説明

粒子検出装置

【課題】静電気力を発生させるための配線と、捕集部材を加熱するための配線とを兼用して配線数を削減する。
【解決手段】筐体内に導入された空気中に含まれる粒子を帯電させる放電部と、放電部により帯電された粒子を静電気力により捕集基板170に付着させて捕集する捕集部とを備える。捕集基板170に付着した粒子に向けて励起光を照射する照射部と、励起光を照射された粒子から発せられる蛍光を検出する蛍光検出部と、捕集基板170に接触するように位置し、捕集基板170に付着した粒子を加熱するヒータ180と、捕集基板170を移動させる移動機構とを備える。捕集基板170がヒータ180と電気的に接続されることにより上記静電気力を生ずる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子検出装置に関し、特に、生物由来の粒子を検出する粒子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電集塵器を備える浮遊微粒子用の検出システムを開示した先行文献として、特表2011−506911号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された浮遊微粒子用の検出システムにおいては、粒子上に誘起された静電荷の力を利用して、気体から集塵面上に粒子を集塵するように構成された静電集塵器を備えている。
【0003】
加熱による蛍光輝度の変化により生菌を検出する生菌計数装置を開示した先行文献として、特開2005−065570号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載された生菌計数装置においては、フルオレセイン系蛍光試薬を接触させた生菌を微生物採取用フィルタ上に捕捉してから、フィルタ上に励起光を照射することで生じる光点を検出する。その後、生菌に取り込まれた試薬から生成した蛍光物質の加熱による化学変化に基づく消光を誘発せしめ、加熱前の輝度に比較して輝度が低下した光点を生菌由来の光点と判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−506911号公報
【特許文献2】特開2005−065570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浮遊粒子を静電気力により捕集部材上に捕集し、捕集部材を加熱して捕集した粒子を加熱する場合、静電気力を発生させるための配線と、捕集部材を加熱するための配線とが別途必要になり、配線の引き回しが複雑になる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、静電気力を発生させるための配線と、捕集部材を加熱するための配線とを兼用して配線数を削減できる、粒子検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく粒子検出装置は、生物由来の粒子を検出する粒子検出装置である。粒子検出装置は、導入口およびこの導入口に対向する排出口を有する筐体と、排出口から筐体内の空気を排気する排気手段とを備える。また、粒子検出装置は、筐体内に位置し、排気手段の排気により導入口から筐体内に導入された空気中に含まれる粒子を帯電させる放電部と、放電部により帯電された粒子を静電気力により捕集部材に付着させて捕集する捕集部とを備える。さらに、粒子検出装置は、筐体内に位置し、捕集部材に付着した粒子に向けて励起光を照射する照射部と、筐体内に位置し、励起光を照射された粒子から発せられる蛍光を検出する蛍光検出部と、捕集部材に接触するように位置し、捕集部材に付着した粒子を加熱する加熱部とを備える。また、粒子検出装置は、加熱部による加熱前に励起光を照射された粒子から検出された蛍光量と、加熱部による加熱後に励起光を再度照射された粒子から検出された蛍光量との差から、粒子に含まれる生物由来の粒子の量を算出する算出手段と、捕集部材を移動させる移動機構とを備える。移動機構は、放電部により粒子を帯電させつつ捕集部材に帯電した粒子を付着させる際に捕集部材を第1位置に位置させ、捕集部材に付着した粒子に照射部により励起光を照射しつつ蛍光検出部により蛍光を検出する際に捕集部材を第1位置とは異なる第2位置に位置させる。捕集部材が加熱部と電気的に接続されることにより上記静電気力を生ずる。
【0008】
本発明の一形態においては、加熱部は、加熱部への電力供給用配線を含む。捕集部材は、電力供給用配線に電気的に接続される。
【0009】
本発明の一形態においては、移動機構は、回転駆動部とこの回転駆動部の駆動力を伝達する係合部を有する。捕集部は、係合部と係合される被係合部、および、この被係合部を回転中心として径方向に離れた位置に捕集部材を有する。捕集部材は、回転駆動部が駆動することにより回動して第1位置および第2位置の間を移動する。電力供給用配線は、捕集部材の回動に追従可能な平板状配線に電気的に接続される。平板状配線の表面は、上記径方向を含む平面に対して直交している。
【0010】
好ましくは、捕集部材と加熱部とが導電性接着剤により接着されることにより電気的に接続される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、静電気力を発生させるための配線と、捕集部材を加熱するための配線とを兼用して配線数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】加熱前および加熱後における生物由来の粒子の蛍光強度を示すグラフである。
【図2】加熱前および加熱後における粉塵の蛍光強度を示すグラフである。
【図3】捕集工程を説明するための模式図である。
【図4】加熱前の蛍光測定工程を説明するための模式図である。
【図5】加熱工程を説明するための模式図である。
【図6】加熱後の蛍光測定工程を説明するための模式図である。
【図7】加熱による蛍光量の増加量と生物由来の粒子の濃度との相関関係を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係る粒子検出装置の外観を示す斜視図である。
【図9】図8の粒子検出装置を別の方向から見た斜視図である。
【図10】図9の粒子検出装置からファンを取り外した状態を示す斜視図である。
【図11】図8の粒子検出装置の構成を示す分解斜視図である。
【図12】捕集部および加熱部の構成を示す分解斜視図である。
【図13】捕集部および加熱部の外観を示す下面図である。
【図14】捕集基板とヒータとの接続状態を示す一部平面図である。
【図15】図14の捕集基板およびヒータを矢印XV方向から見た図である。
【図16】粒子検出装置の各構成の取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図17】図16の粒子検出装置を矢印XVII方向から見た図である。
【図18】捕集部と移動機構とが接続された状態を示す斜視図である。
【図19】捕集基板が第1位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。
【図20】捕集基板が第2位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。
【図21】捕集基板が第3位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。
【図22】捕集基板が第4位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。
【図23】同実施形態に係る粒子検出装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の粒子検出装置において生物由来の粒子を検出する方法について説明する。なお、生物由来の粒子とは、微生物、カビなどの菌および花粉を含む生物に由来する粒子であり、鉱物および石油精製品などの粉塵は含まれない。
【0014】
空気中を浮遊している粒子には、鉱物および石油精製品などの粉塵と生物由来の粒子とが混在している。この混在粒子に含まれる生物由来の粒子量を測定するために、混在粒子に紫外光または青色光を照射すると、生物由来の粒子は蛍光を発する。しかしながら、混在粒子には、生物由来の粒子以外にも同様に蛍光を発する化学繊維の埃など(以下、粉塵ともいう)が含まれている。そのため、混在粒子から発せられる蛍光を検出するのみでは、生物由来の粒子量を測定することができない。
【0015】
そこで、本発明者らは、生物由来の粒子は加熱されると蛍光強度(蛍光量)が変化し、化学繊維などの埃は加熱されても蛍光強度が変化しないことを利用して、生物由来の粒子量を測定する粒子検出方法を開発した。
【0016】
図1は、加熱前および加熱後における生物由来の粒子の蛍光強度を示すグラフである。図2は、加熱前および加熱後における粉塵の蛍光強度を示すグラフである。図1,2においては、縦軸に蛍光強度、横軸に蛍光した光の波長を示している。
【0017】
図1に示すように、生物由来の粒子は、広い波長範囲において加熱後の蛍光量が加熱前の蛍光量に比較して著しく増加している。一方、図2に示すように、粉塵は、加熱後の蛍光量と加熱前の蛍光量が略同一である。
【0018】
よって、混在粒子の加熱前の蛍光量と加熱後の蛍光量とを測定して、加熱前の蛍光量と加熱後の蛍光量との差分を求めることにより、混在粒子に含まれる生物由来の粒子の量を算出することができる。
【0019】
以下、粒子検出方法の各工程について説明する。粒子検出方法は、混在粒子の捕集工程、加熱前の混在粒子の蛍光測定工程、混在粒子の加熱工程、加熱後の混在粒子の蛍光測定工程、および、生物由来の粒子の量を算出する工程を含む。
【0020】
図3は、捕集工程を説明するための模式図である。図4は、加熱前の蛍光測定工程を説明するための模式図である。図5は、加熱工程を説明するための模式図である。図6は、加熱後の蛍光測定工程を説明するための模式図である。図7は、加熱による蛍光量の増加量と生物由来の粒子の濃度との相関関係を示すグラフである。図7においては、縦軸に加熱による蛍光量の増加量、横軸に生物由来の粒子の濃度を示している。
【0021】
図3に示すように、捕集工程において、空気中を浮遊している混在粒子を捕集基板510上に捕集する。本工程においては、捕集基板510を静電針530に対向配置する。捕集基板510および静電針530に直流電源540を接続し、捕集基板510および静電針530間に電位差を生じさせる。たとえば、静電針530に直流電源540の正極を接続し、捕集基板510に直流電源540の負極を接続する。
【0022】
捕集基板510の下方に位置するファン500を駆動させることにより、外部の空気を静電針530の周囲を通過して捕集基板510に向かうように導入する。空気中を浮遊する混在粒子600は、静電針530の周囲において正の電荷に帯電する。捕集基板510は、帯電した混在粒子600とは反対の電荷を有している。そのため、帯電した混在粒子600は、静電気力によって捕集基板510の表面に付着して捕集される。捕集基板510に捕集された混在粒子600は、生物由来の粒子600Aと、化学繊維の埃などの粉塵600Bとを含んでいる。
【0023】
図4に示すように、加熱前の蛍光測定工程において、半導体レーザなどの発光素子550から捕集基板510上に捕集された混在粒子600に向けて励起光を照射する。励起光を照射された混在粒子600から発せられる蛍光をレンズ560で集光して受光素子565にて受光する。
【0024】
図5に示すように、加熱工程において、捕集基板510の下面に取り付けられたヒータ520により捕集基板510を加熱することにより、捕集基板510に捕集された混在粒子600を加熱する。加熱後、捕集基板510を空冷する。
【0025】
図6に示すように、加熱後の蛍光測定工程において、発光素子550から捕集基板510上に捕集された混在粒子600に向けて励起光を照射する。励起光を照射された混在粒子600から発せられる蛍光をレンズ560で集光して受光素子565にて受光する。
【0026】
図7に示すように、蛍光量の増加量ΔFと生物由来の粒子濃度Nとの関係に基づき、加熱後の蛍光測定工程において測定された蛍光量から加熱前の蛍光測定工程において測定された蛍光量を引いた差分ΔF1から、生物由来の粒子の濃度(個/m3)を算出する。なお、増加量△Fと生物由来の粒子濃度Nとの相関関係は、予め実験を行なうことにより求められたものである。
【0027】
以下、上記の粒子検出方法を用いて生物由来の粒子を検出する本発明の一実施形態に係る粒子検出装置について説明する。なお、以下の実施形態において参照する図面においては、同一またはそれに相当する部材に同じ番号を付してその説明を繰り返さない。また、説明の便宜上、上、下の表現を用いるが、これは参照した図面に基づくものであって発明の構成を限定するものではない。
【0028】
図8は、本発明の一実施形態に係る粒子検出装置の外観を示す斜視図である。図9は、図8の粒子検出装置を別の方向から見た斜視図である。図10は、図9の粒子検出装置からファンを取り外した状態を示す斜視図である。図11は、図8の粒子検出装置の構成を示す分解斜視図である。
【0029】
図8から11に示すように、本実施形態における粒子検出装置100は、筺体110と、排気手段と、放電部と、捕集部と、照射部130と、蛍光検出部160と、加熱部と、算出手段と、移動機構と、清掃部とを備える。
【0030】
筺体110は、導入口111aを有する蓋部111、および、導入口111aに対向する排出口112aを有し、蓋部111と組み合わされて箱状となる本体部112を含む。
【0031】
筺体110は、略直方体形状を有し、放電部、捕集部、照射部、蛍光検出部、加熱部、移動機構および清掃部を収容する。本体部112は、排出口112aとは反対側に開口を有する。蓋部111は、本体部112の開口を塞ぐ平板形状を有する。たとえば、筺体110は、60mm×50mm(蓋部111の縦、横)×30mm(高さ)の大きさを有する。
【0032】
蓋部111には、捕集筒190が互いに直交するように接続されている。筺体110において捕集筒190は、導入口111aと連続するように本体部112に向けて円筒状に延びている。捕集筒190は、後述する静電針140を取り囲むように設けられている。捕集筒190は、静電針140と対向して位置決めされた捕集基板170に向けて混在粒子を含む空気を案内する。
【0033】
排気手段であるファン120は、排出口112aから筺体110内の空気を排気する。ファン120は、正転方向および反転方向に回転駆動可能である。ファン120が正転方向に駆動されることにより、筺体110の内部の空気がファン120を通じて筺体110の外部に排出される。ファン120が反転方向に駆動されることにより、筺体110の外部の空気がファン120を通じて筺体110の内部に導入される。ファン120は、本体部112の排出口112aの位置に取り付けられている。
【0034】
放電部は、筺体110内に位置し、ファン120の排気により導入口111aから筺体110内に導入された空気中に含まれる混在粒子を帯電させる。放電部は、電源部としての高圧直流電源141と、放電電極としての静電針140とを有する。静電針140は、高圧直流電源141から延出し、捕集筒190を貫通して捕集筒190の内部に達している。静電針140の先端部は、捕集筒190の軸方向に延在している。
【0035】
高圧直流電源141の正極は静電針140と接続されている。なお、高圧直流電源141の正極ではなく負極が静電針140と接続されていてもよい。高圧直流電源141および後述するヒータ180に捕集基板170が電気的に接続されることにより、捕集基板170と静電針140との間に電位差が生じている。
【0036】
照射部130は、筺体110内に位置し、捕集基板170に付着した混在粒子に向けて励起光を照射する。照射部130は、光源としての発光素子131と、素子フレーム132と、レンズフレーム133と、集光レンズ134と、レンズ押さえ135とを含む。
【0037】
発光素子131としては、半導体レーザまたはLED(Light Emitting Diode)素子などが用いられる。発光素子131から発せられる光は、生物由来の粒子を励起して蛍光を発せさせるものであれば、紫外または可視いずれの領域の波長を有してもよい。
【0038】
蛍光検出部160は、筺体110内に位置し、励起光を照射された混在粒子から発せられる蛍光を検出する。蛍光検出部160は、ノイズシールド161と、増幅回路162と、受光素子163と、受光フレーム164と、フレネルレンズ165と、レンズ押さえ166とを含む。受光素子163としては、フォトダイオードまたはイメージセンサなどが用いられる。
【0039】
移動機構は、捕集基板170を移動させる。移動機構は、モータホルダ175と、回転駆動部としての回転モータ174と、モータ押さえ173を含む。回転モータ174は、捕集部の回転ベース172と接続される。
【0040】
清掃部は、蛍光検出を終えた混在粒子を捕集基板170から除去する。清掃部は、ブラシ150、ブラシ押さえ151およびブラシ固定部152を含む。ブラシ150は、ブラシ押さえ151とブラシ固定部152とにより挟まれて一端を固定されている。清掃部は、高圧直流電源141の下面に固定されている。
【0041】
ブラシ150は、繊維集合体から形成されている。ブラシ150は、導電性を有する繊維集合体から形成されている。ブラシ150は、たとえば、カーボンファイバから形成されている。ブラシ150を形成する繊維集合体の線径は、φ0.05mm以上φ0.2mm以下であることが好ましい。導電性を有するブラシ150を用いることにより、帯電した混在粒子の電荷を除去することができる。
【0042】
図12は、捕集部および加熱部の構成を示す分解斜視図である。図13は、捕集部および加熱部の外観を示す下面図である。図14は、捕集基板とヒータとの接続状態を示す一部平面図である。図15は、図14の捕集基板およびヒータを矢印XV方向から見た図である。
【0043】
捕集部は、捕集部材である捕集基板170を有し、帯電された混合粒子を静電気力により捕集基板170に付着させて捕集する。捕集基板170は、ガラス板から形成されている。ガラス板の表面には、導電性の透明被膜が形成されている。
【0044】
捕集基板170は、ガラスに限定されず、セラミックまたは金属などから形成されてもよい。被膜は、透明被膜に限定されず、たとえば、金属被膜が形成されてもよい。また、捕集基板170が金属から形成される場合、その表面に被膜を形成する必要はない。
【0045】
捕集基板170は、基板ホルダ171上に固定される。基板ホルダ171は、移動機構と接続される回転ベース172と繋がっている。回転ベース172から、アーム部176が膨出している。基板ホルダ171、回転ベース172およびアーム部176は、樹脂材料により一体で形成されている。捕集部は、基板ホルダ171、回転ベース172およびアーム部176を含む。
【0046】
捕集部は、後述する回転モータ174の出力軸174aと係合される被係合部である係合穴172aを回転ベース172に有している。また、捕集部は、係合穴172aを回転中心として径方向に離れた位置に捕集基板170を有している。
【0047】
図12,13に示すように、アーム部176は、回転ベース172の係合穴172aを回転中心として半径方向に延伸している。アーム部176は、軸部172bの軸周りにおいて基板ホルダ171と周方向にずれた位置に設けられている。アーム部176は、先端に薄いアーム先端部176aを有している。
【0048】
加熱部であるヒータ180は、捕集基板170に接触するように位置し、捕集基板170に付着した混在粒子を加熱する。本実施形態においては、ヒータ180は、捕集基板170の下面に取り付けられている。
【0049】
ヒータ180は、ヒータ180への電力供給用配線であり直流電流が流れる高電位側配線181および低電位側配線182、ならびに、ヒータ180に内蔵された温度センサの信号線183を含む。高電位側配線181、低電位側配線182および信号線183は、捕集基板170の回動に追従可能な平板状配線であるフレキシブルプリント配線基板184の一端に接続されている。
【0050】
フレキシブルプリント配線基板184の他端は、筺体110の外部に引き出されて、温度センサの信号を受信する制御部および直流電源に接続されている。フレキシブルプリント配線基板184の表面は、係合穴172aを回転中心とした径方向を含む平面に対して直交している。
【0051】
この構成により、図13中の矢印10に示すように回転ベース172が回転した際に、フレキシブルプリント配線基板184がその回転に追従して移動および変形するため、高電位側配線181、低電位側配線182および信号線183に負荷がかかることを抑制できる。
【0052】
図14,15に示すように、捕集基板170は、高電位側配線181および低電位側配線182のいずれか一方に電気的に接続される。本実施形態においては、捕集基板170を負の電荷に帯電させるために、捕集基板170は低電位側配線182に接続されている。なお、高圧直流電源141の負極が静電針140と接続されている場合は、捕集基板170を正の電荷に帯電させるために、捕集基板170は高電位側配線181に接続される。
【0053】
捕集基板170とヒータ180とは、導電性接着剤185により接着されている。捕集基板170が、ヒータ180の低電位側配線182と導電性接着剤185を介して電気的に接続されることにより負の電荷に帯電し、正の電荷に帯電された混在粒子との間に静電気力が生ずる。
【0054】
ただし、捕集基板170は、接地電位に固定されていてもよい。この場合、高電位側配線181または低電位側配線182が接地電位に固定され、捕集基板170が接地電位に固定された高電位側配線181または低電位側配線182に接続される。この場合も、捕集基板170に帯電した混在粒子を付着させて捕集することができる。また、この場合、高電位側配線181および低電位側配線182に交流電流が流されてもよい。
【0055】
導電性接着剤185としては、たとえば、一液型エポキシ樹脂接着剤に貴金属粉末を加えて製造されたエポキシ樹脂系接着剤などを用いることができる。本実施形態においては、導電性接着剤185を用いて捕集基板170と低電位側配線182とを電気的に接続したが、たとえば、半田などを用いて接続してもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、捕集基板170と低電位側配線182とを接続したが、たとえば、ヒータ180の表面に低電位側配線182と接続された電極が設けられ、この電極と捕集基板170とが導電性接着剤185により電気的に接続されてもよい。
【0057】
上記のように、静電気力を発生させるための配線と、捕集部材を加熱するための配線とを兼用することにより、配線数を削減できる。その結果、捕集基板170の周囲の配線の引き回しが容易になり、配線の混線および断線の発生を抑制できる。
【0058】
以下、各構成の取り付け状態について説明する。図16は、粒子検出装置の各構成の取り付け状態を示す分解斜視図である。図17は、図16の粒子検出装置を矢印XVII方向から見た図である。
【0059】
図16,17に示すように、放電部、照射部130、蛍光検出部160および清掃部は、蓋部111に取り付けられている。本実施形態においては、移動機構も、蓋部111に取り付けられている。ただし、移動機構は、本体部112に取り付けられていてもよい。回転モータ174の下部に、回転モータ174の駆動力を伝達する係合部である出力軸174aが突出している。
【0060】
捕集部は、本体部112に取り付けられる。加熱部であるヒータ180は捕集基板170の下面に取り付けられているため、捕集部と共に本体部112に取り付けられている。
【0061】
図18は、捕集部と移動機構とが接続された状態を示す斜視図である。図18においては、筺体110を図示していない。回転ベース172の係合穴172aと回転モータ174の出力軸174aとを係合させることにより、図18に示すように、捕集部と移動機構とを接続させる。回転モータ174の駆動に伴って、回転ベース172は、係合穴172aを中心に回転(正転、反転)する。
【0062】
以下、平面視における粒子検出装置の構成部品の配置、および、捕集基板170の位置について説明する。
【0063】
図19は、捕集基板が第1位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。図20は、捕集基板が第2位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。図21は、捕集基板が第3位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。図22は、捕集基板が第4位置に位置している状態を捕集基板の下方から見た断面図である。
【0064】
図19〜22に示すように、本実施形態においては、放電部、蛍光検出部および清掃部が、回転ベース172の軸部172bを中心にその周方向に並んで配置されている。具体的には、反時計回りに順に、蛍光検出部、放電部および清掃部が配置されている。照射部130は、蛍光検出部に隣接して配置されている。
【0065】
第1位置は、放電部により混在粒子を帯電させつつ捕集基板170に帯電した粒子を付着させる際の捕集基板170の位置である。第2位置は、捕集基板170に付着した混在粒子に照射部130により励起光を照射しつつ蛍光検出部により蛍光を検出する際の捕集基板170の位置である。
【0066】
第3位置は、清掃部により捕集基板170上の混在粒子の除去を開始する際の捕集基板170の位置である。第4位置は、清掃部による捕集基板170上の混在粒子の除去が終了した際の捕集基板170の位置である。第1位置から第4位置までの軸部172bを中心にした旋回範囲は、約180°以内である。
【0067】
捕集基板170は、回転モータ174が駆動することにより回動して第1位置および第2位置の間を移動する。また、捕集基板170は、回転モータ174が駆動することにより回動して第2位置および第3位置の間を移動する。さらに、捕集基板170は、回転モータ174が駆動することにより回動して第3位置および第4位置の間を移動する。
【0068】
図19〜22に示すように、本体部112において、互いに直交して隣接している内壁に、近接センサ112bおよび近接センサ112cがそれぞれ配置されている。近接センサ112bおよび近接センサ112cの各々は、本体部112の内壁から本体部112の内側に向けて延びる1対の端子部を有している。
【0069】
捕集部は、軸部172bを回転中心軸として回転した際に、この一対の端子部同士の間をアーム先端部176aが通過するように、本体部112に取り付けられている。近接センサ112bおよび近接センサ112cは、アーム先端部176aの近接を検知することによって捕集基板170の位置を検出するセンサである。
【0070】
以下、本実施形態における粒子検出装置100の動作について説明する。図23は、本実施形態に係る粒子検出装置の動作の流れを示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、図19から図22中において、軸部172bを中心として時計周りの回転を正転方向といい、反時計周りの回転を反転方向という。
【0071】
図19,23に示すように、まず、捕集基板170を捕集位置である第1位置に配置する。その状態で捕集工程として、ファン120を正転方向に駆動させて、導入口111aから筺体110の内部に空気を導入するとともに、高圧直流電源141およびヒータ180に捕集基板170を電気的に接続することによって静電針140と捕集基板170との間に電位差を発生させ、空気中を浮遊している混在粒子を帯電させて捕集基板170の表面に付着させて捕集する(S101)。
【0072】
本実施形態においては、放電電極として針状の静電針140を用いているため、帯電した混在粒子を、静電針140に対向する捕集基板170の表面であって、照射部130の照射領域に対応した極めて狭い領域に付着させることができる。これにより、後工程の蛍光測定工程において、捕集された混在粒子から発せられる蛍光を効率的に検出することができる。
【0073】
図20,23に示すように、次に、回転モータ174を駆動させて回転ベース172を正転方向に回転させ、捕集基板170を蛍光検出位置である第2位置に移動させる(S102)。
【0074】
その後、加熱前の混在粒子の蛍光測定工程として、照射部130によって、捕集基板170に付着させて捕集した混在粒子に向けて励起光を照射しつつ、蛍光検出部によって、励起光を照射された混在粒子から発せられる蛍光を受光する。これにより、捕集基板170に付着させて捕集した混在粒子の加熱前の蛍光量を測定する(S103)。
【0075】
図19,23に示すように、次に、回転モータ174を駆動させて回転ベース172を反転方向に回転させ、捕集基板170を第2位置から第1位置に移動させる(S104)。
【0076】
次に、加熱工程として、ヒータ180に通電して捕集基板170を加熱することにより、捕集基板170に付着させて捕集した混在粒子を加熱する(S105)。
【0077】
その後、ヒータ180への通電を停止して、捕集基板170を冷却する(S106)。この際、ファン120を反転方向に駆動させることによって、空気を排出口112aから筺体110の内部に導入し、捕集基板170の冷却を促進させてもよい。
【0078】
図20,23に示すように、次に、回転モータ174を駆動させて回転ベース172を正転方向に回転させ、捕集基板170を第1位置から第2位置に移動させる(S107)。
【0079】
その後、加熱後の混在粒子の蛍光測定工程として、照射部130によって、捕集基板170に付着させて捕集した混在粒子に向けて励起光を照射しつつ、蛍光検出部によって、励起光を照射された混在粒子から発せられる蛍光を受光する。これにより、捕集基板170に付着させて捕集した混在粒子の加熱後の蛍光量を測定する(S108)。
【0080】
図21,23に示すように、次に清掃工程として、回転モータ174を駆動させて回転ベース172を反転方向に回転させ、捕集基板170を第2位置から第3位置に移動させる。さらに回転ベース172を反転方向に回転させることによって、捕集基板170を第3位置から第4位置に移動させる。捕集基板170が第3位置から第4位置に移動する間、捕集基板170の表面はブラシ150の先端と摺動する。これにより、捕集基板170から混在粒子を除去する(S109)。
【0081】
清掃工程時に、ファン120を正転方向に駆動させて、捕集基板170から除去された混在粒子を排出口112aから筺体110の外部に排出する。この際、捕集基板170が、第1位置から第3位置に近づくに従って、捕集基板170と捕集筒190とが重なる範囲が小さくなるため、捕集筒190の開口面積が大きくなる。これにより、混在粒子を効率的に筺体110の外部に排出することができる。一方、捕集工程時は、捕集基板170に遮蔽されて捕集筒190の開口面積が小さくなるため、空気の導入ロスを減らすことができる。
【0082】
本実施形態では、清掃部を静止させたまま捕集基板170の移動によって清掃工程を実施するため、清掃部の移動機構を別途設ける必要がない。このため、粒子検出装置100の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0083】
図19,23に示すように、回転モータ174を駆動させて回転ベース172を正転方向に回転させ、捕集基板170を第4位置から第1位置に移動させる(S110)。以上のS101〜S110の工程を繰り返すことによって、生物由来の粒子の検出を連続的に実施することができる。
【0084】
生物由来の粒子の検出は、蛍光検出部に接続されたCPU(中央演算処理装置)などの算出手段により、加熱前の蛍光測定工程において測定された蛍光量と、加熱後の蛍光測定工程において測定された蛍光量との差から、混在粒子に含まれる生物由来の粒子の量を算出することにより行なう。算出手段は、筺体110の内側または外側において蓋部111に取り付けられていてもよいし、筺体110の外部に配置されていてもよい。
【0085】
上記のように、捕集基板170をヒータ180の低電位側配線182に電気的に接続して、帯電した混在粒子との間に静電気力を生じさせることにより、複雑な配線の引き回しを行なうことなく捕集基板170上に混在粒子を付着させて捕集することができる。
【0086】
その結果、捕集基板170の回動によって配線が混線または断線することを抑制できる。また、フレキシブルプリント配線基板184を用いることにより、回転ベース172の回転にフレキシブルプリント配線基板184が追従して移動および変形するため、捕集部および加熱部に接続される配線に負荷がかかることを抑制できる。このように、配線への負荷を軽減することにより、粒子検出装置100の耐久性を向上することができる。
【0087】
本実施形態においては、捕集位置(第1位置)、蛍光検出位置(第2位置)および清掃位置(第3〜4位置)が円周上に並んで配置されており、捕集基板170は、正転方向および反転方向に回転することによって、これらの各位置間を移動する。この構成により、粒子検出装置100の小型化を図ることができる。
【0088】
また、本実施形態においては、捕集基板170に捕集された混在粒子を加熱する加熱工程を、捕集基板170に粒子を付着させて捕集する捕集工程と同じ位置(第1位置)で実施することにより、粒子検出装置100の小型化を図ることができる。
【0089】
なお、本実施形態においては、回転モータ174の係合部を出力軸174a、回転ベース172の被係合部を係合穴172aで構成したが、回転モータ174の係合部を係合穴、回転ベース172の被係合部を入力軸で構成してもよい。
【0090】
本実施形態における粒子検出装置100は、生物由来の粒子を検出するための装置単体として用いられてもよいし、空気清浄機やエアーコンディショナ、加湿器、除湿機、掃除機、冷蔵庫、テレビなどの家電製品に組み込まれてもよい。
【0091】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
100 粒子検出装置、110 筺体、111 蓋部、111a 導入口、112 本体部、112a 排出口、112b,112c 近接センサ、120,500 ファン、130 照射部、131,550 発光素子、132 素子フレーム、133 レンズフレーム、134 集光レンズ、135,166 レンズ押さえ、140,530 静電針、141 高圧直流電源、150 ブラシ、151 ブラシ押さえ、152 ブラシ固定部、160 蛍光検出部、161 ノイズシールド、162 増幅回路、163,565 受光素子、164 受光フレーム、165 フレネルレンズ、170,510 集基板、171 基板ホルダ、172 回転ベース、172a 係合穴、172b 軸部、173 モータ押さえ、174 回転モータ、174a 出力軸、175 モータホルダ、176 アーム部、176a アーム先端部、180,520 ヒータ、181 高電位側配線、182 低電位側配線、183 信号線、184 フレキシブルプリント配線基板、185 導電性接着剤、190 捕集筒、540 直流電源、560 レンズ、600 混在粒子、600A 生物由来の粒子、600B 粉塵。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物由来の粒子を検出する粒子検出装置であって、
導入口および該導入口に対向する排出口を有する筐体と、
前記排出口から前記筐体内の空気を排気する排気手段と、
前記筐体内に位置し、前記排気手段の排気により前記導入口から前記筐体内に導入された空気中に含まれる粒子を帯電させる放電部と、
前記放電部により帯電された粒子を静電気力により捕集部材に付着させて捕集する捕集部と、
前記筐体内に位置し、前記捕集部材に付着した粒子に向けて励起光を照射する照射部と、
前記筐体内に位置し、前記励起光を照射された粒子から発せられる蛍光を検出する蛍光検出部と、
前記捕集部材に接触するように位置し、前記捕集部材に付着した粒子を加熱する加熱部と、
前記加熱部による加熱前に前記励起光を照射された粒子から検出された蛍光量と、前記加熱部による加熱後に前記励起光を再度照射された粒子から検出された蛍光量との差から、粒子に含まれる生物由来の粒子の量を算出する算出手段と、
前記捕集部材を移動させる移動機構と
を備え、
前記移動機構は、前記放電部により粒子を帯電させつつ前記捕集部材に帯電した粒子を付着させる際に前記捕集部材を第1位置に位置させ、前記捕集部材に付着した粒子に前記照射部により前記励起光を照射しつつ前記蛍光検出部により蛍光を検出する際に前記捕集部材を前記第1位置とは異なる第2位置に位置させ、
前記捕集部材が前記加熱部と電気的に接続されることにより前記静電気力を生ずる、粒子検出装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記加熱部への電力供給用配線を含み、
前記捕集部材は、前記電力供給用配線に電気的に接続される、請求項1に記載の粒子検出装置。
【請求項3】
前記移動機構は、回転駆動部と該回転駆動部の駆動力を伝達する係合部を有し、
前記捕集部は、前記係合部と係合される被係合部、および、該被係合部を回転中心として径方向に離れた位置に前記捕集部材を有し、
前記捕集部材は、前記回転駆動部が駆動することにより回動して前記第1位置および前記第2位置の間を移動し、
前記電力供給用配線は、前記捕集部材の回動に追従可能な平板状配線に電気的に接続され、
前記平板状配線の表面は、前記径方向を含む平面に対して直交している、請求項2に記載の粒子検出装置。
【請求項4】
前記捕集部材と前記加熱部とが導電性接着剤により接着されることにより電気的に接続される、請求項1から3のいずれかに記載の粒子検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−57620(P2013−57620A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197041(P2011−197041)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【特許番号】特許第5053453号(P5053453)
【特許公報発行日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】