説明

粒子状物質検出装置

【課題】小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】一方の端部1aに一の貫通孔2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極11,12とを備え、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の電極11,12に電圧を印加することにより貫通孔2内に生じる放電により荷電された、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能な粒子状物質検出装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置に関し、さらに詳しくは、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものになるという問題があった。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることができないため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の粒子状物質検出装置を提供するものである。
【0007】
[1] 一方の端部に一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、前記貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極とを備え、前記貫通孔内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、前記一対の電極に電圧を印加することにより前記貫通孔内に生じる放電により荷電された、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を、前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【0008】
[2] 前記検出装置本体の他方の端部に、前記一対の電極のなかの少なくとも一方の電極の取り出し端子が配設された[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0009】
[3] 前記検出装置本体の他方の端部に、前記一対の電極のなかの一方の電極の取り出し端子が配設され、前記検出装置本体の一方の端部と他方の端部との間の位置に、前記一対の電極のなかの他方の電極の取り出し端子が配設された[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0010】
[4] 前記貫通孔の壁面に沿うようにして検出装置本体の内部に配設された、前記貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調用の加熱部を更に備え、前記検出装置本体の他方の端部に、前記加熱部の取り出し端子が配設された[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0011】
[5] 前記一対の電極のなかの少なくとも一方の電極の、前記貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の前記加熱部が配設された[4]に記載の粒子状物質検出装置。
【0012】
[6] 前記一対の電極のそれぞれの、前記貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の前記加熱部が配設された[5]に記載の粒子状物質検出装置。
【0013】
[7] 前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面において、前記一対の電極の一方の端部同士を結んだ線分と他方の端部同士を結んだ線分とが、いずれも貫通孔内を通過するように、前記一対の電極が前記検出装置本体内に埋設された[1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0014】
[8] 前記貫通孔の、前記流体が流入する入口部分及び前記流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されている[1]〜[7]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[9] 前記検出装置本体の中心軸に直交する断面形状が、貫通孔の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状である[1]〜[8]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0016】
[10] 前記貫通孔の壁面に吸着した粒子状物質を、前記一対の電極に電圧を印加して前記貫通孔内に放電を起こして酸化除去することが可能な[1]〜[9]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0017】
[11] 前記貫通孔内に起きる放電が、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群から選択される一種である[1]〜[10]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0018】
[12] 前記誘電体が、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一種である[1]〜[11]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粒子状物質検出装置によれば、貫通孔を形成する検出装置本体の壁の内部に少なくとも一対の電極が埋設され、その一対の電極に電圧を印加して貫通孔内に放電を起こし、その放電により貫通孔内に存在する粒子状物質を荷電することができ、その荷電した粒子状物質を電極(貫通孔の壁面)に電気的に吸着させることが可能であり、また、荷電された粒子状物質が、貫通孔内に流入する流体に含有される場合には、その荷電された粒子状物質を電極(貫通孔の壁面)に電気的に吸着させることが可能である。そのため、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガスのみについてその粒子状物質の質量を測定することが可能となり、これにより、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質だけを測定することにより排ガス全体の粒子状物質量を推算することができる。そのため、粒子状物質検出装置を小型化することが可能となり、それにより、狭いスペースに設置することが可能となり、更に安価に製造することが可能となる。また、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(粒子状物質)の一部だけを貫通孔内に導入するため、貫通孔内に放電を起こす場合、貫通孔内の粒子状物質を全て効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることが可能となる。また、検出装置本体が一方向に長く形成され、その一方の端部に、貫通孔が形成されるとともに、少なくとも一対の電極が配設(埋設)されるため、貫通孔及び一対の電極の部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、一対の電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
図1Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図であり、図1Bは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す側面図であり、図2は、図1BのA−A’断面を示す模式図である。尚、図1Aにおいては、取り出し端子(取り出し端子12a等)は省略している。本実施形態の粒子状物質検出装置100は、図1A、図1B及び図2に示すように、一方の端部1aに一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する壁の内部に配設(埋設)され、誘電体で覆われた一対の電極11,12とを備えるものである。ここで、一対の電極は少なくとも一対備えることが必要であり、2対以上であってもよい。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、一対の電極11,12が検出装置本体1の内部に埋設されており、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の電極11,12がそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。そして、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の電極11,12に電圧を印加することにより貫通孔2内に生じる放電により荷電された、貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、荷電した粒子状物質を貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能なものである。貫通孔2内に流入する流体に含有されている粒子状物質が荷電されていない場合には、貫通孔2内に放電を起こして流入した粒子状物質を荷電させて、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させるが、貫通孔2内に流入する流体に含有されている粒子状物質が既に荷電されている場合には、放電により荷電させる必要がないため、そのまま、その「貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質」を貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能である。ここで、「粒子状物質が荷電されていない」というときは、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質の一部が荷電され、残部が荷電されていない場合や、粒子状物質は荷電されているが、荷電の程度が貫通孔2の壁面に粒子状物質が確実に電気的に吸着されるのに十分でない場合を含む。更に、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより、貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能である。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。
【0022】
これにより、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガスのみについてその粒子状物質の質量を測定することが可能となり、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質だけを測定することにより排ガス全体の粒子状物質量を推算することができるので、粒子状物質検出装置を小型化することが可能となり、それにより、狭いスペースに設置することが可能となり、更に安価に製造することが可能となる。また、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(粒子状物質)の一部だけを貫通孔内に導入するため、貫通孔内に放電を起こして貫通孔内の粒子状物質を荷電する場合、貫通孔内の粒子状物質を全て効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることが可能となる。また、検出装置本体が一方向に長く形成され、その一方の端部に、貫通孔が形成されるとともに、少なくとも一対の電極が配設(埋設)されるため、貫通孔及び一対の電極が配設される部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、一対の電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0023】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、検出装置本体1の他方の端部1bに、一対の電極11,12のなかの少なくとも一方の電極の取り出し端子が配設されていることが好ましい。取り出し端子は、粒子状物質検出装置100の検出装置本体1に配設された電極に電気的に接続され、外部からその電極に電圧を印加するための電源等からの配線を接続する部分である。粒子状物質検出装置100は、一対の電極11,12、加熱部13等に、それぞれ独立して接続された複数の取り出し端子(取り出し端子11a,12a,13a)を有している。図1Bに示す本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、電極12の取り出し端子12aが、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されている。このように、一対の電極11,12のなかの少なくとも一方の電極の取り出し端子を、検出装置本体1の他方の端部1bに配設することにより、貫通孔及び一対の電極が配設される部分(一方の端部1a)と取り出し端子との間隔を大きくとることができるため、貫通孔等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、取り出し端子12aが配設されている他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。取り出し端子12aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になることがあるため、取り出し端子12aを配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0024】
検出装置本体1の他方の端部1bに配設された取り出し端子12aは、図1Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。取り出し端子12aを配設する面は、検出装置本体1の他方の端部1bの側面である必要はなく、いずれの面であってもよい。また、取り出し端子12aは、検出装置本体1の他方の端部1bにおける側面の、幅方向における一方の端部に配置されていることが好ましい。また、図1bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取り出し端子12aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取り出し端子12aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0025】
一対の電極11,12の両方の取り出し端子を、検出装置本体1の他方の端部1bに配設してもよいが、一方の電極(電極12)の取り出し端子(取り出し端子12a)を検出装置本体1の他方の端部1bに配設し、他方の電極(電極11)の取り出し端子(取り出し端子11a)を、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、一方の電極(電極12)の取り出し端子(取り出し端子12a)と、他方の電極(電極11)の取り出し端子(取り出し端子11a)とを、間隔を開けて配設することになり、それにより、一対の電極11,12間に電圧を印加するために、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電による短絡が生じることを防止することができる。ここで、本実施形態において、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。従って、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がしやすくなることがあり、100mmより長いと、取り出し端子11aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100の検出装置本体1を配管等に装着したときに、検出装置本体1の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0026】
また、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設した取り出し端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mmより長いことが好ましく、20mmより長いことが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100を、貫通孔2の部分が配管内に挿入されるように、配管に装着したときに、配管内を流通する高温の排ガスの熱が取り出し端子11aに影響を及ぼしやすくなることがある。
【0027】
取り出し端子11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。取り出し端子11aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0028】
粒子状物質の質量を検出する方法としては、荷電した粒子状物質が電極に吸着されることによる、一対の電極11,12の電気的な特性変化を測定することが挙げられる。具体的には、例えば、一対の電極11,12間の静電容量等から計算されるインピーダンスを測定し、インピーダンスの変化から吸着された粒子状物質の質量を算出し、排ガス中の粒子状物質(質量)を検出する方法を挙げることができる。従って、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、取り出し端子11a,12aに接続された、電極11,12間のインピーダンスを測定する測定部を更に備えることが好ましい。測定部としては、静電容量だけでなく、インピーダンス計測可能なLCRメーターやインピーダンスアナライザ等を挙げることができる。
【0029】
本実施形態の粒子状物質検出装置100において、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排ガス配管に挿入した時に排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。例えば、50〜200mm程度が好ましい。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、上記長手方向の一方の端部1aに貫通孔2が形成されている。また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さは、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。検出装置本体1の形状は、図1A及び図1Bに示すように、長手方向に直行する断面形状が長方形の板状であってもよいし、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよいし、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。検出装置本体1の材質は、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。そして、耐熱衝撃性に優れるため、コージェライトが更に好ましい。これらの材質はいずれも誘電体であるため、電極11,12を検出装置本体1の内部に埋設することにより、誘電体に覆われた電極11,12を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置100が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、本実施形態において、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2を形成する壁の内部に一対の電極11,12が埋設されており、貫通孔2を挟むようにして誘電体で覆われた電極11,12が配置された状態になっている。これにより、電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に放電を起こすことが可能となる。尚、電極としては、少なくとも一対配設されていることが必要である。また、電極は、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設されていればよく、図2に示すように貫通孔2を挟むように配設されていることが好ましいが、壁の電気的特性を検知でき、貫通孔2内に放電を起こせれば、貫通孔2を取り囲む壁のどの位置に一対の電極が配設されてもよい。また、複数対の電極を配設し、異なる対の電極により、放電と電気的特性の検知とを別々に行ってもよい。放電の種類としては、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群から選択される一種であることが好ましい。このような放電を生じさせるため、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、取り出し端子11a,12aに接続された、放電用の電源を更に備えることが好ましい。放電用の電源としては、高電圧の交流電源、直流電源等が好ましい。また、放電させるために印加する電圧としては、パルス電圧、矩形波等交流電圧が好ましい。また、印加する電圧の条件としては、ギャップ、ガス温度によって変わるが200kV/cm以下が好ましい。また、電圧を印加するときの、電力は、0.1〜10Wが好ましい。
【0031】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質が荷電されていない場合に、貫通孔2内に放電を起こすことにより、粒子状物質を荷電して、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させるものである。そして、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内の放電により改めて荷電させる必要がないため、貫通孔2内に放電を起こすことなく、貫通孔2の壁面にその荷電されている粒子状物質を電気的に吸着させるものである。貫通孔2内に放電を起こして粒子状物質を荷電させる場合には、荷電した粒子状物質は、放電中に、その荷電した粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられ、壁面に吸着される。これに対し、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合には、電極11,12間に、所定の条件の電圧を印加し、荷電している粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられるようにする。ここで、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合に、電極11,12間に印加する電圧の条件は、4kV/cm〜40kV/cmであることが好ましい。
【0032】
電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0033】
電極11,12の厚さは特に限定されず、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、5〜30μmであることが好ましい。電極11,12の材質としては、Pt、Mo、W等を挙げることができる。
【0034】
一対の電極のなかの一方の電極(電極11)と貫通孔2との間の距離、及び他方の電極(電極12)と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に放電を生じさせることができる。電極11及び電極12と、貫通孔2との間の距離は、電極11を覆う誘電体及び電極12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0035】
また、図3に示すように、貫通孔2の貫通方向に垂直な断面において、一対の電極11,12の一方の端部11c,12c同士を結んだ線分aと、他方の端部11d,12d同士を結んだ線分bとが、いずれも貫通孔2内を通過するように、一対の電極11,12が検出装置本体1内に埋設されていることが好ましい。ここで、図3は、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置200)を示し、図2に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態の断面を示す模式図に相当する、模式図である。図3において、上記本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態(粒子状物質検出装置100)における構成要素と、共通の構成要素については同一の符号を付している。また、「一対の電極11,12の一方の端部11c,12c同士を結んだ線分a」というときは、一対の電極11,12のそれぞれの、検出装置本体1の一方の端部1a側に位置する端部11c,12c同士を結んだ線分を意味し、「一対の電極11,12の他方の端部11d,12d同士を結んだ線分b」というときは、一対の電極11,12のそれぞれの、検出装置本体1の他方の端部1b側に位置する端部11d,12d同士を結んだ線分を意味する。また、「線分a及び線分bが貫通孔2内を通過する」という場合、線分aが貫通孔2の壁面部分と重なる場合、及び線分bが貫通孔2の壁面部分と重なる場合を含む。そして、線分a,bがともに、貫通孔2の壁面部分と重なる場合が更に好ましい。この場合、電極11及び電極12が、側面から見たときに、貫通孔2に、全体的に重なっている状態となる。例えば、図2に示す本実施形態の粒子状物質検出装置100は、電極11及び電極12が、側面から見たときに、貫通孔2に、全体的に重なっている状態にある。ここで、「側面から見たとき」とは、「「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向から、粒子状物質検出装置100の内部を透視して、電極11,12及び貫通孔を見たとき」ということを意味する。このように、一対の電極11,12の一方の端部11c,12c同士を結んだ線分aと、他方の端部11d,12d同士を結んだ線分bとが、いずれも貫通孔2内を通過するように、一対の電極11,12を検出装置本体1の内部に配置したことにより、一対の電極11,12間に電圧を印加したときに生じる電界のほとんどが、貫通孔2内を通過するため、貫通孔2内に粒子状物質が付着することによる電気的特性の変化を感度良く検出することが可能となる。仮に、一対の電極11,12により挟まれる領域において、誘電体のみが一対の電極11,12に挟まれ、一対の電極11,12間に生じる電界が誘電体のみを通過する部分があった場合には、一対の電極11,12間の電気的特性を測定しようとすると、一対の電極11,12に挟まれた貫通孔2の部分の電気的特性と、一対の電極11,12に挟まれた誘電体部分の電気的特性を合わせて測定することになる。そうすると、測定しようとするインピーダンス等の電気的特性が、通常、貫通孔2内よりも誘電体部分のほうが大きいため、誘電体部分を測定した電気的特性の値が大きくなりすぎ、貫通孔2内の粒子状物質の付着による電気的特性の変化を感度良く検出することが難しくなることがある。
【0036】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、図4に示すように、電極11には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線11bが接続されて居り、配線11bが、その先端(電極11に接続されていない側の先端)部分で、図1Bに示す取り出し端子11aに層間接続(ビア接続)されている。また、図5に示すように、検出装置本体1の一方の端部1aに貫通孔2が形成されている。ここで、図4は、図2のB−B’断面を示す模式図であり、図5は、図2のC−C’断面を示す模式図である。
【0037】
また、図6に示すように、電極12には検出装置本体1の長手方向に延びる配線12bが接続され、配線12bは、図1Bに示す取り出し端子12aに層間接続されている。ここで、図6は、図2のD−D’断面を示す模式図である。
【0038】
配線11b及び配線12bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線11b及び配線12bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線11b及び配線12bの材質としては、Pt、MO、W等を挙げることができる。
【0039】
図2及び図7に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を更に備えることが好ましい。加熱部13により、電極に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができ、また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。加熱部13は、幅広のフィルム状であってもよいが、図7に示すように、線状の金属材料を、波状に配置し、先端部分でU−ターンするように配置したものであることが好ましい。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱することが可能となる。加熱部13の材質としては、Pt、Mo、W等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されることが好ましいが、図5に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子の破損が起きにくい利点がある。加熱部13により、貫通孔2の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
【0040】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、一対の電極11,12のなかの少なくとも一方の電極の、貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の加熱部13が配設されていることが好ましい。図2に示す本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、電極12の貫通孔2が形成されている側に対して反対側の位置に、加熱部13が配設されている。このように、加熱部13が、一対の電極11,12のなかの少なくとも一方の電極の、貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に配設されていることにより、加熱部13の導体の電気的な影響を受けることなく、一対の電極11,12により、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定しやすくなる。図2においては、加熱部13は一つであるが、電極12の貫通孔2が配設されている側に対して反対側の位置に複数配設されてもよい。また、図2においては、一対の電極のなかの一方の電極(電極12)の、貫通孔2が配設されている側に対して反対側の位置に加熱部13が配設されているが、一対の電極11,12のそれぞれの(両方の)、貫通孔2が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の加熱部13が配設されることも好ましい。加熱部13の配置及び数は、温度調節、捕集した粒子状物質の酸化除去等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
【0041】
図7に示すように、加熱部13は、配線13b,13bに接続され、配線13b,13bは、それぞれ図1Bに示す取り出し端子13a,13aに層間接続されている。加熱部13の取り出し端子13aも、電極11,12の取り出し端子11a,12aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図1Bにおいては、取り出し端子12aが、検出装置本体1の側面においてその幅方向における一方の端縁に配置され、取り出し端子13a,13aが、取り出し端子12aの横に、2本が並ぶように配置されているが、取り出し端子12a及び取り出し端子13a,13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0042】
加熱部13が線状である場合、その線の幅は、特に限定されず、例えば、0.05〜1mm程度が好ましい。また、加熱部13の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。配線13bの幅は、特に限定されず、例えば、0.7〜4mm程度が好ましい。また、配線13bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。加熱部13に対応する取り出し端子13aの幅は、特に限定されず、例えば、0.1〜2mm程度が好ましい。また、取り出し端子13aの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜1000μm程度が好ましい。配線13b及び取り出し端子13aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0043】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、電極に吸着された粒子状物質を、一対の電極11,12に電圧を印加して貫通孔2内に放電を起こして、酸化除去することができるものであることが好ましい。粒子状物質を酸化除去する場合の放電を生じさせる条件としては、電界強度が10〜200kV/cmであり、エネルギー投入量が、被処理物質に対して0.05〜10J/μgであることが好ましい。
【0044】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、加熱部13の取り出し端子13aに接続された、加熱用電源を更に備えることが好ましい。加熱用電源としては、定電流電源等を挙げることができる。
【0045】
本実施形態の粒子状物質検出装置100において、貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。このような範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、貫通孔2内に粒子状物質を荷電するために効果的な放電を起こすことが可能となる。また、貫通孔2の形状としては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)及び/又は流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。図8に示す本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置300)においては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分2aのみが拡開され、拡開部分2bが形成されている。また、図8に示す粒子状物質検出装置300においては、貫通孔2は、検出装置本体1の長手方向に広がるように拡開されているが、検出装置本体1の厚さ方向に広がるように拡開されてもよい。図8は、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示し、図5に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態(粒子状物質検出装置100)の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
【0046】
拡開部分2bの拡開された幅(貫通孔2のガス流通方向における最先端部分の幅)W1は、貫通孔2の拡開されていない部分の幅W2に対して2〜200%が好ましい。また、拡開部分2bの、貫通孔2のガス流通方向における奥行き(拡開部分の奥行き)L1は、検出装置本体1の、貫通孔2のガス流通方向における長さL2の5〜30%が好ましい。
【0047】
図9A及び9Bに示すように、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置400)は、検出装置本体1の中心軸に直交する断面形状が、貫通孔2の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状であることが好ましい。検出装置本体の形状をこのようにすることにより、貫通孔のガスの流通方向を、配管内の排気ガスの流通方向に合わせた(平行にした)ときに、配管内の排気ガスの流れを良好にすることができる。粒子状物質検出装置(検出装置本体)の、貫通孔の貫通方向における「中央部分」とは、粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向における長さを3等分したときの、中央に位置する「3分の1の範囲」を意味する。従って、「粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向において、中央部分で最も太く」というときは、上記「中央部分に位置する3分の1の範囲」に最も太い部分が位置することを意味する。ここで、図9Aは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含む断面を示す模式図であり、図9Bは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含まない断面を示す模式図である。
【0048】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置100を作製することができるため、本実施形態の粒子状物質検出装置100を効率的に製造することが可能となる。
【0049】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
【0050】
次に、本実施形態の粒子状物質検出装置100の製造方法について説明する。
【0051】
(成形原料の調製)
アルミナ、コージェライト化原料、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一種の誘電体原料と、成形原料として使用する他の成分とを混合し、スラリー状の成形原料を調製する。誘電体原料としては、上記原料が好ましいが、これに限定されるものではない。他の原料としては、バインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等を使用することが好ましい。
【0052】
バインダーとしては、特に限定されるものではないが、水系バインダー、非水系バインダーのどちらでもよく、水系バインダーとしてはメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用でき、非水系バインダーとしてはポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することができる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0053】
バインダーの添加量は、誘電体原料100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましく、6〜17質量部であることが更に好ましい。このようなバインダー含有量とすることにより、スラリー状の成形原料を成形してグリーンシートを成形したとき、及び、乾燥、焼成したときに、クラック等の発生を防止することが可能となる。
【0054】
可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等を使用することができる。
【0055】
可塑剤の添加量は、バインダー添加量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることが更に好ましい。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形しやすくなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入るなどハンドリング性が悪くなることがある。
【0056】
分散剤としては、水系ではアニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等を使用することが出来、非水系では脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等を使用することができる。
【0057】
分散剤は、誘電体原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることが更に好ましい。0.5質量部より少ないと、誘電体原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、誘電体原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
【0058】
分散媒としては、水等を使用することができる。分散媒は、誘電体原料100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、75〜150質量部であることが更に好ましい。
【0059】
上記各原料をアルミナ製ポット及びアルミナ玉石を用いて十分に混合してグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製する。また、これらの材料を、モノボールによりボールミル混合して作製してもよい。
【0060】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、さらに所定の粘度となるように調製する。成形原料の調製において得られるスラリー状の成形原料の粘度は、2.0〜6.0Pa・sであることが好ましく、3.0〜5.0Pa・sであることが更に好ましく、3.5〜4.5Pa・sであることが特に好ましい。粘度範囲をこのように調整すると、スラリーをシート状に成形し易くなるため好ましい。スラリー粘度は、高過ぎても低過ぎても成形し難くなることがある。尚、スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した値である。
【0061】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をシート状に成形加工して、グリーンシートを形成する。成形加工方法は、成形原料をシート状に成形してグリーンシートを形成することができれば特に限定されず、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、カレンダーロール法等の公知の方法を使用することができる。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、貫通孔形成用のグリーンシートを作製する。
【0062】
製造するグリーンシートの厚さは、50〜800μmであることが好ましい。
【0063】
得られたグリーンシートの表面に各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を配設する。例えば、図1A、図1B及び図2に示すような、粒子状物質検出装置100を作製する場合には、図1B、図4〜図7に示されるように、各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子が所定の位置に配設されるように、グリーンシートの対応する位置に各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を印刷することが好ましい。配設する各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成するための導体ペーストを調製する。この導体ペーストは、各電極、配線等のそれぞれの形成に必要なそれぞれの材質に合わせて、金、銀、白金、ニッケル、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される少なくとも一種を含有する粉末に、バインダ及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミル等を用いて十分に混錬して調製することができる。このようにして形成した、各電極、配線等の形成に必要な材質を含有するそれぞれの導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷等を用いて印刷して、所定の形状の各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成する。
【0064】
次に、グリーンシートを積層する。積層するときには、各電極等及び貫通孔が図1B及び図2に示すような配置になるようにする。積層は加圧しながら行うことが好ましい。
【0065】
(焼成)
得られた、グリーンシートの積層体を60〜150℃で乾燥し、1200〜1600℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製する。グリーンシートが有機バインダーを含有する場合には、焼成の前に、400〜800℃で脱脂することが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
(成形原料の調製)
アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン、ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0068】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0069】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。このとき、グリーンシートを積層したときにキャビティが形成されるように、キャビティ形成用のグリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、250μmとした。
【0070】
得られたグリーンシートの表面に、図1B、図4〜図7に示されるような各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成した。配設する各電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。また、加熱部を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。このようにして形成した導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極等を形成した。
【0071】
次に、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシートからなる粒子状物質検出装置の未焼成体を得た。
【0072】
(焼成)
得られた、グリーンシートの積層体(粒子状物質検出装置の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製した。得られた粒子状物質検出装置は、0.7cm×0.2cm×12cmの直方体において、他方の端部が、図1Bに示すように細くなった形状であった。細くなった他方の端部は、幅4.25cm、長さ1.2cmであった。貫通孔は、排ガスの流通方向に垂直な断面形状が1cm×0.05cmの長方形であった。
【0073】
(放電用電源)
放電用の電源としては、パルス電源とDC電源を用い、電極の取り出し端子に接続した。
【0074】
電極間のインピーダンスを測定するための測定部としては、アジレントテクノロジー社製のインピーダンスアナライザを用い、電極の取り出し端子に接続した。
【0075】
(粒子状物質測定方法)
得られた粒子状物質検出装置を、ディーゼルエンジンの排気管に設置した。ディーゼルエンジンとしては、排気量2000ccの直噴−ディーゼルエンジンを使用し、回転数1500rpm、トルク24N・m、EGR(exhaust gas recirculation)開度50%、排ガス温度200℃、吸入空気1.3m(室温換算)/分の運転条件下で排ガスを発生させた。スモークメータ(AVL社製、商品名:型式4158)による排ガス中の粒子状物質量は、2.0mg/mであった。粒子状物質の検出は、以下のように行った。ディーゼルエンジンから排ガスを発生させながら、粒子状物質を荷電集塵する前に、一対の電極間の初期の静電容量(pF)を、1分間に亘って6回測定し、その後、粒子状物質を1分間に亘って荷電集塵し、その後、荷電集塵操作を停止して、再度、静電容量(一対の電極間の1分間集塵後の静電容量)(pF)を、1分間に亘って6回測定した。初期の静電容量及び1分間集塵後の静電容量は、いずれも6回の測定の平均値を求めた。そして、初期の静電容量と1分間集塵後の静電容量との差から、集塵された粒子状物質の質量を算出した。粒子状物質の質量の算出は、粒子状物質の吸着量に対する静電容量の変化について、予め検量線を作成しておき、その検量線を用いて行った。
尚、本測定においては、ヒーターによる粒子状物質の燃焼は行わないこととした。粒子状物質を荷電集塵する際には、高電圧電源による印加電圧をDC2.0kVとし、電極間の静電容量測定時には、測定部から印加電圧をAC2V、周波数を10kHzとした。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1より、初期測定時と集塵後の静電容量(インピーダンス)の差が明確に示された。これより、1分間のインピーダンス測定でも、排ガス中の粒子状物質量の増加を検出することが可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
DPFの欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識するために好適に利用することができ、これにより大気汚染の防止に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図1B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2】図1BのA−A’断面を示す模式図である。
【図3】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示し、図2に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
【図4】図2のB−B’断面を示す模式図である。
【図5】図2のC−C’断面を示す模式図である。
【図6】図2のD−D’断面を示す模式図である。
【図7】図2のE−E’断面を示す模式図である。
【図8】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示し、図5に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
【図9A】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含む断面を示す模式図である。
【図9B】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含まない断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、2a:入り口部分、2b:拡開部分、11,12:電極、11a,12a,13a:取り出し端子、11b,12b,13b,13b:配線、11c、12c:電極の一方の端部、11d、12d:電極の他方の端部、13:加熱部、100,200,300,400:粒子状物質検出装置、a:一方の端部同士を結んだ線分、b:他方の端部同士を結んだ線分、W1:拡開された幅、W2:拡開されていない幅、L1:拡開部分の奥行き、L2:貫通孔のガス流通方向における長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、前記貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極とを備え、
前記貫通孔内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、前記一対の電極に電圧を印加することにより前記貫通孔内に生じる放電により荷電された、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を、前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記検出装置本体の他方の端部に、前記一対の電極のなかの少なくとも一方の電極の取り出し端子が配設された請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記検出装置本体の他方の端部に、前記一対の電極のなかの一方の電極の取り出し端子が配設され、
前記検出装置本体の一方の端部と他方の端部との間の位置に、前記一対の電極のなかの他方の電極の取り出し端子が配設された請求項2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記貫通孔の壁面に沿うようにして検出装置本体の内部に配設された、前記貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調用の加熱部を更に備え、前記検出装置本体の他方の端部に、前記加熱部の取り出し端子が配設された請求項1〜3のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記一対の電極のなかの少なくとも一方の電極の、前記貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の前記加熱部が配設された請求項4に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記一対の電極のそれぞれの、前記貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の前記加熱部が配設された請求項5に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項7】
前記貫通孔の貫通方向に垂直な断面において、前記一対の電極の一方の端部同士を結んだ線分と他方の端部同士を結んだ線分とが、いずれも貫通孔内を通過するように、前記一対の電極が前記検出装置本体内に埋設された請求項1〜6のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項8】
前記貫通孔の、前記流体が流入する入口部分及び前記流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されている請求項1〜7のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項9】
前記検出装置本体の中心軸に直交する断面形状が、貫通孔の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状である請求項1〜8のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項10】
前記貫通孔の壁面に吸着した粒子状物質を、前記一対の電極に電圧を印加して前記貫通孔内に放電を起こして酸化除去することが可能な請求項1〜9のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項11】
前記貫通孔内に起きる放電が、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群から選択される一種である請求項1〜10のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項12】
前記誘電体が、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜11のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2009−186278(P2009−186278A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25494(P2008−25494)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】