で、第2希釈器PND2は、その内部空間Sの中心軸Cが略水平となるように配置されている。つまり、本実施形態の第2希釈器PND2は集塵機能を有さない。
【0042】
次に第1希釈器PND1及び第2希釈器PND2と蒸発器EUと粒子数計測装置2の配置関係について図8を参照して説明する。第1希釈器PND1はその内部空間Sの中心軸Cが略鉛直となるように蒸発器EUの上方に設けられており、この第1希釈器PND1の導出管7はU字形状に湾曲している。そして、この導出管7が下方に設けられた蒸発器EUの一端に接続されている。また、蒸発器EUの導入管接続部(排出ガス導出口)EU1に第2希釈器PND2の導入管6が接続されている。この第2希釈器PND2はその内部空間Sの中心軸Cが略水平となるように設けられており、この第2希釈器PND2の導出管7は直管形状をなし、粒子数計測装置2の導出管接続部(排出ガス導入口)21に接続される。このとき、蒸発器EUの導入管接続部EU1と粒子数計測装置2の導出管接続部21とが略水平な平面内において直交するようにベース体9上に設けられており、第2希釈器PND2が蒸発器EUの導入管接続部EU1及び粒子数計測装置2の導出管接続部21に対向するようにそれらの水平方向側方に設けられている。より詳細には、第2希釈器PND2の円筒状空間部側が粒子数計測装置2の導出管接続部に対向するように設けられている。
【0043】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る粒子数計測システム100によれば、希釈器PND1、PND2がボディ5の内周壁に沿った旋回流となるように排出ガス及び希釈ガスを導入する導入管6と、内部空間Sの中心軸C上に沿って設けられた導出管7とを備えることによって、当該希釈器PND1、PND2によって排出ガスと希釈ガスとを充分に混合するとともに流路方向を変更することができるので、従来のように流速に基づく曲げ半径による配管の占める体積を不要にすることができ、コンパクトに流路方向を変換することができる。特に、第2希釈器PND2では、内部空間S(円筒状空間部S1及び円錐状空間部S2)の中心軸Cを略水平となるように設けるため、粒子数計測装置2への配管を直管形状とし、その配管内での粒子(PM)たまり等を生じさせることなく、希釈された排出ガスを粒子数計測装置2へ送ることができる。また、容量及び重量の大きな粒子数計測装置2の鉛直方向下側に第2希釈器PND2を設置しない構造によりシステム全体として複雑な構造にすることを防止できる。さらに、第2希釈器PND2及びその下流は排出ガス及び配管を加熱する構造を持たないため配管に粒子が付着することが考えられるが、配管を短くすることができることで、粒子(PM)が配管に付着することを防ぐことができる。また、排出ガス及び希釈ガスをボディ5の内周壁に沿った旋回流とすることによって、排出ガス及び希釈ガスが混合される流路を長くとることができ、さらに、旋回流によって他端から一端に向かって逆流した排出ガス及び希釈ガスを導出口7aから外部に導出されるようにしているので、排出ガス及び希釈ガスを、配管を長くすることなく十分に混合することができる。
【0044】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0045】
例えば、前記実施形態では、第1希釈器に集塵機能を持たせて、第1希釈器の上流にダスト除去器を設けない構成しているが、第1希釈器に集塵機能を持たせることなく、第1希釈器の上流にダスト除去器を設けても良い。このとき、第1希釈器は、内部空間Sが鉛直方向に沿って配置されるように設ける必要はない。
【0046】
また、前記実施形態では、第1希釈器及び第2希釈器を同一の構成としているが、異なる構成としても良い。この場合、第1希釈器に集塵部を設け、第2希釈器に集塵部を設けない構成としても良い。
【0047】
さらに、前記実施形態の希釈器は、排出ガス及び希釈ガスの両方を内部空間に導入する1つの導入管を有するものであったが、排出ガスを内部空間に導入する排出ガス用の導入管及び希釈ガスを内部空間に導入する希釈ガス用の導入管を有するものであっても良い。
【0048】
加えて、前記実施形態の第1希釈器の導出管は湾曲管であり、第2希釈器の導出管は直管であったが、それらの導出管は、希釈器の下流に接続される構成部品の配置によって適宜変更可能である。
【0049】
その上、前記実施形態の希釈器は、導入管が内部空間の中心軸に直交して設けられ、導出管が内部空間の中心軸上に沿って設けられて構成されているが、導入管を内部空間の中心軸上に沿って設け、導出管が内部空間の中心軸に直交して設けて構成しても良い。この場合、内部空間内で旋回流を生じさせるために、内部空間内に攪拌羽根を設けることが望ましい。
【0050】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100 ・・・粒子数計測システム
PT1 ・・・排出ガス導入ポート
PT2 ・・・希釈ガス導入ポート
ML ・・・メイン流路
DL ・・・希釈ガス流路
2 ・・・粒子数計測装置
21 ・・・粒子数計測装置の導出管接続部
EU ・・・蒸発器
EU1 ・・・蒸発器の導入管接続部
PND1・・・第1希釈器(上流側希釈器)
PND2・・・第2希釈器(下流側希釈器)
5 ・・・ボディ
S ・・・内部空間
C ・・・内部空間の中心軸
5A ・・・取付平面
6 ・・・導入管
7a ・・・導出口
7 ・・・導出管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排出ガスを導入する排出ガス導入ポートに一端が接続されたメイン流路と、
希釈ガスを導入する希釈ガス導入ポートに一端が接続され、他端が前記メイン流路に接続された希釈ガス流路と、
前記メイン流路に設けられ、排出ガス中の揮発性粒子を気化させる蒸発器と、
前記蒸発器の下流側に設けられ、前記蒸発器を通過した排出ガスに希釈ガスを混合することによりその排出ガスを希釈する下流側希釈器と、
前記下流側希釈器により希釈された排出ガス中の固体粒子数を計測する粒子数計測装置と、を備え、
前記下流側希釈器が、一端から他端に行くに従って縮径する回転体形状の内部空間を有するボディと、
前記内部空間の中心軸上に沿って又は前記中心軸に直交して設けられ、排出ガス及び希釈ガスを前記内部空間内に導入する導入管と、
前記導入管に直交して設けられ、前記内部空間内で生じる旋回流により希釈された排出ガスを内部空間外に導出する導出管と、を有し、
前記ボディが、その内部空間の中心軸が略水平となるように設けられるとともに、前記導入管が前記蒸発器に接続され、前記導出管が前記粒子数計測装置に接続されている粒子数計測システム。
【請求項2】
前記蒸発器における導入管接続部と、前記粒子数計測装置における導出管接続部とが直交して配置されている請求項1記載の粒子数計測システム。
【請求項3】
前記蒸発器の上流側に設けられ、内部に導入された排出ガスに希釈ガスを混合することによりその排出ガスを希釈する上流側希釈器をさらに備え、
前記上流側希釈器が、一端から他端に行くに従って縮径する回転体形状の内部空間を有するボディと、前記内部空間の中心軸上に沿って又は前記中心軸上に直交して設けられ、排出ガス及び希釈ガスを前記内部空間内に導入する導入管と、前記導入管に直交して設けられ、前記内部空間内で生じる旋回流により希釈された排出ガスを内部空間外に導出する導出管と、を有し、
前記上流側希釈器が加熱されるとともに、前記下流側希釈器が冷却されており、
前記上流側希釈器において、前記ボディの外壁に、ヒータが取り付けられる取付平面が形成されている請求項1又は2記載の粒子数計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−249754(P2010−249754A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101443(P2009−101443)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】