説明

粒子状物質検出装置、および排気ガス浄化装置の状態判定装置

【課題】正確な粒子状物質の捕集量の検出を実現する粒子状物質検出装置の提供。
【解決手段】粒子状物質を捕集する第一捕集部51および第二捕集部53であって、粒子状物質の酸化反応を促進する触媒作用を示す第一捕集部51および当該触媒作用を示さない第二捕集部53、各捕集部51,53を加熱するヒータ57、ならびに各捕集部51,53の示差熱を検知する熱電対58を有し、排気ガス中に配置されるパティキュレートセンサ50と、当該センサ50によって検知される示差熱を積算することで第二捕集部53によって捕集された粒子状物質の酸化反応による熱量を算出し、さらに予め記憶された熱量と捕集量との相関情報に基づいて、算出した当該熱量から第二捕集部53に捕集された粒子状物質の捕集量を算出するセンサ制御装置40を備える粒子状物質検出装置60とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置、および当該粒子状物質検出装置を利用した排気ガス浄化装置の状態判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二つのパティキュレートセンサを排気ガス中に配置し、当該パティキュレートセンサ同士の示差熱を検知することで、内燃機関の排気ガスに含まれる粒子状物質を検出する技術が知られている。このような技術を用いた排ガス浄化装置として、特許文献1には、パティキュレートフィルタの上流側および下流側に、同一の酸化触媒によって構成されるパティキュレートセンサをそれぞれ配置し、各パティキュレートセンサを加熱する加熱装置、およびパティキュレートセンサ同士の示差熱を検知する熱電対を有する形態が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1に開示の排ガス浄化装置では、パティキュレートフィルタに流入する排気ガス中に配置された上流側パティキュレートセンサには、パティキュレートフィルタから流出する排気ガス中に配置された下流側パティキュレートセンサよりも、多量の粒子状物質が捕集される。各パティキュレートセンサを加熱装置によって加熱すると、酸化触媒作用によって、各パティキュレートセンサに捕集された粒子状物質が酸化反応を開始する。各パティキュレートセンサに捕集される粒子状物質量の違いによれば、示差熱が生じるものと推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−322380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の装置において、パティキュレートフィルタに流入する排気ガスの雰囲気温度と、パティキュレートフィルタから流出する排気ガスの雰囲気温度とが一致し難い。詳しく説明すると、パティキュレートフィルタにおいて粒子状物質の酸化反応によって生じる熱量は、当該フィルタ周囲の雰囲気温度および粒子状物質の濃度に応じて変化する。そして、これら雰囲気温度および粒子状物質の濃度は、内燃機関の運転状態に応じて常に変動するものである。
【0006】
以上のように、各パティキュレートセンサを異なる温度条件となる排気ガス中にそれぞれ配置する形態では、各パティキュレートセンサ周囲の雰囲気温度の違いによって、各パティキュレートセンサに捕集される粒子状物質量の違いを示差熱は正しく示すことができなかった。そして、この雰囲気温度の違いに起因した示差熱の検知誤差が、正確な粒子状物質の捕集量の検出を妨げる要因となっていたのである。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、示差熱を正しく検知することで、正確な粒子状物質の捕集量の検出を実現する粒子状物質検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、内燃機関の排気ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、粒子状物質を捕集する第一捕集部および第二捕集部であって、粒子状物質の酸化反応を促進する触媒作用を示す第一捕集部および第一捕集部よりも触媒作用の弱い第二捕集部、第一捕集部および第二捕集部を加熱する加熱部、ならびに第一捕集部および第二捕集部の示差熱を検知する示差熱検知部を有し、排気ガス中に配置される粒子状物質センサと、粒子状物質センサによって検知される示差熱を積算し、第一捕集部および第二捕集部で捕集された粒子状物質の酸化反応による熱量を算出する熱量算出手段と、熱量と捕集量との相関情報を予め記憶し、熱量算出手段によって算出される熱量から、相関情報に基づいて第一捕集部および第二捕集部に捕集される粒子状物質の捕集量を算出する捕集量算出手段と、を備えることを特徴とする粒子状物質検出装置とする。
【0009】
この発明によれば、排気ガス中に配置される粒子状物質センサの第一捕集部および第二捕集部には、同程度の粒子状物質が捕集される。第一および第二捕集部を加熱部によって加熱すると、第一捕集部の示す粒子状物質の酸化反応を促進する触媒作用によって、まず当該第一捕集部に捕集された粒子状物質が酸化反応を開始する。さらに第一および第二捕集部を加熱部によって加熱しつづけると、第一捕集部よりも触媒作用の弱い第二捕集部に捕集された粒子状物質が酸化を開始する。第一捕集部と第二捕集部との触媒作用の強さの違いによれば、示差熱が生じることとなる。
【0010】
示差熱検知部によって検知される第一および第二捕集部の示差熱は、熱量算出手段によって積算される。この示差熱の積算によれば、第一捕集部および第二捕集部によって捕集された粒子状物質が酸化反応時に発した熱量を熱量演算手段によって算出できる。捕集量算出手段は、予め記憶されている相関情報に基づいて、熱量演算手段の算出した熱量から、第一捕集部および第二捕集部に捕集されていた粒子状物質の捕集量を算出することができるのである。
【0011】
以上のように、第一および第二捕集部が同じ温度条件の排気ガス中に配置されることによれば、第一および第二捕集部周囲の雰囲気温度に起因した示差熱の検知誤差を抑制し得る。加えて、第一捕集部および第二捕集部それぞれの触媒作用の強さを変えることで、同一雰囲気中であっても、粒子状物質の捕集量を正しく反映した示差熱の検知が実現する。したがって、粒子状物質検出装置は、正確な粒子状物質の捕集量の検出を実現することができるのである。
【0012】
請求項2に記載の発明では、粒子状物質センサは、第一捕集部および第二捕集部を形成する基材をさらに有し、基材は、第一捕集部で触媒作用を示す触媒を担持し、第二捕集部では触媒を担持しないことを特徴とする。このように、触媒作用を示す触媒を基材上の第一捕集部でのみ担持し、第二捕集部では触媒を担持しない構成によれば、触媒作用の異なる第一捕集部および第二捕集部の形成は、さらに容易である。また請求項5に記載の発明では、粒子状物質センサは、第一捕集部および第二捕集部を形成する基材をさらに有し、基材は、第一捕集部で触媒作用を示す第一触媒を担持し、第二捕集部で第一触媒よりも触媒作用の弱い第二触媒を担持することを特徴とする。このように、基材上の第一捕集部および第二捕集部に、触媒作用の異なる第一触媒および第二触媒を担持させる構成によれば、触媒作用の異なる第一捕集部および第二捕集部を容易に形成できる。したがって、粒子状物質の捕集量を正しく反映した示差熱の検知に要する構成を、簡素化することができるのである。
【0013】
請求項3に記載の発明では、熱量算出手段は、触媒を担持しない第二捕集部に捕集される粒子状物質の酸化反応による示差熱を積算し、熱量を算出することを特徴とする。この発明によれば、触媒作用の無い第二捕集部における粒子状物質の酸化反応は、粒子状物質との接触性の違いによる影響を受け難い。故に、第二捕集部に捕集される粒子状物質の酸化反応による示差熱を積算した熱量の値は、第一捕集部に捕集される粒子状物質の酸化反応による示差熱を積算した熱量の値よりも、粒子状物質の捕集量を正確に示し得るのである。
【0014】
請求項5に記載の発明では、粒子状物質センサは、内燃機関からの排気ガスの流路である排気流路内に、第一捕集部および第二捕集部をともに排気ガスの流れ方向上流側を向けて、配置されることを特徴とする。この発明によれば、ともに排気ガスの流れ方向上流側を向けられた第一捕集部および第二捕集部は、粒子状物質の捕集を容易に行い得る。故に、含有する粒子状物質の濃度が薄い排気ガス中であっても、第一捕集部および第二捕集部には粒子状物質が捕集される。したがって、粒子状物質の検出を安定的に行う粒子状物質検出装置とすることができるのである。
【0015】
請求項6に記載の発明では、内燃機関の排気ガスの流路である排気流路内で粒子状物質を除去する粒子状物質除去装置の下流側に粒子状物質センサを配置し、粒子状物質の捕集量を検出することを特徴とする。上述したように、同一の雰囲気中に配置される第一捕集部および第二捕集部によれば、粒子状物質センサによる検知において、雰囲気温度に起因する誤差を抑制することができる。この検知誤差の抑制作用は、排気ガスの温度や粒子状物質の濃度に応じて雰囲気温度の激しく変動する粒子状物質除去装置の下流側に配置される粒子状物質センサにおいて、特に効果的に発揮されるものである。したがって、粒子状物質センサを粒子状物質除去装置の下流側に配置し、粒子状物質除去装置から流出する排気ガス中における粒子状物質の捕集量を検出する粒子状物質検出装置として、請求項6に記載の発明は特に好適なのである。
【0016】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の粒子状物質検出装置と、所定の故障判定捕集量を記憶し、粒子状物質検出装置の検出する捕集量が故障判定捕集量を超えると、粒子状物質除去装置の故障判定を行う故障判定手段と、を備えることを特徴とする状態判定装置とする。
【0017】
また請求項8に記載の発明では、内燃機関の排気ガスの流路である排気流路内で粒子状物質を除去する粒子状物質除去装置の上流側に粒子状物質センサを配置し、粒子状物質の捕集量を検出する請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置と、所定の再生判定捕集量を記憶し、粒子状物質検出装置の検出する捕集量の積算が再生判定捕集量を超えると、粒子状物質除去装置の再生の要判定を行う再生判定手段と、を備えることを特徴とする状態判定装置とする。 これらの発明によれば、状態判定装置は、粒子状物質除去装置から流出する排気ガスにおける粒子状物質の捕集量を正確に検出する粒子状物質検出装置の検出結果に基づいて、故障判定および再生の要判定を行うこととなる。故に、捕集量が記憶された故障判定捕集量を超えることで故障判定手段によって行われる故障判定、および捕集量が記憶された再生判定捕集量を超えることで再生判定手段によって行われる再生の要判定は、ともに高い正確性を備えることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態による粒子状物質検出装置を備える内燃機関の構成図である。
【図2】本発明の第一実施形態によるパティキュレートセンサの断面図である。
【図3】捕集された粒子状物質量と、発熱相当量との相関を説明するための図である。
【図4】パティキュレートセンサによって示差熱として検知されるDTAの出力を示す模式図である。
【図5】本発明の第二実施形態によるパティキュレートセンサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0020】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態による粒子状物質検出装置60が用いられた内燃機関10を図1に示す。内燃機関10は、過給機11、インタークーラ12、吸気マニホールド13、本体構造部14、インジェクタ15、排気マニホールド16、排気ガス浄化フィルタ30、尿素選択触媒還元(SCR;Selective Catalytic Reduction)システム17、排気再循環(EGR;Exhaust Gas Recirculation)システム18、粒子状物質検出装置60、および機関制御装置20等を組み合わせることによって構成されている。
【0021】
過給機11は、図示しないフィルタ等を通過した空気を加圧し、送り出す装置である。この過給機11は、コンプレッサ部11a、排気タービン部11b、およびこれらを収容するハウジング等によって構成されている。コンプレッサ部11aは、排気タービン部11bとシャフト等によって直結されており、排気タービン部11bの動力によって空気を吸入しつつ圧縮し、インタークーラ12側へと送り出す。
【0022】
インタークーラ12は、空冷式の熱交換器であって、過給機11内のコンプレッサ部11aの圧縮によって上昇した吸入空気の温度を低下させる。このインタークーラ12によって冷却され密度の上昇した吸入空気は、吸気マニホールド13側に送られる。吸気マニホールド13は、本体構造部14内に形成された各気筒の燃焼室へ吸入空気を均等に分配する。
【0023】
本体構造部14は、シリンダヘッド、シリンダブロック等によって構成されており、ピストンやクランクシャフト等の主運動系(図示しない)を収容している。第一実施形態の内燃機関10は、本体構造部14にシリンダが一方向に四つ並んでいる直列四気筒エンジンである。このシリンダの一部によって形成される燃焼室に向けて、インジェクタ15は、燃料(具体的には軽油)を高圧(2000気圧程度)で微粒化しつつ噴射する。噴射された燃料は、空気と接触しつつ燃焼し、排気ガスが生成されることとなる。この排気ガス中には、二酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)、未燃の酸素(O)の他、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、および固体炭素(C)を主成分とする粒子状物質(PM;Particulate Matter)が含まれている。尚、PMについてより詳しく説明すると、PMは、固体炭素(C)の周囲に可溶性の炭化水素(SOF;Soluble Organic Fraction)、硫酸塩(サルフェート)、金属アッシュ分等が付着したものである。
【0024】
排気マニホールド16は、本体構造部14内の燃焼室内で燃焼した排気ガスを集合させる流体経路である。この排気マニホールド16は、排気ガスの温度に対して充分な耐熱性を備える耐熱合金によって形成されている。排気マニホールド16は、過給機11の排気タービン部11b側と連通しており、排気タービン部11bへ排気ガスを供給する。排気タービン部11bは、排気ガスのエネルギによって回転し、動力を発生させる。この排気タービン部11bを通過した排気ガスは、排気ガス浄化フィルタ30側へ移動する。
【0025】
排気ガス浄化フィルタ30は、金属製の薄板材よりなるケーシング部材30a内に収容された、酸化触媒31および捕集器35等によって構成されている。酸化触媒31は、珪素を主材料とするコーディエライト又は炭化珪素を担体とし、排気ガスの流れ方向に沿って貫通する微小な孔が複数配列されたウォールフロー型の触媒器である。この酸化触媒31の担体は、触媒作用を発揮する物質として、例えば白金(Pt)等を担持している。捕集器35は、PMを捕集するためのDPF(Diesel Particulate Filter)であって、珪素を主材料とするコーディエライト又は炭化珪素によって形成され、排気ガスの流れ方向に沿った微小な孔を複数有している。この捕集器35に複数配列された孔は、上流側又は下流側のいずれか一方の開口が塞がれている。隣接する孔同士で、塞ぐ側を上流側と下流側とを互いに入れ替えて配列することによれば、排気ガスは孔の壁部を通過することとなる。故に、この壁部の通過に際して、他の物質と比較して大きいPMは捕集され、堆積するのである。そして、排気ガス浄化フィルタ30を通過した排気ガスは、排気管37を通過して下流側の尿素SCRシステム17側へ移動する。
【0026】
ここで、排気ガス浄化フィルタ30における、酸化触媒31の作用についてさらに説明する。酸化触媒31は、孔を通過する排気ガスに作用して、排気ガス中の一酸化窒素(NO)を、排気ガス中に含まれるOで酸化し、より酸化作用の強い二酸化窒素(NO)を生成する。そして捕集器35では、捕集および堆積したPMに、酸化触媒31によって生成されたNOを作用させ、PMを酸化させることでCOとNOに分解する。尚、以上のようにPMをCOに変化させ、捕集器35に堆積したPMを消滅させることを「再生」という。第一実施形態の排気ガス浄化フィルタ30は、捕集器35の上流側に配置された酸化触媒31によって、排気ガスの温度が充分に高い条件下では、当該捕集器35を連続再生することができる。
【0027】
尿素SCRシステム17は、排気ガス中のNOおよびNO等のNOxに作用し、窒素(N)とHOに還元する装置である。この尿素SCRシステム17は、SCR触媒17a、および図示しない尿素水タンク、尿素水インジェクタ、SCR制御装置を有している。尿素水タンクに蓄えられている尿素水は、SCR制御装置の指示に基づいて作動する尿素水インジェクタによって、SCR触媒17aの上流側に噴射される。排気ガス中に噴射された尿素水は、アンモニア(NH)へと変化し、SCR触媒17aに到達する。SCR触媒17aは、このNHで内部を通過する排気ガス中のNOxを還元する。尚、NOxを還元することなくSCR触媒17aを通過したNHの大気中への排出を防止するための酸化触媒を、SCR触媒17aの下流側に有する尿素SCRシステム17であってもよい。また、この尿素SCRシステム17は省略されていてもよい。
【0028】
EGRシステム18は、排気ガスの一部を吸気側に再循環させるための構成であって、EGR配管部18a、EGRクーラ18b、EGRバルブ18c等を有している。この排気ガスの再循環によれば、燃焼室内の燃焼温度が低下することとなり、NOxの生成を低減することができる。EGR配管部18aは、排気マニホールド16と吸気マニホールド13とを連通させる配管である。このEGR配管部18aの中間にEGRクーラ18bは設けられている。EGRクーラ18bは、水冷式の熱交換器であって、内燃機関10の冷却水によって高温の排気ガス温度を低下させることで、燃焼室への充填効率の低下防止と、吸入空気温度の低減を図る。EGRバルブ18cは、EGR配管部18aと吸気マニホールド13との連通および遮断を切り替える。このEGRバルブ18cの遮断によれば、過給機11の加圧によって吸気マニホールド13内の圧力がEGRシステム18内の圧力を上回る場合であっても、排気マニホールド16への排気ガスの逆流は防止される。
【0029】
粒子状物質検出装置60は、排気ガス浄化フィルタ30から流出する排気ガス中に含まれるPMの量を検出する装置である。この粒子状物質検出装置60は、パティキュレートセンサ50およびセンサ制御装置40を備えている。パティキュレートセンサ50は、一定の時間、排気ガス中のPMを捕集し、捕集量に応じた検知結果をセンサ制御装置40に供給する。センサ制御装置40は、例えばマイクロコンピュータを主体に構成されて、パティキュレートセンサ50を制御するとともに、当該センサ50の検知結果を取得する。センサ制御装置40は、検知結果に基づいて、パティキュレートセンサ50に捕集されたPMの捕集量を算出する。センサ制御装置40は、算出結果を検出情報として機関制御装置20に供給する。
【0030】
機関制御装置20は、マイクロコンピュータを主体に構成され、内燃機関10および車載された種々のセンサによって取得された情報に基づいて、各インジェクタ15による燃料の噴射時期および噴射量を制御する制御信号を出力している。加えて機関制御装置20は、粒子状物質検出装置60から取得した検出情報に基づいて排気ガス浄化フィルタ30の状態判定を行う状態判定手段を兼ねている。この状態判定とは、具体的には、排気ガス浄化フィルタ30の故障判定や再生の要否判定等である。故障判定を行った機関制御装置20は、車両に関する各種の情報を統轄する車両制御装置、および当該情報を運転者に報知するための表示装置(ともに図示しない)等と接続されている例えば車内LAN(Local Area Network)等の車載されたネットワーク上に、判定結果を配信する。
【0031】
また、再生の要判定を行った機関制御装置20の作動について、以下詳細に説明する。一般的に排気ガス浄化フィルタ30の酸化触媒31がCOを酸化させる作用を充分に発揮し得るには、摂氏250度程度を上回る雰囲気温度を要する。加えて、捕集器35に堆積したPMが排気ガス中の酸素によって酸化される自己燃焼温度は摂氏600度程度である。対して、ディーゼル機関である内燃機関10の排気ガスの温度は、当該機関10の通常稼動時において摂氏150〜200度程度である。以上によれば、排気ガス浄化フィルタ30の捕集器35には、内燃機関10の稼働に伴って、次第にPMが堆積してしまうこととなる。そして、多量に堆積したPMがいっせいに酸化を開始した場合、捕集器35を熱によって損傷させてしまうのである。
【0032】
そこで、粒子状物質検出装置60の検出結果に基づいて捕集器35へのPMの堆積量を演算し、予め定められた所定の捕集量を上回ったと推定した機関制御装置20は、燃焼室に噴射する燃料のうち、特に燃焼後半において噴射される燃料量(ポスト噴射量)を増加させる。燃焼の後半で噴射された燃料は、燃焼室内では完全に燃焼せず、排気マニホールド16および過給機11内で燃焼することで、排気ガス温度を摂氏600度を上回るまで上昇させる。この排気ガス温度の上昇によれば、酸化触媒31内でのNOの生成が活発化するとともに、捕集器35内でのPMのNOおよびOによる酸化も活発に行われ、堆積していたPMを消滅せしめ、再生を実現することができるのである。
【0033】
(特徴部分)
以下、本発明の第一実施形態による粒子状物質検出装置60の特徴部分について詳細に説明する。
【0034】
まずパティキュレートセンサ50の構成について図2に基づいて説明する。パティキュレートセンサ50は、基材56、第一捕集部51および第二捕集部53、触媒52、ヒータ57、熱電対58を有している。このパティキュレートセンサ50は、内燃機関10からの排気ガスの流路である排気管37内に、第一捕集部51および第二捕集部53をともに排気ガスの流れ方向FDexの上流側である排気ガス浄化フィルタ30側を向けて、配置されている(図1参照)。
【0035】
基材56は、排気ガスに対する充分な耐熱性と耐腐食性とを備える例えばセラッミクス等によって矩形板状に形成されている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、コーディエライト、又はこれらに添加物を添加した材料等が基材56の材料として好適である。第一捕集部51および第二捕集部53は、この基材56上に隣接して形成されることで、同一雰囲気中に配置される。第一捕集部51および第二捕集部53は、基材56の板厚方向に凹む穴部であって、排気ガス中に含まれるPMを捕集する。加えて第一捕集部51は、PMの酸化反応を促進する触媒作用を示す。この第一捕集部51の触媒作用は、基材56上の第一捕集部51に相当する穴部の表面に担持された触媒52によって獲得されている。この触媒52は、例えばゼオライトに、アルカリ金属元素源および/又はアルカリ土類金属元素源を混合した混合物である。この混合物は、一旦スラリー状にされて第一捕集部51に塗布された後、摂氏200度以上まで加熱することで担持される。また、基材56上の第二捕集部53に相当する穴部の表面には、触媒52は担持されていない。以上によって、第二捕集部53は第一捕集部51よりも触媒作用が弱い構成とされている。
【0036】
ヒータ57および熱電対58は、センサ制御装置40と電気的に接続されている。ヒータ57は、導電性の金属材料によって形成され、電流の印加によって発熱する。このヒータ57は、基材56内に設けられて、第一捕集部51および第二捕集部53と板厚方向に隣接している。ヒータ57は、これら捕集部51,53を同時に加熱し、昇温させる。熱電対58は、第一捕集部51および第二捕集部53と、ヒータ57との間に配置されており、各捕集部51,53の示差熱を検知する。熱電対58は、具体的にはアルメル線およびクロメル線等の異なる金属材料よりなる線材を組み合わせることにより構成されており、熱によって起電力を生じる。この熱電対58は、第一捕集部51および第二捕集部53の温度を正確に検知するため、各捕集部51,53との距離は可能な限り小さくなるよう配置されることが好ましい。
【0037】
次に図1および図2に基づいて、センサ制御装置40によるパティキュレートセンサ50の制御、および当該センサ50による検知情報の処理について説明する。
【0038】
センサ制御装置40は、機関制御装置20からの制御信号および電力の供給を受ける。センサ制御装置40は、制御信号に基づいてヒータ57に電流を印加し、加熱を開始することができる。またセンサ制御装置40は、熱電対58によって検知される示差熱を積算することで、第一捕集部51および第二捕集部53に捕集されたPMの酸化反応による熱量を算出することができる。さらに、センサ制御装置40には、酸化反応による発熱相当量に基づいて第一捕集部51および第二捕集部53に捕集されたPM量を算出するための相関情報(図3参照)が予め記憶されている。この相関情報は、事前の実験によって取得されたものであって、PMの酸化反応時に放出される熱量のうち第一捕集部51又は第二捕集部53によって検知される発熱相当量とPM量との間の比例関係を示すものである。センサ制御装置40は、この相関情報に基づいて、熱電対58の検知結果による熱量から、第一捕集部51又は第二捕集部53に捕集されたPMの捕集量を算出する。そしてセンサ制御装置40は、算出した捕集量を検出結果として機関制御装置20に出力するものである。
【0039】
次に、機関制御装置20による粒子状物質検出装置60の制御について説明する。この機関制御装置20は、粒子状物質検出装置60等とともに排気ガス浄化フィルタ30の状態判定を行う状態判定装置70を構成している。
【0040】
機関制御装置20には、所定の故障判定捕集値および再生判定捕集値が記憶されている。これら故障判定捕集値および再生判定捕集値は、内燃機関10が用いられる社会において、法規で定められたPMの排出ガス基準値に従うものである。具体的には、各排出ガス規制では、排出ガスを試験するための走行モード(日本であれば、例えばJC08+JC08Cモード法)が定められている。この走行モードで内燃機関10を稼動させた場合において、PMの排出ガス基準値を満たし得る排気ガス中に配置された第一捕集部51又は第二捕集部53に捕集されるPMの捕集量に基づいて、これら故障判定捕集値および再生判定捕集値は決定されていることが望ましい。
【0041】
≪故障判定≫
以上のパティキュレートセンサ50、センサ制御装置40、および機関制御装置20等よりなる状態判定装置70が、排気ガス浄化フィルタ30の故障判定を行うプロセスを、図1,図2および図4に基づいて以下説明する。
【0042】
内燃機関10の一定時間の稼動によれば、排気ガス中に配置されたパティキュレートセンサ50の第一捕集部51および第二捕集部53には、それぞれに同程度のPMが捕集された状態となる。この状態で機関制御装置20は、PMの捕集量の検出を実行する制御信号をセンサ制御装置40に供給する。センサ制御装置40は、機関制御装置20から供給される電力を用いてヒータ57に電流を印加することで、第一捕集部51および第二捕集部53を加熱させる。このヒータ57の加熱によって、熱電対58は第一捕集部51と第二捕集部53との示差熱を検知する。この熱電対58で検知されて、センサ制御装置40へ供給される示差熱分析(DTA;Differential Thermal Analysis)の出力を図4に示す。
【0043】
ヒータ57による加熱によって、第一捕集部51および第二捕集部53の温度はともに上昇する。すると、第一捕集部51が示す触媒作用によって、まず当該第一捕集部51に捕集されたPMが酸化反応を開始する。これによりDTAの出力には、上側に凸となる波形が現れる。第一捕集部51に捕集されたPMの酸化反応の開始後、さらに第一捕集部51および第二捕集部53の加熱が継続されると、PMの自己燃焼温度である摂氏600度を超えたところで、触媒作用を示さない第二捕集部53に捕集されたPMが酸化反応を開始する。これにより、DTAの出力には、下側に凸となる波形が現れる。以上のように、第一捕集部51および第二捕集部53の触媒作用の違いによれば、示差熱が生じることとなる。
【0044】
熱電対58によって検知された示差熱は、センサ制御装置40によって積算される。センサ制御装置40は、具体的には、DTAの出力から第二捕集部53によって捕集されたPMが酸化反応している間(図4、斜線部参照)の出力を積算する。この積算によってセンサ制御装置40は、第二捕集部53に捕集されたPMが酸化反応時の発熱による熱量を算出する。そしてセンサ制御装置40は、記憶している相関情報に基づいて、算出した熱量から第二捕集部53に捕集されていたPMの捕集量を算出する。
【0045】
機関制御装置20は、センサ制御装置40によって検出されたPMの捕集量を取得して、当該捕集量と記憶しているPMの故障判定捕集量とを比較する。機関制御装置20は、捕集量が故障判定捕集量を超えている場合、排気ガス浄化フィルタ30が異常な状態であると推定し、当該フィルタ30の故障判定を行う。この故障判定は、機関制御装置20によって車内LAN上に配信され、車両制御装置および表示装置(ともに図示しない)等によって取得されることで運転者等に報知される。
【0046】
≪再生判定≫
次に、パティキュレートセンサ50と実質的に同一のパティキュレートセンサ(図示しない)を用いて、センサ制御装置40、および機関制御装置20等よりなる状態判定装置が、排気ガス浄化フィルタ30の再生の要判定を行うプロセスを以下説明する。この図示しないパティクレートセンサは、パティキュレートセンサ50と異なり、排気ガス浄化フィルタ30の上流側に配置されている。
【0047】
機関制御装置20は、センサ制御装置40から取得した第二捕集部53でのPMの捕集量を積算する。機関制御装置20は、積算したPMの捕集量が記憶している再生判定捕集量を超えた場合、排気ガス浄化フィルタ30に再生を要するだけのPMが堆積しているとみなし、再生の要判定を行う。この再生の要判定を行った機関制御装置20は、インジェクタ15への噴射信号を変更し、ポスト噴射量を増加することで排気ガス浄化フィルタ30の再生を開始させる。
【0048】
以上の説明したように第一実施形態では、第一捕集部51および第二捕集部53が同じ温度条件の排気ガス中に配置されることで、各捕集部51,53周囲の雰囲気温度に起因した示差熱の検知誤差を抑制し得る。加えて、第一捕集部51および第二捕集部53それぞれの触媒作用の強さを変えることで、同一雰囲気中であっても、PMの捕集量を正しく反映した示差熱の検知が実現する。したがって、粒子状物質検出装置60は、正確なPMの捕集量の検出を実現することができるのである。
【0049】
加えて第一実施形態では、触媒作用を示さない第二捕集部53におけるPMの酸化反応は、粒子状物質との接触性の違いによる影響を受け難く、摂氏600度に近い温度で開始される。故に、第二捕集部53に捕集されるPMの酸化反応による示差熱を積算した熱量の値は、第一捕集部51に捕集される粒子状物質の酸化反応による示差熱を積算した熱量の値よりも、PMの捕集量を正確に示し得るのである。したがって、第二捕集部53に捕集されるPMの捕集量を算出する粒子状物質検出装置60は、さらに正確な捕集量の検出を実現し得るのである。
【0050】
また第一実施形態では、触媒作用を示す触媒52を基材56上の第一捕集部51でのみ担持する構成によれば、触媒作用の異なる第一捕集部51および第二捕集部53の形成はさらに容易となる。したがって、PMの捕集量を正しく反映した示差熱の検知に要する構成を、簡素化することができるのである。
【0051】
さらに第一実施形態では、ともに排気ガスの流れ方向FDex上流側を向けられた第一捕集部51および第二捕集部53は、PMの捕集を容易に行い得る。故に、含有するPMの濃度が低い排気ガス中であっても、第一捕集部51および第二捕集部53にはPMが確実に捕集されることとなる。したがって、PMの検出を安定的に行い得る粒子状物質検出装置60とすることができるのである。
【0052】
また加えて第一実施形態では、同一の雰囲気中に配置される第一捕集部51および第二捕集部53により、パティキュレートセンサ50による検知における雰囲気温度に起因した誤差を抑制することができる。この検知誤差の抑制作用は、排気ガスの温度やPMの濃度に応じて雰囲気温度の激しく変動する排気ガス浄化フィルタ30の下流側に配置されるパティキュレートセンサ50において、特に効果的に発揮されるものである。したがって、パティキュレートセンサ50を排気ガス浄化フィルタ30の下流側に配置し、排気ガス浄化フィルタ30から流出する排気ガス中におけるPMの捕集量を検出する粒子状物質検出装置60として、本発明は特に好適なのである。
【0053】
またさらに第一実施形態では、正確なPMの捕集量の検出を実現する粒子状物質検出装置60を用いることで、排気ガス浄化フィルタ30の故障の有無、および当該フィルタ30に堆積しているPM量を精度良く推測することができる。故に、故障判定および再生の要判定は、ともに高い正確性を備えることができる。特に、再生の要判定を精度良く行うことによれば、過剰な再生の実施を抑えることができるとともに、堆積したPMの自己燃焼による捕集器35の損傷を未然に防ぐことができるのである。
【0054】
尚、第一実施形態では、排気ガス浄化フィルタ30が請求項に記載の「粒子状物質センサ」に、ヒータ57が請求項に記載の「加熱部」に、熱電対58が請求項に記載の「示差熱検知部」に、センサ制御装置40が請求項に記載の「熱量算出手段」および「捕集量算出手段」に、排気管37が請求項に記載の「排気流路」に、排気ガス浄化フィルタ30が請求項に記載の「粒子状物質除去装置」に、機関制御装置20が請求項に記載の「故障判定手段」および「再生判定手段」に、それぞれ相当する。
【0055】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。この第二実施形態によるパティキュレートセンサ250を図5に示す。パティキュレートセンサ250は、基材256、第一捕集部251および第二捕集部253、第一触媒252、第二触媒254、ならびにパティキュレートセンサ50と同様のヒータ57および熱電対58を有している。
【0056】
基材256は、基材56と同様に排気ガスに対する充分な耐熱性と耐腐食性とを備えるセラッミクス等によって形成されている。第一捕集部251および第二捕集部253は、基材256上に隣接して配置されており、排気ガス中に含まれるPMを捕集する。これら第一捕集部251および第二捕集部253は、互いの面積が等しくなるよう形成されており、それぞれ第一触媒252および第二触媒254を担持している。これら第一触媒252および第二触媒254は、触媒52と同様に、例えばゼオライトに、アルカリ金属元素源および/又はアルカリ土類金属元素源を混合した混合物によってなる。第一触媒252および第二触媒254は、一旦スラリー状にした後、第一捕集部251および第二捕集部253にそれぞれ塗布され、摂氏200度以上まで加熱することで担持される。ここで、第一触媒252および第二触媒254は、上述した混合の配分を変更する等の手法によって、それぞれの触媒作用の強さが異なっている。尚、第一触媒252および第二触媒254として異なる触媒物質を用いることで、第一捕集部251および第二捕集部253に異なる強さの触媒作用が付与されていてもよい。以上によれば、第二実施形態のパティキュレートセンサ250においても、第二捕集部253は第一捕集部251よりも触媒作用が弱い構成となっている。
【0057】
以上の構成によるパティキュレートセンサ250は、図1および図5に示すように、センサ制御装置40によるヒータ57への電流の印加によって、第一捕集部251および第二捕集部253を加熱する。このヒータ57の加熱によれば、第一捕集部251および第二捕集部253に捕集されたPMが順次酸化反応を生じる。これにより、熱電対58は第一捕集部251と第二捕集部253との示差熱を検知することとなる(DTAの出力は図4参照)。
【0058】
センサ制御装置40は、パティキュレートセンサ250の出力のうち、特に第二捕集部253によって捕集されたPMが酸化反応している間(図4、斜線部参照)の出力を積算する。この積算によってセンサ制御装置40は、第二捕集部253に捕集されたPMの酸化反応による発熱相当量を算出する。そしてセンサ制御装置40は、記憶している相関情報(図3参照)に基づいて、算出した熱量から第二捕集部253に捕集されていたPMの捕集量を算出するのである。
【0059】
以上の説明した第二実施形態においても、第一捕集部251および第二捕集部253が同じ温度条件の排気ガス中に配置されることで、各捕集部251,253周囲の雰囲気温度に起因した示差熱の検知誤差を抑制し得る。加えて、第一捕集部51および第二捕集部53それぞれに担持される第一触媒252および第二触媒254の触媒作用の強さを変えることで、同一雰囲気中であっても、PMの捕集量を正しく反映した示差熱の検知が実現する。以上によれば、第一捕集部251および第二捕集部253がともに触媒作用を示す形態であっても、正確なPMの捕集量の検出を実現することができるのである。
【0060】
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0061】
上記実施形態においては、粒子状物質検出装置60は、第二捕集部53,253に捕集されたPMの酸化反応による熱量を積算することにより、当該PMの捕集量を算出していた。しかし、粒子状物質検出装置60は、第一捕集部51,251に捕集されたPMの酸化反応による熱量を積算することにより、当該PMの捕集量を算出してもよい。又は、第一捕集部51,251および第二捕集部53,253に捕集されたPMの酸化反応による熱量をともに積算し、これらの値の平均を当該PMの捕集量として算出する粒子状物質検出装置60であってもよい。
【0062】
上記実施形態においては、パティキュレートセンサ50,250の熱電対58によるDTA出力は、第一捕集部51,251に捕集されたPMの酸化によって上側に凸の波形を示し、第二捕集部53,253に捕集されたPMの酸化によって下側に凸の波形を示した。しかし、熱電対58と粒子状物質検出装置60との接続の変更によれば、第一捕集部に捕集されたPMの酸化反応に際して下側に凸の波形を示し、第二捕集部に捕集されたPMの酸化反応に際して上側に凸の波形を示すDTAの出力が当該装置60へ供給される構成を実現し得る。この構成においても、第二捕集部53,253に捕集されたPMが酸化反応をしている間である上側に凸の区間の出力を積算することによれば、より正確な捕集量の検出を実現し得るのである。
【0063】
上記実施形態においては、第一捕集部51,251および第二捕集部53,253は、ともに共通の基材56,256上に形成されていた。しかし、ヒータ57による加熱と熱電対58による検知とがともに可能であれば、第一捕集部および第二捕集部はそれぞれ別の基材に設けられていてもよい。また、第一捕集部51,251および第二捕集部253は、それぞれ触媒作用を示す触媒物質を担持する構成であったが、例えば、触媒物質によって第一捕集部および第二捕集部が形成されていてもよい。さらに第一捕集部および第二捕集部は、PMの捕集が可能であれば、その形状を限定するものではなく、例えば板厚方向に沿って外側に突出する形状であってもよい。また加えて、上述した触媒物質以外であっても、PMの酸化反応を促進する触媒作用を示す物質であれば、触媒52、第一触媒252、第二触媒254として適宜用いることができる。
【0064】
上記実施形態においては、パティキュレートセンサ50,250は、ともに第一捕集部51,251および第二捕集部53,253を排気ガスの流れ方向FDex上流側を向けて配置されていた。しかし、排気流路内へのパティキュレートセンサの配置の方向を限定するものではない。但し、第一捕集部および第二捕集部のPMの捕集量が同程度となるようパティキュレートセンサは配置されることが望ましい。
【0065】
上記実施形態においては、機関制御装置20は、センサ制御装置40によって検出されたPMの捕集量と故障判定捕集量とを比較して、排気ガス浄化フィルタ30の異常を判定していた。しかし、センサ制御装置40によるPMの捕集量を複数回分保持し、当該捕集量が連続して故障判定捕集量を超えた場合に排気ガス浄化フィルタ30の故障判定を行うよう機関制御装置を設定し、当該フィルタ30の異常判定の精度を向上させてもよい。
【0066】
以上、ディーゼル機関である内燃機関10の排気ガス浄化フィルタ30の下流側に配置されるパティキュレートセンサ50,250を備え、当該フィルタ30の状態を判定する状態判定装置70に用いられる粒子状物質検出装置60に本発明を適用した例を説明した。しかし、パティキュレートセンサの配置される位置は、排気ガス浄化フィルタ30の下流側に限定するものではなく、また粒子状物質検出装置60の用途も当該フィルタ30の状態判定に限定しない。例えば、排気ガス浄化フィルタ30の上流側に配置されたパティキュレートセンサを備え、当該フィルタ30へ流入するPM量を検出する粒子状物質検出装置として本発明を用いてもよい。また、本発明は、ディーゼル機関に限らず、PMの排出基準値が規制される内燃機関、具体的には、ガソリンを燃焼室内に直接的に噴射するオットーサイクル機関等に用いられ、排気ガス中のPMを検出する粒子状物質検出装置に適用されてもよい。さらには、燃料を燃焼させる外燃機関等からの排気ガスに含まれるPMを検出する粒子状物質検出装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 内燃機関、11 過給機、11a コンプレッサ部、11b 排気タービン部、12 インタークーラ、13 吸気マニホールド、14 本体構造部、15 インジェクタ、16 排気マニホールド、17 尿素SCRシステム、17a SCR触媒、18 EGRシステム、18a EGR配管部、18b EGRクーラ、18c EGRバルブ、20 機関制御装置(故障判定手段,再生判定手段)、30 排気ガス浄化フィルタ(粒子状物質除去装置)、30a ケーシング部材、31 酸化触媒、35 捕集器、37 排気管(排気流路)、40 センサ制御装置(熱量算出手段,捕集量算出手段)、50,250 パティキュレートセンサ(粒子状物質センサ)、51,251 第一捕集部、52 触媒、252 第一触媒、53,253 第二捕集部、254 第二触媒、56,256 基材、57 ヒータ(加熱部)、58 熱電対(示差熱検知部)、60 粒子状物質検出装置、70 状態判定装置、FDex 流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスに含まれる粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、
前記粒子状物質を捕集する第一捕集部および第二捕集部であって、前記粒子状物質の酸化反応を促進する触媒作用を示す第一捕集部および前記第一捕集部よりも前記触媒作用の弱い第二捕集部、前記第一捕集部および前記第二捕集部を加熱する加熱部、ならびに前記第一捕集部および前記第二捕集部の示差熱を検知する示差熱検知部を有し、前記排気ガス中に配置される粒子状物質センサと、
前記粒子状物質センサによって検知される示差熱を積算し、前記第一捕集部および前記第二捕集部で捕集された前記粒子状物質の酸化反応による熱量を算出する熱量算出手段と、
前記熱量と捕集量との相関情報を予め記憶し、前記熱量算出手段によって算出される前記熱量から、前記相関情報に基づいて前記第一捕集部および前記第二捕集部に捕集される前記粒子状物質の前記捕集量を算出する捕集量算出手段と、を備えることを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記粒子状物質センサは、前記第一捕集部および前記第二捕集部を形成する基材をさらに有し、
前記基材は、前記第一捕集部で前記触媒作用を示す触媒を担持し、前記第二捕集部では前記触媒を担持しないことを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記熱量算出手段は、前記第二捕集部に捕集される前記粒子状物質の酸化反応による示差熱を積算し、前記熱量を算出することを特徴とする請求項2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記粒子状物質センサは、前記第一捕集部および前記第二捕集部を形成する基材をさらに有し、
前記基材は、前記第一捕集部で前記触媒作用を示す第一触媒を担持し、前記第二捕集部で前記第一触媒よりも前記触媒作用の弱い第二触媒を担持することを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記粒子状物質センサは、前記内燃機関からの前記排気ガスの流路である排気流路内に、前記第一捕集部および前記第二捕集部をともに前記排気ガスの流れ方向上流側を向けて、配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記内燃機関の前記排気ガスの流路である排気流路内で前記粒子状物質を除去する粒子状物質除去装置の下流側に前記粒子状物質センサを配置し、前記粒子状物質の捕集量を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の粒子状物質検出装置と、
所定の故障判定捕集量を記憶し、前記粒子状物質検出装置の検出する前記捕集量が前記故障判定捕集量を超えると、前記粒子状物質除去装置の故障判定を行う故障判定手段と、を備えることを特徴とする状態判定装置。
【請求項8】
前記内燃機関の前記排気ガスの流路である排気流路内で前記粒子状物質を除去する粒子状物質除去装置の上流側に前記粒子状物質センサを配置し、前記粒子状物質の捕集量を検出する請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置と、
所定の再生判定捕集量を記憶し、前記粒子状物質検出装置の検出する前記捕集量の積算が前記再生判定捕集量を超えると、前記粒子状物質除去装置の再生の要判定を行う再生判定手段と、を備えることを特徴とする状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−285917(P2010−285917A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139424(P2009−139424)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】