説明

粒子状の顔料の処理方法

【課題】染色後の基体の手触り及び外観を良好とし、従来技術の不都合を有さない粒子状の顔料の処理方法を提供する。
【解決手段】a)粒子状の顔料と、非イオン性界面活性物質とを混合する工程、b)前記粒子状の顔料と非イオン性界面活性物質との混合物を水性媒体に分散する工程、c)前記分散液の存在下に、第一のモノマーを付加重合に付すか、又は第一のコモノマー混合物を付加共重合に付して、粒子状の顔料の表面に水に不溶性の重合体又は共重合体を形成する工程、及びd)1種類の第二のモノマー、又は第二のコモノマー混合物を添加して、付加重合又は付加共重合する工程、を含むことを特徴とする粒子状の顔料の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状の顔料の処理方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、上記本発明の方法により処理された粒子状の顔料を着色料調製物、特にインクジェット法用のインクを製造するために用いる方法、及び本発明のインクを用いるインクジェット法において、シート状の基体又は三次元形状の基体、特に繊維基体を印刷する方法に関する。更に、本発明は上記本発明のインクにより印刷された基体に関する。
【背景技術】
【0003】
基体(substrate)を染色するための現在の技術で用いられている着色料調製物は過酷な要求を満たさなければならない。染色後の基体は優れた光沢を示すこと、及び染色状態が恒久的であること、例えば磨耗に対する堅牢性が優れていることが要求されている。
【0004】
特に、インクジェット法(例えばサーマルインクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続式インクジェット、バルブ式ジェット、転写印刷法)に使用されるインクとして、又は同インクを製造するために用いられ着色料調製物に対する要求は高い。これらの着色料調製物は印刷に適する粘度と表面張力を有する必要があり、保管に適していなければならず(例えば凝塊や凝集が生じてはならない)、更にプリンターノズルの詰まりを生じてはならない(これは特に分散状態、すなわち非溶解状態の着色料粒子を含むインクにおいて特に問題となる)。好適に貯蔵を行うためには、これらのインクにおいて着色料粒子が分散状態に維持されて沈降しないことが更に要求される。更に、連続的インクジェットの場合には、伝導性塩を添加してもインクが安定であり、イオン含有率が増加しても凝集傾向が生じないことが必要とされる。また、得られた印刷物は、色彩的要求、すなわち光沢を示し、明暗の差(depth of shade)が顕著であり、良好な堅牢性(例えば耐擦過性、耐光性、及び耐水性及び耐湿潤性、耐洗浄性/洗濯耐性)、及び化学ドライクリーニングにおける安定性を有さなければならない。
【0005】
更に、印刷されるイメージ(模様)又は文字が滲むこと、例えば異なる色のインク液滴が混ざり合うことがないようにするため、インクが基体上で迅速に乾燥することが要求される。これに関連して、針状に鋭利/鮮明な印刷を行うためには、印刷乾燥時間を短縮するのみならず、印刷乾燥時間内の基体上でのインク液滴の滲みの制御を行うことが必要である。液滴が滲まないインクを、ホールドアウト(holdout)が優れたインクであると言う。
【0006】
着色料調製物、及び特にインクジェット法に用いられるインクの耐擦過性はバインダーを用いることにより改善されることが多い。バインダーは印刷後に用いられても、又は着色料調製物又はインクの成分として使用されて着色料調製物又はインクとともに印刷されてもよい(WO99/0516、14頁以降)。
【0007】
しかしながら、色彩(coloration)の光沢については改善すべき点がある。例えば、三原色を得ようとする場合に、バインダー含有着色料調製物には改良の余地がある。調製物の施与後に顔料の移動(マイグレーション)が頻繁に観察され、針状に鋭利/鮮明な像は十分永続的に保持されるわけではなく、鋭利/鮮明な像がもとより得られないこともある。更に、印刷された基体、特に繊維基体は柔らかく快適な手触りであるとよく、印刷を施しても硬くならないことが望ましいため、印刷対象である基体の触覚(手触り)にも改良の可能性がある。
【0008】
顔料を、これにポリマーを施すことにより処理する試みがなされてきた。米国特許第3,133,893号明細書には、顔料(予め界面活性剤で処理されたもの)を、同顔料の存在下にポリアクリロニトリルを重合させ、得られた重合体により顔料を被覆する技術が開示されている。被覆を有する顔料は繊維に組み込むことができる。しかしながら、基体を着色する使用目的においては、触覚特性、例えば手触りはこれまであまり基準とはされていなかった。
【0009】
米国特許第4,608,401号明細書には、水溶性モノマーと洗剤を無剪断力条件下で用いることにより顔料粒子を水に分散する工程と、これにより得られた分散液を乳化重合条件下に置く次工程とを含む、ラテックス塗料に用いられる顔料のカプセル化方法が開示されている。しかしながら、基体の着色に使用する場合、これまでは、手触り等の触覚が基準とされることは多くはなかった。
【0010】
米国特許第4,680,200号明細書には、スチレンと、Uniroyal社製オリゴマー、Polywet KX-3とを用いて顔料粒子を水に分散させる工程と、得られた分散液を乳化重合条件下に置く後の工程とを含む、前処理の施されていない顔料をカプセル化する方法が開示されている。
【0011】
米国特許第3,544,500号明細書には、ポリマー上に水溶性ポリマーを物理的に吸着させ、次いで非溶媒和定着成分を導入することにより製造された、所定のポリマー被覆を有する顔料の製造法が開示されている。しかしながらインクジェット法におけるインク用の顔料を被覆するために水溶性ポリマーを用いても、インクが長期間貯蔵されると被覆は再び剥がれ落ちてしまうことになるため有益ではない。更に、印刷された繊維は耐湿潤性及び汗/蒸散に対する耐性が十分ではなく、多くは耐洗浄性も十分ではない。
【0012】
米国特許第4,608,401号明細書には、被覆された顔料の製造法が記載されており、同文献で用いる顔料はイオン価を有さないもののみに限定される。この技術では、顔料は水不溶性のモノマーの懸濁重合により被覆される。しかしながら、基体を着色するために用いる場合、触覚特性、例えば手触りはこれまであまり基準とはされなかった。
【0013】
ヨーロッパ特許出願公開第1245653号公報には、インクジェット用のインクの製造法であって、顔料粒子を水溶性モノマー、例えばアクリル酸、及び任意に他のコモノマーと混合し、得られた混合物を次いで乳化重合に付すインクジェット法に用いるインクの製造方法が記載されている。同公報に開示されたインクにより印刷された基体は、耐水性、特に耐洗浄性が不十分とされることが多い。
【0014】
更に、本発明は本発明により処理された粒子状の顔料を、着色料調製物、特に皮革用の着色用調製物を製造するために使用する方法に関する。また、本発明は、本発明により処理された粒子状の顔料を用いた皮革の着色方法、及び同顔料を用いて着色された皮革に関する。最後に、本発明は本発明により着色された皮革により製造された履物に関する。
【0015】
一般に、皮革には複数層を施与する仕上げ処理がされる。通常は三層の被覆が施される。このうち、第一層は、完全な仕上げを行うための接着性を得るために施される、いわゆる下染めであり、例えば顔料、バインダー、及び助剤を含む。第二層はいわゆる顔料被覆であり、第一層よりもやや固めにされることが多い。第三層は上塗り層である。上塗り層は最終的な外観と手触りとに決定的な影響を与える。上記のすべての層を形成するために使用される方法には、更に一般的な塗布技術、例えば噴霧、はけ塗り、キャスティング(流延)、印刷及び貼り合わせ(積層)がある。
【0016】
【特許文献1】米国特許第3,133,893号明細書
【特許文献2】米国特許第4,680,401号明細書
【特許文献3】米国特許第3,544,500号明細書
【特許文献4】ヨーロッパ特許出願公開第1245653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の従来技術の不都合を有さない粒子状の顔料の処理方法を提供することを第一の目的とする。
【0018】
更に、本願発明は、粒子状であり、かつ所定の処理が施された顔料を提供することを第二の目的とする。
【0019】
また、本発明は、粒子状であり、かつ所定の処理が施された顔料を使用する方法を提供することを第三の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者等は、本発明の第一の目的が、
a)粒子状の顔料と、少なくとも1種類の非イオン性界面活性物質と、を混合する工程と、
b)前記工程により得られた粒子状の顔料と非イオン性界面活性物質との混合物を水性媒体に分散する工程と、
c)前記工程b)により得られた分散液の存在下に、少なくとも1種類の第一のモノマーを付加重合に付すか、又は第一のコモノマー混合物を付加共重合に付して、粒子状の顔料の表面に水に不溶性の重合体又は共重合体を形成する工程と、
d)少なくとも1種類の第二のモノマー、又は第二のコモノマー混合物を添加して、付加重合又は付加共重合する工程と、
を含むことを特徴とする粒子状の顔料の処理方法により達成されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の方法では、処理の開始時に粒子状の顔料を用いる。本発明による顔料は、ドイツ工業規格DIN55944の規格に準ずる、実質的に不溶性の微分散状の有機又は無機着色料である。本発明の方法では基本的に有機顔料を用いることが好ましい。
【0022】
以下に有機顔料の具体例を示す。
【0023】
モノアゾ顔料: C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントオレンジ5、13、36及び67、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49,49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245及び251、C.I.ピグメントイエロー1、3、73、74、65、97、151及び183、
ジアゾ顔料: C.I.ピグメントオレンジ16、34及び44、C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176及び188、
アンタンスロン顔料: C.I.ピグメントレッド168(C.I.バットオレンジ3)
アントラキノン顔料: C.I.ピグメントイエロー147及び177、C.I.ピグメントバイオレット31、
アントラピリミジン顔料: C.I.ピグメントイエロー108(C.I.バットイエロー20)、
キナクリドン顔料: C.I.ピグメントレッド122、202及び206、C.I.ピグメントバイオレット19,
キノフタロン顔料: C.I.ピグメントイエロー138、
ジオキサジン顔料: C.I.ピグメントバイオレット23及び37、
フラバントロン顔料: C.I.ピグメントイエロー24(C.I.バットイエロー1)、
インダントロン顔料: C.I.ピグメントブルー60(C.I.バットブルー4)及び64(C.I.バットブルー6)、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ69、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントイエロー139及び185、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントレッド257及び260、C.I.ピグメントイエロー109、110、173及び185、
イソビオラントロン顔料: C.I.ピグメントバイオレット31(C.I.バットバイオレット1)、
金属錯体顔料: C.I.ピグメントイエロー117、150及び153、C.I.ピグメントグリーン8、
ペリノン顔料: C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.バットバイオレット7)、C.I.ピグメントレッド194(C.I.バットレッド15)、
ぺリレン顔料: C.I.ピグメントブラック31及び32、C.I.ピグメントレッド123、149、178、179(C.I.バットレッド23)、190(C.I.バットレッド29)及び224、C.I.ピグメントバイオレット29、
フタロシアニン顔料: C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16、C.I.ピグメントグリーン7及び36、
ピラントロン顔料: C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレッド216(C.I.バットオレンジ4)、
チオインジゴ顔料: C.I.ピグメントレッド88及び181(C.I.バットレッド1)、C.I.ピグメントバイオレット38(C.I.バットバイオレット3)、
トリアリールカルボニウム顔料: C.I.ピグメントブルー1、61及び62、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントレッド81、81:1及び169、C.I.ピグメントバイオレット1、2、3及び27、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)、
C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー)、
C.I.ピグメントブラウン22。
【0024】
特に好ましい顔料の例は、特にC.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3及び15:4、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントオレンジ5、38及び43、及びC.I.ピグメントグリーン7である。
【0025】
本発明の方法では、更に、その出発時点に2種類以上の異なる顔料の混合物を使用することも可能である。この場合に、少なくとも1種類の顔料が有機顔料であることが好ましい。出発成分としての顔料は、粒状、すなわち粒子の形態とされる。また、出発成分としての顔料は、通常は、粗製顔料、すなわち合成したまま未処理の顔料である。粒子の形状は均質であっても非均質であってもよく、例えば粒子は球形であっても、実質的に球形であっても、針状(針型(結晶))の形態であってもよい。
【0026】
本発明の一実施の形態では、粒子は球形又は実質的に球形、すなわち長径の短径に対する割合が1.0〜2.0、好ましくは1.5以下とされる。
【0027】
粒子状の1種類又は複数種類の顔料は、工程a)において、少なくとも1種類の非イオン性界面活性物質と混合される。適する非イオン性の界面活性物質の具体例は、エトキシル化モノ−、ジ−及びトリアルキルフェノール(エトキシル化度:3−50、アルキル基:C3−C12)、及びエトキシル化脂肪アルコール(エトキシル化度:3−80、アルキル基:C8−C36)である。これらの具体例はBASF社製のLutensol(登録商標)、及びUnion Carbide社製のTriton(登録商標)である。特に好ましい例は、下式IIIで示されるエトキシル化直鎖状脂肪アルコールである。
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、xは10〜24、好ましくは12〜20の整数を示し、yは5〜50、好ましくは8〜40の整数を示す。)
一般式IIIのエトキシル化直鎖状脂肪アルコールは、一般に、エトキシル化度の異なる種々のエトキシル化脂肪アルコールの混合物として存在する。このため、本発明において上記式中のyは数平均値を意味する。
【0030】
粒子状の顔料と少なくとも1種類の界面活性物質との混合は、混合用機器、好ましくはボールミル又は攪拌翼付メディアミル等のミルにより行われる。Drais Superflow DCP SF 12 ボールミルが特に好ましい。
【0031】
適する混合時間は、例えば1/2時間〜48時間であるが、これより長い時間とすることも可能である。5時間〜24時間の混合時間とすると好ましい。
【0032】
混合の圧力及び温度条件には特に制限はなく、例えば大気圧での処理が適当であることがわかっている。温度に関しては、例えば10℃〜100℃の温度が適する。
【0033】
顔料:非イオン性界面活性物質の混合比は、広範囲に選定可能であり、例えば10:1〜2:1の範囲とすることができる。
【0034】
工程a)が行われる間に水を添加してもよい。同様に、慣用の非イオン性研磨助剤を添加してもよい。
【0035】
工程a)の後の顔料の直径の中央値は、通常20nm〜1.5μm、好ましくは50〜200nm、特に好ましくは100nmである。
【0036】
工程b)では、工程a)で得られる粒子状の顔料と非イオン性界面活性物質との混合物を水性媒体に分散させる。分散機器は、攪拌槽又は攪拌子を有するフラスコ等、所望の機器を用いることができる。
【0037】
本発明における水性媒体とは、重要成分として水を40質量%以上、好ましくは55質量%以上含む液体媒体である。
工程b)における顔料粒子と非イオン性界面活性物質との混合物対、水性媒体の割合は、一般に1:1.5〜1:15、好ましくは1:2.5〜1:9である。
【0038】
工程b)の圧力及び温度条件は、特に制限を有するものではなく、例えば5〜100℃の温度範囲が適しており、20〜85℃の温度範囲であると好ましい。更に大気圧〜10バール範囲の圧力に設定される。
【0039】
工程b)の分散により分散液が得られる。
【0040】
工程c)では、少なくとも1種類の第一のモノマーを重合させるか、或いは工程b)で得られる分散液の存在下に第一のコモノマー混合物を共重合させ、顔料粒子表面に、水に不溶のポリマー又はコポリマーを形成する。
【0041】
工程c)では、工程b)で得られた分散液に、少なくとも1種類のモノマー又はコモノマーの少なくとも1種類の混合物を添加する。この場合の添加は、例えば1回で行っても、複数部分に分割して行っても、又は連続的に行ってもよい。多種モノマーを共重合させるためには、まず第一のコモノマーを添加し、次いで第二、第三のコモノマーを添加するようにしてもよい。他の実施の形態として、全コモノマーを一度に添加することもある。
【0042】
モノマー及びコモノマーは、そのまま用いても、水分散液として用いてもよい。
【0043】
工程c)において用いられるモノマー又はコモノマーは水に難溶性のコモノマーである。「水に難溶性のモノマー又はコモノマー」とは、50℃における水への溶解度が1×10-1モル/リットル以下のものを意味する。
【0044】
工程c)で使用されるモノマー及びコモノマーの好ましい例は、ビニル芳香族化合物及び水に難溶性のα,β−不飽和カルボン酸誘導体である。
【0045】
ビニル芳香族化合物としては、一般式IVで示される少なくとも
1種類の化合物が好ましく使用される。
【0046】
【化2】

【0047】
上記式中、R7及びR8は、それぞれ独立に水素、メチル又はエチルを、R9はメチル又はエチルを、kは0〜2の整数を意味する。更に、最も好ましい実施の形態では、R7及びR8がそれぞれ水素を、k=0を意味する。
【0048】
水に難溶性のα,β−不飽和カルボン酸誘導体として、一般式Iの化合物が好ましく使用される。
【0049】
【化3】

【0050】
上記式中、
1は分岐又は非分岐C1-C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルへキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかであり、
又は水素を意味し、
最も好ましくは水素又はメチルを意味し、
2は分岐又は非分岐C1-C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルへキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかであり、又は
最も好ましくは水素を意味し、
3は分岐又は非分岐C4−C10アルキル、例えばn−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルから選択され、最も好ましくはn−ブチル及び2−エチルヘキシルを意味する。
【0051】
本発明の実施の形態において、工程c)で用いられる顔料:モノマー又はコモノマーの使用量の割合は、3:1〜1:2、好ましくは2:1〜1:1.5の範囲にある。
【0052】
上記モノマーの混合物を用いて工程c)を行うことも可能である。例えば、スチレンとアクリル酸n−ブチルとの混合物が非常に有用であり、これらの混合比は自由に決定できる。
【0053】
重合は、乳化重合の条件下で行うと好ましい。特に好ましくは、湿潤剤をほとんど添加しないか、全く添加しない材料不足状態が用いられる。これにより、第一のモノマー又は第一のコモノマー混合物の安定化した液滴の画分が検出されず、湿潤剤画分が顔料表面を湿潤させ、かつ連続的な水性相中で第一のモノマー又は第一のコモノマー混合物を移動させる役割を果たす。有用な湿潤剤の例は、有機硫黄化合物、例えば硫酸アルキルエステル、スルホン酸アルキルエステル、スルホン酸アルキルアリールエステル、硫酸アルキルエーテル、硫酸アルキルアリールエーテル、スルホ琥珀酸エステル、例えばスルホ琥珀酸モノエステル及びスルホ琥珀酸ジエステルである。この他、有機リン化合物、例えばリン酸アルキルエステルを使用することができる。
【0054】
一般に、重合は少なくとも1種類の開始剤を使用して行われる。少なくとも1種類の開始剤の例は過酸化物であり、その具体例としてはペルオキソ二硫酸アルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、有機過酸化物、例えば過酸化ジアセチル、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ジアミル、過酸化ジオクタノイル、過酸化ジデカノイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ビス(o−トルオイル)、過酸化サクシニル、過酢酸tert−ブチル、tert−ブチルペルマレイン酸、tert−ブチルペルイソブチラート、tert−ブチルペルピバラート、tert−ブチルペルオクトエート、tert−ブチルペルネオデカノエート、過安息香酸tert−ブチル、過酸化tert−ブチル、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2−エトキシヘキサノエート、及びジイソプロピルペルオキシジカルバメートがある。更に、アゾビスブチロニトリル、アゾビス(2−アミドプロパン)ジヒドロクロリド、及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等の化合物を使用してもよい。
【0055】
更に、過酸化物と酸化可能な硫黄化合物等からなるレドックス開始剤を使用することも可能である。アセトンビスルフィットと有機過酸化物(例えばtert−C4H9-OOH)、Na225(二亜硫酸ナトリウム)と有機過酸化物(例えばtert−C4H9-OOH)、及びHO−CH2SO2Hのアルカリ金属塩と過酸化物(例えばtert−C4H9-OOH)との組み合わせから得られる組成物が極めて好ましく使用される。同様に、アスコルビン酸/H22等の組成物も非常に好ましい。
【0056】
重合温度は、20〜100℃、好ましくは50〜85℃の範囲で設定される。温度は使用する開始剤の分解特性に応じて設定される。
【0057】
圧力条件には特に制限はないが、例えば大気圧から10バールの範囲の圧力が適当である。
【0058】
工程c)の時間は、例えば1分から30分の範囲とされ、好ましくは2分から10分、更に好ましくは3分から5分とされる。
【0059】
乳化重合に慣用の物質、例えばグリコール、ポリエチレングリコール、保護コロイド、バッファー/pH調整剤、分子量調整剤及び連鎖調整剤(阻害剤)を、更に反応混合物に添加してもよい。
【0060】
工程c)により、ポリマー又はコポリマーの被覆を有する粒子状の顔料が、個々の独立した粒子の形態で得られる。測定不能量、又はごく微量の顔料の凝集体が、例えば2質量%未満、好ましくは0.2質量%未満で観察される。
【0061】
工程c)で形成される、粒子状顔料の表面上のポリマー又はコポリマーは、水に不溶である。
【0062】
更に他の工程を行い、工程c)で得られるポリマー又はコポリマー被覆を有する分散状態の顔料粒子を単離してもよい。単離工程は精製処理、例えばろ過、傾斜法、洗浄により行われる。そして、顔料粒子は本発明の工程d)で再分散される。しかしながら、工程c)により得られる分散状態のポリマー又はコポリマー被覆を有する顔料粒子を、現場で更に処理すると好ましい。
【0063】
本発明の工程d)では、少なくとも1種類の第二のモノマー、又は第二のコモノマー混合物を工程c)で得られた分散液、又は後処理及び再分散後の被覆を有する顔料に添加し、重合又は共重合を行う。
【0064】
本発明において、工程c)で1種類のモノマーを用い、更に工程d)で2種類のコモノマーの混合物を用いた場合には、工程d)で第二のコモノマー混合物を更に用いることも可能である。更に、本発明における、工程d)の第二のモノマーとは、工程c)でコモノマーの混合物を使用し、工程d)で更に1種類のモノマーを添加する場合のモノマーを含む。
【0065】
第二のコモノマー混合物を添加することが望ましい場合は、工程c)のモノマー又はコモノマー以外の少なくとも1種類のコモノマーを添加する。
【0066】
本発明の一実施形態では、工程c)でビニル芳香族モノマーが、及び工程d)で工程c)のポリマー又はコポリマーを膨潤させることのできる少なくとも1種類のモノマー又はコモノマーが使用される。
【0067】
式IIで示される少なくとも1種類モノマー又はコモノマーを添加すると極めて好ましい。
【0068】
【化4】

【0069】
上記式中、R4は分岐又は非分岐C1-C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルへキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかであり、
又は水素を意味し、
最も好ましくは水素又はメチルを意味し、
5は分岐又は非分岐C1-C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルへキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかであり、又は
最も好ましくは水素を意味し、
6は分岐又は非分岐C1−C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかを意味する。
【0070】
工程d)におけるコモノマー混合物の添加にあたり、少なくとも1種類のコモノマーが工程c)のモノマー又はコモノマーと異なれば十分である。例えば、工程c)でスチレンを使用し、工程d)でメチルアクリラートとスチレンの混合物を使用することができる。
【0071】
本発明の実施の形態において、第二のモノマー又は工程d)における第二のコモノマー混合物対、工程a)の顔料の質量割合は、0.7:1〜10:1、好ましくは1.5:1〜5:1、更に好ましくは2:1〜4:1の範囲とされる。
【0072】
本発明の方法の工程c)及びd)に用いられるモノマー又はコモノマーの量は、全体として、ポリマー又はコポリマー:顔料の割合が1:1〜5:1、好ましくは2:1〜4:1となるように決定される。
【0073】
工程d)の重合又は共重合は、乳化重合の条件下に行われると好ましい。通常、1種類以上の開始剤が用いられ、上記材料から選択される。
【0074】
更に、少なくとも1種類の陰イオン性、陽イオン性又は非イオン性の乳化剤を使用することができる。
【0075】
慣用の非イオン性乳化剤の例は、エトキシル化モノ−、ジ−及びトリ−アルキルフェノール(エトキシル化度:3−15、アルキル基:C4−C12)、及びエトキシル化脂肪アルコール(エトキシル化度:3−80、アルキル基:C8−C36)である。具体例は、BASF社製のLutensol(登録商標)、及びUnion Carbide社製のTriton(登録商標)である。
【0076】
慣用の陰イオン性乳化剤の例は、
アルキル金属及び硫酸アルキルエステル(アルキル基:C8−C12)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、
エトキシル化アルカノール(エトキシル化度:4−30、アルキル基:C12−C18)又はエトキシル化アルキルフェノール(エトキシル化度:3−50、アルキル基:C4−C12)から得られた硫酸モノエステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、
アルキルスルホン酸(アルキル基:C12−C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、
アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9−C18)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、及び
スルホ琥珀酸エステル(例えばスルホ琥珀酸モノエステル及びジエステル)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
【0077】
適する陽イオン性乳化剤としては、一般にC6−C18−アルキル基含有、−アリールアルキル基含有、又は複素環基含有の一級、二級、三級又は四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩、アミンオキシド塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩、及びホスホニウム塩があげられる。具体例としては、酢酸ドデシルアンモニウム塩又は対応の塩酸塩、多種の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィンエステルの塩化物又は酢酸塩、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルフェート、及びN−セシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド、及びジェミニ型界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドがある。更に、この他の多種の乳化剤について、例えばH. Stache.Tensid-Taschebuch, Carl-Hanser出版、ミュンヘン、ウィーン、1981、及びMcCutcheon's Emulsifiers & Detergents, MC Publishing Company, Glen Rock, 1989に記載されている。
【0078】
本発明の実施の形態では、第二のモノマー又は第二のコモノマー混合物と、乳化剤と、のモル比が1を超過し、好ましくは10を超過し、更に好ましくは20を超過するように乳化剤の使用量を決定する。
【0079】
工程d)において反応体を添加する順序には制限はない。
【0080】
本発明の一実施の形態において、例えば、攪拌して白濁した外観を有する乳濁液が得られるようになったら開始剤を添加する。
【0081】
重合温度は、20℃〜100℃、好ましくは50℃〜85℃の範囲に設定可能であり、使用する開始剤の分解特性に応じて決定される。
【0082】
圧力条件には特に制限はないが、例えば大気圧から10バールの範囲の圧力が適当である。
【0083】
工程d)の重合又は共重合の所要時間は、例えば30分から12時間の範囲であり、2〜3時間とされると好ましい。
【0084】
本発明の一実施形態では、工程d)において、工程d)のモノマー又はコモノマーに対して、10質量%まで、好ましくは2〜5質量%の、下記一般式Va〜Vbで表される少なくとも1種類の化合物がコモノマーとして用いられる。
【0085】
【化5】

【0086】
上記式中、
10は分岐又は非分岐C1-C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルへキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかであり、
又は水素を意味し、
最も好ましくは水素又はメチルを意味し、
11は分岐又は非分岐C1-C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−へキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルへキシル、n−ノニル、n−デシル、更に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかであり、又は
最も好ましくは水素を意味し、
12は分岐又は非分岐C1−C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルから選択され、特に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかであり、
最も好ましくは水素を意味する。
【0087】
更に上記式中のxは、
水素、
グリシジル、
【0088】
【化6】

【0089】
三級アミノ基を有する基、例えばNH(CH2)b−N(CH32(bは2〜6の整数)、
炭素原子数1〜20のエノール化な基、例えばアセトアセチルを意味する。
【0090】
【化7】

【0091】
(式中、R13は分岐又は非分岐C1−C10アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシルから選択され、特に好ましくはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルのいずれかを意味する。
【0092】
式Va又はVb中、R10が水素又はメチルであり、R11及びR12がそれぞれ水素であると最も好ましい。
【0093】
本発明の他の実施の形態では、コモノマーとして、1〜5質量%の(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ウレイド(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミドプロパンスルホン酸、分岐又は非分岐のビニルスルホン酸ナトリウム塩を用いて、工程d)を行ってもよい。
【0094】
本発明の位置実施の形態において、第二のコモノマー混合物は、粒子状の顔料に対して0.1〜3質量%の1種類以上の下式VIの不飽和カルボン酸を含む。
【0095】
【化8】

【0096】
(式中の符号は上記と同様の定義を有する。)
本発明の一実施の形態において、第二のモノマー又はコモノマー混合物は、工程d)でガラス転移点Tgが約0℃のポリマー又はコポリマーが製造されるように選択される。
【0097】
本発明の他の実施の形態において、第二のモノマー又はコモノマー混合物は、工程d)でガラス転移点Tgが約30℃以上のポリマー又はコポリマーが製造されるように選択される。
【0098】
本発明の方法により処理された粒子状顔料を織物の染色に使用する場合には、上記二種類の実施形態を用いることが好ましい。
【0099】
本発明の他の実施形態において、第二のモノマー又はコモノマー混合物は、工程d)でガラス転移点Tgが約20℃未満のポリマー又はコポリマーが製造されるように選択される。
【0100】
本発明の方法により処理された粒子状顔料を皮革の染色に使用する場合には、この実施形態を用いることが好ましい。
【0101】
更に、本発明では、本発明の方法により処理された粒子状の顔料が提供される。同顔料は通常は水性分散液の形状で得られ、同分散液も本発明に係るものであるり、当業者に公知の方法で簡単に分離可能である。
【0102】
本発明により処理された粒子状の顔料を含む本発明の分散液の固体含有率は10〜50質量%、好ましくは30〜40質量%である。
【0103】
本発明により処理された顔料は、それぞれ工程c)のモノマー又はコモノマー、及び工程d)のモノマー又はコモノマーから得られた少なくとも1層のポリマー又はコポリマー層で被覆される。本発明の顔料は、2層のポリマー又はコポリマー層で被覆される場合が多く、2層は相互に浸透し合っている場合もあり、厳密に分離させる必要はない。このような特性を有する粒子を、以下において顔料含有ポリマー粒子と呼ぶ。
【0104】
本発明の粒子状の顔料は、工程d)のモノマー又はコモノマー混合物から得られたポリマー又はコポリマーと混合していてもよい。
【0105】
本発明の好ましい実施の形態においては、本発明により処理された後の顔料が、工程d)のモノマー又はコモノマー混合物から得られたポリマー又はコポリマーとの混合状態で存在する。工程d)のモノマー又はコモノマー混合物から得られたポリマー又はコポリマーは、球形で得られると好ましい。上記特性を有する粒子を、以下において顔料不含有ポリマー粒子と呼ぶ。
【0106】
好ましい実施の形態において、顔料含有ポリマー粒子の顔料不含有粒子に対する質量割合は、10:0.1〜10:3の範囲であり、更に好ましくは10:0.5〜10:2とされる。
【0107】
好ましい実施の形態において、顔料不含有ポリマー粒子の平均半径rは、顔料含有ポリマー粒子の平均半径rより小さい(それぞれ基準は数平均を用いる)。下式で示される半径比は、例えば1.2〜10の範囲であり、好ましくは2〜5の範囲である。

r(顔料含有ポリマー粒子)
r(顔料不含有ポリマー粒子)
【0108】
更に、本発明は本発明による処理を施した粒子状の顔料を、着色料調製物として、又は染料調製物の成分として使用する方法を提供する。また、本発明によると、本発明の方法により処理された粒子状の着色料調製物の製造方法が提供される。更に、本発明は、本発明の方法により処理された粒子状の顔料を使用して製造された着色料調製物を提供する。本発明に係る着色料調製物は、本発明の水性分散液をそのまま使用することによっても、本発明の分散液から本発明により処理された顔料を分離することによっても製造可能である。
【0109】
更に、本発明によると、本発明の方法により処理された粒子状の顔料の、インクジェット法に用いられるインクとしての使用法、又は同インクを製造するための使用法が提供される。更に、本発明は、本発明により処理された粒子状の顔料を用いたインクジェット法用のインクの製造方法、及び本発明の方法により処理された粒子状の顔料を用いて製造されたインクジェット法に用いられるインクを提供するものである。本発明によるインクジェット法用のインクは、本発明の分散液をそのまま用いることにより、又は本発明の分散液から本発明により処理された顔料を分離することにより得られる。
【0110】
本発明の顔料調製物、及び特に本発明のインクジェット法用のインクは、本発明の方法により製造された分散液を水等により希釈し、必要に応じて助剤と混合することにより特に容易に得られる。
【0111】
本発明の好ましい実施の形態において、インクジェット法に用いられる本発明のインクは1〜50g/100ml、好ましくは1.5〜15g/100mlの本発明の処理を施した粒子状の顔料を含む。
【0112】
本発明の着色料調製物、特にインクジェット法に用いられる本発明のインクに包含される添加剤はとしては、有機溶媒を用いることができる。低分子量ポリテトラヒドロフランは好ましい添加剤であり、単独で用いることも可能であるが、1種類以上の高沸点水性溶媒又は水混和性有機溶媒と混合して用いると好ましい。
【0113】
好ましく用いられる低分子量のポリテトラヒドロフランの平均分子量Mwは、一般に150〜500g/mol、好ましくは200〜300g/mol、更に好ましくは約250g/molである(分子量分布に対応する)。
【0114】
ポリテトラヒドロフランは、テトラヒドロフランのカチオン重合により公知方法により製造可能である。生成物は直鎖状のポリテトラメチレングリコールである。
【0115】
ポリテトラヒドロフランを添加剤としての他の有機溶媒と混合してもよく、これに用いられる溶媒は通常高沸点(すなわち大気圧下での沸点が100℃を超過する)を有するものである。従って、水溶性又は水と混和性の保水性有機溶媒が使用される。
【0116】
好ましい溶媒の例は、多価アルコール、好ましくは炭素原子数2〜8、特に3〜6の非分岐又は分岐多価アルコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、エリスルトール、ペンタエリスルトール、ペンチトール、例えばアラビトール、アドニトール、及びキシリトール、及びヘキシトール、例えばソルビトール、マンニトール及びダルシトールである。
【0117】
適する溶媒の他の例には、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール(これは低分子量ポリマーとも解される(二量体、三量体、四量体))、及びこれらのモノ(特にC1−C6、特にC1−C4)アルキルエーテルである。平均分子量100〜1500g/モル、特に200〜800g/モル、主に300〜500g/モルのポリエチレン及びポリプロピレングリコールであると好ましい。これらの例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジ−、トリ−,及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコール、及びジ−、トリ−,及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコールモノメチル、モノエチル、モノプロピル及びモノブチルエーテルである。
【0118】
この他の使用可能な溶媒の例は、ピロリドン及びアルキル鎖が1〜4個、好ましくは1又は2個の炭素原子を含むN−アルキルピロリドンである。適するアルキルピロリドンの例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0119】
特に好ましい溶媒の例は、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(Mwは300から500g/モル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ピロリドン、N−メチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0120】
ポリテトラヒドロフランは、1種類以上(例えば2、3又は4)の上記溶媒と混合してもよい。
【0121】
好ましい実施の形態において、本発明の着色料調製物、特にインクジェット法に用いられる本発明のインクは、通常0.1〜80質量%、好ましくは5〜60質量%、更に好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは10〜30質量%の非水性溶媒を含む。
【0122】
非水性溶媒添加剤の特に好ましい例は、上記の好ましい溶媒の組合わせであり、尿素が、通常は着色料調製物の質量に対して0.5〜3質量%の量で混合されていても好ましく、これにより溶媒混合物の上記の保水効果を向上させることができる。
【0123】
本発明の着色料調製物、特に水性インクジェット法用の本発明のインクは、特に水性のインクジェットインク用に用いられるものであって、印刷産業及び塗料産業で使用される他の助剤を含んでも良い。この様な助剤の例には、保存料、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(Avecia Lim.社製のProxelブランドとして市販)、及びそのアルカリ金属塩、グルタルジアルデヒド及び/又はテトラメチロールアセチレンジウレア、
Protectols(登録商標)、酸化防止剤、脱ガス剤/脱泡剤(例えばアセチレンジオール及びエトキシル化アセチレンジオール(アセチレンジオール1モルあたり、通常20〜40モルのエチレンオキシドを含み、分散効果を生ずる))、粘度調整剤、流動化剤、湿潤剤(例えばエトキシル化又はプロポキシル化された脂肪又はオキソアルコール、プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロック共重合体、オレイン酸又はアルキルフェノールのエトキシラート、アルキルフェノールエーテルスルファート、アルキルポリグルコシド、アルキルホスホナート、アルキルフェニルホスホナート、アルキルホスファート、アルキルフェニルホスファート又は好ましくはポリエーテルシロキサン共重合体、特にアルコキシル化2−(3−ヒドロキシプロピル)へプタメチルトリシロキサン(通常7〜20、好ましくは7〜12のエチレンオキシド単位からなるブロックと、2〜20、好ましくは2〜10のプロピレンオキシド単位からなるブロックを有し、着色料調製物中に0.05〜1質量%の量で使用可能である)に基づく湿潤剤)、沈降防止剤、光沢改良剤、滑剤、粘着性改良剤、抗剥離剤(anti-skinning agent)、つや消し剤、乳化剤、安定剤,撥水剤、光制御剤、風合い改良剤、帯電防止剤、pH調製用の塩基、例えばトリエタノールアミン、又は酸、例えばカルボン酸(乳酸又はクエン酸等)がある。この様な助剤が本発明の着色料調製物、特にインクジェット用の本発明のインクの一部とされる場合には、着色料調製物またはインクジェット用インクの質量に対し、助剤の総量を通常2質量%、特に1質量%とする。
【0124】
本発明の一実施の形態において、着色料調製物及び特に本発明のインクジェット法用インクの動的粘度は、20℃で測定して、2〜80mPa.s、好ましくは3〜20mPa.sである。
【0125】
本発明の着色料調製物及び特に本発明のインクジェット法用インクの表面張力は、20℃で測定して、通常24〜70mN/mの範囲、25〜60mN/mの範囲にある。
【0126】
また、本発明の着色料調製物及び特に本発明のインクジェット法用インクのpHは、通常5〜10、好ましくは6〜9の範囲にある。
【0127】
更に、本発明は、シート状又は三次元形状の基体を、本発明の着色料調製物を用いてインクジェット法により印刷する方法を提供する。このため、本発明の着色料調製物又は本発明のインクジェットインクで基体への印刷を行い、得られた印刷物を、必要に応じて次工程で定着させる。
【0128】
インクジェット法では、一般に水性インクを小液滴として基体に直接噴霧する。このインクジェット法では、通常水性インクを小滴状として基体に直接噴霧する。インクジェット法の一種にコンティニュアス法があり、同方法ではインクを一定割合で加圧してノズルを通過させ、印刷パターンに応じた電場により、ジェット(噴流)を基体に向ける。更に、インタラプテッド又はドロップ・オン・デマンドインクジェット法があるが、この方法ではカラードットを得るべき場所にのみインクが噴出され、ドロップ・オン・デマンド法ではピエゾ電気結晶又は加熱中空ニードル(バブルジェット(登録商標)法)のいずれかを用いてインク組成物に圧力付与し、これによりインク滴を噴出する。これらの技術は、Text. Chem. Color 19 (1987), No. 8, 23-29及び21(1989)、No.6、27-32に記載されている。
【0129】
本発明のインクは、バブルジェット(登録商標)法と、ピエゾ電気結晶を用いる方法に特に好ましく使用される。
【0130】
有用な基体の例を以下に示す。
【0131】
被覆を有する又は被覆を有さないセルロース誘導体、例えば紙、ボール紙、厚紙、木材及び木製基材、
被覆を有する又は被覆を有さない金属材料、例えばアルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛もしくはこれらの合金から成るフォイル、シート、又は半加工品、
被覆を有する又は被覆を有さない珪素含有例えばガラス、磁器、セラミック、
あらゆる種類の高分子材料、例えばポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカルボナート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン及び対応の共重合体及びブロック共重合体、生分解可能ポリマー及び天然ポリマー、例えばゼラチン、
皮革(天然及び人工の双方)、平坦皮革、ナパ皮革、またはスエード皮革、
食料品及び化粧品、
及び特に、繊維材料、例えば繊維、ヤーン、糸、ニット、織布、不織布、及び衣料用材料であって、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステルブレンド繊維、セルロース誘導体(綿、綿混合繊維、ジュート、フラックス、麻及びラミー)、ビスコース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリアミド混合繊維、ポリアクリロニトリル、トリアセタート、アセタート、ポリカルボナート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバー及びガラスファイバー繊維から成るもの。
【0132】
本発明の着色料調製物、特にインクジェット法用の本発明のインクは、有利な利用特性、特に良好な印刷開始挙動、及び良好な持続的使用挙動(kogation)、及び特に好ましい溶媒の組み合わせが用いられる場合には良好な乾燥特性に関して優れている。更に、本発明のインクによると、高光沢及び色合い(明暗の程度)、及び高い摩耗堅牢性、光堅牢度、水堅牢度(耐水性)及び湿潤摩耗堅牢度(耐湿潤性)等を有する高品な印刷イメージが得られる。本発明のインクは被覆を有する又は有さない紙及び繊維の印刷に特に有効である。
【0133】
本発明によると、本発明の上記いずれか方法により印刷された基体、特に織物基体を提供することが可能であり、特に同基体は亀裂を生じやすい印刷イメージ又は図柄、および良好な手触りに関して優れている。
【0134】
本発明の他の実施の形態では、2種類以上、好ましくは3種類以上の異なるインクジェット用インクを一組として併用してもよい。これにより得られたインクは、本発明の方法により処理された、それぞれ異なる色の異種顔料を含むことになる。
【0135】
更に本発明は、本発明により処理された粒子状の顔料を織物の染色に使用する方法を提供する。更に、本発明は本発明により処理された粒子状の顔料を用いて織物を染色する方法、及び本発明の繊維基体の染色方法により得られた染色された繊維基体を提供する。
【0136】
本発明による繊維基体は、織物繊維、織物中間物(intermediate)、及び最終製品、及びこれらから製造された仕上げ加工後の製品、及び衣料業界用の織物、及び、例えばカーペット及び他の家庭用織物、及び工業用繊維構造体を含む。更に具体例としては、不定形状の構造体、例えば短繊維(毛束)、線形構造体、例えば撚糸、フィラメント、ヤーン、縄、ひも、レース、モール、ロープ、糸、及び三次元形状の構造体、例えばフェルト、織布、ループニット、不織布、及びワディングが挙げられる。織物は天然材料、例えば綿、羊毛、亜麻、又は合成材料、例えばポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混合織物、ポリアミド混合織物、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバー及びガラスファイバー織物であってもよい。
【0137】
本発明によると、上記分散液を用いて顔料染色用の染色液、又は顔料印刷、特に織物顔料印刷用の印刷ペーストが得られる。本発明は、更に顔料染色用の染色液の製造法、並びに顔料染色用の印刷ペースト及び本発明の染色液及び印刷ペーストの各製造法を提供するものである。これらの製造法を、以下において本発明の製造法と呼ぶ。
【0138】
本発明の製造法は、少なくとも1種類の本発明の分散液を染色又は印刷操作に必要とされる助剤と混合する工程と、水で希釈することにより着色料含有量を調節する工程と、を含む。
【0139】
本発明の方法に使用される水は、完全にイオンを含まないものである必要はない。通常は不完全に脱イオン化した水又は軟水(非常に軟質な水)が使用される。不十分に軟質な水を用いる場合には、錯生成剤(水軟化剤)を用いて水の硬度を調節することが一般的である。顔料染色操作において有用な水軟化剤は、一般に、マスキング剤(sequester) Ca2+及びMg2+イオンである。特に有効な水軟化剤は、ニトリル三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はメチルグリシン二酢酸である。染色液を製造するために添加される水の量は、織物上に得られる色合いの程度と、織物上にパジングされる染色液の量よって決定される。
【0140】
本発明の染色液は、更に添加剤を含んでいてもよい。有用な添加剤は0〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の有機溶媒である。適する溶媒の例はポリエチレングリコール、単一箇所エーテル化されたアルキレングリコール、及び単一箇所エーテル化されたポリエチレングリコール、例えばジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルである。
【0141】
本発明の染色液には湿潤添加剤、好ましくは低発泡性タイプの湿潤剤が挙げられる。すなわち、染色操作での激しい取り扱い(乱流等)により生じた発泡が平坦な染色面を乱し、染色の品質を損なうため、これを回避するために湿潤添加剤を用いることが可能である。使用する湿潤剤には、例えば脂肪アルコールのエトキシル化及び/又はプロポキシル化生成物、プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロック共重合体、エトキシル化又はプロポキシル化脂肪又はオキソアルコール、及びオレイン酸又はアルキルフェノールのエトキシラート、アルキルフェノールエーテルスルファート、アルキルポリグリコシド、アルキルホスホナート、アルキルフェニルホスホナート、アルキルホスファート及びアルキルフェニルホスファートがある。
【0142】
乾燥した織布、又は連続ピグメント染色によりループを形成しつつ編んだ織物は、大量の空気を含んでいる。この場合の染色では脱気剤の使用が必要とされる。脱気剤の主成分の例はポリエーテルシロキサン共重合体又はリン酸エステルであり、これらは本発明の染色液中に0.01〜2g/リットルの量で使用される。
【0143】
本発明の染色液は更に1種類以上の風合い改良剤を含んでもよい。一般的にはポリシロキサン又はポリエチレン又はポリエチレングリコールを基礎とするワックスが使用される。ポリシロキサンは耐久性に優れ、ワックスは使用中に徐々に洗い流される。しかしながら、本発明では風合い改良剤を使用しないことも可能である。
【0144】
本発明の染色液は、通常、弱酸性のpH、好ましくは4から6.5の範囲のpHを示す。
【0145】
本発明の染色液の動的粘度は、20℃で測定した場合に100mPa・s未満とされる。本発明の染色液の表面張力は、繊維の濡れを可能とするように調整する。一般的には、20℃での測定で、50mN/m未満の表面張力とされる場合が多い。
【0146】
更に、本発明は上記染色液の製造法を提供する。本発明の製造法では、本発明により処理された少なくとも1種類の粒子状の顔料と、溶媒、消泡剤、風合い改良剤、乳化剤及び/又は殺菌剤(biocides)等の上記添加剤とを混合し、水を補充する各工程を含む。この方法では、通常、各成分を混合容器中で攪拌する。容器のサイズと形状は重要ではない。攪拌に次いで、浄化のための濾過を行うと好ましい。
【0147】
更に、本発明は、上記染色液を用いて織物基体を染色する方法を提供する。本発明の方法は通常の機器において行われる。織物が通過する二つの圧搾ロール(ニップロール)から主に構成されるパッドマングルが好ましく使用される。染色液がロール上に存在し、織物を湿潤させる。ニップ圧により繊維が圧縮され、一定の含浸量が確保される。
【0148】
更に、本発明の方法では織物はオフセットローラ(deflecting roller)により搬送され、染色液を含有する電槽を通過する。染色液の上方に配設された一対のローラは、次いで過剰の染色液を絞り取るために用いられる。これにより一定の染色(アドオン)が維持される。
【0149】
実際の含浸工程の後には、通常熱乾燥工程と、定着工程が行われる。70℃〜120℃で30秒〜3分間乾燥処理し、150℃〜200℃で30秒〜5分間定着処理すると好ましい。パジングにより顔料染色工程を行うと好ましい。印刷及び染色された基体は、特に優れた明度(光沢)と秀でた風合いを合わせ持つ。また、本発明では、上記染色液を使用し上記方法により染色した基体が提供される。
【0150】
更に、本発明は、本発明の上記処理が施された粒子状の顔料を織物印刷に使用する方法が提供される。本発明によると、少なくとも1種類の上記粒子状の顔料が印刷用ペースト中に導入される。本発明の織物印刷用の印刷ペーストは、少なくとも1種類の本発明の粒子状顔料を慣用の印刷助剤と混合し、次いで水で希釈することにより着色料含有率を調節することにより得られる。
【0151】
有用な印刷助剤は、Ullmann, Handbuch der technischen Chemie und Verfahrenstechnik、例えばUllmann's Encyclopaedie Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、Textile Auxiliaries、第A26巻、285ページ以降、296ページ以降、Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield/Florida, Basle, 1996に記載されている。慣用の印刷助剤の例は、増粘剤、定着剤、風合い改良剤及び乳化剤である。
【0152】
天然及び合成の増粘剤が使用可能である。合成増粘剤、例えば一般には合成ポリマーをホワイトオイル等に溶解した溶液、又は合成ポリマーの水溶液が好ましく用いられる。このポリマーは、アンモニアにより完全に又は所定の割合まで中和される酸基を含む。定着操作ではアンモニアが放出されるため、pHが低下し、実際の定着が開始される。このほか、非揮発性酸、例えばクエン酸、コハク酸、グルタル酸又はマレイン酸を添加することによりpHを低下させて定着を行うことができる。
【0153】
本発明により簡単に使用可能な形態に製造されたペーストは30〜70質量%のホワイトオイルを含む。水性の増粘剤は、通常25質量%以下のポリマーを含む。増粘剤の水性調製品を用いる場合には、通常アンモニア水を添加する。同様に粒体、増粘剤の固体状調製品を使用すると、揮発を回避して顔料印刷物が得られるように得られるようにすることができる。
【0154】
本発明のペーストは、さらに風合い改良剤を含んでも良く、この例にはシリコン、特にポリジメチルシロキサン、及び脂肪酸エステルがある。本発明の印刷ペーストに好適に添加される市販の風合い改良剤の例は、Acramin(登録商標)Weichmacher SI(Bayer AG)、Luprimol SIG (登録商標)及び Luprimol CW (登録商標)(BASF社製)である。
【0155】
本発明の印刷ペーストは、ペーストがホワイトオイルを含む増量剤を含み、水中油型エマルジョンとして得られる場合は特に、1種類以上の乳化剤を含んでも良い。適する乳化剤の例には、アリール−又はアルキル−置換ポリグリコールエーテルがある。適する乳化剤の製品の例には、Emulgator W(登録商標)(Bayer)、Luprintol PE New(登録商標)及びLuprintol MP(登録商標)(BASF社製)、及びSolegal W (Hoechst社製)がある。
【0156】
他の使用可能な成分の例にはブレーンステッド酸があり、特に非水性材料によるペーストの場合に特に必要となる。好ましい例は、無機酸のアンモニウム塩、例えばリン酸水素ジアンモニウムである。
【0157】
顔料印刷は、公知の種々の方法により実施される。通常は、印刷ペーストをスキージにより押しつけて通過させるスクリーンが使用される。この方法はスクリーン印刷の一種である。本発明による印刷ペーストを用いた顔料印刷工程によると、印刷の施された基体は、特に印刷物の優れた光沢と色合いの濃淡(depth of shade)が得られるのみならず、及び印刷された基体の優れた手触りも得られる。従って、本発明によると、上述の印刷ペーストを用い、上記方法により印刷された基体が提供される。
【0158】
本発明の他の実施の形態によると、本発明の上記いずれかの方法により染色された基体、特に織物による基体が得られ、特に同基体は亀裂を生じやすい印刷イメージ又は図柄、および良好な手触りに関して優れている。
【0159】
本発明は、更に、本発明により処理された粒子状の形態の顔料を皮革の着色に使用する方法が得られた。更に、本発明により処理された粒子状の顔料を用いた皮革の着色方法、及び本発明による皮革の着色方法により着色された皮革が提供される。
【0160】
本発明において、皮革とは、予備なめし加工、なめし加工及び場合により再加工の施された皮革、又は対応の処理の施された合成代替材料であって、少なくともいずれかのなめし工程において少なくとも1種類の染料により処理された材料を意味する。本発明において、皮革は疎水処理又は油脂/液体処理(fatliquored)されていると好ましい。
【0161】
本発明の処理を行った粒子状の顔料は、手触り、色、流動特性及び粘度を調節するための市販の皮革仕上げ助剤と相溶性を有する。これらの助剤は一般に溶液状であるか(例えば流動助剤、グリコールエーテル、エーテル、例えばブチルグリコール、メトキシプロパノール、トリブトキシエチルホスフェート)、又は乳濁液/分散液状とされる(慣用の使用量又は濃度でカゼイン、ワックス、シリコーンを含む)(F. Stather, Gerbereichemie u. Gerbereitechnologie, Akademie Verlag Berlin, 1967、第507〜632ページ参照)。
【0162】
本発明に特有な実施の形態では、本発明の着色法はドラム中で予め染色した皮革に形成された不具合を覆い隠すために、ドラム中で皮革の上染め(top dyeing)する方法が行われる。粒子状の顔料に本発明による処理を施すことにより、慣用のなめし染色よりも顕著に優れた光堅牢性(耐光性)を有するようになる(例えばDIN EN ISO 5 B02により測定)。本発明の処理を施した粒子状の顔料は、ドラム中での標準的な浸透染色(penetration dyeing)を行った後の不具合の遮蔽に用いることができる。
【0163】
本発明の他の実施の形態において、本発明の皮革染色方法は、比較のアニリン型スプレー染色に使用される。以下、これを本発明のスプレー染色という。本発明のスプレー染色によると、天然材料の表面及び皮革組織(表面)が非荷電状態に保たれると好ましい。
【0164】
本発明のスプレー染色は、本発明の方法により処理された粒子状の顔料と、水および界面活性剤とを混合し、得られた混合物を慣用の方法により未着色の皮革に噴霧することにより行われる。
【0165】
界面活性剤としては公知のイオン性又は非イオン性の界面活性剤のあらゆる材料が使用可能であるが、非イオン性界面活性剤を用いると好ましい。特に好ましい非イオン界面活性剤の例は、アルキル化飽和又は不飽和脂肪アルコール又はアルコキシル化飽和又は不飽和脂肪アミン、すなわち炭素原子数が14を超過するアルコール又はアミンである。
【0166】
本発明の一実施の形態により、
1〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の、本発明の方法により処理された粒子状の顔料と、
0.1〜10質量%,好ましくは1〜5質量%の界面活性剤と、
を含み、残量が水である(質量割合はそれぞれ混合物全体を基準とする)から混合物が製造される。得られた1種類以上の混合物を未着色皮革に噴霧する。
【0167】
本発明の他の実施の形態において、本発明の皮革着色方法を皮革の仕上げ用に用いる。皮革の仕上げ/被覆の目的は皮革に所望の外観と、特殊な触覚(風合い)特性を与え、更に堅牢度、例えば柔軟弾性(flex elasticity)、アミン耐性、湿潤時/乾燥時の耐擦過性、及び耐水性を得ることにある。
【0168】
本発明の着色方法は、予め慣用の方法で疎水処理を施しかつ染色した予備なめし処理、なめし処理及び必要に応じて再なめし処理を施した後の皮革を用いて行われる。
【0169】
第一の工程では、少なくとも1種類の、本発明の顔料をそれぞれ1種類以上含む下染め分散液(2層の下染め層を設けることが好ましい場合には最初に粘着プライマーを、次に下染め分散液を用いる)を、皮革表面積m2あたり約10〜100g、好ましくは20〜50gの固体により染色されるような量で施与する。慣用の方法、例えばロールコーティング、塗布(spread coating)、噴霧、例えばエアレススプレー、印刷、積層、プラッシュ、はけぬり、キャスティング又は霧状噴霧により行われる。このように処理された皮革を、次いで乾燥させる。乾燥温度は30〜80℃、好ましくは60〜80℃の範囲とされる。少なくとも1種類の下染め層の分散は1工程以上で行われ、各工程は同様に行われても異なる形態で行われてもよい。更にこれらの工程はそれぞれ、上記温度の乾燥処理を介在させることにより中断されてもよい。
【0170】
本発明の方法に使用される下染め分散液(以下、本発明の下染め分散液という)は、通常、水性とされる。同分散液は、更に非水性溶媒、例えばエチレングリコール、N−メチルピロリドン、3−メトキシプロパノール、及びプロピレンカーボネートを含んでもよい。好ましい実施の形態において、本発明の下染め分散液は以下の成分を含む。
【0171】
α1)例えば1〜10質量%、好ましくは1.5〜5質量%の、本発明により処理された少なくとも1種類の粒子状の顔料、
β1)例えば好ましくは1〜15質量%の少なくとも1種類のワックス、例えば酸化ポリエチレンワックス、カルナバワックス又はモンタンワックス、
γ1)少なくとも1種類の殺菌剤、例えば1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)(Avecia Lim社より市販されているProxel(登録商標)シリーズ)、及びそのアルカリ金属塩、及び他の適する殺菌剤(2−メチル−2H-イソチアゾール−3(MIT)及び5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(CIT))。殺菌剤は通常10〜150ppmの量で十分である。
【0172】
δ1)必要に応じて、少なくとも1種類のバインダー、例えばアクリレート−メタアクリレート共重合体バインダー。付加的に用いられるバインダーのコモノマーの組成は、上記d)について記載した共重合体の組成とほぼ同一であっても好ましい。自動車用皮革への適用では、ウレタンバインダーとブレンドすることも好ましい。
【0173】
下染め分散液は、少なくとも1種類の充填・抗粘着剤を含んでもよい。例えば脂肪酸エステル、アルブミン又はタンパク質、及び無機充填剤(例えばケイ酸塩又は粘土鉱物)を含む水性調製物が好ましく使用される。
【0174】
本発明の下染め分散液の固体含有率は10〜80質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0175】
次いで慣用の方法で顔料被覆を施してもよい。顔料被覆は慣用の構成から成る。
【0176】
本発明の一実施の形態において、顔料被覆は以下の成分を含む(各成分の割合は顔料被覆の総質量を基準とする)。
【0177】
α2)例えば0.05〜5質量%の、少なくとも1種類の粒子状の顔料、
β2)必要に応じて、好ましくは20〜70質量%の少なくとも1種類の他のバインダー、
γ2)必要に応じて、少なくとも1種類の増粘剤。
【0178】
本発明の好ましい実施の形態において、顔料被覆は、下染め層よりも高度の大きな少なくとも1種類のバインダーを含む。
【0179】
この後、上塗り(トップコート)分散液を、皮革表面に対して約5〜30g/m2の割合で施与する。上塗りは、皮革を保護する役割を果たし、単に高い柔軟性のみならず、良好な耐擦過性、耐油性及び耐水性を与える。製品に応じて、上塗りにより光沢面としても、つや消し面としてもよい。すなわち、つや消し剤(matting agent/delusterant)を添加してもよい。上塗りの組成は、例えば、アクリレート又はポリウレタンを基礎材料とする少なくとも1種類のバインダー、湿潤剤、アルブミン、ニトロセルロース乳濁液、有機又は無機つや消し剤を基礎材料とする充填剤、シリコーンワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸から成る。
【0180】
本発明の上塗り分散液は、本発明により処理を施した粒子状の顔料と同様に、更に慣用のバインダー、例えばヨーロッパ特許出願公開第20392352号公報により製造されたポリウレタン分散液を含んでもよい。
【0181】
顔料被覆及び上塗り分散液は、1種類以上の増粘剤を含んでもよい。アクリル酸及びアクリルアミドを基礎材料とする架橋性共重合体の例は、アクリルアミド、及びポリウレタン又はポリビニルピロリドン又はアクリレート(コ)ポリマーを基礎材料とする増粘剤である。
【0182】
上塗りの施与の後に慣用の条件、例えば60〜80℃の温度で乾燥を行い、次いで例えば90〜160℃の温度でホットプレス(加熱圧搾)を行う。ホットプレスは液圧により、例えば減圧下及び70〜100℃の温度で行われる。アイロンがけ用の慣用の機器を用いても、連続加圧装置を用いてもよい。
【0183】
本発明の皮革仕上げでは、下染め、顔料被覆、上塗りの少なくとも1工程で、本発明の少なくとも1種類の組成を用いる。
【0184】
上記工程の後に、上塗り分散液を施してもよい。施与を行う場合には、皮革表面m2に対して約10〜30gの上塗り分散液が使用される。
【0185】
本発明の一実施の形態では、上塗り分散液は以下の成分を含む。
【0186】
α3)例えば0.05〜5質量%の、本発明により処理された少なくとも1種類の粒子状の顔料、
β3)必要に応じて、20〜70質量%等の適当な量の少なくとも1種類のワックス、例えば酸化ポリエチレンワックス又はモンタンワックス、
γ3)少なくとも1種類の殺菌剤、例えば1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)(Avecia Lim社製より市販されているProxel(登録商標)シリーズ)、及びそのアルカリ金属塩、及び他の適する殺菌剤(2−メチル−2H-イソチアゾール−3(MIT)及び5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(CIT))。殺菌剤は通常10〜150ppmの量で十分である。
【0187】
δ3)必要に応じて、少なくとも1種類の他種バインダー、例えばウレタン基を含むバインダー。
【0188】
上塗り分散液は、他の慣用性成分、例えばセラック、又は1種類以上の他の顔料、又はニトロセルロースを含んでもよい。
【0189】
上塗り分散液は1種類以上の増粘剤を含んでもよい。増粘剤の例にはアクリル酸及びアクリルアミドを基礎とする架橋性共重合体がある。好ましくは85〜95質量%のアクリル酸、4〜14質量%のアクリルアミド、及び約1質量%の下式VIIの(メタ)アクリルアミド誘導体の共重合体が使用される。
【0190】
【化9】

【0191】
式VIIの(メタ)アクリルアミド誘導体の分子量Mwは100000〜200000g/モルであり、R10及びR11基は同一であっても異なってもよく、上記と同様の定義を有してもよい。
【0192】
上塗り層の施与の後、慣用の条件下での乾燥工程を行ってもよい。同工程は、例えば60〜80℃で行われ、この後に例えば90〜160℃の温度でホットプレスを行ってもよい。ホットプレスは液圧を用いて、例えば減圧下、70〜100℃で行ってもよい。アイロンがけ用の慣用の機器を用いても、連続加圧装置を用いてもよい。
【0193】
本発明では、下染め被覆、顔料被覆、上塗り被覆の少なくともいずれかの被覆が、本発明により処理された少なくとも1種類の粒子状の顔料を含む。しかしながら、2層以上、好ましくは少なくとも3層以上の被覆が本発明により処理された少なくとも1種類の粒子状の顔料を含むと好ましい。
【0194】
本発明により処理された粒子状の顔料では測定可能な凝集が生じにくく、本発明の方法により着色された皮革での同粒子状顔料のマイグレーションが生じにくい。
【0195】
更に、本発明によると、本発明の方法により処理された少なくとも1種類の粒子状の顔料を用いて製造された着色皮革が提供される。本発明による皮革は、心地よい感触(触感)と、極めて均質な着色において優れており、粒子状の顔料のマイグレーションの生ずる傾向が低いため、履物の製造に非常に好適に使用される。本発明により得られた皮革は、家具用皮革及び車両内装用皮革としても特に優れている。
【0196】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0197】
[概要]
以下の処方により、n−C1837−(OCH2CH225−OHはオクタデカノールエトキシレートを製造する。
【0198】
242gのオクタデカノールと0.1mモルのKOHチップとを、100℃、1mbarのオートクレーブで2時間脱水処理した。この後、窒素を用いて減圧し、窒素で3回パージし、次いでオートクレーブ中130℃に加熱した。130℃となった後、6.1barまでの圧力で、1100gのエチレンオキシドの連続的添加を開始し、3時間20分給送を継続した。添加終了後、一低圧が得られるまで反応を継続させた。次いで、100℃に温度を低下させ、1mbarのオートクレーブで60分間脱ガスした後70℃にて反応生成物を除去した。収量は1337gであった。
【0199】
Mettler Toledo TA8200シリーズ DSC822 示差走査熱量計を用い、TSO 801サンプルロボットでガラス転移温度を測定した。示差走査熱量計はFSR5温度センサーを具備するものを用いた。ドイツ工業規格DIN53765に準じて操作を行った。
[実施例1]
本発明の方法により処理された粒子状顔料の製造
1a)粒子状顔料と非イオン性界面活性物質との混合
1.1a)青色顔料
ボールミル(Drais Superflow DCP SF 12)を用いて以下の材料を合わせて粉砕操作に付した。
【0200】
1800gのピグメントブルー15:3
450gのn−C1837O(CH2CH2O)25
24gのグルタルアルデヒド
30gのテトラメチロールアセチルジウレア
3696gの蒸留水
顔料粒子の平均粒径が100nmになるまで粉砕を続けた。
【0201】
粒子状の顔料と非イオン性界面活性剤物質との混合物1.1a)が得られた。
1.2a)顔料と非イオン性界面活性物質との混合
ボールミル(Drais Superflow DCP SF 12)を用いて以下の材料を合わせて粉砕操作に付した。
【0202】
1800gのピグメントグリーン7
450gのn−C1837O(CH2CH2O)25
24gのグルタルアルデヒド
30gのテトラメチロールアセチルジウレア
3696gの蒸留水
粒子状の顔料と非イオン性界面活性剤物質との混合物1.2a)が得られた。
1b)水分散
1.1b)1.1a)により得られた混合物の水への分散
267gの1.1a)により混合物を、270gの蒸留水に対して、攪拌子を有する1リットルのタンク、窒素供給、及び3供給手段を用いて攪拌することにより、分散した。
【0203】
28質量%のラウリル硫酸ナトリウムの水溶液7.1gとスチレン60gとを添加し、蟻酸を用いてpHを4.0に設定した。
【0204】
これにより、粒子状の顔料を水性媒体に含む分散液1.1b)が得られた。
1.2b) 1.2a)により得られた混合物の水への分散
混合物1.1a)を1.2a)に変更した以外は、実験1.1b)と同様の操作を行った。これにより粒子状の顔料を水性媒体に含む分散液1.2b)が得られた。
1.1c)重合
工程1.1b)により得られた分散液に窒素を1時間通過させた。次いで分散液を85℃に加熱した。この後、0.29gのtert−ブチルヒドロペルオキシド(水中70質量%)及び0.2gのHO−CH2−SO2Naを添加した。
【0205】
顔料粒子の表面に水不溶性ポリマーが形成されたことが観察された。
1.1d)コポリマー乳濁液の添加と共重合
工程1.1c)でtert−ブチルヒドロペルオキシドとHO−CH2−SO2Naを添加した5分後、以下の組成の混合物を90分間にわたり添加した。
【0206】
100gの完全にイオンを含まない水
13.4gの下式材料28質量%を含む水溶液
【0207】
【化10】

【0208】
(a=3)
6.6g6の、56.5質量%のジ−2−エチルヘキシルコハク酸スルホン酸ナトリウムを含む水溶液(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩)
150gのアクリル酸n−ブチル
90gのスチレン
2.5gのアクリル酸
7.5gの下式Va.1の化合物(15質量%水溶液として用いる)。
【0209】
【化11】

【0210】
同時に、1.25gのNa228を60gの水に含む溶液の添加を開始し、105分間添加を継続した。添加中の温度を85℃に維持した。
【0211】
添加完了後、85℃にて攪拌を30分間継続し、次いで脱臭目的で1.1gのtert-ブチルヒドロペルオキシド(ケミカルウォータ中70質量%)を15gの蒸留水中に含む溶液と、0.7gのHO−CH2−O−SO2Naを15gの蒸留水中に含む溶液を並列的に添加開始し、添加を90分間継続した。
【0212】
この後、バッチを室温に冷却し、25質量%のアンモニア水でpH7に調整した。
【0213】
次いで、得られた分散液を120μmのネット、次いで15μmのネットを通してろ過した。
これにより、本発明により処理された顔料粒子を含む水分散液が得られた。20℃で測定したところ、固体分含有率は37.8質量%、動的粘度は25mPa.sであった。上記により得られた、本発明の処理を施した粒子状顔料の粒径分布を、Malvern社製Autosizer IICを用い、ISO 13321に準じて測定したところ、最大粒径が137nmであった。
1.2d)コモノマー混合物の添加と共重合
工程1.1c)でtert−ブチルヒドロペルオキシドとHO−CH2−SO2Naを添加した5分後、以下の組成の混合物を90分間にわたり添加した。
【0214】
100gの完全にイオンを含まない水
13.4gの下式材料28質量%を含む水溶液
【0215】
【化12】

【0216】
(a=3)
6.6g6の、56.5質量%のジ−2−エチルヘキシルコハク酸スルホン酸ナトリウムを含む水溶液(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩)
163.7gのアクリル酸n−ブチル
75gのスチレン
3.8gのアクリル酸
7.5gの下式Va.1の化合物(「MAMOL」)(15質量%水溶液として用いる)。
【0217】
【化13】

【0218】
同時に、1.25gのNa228を60gの水に含む溶液の添加を開始し、105分間添加を継続した。添加中の温度を85℃に維持した。
【0219】
添加完了後、85℃にて攪拌を30分間継続し、次いで脱臭目的で1.1gのtert-ブチルヒドロペルオキシド(水中70質量%)を15gの蒸留水中に含む溶液と、0.7gのHO−CH2−O−SO2Naを15gの蒸留水中に含む溶液を並列的に添加開始し、添加を90分間継続した。
【0220】
この後、バッチを室温に冷却し、25質量%のアンモニア水でpH7に調整した。
【0221】
次いで、得られた分散液を120μmのネット、次いで15μmのネットを通してろ過した。ろ過の所要時間は4分であった。
【0222】
これにより、本発明により処理された顔料粒子を含む水分散液が得られた。固体分含有率は37.8質量%、動的粘度は25mPa.sであった。上記により得られた、本発明の処理を施した粒子状顔料の粒径分布を、Malvern社製Coulter Counterを用い、ISO 13321により測定したところ、最大粒径が137nmであった。
工程1.1d)の場合と同様の条件下の、個別操作により得られた共重合体のガラス転移点Tgは−8℃であった。一方、本発明により処理された顔料のガラス転移点Tgを測定すると、−2℃であった。
【0223】
[実施例1.2〜1.10]
実施例1.1a)〜1.1c)を繰り返し行った。工程d)において、表1に記載したコモノマー混合物を添加し、1.1d)と同様の条件下で共重合を行った。
【0224】
これにより、本発明により処理された粒子状の顔料No.2〜10が得られた。
【0225】
表1:工程1.2d)〜1.10d)及び1.1d)のコモノマー混合物。数値の単位は、他の基準を用いたことを明記しない限り、工程d)で使用したコモノマーの総量に対する質量%である。
【0226】
【表1】

【0227】
表中の省略記号:
BA アクリル酸n−ブチル
EHA アクリル酸2−エチルヘキシル
EA アクリル酸エチル
MMA メタクリル酸メチル
S スチレン
AN アクリロニトリル
MAMol N−メチロールメタクルアミド
GMA メタクリル酸グリシジル
BMA-acac 1,4−ブタンジオールモノアクリレート−アセチルアセテート
HPA アクリル酸ヒドロキシプロピル
AM アクリルアミド
MAM メタクリルアミド
AS アクリル酸
MAS メタクリル酸
1.1d)コモノマー混合物の添加と共重合
【0228】
工程1.1c)によるtert−ブチルヒドロペルオキシドとHO−CH2−SO2Naを添加した5分後、以下の組成の混合物を90分間にわたり添加した。
【0229】
130gの完全にイオンを含まない水
12.5gの下式で示される材料30質量%を含む水溶液
【0230】
【化14】

【0231】
(a=3)
8.3gの、45質量%のジ−2−エチルヘキシルコハク酸スルホン酸ナトリウムを含む水溶液(ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩)
150gのアクリル酸n−ブチル
88.7gのスチレン
3.8gのアクリル酸
7.5gの下式Va.1の化合物(15質量%水溶液として用いる)。
【0232】
【化15】

【0233】
同時に、1.25gのNa228を100gの水に含む溶液の添加を開始し、105分間添加を継続した。添加中の温度を85℃に維持した。
【0234】
添加完了後、85℃にて攪拌を30分間継続し、次いで脱臭目的で1.1gのtert-ブチルヒドロペルオキシド(水中70質量%)を25gの蒸留水中に含む溶液と、0.7gのNaO−CH2−O−SO2Hを25gの蒸留水中に含む溶液を並列的に添加開始し、添加を90分間継続した。
【0235】
この後、バッチを室温に冷却し、25質量%のアンモニア水でpH7に調整した。
【0236】
次いで、得られた分散液を120μmのネット、次いで15μmのネットを通してろ過した。
【0237】
これにより、本発明により処理された粒子状顔料を含む水分散液1.1d)が得られた。固体分含有率は34.6質量%、動的粘度は35mPa.sであった。上記により得られた、本発明の処理を施した粒子状顔料の粒径分布について最大粒径が135nmであるという測定結果が得られた。粒径の測定は、準弾性光散乱(QELS)としても知られる光子交互作用分光法(PCS) により行った。
【0238】
測定法ではIS0 13321規格に記載された方法を用いた。ポリマーの希釈分散液(濃度:〜0.005質量%)を測定した。
1.13d)コモノマー混合物の添加と共重合
以下のモノマーを添加した以外は、実施例1.2d)と同様の操作を行った。
【0239】
20gのスチレン
118.7gのメタクリル酸メチル
100gのアクリル酸n−ブチル
3.8gのアクリル酸
7.5gのメタクリルアミド。
【0240】
これにより、本発明により処理された粒子状の顔料を含む分散液1.13d)が得られた。
1.14d)コモノマー混合物の添加と共重合
1.1c)の代わりに1.2c)を出発材料として用いて実施例1.12d)と同様の操作を行い、本発明により処理された粒子状の顔料を含む分散液1.14d)を得た。
II. 本発明により処理された粒子状の顔料を含む、本発明のインクの製造と印刷
インクジェットインクを調製するために、本発明により処理された粒子状の顔料を含む実施例1.1d)により得られた水分散液を使用した。インクジェットインクの調製は、以下の成分を混合し、以下の方法により行われた。
【0241】
実施例1.1d)により得られた本発明の処理を施した粒子状顔料の分散液27g(固体分102g相当)
1.0gの尿素
2.0gのn-C49−O(CH2CH2O)3−H
0.25gの2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール
16.0gのグリセロール
0.25gのエチレングリコール
52.5gの完全にイオンを含まない水。
【0242】
上記混合物を攪拌し、インクジェットカートリッジに充填した。
【0243】
本発明のインクの動的粘度は3.7mPa.sを示し、慣用のプリンターでの印刷に適合した。
【0244】
ピエゾプリンター(Epson3000)に上記カートリッジを挿入して、本発明のインクを用いた綿(綿100%、250g/m2)に対する印刷を行った。
【0245】
上述のように印刷を施した綿は、空気乾燥、及び熱風定着(150℃、5分間)の後、優れた堅牢度を有していた。
【0246】
耐擦過性(乾燥状態): 4〜5
耐擦過性(湿潤状態): 3〜4
耐水性: 4
印刷後の綿は心地よい手触りのものであった。
【0247】
上記耐擦過性は、ドイツ工業規格DIN 54021に基づいて測定し、耐水性はドイツ工業規格DIN 54011に基づいて測定したものである。
II. 本発明により処理された粒子状顔料による織物の着色
II.1. 実施例1により製造された、本発明の処理を施した粒子状顔料による織物の着色
実施例1.1により製造した顔料分散液60gを、66%のアクリル酸と34%のアクリルアミドに基づく水溶性ランダム共重合体(モル質量Mw60000g/モル)6gと混合し、合計量1リットルとなる量の脱塩水を添加した。
【0248】
これにより得られた染色液を、綿100%の織物に対して、Mathis社製HVF 12085 パッドマングルを用いたパジングにより施与した。湿分吸収量は85%であった。この綿織物を80℃で3分間乾燥し、次いで150℃で5分間定着を行った。堅牢度の測定値を以下に示す。
【0249】
耐擦過性(乾燥状態) DIN EN ISO 105 × 12: 4〜5
耐擦過性(湿潤状態) DIN EN ISO 105 × 12: 4
洗浄堅牢度(耐洗浄性) DIN EN ISO 105 C 03: 4〜5
ヘリザリン(Helizarin) 摩耗−ブラシ洗浄 3/5: 4〜5
【0250】
[実施例II.2〜II.10]
本発明の処理を施した対応の顔料2〜10を使用した以外は、実施例II.1と同様の操作を行った。
【0251】
実施例II.2、II.6、II.8において、下記式
【0252】
【化16】

で示される、Lonza Grp. Lim.(スイス)製の市販材料0.5当量を付加的に添加することにより、50質量%のn−ブタノール溶液としての本発明の各染色液を製造した。
【0253】
本発明により処理された顔料を用いて着色された織物は、優れた感触(手触り)を有するものであった。本発明により染色された織物は繰り返し洗浄を行った後も、ひび割れ(亀裂)による色あせの兆候がないことがわかった。
【0254】
本発明により処理された顔料により、色彩の明暗(shade)を組み合わせた形態で染色された繊維は、優れた光沢と傑出した均等性(ムラのなさ)を示すものである。
II. 適用例: 皮革の着色
II.1 履物用皮革の製造
ウエットブルーから得られた市販の履物用皮革クラストを、皮革用染料で染色した(クラスト(乾燥)質量に対して5質量%、1:10に希釈、35℃のドラムに60分間滞留)。
【0255】
上記工程の後、本発明の分散液1.12d)を以下の条件によるトップ炎色(top dyeing)に使用した。
【0256】
1質量部の履物用皮革クラストに対して500質量部の水、2.5質量%(クラスト乾燥質量を基準とする)の本発明により処理された顔料1.12d)、希釈1:10、他の添加剤不使用、50℃のドラム中滞留時間30分。
【0257】
この後、染浴中の分散液を除去し、皮革を200質量部の水で洗浄し、染浴中の廃液を除去し、皮革を12時間架台上に載置し、広げ、懸架乾燥し、固定し(starked)、3時間延伸処理(milled)し、張力付加(strained)した。
【0258】
この結果、目視では表面にキズの観察されない、染料が十分に浸透した皮革が得られた。
III.2 未染色のクロムなめし牛皮クラスト皮革のスプレー染色(アニリン型染色)
以下の成分より混合物を製造した。
【0259】
200gの本発明により処理された粒子状の顔料1.14d)
15gの式cis-CH3-(CH2)7-CH=CH-(CH2)8-NH-(CH2CH2O)12-OHの界面活性剤
785gの完全にイオンを含まない水。
【0260】
未染色のクロムなめし牛皮クラスト皮革に、上記混合物をスプレーガン噴霧し、均一な表面染色(アドオン)約30g/m2の牛皮クラスト皮革を得た。この後、比較を80℃で乾燥させ、次いで標準雰囲気下で1日調整した。
【0261】
以下の特性が観察された。
【0262】
噴霧性 極めて良好
耐光性(DIN EN ISO 5-B02) 4
水滴耐性 IUF 420 5
マイグレーション耐性(DIN EN ISO 15701) 4〜5
耐擦過性(乾燥)VESLIC 1000

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)粒子状の顔料と、少なくとも1種類の非イオン性界面活性物質と、を混合する工程と、
b)前記工程により得られた粒子状の顔料と非イオン性界面活性物質との混合物を水性媒体に分散する工程と、
c)前記工程b)により得られた分散液の存在下に、少なくとも1種類の第一のモノマーを付加重合に付すか、又は第一のコモノマー混合物を付加共重合に付して、粒子状の顔料の表面に水に不溶性の重合体又は共重合体を形成する工程と、
d)少なくとも1種類の第二のモノマー、又は第二のコモノマー混合物を添加して、付加重合又は付加共重合する工程と、
を含むことを特徴とする粒子状の顔料の処理方法。
【請求項2】
工程d)でガラス転移温度Tg約0℃の重合体又は共重合体を製造することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)でガラス転移温度Tg30℃以上の重合体又は共重合体を製造することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程d)でガラス転移温度Tg20℃未満の重合体又は共重合体を製造することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
粒子状の顔料が有機顔料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第一のモノマーがビニル芳香族化合物であるか、又は一般式I
【化1】

で表され、
1が水素、又は分岐又は非分岐のC1−C10アルキルを、
2が水素、又は分岐又は非分岐のC1−C10アルキルを、
3が分岐又は非分岐のC4−C10アルキルを、
それぞれ意味する化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第一のコモノマー混合物が、少なくとも1種類のビニル芳香族化合物と、一般式Iで表される少なくとも1種類の化合物と、の混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
一般式Iの1種類の化合物におけるR1及びR2の双方が水素であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
添加される第二のモノマーが、一般式II
【化2】

で表され、
4が水素、又は分岐又は非分岐のC1−C10アルキルを、
5が水素、又は分岐又は非分岐のC1−C10アルキルを、
6が分岐又は非分岐のC1−C10アルキルを、
それぞれ意味する化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第二のコモノマー混合物が一般式IIで示される少なくとも1種類のモノマーを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
一般式IIの1種類の化合物において、R4が水素又はメチルであり、R5が水素であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第二のコモノマー混合物が、ビニル芳香族化合物と一般式Iの化合物から選択された少なくとも1種類のコモノマーを含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
工程d)は、第二のコモノマー混合物に対して5質量%以下の、
式Va又はVb
【化3】

(上記式中、
10〜R12が同一であるか又は異なり、それぞれ水素、分岐又は非分岐のC1−C10アルキルを意味し、
Xが水素、グリシジル、第三級アミノ基を含むプロトン性の基、又は炭素原子数1〜20のエノール化可能な基を意味する)
で表される少なくとも1種類化合物の存在下に行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項の方法により得られる、処理された粒子状の顔料。
【請求項15】
請求項14に記載の処理された粒子状の顔料を、顔料調製物を製造するために使用する方法。
【請求項16】
請求項14に記載の処理された粒子状の顔料を、インクジェット法に用いられるインクを製造するために使用する方法。
【請求項17】
請求項14に記載の処理された粒子状の顔料の水性分散液を、インクジェット法に用いられるインクとして、又はインクジェット法に用いられるインクを製造するために使用する方法。
【請求項18】
請求項16又は17の使用法に用いられるインクジェット法用のインク。
【請求項19】
請求項18に記載のインクを用いたインクジェット法により基体を印刷する方法。
【請求項20】
基体が繊維基体であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の方法により得られた印刷された基体。
【請求項22】
請求項14に記載の処理された粒子状の顔料を繊維又は皮革を着色するために使用する方法。
【請求項23】
請求項14に記載された少なくとも1種類の処理された粒子状の顔料により繊維基体を処理することを特徴とする繊維の着色方法。
【請求項24】
請求項14に記載された少なくとも1種類の処理された粒子状の顔料を含むことを特徴とする繊維染色用の染色液。
【請求項25】
請求項14に記載された少なくとも1種類の処理された粒子状の顔料を含むことを特徴とする繊維印刷用の印刷ペースト。
【請求項26】
請求項14に記載の方法により得られた着色された繊維基体。
【請求項27】
皮革の仕上げを行うことを特徴とする請求項22に記載の使用方法。
【請求項28】
請求項14に記載された少なくとも1種類の処理された粒子状の顔料により、予め染色された皮革を処理することを特徴とする皮革の着色方法。
【請求項29】
請求項14に記載された少なくとも1種類の処理された粒子状の顔料と、以下の成分の少なくとも1種類、すなわち少なくとも1種類のワックス、少なくとも1種類の殺菌剤又は少なくとも1種類のバインダーと、を含むことを特徴とする水性下染め分散液。
【請求項30】
請求項28に記載の方法により得られた着色された皮革。
【請求項31】
請求項30に記載の着色された皮革から製造された履物。


【公表番号】特表2007−527931(P2007−527931A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515892(P2006−515892)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006298
【国際公開番号】WO2004/113454
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】