説明

粒子状吸水剤及びその製造方法並びに吸水性物品

本発明は、高い吸収性能を維持したまま、乾燥状態での流動性が高く、かつ、吸湿時のブロッキングやケーキング、装置等への付着を防止でき、さらには、吸収液と接触した場合に表面張力の低下が起こりにくく、かつ吸水特性を損なうことなく、流動性およびかさ密度を増大させた粒子状吸水剤を得ることを目的とする。本発明の粒子状吸水剤は、架橋構造を有する吸水性樹脂を表面架橋処理したものであって、(i)質量平均粒子径(D50)が200〜600μmで、粒子径850μm未満150μm以上のものが全体の95〜100重量%、(ii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45、(iii)圧縮度が0〜18%、(iv)20℃の生理食塩水50mlに該粒子状吸水剤0.5gを分散させてから4分後の上澄み液の表面張力が55mN/m以上、であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤及びその製造方法並びに吸収性物品に関するものである。さらに詳しくは、吸水性能を損なうことなく、かつ乾燥状態及び吸湿時の流動性、かさ密度の安定性等の粉体特性に優れ、安定した吸収特性を示す粒子状吸水剤であり、粒子状吸水剤を紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料の吸収体中に用いた場合に、戻り量の少ない、優れた吸収特性を有する粒子状吸水剤および吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、吸水性樹脂は、体液(尿や血液)を吸収させることを目的として、紙おむつや生理用ナプキン、失禁パット等などの衛生材料(吸収物品)において、その主要な構成材料として幅広く利用されている。上記吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、カルボキシメチルセルロース架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレン−マレイン酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の架橋体等が知られている。従来から上記の吸水性樹脂に望まれる吸水特性としては、体液等の水性液体に接した際の高い吸収倍率、特に荷重下での高い吸水倍率、優れた吸収速度、通液性、膨潤ゲルのゲル強度、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引量等が唱えられている。
【0003】
これらの吸水性樹脂は、重合体内部に均一な架橋構造を持ち、水不溶化された親水性樹脂であるが、通常、上記の吸水特性を得るために、粒子の表面をさらに架橋剤などで架橋処理することによって粒子に架橋密度勾配を持たせ、吸水性樹脂の吸水速度の向上、ママコの生成防止、ゲル強度の向上、加圧下での吸収倍率改善、ゲルブロッキング防止、通液性の向上が図られている。
【0004】
例えば、欧州特許0349240号、欧州特許0605150号や、特開平7−242709号、特開平7−224304号、米国特許5409771号、米国特許5597873号、米国特許5385983号等に、粒子の表面近傍に架橋密度勾配を持たせる表面架橋処理に関して記載されている(以下、従来例1と記す)。
【0005】
上記手法以外にも、吸水性能を向上させるために、例えば通液性の向上を図るために、特開昭61−58658号には吸水性樹脂と金属石鹸とからなる吸水材について記載されている。また、これら吸水性能のみならず、吸水性樹脂の製造時や搬送時、吸水性樹脂と繊維基材等を加工して吸収体を作成する場合、乾燥状態での粉体流動性および吸湿時の粉体流動性が良好で装置等への付着も少なく、かつ吸水特性に優れた粒子状吸水剤が望まれている。吸湿時の粉体流動性が良好な特性を付与する試みとして非晶質二酸化ケイ素やカオリン等の無機物質の添加が提案されている。例えば、米国特許4734478号、特開昭59−80458号、または、米国特許5453323号に無機物質粉体と吸水性樹脂粉末からなる粒子状吸水剤に関する技術が記載されている。上記以外の無機物質を添加する以外にも、例えば特開昭63−105064号にはステアリン酸と無機質粉末を含む粒子状吸水剤が記載されている(以下、従来例2と記す)。
【0006】
また、米国特許5728742号には4級アンモニウム塩を含む粒子状吸水剤が記載されている。さらに、特開平9−136966号や欧州特許0001706号公開公報には変性ポリシロキサンやポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール等を添加した粒子状吸水剤が開示されている。また、特開平8−143782号にはポリマー系分散剤を含有する粒子状吸水剤が開示されている(以下、従来例3と記す)。
【0007】
また、ママコの生成防止、ゲルブロッキング防止を図るために、特公平6−39485号公報(平成6年5月25日公告)、特許第3283570号公報(平成14年3月1日登録)、及び特開2003−82250号公報(平成15年3月19日公開)には、吸水性樹脂を界面活性剤で処理した粒子状吸水剤について記載されている(以下、従来例4と記す)。また、かさ密度を向上させる試みも提案されている、例えば、特開2000−302876号公報(平成12年10月31日公開)には、架橋重合体粒子を研磨した後に、表面架橋することによって、かさ密度が大きく、加圧下の吸収倍率が良好な不定形破砕状吸水性樹脂粉末が記載されている(以下、従来例5と記す)。
【0008】
しかしながら、上記の手法では、乾燥状態での流動性及び吸湿時の粉体流動性が不十分であったり、また、加圧下での吸収性能が大幅に低下したり、吸水性樹脂と尿等の吸収液が接触した場合に、吸収液の表面張力が低下するなどの問題があった。例えば、上記従来例1では乾燥状態での流動性及び吸湿時の流動性が低く不十分であり、吸水性樹脂の取扱い性が悪い。また、上記従来例2ついては、無機物質を添加することで吸湿時の流動性が改善されるものの、乾燥状態での流動性及び吸収性能が大幅に低下し、吸水性樹脂の取扱い性が悪いほか、それらを使用した吸収物品は十分な吸水特性を発揮できなかった。特に、特開昭61−58658号に記載されている技術では、金属石鹸を吸水性樹脂に対して通常1〜60重量%、好ましくは5〜80重量%添加している。これほど多量に金属石鹸を添加した場合には、金属石鹸の疎水性、撥水性、界面活性能といった性質が吸水性樹脂の吸液性能に悪影響をもたらすという問題点を有している。また、上記従来例3では、吸湿時の流動性が不十分であったり、また、吸水性樹脂と尿等の吸収液が接触した場合に、吸収液の表面張力が低下する問題を抱えており、例えば紙おむつに使用した場合に戻り量が増加するなど、吸収性物品の吸水特性が低下するため、十分なものとは言えなかった。
【0009】
また、上記従来例4では、吸水性樹脂に対する界面活性剤の使用量が多いために不経済であり、また粒子状吸水剤と尿等の吸収液が接触した場合に、吸収液の表面張力が低下し、その結果、例えば紙オムツに使用した場合に戻り量(re−wet)が増加するなど、粒子状吸水剤の吸液性能に悪影響をもたらすという問題点を有している。
【0010】
また、従来例5における不定形破砕状吸水性樹脂粉末は、かさ密度が高く、加圧下の吸収倍率が良好なものとなっているが、これらを達成するために架橋重合体表面を研磨しており、粉末を製造する工程数が増えている。また、架橋重合体表面の研磨によって発生する微紛を処理する必要がある。このため、製造に係るコストや手間が増大するという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、(1)吸湿時の流動性および乾燥状態での粉体流動性がよいことにより、吸水性樹脂の搬送時においての取扱い性が良好で、装置等への付着も少なく、(2)加圧下での吸収倍率が高く、(3)尿などの吸収液に接触した場合に吸収液の表面張力低下が少ないという優れた吸水特性を有し、(4)吸水性樹脂の流動性とかさ密度とを増大および安定させ、かつ、吸水特性が損なわれない粒子状吸水剤を容易に実現することにある。
【発明の開示】
【0012】
本願発明者らは、流動性に優れ、かつ高い吸水性能を維持し、さらに粒子状吸水剤と尿などの吸収液が接触した場合に、吸収液の表面張力の低下をできるだけ小さくすることが達成できれば、粒子状吸水剤を組み込んだオムツ等の吸水性物品が作りやすく、かつ、粒子状吸水剤を吸水性物品に組み入れた場合に戻り量が少ない優れた吸水性物品が提供できるという着眼点から鋭意検討した結果、表面が架橋処理され、かつ特定の粒度分布を有する吸水性樹脂と、粉体の滑剤または界面活性剤を用いることにより、上記の目的が達成できることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤は、吸水性樹脂に、表面処理剤を添加して表面架橋処理された粒子状吸水剤であって、該粒子状吸水剤は、(i)質量平均粒子径(D50)が200〜600μmであり、かつ、全粒子状吸水剤100重量%に対して、850μm未満150μm以上の粒子径を有する粒子状吸水剤が95〜100重量%含まれており、(ii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であり、(iii)下記式で規定される圧縮度が0〜18%の範囲であり、(iv)20℃の生理食塩水50mlに該粒子状吸水剤0.5gを分散させてから4分後の上澄み液の表面張力が55mN/m以上であることを特徴としている。
圧縮度(%)=(P−A)/P×100
ただし、Pは粒子状吸水剤のかためかさ密度、Aは粒子状吸水剤のゆるみかさ密度
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記粒子状吸水剤の粒子層に20mmの深さまで挿入部材を挿入した場合の仕事量である挿入仕事量が0g重×mm以上75,000g重×mm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の粒子状吸水剤としては、具体的には、さらに、界面活性剤または粉体の滑剤を含む粒子状吸水剤が挙げられる。
【0015】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記粒子状吸水剤において、上記吸収剤の2.03kPa下での加圧下吸収倍率が20g/g以上であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る粒子状吸水剤は、4.83kPa加圧下での加圧下吸収倍率が17g/g以上であることが好ましい。
【0017】
また本発明の粒子状吸水剤は、20(10−7・cm・s・g−1)以上の生理食塩水流れ誘導性(SFC/Saline Flow Conductivity)を有することが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、乾燥状態での粉体同士の摩擦力が小さく、吸湿下でのブロッキングやケーキングを防止できるとともに、装置等への付着も起こし難く、粉体流動性に優れた粒子状吸水剤を提供する事ができる。それによって、製造装置の過負荷による停止や粒子状吸水剤の搬送輸送に使用される配管等での詰りを回避する事ができる。さらに、機械的衝撃力等によるプロセスダメージの緩和、粉体撹拌動力の低減、および空気輸送に必要なエネルギーの低減等が可能となる。また、また、流動性が増大することにより、例えば、容器からホッパーへの移し変えや、ホッパーから容器への充填に要する時間を短縮することができ、作業上の能率を上げることが可能となる。
【0019】
また、粉体同士の摩擦力が小さく、かさ密度が増大することにより、同一体積の容器に対する充填量を増大させることができるため、輸送(運搬)費を低減することや、貯槽等への貯留量を増大させることが可能となる。
【0020】
そして、加圧下吸収倍率などの吸収性能が高く、かつ、粒子状吸水剤が尿などの吸収液と接触した場合に吸収液の表面張力の低下が起こりにくいため、吸収物品での戻り量が少なくなり、優れた吸収性物品を提供する事ができる。
【0021】
上記粉体の滑剤は、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有し、0.01μm以上100μm以下の質量平均粒子径を有する高分子添加剤であることが好ましい。
【0022】
また、上記高分子添加剤の添加量が、上記吸水性樹脂100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
また、上記高分子添加剤は、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体が高分子添加剤である(共)重合体に対し15重量%以上100重量%以下で(共)重合されてなるものであるが好ましい。
【0024】
また、上記高分子添加剤は、上記吸水性樹脂の表面に、溶液または懸濁液の状態で添加されてなることが好ましい。
【0025】
また、上記高分子添加剤は、質量平均粒子径0.01μm以上100μm以下の粉体として、上記吸水性樹脂の表面に添加されてなることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、吸湿状態でも粉体同士の摩擦力が小さく、吸湿下でも粉体流動性に優れた粒子状吸水剤を提供する事ができる。
【0027】
また、上記界面活性剤の添加量が、上記吸水性樹脂100重量部に対して0.0005重量部以上0.012重量部以下の範囲であることが好ましい。
【0028】
また、上記界面活性剤が、HLB8〜18のノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、上記特定範囲の界面活性剤を用いることで、粉体同士の摩擦力を低減させつつ、吸収液の表面張力を低下させることがないため、粒子状吸水剤の吸収特性が低下することを防止することができる。
【0030】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記の課題を解決するために、吸水性樹脂と粉体の滑剤(金属石鹸は除く)とを含み、上記滑剤は、上記吸水性樹脂に対して0.0001重量%〜0.1重量%の範囲で含有されていることを特徴としている。
【0031】
上記の構成を有することで、本発明の粒子状吸水剤は、同様に、流動性およびかさ密度が増大し、かつ、吸水特性が損なわれない粒子状吸水剤を得ることができるという効果を奏する。
【0032】
本発明に係る粒子状吸水剤は、ゆるめかさ密度が0.7g/ml以上であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る粒子状吸水剤は、上記滑剤が吸水性樹脂粉体に添加されてなることが好ましい。
【0034】
また、本発明の粒子状吸水剤は、上記粒子状吸水剤において、上記吸水性樹脂が不定形破砕状粒子、不定形破砕状粒子の造粒物、球形状粒子の造粒物、楕円形状粒子の造粒物からなる群から選ばれたどれか一つの形状またはその混合物の形状を有することが好ましい。
【0035】
また、本発明の吸収性物品は、上記課題を解決するために、上記した粒子状吸水剤のいずれかを含むものである。
【0036】
本発明の粒子状吸水剤の製造方法は、上記の課題を解決するために、架橋構造を有する吸水性樹脂に、(A)表面架橋剤、(B)界面活性剤または粉体の滑剤を必須成分とする表面処理剤を添加し、表面架橋処理する粒子状吸水剤の製造方法であって、該界面活性剤または粉体の滑剤の添加量が該吸水性樹脂100重量部に対して0.0005〜0.012重量部の範囲であり、20℃の生理食塩水50mlに該粒子状吸水剤0.5gを分散させてから4分後の上澄み液の表面張力が55mN/m以上であることを特徴としている。
【0037】
また、表面架橋前の吸水性樹脂の、(i)質量平均粒子径(D50)が200〜600μm、(ii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であることが好ましい。
【0038】
また、上記粒子状吸水剤の、下記式で定義される圧縮度が0〜18%とすることが好ましい。
圧縮度(%)=(P−A)/P×100
ただし、Pは粒子状吸水剤のかためかさ密度、Aは粒子状吸水剤のゆるみかさ密度
本実施形態のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本実施形態の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
[図1]本発明の実施例にて用いた加圧下吸収倍率を測定するための装置の概略構成を示す断面図である。
[図2]本発明の粒子状吸水剤について、挿入距離および挿入仕事量を測定するための測定装置の構成を示す概略斜視図である。
[図3]上記測定装置に備えられる圧縮装置の要部を示す正面図である。
[図4]上記測定装置に備えられる挿入プローブ(挿入部材)を示す正面図である。
[図5]挿入プローブ(挿入部材)の各挿入距離での、該挿入プローブの粒子層への挿入に要した荷重の変化の一例を示すグラフである。
[図6]本発明の実施例にて用いた生理食塩水流れ誘導性(SFC)を測定するための装置の概略構成を示す断面図である。
[図7(a)]本発明の実施例にて用いた、ゆるみかさ密度および流下速度を測定するための装置の概略構成を示す断面図である。
[図7(b)]本発明の実施例にて用いた、ゆるみかさ密度および流下速度を測定するための装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に関わる吸水性樹脂及び粒子状吸水剤さらには該吸水剤を用いた吸水性物品について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜実施しうる。
【0041】
本発明の実施の形態について説明すると、以下の実施の形態1〜実施の形態3の通りである。本発明の粒子状吸水剤は、好ましくは、吸水性樹脂と粉体の滑剤または界面活性剤とを含むものであるが、これらに限定されるものではない。この粒子状吸水剤は、例えば、不飽和単量体成分を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂に、(実施の形態1)粉体の滑剤の一つである炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する高分子添加剤を添加する、(実施の形態2)(A)表面架橋剤、(B)界面活性剤を必須成分とする表面処理剤を添加した後、加熱することにより表面架橋処理する、(実施の形態3)粉体の滑剤を添加する、ことにより得られる。
【0042】
以下、吸水性樹脂、高分子添加剤、界面活性剤、粉体の滑剤、粒子状吸水剤、吸水性物品について具体的に説明する。
【0043】
本発明の粒子状吸水剤は水や各種水溶液、尿や血液等の水溶液の吸収用に用いられ、該粒子状吸水剤に含まれる全成分の内、主成分として、吸水性樹脂の樹脂純分を、粒子状吸水剤の固形分に対して、通常70重量%(質量%)以上100重量%以下、より好ましくは80重量%以上100重量%以下、最も好ましくは90重量%以上100重量%以下含むものを言う。上記粒子状吸水剤は、吸水性樹脂と炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する高分子添加剤とを含み、さらに、該吸水性樹脂および該高分子添加剤以外の化合物(以下、その他成分)を含んでいてもよい。
【0044】
以下、本発明の粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂、高分子添加剤、および粒子状吸水剤、優れた吸収性能や粉体としての流動性等を発揮しうるパラメータ、上記粒子状吸水剤を用いた吸収物品について詳述する。なお、本明細書において、「質量」と「重量」とは同義であるものとする。
(I)吸水性樹脂
本発明では、吸水性樹脂として、本発明を達成する上で、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を架橋重合した吸水性樹脂(架橋重合した構造である吸水性樹脂であれば良く、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を重合後に、架橋剤ないし重合時の自己架橋により架橋反応して得られる吸水性樹脂でもよい)が必須に用いられる。
【0045】
本発明の吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性、水不溶性の架橋重合体のことであり、例えば、水膨潤性とはイオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは、50倍から1000倍という多量の水を吸収するものを指す。また、水不溶性の吸水性樹脂とは、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が好ましくは50重量%以下(下限0%)、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、最も好ましくは10重量%以下のものを指す。上記水可溶成分の含有量の測定法は、後述の実施例で規定する。
【0046】
また、上記架橋重合体とは、良好な吸収特性を得るために、不飽和単量体を重合することによって得られる重合体の内部に架橋構造(以下、内部架橋構造)を有する重合体を言う。さらに、上記吸水性樹脂は、該吸水性樹脂表面近傍に架橋構造を形成する表面架橋処理が施されていてもよく、該表面架橋処理が施されていなくてもよい。このうち、優れた吸収特性を得るためには、表面架橋処理が施されている事が好ましい。
【0047】
上記の架橋重合体からなる吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体またはその中和物、カルボキシメチルセルロース架橋体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物、カチオン性モノマーの架橋体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の架橋体、架橋イソブチレン−(無水)マレイン酸共重合体等の1種または2種以上を挙げることができるが、このうち、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする不飽和単量体を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体を用いることが好ましい。
【0048】
上記の架橋重合体からなる吸水性樹脂は、不飽和単量体を重合・架橋することによって得られ、必要に応じて表面架橋処理が施される。以下、吸水性樹脂の製造に用いられる不飽和単量体、架橋性単量体、重合開始剤、吸水性樹脂の製造方法について説明する。
【0049】
<不飽和単量体>
本発明の粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂を得るために用いられる不飽和単量体としては、所望する架橋重合体を得ることができる単量体を用いればよい。
【0050】
例えば上記架橋重合体がアクリル酸部分中和物重合体である場合には、不飽和単量体として、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分として使用すればよく、該アクリル酸および/またはその塩とともに、アクリル酸および/またはその塩以外の他の不飽和単量体を共重合成分として用いてもよい。これにより、最終的に得られる吸水性樹脂に対し、吸水特性以外に、抗菌や消臭等の別の特性を付与することができるとともに、吸水性樹脂をより一層安価に得ることができる。
【0051】
上記他の不飽和単量体としては、例えば、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸等の酸基含有単体、およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水可溶性または水不溶性の不飽和単量体等を挙げることができる。これら単量体は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。本発明の単量体としては、上記単量体を共重合成分とするものも含まれる。
【0052】
なお、上記不飽和単量体および他の不飽和単量体として、酸基を含有する不飽和単量体を用いる場合には、該不飽和単量体の塩として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、好ましくはアルカリ金属塩を用いればよい。この内、得られる吸水性樹脂の性能、不飽和単量体の塩の工業的な入手の容易さ、安全性等の点から、ナトリウム塩やカリウム塩を少なくとも必須に用いることが好ましい。
【0053】
上記アクリル酸(塩)以外の他の不飽和単量体を併用する場合には、吸水性樹脂を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、最も好ましくは0〜5モル%の割合で用いるとよい。言いかえれば、吸水性樹脂を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、主成分としてのアクリル酸及びその塩の総モル数は、70〜100モル%であり、好ましくは90〜100モル%であり、より好ましくは95〜100モル%であればよい。
【0054】
また、アクリル酸などの酸基含有不飽和単量体は、物性面およびpH面から中性前後が好ましく、酸基が中和されることが好ましい。酸基の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)は、通常20〜100モル%、さらに好ましくは30〜95モル%、より好ましく40〜80モル%である。酸基の中和は単量体で行ってもよいし、重合体で行ってもよいし、それらを併用してもよい。
【0055】
<架橋性単量体(内部架橋剤)>
本発明の吸水性樹脂は、内部架橋構造を有する架橋重合体であり、吸水性樹脂が水不溶性及び水膨潤性を有していれば、内部架橋構造を有していると考えることができる。そのため、吸水性樹脂の内部架橋構造は、内部架橋剤である架橋単量体を用いずに、不飽和単量体の自己架橋によって得られるものであってもよいが、好ましくは、上記した不飽和単量体と架橋単量体とを共重合または反応させて得られるものがよい。ここで、内部架橋剤である架橋単量体とは、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有するものである。
【0056】
上記内部架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0057】
上記内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、上記内部架橋剤は、反応系に一括して添加してもよく、分割して添加してもよい。1種または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる粒子状吸水剤の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する架橋性単量体を重合時に必ず用いることが好ましい。
【0058】
上記内部架橋剤の使用量は、吸水性樹脂の良好な物性を得る観点から、上記した、吸水性樹脂を得るために用いる不飽和単量体の総モル数(架橋剤は除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内である。上記内部架橋剤の使用量が0.001モル%よりも少ない場合、並びに、2モル%を超える場合には、吸水性樹脂の十分な吸収特性が得られない可能性があるため、好ましくない。
【0059】
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記不飽和単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
【0060】
<重合開始剤>
本発明の吸水性樹脂を得るために上記の不飽和単量体を重合する際には、重合開始剤を使用するとよい。使用される重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。
【0061】
上記重合開始剤の使用量は、物性面から、吸水性樹脂を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%であることが好ましい。上記重合開始剤が0.001モル%未満の場合には、未反応の残存単量体が多くなり、好ましくない。一方、重合開始剤が2モル%を超える場合には、重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0062】
<重合方法>
本発明に用いられる吸水性樹脂を得るために上述の各単量体(不飽和単量体、他の不飽和単量体、架橋性単量体)を重合するに際しては、水溶液重合や逆相懸濁重合、バルク重合、沈殿重合等を行うことが可能である。中でも、吸水性樹脂の性能や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0063】
上記の各単量体を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体によって決まり、特に限定されるものではないが、通常、10〜80重量%、10〜70重量%の範囲内が好ましく、20〜60重量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0064】
上記の重合を開始させる際には、前述の重合開始剤を使用して開始させることができる。また、前述重合開始剤の他にも紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独あるいは重合開始剤と併用してもよい。上記重合反応における反応温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、重合中の上限〜下限温度で15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲が好ましい。反応温度が上記の範囲をはずれると、得られる吸水性樹脂の残存単量体の増加や、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0065】
なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に、粒子状に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などの米国特許に記載されている。
【0066】
水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号などの欧州特許に記載されている。これら米国特許や欧州特許に例示の単量体や重合開始剤なども本発明に適用できる。
【0067】
<乾燥処理>
上記重合方法によって単量体を重合して得られる重合体は、通常は含水ゲル状架橋重合体であり、必要に応じて乾燥処理や粉砕が行われる。粉砕は、通常、乾燥処理の前および/または後で行われる。
【0068】
また、乾燥処理方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等目的の含水率となるように種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。乾燥処理を熱風乾燥にて行う場合には、通常60℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは120℃〜200℃の温度範囲(熱風温度)で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。例えば、乾燥時間は、1分〜5時間の範囲内で適宜選択すればよい。
【0069】
本発明に用いることのできる吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂や粒子状吸水剤中に含まれる水分量で規定/180℃で3時間の乾燥減量で測定し、該減量を、乾燥前の吸水性樹脂に対する比率で表わしたもの)は、特に限定されないが、該吸水性樹脂を主成分として含む本発明の粒子状吸水剤の良好な物性を得るために、室温でも流動性を示す粒子(粉末)となるように制御可能な含水率であることが好ましい。すなわち、上記粒子状吸水剤は、通常含水率が0〜30重量%の粉末状態、より好ましくは0.2〜30重量%の粉末状態、さらに好ましくは0〜20重量%の粉末状態、よりさらに好ましくは0〜15重量%の粉末状態、さらにより好ましくは0.3〜15重量%の粉末状態、特に好ましくは0.5〜10重量%の粉末状態である。上記の範囲内の含水率を有する粒子状吸水剤が得られるように、含水ゲル状架橋重合体を乾燥処理して、吸水性樹脂を得ればよい。含水率が高くなってしまうと、流動性が悪くなり製造に支障をきたすばかりか、吸水性樹脂が粉砕できなくなったり、特定の粒度分布に制御できなくなってしまう恐れがある。
【0070】
なお、上記逆相懸濁重合による重合方法を用いた場合には、通常重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋重合体を、例えばヘキサン等炭化水素の有機溶媒中に分散させた状態で共沸脱水し、重合体の含水率を40重量%以下(下限0重量%、好ましくは5重量%)、好ましくは30重量%以下とした後に、デカンテーションあるいは蒸発により有機溶媒と分離し、必要に応じて乾燥処理することができる。また、本発明の吸水性樹脂は、重合中または重合後に、後述する高分子添加剤が添加混合されうる。重合後に添加混合する場合には、乾燥前、乾燥後または粉砕後に添加混合することができる。
【0071】
<表面架橋処理(単に表面架橋とも言う)>
本発明の粒子状吸水剤に用いられる吸水性樹脂は、上記の架橋重合および乾燥処理し、必要により粉砕したものに、さらに、表面近傍にさらに架橋(二次架橋)処理されることが好ましい。ただし、本発明において吸水性樹脂とは、表面架橋処理された吸水性樹脂、表面架橋処理がなされていない吸水性樹脂の両方を指す。
【0072】
上記表面に架橋を行うための架橋剤としては、種々のものがあるが、吸収性能の観点から、一般的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ、ジ、またはポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等が用いられている。
【0073】
本発明で用いることのできる表面架橋剤としては、具体的には、米国特許6228930号、同6071976号、同6254990号などに例示されているものを挙げることができる。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラまたまポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ソルビトールなどの多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン化合物;エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの表面架橋剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。本発明の効果を最大限にするために、これらの架橋剤の中でも少なくとも多価アルコールを用いることが好ましく、炭素数2〜10、好ましくは炭素数3〜8の多価アルコールが用いられる。
【0074】
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂100重量部(質量部)に対して、0.001重量部〜10重量部の範囲内が好ましく、0.01重量部〜5重量部の範囲内がより好ましい。
【0075】
上記表面架橋処理には水を用いることが好ましい。この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂の含水率にもよるが、好ましくは吸水性樹脂100重量部に対し0.5〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲内である。
【0076】
また、水に代えて、親水性有機溶媒を用いてもよく、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。この際使用される親水性有機溶媒または混合溶媒の量は、吸水性樹脂100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部、より好ましくは0〜3重量部の範囲内である。
【0077】
上記表面架橋剤の添加は、種々の手法で行うことができるが、表面架橋剤を、必要により水及び/または親水性有機溶媒とを予め混合した後、次いで、その水溶液を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均粒子径で0.1〜300μmの範囲内が好ましく、0.1〜200μmの範囲がより好ましい。
【0078】
吸水性樹脂と、該表面架橋剤と、水または親水性有機溶媒とを混合する際に用いられる混合装置は、これら各物質を均一にかつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。上記の混合装置としては例えば、円筒型混合機、二重壁円錐混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適である。
【0079】
なお、表面架橋剤の混合に際しては、表面架橋前に炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する高分子添加剤と混合したり、または、表面架橋剤と共存させても本発明の粒子状吸水剤を得ることができる。なお、該高分子添加剤については後述する。また表面架橋剤の混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲で、水不溶性微粒子粉体を共存させてもよい。
【0080】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は好ましくは加熱処理される。上記加熱処理を行う際の条件としては、加熱温度(吸水性樹脂温度もしくは熱媒温度)は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃であり、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。加熱温度と加熱時間との組み合わせの好適な例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。
【0081】
なお、吸水性樹脂が逆相懸濁重合で得られる場合には、重合終了後の共沸脱水途中および/または共沸脱水終了時において、例えば含水ゲル状架橋重合体の含水率が50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である時に、逆相懸濁重合で用いられる疎水性有機溶媒中に上記表面架橋剤を分散させ加熱することにより、表面が架橋処理された吸水性樹脂を得ることができる。
【0082】
また、本発明における表面架橋処理の別の形態としては、ラジカル重合性化合物を含む処理液を吸水性樹脂に添加した後に、活性エネルギーを照射して表面処理する方法が挙げられ、例えば、特願2003−303306(平成15年(2003)8月27日出願)に記載されている。ここに記載の処理液に界面活性剤を添加し活性エネルギーを照射して表面処理することもできる。
【0083】
さらに本発明における表面架橋処理の別の形態としては、過酸化物ラジカル開始剤を含む水性溶液を吸水性樹脂に添加した後に、加熱して表面処理する方法が挙げられ、例えば特公平7−8883号公報(平成7年(1995)2月1日公告)に記載されている。
【0084】
上記のように、必要に応じて表面架橋処理を施されてなる本発明の吸水性樹脂は、吸湿時の高い流動性、高いかさ密度を達成するために、特定の粒子径(粒度)に調整されることが好ましい。
【0085】
なお、上記吸水性樹脂の粒子径は、後述の粒子状吸水剤にも適用されるので、ここでは、その具体的な説明を省略する。また、吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤の粒子径は、目的やその必要に応じて不溶性微粒子や親水性溶媒、好ましくは水を添加混合してさらに造粒して調整してもよい。
【0086】
本発明の粒子状吸水剤は、後述するが、例えば、好ましくは上記により得られた吸水性樹脂と粉体の滑剤または界面活性剤とを含むものである。実施の形態1では、粉体の滑剤が炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する高分子添加剤である場合について説明する。
【0087】
(II)粉体の滑剤または界面活性剤
(実施の形態1)
<高分子添加剤>
1.高分子添加剤の組成
本発明に用いることのできる高分子添加剤とは、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体を(共)重合して得られる高分子化合物のことであり、または、反応性基を有する高分子化合物に炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に導入して得られる高分子化合物でもある。
【0088】
上記炭化水素基とは、炭素と水素から構成される炭素数7以上の炭化水素ユニット部分を有する物であり、直鎖、分岐鎖、環状であるか、飽和、不飽和であるかを問わない。特にウンデシレニル基等の不飽和の炭化水素ユニットを用いた場合には抗菌性が付与される等の効用がさらに付与できる。
【0089】
上記炭化水素基を側鎖に有する単量体とは、重合した場合に高分子化合物の主鎖から炭化水素基が懸垂している状態になるような単量体のことである。尚、本発明では重合過程に生じる分岐は側鎖としては考慮しない。つまり、高圧法ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリブロピレン等)合成法を応用するようなエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン部分の分岐鎖は側鎖とは解さない。これらの化合物ではポリマー構造が正確に制御されない為、吸湿時の流動性を向上させるのに多くの添加量が必要であり、経済的に好ましくない。
【0090】
上記炭化水素基を有する側鎖の長さは炭素数7以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、12以上がさらに好ましく、14以上が最も好ましい。また、炭化水素基の長さの上限は特に限定されるものではないが、50以下が好ましく、40以下がさらに好ましく、30以下が最も好ましい。
【0091】
また、本発明で高分子添加剤に用いられる単量体は炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に含んでおればよく、その他側鎖にポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等も含んでいてもよい。従って、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体は水可溶性であっても水不溶性であってもかまわない。
【0092】
本発明での水溶性単量体(親水性単量体)とは温度20℃の水100gに対して1g以上、好ましくは5g以上、さらに好ましくは10g以上、最も好ましくは20g以上の溶解度を有する単量体を指す。
【0093】
上記水不溶性単量体とは温度20℃の水100gに対して1g未満(下限0g)、好ましくは0.5g以下、さらに好ましくは0.1g以下の溶解度を有する単量体を指す。
【0094】
上記炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体としては、炭素数7以上の直鎖あるいは分岐鎖または環状の炭化水素基を有するアルコールまたはアミンとカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和単量体を反応させて得られるエステルまたはアミド単量体を挙げる事ができる。そのような単量体の代表例としては、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、カプリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ウンデシレニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イソステアリル(メタ)アクリルアミド、パルミチル(メタ)アクリルアミド、ミリスチル(メタ)アクリルアミド、カプリル(メタ)アクリルアミド、セチル(メタ)アクリルアミド、イソボニル(メタ)アクリルアミド、ウンデシレニル(メタ)アクリルアミド、オレイル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステル類、アルキル置換(メタ)アクリルアミド類を挙げる事ができる。さらに、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸等類似の単量体の上記エステル、アミドも含まれる。
【0095】
さらに炭素数7以上の直鎖あるいは分岐鎖または環状の炭化水素基を有するカルボン酸とヒドロキシル基を含有するエチレン性不飽和単量体を反応させて得られるエステル単量体でも良く、そのような単量体の代表例としては、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、イソステアリン酸ビニル、ウンデシレン酸ビニル、ベヘニン酸ビニル、ナフテン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニル等のビニルエステル類を挙げることができる。さらに、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートあるいはポリエチレングリコール(メタ)クリレート等類似の単量体の上記エステルも含まれる。特に、炭素数7以上の炭化水素基として不飽和の炭化水素基部分を有する化合物は抗菌性能が付与できる。そのような例としてはウンデシレノキシポリエチレングリコール(メタ)クリレート等を挙げる事ができるため、特に好適に使用される。
【0096】
さらに炭素数7以上の直鎖あるいは分岐鎖または環状の炭化水素基を有するカルボン酸とアミノ基を含有するエチレン性不飽和単量体を反応させて得られるアミド単量体であっても良く、そのような単量体の代表例としては、カプリル酸−N−ビニルアミド、カプリン酸−N−ビニルアミド、ラウリン酸−N−ビニルアミド、ミリスチン酸−N−ビニルアミド、パルミチン酸−N−ビニルアミド、ステアリン酸−N−ビニルアミド、イソステアリン酸−N−ビニルアミド、パルミチン酸−N−ビニルアミド、ウンデシレン酸−N−ビニルアミド、ベヘニン酸−N−ビニルアミド、ナフテン酸−N−ビニルアミド、リノール酸−N−ビニルアミド、リノレン酸−N−ビニルアミド等のビニルアミド類を挙げることができる。
【0097】
また、炭素数7以上の直鎖あるいは分岐鎖または環状の炭化水素基を有するハロゲン化物、アルコールまたはカルボン酸とアミノ基を含有するエチレン性不飽和単量体を反応させて得られる4級塩単量体、中和塩、アミンであっても良く、そのような単量体の代表例としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルアミン、アリルアミン、エチレンイミンのヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ラウリル、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、ウンデシレニル、ベヘニル、ナフチル、オレイル、セチル、イソボニル基等を有する4級塩、中和塩、アミンを挙げることができる。
【0098】
さらに炭素数7以上の直鎖あるいは分岐鎖または環状の炭化水素基を有するアルコールとスルホン酸基、リン酸基を含有するエチレン性不飽和単量体を反応させて得られるエステル単量体でも良く、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸等のヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、ラウリルエステル、パルミチルエステル、ステアリルエステル、イソステアリルエステル、ウンデシレニルエステル、ベヘニルエステル、ナフチルエステル、オレイルエステル、イソボニルエステル、セチルエステル等を挙げる事ができる。
【0099】
また、炭素数7以上の直鎖、分岐鎖、環状の炭化水素基を側鎖に有するα−オレフィンでも良く、1−ノネン、1−デセン、1−オクタデセン等を挙げる事ができる。これらの単量体は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0100】
高分子化合物の有するカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の反応性基に炭素数7以上の炭化水素基を後から反応させて得られる炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する高分子化合物も(共)重合の場合と同様に高分子添加剤として解釈する。
【0101】
すなわち、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の反応性基を有する高分子化合物に、炭素数7以上の炭化水素基を有するアルコール、カルボン酸、スルホン酸、アミン等を反応させて、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する高分子添加剤を得てもよい。
【0102】
上記高分子添加剤に炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有しない場合には、吸水性樹脂に高分子添加剤を添加して得られる粒子状吸水剤の吸湿時の流動性が十分確保されなくなると共に、乾燥状態での流動性すらわるくなり取扱いが困難になる他、吸収液の表面張力が低下し、紙おむつや吸収体等の使用時において戻り量が多くなるなどの不都合が発生する。
【0103】
高分子添加剤を、共重合で得る場合には上記炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体の量は高分子添加剤である(共)重合体に対して15%質量以上100重量%以下、含んで(共)重合されていることが好ましく、20重量%以上85重量%以下含んで(共)重合されていることがより好ましく、20重量%以上70重量%以下含んで(共)重合されていることがさらに好ましい。
【0104】
高分子添加剤を、反応性基を有する高分子化合物に炭素数7以上の炭化水素基を後から導入して得る場合には、共重合の場合と同様に解釈し、繰り返し単位(単量体ユニット)換算で、高分子添加剤である重合体に対して15%質量以上100重量%以下含まれていることが好ましく、20重量%以上85重量%以下含まれていることがより好ましく、20重量%以上70重量%以下含んでいることがさらに好ましい。上記繰り返し単位(単量体ユニット)換算とは、例えばポリアクリル酸にステアリルアルコールを反応させて、ステアリル基を側鎖に有する高分子添加剤を得た場合、アクリル酸とステアリルアクリレートの共重合体と解釈し、高分子添加剤である重合体に対するステアリル基を含む単量体(ステアリレート)の比率(質量)で上記比率が計算されることを指す。
【0105】
炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体の量が上記範囲を外れると吸水性樹脂に高分子添加剤を添加して得られる粒子状吸水剤の吸湿時の流動性、乾燥状態での流動性を改善するために必要な添加量が多くなる傾向があり、経済的に好ましくない。
【0106】
上記高分子添加剤は炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有していれば良く、それ以外はどのような単量体が使用されてもよい。
【0107】
具体的には炭素数が7未満の炭化水素基を側鎖に有する単量体あるいは、水可溶性の単量体であっても良く、そのような単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそれらのエステル、アミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン等を挙げる事ができる。これらの単量体は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。
【0108】
その中でも粒子状吸水剤表面の親水性−疎水性を制御する為に、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体以外に、水可溶性の単量体を(共)重合された高分子添加剤であることが好ましく、そのような水可溶性単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。
【0109】
上記高分子添加剤は疎水性である水不溶性単量体と親水性である水可溶性単量体の両方を共重合されているのが好ましく、水不溶性単量体:水可溶性単量体の質量比率は15:85から85:15が好ましく、20:80から80:20がより好ましく、20:80から70:30がさらに好ましく、20:80から60:40が最も好ましい。
【0110】
このように高分子鎖に水溶性−水不溶性の単量体を共重合してなる高分子添加剤を吸水性樹脂に添加することにより、粒子状吸水剤の親水性−疎水性の程度を制御する事が出来、吸水速度を遅くすることなく吸湿時の流動性を確保する事が可能となる。また、高分子添加剤に水可溶性単量体を共重合して親水性を付与することにより、高分子添加剤自体も水膨潤性または水可溶性となり、上記不飽和炭化水素基であるウンデシレノキシ基やアミンの4級塩を導入した場合に抗菌性能をより強く発現させることが可能となる。
【0111】
また、吸水性樹脂に添加する上記高分子添加剤の親水性単量体にカルボキシル基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、アミノ基を有する単量体を使用した場合には、中和塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、ハロゲン化物塩、有機酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩等)の形態をとってもよい。好ましいのは一価以上の金属塩であり、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、銀、亜鉛、銅、錫等を挙げる事ができる。特に2価以上の金属塩、例えば鉄、マグネシウム、銀、亜鉛、銅、錫等の金属イオン塩では抗菌性、消臭の効果が付与できるので特に好ましい。好ましい中和度合いとしては上記高分子添加剤中の全カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基のモル数に対して75モル%以下(下限0モル%)、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下、最も好ましくは10モル%以下である。
【0112】
上記高分子添加剤が粉体状態または懸濁液状態で吸水性樹脂に添加される場合には、上記単量体に併せて、一分子中に、2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する架橋単量体(架橋剤とも言う)を共重合又は反応させてもよい。これら架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0113】
これら架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら架橋剤は、反応系に一括して添加してもよく、分割して添加してもよい。このような架橋剤の有無、あるいは架橋剤量の多少によって中性の水に対する高分子添加剤の溶解性を可溶性にも不溶性にも調整することが可能である。これら架橋剤の使用量は上記記単量体(内部架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001〜10モル%、より好ましくは0.005〜5モル%、さらに好ましくは0.01〜1モル%である。
【0114】
上記高分子添加剤の融点、ガラス転移点または軟化点は好ましくは40〜250℃以下であり、より好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。40℃以下のものを使用した場合には吸水性樹脂に高分子添加剤を添加して得られる粒子状吸水剤の乾燥状態での流動性または吸湿時の流動性が低下し、その取扱い性が悪くなるので好ましくない。上記範囲内に融点、ガラス転移点または軟化点を調整する事により、室温下での粉体の流動性、吸湿時の流動性を維持できるだけでなく、不織布、パルプなどの基材と粒子状吸水剤が混合された後、該高分子添加剤の融点、ガラス転移点、または軟化点以上に加熱することにより、熱的に基材と粒子状吸水剤との融着、固定化が可能となる。添加する高分子添加剤の融点、ガラス転移点または軟化点が250℃以上では基材や粒子状吸水剤の熱的劣化が起こる傾向が顕著となり好ましくない。
【0115】
また、上記高分子添加剤の分子量は通常、重量平均分子量で1,000以上1,000,000以下、好ましくは5,000以上1,000,000以下、さらに好ましくは10,000以上1,000,000以下、最も好ましくは50,000以上1,000,000以下のものが好適に用いられる。高分子添加剤の分子量が該範囲を外れる場合は、吸水性樹脂に高分子添加剤を添加して得られる粒子状吸水剤の乾燥時の流動性、吸湿時の流動性が悪化する可能性がある。
【0116】
上記高分子添加剤が吸水性樹脂に添加される場合の上記高分子添加剤の形態は溶液状態、懸濁液状態、粉体状態のどれであってもよい。
【0117】
上記高分子添加剤が粉体(微粒子)の状態で吸水性樹脂に添加される場合には、高分子添加剤粉体の粒子径、粒子形状は特に限定されるものではないが、通常、吸水性樹脂の重量(質量)平均粒子径よりも小さく、高分子添加剤粉体の全量に対して90重量%以上(上限100重量%)が0.01から100μmの範囲内にあることが好ましい。その中でも、高分子添加剤粉体の全量に対して90重量%以上が0.01から75μmの範囲内にあることがより好ましく、5から75μmの範囲内にあることがさらに好ましく、5から50μmの範囲内にあることが最も好ましい。
【0118】
また、高分子添加剤粉体の平均粒子径(D50)が0.01μm以上100μm以下である事が好ましく、0.01μm以上75μm以下である事がさらに好ましく、0.01μm以上50μm以下である事が最も好ましい。粒子径分布、平均粒子径はコールターカウンター法、レーザー回折散乱法等の従来の測定方法で容易に測定される。また、与えられる粒子の形状は微粒子の造粒物であっても、一次粒子(単粒子)であってもよい。
【0119】
上記高分子添加剤粉体(微粒子)の粒子径が上記範囲を外れると、吸水性樹脂に上記高分子添加剤を添加して得られる粒子状吸水剤の乾燥状態での流動性、吸湿時の流動性が改善されないばかりか、粒子状吸水剤の吸水性能が低下するので好ましくない。
【0120】
<高分子添加剤の合成方法>
上記高分子添加剤は炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体を(共)重合して得る方法、または、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、リン酸基等反応性基を有する高分子化合物に炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に導入して得る方法があるが、合成の行い易さから炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体を(共)重合して得る方法が好ましい。
【0121】
上記高分子添加剤を溶液状態で吸水性樹脂に添加する場合の高分子添加剤の合成方法は、上記単量体混合物を溶解可能な溶媒中で重合を行えばよく、好ましい溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、ベンゼン、シクロヘキサン、水等を挙げる事ができる。
【0122】
重合反応は光、熱により遊離ラジカルを発生させて行うラジカル重合法が好適に用いられ、必要に応じてチオグリコール酸エステル、アルキルメルカプタン等の連鎖移動剤を併用してもよい。
【0123】
ラジカル重合の開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、ベンソイルペルオキシド、過酸化水素、カプリルペルオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。これら重合開始剤の使用量は物性面から通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜1モル%(対全単量体)である。これらの重合開始剤が0.001モル%未満の場合には未反応の残存単量体が多くなり、一方重合開始剤が2モル%を超える場合には重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0124】
重合反応温度は0から125℃の範囲に調整される事が好ましく、反応時間は10分から5時間の範囲で行われる事が好ましい。
【0125】
重合反応が行われる場合の反応溶液中の単量体濃度は1〜50重量%の範囲が好ましく、5〜30重量%がさらに好ましく、10〜25重量%が最も好ましい。
【0126】
上記高分子添加剤が粉体状態、懸濁液状態で吸水性樹脂に添加される場合の高分子添加剤の合成方法は、粉砕により作成する方法、乳化重合、懸濁重合により作成する方法、沈澱重合(分散重合とも言う)により作成する方法等を挙げる事ができる。
【0127】
上記懸濁重合、乳化重合では、分散剤に界面活性剤を使用することが多く、吸水性樹脂に添加して得られる粒子状吸水剤が吸収液と接触した場合に吸収液の表面張力を低下させることがあるので注意を要する難点がある。最も好ましい粉体の作成方法は沈澱重合により作成される粉体である。
【0128】
沈澱重合とは日本国特開平6−199969号公報、日本国特開平3−95204号公報、日本国特開昭60−71623号公報、或いはラジカル重合ハンドブックP264(株式会社エヌ・ティー・エス、1999年出版)に記載されているような重合方法であり、単量体(モノマー)は溶媒に溶解可能であるが、重合により高分子量体になると溶媒に不溶となって、微粒子として析出し、溶媒を取り除くだけで容易に微粒子が得られる重合方法である。この沈殿重合法によれば、界面活性剤を使用しなくても微粒子が得られるため、沈殿重合により得られた微粒子を吸水性樹脂に添加して粒子状吸水剤を得た場合に、粒子状吸水剤が吸収液の表面張力を低下させることが起こり難いという利点を有するので特に好ましい。
【0129】
沈澱重合を行う溶媒は使用する単量体の種類により変わる為、特定する事は困難であるが、単量体は可溶であり、重合により生成する高分子量体は溶解しない溶媒が選択されるべきであり、代表的な沈澱重合の溶媒の例としては、疎水性有機溶媒、例えば、炭素数5〜10のアルカン、例えば、ヘキサン、ペンタン;炭素数5〜10のシクロアルカン、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン或いはアルキル置換ベンゼン;トルエン、キシレン、アルキル基中に1〜6個の炭素原子を含有し、カルボキシレート部分に2〜6個の炭素原子を有するアルキルカルボキシレート、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル;1〜2個の炭素原子および少なくとも2個以上のハロゲン基を有するハロアルカン、例えば、ジクロロエタン等である。
【0130】
沈澱重合の開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、ベンソイルペルオキシド、過酸化水素、カプリルペルオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。これら重合開始剤の使用量は物性面から通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜1モル%(対全単量体)である。これらの重合開始剤が0.001モル%未満の場合には未反応の残存単量体が多くなり、一方重合開始剤が2モル%を超える場合には重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0131】
沈澱重合が行われる場合の反応溶液中の単量体濃度は1〜50重量%の範囲が好ましく、5〜30重量%がさらに好ましく、10〜25重量%が最も好ましい。特に高濃度で沈澱重合反応を行う場合には2000から20000の分子量を有するポリオキシエチレン、具体的には酸化エチレンと酸化プロピレンの共重合体等を単量体に対して0.5〜10重量%共存させて重合を行うのが好ましい。
【0132】
沈澱重合反応は光、または熱、またはレドックスにより遊離ラジカルを発生させて重合反応を行えばよく、反応温度は0から125℃の範囲に調整される事が好ましく、反応時間は10分から5時間の範囲で行われる事が好ましい。
【0133】
重合により得られた沈澱物はそのまま吸水性樹脂に添加されてもかまわないが、粉体として一旦分取する場合には、余剰の溶媒を除去後、乾燥される。乾燥温度は生成した微粒子が合一してしまわないように、融点、ガラス転移点または軟化点以下に調整する事が必要であり、使用する単量体の種類により最適な乾燥温度は変わるため、特定する事は難しいが、30℃から200℃が好ましく、40℃から150℃がさらに好ましく、50℃から100℃が最も好ましい。さらに、乾燥は減圧下で行われる事が好ましく、〜100mmHg以下が好ましく、50mmHg以下がさらに好ましく、10mmHg以下が最も好ましい。
【0134】
乾燥後、高分子添加剤が凝集物である場合は適宜粉砕処理を行い、上記高分子添加剤紛体(微粒子)の最適粒子径に調整すればよい。
【0135】
本発明で用いる炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する高分子添加剤は溶液、懸濁液、粉体のどちらであってもよい。
【0136】
上記高分子添加剤が溶液、懸濁液の状態で吸水性樹脂に添加される場合には、前述した表面架橋処理に際して用いられる表面架橋剤と水及び/または親水性有機溶媒とが混合されてなる表面架橋剤溶液に上記高分子添加剤を溶解あるいはスラリー状に分散させて吸水性樹脂に混合する手法、水及び/または親水性有機溶媒中に上記高分子添加剤を溶解あるいはスラリー状に分散させた後に、吸水性樹脂に混合する手法が用いられる。
【0137】
上記のように、高分子添加剤を溶液または懸濁液として吸水性樹脂と混合する場合には、用いる水及び/または親水性有機溶媒からなる溶媒の添加量は、吸水性樹脂の種類や粒子径(粒度)によってその最適量は異なるが、上記溶媒として水を用いた場合には、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは1〜5重量部の範囲がよい。また、上記溶媒として親水性有機溶媒を用いた場合には、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは0.1〜5重量部の範囲がよい。
【0138】
さらに上記溶媒に溶解あるいは分散(懸濁)される高分子添加剤の濃度は、使用する高分子化合物の種類や溶媒の種類、粘度により適宜選択され、特に限定されるものではないが、通常、高分子添加剤及び溶媒の合計量に対して0.001〜30重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%の範囲であることが好ましい。
【0139】
上記高分子添加剤を粉体の状態で吸水性樹脂に添加する場合は、ドライブレンド法によって吸水性樹脂と粉体状の高分子添加剤を直接混合する方法や、直接混合後にさらに水を加えて高分子添加剤を吸水性樹脂表面に固着させる方法が用いられる。
【0140】
後述の製法5のように吸水性樹脂表面で直接重合反応を行い、高分子添加剤を形成させて粒子状吸水剤を得る製法の場合も高分子添加剤を溶液で添加する場合と同様の添加方法が採用でき、また、重合方法に関しては、光、或いは熱により遊離ラジカルを発生させて重合すればよく、上記(II)の高分子添加剤の重合方法を適宜採用すればよい。
【0141】
高分子添加剤と吸水性樹脂を混合する際の吸水性樹脂の粉体温度は、通常室温で混合されるが、粒子状吸水剤の安定した吸水特性や吸湿時の流動性を得るためには、好ましくは5℃から100℃、より好ましくは20℃から80℃で混合される。
【0142】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤において、高分子添加剤の添加量は、目的とする吸湿時の流動性や吸収特性によっても異なるが、その添加量は吸水性樹脂固形分100重量部に対して、0を超えて30重量部以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.01重量部以上20重量部以下、さらに好ましくは0.01重量部以上10重量部以下、さらにより好ましくは0.01〜5重量部以下、最も好ましくは0.01重量部以上3重量部以下である。上記範囲の添加量を超える場合、添加量に見合った吸湿時の流動性の改善効果が得られず不経済であるばかりでなく、吸水性能自身の低下をまねくおそれがある。
【0143】
本発明において吸水性樹脂と高分子添加剤とを混合する場合に使用する装置としては、通常、混合に用いられる混合装置でよく、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機などを挙げることができ、混合の際の速度は高速、低速を問わない。
【0144】
(実施の形態2)
<界面活性剤>
本発明においては表面架橋時に表面処理剤の必須成分として界面活性剤を使用し、粒子状吸水剤を製造する。本発明における界面活性剤とは、その分子内に親水性の部分と親油性(疎水性)の部分とを併せ持ち、親水と親油とのバランスにより物体の表面に強く吸着されて、その物体の表面特性を改質するものであり、使用できる界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等がある。
【0145】
これらの界面活性剤は、使用される吸水性樹脂100重量部当り0.0005〜0.012重量部、好ましくは0.0005〜0.001重量部、さらに好ましくは0.001〜0.0045重量部、特に好ましくは0.0015〜0.004重量部である。すなわち、0.0005重量部未満では、流動性、かさ密度の向上が不十分となる場合がある。一方、0.012重量部を越えると、吸収液の表面張力が低下するという問題があり、またその添加量に見合っただけの効果がでなくなることがあり、非経済的である。
【0146】
また、本発明で使用される界面活性剤のHLB(親水性−疎水性バランス)は特に限定されるものではないが、好ましくは8〜18、より好ましくは、9〜17、さらに好ましくは10〜17の範囲である。HLBが上記の範囲である場合、より好適に粒子状吸水剤の流動性、かさ密度を向上させることができる。
【0147】
アニオン性界面活性剤としては、混合脂肪酸ナトリウム石けん、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム石けん、ステアリン酸ナトリウム石けん、オレイン酸カリウム石けん、ヒマシ油カリウム石けん等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;アルキルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルアリル)硫酸エステル塩;特殊反応型アニオン界面活性剤;特殊カルボン酸型界面活性剤;β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等がある。
【0148】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等がある。
【0149】
カチオン性界面活性剤および両面界面活性剤としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライト、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイドがある。カチオン性界面活性剤を用いることにより得られる親水性重合体に抗菌性を付与することもできる。
【0150】
さらに、界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤がある。フッ素系界面活性剤を用いることにより抗菌性を付与することもできる。本発明において使用されるフッ素系界面活性剤としては、種々のものがあるが、例えば一般の界面活性剤の親油基の水素をフッ素に置き換えてパーフルオロアルキル基としたものであり、界面活性が格段に強くなっているものである。
【0151】
フッ素系界面活性剤の親水基を変えると、アニオン型、ノニオン型、カチオン型および両性型の4種類があるが、疎水基の方は同じ構造のフルオロカーボン鎖を用いることが多い。また、疎水基である炭素鎖は直鎖であっても分枝状であっても使用可能である。代表的なフッ素系界面活性剤としては、つぎのものがある。
【0152】
フルオロアルキル(C2〜C10)カルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸塩(Li、K、Na)、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)アルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩(K)、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル、パーフルオロアルキル第四級アンモニウムヨウ化物(商品名フロラードFC−135、住友スリーエム株式会社製カチオン性フッ素系界面活性剤)、パーフルオロアルキルアルコキシレート(商品名フロラードFC−171、住友スリーエム株式会社製ノニオン性界面活性剤)、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム塩(商品名フロラードFC−95およびFC−98、住友スリーエム株式会社製アニオン性界面活性剤)。
【0153】
この発明では、有機金属界面活性剤も用いることができる。本発明において使用される有機金属界面活性剤は、分子の主鎖や側鎖にSi、Ti、Sn、Zr、Ge等の金属を有するものをいうが、好ましくは分子の主鎖にSiを有するものが好ましく、より好ましくはシロキサン系界面活性剤である。
【0154】
代表的な有機金属界面活性剤としては、(吉田、近藤、大垣、山中、“新版 界面活性剤ハンドブック”,工学図書(1966),34頁)等が挙げられる。有機金属界面活性剤に含まれる金属としては、SiまたはTiの代わりにSn、Zr、Ge等を用いることができる。本発明で使用される界面活性剤は上記界面活性剤に限定されるものではない。
【0155】
これらの界面活性剤の中で、安全性の面からノニオン性界面活性剤が好ましく、その中でもソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0156】
(実施の形態3)
<粉体の滑剤>
滑剤とは、互いに滑りあう二面間にあって、摩擦(抵抗)を減少させる働きをする物質をいう。すなわち、物と物とが接触するとき、その物質同士の表面状態により、滑りやすい・滑りにくいといった現象や、抵抗が大きい・小さいといった現象が起こるが、滑剤は、その抵抗を減少させるためのものである。
【0157】
本発明に用いられる滑剤は、吸水性樹脂同士の摩擦(抵抗)を減少させるためのものである。滑剤を用いることにより、ゆるめかさ密度や流下速度を増大させた粒子状吸水剤を得ることができる。流下速度を増大させることによって、容器からホッパーへの移し変え時間や、ホッパーから容器への充填時間を短縮することができ、作業上の能率を上げることが可能となる。これらの効果は、上述の界面活性剤においても同様であり、本発明の新規な吸水剤の大きな効果である。
【0158】
また、ゆるめかさ密度や流下速度が増大することによって、粒子状吸水剤を製造する際の粉体攪拌動力や、空気輸送に必要なエネルギーを低減させることが期待できる。また、粉体攪拌動力や空気輸送に必要なエネルギーが低減することにより、吸水性樹脂の粒子をつぶしてしまうおそれがなく、加圧下吸収倍率等の物性低下が、微粉が増えてしまうことを抑制することも期待できる。
【0159】
本発明に用いることのできる滑剤は、固体の滑剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、エステル系滑剤、アルコール系滑剤、金属石鹸滑剤等を挙げることができる。中でも、滑剤としての作用を有するとともに安定剤としての作用も有する点において、金属石鹸滑剤を用いることが好ましい。また、本発明の滑剤は、常温(25℃)および常圧(0.101MPa)にて固体であることが必要である。
【0160】
炭化水素系滑剤としては、低重合ポリエチレン等を用いることができる。低重合ポリエチレンは、1500〜2000程度の分子量のポリエチレンのことである。
【0161】
脂肪酸系滑剤としては、滑剤として作用する脂肪酸であれば特に限定されるものではないが、炭素数が12(C12)以上の脂肪酸を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等を挙げることができる。中でも、入手が容易であることからステアリン酸を用いることが好ましい。また、これら脂肪酸系滑剤は、微粒子のものを用いることが好ましく、吸水性樹脂の劣化を促進させるようなFe,Ni等の重金属を含有せず、ヨウ素価・エステル価の低い精製品であることが望ましい。
【0162】
脂肪酸アミド系滑剤は、脂肪酸から誘導される一般化学式RCONHで示される化合物である。これら脂肪酸アミドとしては、第一アミド(R−CONH)、第二アミド((RCO)NH)、第三アミド((RCO)N)があり、第一アミドを用いることが好ましい。具体低には、例えば、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等を挙げることができる。中でも、メチレンビスステアロアミドやエチレンビスステアロアミドは、相溶性、透明性、耐候性、非粘着性に優れているためより好ましい。
【0163】
エステル系滑剤としては、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル等を挙げることができる。脂肪酸の多価アルコールエステルとしては、硬化ヒマシ油が好ましく用いられる。また、脂肪酸ポリグリコールエステルとしては、エチレングリコールモノステアレートが好ましく用いられる。
【0164】
アルコール系滑剤は、炭化水素系滑剤や脂肪酸系滑剤の水素を水酸基で置換したものである。アルコール系滑剤としては、炭化水素系滑剤や脂肪酸系滑剤の水素を水酸基で置換したものであれば特に限定されるものではないが、例えば、分子内に1個の水酸基を有するセチルアルコールやステアリルアルコール等の脂肪アルコール;分子内に2個の水酸基を有するポリエチレングリコール等のグリコール類;分子内に3個の水酸基を有するポリグリセロール等を用いることができる。ポリエチレングリコールやポリグリセロールは、滑剤としての作用に加えて帯電防止作用をも有する。
【0165】
金属石鹸滑剤は、有機酸である脂肪酸、石油酸、高分子酸等のアルカリ金属塩以外の金属塩からなる。
【0166】
粉体の滑剤は通常、粉末の形状でありその粒径は特に限定されるものではないが、通常、吸水性樹脂の重量(質量)平均粒子径よりも小さく、粉末の90重量%以上は100μm以下であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下のものが使用される。
【0167】
なお、上記の各滑剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。滑剤の吸水性樹脂への添加方法については、上記実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。以下に、滑剤の吸水性樹脂への添加量について説明する。
【0168】
粉体の滑剤をスラリー状に分散させて吸水性樹脂に混合する場合、そのスラリー中の滑剤濃度は使用する滑剤や分散溶媒の種類、スラリーの粘性により適宜選択され、特に限定されるものではないが、通常0.0001〜0.1重量%、好ましくは0.001〜0.05重量%の範囲内である。滑剤と混合する際の吸水性樹脂の粉体温度は、通常室温以上で混合されるが、粒子状吸水剤の安定した吸水特性や流下速度、かさ密度を得るためには、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上で混合される。
【0169】
すなわち、本発明の粒子状吸水剤において、滑剤の添加量は、目的とするかさ密度や、流下速度に応じて適宜変更すればよいが、吸水性樹脂(100重量%)に対して、0.0001〜0.1重量%の範囲内が好ましく、0.01〜0.05重量%の範囲内がより好ましく、0.001〜0.01重量%の範囲内が特に好ましい。滑剤の添加量が上記範囲内である場合には、添加量が微量であるため、疎水性・撥水性が付与されることがないため、吸水特性を低下させることなく、かさ密度を増大させることが可能になるとともに、流下速度を増大させることが可能になる。また、機械的衝撃力による吸水特性の低下を防止すること、粒子状吸水剤を製造する際の粉体攪拌動力を低減することや、粒子状吸水剤を空気輸送するために必要なエネルギーを低減することを可能にすることも期待できる。一方、滑剤の添加量が上記範囲を超える場合、不経済であるばかりでなく、吸水特性の低下をまねくおそれがある。
【0170】
(III)粒子状吸水剤
<粒子状吸水剤の製造方法>
本発明の粒子状吸水剤は、好ましくは、上記した粉体の滑剤または界面活性剤と上記した吸水性樹脂とを含み、特定のパラメーターを有するものであれば、その製造方法は特に限定されるものではない。具体的には、以下の1〜6の方法で製造することができる。
1.吸水性樹脂の重合時に、内部架橋剤を含む単量体水溶液に粉体の滑剤を分散させて重合し、必要に応じて乾燥処理・粉砕・表面架橋処理を施し、粒子状吸水剤を得る方法。
2.吸水性樹脂に粉体の滑剤または界面活性剤を添加混合し、必要に応じて表面近傍に表面架橋処理をして粒子状吸水剤を製造する方法。
3.吸水性樹脂の表面近傍を粉体の滑剤または界面活性剤を含む表面架橋剤で表面架橋処理して、粒子状吸水剤を製造する方法
4.吸水性樹脂に必要に応じて表面近傍に表面架橋処理をして、表面近傍がさらに架橋された吸水性樹脂を得た後に、粉体の滑剤または界面活性剤を混合して粒子状吸水剤を製造する方法。
5.吸水性樹脂の表面近傍に炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体および重合開始剤、必要に応じて表面架橋剤を混合し、吸水性樹脂の表面で重合反応および必要に応じて架橋反応を行い、吸水性樹脂の表面で直接に高分子添加剤を形成させて粒子状吸水剤を製造する方法。
6.吸水性樹脂に粉体の滑剤を添加し、攪拌しながら加熱して粉体の滑剤を溶融させた後に、冷却して粒子状吸水剤を製造する方法。
【0171】
上記1〜6の製法において、上記1のように吸水性樹脂の重合時の単量体水溶液に添加してもよいが、吸水性樹脂の表面に添加剤が均一に付着した状態を実現するために、上記2〜4、6の製法で吸水性樹脂に添加することが好ましい。
【0172】
<粒子状吸水剤に含まれるその他の成分>
本発明の粒子状吸水剤には上記した成分(吸水性樹脂、高分子添加剤、内部架橋剤、重合開始剤、表面架橋剤等)の他に、さらに各種の性能を付与するために、多価金属、無機粉末、水等の親水性有機溶媒を添加して、吸水性樹脂等の造粒を行ってもよい。その添加により粒子状吸水剤の通液性、流動性などが向上する場合がある。
【0173】
なお、用いられる多価金属や無機粉末は例えば、国際出願番号でWO2004/JP1007号(国際出願日2004年2月2日)、WO2004/JP1294号(同2004年2月6日)、WO2004/JP9242号(同2004年6月3日出願)などにも例示されている。
【0174】
具体的に用いられる無機粉末としては、水性液体等に対して不活性な物質、例えば、各種の無機化合物の微粒子、粘土鉱物の微粒子等が挙げられる。該無機粉体は、水に対して適度な親和性を有し、かつ、水に不溶もしくは難溶であるものが好ましい。具体的には、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が200μm以下の微粒子が好ましく、例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩);カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等が挙げられる。このうち、二酸化珪素および珪酸(塩)がより好ましく、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が200μm以下の二酸化珪素及び珪酸(塩)がさらに好ましい。また、用いられる多価金属としては、硫酸アルミニウム、明礬などのアルミニウム塩が挙げられる。その使用量は、吸水性樹脂及び/または粒子状吸水剤と無機粉体の組み合わせにもよるが、吸水性樹脂及び/または粒子状吸水剤100重量部に対して0.001〜10重量部、好ましくは0〜6重量部、より好ましくは0.001〜5重量部、さらにより好ましくは0.01〜3重量部、最も好ましくは0.1〜1重量部である。粒子状吸水剤の目的とする吸水特性や粒度にもよるが、上記の範囲を超える場合は、高分子添加剤による衝撃吸収能力を超えてしまい、例えば、衝撃力を受けたときに吸水特性の低下を防止することが困難になるおそれがある。
【0175】
吸水性樹脂及び/または粒子状吸水剤と無機粉体の混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば粉体同士を混合するドライブレンド法、湿式混合法(添加剤を溶媒に分散ないし溶解させ添加)等を採用できる。無機粉末を使用した場合には、ドライブレンド法がより好ましい。また、多価金属を使用した場合には、湿式混合が好ましい。
【0176】
また、本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法においては、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエリレンイミンなどの親水性高分子、パラフィンなどの疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を添加する等、種々の機能を付与する工程を含んでいてもよい。これらの添加剤の使用量は吸水性樹脂100重量部に対して通常0〜30重量部、好ましくは0〜10重量部の範囲、より好ましくは0〜1重量部の範囲である。
【0177】
本発明の粒子状吸水剤は、界面活性剤や粉体の滑剤の少量の添加により、吸収液の表面張力を低下させず、粒子状吸水剤の吸収特性が低下することを防止することができる。本願発明者は、界面活性剤や粉体の滑剤の添加量に対する粉体流動性の変化には最適値(ピーク)が存在し、添加量がピークよりも多すぎると流下速度が遅くなり、ホッパー(容器)下部より排出時にブリッジを形成して流下しない現象を起こすことを見出している。それゆえ、界面活性剤や粉体の滑剤の少量の添加は、表面張力の低下以外に粉体特性において重要な意味を持つ。
【0178】
以下、本実施形態の粒子状吸水剤の特性について説明する。
【0179】
<粒子状吸水剤の粒子径>
本発明の粒子状吸水剤は、必要に応じて、無機粉末や親水性有機溶媒等によって造粒されてなる。そのため、粒子状吸水剤は粒子状吸水剤の質量に対して、好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が90重量%以上(上限100%)含まれており、より好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の95重量%以上含まれており、さらに好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の98重量%以上含まれている。なお、上記造粒を行う場合には、粒子状吸水剤が上記の粒子径となるように調整することが好ましい。
【0180】
また、粒子状吸水剤の質量平均粒子径は、好ましくは200〜600μm、さらに好ましくは250μm〜600μm、よりさらに好ましくは250〜550μm、特に好ましくは250μm〜500μm、最も好ましくは300μm〜500μmである。
【0181】
粒子径の分布を表わす対数標準偏差値σζは、0.25〜0.45の範囲が好ましく、より好ましくは0.25〜0.42、さらにより好ましくは0.25〜0.40、最も好ましくは0.25〜0.38の範囲である。
【0182】
150μm未満の粒子(微粉)が10重量%を超える場合には、吸水時に血液や尿等の吸収体への液の拡散性が阻害される事、吸収体としての使用時に空気との接触面積が増加するので粒子状吸水剤が可溶化しやすくなる事、さらには吸湿時の流動性も悪くなる事、粒子状吸水剤やオムツ等衛生材料製造時における作業中の粉塵発生による作業環境の劣悪化、幅広い粒度分布を有することによる偏析の増大等多くの問題が発生することとなり好ましくない。また対数標準偏差が0.25未満の場合、かさ密度が低下する場合がある。特に、粉体の流動性が向上する本発明の粒子状吸水剤においては、粒子径の分布が広い場合や微粉が多い場合には、ホッパーや袋中において偏析が顕著になるために、おむつ等に組み込む際に品質のばらつきを引き起こしやすくなる。850μmを超える粒子が10重量%を超える場合は、粒子状吸水剤の吸水速度が遅くなり、また、吸収物品に使用した際に吸収体の肌触りが悪く、異物感が現れ、使用者に対して不快感を与えるので好ましくない。本発明の好ましい範囲に粒度を調整することにより、流動性、かさ密度に優れ、吸水性能が低下せず、かつ偏析等の問題がない粒子状吸水剤を得ることが容易となる。
【0183】
粒子状吸水剤の粒子径は、目的やその必要に応じて不溶性微粒子や親水性溶媒、好ましくは水を添加混合してさらに造粒して調整してもよい。
【0184】
粒度調整は逆相縣濁重合のように粒子状で分散重合および分散乾燥させて調整してもよいが、通常、特に水溶液重合の場合、乾燥後に粉砕および分級されて、必要により微粉を造粒などによりリサイクルさせることで、特定粒度に調整される。
【0185】
また、本発明の吸水性樹脂は本発明の粒子状吸水剤を得るために、そのゆるみかさ密度(JIS K−3362で規定)が好ましくは0.45〜0.85g/ml、より好ましくは0.50〜0.80g/ml、さらに好ましくは0.55〜0.80g/mlの範囲に調整される。
【0186】
<加圧下吸収倍率(Absorbency Against Pressure)>
本発明の粒子状吸水剤の2.03kPaでの圧力下(荷重下)での加圧下吸収倍率(AAP1)は、20g/g以上、好ましくは22g/g以上、より好ましくは24g/g以上、さらに好ましくは26g/g以上、最も好ましくは28g/g以上である。また、加圧下吸収倍率の上限は特に限定されるものではなく高い方が好ましいが、製造コスト等の経済性より通常50g/g以下、好ましくは45g/g以下がよい。
【0187】
本発明の粒子状吸水剤の4.83kPaでの圧力下(荷重下)での加圧下吸収倍率(AAP2)は、17g/g以上、好ましくは18g/g以上、より好ましくは19g/g以上、最も好ましくは20g/g以上である。また、加圧下吸収倍率の上限は特に限定されるものではないが、製造コスト等の経済性より通常50g/g以下、好ましくは45g/g以下が好ましい。
【0188】
なお、2.03kPaおよび4.83kPaの荷重下での加圧下吸収倍率を用いたのは、乳幼児の寝ている状態および座った状態で、吸収体または紙おむつ等の吸収性物品が使用される状況を想定したものである。
【0189】
なお、加圧下吸収倍率の測定法等については実施例で後述する。
【0190】
<吸湿時の流動性指数>
吸湿時の流動性指数(以下、単に吸湿流動性と略す)とは、25℃相対湿度90%RH放置下でブロッキング性またはケーキング性さらには粉体としての流動性について評価したものであり、本発明の粒子状吸水剤は、吸湿率が通常約1〜25重量%の範囲において、ブロッキングまたはケーキングがなく、吸湿流動性の優れた特徴を示す。本発明の粒子状吸水剤は25℃、90%RHで1時間放置した場合の吸湿時の流動性指数が、90重量%以上100重量%以下、好ましくは95重量%以上100重量%以下、より好ましくは98重量%以上100重量%以下である。吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤の保存時あるいはオムツ等の吸収性物品製造プロセス上での吸湿時の流動性低下とそれに伴う粒子状吸水剤粒子の合一やブロッキングを防ぐことができるため、製造装置内部での粉体詰まり等による製造装置の停止等を防ぐことができる。なお、吸湿時の流動性指数の測定法等については実施例で詳細に記す。
【0191】
<粒子状吸水剤の形状>
粒子状吸水剤の形状は、一般に例えば米国特許5244735号公報図1、2記載の逆相懸濁重合で得られる球形状または楕円体状ないしウインナ−ソーセージ状の一次粒子の形状や、例えばNON WOVENS WORLD October−November 2000(Marketing Technology Service,Inc.出版)の75頁の図1に記載されるような凝集した数珠(Agglomerated Beads)のような球形状または楕円体状粒子が凝集した該一次粒子の造粒物の形状が挙げられ、さらに、米国特許5981070号公報図2、3、4の形状や上記NON WOVENS WORLD October−November 2000の75頁の図1のCrystalsの形状のような、単量体水溶液を重合して得られる含水ゲル状重合体の破砕物に由来する形状である不定形破砕状やその造粒物の形状が挙げられる。
【0192】
本発明の粒子状吸水剤は球形状または楕円体状の一次粒子以外の形状が好ましく、より好ましくは球形状粒子の造粒物、楕円体状粒子の造粒物、または、単量体の水溶液を重合して得られる含水ゲル状重合体ないし乾燥物の破砕物に由来する不定形破砕状、若しくはその造粒物の形状であり、特に好ましくは不定形破砕状、若しくはその造粒物の形状である。
【0193】
球形状または楕円体状の一次粒子は吸収性物品等を作成する際に、パルプ等の繊維材料との混合性が低く、また粒子状吸水剤と繊維材料とを混合してなる吸収体から該粒子状吸水剤がの脱落しやすいためである。それゆえ、球形状または楕円体状の一次粒子の粒子状吸水剤を用いると吸収体中に粒子状吸水剤を均一に分布させることが難しくなるという問題が生じる。
【0194】
<乾燥状態での粉体流動性>
本発明で得られる粒子状吸水剤に使用される該高分子添加剤は室温以上の高い融点、ガラス転移点または軟化点を有するため、室温状況下において、吸湿時のみならず、含水率が0〜20重量%の、さらに好ましくは含水率0から10重量%の乾燥状態においても、粉体の高い流れ性、圧密状態での高い流動性を達成することができる。粉体の流れ性を表わす指標としては、EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)が規定する流下時間(Flowability(450.2−02))等が用いられる。流下時間(Flowability)は室温条件下(25℃、相対湿度50%RH)、規定されたホッパーに100gの吸水性樹脂または粒子状吸水剤粉体を入れ、入れた粉体が全量ホッパーから排出されるまでの時間を測定する評価方法である。流下時間が短い程優れた流動性を示すと判断される。好ましい範囲は20秒以内が好ましく、17秒以内がより好ましく、14秒以内が最も好ましい。
【0195】
また、従来、吸湿環境下での流動性を確保するために、粒子状吸水剤に無機物質を添加することが一般的に行われている。粒子状吸水剤に無機物質を添加すると、特に含水率が0〜20重量%の乾燥状態での粒子間の摩擦係数が高くなる(粒子同志の滑り性が悪くなる)。そのため、空気輸送機、パドル式輸送機、スクリュー式輸送機での輸送時の輸送抵抗の増大を招き、製造装置、輸送機内での粒子状吸水剤の詰まり、物性低下、過負荷によるこれらの装置の停止が頻発する。
【0196】
特に、不定形状粒子(含水ゲル状重合体の破砕物由来である不定形破砕状やその造粒物、逆相懸濁重合で得られる球形状または楕円体状粒子が凝集した造粒物)ではその形状の歪さゆえに、さらに粒子間の摩擦係数が増大し、圧密状態での流動性が悪くなる。
【0197】
しかしながら、本発明の粒子状吸水剤は上記にて説明した吸水性樹脂と粉体の滑剤または界面活性剤とを含むことにより、上記不定形状粒子の粒子状吸水剤であっても圧密状態での流動性が極めて高い。
【0198】
そこで、本発明者等は、粒子状吸水剤の圧密状態での流動性を評価し、該評価によって所定の流動性を示すものであれば、不定形状粒子の粒子状吸水剤であっても製造装置や輸送機での取扱いに優れ、詰まり等のトラブルを回避できる事を見出した。
【0199】
すなわち、圧密状態での流動性の評価方法では、圧密状態にある粒子状吸水剤に挿入部材であるプローブ(金属棒)を垂直に20mm挿入し、20mmまで挿入した時の挿入仕事量(probe insertion work by 20mm insertion、PIW)によって評価する。この評価方法では20mmまで挿入したときのPIWが低い程、粒子状吸水剤粉体同士の摩擦係数が低く、流動性が高いことを示す。
【0200】
従来知られている多くの吸水性樹脂や粒子状吸水剤では、該圧密状態での流動性は低く、本発明の20mmというプローブ挿入距離(probe insertion distance、PID)を達成する事すら不可能な事が多い。
【0201】
これに対して、本発明の粒子状吸水剤は20mmまで挿入した時のPIWが0g重×mm以上75,000g重×mm以下であり、好ましくは0g重×mm以上55,000g重×mm以下であり、より好ましくは0g重×mm以上45,000g重×mm以下であり、さらに好ましくは0g重×mm以上35,000g重×mm以下であり、特に好ましくは0g重×mm以上25,000g重×mm以下である。PIWが上記範囲を超える場合には粒子状吸水剤同士の摩擦係数が高く、物性低下や製造装置や輸送機での詰まり等のトラブルが起こる可能性がある。
【0202】
このように、上記評価方法を用いて所定の流動性を示す粒子状吸水剤を選別する事により、流動性の高い粒子状吸水剤を確実に提供する事ができる。さらに、本発明の粒子状吸水剤は優れた流動性(流れ性、圧密状態での流動性)を有するため、空気輸送機、パドル式輸送機、スクリュー式輸送機での輸送時の輸送抵抗を低減し、従来頻発していた製造装置、輸送機内での粒子状吸水剤の詰まり、過負荷によるこれらの装置の停止を回避することができる。さらに該粒子状吸水剤を使用した吸収体等の製造プロセス等で使用するホッパーや粉体貯蔵槽等の簡素化に有用となる。なお、PIWの詳細な算出方法は後述の実施例で詳細に説明する。
【0203】
<無加圧下吸収倍率(CRC)>
本発明の粒子状吸水剤の、0.90重量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率(CRC/Centrifuge Retention Capacity)の30分における値(CRC1)は、好ましくは25g/g以上、より好ましくは28g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上である。吸収倍率がこられから外れると、おむつに使用した場合、高物性を示さない場合がある。
【0204】
また、本発明では、上記表面架橋によってその吸収倍率(CRC1)を低下、好ましくは表面架橋前の吸収倍率(CRC1)の95〜50%、さらには90〜60%にまで低下させることが可能である。なお、吸収倍率の低下は架橋剤の種類や量、反応温度や時間などで適宜調整すればよい。
【0205】
<吸収倍率の5分値の到達率>
吸収倍率の5分値の到達率とは実施例で後述するように、無加圧下吸収倍率30分値(CRC1)に対する無加圧下吸収倍率の5分値(CRC2)の比率(百分率)で表現されるパラメーターであり、吸水剤が添加剤で改質された場合の吸水速度への影響を表わすパラメーターである。従って、吸収倍率の5分値の到達率が高いほど吸収速度が速いことを示しており、優れた吸収特性を有していると判断される。本発明で得られる粒子状吸水剤は吸収速度の低下が殆どない事が特徴であり、5分値の到達率は30%以上100%以下、より好ましくは40%以上100%以下、さらに好ましくは50%以上100%以下、最も好ましくは55%以上100%以下である。30%以下では吸収速度が遅すぎる為、オムツ等の衛生材料に使用する場合に尿の漏れ等が発生する可能性が高くなる。
【0206】
<表面張力>
表面張力とは実施例で後述するように、吸水性樹脂または粒子状吸水剤が吸収液と接触した場合に、吸収液の表面張力を低下させる程度を測定するものである。表面張力の低下が大きい場合には、オムツなどの衛生材料に使用した場合に戻り量(re−wet:おむつに吸収された尿の戻り等)が多くなり、着用者に不快感を持たせる等の不都合が発生する。本発明で得られる粒子状吸水剤は表面張力の低下が少ないことが特徴であり、実施例で後述する測定法で測定した場合に、20℃の測定条件において、50mN/m以上の表面張力を有する事が好ましく、55mN/m以上の表面張力を有する事がより好ましく、60mN/m以上の表面張力を有する事がさらに好ましく、65mN/mが特に好ましく、68mN/m以上の表面張力を有することが最も好ましい。
【0207】
<ゆるみかさ密度(かさ比重)>
「ゆるみかさ密度」(単位:g/ml)は、実施例で後述するように、粒子の集合体を一定容積の容器に静かに充填した際の全体の質量を単位容積当たりの質量として表す値である。すなわち、ゆるみかさ密度が大きいほど、単位容積当たりに占める粒子の質量が大きくなる。また、容器に粒子を充填した場合、粒子間に隙間(空隙)が存在するため、ゆるみかさ密度は、粒子の体積当たりの質量で表す値である「真密度」(単位:g/cm)よりもほぼ空隙分低い値になる。例えば、吸水性樹脂の真密度は、ポリアクリル酸ナトリウムでは約1.5〜1.7g/cmである。
【0208】
本発明の粒子状吸水剤における、ゆるみかさ密度は0.45〜0.85g/mlの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.50〜0.80g/ml、さらに好ましくは0.55〜0.80g/ml、特に好ましくは0.70〜0.80g/mlの範囲である。
【0209】
ゆるめかさ密度を増大させることによって、例えば、容器への粒子状吸水剤の充填量を安定させ、かつ増大させることができる。このため、容器代のコストを低減することや、ホッパー等の貯槽により多量に定量貯留ないし輸送することが可能になる。さらに、粒子状吸水剤と繊維とを使用した吸収体であって、粒子状吸水剤の使用割合の高い吸収体では、この吸収体の厚さをより薄くすることが可能となる。
【0210】
<かためかさ密度>
「かためかさ密度」(単位:g/ml)は、一定質量の粒子の集合体を容器に充填した後に、容器をタッピングして粒子を固めたときの容積を測定し、粒子全体の質量を単位容積当たりの質量として表す値である。タッピングによって、粒子がより密に充填するために、一般的に、かためかさ密度はゆるめかさ密度よりも大きくなる。そして「圧縮度」の項で後述するように、かためかさ密度とゆるみかさ密度の差が粒子の流動性に大きな影響をおよぼす。
【0211】
本発明の粒子状吸水剤における、かためかさ密度は0.65〜0.85g/mlの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.68〜0.80g/ml、さらに好ましくは0.70〜0.80g/mlの範囲である。
【0212】
<圧縮度>
「圧縮度」(単位:%)は、ゆるみかさ密度とかためかさ密度とから次式によって計算される値である。
圧縮度=(P−A)/P×100
ただし、Pはかためかさ密度、Pはゆるみかさ密度
圧縮度が大きい粒子は、装置のホッパー出口でブリッジをおこしやすくなる等、流動性が悪くなる。また、充填によってかさ密度が振れやすいため、安定した供給が困難となり、吸水剤の製造や実使用での物性低下を伴う。
【0213】
本発明の粒子状吸水剤の圧縮度は、0〜18%の範囲であることが好ましく、0〜15%の範囲であることがより好ましく、0〜10%の範囲であることがさらに好ましい。
【0214】
<流下速度>
「流下速度」とは、粉体の流動性を表す値である。本発明の粒子状吸水剤は、粒子間の摩擦抵抗が低減されている。これにより、吸水特性を低下させることなく、流下速度を増大させることが可能となっている。特に界面活性剤の使用量が微量であるため、その効果は大きいものとなっている。
【0215】
本発明の粒子状吸水剤における、流下速度は5〜15g/sの範囲であることが好ましく、7〜15g/sの範囲であることがより好ましく、10〜15g/sの範囲であることがさらに好ましい。流下速度が5g/s以上であることにより、粉体の取り扱い性を良くすることができる。流下速度が、5g/s未満である場合には、粉体が流動しにくいため、取り扱い性が悪くなってしまうため好ましくない。
【0216】
<撹拌抵抗>
粒子状吸水剤の撹拌抵抗は、回転型の粘度計を用い、粒子状吸水剤を充填した容器中で粘度計のローターを回転させることで評価した。本発明の粒子状吸水剤は、粒子と装置間の摩擦抵抗が低減されているため、表面処理時の装置の負荷や粒子状吸水剤の損傷、空気輸送時の装置の負荷や粒子状吸水剤の損傷を低減することが可能となり、粒子状吸水剤の品質が安定する。特に界面活性剤の使用量が微量である割には、その効果は大きいものとなっている。
【0217】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、実施例で後述する測定法で測定した場合に、好ましくは0.37N・cm以下(下限0N・cm)、より好ましくは0.30N・cm以下、さらに好ましくは0.25N・cm以下の撹拌抵抗であることが好ましい。
【0218】
<生理食塩水流れ誘導性(SFC)>
生理食塩水流れ誘導性は粒子状吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値であり、その値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。
【0219】
本発明で得られる粒子状吸水剤は、実施例で後述する測定法で測定した場合に、好ましくは20(10−7・cm・s・g−1)以上、より好ましくは30(10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは50(10−7・cm・s・g−1)以上、特に好ましくは80(10−7・cm・s・g−1)以上の生理食塩水流れ誘導性(SFC/Saline Flow Conductivity)を有することが好ましい。
(IV)吸収体および/または吸収性物品
本発明の粒子状吸水剤は、吸水を目的とした用途に用いられ、吸収体や吸収性物品として広く使用されるが、特に尿や血液等の体液の吸収のための衛生材料として好適に用いられる。本発明で吸収体や吸収性物品は、本発明の粒子状吸水剤を含んでなるものである。
【0220】
ここで、上記吸収体とは、吸水性樹脂と親水性繊維と主成分して成型された吸収材のことである。かかる吸収体は上記した本発明の粒子状吸水剤と親水性繊維とを用いて、例えば、フィルム状、筒状、シート状に成形され製造される。上記吸収体は、粒子状吸水剤と親水性繊維との合計質量に対する粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)が20〜100重量%であることが好ましく、さらには30〜100重量%、さらに好ましくは40〜100重量%の範囲である。上記吸収体は、粒子状吸水剤のコア濃度が高いほど、吸収体や紙おむつ等の作成時における粒子状吸水剤の吸収特性低下効果が顕著に表れてくるものとなる。また、上記吸収体は、吸収体の厚みが0.1〜5mmの薄型であることが好ましい。
【0221】
また、この吸収体は、不飽和単量体を重合することにより得られる分子内部に架橋構造を有する吸水性樹脂および固体の滑剤を含む粒子状吸水剤と、親水性繊維とを含む吸収体である。
【0222】
特に、本発明に記載の高分子添加剤を添加した粒子状吸水剤を用いれば、親水性繊維と粒子状吸水剤とを混合して成型した後、粒子状吸水剤に添加されている該高分子添加剤の融点、ガラス転移点または軟化点以上に加熱することにより、親水性繊維と粒子状吸水剤が固着した、強度の高い、また粒子状吸水剤の脱落の少ない吸収体を得ることができる点が特徴である。
【0223】
さらに、上記吸収性物品とは、上記吸収体、液透過性を有する表面シート、及び液不透過性を有する背面シートを備える吸収性物品である。上記吸収性物品の製造方法は、例えば繊維基材と粒子状吸水剤とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コア)を作成し、吸収コアを液透過性を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)でサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、吸収性物品、特に大人用紙オムツや生理用ナプキンとされる。かかる吸収コアは密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cmの範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【0224】
本発明の吸水性物品は優れた吸収特性を示すものである。このような吸収性物品としては、具体的には、近年成長の著しい大人用紙オムツをはじめ、子供用オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等が挙げられ、それらに特に限定されるものではないが、吸収性物品の中に存在する粒子状吸水剤の優れた吸収特性により戻り量も少なく、ドライ感が著しいことにより、装着している本人、介護の人々の負担を大きく低減することができる。
【0225】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、特に記載ない場合、「部」は重量部を意味する。
【0226】
なお、粒子状吸水剤の諸性能は以下の方法で測定した。また実施例において使用される電気機器はすべて100V、60Hzの条件で使用した。さらに、粒子状吸水剤は含水率が6重量%以下に調整されたものを用い、特に指定がない限り25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で使用した。また、生理食塩水として0.90重量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0227】
(1)吸収倍率(0.90重量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下での5分、30分での吸収倍率(CRC2,CRC1))
吸水性樹脂または粒子状吸水剤0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、25℃に調温した大過剰(例えば100g以上)の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。5分または30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W2(g)を測定した。
【0228】
また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、そのときの重量W1(g)を測定した。そして、これら重量W1、W2から、下記(式1)に従って吸収倍率(g/g)を算出した。
吸収倍率(g/g)=(重量W2(g)−重量W1(g))/吸水性樹脂の重量(g) ・・(式1)
以上の計算式から求められた5分と30分の吸収倍率(g/g)の結果を用いて下記(式2)に従って吸収倍率の5分値の到達率(%)を算出した。
【0229】
吸収倍率の5分値の到達率(%)=5分での吸収倍率(g/g)/30分での吸収倍率(g/g)×100 ・・(式2)
なお、上記の30分での吸収倍率を無加圧下吸収倍率CRC1とした。また、5分での吸収倍率をCRC2とした。
【0230】
(2)加圧下吸収倍率(0.90重量%塩化ナトリウム水溶液2.03kPa(AAP1))
図1の装置を用いて、加圧下吸収倍率(AAP)を測定した。2.03kPa(0.3psi)の圧力になるように調製した荷重208を準備した。底に400メッシュ(目開き38μm)の金網202を貼着した直径60mmのプラスチック円筒204の金網上に、上記メッシュ上に吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤0.90g(Wp2)を均一に散布した。その上に、上記荷重208(0.3psi時)を載せて、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。
【0231】
直径150mmのペトリ皿209の内側に、直径90mmのガラスフィルター210(株式会社相互理化学硝子製作所製、細孔直径100〜120μm)を置き、0.90重量%の塩化ナトリウム水溶液(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。
【0232】
その上に直径90mmのろ紙1枚(ADVANTAEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0233】
上記測定装置一式を上記湿ったろ紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間(60分)後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記(式3)に従って加圧下吸収倍率AAP1(g/g)を算出した。
加圧下吸収倍率AAP1(g/g)=(Wb(g)−Wa(g))/吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤の質量(0.9)g) ・・(式3)
なお、2.03kPaと1.9kPaとでは、ほぼ同じ値になるが、2.03kPaで測定する。
【0234】
(3)加圧下吸収倍率;(0.90重量%塩化ナトリウム水溶液4.83kPa(AAP2))
上記(2)の2.03kPaの荷重を4.83kPa(0.7Psi)に変更する以外は同様の操作を行い、下記(式4)に従って加圧下吸収倍率AAP2(g/g)を算出した。
加圧下吸収倍率AAP2(g/g)=(Wb(g)−Wa(g))/吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤の質量(0.9)g) ・・(式4)
(4)重量(質量)平均粒子径
吸水性樹脂または粒子状吸水剤を850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmなどのJIS標準ふるい(z8801)で篩い分けし、各粒度の残留百分率を対数確率紙にプロットした。これにより、R=50%に相当する粒径から重量平均粒子径(D50)を読み取った。
【0235】
また、粒径分布についてはその指標として下記(式5)で表される対数標準偏差値σζを指標として用いた。ここでは、σζの値が0に近いほど、粒径分布が狭いことを意味する。
σζ=1/2Ln(X2/X1) ・・(式5)
(式中、X1、X2は、それぞれ、X1はR=84.1重量%、X2はR=15.9重量%のときの、粒子径をあらわす。)
なお、篩い分けは吸水性樹脂粉末または粒子状吸水剤10gを、室温(20〜25℃)、相対湿度50%RHの条件下で、上記のJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES−65型ふるい振盪機)により5分間ないし10分間分級した。
【0236】
なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50重量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
【0237】
(5)吸湿時の流動性指数及び吸湿率
直径52mmのアルミカップの重量を測定し記録する(A(g))。そのアルミカップに、JIS20メッシュ(目開き850μm)通過物の吸水性樹脂または粒子状吸水剤を均一に約2gを散布し、アルミカップと吸水性樹脂または粒子状吸水剤の合計重量(B(g))を記録する。その後、温度25℃で相対湿度90%RH下の恒温恒湿機(PLATINOUS LUCIFER PL−2G タバイエスペック社製)中で1時間放置した。1時間後、吸湿した吸水性樹脂または粒子状吸水剤の入ったアルミカップの全重量を測定する(C(g))。アルミカップに入った吸水性樹脂または粒子状吸水剤をJIS8.6メッシュ(目開き2000μm)のJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)の上に静かに移し、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES−65型ふるい振盪機;回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、室温(20〜25℃)、相対湿度50%RHの条件下で5秒間分級し、2000μmメッシュ上に残存した吸水性樹脂または粒子状吸水剤の重量(D(g))と該メッシュを通過した吸水性樹脂または粒子状吸水剤の重量(E(g))を測定した。本発明においては、吸湿時の流動性指数は下記(式6)で定義され、吸湿率は下記(式7)で定義され、それぞれ下記(式6)、下記(式7)に従って算出した。
吸湿時の流動性指数(重量%)=(E(g))/(C(g)−A(g))×100 ・・(式6)
吸湿率(%)={C(g)−B(g)}/(B(g)−A(g))×100・・(式7)
(6)水可溶分成分量(可溶分量)
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂または粒子状吸水剤1.00gを加えて、全長40mm×8mmの大きさのテフロン(登録商標)攪拌子(例えば、株式会社相互理化学硝子製の攪拌子A)を用いて渦の深みが2cmになるように(例えば250〜350rpm)、マグネチックスターラーによって16時間攪拌することにより吸水性樹脂または粒子状吸水剤中の可溶分(主に未架橋の水溶性ポリマー)を抽出した。この抽出液を、濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り、測定溶液とした。
【0238】
次いで、吸水性樹脂または粒子状吸水剤が添加されていない生理食塩水の50.0gを測りとり、まず、0.1NのNaOH水溶液を用いてpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して、空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
【0239】
上記と同様の滴定操作を、上記の測定溶液についても行うことにより、滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
【0240】
その後、上記空滴定量、及び、測定溶液の滴定量に基づいて、吸水性樹脂又は粒子状吸水剤の可溶分量を算出した。すなわち、例えば既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂又は粒子状吸水剤の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂又は粒子状吸水剤中の可溶分量を下記(式8)により算出することができる。
可溶分(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0 ・・(式8)
また、未知量の成分からなる吸水性樹脂または粒子状吸水剤を用いる場合には、上記滴定から、下記(式9)に基づいて求めた中和率を用いて、モノマーの平均分子量を算出し、吸水性樹脂または粒子状吸水剤の可溶分量を上記(式8)によって算出する。
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100 ・・(式9)
尚、例えば、カルボキシル基を含有しない等の不飽和単量体を用いて得られる吸水性樹脂又は粒子状吸水剤、上記の方法で測定する事ができない吸水性樹脂又は粒子状吸水剤である場合には、米国再発行特許Re37021号公報のカラム23の10〜55行に記載の重量測定によって水可溶分成分量を測定する。
【0241】
(7)表面張力
十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlをいれ、まず、生理食塩水の表面張力を表面張力計(K11自動表面張力計、KRUSS社)を用いて測定する。この測定において表面張力の値が71〜75mN/mの範囲でなくてはならない。次に、20℃に調整した表面張力測定後生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間撹拌する。4分後、撹拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定した。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分水洗浄し、かつバーナーで加熱洗浄して使用した。
【0242】
(8)含水率及び固形分の測定
吸水性樹脂または粒子状吸水剤1.000gを上記アルミカップ(直径52mm)に入れ、180℃の無風オーブンで3時間加熱し、その乾燥減量に基づいて、吸水性樹脂または粒子状吸水剤の固形分または含水率を算出した。
【0243】
ここで、上記固形分とは、吸水性樹脂または粒子状吸水剤から、揮発成分(主に水)を除いた時の吸水性樹脂または粒子状吸水剤、つまり吸水性樹脂または粒子状吸水剤の樹脂樹純分をいい、揮発成分を含んだ吸水性樹脂または粒子状吸水剤の質量に対する上記固形分の質量(固形分量)の割合を、固形分(重量%)とする。
【0244】
また、上記含水率とは、吸水性樹脂または粒子状吸水剤のうち、吸水性樹脂または粒子状吸水剤に含まれる揮発成分の主成分である水の割合(重量%)であり、100%から、上記固形分(重量%)を差し引いた値に相当する。
【0245】
(9)流下時間(Flowability)
EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)が規定するFlowability(450.2−02)の方法に従って測定した。
【0246】
上記EDANAに規定するホッパー内に粒子状吸水剤または吸水性樹脂を100g入れ、ホッパー下部の開口部を空けた瞬間を0秒として、入れた粒子状吸水剤または吸水性樹脂が全量排出されるまでの時間を測定した。なお、測定は25℃相対湿度50%RHの条件で行った。
【0247】
(10)挿入距離(PID)、挿入仕事量(PIW)の測定
<測定サンプル>
吸水性樹脂または粒子状吸水剤27〜30gをガラス製円柱状サンプル管(外径35mm、内径33mm、高さ78mm、例えばマルエム社製、スクリュー管No.7等)に入れてよく振盪した後、鉄製の板の上で、1分間、上下にタッピング(3回/秒、振幅10mm)して、上記円柱状サンプル管内の吸水性樹脂または粒子状吸水剤が密に詰められた状態にした。次に、上記円柱状サンプル管に密に詰められた状態で充填された粒子状吸水剤または吸水性樹脂(以下、粒子層と記載する)の高さが45mm±1.5mmになるように粒子状吸水剤または吸水性樹脂の量を適宜増減して調整した。このように、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の量を調整した場合には、再度よく振盪した後、鉄製の板の上で、1分間、上下にタッピング(3回/秒、振幅10mm)して粒子状吸水剤または吸水性樹脂を密に充填した状態とした。なお、タッピングについては、タッピング後の粒子層の上面がフラットであり、かつ水平な状態となるようにタッピングを行った。
【0248】
また、PIW、PIDの測定に際しては、3回の測定値の平均値を採用するため、1回の測定毎に上記粒子層が形成された円柱状サンプル管に蓋をしてよく振盪し、再度鉄製の板の上で、1分間、上記と同様に上下にタッピング(3回/秒、振幅10mm)を行い、粒子層の上面がフラットでかつ水平な状態の測定サンプルを得た。
【0249】
<測定装置>
PIW、PIDの測定は図2に示す測定装置10で行った。該測定装置10(カトーテック株式会社製、KES−G5ハンディー圧縮試験機、本社日本国京都市南区)は、圧縮装置11、圧縮装置11の制御を行う制御装置12、圧縮装置11と制御装置12から得られるデータを取り込むコンピュータ13を備え、上記圧縮装置11、制御装置12、コンピュータ13はケーブルで連結されている。
【0250】
上記圧縮装置11は、図3に示すように、可動式ステージ3、挿入プローブ(挿入部材)4、可動式のロードセル(力計)5、変位距離検出器6を備えている。
【0251】
上記ステージ3は、粒子状吸水剤又は吸水性樹脂(以下、粒子層)1が充填された測定サンプル2を載せる台であり、挿入プローブ4に対して進退可能になっている。また、上記挿入プローブ4は測定サンプル2内の粒子状吸水剤または吸水性樹脂からなる粒子層1に挿入される金属棒である。本実施例では、上記挿入プローブ4は、図4に示すように、直径12.7mm、長さ40mmで、先端部5mmが球面仕上げにより丸みを有する陽極酸化アルミニウムである。なお、上記挿入プローブ4のJISB0601−1994に従って規格化された表面粗さは、通常、最大高さが0〜10μm、好ましくは0〜1μmであり、十点平均粗さが0〜10μm、好ましくは0〜1μmであり、中心線平均粗さが0〜5μm、好ましくは0〜1μmが用いられる。上記挿入プローブ4は、図4に示すように、ロードセル5(図3)にねじで固定されて取り付けられ、ロードセル5とともに一体となって可動する。
【0252】
さらに、上記ロードセル5は、挿入プローブ4を介して、測定サンプル2内の粒子層1に対して、10kgの荷重を上限として種々の大きさの荷重を与えるものである。上記ロードセル5は、図3に示すように、変位距離検出器6に連結され、測定サンプル2に対して進退可能に設けられている。上記変位距離検出器6は、ロードセル5の移動距離である変位距離を検出する。
【0253】
また、図2に示す上記制御装置12は、挿入プローブ4の挿入速度を調整する挿入スピード調整器、挿入プローブ4から測定サンプル2の粒子層に与えられる荷重を調整する荷重調整器、ロードセル5の変位距離を調整する変位距離調整器、ロードセル5の変位距離を表示する変位距離表示器、測定サンプル2の粒子層に与えられる荷重を表示する荷重表示器、積分計を備えている。
【0254】
さらに、図2に示すコンピュータ13は、圧縮装置11、制御装置12から得られるデータをデジタルデータとして取り込む。該コンピュータ13には、測定サンプル2の粒子層1の上面に接触される挿入プローブ4(すなわちロードセル5)の変位距離や、上記粒子層1に与えられる荷重が記録される。
【0255】
<測定条件および測定方法>
上記測定装置10を水平で、かつ、振動のない実験台の上に設置し、25℃±1℃、相対湿度50±5%の条件に調整された環境下でPID、PIWの測定を以下の手順で行った。
【0256】
すなわち、上記した手順で測定サンプル2を用意し、振動を与えずに、該測定サンプル2を測定装置10の圧縮装置11(図2)のステージ3上に設置した。続いて、図3に示す挿入プローブ4の先端が、測定サンプル2内の粒子層1の上面に接触する位置までステージ3を上昇させて固定した。この状態を始点(0mm)とした。
【0257】
その後、1mm/秒の挿入速度で挿入プローブ4の先端を粒子層1に侵入させた。該挿入プローブ4の侵入開始と同時にデータの取り込みを0.1秒間隔として測定を開始し、挿入プローブ4の挿入距離と、挿入プローブ4の挿入に要した荷重とを測定した。なお、挿入プローブ4の挿入距離は、上記始点(0mm)〜20mm(誤差3%以内)までの範囲内とした。
【0258】
また、図5に示すように、上記にて測定された挿入距離(mm)を横軸とし、測定された荷重(g重またはgf)を縦軸としてグラフを作成し、得られた荷重の値を結ぶ曲線と横軸との領域(図中、斜線で示す領域)を、挿入距離0〜20mmの範囲で積分して、挿入距離0〜20mmでの挿入プローブ4の挿入による挿入仕事量(PIW)とした。また、挿入距離が20mmに達するまでに上限荷重10kgに達した場合には、上限荷重10kgに到達した時点での挿入距離をPID値とし、挿入荷重が10kgに到達せずに最大挿入距離20mmに到達した場合は20mmをPID値とした。
【0259】
以上の操作を3回繰り返して測定を行い、得られた3つの値の平均値を測定値とした。上記のようにして決定されたPID、PIWは、PIDが最大挿入距離20mmに到達し、かつ、PIWの値が小さいほど粒子層1の粒子状吸水剤または吸水性樹脂の粒子としての滑り性が高く、取扱い性に優れているとみなす事ができる。
【0260】
なお、挿入プローブ4の挿入距離が20mmに達する前に荷重が10,000g重に達した場合には、粉体の流動性が非常に低いとみなす事ができる為、PIWは求めずに、挿入プローブ4の挿入距離(PID)のみで評価を行った。
【0261】
(11)生理食塩水流れ誘導性(SFC)
0.69重量%生理食塩水流れ誘導性(SFC)は粒子状吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。米国公開特許US2004−0106745−Aの生理食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0262】
図6に示す装置を用い、セル308に均一に入れた粒子状吸水剤(0.900g)を、人工尿中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル310のゲル層の高さを記録した。次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液306を、一定の静水圧でタンク302から膨潤したゲル層に通液させた。
【0263】
図6に示す装置のタンク302には、ガラス管304が挿入されている。ガラス管304は、セル308中の0.69重量%塩化ナトリウム水溶液306の液面が、膨潤ゲル310の底部から5cm上の高さに維持されるように、下端の位置を調整して配置されている。タンク302中の0.69重量%塩化ナトリウム水溶液306は、コック付きL字管312を通じてセル308へ供給された。セル308の下には、通過した液を捕集する捕集容器314が配置されており、捕集容器314は上皿天秤316の上に設置されている。セル308の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)318が設置されている。ピストン320の下部には液が通過するのに十分な穴322があり、底部には粒子状吸水剤あるいはその膨潤ゲルが、穴322に入り込まないように透過性の良いガラスフィルター324が取り付けてある。セル308は、セル308を載せるための台の上に置かれ、この台は、液の透過を妨げないステンレス製の金網326の上に設置されている。
【0264】
上記人工尿は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、リン酸2水素アンモニウム0.85g、リン酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものを用いた。
【0265】
なお、SFC試験は室温(20〜25℃)で行った。コンピュータと天秤とを用いて、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル310(の主に粒子間)を通過する流速Fs(t)は増加重量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をtsとし、tsと10分間の間に得た流速を使用して、Fs(t=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(t=0)はFs(t)の対時間の最小2乗法の結果をt=0に外挿することにより計算した。そして、以下の式(10)を用いて生理食塩水流れ誘導性(加圧下通液速度)を求めた。なお、加圧下通液速度の単位は、(10−7×cm×s×g−1)である。
【0266】

【0267】
ここで、
Fs(t=0):g/sで表した流速
:cmで表したゲル層の高さ
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm
である。
【0268】
(12)ゆるみかさ密度(かさ比重)
JIS K3362に従って測定した。具体的には、図7に示す測定器を用いて以下の方法により測定した。
1)測定器を安定な台の上に置き、三脚ねじを調節して水平に保ち、乾燥した漏斗101をスタンドに垂直に載せ、下の口にダンパー102を軽く当ててふさぐ。
2)漏斗101の直下にあらかじめ洗浄乾燥し質量を0.1gまで量ったカップ103を置き、次に縮分した試料100.0gを静かに漏斗101内に入れる。
3)ダンパー102を手早く全開して、漏斗101内の試料をカップ103中に自然落下させる。試料が塊状で漏斗101に付着する場合には、あらかじめガラス棒でよくばらばらにしておく。カップ103から盛り上がった部分は、ガラス棒(径約8mm、長さ約150mm)ですり落とした後、試料の入ったカップ103の質量を0.1gまで量る。
【0269】
そして、次式に従って、ゆるみかさ密度を求めた。
A=(W−W)/V
ここで
A:ゆるみかさ密度(g/ml)
:試料の入ったカップの質量(g)
:空のカップの質量(g)
V:カップの容量(ml)
である。
【0270】
なお、ゆるみかさ密度は、単にかさ密度、あるいはかさ比重と呼ばれていることが多くそれらと同様のものである。
【0271】
(13)流下速度
ゆるみかさ密度測定時に同時に測定した。具体的には、上記ゆるみかさ密度を測定する操作の3)において、ダンパー102を手早く全開にした瞬間から、試料全量が漏斗101から落下し終わるまでの時間を測定した。この時間をt(s)として、次式に従って、流下速度を求めた。
Ve=100/t
ここで
Ve:流下速度(g/s)
である。
【0272】
(14)かためかさ密度
以下の方法で測定した。
【0273】
1)あらかじめ十分に洗浄、乾燥し質量を0.1gのけたまで量った容量250ml、内径約38mmのメスシリンダに、スパチュラで約100gの粒子状吸水剤を入れて、試料入りメスシリンダの質量を量り、その差から試料の質量m(g)を計算する。
【0274】
2)試料入りメスシリンダをフラットな実験台上で、約3mmの高さから100回タッピングし、試料の体積を1mlまで正確に読み取る。
【0275】
3)さらにタッピングを100回繰り返し、再び試料の体積を読み、二つの読みの差が1ml以下ならば、小さいほうの体積V(ml)を採用し、試験を終了する。
【0276】
二つの読みの差が1mlを超える場合は、さらに100回タッピングを繰り返し、連続する二つのタッピングの後に測定した体積の差が1mlを超えなくなるまで続ける。
【0277】
二つの読みの差が1ml以下になったならば、小さいほうの体積V(ml)を採用して試験を終了し、次式に従って、かためかさ密度を求める。
P−m/V
ここで
P:かためかさ密度(g/ml)
である。
【0278】
(15)圧縮度
ゆるみかさ密度A(g/ml)および、かためかさ密度P(g/ml)の値から、次式に従って、圧縮度を計算した。
C=(P−A)/P×100
ここで
C:圧縮度(%)
である。
【0279】
(16)撹拌抵抗
RV12型粘度計(HAAKE社)にSV2PSt型ローターおよびMV容器を取り付け、ローターの抵抗測定部が完全に見えなくなる量の粒子状吸水剤(約80g)を、スパチュラでMV容器内に投入し、ローターを16rpmで回転させた。回転開始から1分後のトルクT(N・cm)を読み取り、粒子状吸水剤の撹拌抵抗とした。
【0280】
〔参考例1〕
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)5.9gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.46g及びL−アスコルビン酸0.10gを添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(a)を得た。得られた吸水性樹脂(a)100部に、エチレングリコールグリシジルエーテル0.03部、プロピレングリコール0.5部と、1,4−ブタンジオール0.3部と、水3部とからなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を200℃で45分間加熱処理することにより吸水性樹脂(A)を得た。得られた(A)のσζは0.35、D50は370μm、150μm未満の粒子の比率は2重量%、可溶分量は17重量%であった。
【0281】
吸水性樹脂(A)の5分、30分での吸収倍率、吸収倍率の5分到達率、2.03kPa、4.83kPa下での加圧下吸収倍率、表面張力の測定結果を表1に、吸湿時の流動性指数、吸湿率、流下時間、PID、PIWの測定結果を表2に記載した。
【0282】
〔参考例2〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにアクリル酸14g、ステアリルアクリレート6g、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1gおよび、溶媒としてエチルアルコール80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、窒素気流下、65℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬し、攪拌下2時間重合反応を行った。2時間後温度を75℃に上げ、さらに1時間反応を行った。その後、反応液を冷却し、高分子添加剤であるアクリル酸−ステアリルアクリレート共重合体を20重量%含有する高分子添加剤含有溶液(B−1)を得た。
【実施例1】
【0283】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤含有溶液(B−1、20重量%エタノール溶液)を1.5部(高分子添加剤として0.3部)、5部(高分子添加剤として1部)それぞれ添加、混合し、その後60℃で3時間真空乾燥する事により、粒子状吸水剤(1)、(2)を得た。
【0284】
得られた粒子状吸水剤(1)及び(2)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0285】
〔参考例3〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにアクリル酸10g、ラウリルアクリレート10g、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1gおよび、溶媒としてエチルアルコール80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、窒素気流下65℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬し、攪拌下2時間重合反応を行った。2時間後温度を75℃に上げ、さらに1時間反応を行った。その後、反応液を冷却し、高分子添加剤であるアクリル酸−ラウリルアクリレート共重合体を20重量%含有する、高分子添加剤含有溶液(B−2)を得た。
【実施例2】
【0286】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤含有溶液(B−2、20重量%エタノール溶液)を5部(高分子添加剤として1部)添加、混合し、その後60℃で3時間真空乾燥する事により、粒子状吸水剤(3)を得た。得られた粒子状吸水剤(3)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【実施例3】
【0287】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤含有溶液(B−2、20重量%エタノール溶液)を5部(高分子添加剤として1部)、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1部の混合溶液を5.1部混合し、その後120℃で30時間真空乾燥する事により、粒子状吸水剤(4)を得た。得られた粒子状吸水剤(4)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0288】
〔参考例4〕
使用する単量体をアクリル酸に替えて2−ヒドロキシエチルアクリレート14gを使用する以外、参考例2と同様にして、高分子添加剤としてヒドロキシエチルアクリレート−ステアリルアクリレート共重合体を20%含有する、高分子添加剤含有溶液(B−3)を得た。
【実施例4】
【0289】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤含有溶液(B−3、20重量%エタノール溶液)を5部添加(高分子添加剤として1部)、混合し、その後60℃で3時間真空乾燥する事により、粒子状吸水剤(5)を得た。得られた粒子状吸水剤(5)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0290】
〔参考例5〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにアクリル酸16g、ステアリルアクリレート4g、開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1gおよび、溶媒として酢酸エチル80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、窒素気流下70℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬した。浸漬開始から10分後には重合により生成したポリマーが析出する事により反応溶液が濁り始め、20分後には攪拌をとめて反応を行った。40分後には反応系全体が固化した。浸漬開始から3時間後、冷却し、反応で得られた固化物を真空下60℃で5時間乾燥した。乾燥した固形物は微粒子の凝集体であり、卓上型粉砕機で粉砕し、75μmpassする事により、高分子添加剤微粒子(B−4)を得た。
【0291】
走査電子顕微鏡(SEM)により粒子を観察したところ、直径1〜5μmの粒子が集まって出来た粒子径5〜50μmの凝集物であった。
【実施例5】
【0292】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤微粒子(B−4)粉体を1部添加、混合して粒子状吸水剤(6)を得た。得られた粒子状吸水剤(6)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0293】
〔参考例6〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにアクリル酸14g、ラウリルアクリレート6g、開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1gおよび、溶媒として酢酸エチル80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、窒素気流下70℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬した。浸漬開始から10分後には重合により生成したポリマーが析出する事により反応溶液が濁り始め、20分後には攪拌をとめて反応を行った。40分後には反応系全体が固化した。浸漬開始から3時間後、冷却し、反応で得られた固化物を真空下60℃で5時間乾燥した。乾燥した固形物は微粒子の凝集体であり、卓上型粉砕機で粉砕し、75μmpassする事により、高分子添加剤微粒子(B−5)を得た。
【0294】
走査電子顕微鏡(SEM)により粒子を観察したところ、直径1〜5μmの粒子が集まって出来た粒子径5〜50μmの凝集物であった。
【実施例6】
【0295】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤含有溶液(B−5)粉体を1部添加、混合して、粒子状吸水剤(7)を得た。得られた粒子状吸水剤(7)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0296】
〔参考例7〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにアクリル酸14g、2−エチル−ヘキシルアクリレート6g、メチレンビスアクリルアミド0.15g、開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1gおよび、溶媒として酢酸エチル80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、窒素気流下70℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬した。浸漬開始から10分後には重合により生成したポリマーが析出する事により反応溶液が濁り始め、20分後には攪拌をとめて反応を行った。40分後には反応系全体が固化した。浸漬開始から3時間後、冷却し、反応で得られた固化物を真空下60℃で5時間乾燥した。乾燥した固形物は微粒子の凝集体であり、卓上型粉砕機で粉砕し、75μmpassする事により、高分子添加剤微粒子(B−6)を得た。
【0297】
走査電子顕微鏡(SEM)により粒子を観察したところ、直径1〜5μmの粒子が集まって出来た粒子径5〜50μmの凝集物であった。
【実施例7】
【0298】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤微粒子(B−6)粉体を1部添加、混合して、粒子状吸水剤(8)を得た。得られた粒子状吸水剤(8)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0299】
〔参考例8〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにアクリル酸10g、ステアリルアクリレート5g、ウンデシレノキシポリエチレングリコールメタクリレート(NKエコノマー、ML−12G:新中村化学工業株式会社製)5g、開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1gおよび、溶媒としてエチルアルコール80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、窒素気流下65℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬し、攪拌下2時間重合反応を行った。2時間後温度を75℃に上げ、さらに1時間反応を行った。その後、反応液を冷却し、高分子添加剤であるアクリル酸−ステアリルアクリレート−ウンデシレノキシポリエチレングリコールメタクリレート共重合体を20重量%含有する、高分子添加剤含有溶液(B−7)を得た。
【実施例8】
【0300】
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤含有溶液(B−7、20重量%エタノール溶液)を5部添加(高分子添加剤として1部)、混合し、その後60℃で3時間真空乾燥する事により、粒子状吸水剤(9)を得た。得られた粒子状吸水剤(9)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0301】
〔比較参考例1〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにアクリル酸10g、ブチルアクリレート10g、開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1gおよび、溶媒としてエチルアルコール80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、窒素気流下65℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬し、攪拌下2時間重合反応を行った。2時間後温度を75℃に上げ、さらに1時間反応を行った。その後、反応液を冷却し、炭素数7未満の炭化水素基しか側鎖に有しない比較用高分子添加剤であるアクリル酸−ブチルアクリレート共重合体を20重量%含有した比較用高分子添加剤溶液(C−1)を得た。
【0302】
〔比較例1〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、比較用高分子添加剤溶液(C−1、20重量%エチルアルコール溶液)5部添加(比較用高分子添加剤として1部)、混合して、その後60℃で3時間真空乾燥する事により、比較粒子状吸水剤(CC−1)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(CC−1)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0303】
〔比較参考例2〕
冷却管と攪拌羽、攪拌羽を回転させるモーターを設置した容量500mlのセパラブルフラスコにジメチルアミノエチルアクリレート塩酸塩10g、ブチルアクリレート10g、開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1gおよび、溶媒としてイソプロピルアルコール80gを入れて完全に溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で15分間脱気した。ついで、65℃の湯浴に上記反応液を含んだセパラブルフラスコを浸漬し、攪拌下2時間重合反応を行った。2時間後温度を75℃に上げ、さらに1時間反応を行った。その後、反応液を冷却し、炭素数7未満の炭化水素基しか側鎖に有しない比較用高分子添加剤であるジメチルアミノエチルアクリレート塩酸塩−ブチルアクリレート共重合体を20重量%含有した比較用高分子添加剤溶液(C−2)を得た。
【0304】
〔比較例2〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、比較用高分子添加剤溶液(C−2、20重量%イソプロピルアルコール溶液)5部添加(比較用高分子添加剤として1部)、混合して、その後60℃で3時間真空乾燥する事により、比較粒子状吸水剤(CC−2)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(CC−2)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。流下時間はホッパーから流下しなかったため測定不能であった。この粉体は流動性が悪く、粘着性を有し、容器等への付着が多量に観察された。
【0305】
〔比較例3〕
比較例2で得られた比較吸収剤(CC−2)100部に、さらに添加剤として親水性二酸化珪素微粉体(アエロジル200(一次粒子の平均粒子径12nm:日本アエロジル株式会社製)を0.5部添加、混合して、比較粒子状吸水剤(CC−3)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(CC−3)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0306】
〔比較例4〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、高分子添加剤として架橋型ポリアクリル酸ポリマー微粉体(商品名:ジュンロンPW−150:日本純薬株式会社製:SEM観察による粒子径5〜50μm:1重量%水溶液粘度95,000cp)を1部添加、混合して、比較粒子状吸水剤(CC−4)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(CC−4)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。。
【0307】
〔比較例5〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(A)100部に対して、添加剤として親水性二酸化珪素微粉体(アエロジル200(一次粒子の平均粒子径12nm:日本アエロジル株式会社製)を1部添加、混合して、比較粒子状吸水剤(CC−5)を得た。得られた比較粒子状吸水剤(CC−5)の物性を表1、表2−1、表2−2に示す。
【0308】
実施例1〜8で得られた粒子状吸水剤(1)〜(9)及び比較例1〜5で得られた比較粒子状吸水剤(CC1)〜(CC−5)の5分、30分での吸収倍率、吸収倍率の5分到達率、2.03kPa、4.83kPa下での加圧下吸収倍率、表面張力の測定結果を表1に、吸湿時の流動性指数、吸湿率、流下時間、PID、PIW、ゆるみかさ密度、かためかさ密度、圧縮度の測定結果を表2−1、表2−2に記載した。
【0309】

【0310】


【0311】

【0312】
[合成例1:吸水性樹脂の合成]
48.5重量%苛性ソーダ水溶液を4.95g/秒、アクリル酸を6.12g/秒、30重量%ポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量523)水溶液(I)を0.0672g/秒、20重量%アクリル酸水溶液97.9重量部に2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノンを0.989重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムを1.08重量部溶解した溶液(II)を0.0758g/秒、水を5.23g/秒の流量になるよう設定して、連続的にミキサーに供給し混合をおこなった。このときの単量体水溶液温度は95℃であった。さらに3重量%過硫酸ナトリウム水溶液を0.223g/秒の流量で加えたのち、約100℃に保温された1.7m/分の速度で走行する有効長(モノマー供給口からベルト末端までの距離)3.2mのエンドレスベルト上に4.9mmの厚さになるよう連続的に供給した。ベルト上に供給された単量体水溶液は速やかに重合し、水蒸気を発しながら膨張し、重合開始から約1分後に収縮した。収縮した含水重合体をベルト末端で回収し、ミートチョッパーに導き、連続的に細断した。細断した含水重合体を180℃に調温した熱風乾燥機で40分間乾燥した後、ロールミルで粉砕した。次いで粉砕物を目開き850μmのJIS標準篩と目開き150μmのJIS標準篩で分級し、850μmを通過し150μmを通過しない吸水性樹脂(ベースポリマー)を得た。
【実施例9】
【0313】
上記合成例1で得た吸水性樹脂の粉体100重量部に、1,4−ブタンジオール0.34重量部、プロピレングリコール0.56重量部、水3.0重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王(株)社製)0.0010重量部の混合液からなる表面処理剤を混合した。その後、混合物を210℃で30分間加熱処理することにより、表面が架橋された粒子状吸水剤(10)を得た。粒子状吸水剤の物性を表3に示す。
【実施例10】
【0314】
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートの量を0.0015重量部とした以外は、上記実施例9と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(11)を得た。粒子状吸水剤の物性を表3に示す。
【実施例11】
【0315】
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートの量を0.0020重量部とした以外は、上記実施例9と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(12)を得た。粒子状吸水剤の物性を表3に示す。
【実施例12】
【0316】
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートの量を0.0050重量部とした以外は、上記実施例9と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(13)を得た。粒子状吸水剤の物性を表3に示す。
【実施例13】
【0317】
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートの量を0.010重量部とした以外は、上記実施例9と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(14)を得た。粒子状吸水剤の物性を表3に示す。
【0318】
[比較例6]
上記合成例1で得た吸水性樹脂の粉体100重量部に、1,4−ブタンジオール0.34重量部、プロピレングリコール0.56重量部、水3.0重量部の混合液からなる表面処理剤を混合した。その後、混合物を210℃で30分間加熱処理することにより、表面が架橋された比較粒子状吸水剤(CC−6)を得た。粒子状吸水剤の物性を表3に示す。
【0319】
[比較例7]
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートの量を0.015重量部とした以外は、上記実施例9と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(CC−7)を得た。粒子状吸水剤の物性を表3に示す。
【0320】


【0321】
〔合成例2:吸水性樹脂の合成〕
シグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス型双腕型ニーダー中で、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液に、ポリエチレングリコールジアクリレート0.10モル%を溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガスで脱気した。続いて、反応液に10重量%過硫酸ナトリウム水溶液および0.1重量%L−アスコルビン酸水溶液を攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95%で重合を行い、重合が開始して20分後にゲル状の含水重合体を取り出した。得られた含水重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0322】
この細分化された含水重合体を170℃で50分間熱風乾燥した。乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmJIS標準篩と目開き150μmのJIS標準篩で分級し、850μmを通過し150μmを通過しないベースポリマーの粉体を得た。得られたベースポリマーの粉体100重量部に、1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール1.0重量部、水3.0重量部の混合液からなる表面処理剤を混合した。その後、混合物を210℃で約30分間加熱処理することにより、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。
【実施例14】
【0323】
上記合成例2で得た吸水性樹脂100gおよびステアリン酸亜鉛0.6mgを500mlのポリ容器に入れ、ポリ容器を振り混ぜることにより混合し粒子状吸水剤(15)を得た。得られた粒子状吸水剤(15)のゆるめかさ密度をJIS K3362に従って測定した。また粒子状吸水剤の吸水特性(CRC2、AAP1、SFC)も測定した。結果を表4に示す。
【実施例15】
【0324】
上記ステアリン酸亜鉛の量を0.15mgにした以外は、上記実施例14と同様の操作を行い、粒子状吸水剤(16)を得た。また、実施例14と同様にして、得られた粒子状吸水剤(16)のゆるめかさ密度および吸水特性(CRC2、AAP1、SFC)を測定した。結果を表4に示す。
【0325】
〔比較例8〕
上記合成例2で得た吸水性樹脂100gに対して、ステアリン酸亜鉛を添加混合せずに、実施例14と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(cc−8)を得た。そして、実施例14と同様にして、比較粒子状吸水剤(cc−8)のゆるめかさ密度および吸水特性(CRC2、AAP1、SFC)を測定した。結果を表4に示す。
【実施例16】
【0326】
上記合成例2で得た吸水性樹脂100gおよびエルカ酸アミド1mgをステンレス製ビーカーに入れ、150℃の対流式乾燥機中に5分間置いた。ビーカーを取り出し、温度計を入れて測温すると約75℃であった。測温後ゆるやかに振り混ぜた。室温まで放冷し粒子状吸水剤(17)を得た。得られた粒子状吸水剤(17)のゆるめかさ密度および流下速度をJIS K3362に従って測定した。また、粒子状吸水剤(17)の吸水特性(CRC2、AAP1、SFC)も測定した。結果を表4に示す。
【0327】
〔比較例9〕
上記合成例2で得た吸水性樹脂100gに対して、エルカ酸アミドを添加混合せずに、実施例16と同様の操作を行い、比較粒子状吸水剤(cc−9)を得た。そして、実施例16と同様にして、比較粒子状吸水剤(cc−9)のゆるめかさ密度、流下速度および吸水特性(CRC2、AAP1、SFC)を測定した。結果を表4に示す。
【0328】
なお、上記実施例14〜16、及び比較例8,9それぞれで得られた粒子状吸水剤に関して、PID、PIW、表面張力を測定した。その測定結果も表4に示す。
【0329】

【実施例17】
【0330】
<吸水性物品の作成>
評価用の吸水性物品は、下記の方法により作成した。
【0331】
まず、上記実施例1にて得られた粒子状吸水剤(1)50重量部と、木材粉砕パルプ50重量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目開きの大きさ38μm)に形成したワイヤースクリーン上にパッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×400mmの大きさのウェブに形成した。さらに、このウェブを圧力2kg/cm(196.14kPa)で60秒間プレスすることにより、秤量が約500g/mの吸水体を得た。続いて、不透液性のポリプロピレンからなり、いわゆるレッグギャザーを有するバックシート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に互いに粘着すると共に、この粘着物に2つのいわゆるテープファスナーを取り付けることにより、吸水性物品(紙オムツ)を得た。
【0332】
<吸水性物品の性能評価>
上記吸水性物品をトップシートが上になるように、水平な実験台上に置き、皺が無いようによく伸ばした状態で吸水性物品の四隅を粘着テープで固定した。続いて、その上に20メッシュ(目開き850μm)の金網(140mm×400mm)を置き、さらに、中心部から液体を投入できるように、中心部に直径70mmで高さ50mmの円筒を敷設させたアクリル板(140mm×400mm)を設置した。なお、使用したアクリル板の質量は1.5kgであった。続いて、アクリル板上でかつ円筒の両側に4.25kgのおもりを1つずつ(計2個)置いた。アクリル板の質量とおもりの質量との合計が10kgであり、吸水体にかかる荷重は2.06kPaになっている。この状態で0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)を円筒から75mlを一気に投入し、円筒から液がなくなるまでの時間を測定した。この時間を液取り込み時間と定義した。1時間放置後、同様の操作を繰り返し、4回の液投入を行い、1〜4回目までの液投入時間を測定した。4回目の液投入から1時間後、おもり、アクリル板、金網を素早く撤去し、引き続き、質量の分かった140mm×400mmの大きさで30枚重ねのペーパータオル、フラットなアクリル板、10kgのおもり2個を乗せた。1分後、おもりを外し、ペーパータオルの質量を測定し、ペーパータオルの質量変化から戻り量を測定した。
【0333】
1回目から4回目までの液投入時間が短い程、吸水性物品が優れていると判断され、また、戻り量が少ないほど吸水性能が優れていると判断される。
〔比較例10〕
上記比較例1にて得られた比較粒子状吸水剤(CC−1)について、上記実施例17と同様の操作で、吸水性物品を作成し、性能評価を行った。
〔比較例11〕
上記比較例5にて得られた比較粒子状吸水剤(CC−5)について、上記実施例17と同様の操作で、吸水性物品を作成し、性能評価を行った。
【0334】
上記実施例17、及び上記比較例10、11にて得られた吸水性物品それぞれについて、性能評価を行った結果を表5に示す。
【0335】

【0336】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用の可能性
【0337】
本発明の吸収剤は、吸湿時の流動性に優れ、優れた吸収特性やかさ密度を示すため、種々の吸収物品として用いることができる。具体的には、近年成長著しい大人用紙オムツをはじめ、子供用紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド、創傷保護材、創傷治癒材等の衛生材料(体液吸収物品)等の衛生材料(体液吸収物品);ペット用の尿等の吸収物品;建材や土壌用保水材、止水材、パッキング材、ゲル水嚢等の土木建築用資材;ドリップ吸収剤や鮮度保持材、保冷材等の食品用物品;油水分離材、結露防止剤、凝固剤等の各種産業用物品;植物や土壌等の保水材等の農園芸用物品等として好適に用いることができる。本発明の粒子状吸水剤を含む吸収物品を用いれば、尿などの戻り量も少なくできるので、吸水後もドライ感に優れ、吸収物品を装着している本人、介護の人々の負担を大きく低減することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋構造を有する吸水性樹脂に、表面処理剤を添加して表面架橋処理された粒子状吸水剤であって、該粒子状吸水剤において、(i)質量平均粒子径(D50)が200〜600μmであり、かつ、全粒子状吸水剤100重量%に対して、850μm未満150μm以上の粒子径を有する粒子状吸水剤が95〜100重量%含まれており、(ii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45であり、(iii)下記式で規定される圧縮度が0〜18%の範囲であり、(iv)20℃の生理食塩水50mlに該粒子状吸水剤0.5gを分散させてから4分後の上澄み液の表面張力が55mN/m以上である粒子状吸水剤。
圧縮度(%)=(P−A)/P×100
ただし、Pは粒子状吸水剤のかためかさ密度、Aは粒子状吸水剤のゆるみかさ密度
【請求項2】
上記粒子状吸水剤の粒子層に20mmの深さまで挿入部材を挿入した場合の仕事量である挿入仕事量が0g重×mm以上75,000g重×mm以下であることを特徴とする請求の範囲1に記載の粒子状吸水剤。
【請求項3】
さらに、界面活性剤または粉体の滑剤を含むことを特徴とする請求の範囲1または2に記載の粒子状吸水剤。
【請求項4】
上記粉体の滑剤は、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有し、0.01μm以上100μm以下の質量平均粒子径を有する高分子添加剤であることを特徴とする請求の範囲3に記載の粒子状吸水剤。
【請求項5】
上記高分子添加剤の添加量が、上記吸水性樹脂100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下の範囲であることを特徴とする請求の範囲4に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
上記高分子添加剤は、炭素数7以上の炭化水素基を側鎖に有する単量体が、高分子添加剤である(共)重合体に対し15重量%以上100重量%以下で(共)重合されてなるものであることを特徴とする請求の範囲4または5に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
上記高分子添加剤は、上記吸水性樹脂の表面に、溶液または懸濁液の状態で添加されてなることを特徴とする請求の範囲4〜6のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項8】
上記高分子添加剤は、質量平均粒子径0.01μm以上100μm以下の粉体として、上記吸水性樹脂の表面に添加されてなることを特徴とする請求の範囲4〜7のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項9】
上記界面活性剤の添加量が、上記吸水性樹脂100重量部に対して0.0005重量部以上0.012重量部以下の範囲であることを特徴とする請求の範囲3に記載の粒子状吸水剤。
【請求項10】
上記界面活性剤が、HLB8〜18のノニオン性界面活性剤であることを特徴とする請求の範囲3または9に記載の粒子状吸水剤。
【請求項11】
吸水性樹脂と粉体の滑剤(金属石鹸は除く)とを含み、上記滑剤は、上記吸水性樹脂に対して0.0001重量%〜0.1重量%の範囲で含有されていることを特徴とする粒子状吸水剤。
【請求項12】
4.83kPa加圧下での加圧下吸収倍率(AAP2)が17g/g以上であることを特徴とする請求の範囲3〜11の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項13】
2.03kPa加圧下での加圧下吸収倍率(AAP1)が20g/g以上であることを特徴とする請求の範囲4〜8の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項14】
20(10−7・cm・s・g−1)以上の生理食塩水流れ誘導性(SFC/Saline Flow Conductivity)を有することを特徴とする請求の範囲9〜13の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項15】
ゆるみかさ密度が0.7g/ml以上であることを特徴とする請求の範囲3〜14の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項16】
上記粉体の滑剤が吸水性樹脂粉体に添加されてなることを特徴とする請求の範囲4〜8、11のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項17】
上記吸水性樹脂が不定形破砕状粒子、不定形破砕状粒子の造粒物、球形状粒子の造粒物、楕円形状粒子の造粒物からなる群から選ばれる少なくとも一つの形状またはその混合物の形状を有する事を特徴とする請求の範囲1〜16のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項18】
請求の範囲1〜17のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤を含む吸収性物品。
【請求項19】
架橋構造を有する吸水性樹脂に、(A)表面架橋剤、(B)界面活性剤または粉体の滑剤を必須成分とする表面処理剤を添加し、表面架橋処理する粒子状吸水剤の製造方法であって、該界面活性剤または粉体の滑剤の添加量が該吸水性樹脂100重量部に対して0.0005〜0.012重量部の範囲であり、20℃の生理食塩水50mlに該粒子状吸水剤0.5gを分散させてから4分後の上澄み液の表面張力が55mN/m以上である粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項20】
表面架橋前の吸水性樹脂の、(i)質量平均粒子径(D50)が200〜600μm、(ii)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45である請求の範囲19に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
【請求項21】
上記粒子状吸水剤の、下記式で定義される圧縮度が0〜18%とする請求の範囲19または20に記載の粒子状吸水剤の製造方法。
圧縮度(%)=(P−A)/P×100
ただし、Pは粒子状吸水剤のかためかさ密度、Aは粒子状吸水剤のゆるみかさ密度

【国際公開番号】WO2005/075070
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517745(P2005−517745)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001689
【国際出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】