説明

粒子状物質検出装置

【課題】内燃機関の出力及び燃費を低下させることなく、粒子状物質を高精度で検出できる粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】粒子状物質を含む排気が流通する排気主通路10と、排気主通路10から分岐して設けられ、排気の一部が流通する排気分岐通路12と、排気分岐通路12の途中に設けられ、排気中の粒子状物質の濃度を高めるための粒子状物質濃縮装置15と、排気分岐通路12のうち粒子状物質濃縮装置15の下流側に設けられ、排気中の粒子状物質の濃度を検出する粒子状物質検出センサ11と、を備えることを特徴とする粒子状物質検出装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置に関し、特に、内燃機関の出力及び燃費を低下させることなく、粒子状物質を高精度で検出できる粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識が高まるにつれて、燃焼を伴う設備・装置の使用に際しては、排気中に含まれる粒子状物質の除去が必要不可欠となっている。このため、これらの設備・装置には、排気中の粒子状物質を除去するための除去手段が設けられている。また、この除去手段が正常に機能し、粒子状物質を十分に除去できているか否かを確認すべく、粒子状物質検出装置を備えた故障診断装置が設けられている。
【0003】
例えば、排気通路内に設けた電極部に対して、所定の電圧を印加して排気中の粒子状物質を電極部に付着させた後、電極部の電気的特性を測定し、測定された電気的特性から粒子状物質の濃度を検知することを特徴とする粒子状物質検出装置が提案されている(特許文献1参照)。
この装置によれば、粒子状物質の堆積量に応じて変化する電極部の電気的特性を利用して、静電容量等の電気的特性の測定結果から粒子状物質の濃度を算出するため、排気中に含まれる粒子状物質を低濃度から検出することができ、信頼性の高い故障診断システムを提供できる。
【0004】
また、触媒層を有する第一酸素センサと、微細多孔層を有する第二酸素センサと、を備え、ディーゼルエンジンの排気系に設置される粒子状物質検出装置が提案されている(特許文献2参照)。
この装置によれば、第一酸素センサに拡散する排気中に含まれる粒子状物質は燃焼する一方、第二酸素センサに拡散する排気中に含まれる粒子状物質は燃焼されずに除去されることから、第一酸素センサで検出される酸素濃度と、第二酸素センサで検出される酸素濃度とでは、粒子状物質の燃焼に消費される酸素量に応じた差が生じる。これにより、排気中に含まれる粒子状物質の濃度を精度良く検出することができるとされている。
【特許文献1】特開2008−139294号公報
【特許文献2】特開2005−337782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2で開示されている装置は、内燃機関の排気通路内に設置されるため、これらの装置によって排気流が妨げられてしまう結果、圧力損失や乱流の発生、ひいては内燃機関の出力及び燃費の低下の原因となっていた。
また、排気通路内には、高温且つ腐食性の高い排気が流通していることから、これらの装置を排気通路内に設置した場合には、装置が腐食する恐れがあり、精度良く粒子状物質を検出することができない場合があった。
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の出力及び燃費を低下させることなく、粒子状物質を高精度で検出できる粒子状物質検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、排気主通路から分岐する排気分岐通路に粒子状物質検出装置を設けるとともに、粒子状物質検出装置の上流に粒子状物質濃縮装置を設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のような発明を提供する。
【0008】
請求項1記載の発明は、粒子状物質を含む排気が流通する排気主通路と、前記排気主通路から分岐して設けられ、排気の一部が流通する排気分岐通路と、前記排気分岐通路の途中に設けられ、排気中の粒子状物質の濃度を高めるための粒子状物質濃縮装置と、前記排気分岐通路のうち前記粒子状物質濃縮装置の下流側に設けられ、排気中の粒子状物質の濃度を検出する粒子状物質検出手段と、を備えることを特徴とする粒子状物質検出装置である。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、排気主通路から分岐する排気分岐通路を設けるとともに、排気分岐通路に粒子状物質検出手段を設けた。これにより、排気主通路内に粒子状物質検出手段を設置する従来技術とは異なり、排気主通路内の排気流を妨げることがない。このため、圧力損失や乱流が発生せず、内燃機関の出力及び燃費の低下を防止できる。
また、排気分岐通路の途中であって粒子状物質検出手段の上流側に、排気中の粒子状物質の濃度を高めるための粒子状物質濃縮装置を設けた。これにより、排気分岐通路を流通する排気中の粒子状物質の濃度を高めることができ、下流に設けられた粒子状物質検出手段の精度(感度)を高めることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の粒子状物質検出装置において、前記粒子状物質濃縮装置は、前記排気分岐通路の途中から分岐して前記排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を環流する第一の排気分岐還流通路を備え、前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部において、前記第一の排気分岐環流通路の下端が前記排気主通路内に突出しているとともに、前記第一の排気分岐環流通路の下端面が前記排気主通路の下流側を指向していることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、排気分岐通路の途中から分岐し、排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられた第一の排気分岐還流通路を含んで粒子状物質濃縮装置を構成した。また、第一の排気分岐環流通路と排気主通路の合流部において、第一の排気分岐環流通路の下端が排気主通路内に突出するとともに、第一の排気分岐環流通路の下端面が排気主通路の下流側を指向するように構成した。
これにより、排気分岐通路内の圧力に比して、第一の排気分岐環流通路内の圧力が低くなり、排気中の気体成分は主として第一の排気還流通路側に導かれて排気主通路に環流される。一方、大きな質量を有する粒子状物質は、慣性が働くことによって、第一の排気還流通路ではなく下流側の粒子状物質検出手段に導かれる。このため、粒子状物質検出手段に導かれる排気中の粒子状物質濃度を高めることができ、粒子状物質を高精度で検出できる。
また、高温で腐食性が高い気体成分の多くが排気主通路に環流されるため、粒子状物質検出手段の劣化を抑制できる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の粒子状物質検出装置において、前記粒子状物質濃縮装置は、前記排気分岐通路の途中から分岐して前記排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を環流する第一の排気分岐還流通路を備え、前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部において、前記第一の排気分岐環流通路から還流される排気の流れベクトルと前記排気主通路を流通する排気の流れベクトルとのなす角が鋭角であることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同様に、排気分岐通路の途中から分岐し、排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられた第一の排気分岐還流通路を含んで粒子状物質濃縮装置を構成した。また、第一の排気分岐環流通路と排気主通路の合流部において、第一の排気分岐環流通路から還流される排気の流れベクトルと、排気主通路を流通する排気の流れベクトルとのなす角が鋭角となるように構成した。
これにより、第一の排気分岐環流通路を流通する排気が、排気主通路の排気の流れによって効率的に排気主通路に環流される。また、排気分岐通路に比して、第一の排気分岐環流通路の圧力が低くなる結果、排気中の気体成分の多くが排気主通路に環流される一方、粒子状物質は慣性により、還流されずに粒子状物質検出手段に導かれる。このため、粒子状物質検出手段に導かれる排気中の粒子状物質の濃度を高めることができ、粒子状物質を高精度で検出できる。
また、請求項2記載の発明と同様に、高温で腐食性が高い気体成分の多くが排気主通路に環流されるため、粒子状物質検出手段の劣化を抑制できる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の粒子状物質検出装置において、前記粒子状物質濃縮装置は、前記排気分岐通路の途中から分岐して前記排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を環流する第一の排気分岐還流通路を備え、前記排気主通路の分岐部における排気主通路の断面積に比して、前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部における排気主通路の断面積が小さいことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項2及び3記載の発明と同様に、排気分岐通路の途中から分岐し、排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられた第一の排気分岐還流通路を含んで粒子状物質濃縮装置を構成した。また、排気主通路の分岐部における排気主通路の断面積に比して、第一の排気分岐環流通路と排気主通路の合流部における排気主通路の断面積が小さくなるように構成した(ベンチュリの構造)。
これにより、排気主通路を流通する排気の流速が、分岐部よりも合流部の方が大きくなるため(ベンチュリ効果)、流体は流速が大きいほど圧力が低いというベヌーイの定理に従って、排気分岐通路に比して第一の排気分岐環流通路の圧力が低くなる。従って、排気分岐通路を流通する排気中の気体成分は、主として排気主通路に環流される一方、粒子状物質は慣性により、還流されずに粒子状物質検出手段に導かれる。このため、粒子状物質検出手段に導かれる排気中の粒子状物質の濃度を高めることができ、粒子状物質を高精度で検出できる。
また、請求項2及び3記載の発明と同様に、高温で腐食性が高い気体成分の多くが排気主通路に環流されるため、粒子状物質検出手段の劣化を抑制できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2から4いずれかに記載の粒子状物質検出装置において、前記粒子状物質検出手段は、入口端面が前記排気分岐通路の分岐部端面と対向するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、粒子状物質検出手段の入口端面と、排気分岐通路の分岐部端面と、が対向するように構成した。
これにより、大きな質量を有する粒子状物質に慣性がより効果的に働く結果、粒子状物質検出手段に導かれる排気中の粒子状物質の濃度をより高めることができ、粒子状物質をより高精度で検出できる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項2から5いずれかに記載の粒子状物質検出装置において、前記粒子状物質検出装置は、前記粒子状物質検出手段の出口から延びて前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を還流するための第二の排気分岐環流通路をさらに備え、前記第二の排気分岐環流通路は、湾曲部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、粒子状物質検出手段を通過した排気を排気主通路に還流するための第二の排気分岐環流通路を含んで粒子状物質検出装置を構成した。また、第二の排気分岐環流通路が、粒子状物質検出手段の出口から延びて第一の排気分岐環流通路と排気主通路の合流部より下流側の排気主通路に合流するように、且つ湾曲部を有するように構成した。
これにより、第二の排気分岐環流通路の湾曲部において、通路内を流通する排気が内壁に衝突して圧力損失が生じる。このため、より多くの気体成分が、圧力損失が生じる第二の排気分岐環流通路に通じる粒子状物質検出手段側ではなく、圧力が低く圧力損失の生じない第一の排気分岐環流通路側に流れ込む結果、粒子状物質検出手段に導かれる排気中の粒子状物質の濃度をより高めることができ、粒子状物質をより高精度で検出できる。
また、第二の排気分岐環流通路の湾曲率が高いほど圧力損失が大きくなることから、湾曲率を高めることによって、排気分岐主通路を流通する排気中の粒子状物質の濃度をさらに高めることができ、粒子状物質をさらに高精度で検出できる。
なお、第二の排気分岐環流通路の湾曲部で生じる圧力損失は、従来技術のように排気主通路に粒子状物質検出装置を設置した場合に生じる圧力損失に比して小さく、内燃機関の出力及び燃費に及ぼす影響は小さい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、内燃機関の出力及び燃費を低下させることなく、粒子状物質を高精度で検出できる粒子状物質検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と共通する構成及び作用効果については、説明を省略する。
【0022】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る粒子状物質検出装置1を備えた内燃機関5の排気系の構成を示す図である。内燃機関(以下単に「エンジン」という)5は、各気筒内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンである。
【0023】
エンジン5の排気が流通する排気通路には、排気浄化フィルタ(以下、「DPF(Diesel Particulate Filter)」という)6と、粒子状物質検出装置1とが、上流側からこの順で設けられている。
【0024】
DPF6は、多孔質体のフィルタ壁を備え、排気がこのフィルタ壁の微細な孔を通過する際、排気中に含まれる炭素を主成分とした粒子状物質を、フィルタ壁の表面及びフィルタ壁中の孔に堆積させることにより、これを捕集する。フィルタ壁の構成材料としては、例えば、チタン酸アルミニウムやコージェライト等を材料とした多孔質体が使用される。
【0025】
本実施形態に係る粒子状物質検出装置1は、エンジン5の排気系、特に排気系に設置されたDPF6の下流に配置されて、DPF6の故障診断装置として利用される。
図2は、本実施形態に係る粒子状物質検出装置1の構成を示す図である。図2に示されるように、本実施形態に係る粒子状物質検出装置1は、エンジン5から排出された排気が流通する排気主通路10と、排気主通路10から分岐して設けられた排気分岐通路12と、排気分岐通路12の途中に設けられた粒子状物質濃縮装置15と、排気分岐通路12のうち粒子状物質濃縮装置15の下流側に設けられた粒子状物質検出センサ11と、を備える。
【0026】
[排気主通路10]
排気主通路10は、エンジン5から排出された粒子状物質を含む排気が流通する排気管である。排気主通路10を流通する排気中には、粒子状物質の他、酸素、水蒸気、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等の気体成分が含まれている。特に、ディーゼルエンジンから排出された排気中には多くの粒子状物質が含まれていることから、本実施形態の粒子状物質検出装置1は、エンジン5の排気系に使用されることにより、大きな効果が奏される。
【0027】
[排気分岐通路12]
排気分岐通路12は、粒子状物質を含む排気が流通する排気主通路10から分岐して設けられている。排気主通路10の分岐部101は、排気の一部を取り込む取り込み口である。排気分岐通路12は、排気主通路10内を流通する粒子状物質を含む排気の一部が流れ込み易いように、排気主通路10の下流側に向かって分岐している。
【0028】
[粒子状物質濃縮装置15]
粒子状物質濃縮装置15は、排気分岐通路12の途中に設けられている。粒子状物質濃縮装置15は、排気分岐通路12の途中から分岐して設けられた第一の排気分岐還流通路14を備える。
第一の排気分岐還流通路14は、排気主通路10の分岐部101より下流側の排気主通路10に合流し、排気主通路10に排気を環流する。第一の排気分岐還流通路14と排気主通路10の合流部である第一の合流部103では、第一の排気分岐還流通路14の下端が排気主通路10内に突出している。また、第一の排気分岐還流通路14の下端面1Cが排気主通路10の下流側を指向している。
【0029】
[粒子状物質検出センサ11]
図3は、本実施形態の粒子状物質検出センサ11の構成を示す図である。粒子状物質検出センサ11は、センサ電極部110と、このセンサ電極部110を制御するコントローラ121と、を備える。
【0030】
また、粒子状物質検出センサ11は、入口端面1Bと、排気分岐通路12の分岐部102の端面1Aと、が対向するように構成されている。即ち、排気分岐通路12は、分岐部102から真っ直ぐに延びて粒子状物質検出センサ11に至る。
【0031】
図4は、センサ電極部110の構成を示す図である。より具体的には、図4(A)は、センサ電極部110の電極板111の構成を示す斜視図であり、図4(B)は、2枚の電極板111,111を含んで構成されたセンサ電極部110の構成を示す斜視図である。
【0032】
図4(A)に示すように、電極板111は、略矩形状のアルミナ基板111Aと、このアルミナ基板111Aの表面に形成されたタングステン導体層111Bと、を備える。このタングステン導体層111Bは、アルミナ基板111Aの略中央部において、略正方形状に形成された導体部と、この導体部からアルミナ基板111Aの一端側へかけて線状に延びる導線部と、を含んで構成される。また、アルミナ基板111Aの一端側には、このタングステン導体層111Bの導線部に積層して設けられたタングステン印刷部111Cが形成されている。
ここで、アルミナ基板111Aの厚みは、約1mmであり、タングステン導体層111Bの導体部の一辺の長さは、約10mmである。
【0033】
図4(B)に示すように、センサ電極部110は、一対の電極板111,111を、板状のスペーサ112,112を介装して組み合わせることにより構成される。これらスペーサ112,112は、各電極板111の両端側に設けられており、これにより、各電極板111のタングステン導体層111Bの導体部には、粒子状物質が集塵されるキャビティ113が形成される。
【0034】
図3に戻って、コントローラ121は、センサ電極部110に所定の電圧を印加する電源部122と、センサ電極部110の電気的特性を検出するインピーダンス測定器123と、を含んで構成される。
【0035】
電源部122は、ECU7からの指令に基づいて動作し、所定の電圧をセンサ電極部110に所定の時間に亘って印加し、これにより、排気中に含まれる粒子状物質をセンサ電極部110のキャビティ113内に堆積させる。
【0036】
インピーダンス測定器123は、ECU7からの指令に基づいて動作し、所定の測定電圧及び測定周期の交流信号のもとでセンサ電極部110の静電容量を検出し、検出した静電容量値に略比例した検出信号をECU7に出力する。
【0037】
なお、本実施形態の粒子状物質検出センサ11は、ブリッジ回路から構成されるセンサであってもよい。粒子状物質検出センサ11をブリッジ回路で構成することにより、粒子状物質の検出精度をより高めることができる。
【0038】
ECU7は、各種入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)とを備える。この他、ECU7は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、粒子状物質検出センサ11のコントローラ121等に制御信号を出力する出力回路と、を備える。
【0039】
また、ECU7には、排気中に含まれるPM濃度とセンサ電極部110に付着するPM量との相関関係を示すデータに加えて、センサ電極部110の電気的特性(静電容量等)とセンサ電極部110に付着するPM量との相関関係を示すデータが予め格納されており、検出した静電容量値から排気中のPM濃度が算出される。
【0040】
[第二の排気分岐還流通路16]
また、本実施形態の粒子状物質検出装置1は、粒子状物質検出センサ11の出口から延びて、第一の排気分岐還流通路14と排気主通路10の合流部である第一の合流部103より下流側の排気主通路10に合流するように設けられた第二の排気分岐還流通路16をさらに備えている。
第二の排気分岐還流通路16は、粒子状物質検出センサ11を通過した排気を排気主通路10に還流するために、第二の合流部104において排気主通路10に接続されている。また、第二の排気分岐還流通路16は、湾曲部を有し、排気主通路10側に湾曲して設けられている。
【0041】
次に、本実施形態に係る粒子状物質検出装置1の動作及び効果について説明する。
先ず、エンジン5から排出された粒子状物質を含む排気が、排気主通路10内に流入する。排気主通路10内に流入した排気の一部は、分岐部101から、排気主通路10の下流側に向かって設けられた排気分岐通路12内に流入する。次いで、排気分岐通路12内に流入した排気は、粒子状物質濃縮装置15に導かれ、粒子状物質濃度が高められる。粒子状物質濃縮装置15により粒子状物質濃度が高められた排気は、下流側の粒子状物質検出センサ11に導かれ、粒子状物質の検出が行われる。粒子状物質検出センサ11を通過した排気は、排気主通路10側に湾曲して設けられた第二の排気分岐還流通路16を通じて排気主通路10内に還流される。
【0042】
ここで、本実施形態の粒子状物質検出装置1は、圧力差を利用して排気中の粒子状物質を濃縮するものであることから、その原理について説明する。
先ず、排気主通路10から分岐し、排気主通路10の下流側に向かって延びるように設けられた排気分岐通路12には、排気主通路10内を流通する排気の流速エネルギーが効率的に導入されるため、排気分岐通路12内は高圧状態となる。これに対して、第一の合流部103において、第一の排気分岐還流通路14の下端面は排気主通路10の下流側を指向しているため、排気主通路10内の排気流により、第一の排気分岐還流通路14内を流通する排気が効率的に排気主通路10内に排出される結果、第一の排気分岐還流通路14内は低圧状態となる。即ち、排気分岐通路12よりも第一の排気分岐還流通路14の方が低圧となる状態が形成される。
【0043】
図5を参照しながら、その原理についてさらに詳しく説明する。
例えば今、排気通路内を排気が流通する場合を想定して、排気通路中の平均圧力(以下、静圧)をp0とし、排気流により生じる動圧をΔpとする。このとき、図4(A)に示されるように、面が排気流の上流側を向いている場合、その面にはp0+Δpの圧力がかかる。これに対して、図4(B)に示されるように、面が排気流の下流を向いている場合、その面にはp0−Δpの圧力がかかる。また、図4(C)に示されるように、面が排気流に対して垂直方向を向いている場合には、その面にかかる圧力はp0である。このように、圧力を考慮すべき面の向きにより、その面にかかる圧力は変化する。
【0044】
以上を踏まえ、本実施形態の粒子状物質検出装置1について検討すると、分岐部101では、排気分岐通路12が排気主通路10の上流側を向いて排気主通路10に接続されているため、分岐部101における圧力は、排気の静圧p0より高圧となる。これに対して、第一の合流部103では、第一の排気分岐還流通路14が排気主通路10の下流側を向いて接続されているため、第一の合流部103における圧力は、排気の静圧p0より低圧となる。これにより、排気分岐通路12内を流通する排気は、より低圧状態の第一の合流部103側に流れ込み、排気主通路10内に還流される。
【0045】
また、第二の合流部104では、第二の排気分岐還流通路16が排気主通路10を流通する排気流に対して垂直の方向を向いて接続されているため、第二の合流部104における圧力は、排気の静圧p0と同じp0である。
即ち、分岐部101と第一の合流部103との圧力差は、分岐部101と第二の合流部104との圧力差より大きい。従って、分岐部101で取り込まれた排気は、第二の合流部104側ではなく、より圧力差が大きい第一の合流部103側により多く流れ込む。これにより、この圧力差も駆動力となって、排気は第一の合流部103を通じて排気主通路10内に還流される。
【0046】
ここで、分岐部102において、第一の合流部103側へ流れ込む排気の流れは大きく湾曲するが、大きな質量を有する粒子状物質には大きな慣性が働く結果、第一の排気分岐還流通路14(第一の合流部103側)ではなく、粒子状物質検出センサ11(第二の合流部104側)に多く流れ込む。これに対して、排気中の気体成分には大きな慣性が働かないため、気体成分の多くは第一の排気分岐還流通路14(第一の合流部103側)に流れ込む。これにより、粒子状物質検出センサ11に流入する排気中に、より多くの粒子状物質が含まれることとなり、排気中の粒子状物質の濃縮が可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、粒子状物質検出センサ11の入口端面と、排気分岐通路12の分岐部端面と、が対向するように構成されていることから、慣性が働く粒子状物質をより効果的に粒子状物質検出センサ11に導くことができる。これにより、粒子状物質検出センサ11に導かれる排気中の粒子状物質の濃度をより効果的に高めることができる。このため、従来、粒子状物質の量が少ない場合にはコンデンサの静電容量が小さく、十分な測定精度が得られなかったところ、本実施形態であれば粒子状物質が低濃度であっても、濃縮することによって精度良く検出できる。
【0048】
また、粒子状物質検出センサ11を通過した排気が、第二の排気分岐還流通路16を流通するにあたり、湾曲部において通路内を流通する排気が内壁に衝突して圧力損失が生じる。このため、排気中に含まれるより多くの気体成分が、圧力が低く圧力損失の生じない第一の排気分岐還流通路14側に流れ込む結果、粒子状物質検出センサ11に流入する排気中の粒子状物質の濃度をより高めることができる。ひいては、粒子状物質をより高精度で検出できる。
【0049】
また、本実施形態に係る粒子状物質検出装置1は、粒子状物質検出センサ11を排気主通路10内に設置するものではないことから、圧力損失や乱流が生ずることもなく、内燃機関の出力及び燃費の低下を抑制できる。
さらには、高温で腐食性が高い気体成分の多くが排気主通路10に環流されるため、粒子状物質検出センサ11の劣化も抑制できる。
【0050】
[変形例]
本実施形態の変形例に係る粒子状物質検出装置2を図6に示す。図6に示されるように、粒子状物質検出装置2は、第二の排気分岐環流通路26における湾曲部の湾曲率を粒子状物質検出装置1よりも大きくした以外は、粒子状物質検出装置1と同一の構成である。
【0051】
本変形例によれば、第二の排気分岐環流通路26の湾曲率が高いため、第二の排気分岐環流通路26で生じる圧力損失がより大きくなる。このため、排気中に含まれるさらに多くの気体成分が、圧力が低く圧力損失の生じない第一の排気分岐還流通路14側に流れ込む結果、粒子状物質検出センサ21に流入する排気中の粒子状物質の濃度をさらに高めることができる。ひいては、粒子状物質をさらに高精度で検出できる。
なお、第二の排気分岐環流通路26の湾曲部で生じる圧力損失は、従来技術のように排気主通路に粒子状物質検出装置を設置した場合に生じる圧力損失に比して小さいため、内燃機関の出力及び燃費に及ぼす影響は小さい。
【0052】
<第2実施形態>
本実施形態に係る粒子状物質検出装置3を図7に示す。図7に示されるように、本実施形態に係る粒子状物質検出装置3は、第一の排気分岐還流通路34の構成を変更した以外は、第1実施形態と同一の構成である。具体的には、本実施形態の第一の排気分岐還流通路34は、第1実施形態のように下端が排気主通路30内に突出しておらず、下端面が排気主通路30の下流側を指向していない。その代わりに、第一の排気分岐還流通路34は、第一の排気分岐還流通路34と排気主通路30の合流部である第一の合流部303において、第一の排気分岐還流通路34から還流される排気の流れベクトルと、排気主通路30を流通する排気の流れベクトルとのなす角が鋭角となるように構成されている。即ち、図6に示されるように、第一の合流部303(接続端)を基点とする流れベクトルと、排気主通路30を流通する排気の流れベクトルとのなす角θは鋭角である。
【0053】
本実施形態によれば、第一の排気分岐還流通路34を通じて還流される排気の流れベクトルと、排気主通路30を流通する排気の流れベクトルとのなす角が鋭角であるため、排気主通路30の排気の流れによって第一の排気分岐還流通路34からの排気の還流が促進され、効率的に排気主通路30に排気が環流される。その結果、排気分岐通路32に比して、第一の排気分岐還流通路34の圧力がより低くなり、排気中の気体成分の多くが排気主通路30に環流される一方、粒子状物質は慣性により、還流されずに粒子状物質検出センサ31に導かれる。このため、粒子状物質検出センサ31に供給される排気中の粒子状物質の濃度をさらに高めることができ、ひいては粒子状物質をさらに高精度で検出できる。
【0054】
<第3実施形態>
本実施形態に係る粒子状物質検出装置4を図8に示す。図8に示されるように、本実施形態に係る粒子状物質検出装置4は、排気主通路40が絞り部を有するベンチュリ構造となっている点と、第一の排気分岐還流通路44の下端が排気主通路40内に突出しておらず、下端面が排気主通路40の下流側を指向していない点以外は、第1実施形態と同一の構成である。
より詳しくは、排気主通路40の分岐部401における排気主通路40の断面積に比して、第一の排気分岐環流通路と排気主通路40の合流部である第一の合流部403における排気主通路40の断面積が小さくなるように構成されている。
【0055】
本実施形態によれば、ベンチュリの構造を備える排気主通路40に排気が流通する場合、断面積が大きい部分の排気の流速は小さく、断面積が小さい部分の排気の流速は大きい(ベンチュリ効果)。このとき、ベヌーイの定理によれば、流体は、流速が大きいほど圧力が低く、流速が小さいほど圧力が高い性質を有することから、断面積が大きい部分の圧力は相対的に高くなり、断面積が小さい部分の圧力は相対的に低くなる。
従って、排気主通路40を流通する排気の流速が、分岐部401よりも第一の合流部403の方が大きくなるため、排気分岐通路42に比して第一の排気分岐還流通路44の圧力が低くなる。このため、排気分岐通路42を流通する排気中の気体成分は、主として排気主通路40に環流される一方、粒子状物質は慣性により、還流されずに粒子状物質検出センサ41に導かれる。このため、粒子状物質検出センサ41に供給される排気中の粒子状物質の濃度を高めることができ、ひいては粒子状物質を高精度で検出できる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、粒子状物質検出センサとして静電集塵式のセンサを用いたが、他の手法のセンサを適用することが可能である。また、第1実施形態の変形例のように、湾曲率をより高めた第二の排気分岐還流通路を、第2実施形態や第3実施形態に適用することが可能である。また、第3実施形態で採用されているベンチュリ構造を、第1実施形態や第2実施形態に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】粒子状物質検出装置1が設置された排気系の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る粒子状物質検出装置1の構成を示す図である。
【図3】粒子状物質検出センサ11の構成を示す図である。
【図4】センサ電極部110の構成を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る粒子状物質検出装置1を説明するための図面である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る粒子状物質検出装置2の構成を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る粒子状物質検出装置3の構成を示す図である。
【図8】第3実施形態に係る粒子状物質検出装置4の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3、4 粒子状物質検出装置
5 エンジン
6 DPF
7 ECU
10、20、30、40 排気主通路
11、21、31、41 粒子状物質検出センサ
12、22、32、42 排気分岐通路
14、24、34、44 第一の排気分岐還流通路
15、25、35、45 粒子状物質濃縮装置
16、26、36、46 第二の排気分岐還流通路
101、201、301、401 排気主通路の分岐部
102、202、302、402 排気分岐通路の分岐部
103、203、303、403 第一の合流部
104、204、304、404 第二の合流部
110 センサ電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状物質を含む排気が流通する排気主通路と、
前記排気主通路から分岐して設けられ、排気の一部が流通する排気分岐通路と、
前記排気分岐通路の途中に設けられ、排気中の粒子状物質の濃度を高めるための粒子状物質濃縮装置と、
前記排気分岐通路のうち前記粒子状物質濃縮装置の下流側に設けられ、排気中の粒子状物質の濃度を検出する粒子状物質検出手段と、を備えることを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記粒子状物質濃縮装置は、
前記排気分岐通路の途中から分岐して前記排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を環流する第一の排気分岐還流通路を備え、
前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部において、
前記第一の排気分岐環流通路の下端が前記排気主通路内に突出しているとともに、前記第一の排気分岐環流通路の下端面が前記排気主通路の下流側を指向していることを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記粒子状物質濃縮装置は、
前記排気分岐通路の途中から分岐して前記排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を環流する第一の排気分岐還流通路を備え、
前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部において、
前記第一の排気分岐環流通路から還流される排気の流れベクトルと前記排気主通路を流通する排気の流れベクトルとのなす角が鋭角であることを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記粒子状物質濃縮装置は、
前記排気分岐通路の途中から分岐して前記排気主通路の分岐部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を環流する第一の排気分岐還流通路を備え、
前記排気主通路の分岐部における排気主通路の断面積に比して、前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部における排気主通路の断面積が小さいことを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記粒子状物質検出手段は、入口端面が前記排気分岐通路の分岐部端面と対向するように構成されていることを特徴とする請求項2から4いずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記粒子状物質検出装置は、
前記粒子状物質検出手段の出口から延びて前記第一の排気分岐環流通路と前記排気主通路の合流部より下流側の排気主通路に合流するように設けられ、前記排気主通路に排気を還流するための第二の排気分岐環流通路をさらに備え、
前記第二の排気分岐環流通路は、湾曲部を有することを特徴とする請求項2から5いずれかに記載の粒子状物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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