説明

粒子状物質検出装置

【課題】使用時の振動による高電圧電線の剥がれを防止することが可能であり、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】一方の端部1aに貫通孔2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極と、一対の電極からそれぞれ検出装置本体1の他方の端部1bに向かって延びる配線と、検出装置本体1の他方の端部1bの表面に配設され、一対の電極のなかの一方の電極の取り出し端子12aと、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置の表面に配設された、一対の電極のなかの他方の電極の取り出し端子11aと、先端部分に電線固定用部材31が配設され、電線固定用部材31を介して他方の電極の取り出し端子11aに接合された電線21を備える粒子状物質検出装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置に関し、さらに詳しくは、使用時の振動による高電圧電線の剥がれを防止することが可能であり、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものになるという問題があった。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることができないため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きいという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するために、一方の端部に粒子状物質を検出するための貫通孔と一対の電極とを有するとともに他方の端部に配線の取出し部を有する一方向に長いセラミック製の粒子状物質検出装置を提案している(特願2008−246461号)。この粒子状物質検出装置は、例えば、図10A、図10Bに示すようなセラミック製の板状の粒子状物質検出装置200である。粒子状物質検出装置61は、検出装置本体61の一方の端部65に貫通孔62が形成され、貫通孔62を挟むようにして埋設された一対の電極を有するものである。そして、上記一対の電極間に電圧を印加し、貫通孔62内に流入した排ガス中の粒子状物質を電気的に貫通孔内の壁面等に付着させ、貫通孔内の壁面等のインピーダンス等を測定することにより、粒子状物質の付着量等を検出するものである。そして、貫通孔62が配設されている側の端部とは反対側の端部(他方の端部)66に、上記一対の電極のなかの一方の電極に繋がる取出し端子63が配設され、一方の端部と他方の端部との間の位置の表面に、上記一対の電極のなかの他方の電極に繋がる取出し端子64が配設されている。取り出し端子63,64は、外部からの電線を接続する部分である。図10Aは、粒子状物質検出装置を模式的に示す正面図である。図10Bは、粒子状物質検出装置を模式的に示す側面図である。
【0007】
上記粒子状物質検出装置を用いて粒子状物質を検出する方法としては、上記一対の電極に高電圧を印加して、貫通孔内にプラズマを発生させて粒子状物質を荷電し、荷電した粒子状物質を貫通孔の内壁面に付着させて粒子状物質の付着量等を検出する方法が一つの好ましい態様である。このとき、一対の電極に高電圧を印加するときには、上記一方の端部と他方の端部との間の位置の表面に配設された取出し端子64側を高電圧にすることが好ましい。そのため、高電圧用の電線を上記一方の端部と他方の端部との間の位置の表面に配設された取出し端子64に接続する必要があるが、自動車に搭載する場合、エンジンの振動が大きく、さらに接続部分が高温にさらされる可能性があるため、従来の単純な接続方法では使用時の振動によって電線が剥がれることがあるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、使用時の振動による高電圧電線の剥がれを防止することが可能であり、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の粒子状物質検出装置を提供するものである。
【0010】
[1] 一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、前記貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極と、前記一対の電極からそれぞれ前記検出装置本体の他方の端部に向かって延びる配線と、前記検出装置本体の他方の端部の表面に配設され、前記一対の電極のなかの一方の電極から延びる配線に接続された前記一方の電極の取り出し端子と、前記一方の端部と前記他方の端部との間の位置の表面に配設された、前記一対の電極のなかの他方の電極から延びる配線に接続された前記他方の電極の取り出し端子と、先端部分に電線固定用部材が配設され、前記電線固定用部材を介して前記他方の電極の取り出し端子に接合された電線を備え、前記他方の電極を高電圧側として、前記一対の電極に、それぞれの取り出し端子を通じて50〜200kV/cmの電圧を印加して、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【0011】
[2] 前記電線固定用部材が、前記電線の先端部分を挟み込んで固定するように折り曲げられた金属板である[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0012】
[3] 前記電線固定用部材は、長方形の翼部と、前記翼部の長手方向における中央部分から前記翼部の長手方向に対して直交する方向に延びる長方形の胴部とを有するT字状の金属板が、前記翼部の長手方向の両端部が翼部の長手方向の中央に向かって折り返されるように折り曲げられた形状であり、折り曲げられた前記翼部と、翼部の中央部分との間に前記電線の先端部分が挟み込まれて固定された[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0013】
[4] 前記電線固定用部材が、接合用金属板を介して前記他方の電極の取り出し端子に接着された[2]又は[3]に記載の粒子状物質検出装置。
【0014】
[5] 前記電線固定用部材が、導電性接着剤を介して前記他方の電極の取り出し端子に接着された[2]又は[3]に記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[6] 前記電線固定用部材が、前記電線の先端部分を覆う金属ペーストであり、前記電線の先端部分が前記金属ペーストを介して前記他方の電極の取り出し端子に接合された[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粒子状物質検出装置によれば、貫通孔を形成する検出装置本体の壁の内部に少なくとも一対の電極が埋設され、その一対の電極に電圧を印加して貫通孔内に放電を起こし、その放電により貫通孔内に存在する粒子状物質を荷電することができ、その荷電した粒子状物質を電極に電気的に吸着させることが可能である。そのため、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガスのみについてその粒子状物質の質量を測定することが可能となり、これにより、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質だけを測定することにより排ガス全体の粒子状物質量を推算することができる。そのため、粒子状物質検出装置を小型化することが可能となり、それにより、狭いスペースに設置することが可能となり、更に安価に製造することが可能となる。
【0017】
また、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(粒子状物質)の一部だけを貫通孔内に導入するため、貫通孔内の粒子状物質を全て効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることが可能となる。
【0018】
また、検出装置本体が一方向に長く形成され、その一方の端部に、貫通孔が形成されるとともに、少なくとも一対の電極が配設(埋設)されるため、貫通孔及び一対の電極の部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、一対の電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0019】
また、高電圧を印加する電極の取り出し端子である、検出装置本体の一方の端部と他方の端部との間の位置の表面に配設された取り出し端子に、電線固定用部材を介して高電圧用の電線を接合しているため、電線固定用部材により電線を強固に所定の取り出し端子に接合することが可能となり、使用時の振動によっても剥離しないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図1B】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2A】図1Aにおける電線と、一方の端部と他方の端部との間の位置の表面に配設された取り出し端子との接合部分を拡大して示した模式図である。
【図2B】図1Bにおける電線と、一方の端部と他方の端部との間の位置の表面に配設された取り出し端子との接合部分を拡大して示した模式図である。
【図3】図1Bに示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のA−A’断面を示す模式図である。
【図4】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を構成する電線固定用部材を形成するT字状の金属板を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態の、電線と、一方の端部と他方の端部との間の位置の表面に配設された取り出し端子との接合部分を正面から見たときの拡大模式図である。
【図6】図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のB−B’断面を示す模式図である。
【図7】図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のC−C’断面を示す模式図である。
【図8】図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のD−D’断面を示す模式図である。
【図9】図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のE−E’断面を示す模式図である。
【図10A】粒子状物質検出装置を模式的に示す正面図である。
【図10B】粒子状物質検出装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
図1Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図であり、図1Bは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。また、図2Aは、図1Aにおける電線21と、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置の表面に配設された取り出し端子11aとの接合部分22を拡大して示した模式図である。図2Bは、図1Bにおける電線21と、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置の表面に配設された取り出し端子11aとの接合部分22を拡大して示した模式図である。図3は、図1Bに示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のA−A’断面を示す模式図である。
【0023】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、図1A、図1B、図2A、図2B及び図3に示すように、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた一対の電極11,12と、一対の電極11,12からそれぞれ検出装置本体1の他方の端部1bに向かって延びる配線11b、12bと、検出装置本体1の他方の端部1bの表面に配設され、一対の電極11,12のなかの一方の電極12から延びる配線12bに接続された一方の電極12の取り出し端子12aと、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置の表面に配設された、一対の電極11,12のなかの他方の電極11から延びる配線11bに接続された他方の電極11の取り出し端子(以下、「高電圧端子」と称することがある。)11aと、先端部分32に電線固定用部材31が配設され、電線固定用部材31を介して他方の電極11の取り出し端子11aに接合された電線21を備えるものである。そして、本実施形体の粒子状物質検出装置100は、他方の電極11を高電圧側として、一対の電極11,12に、それぞれの取り出し端子11a,12aを通じて50〜200kV/cmの電圧を印加して、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質を検出することができる。
【0024】
ここで、貫通孔2は少なくとも一つ形成されている必要があり、2以上であってもよい。また、一対の電極は少なくとも一対備えることが必要であり、二対以上であってもよい。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、一対の電極11,12が検出装置本体1の内部に埋設されており、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の電極11,12がそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。
【0025】
これにより、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガスのみについてその粒子状物質の質量を測定することが可能となり、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質だけを測定することにより排ガス全体の粒子状物質量を推算することができるので、粒子状物質検出装置を小型化することが可能となり、それにより、狭いスペースに設置することが可能となり、更に安価に製造することが可能となる。また、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(粒子状物質)の一部だけを貫通孔内に導入するため、貫通孔内の粒子状物質を全て効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることが可能となる。また、検出装置本体が一方向に長く形成され、その一方の端部に、貫通孔が形成されるとともに、少なくとも一対の電極が配設(埋設)されるため、貫通孔及び一対の電極が配設される部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、一対の電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。また、高電圧を印加する電極11の取り出し端子である、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置の表面に配設された取り出し端子(高電圧端子)11aに、電線固定用部材31を介して高電圧用の電線21を接合しているため、電線固定用部材31により電線21を強固に所定の取り出し端子(高電圧端子11a)に接合することが可能となり、使用時の振動によっても剥離しないようにすることが可能となる。
【0026】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、上記のように、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置の表面に配設された、一対の電極11,12のなかの他方の電極11から延びる配線11bに接続された高電圧端子11aと、先端部分32に電線固定用部材31が配設され、電線固定用部材31を介して高電圧端子11aに接合された電線21を備えるものである。高電圧を印加する電線21を高電圧端子11aに、ろう付けや溶接によって直接接合しようとすると、ろう付けの場合は両者の熱膨張係数の違いによって接着部が解離する問題があり、溶接の場合は高電圧端子11a周辺の検出装置本体表面が傷つくという問題がある。ここで、ろう付けとは接合する部材(母材)よりも融点の低い合金(ろう)を溶かして一種の接着剤として用いる事により、母材自体を溶融させずに部材を接合させる方法を意味し、溶接とは2つ以上の部材を溶融・一体化させるために、接合箇所が連続性を持つように部材を加熱したり圧力を加え接合部を融合させる方法を意味する。これに対し、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、電線21の先端部分32に電線固定用部材31を配設し、その電線固定用部材31を高電圧端子11aに接着させるため、上記熱膨張係数の違いによる接着部の解離及び検出装置本体表面の傷つきの問題は無く、電線21と高電圧端子11aとを強固に接合することが可能となる。これにより、使用時の振動による高電圧電線(電線21)の剥がれを防止することが可能となる。
【0027】
電線固定用部材31と高電圧端子11aとの接着方法としては、電線固定用部材31が接合用金属板33を介して高電圧端子11aに接着される方法が好ましい。このとき、接合用金属板33が高電圧端子11aにろう付けにより接着され、電線固定用部材31が接合用金属板33に溶接により接着されていることが好ましい。これにより、電線を、高電圧端子に強固に接合することができる。電線固定用部材31を接合用金属板33に溶接する方法は、スポット溶接が好ましい。接合用金属板33を高電圧端子11aにろう付けにより接着するのは、熱膨張係数の整合する材料を選定できる利点があるからである。接合用金属板33を高電圧端子11aに溶接により接着すると、高電圧端子11aが傷付くことがある。また、電線固定用部材31を接合用金属板33に溶接により接着するのは、接合強度を強固に出来る利点があるからである。電線が固定された電線固定用部材31を接合用金属板33にろう付けにより接着すると、ろう付け時に電線を高温に曝す必要があり、このとき電線の絶縁被膜が劣化することがある。
【0028】
接合用金属板33の材質としては、コバール、ステンレス、鉄、ニッケル、白金、銅、金、モリブデン、及びタングステン等を挙げることができる。これらの中でも、アルミナ素子との熱膨張係数が近いという点より、コバールが好ましい。接合用金属板33の厚さは、50〜300μmが好ましい。接合用金属板33の大きさは、高電圧端子11aの面積の50〜150%であることが好ましい。接合用金属板33の形状は、特に限定されないが、四角形等の多角形、円形、楕円形等が好ましく、高電圧端子11aの形状と同じであることが更に好ましい。
【0029】
また、電線固定用部材と高電圧端子との接着方法は、電線固定用部材が、導電性接着剤を介して高電圧端子に接着される方法であってもよい。この場合、導電性接着剤としては、ニッケルあるいはアルミニウム等の金属粉が配合された接着剤等を挙げることができる。尚、電線固定用部材と高電圧端子との接着方法としては、導電性接着剤を用いる方法より、上記接合用金属板を用いる方法のほうがより好ましい。
【0030】
電線固定用部材31は、電線21の先端部分32を挟み込んで固定するように折り曲げられた金属板31aであることが好ましい。電線21の先端部分32を金属板31aで挟みこんで固定することにより、電線21を電線固定用部材31で強固に固定することができる。電線固定用部材31は、金属板31aを、電線21の先端部分32を挟み込んで固定するように折り曲げたものであることが好ましい。「金属板31aを、電線21の先端部分32を挟み込んで固定するように折り曲げる」とは、金属板31aを折り曲げて、折り重なる金属板の間に電線21を挟み、電線21を、折り重なる金属板で押さえつけることにより固定した状態を意味する。換言すれば、電線21を金属板31aで「かしめる」ことにより固定するということもできる。金属板31aの厚さは、50〜500μmが好ましい。
【0031】
電線固定用部材31の材質としては、ステンレス、コバール、鉄、ニッケル、白金、銅、金、モリブデン、及びタングステン等を挙げることができる。これらの中でも、強度、耐腐食性の点より、ステンレスが好ましい。電線固定用部材31の、折り曲げた後の高電圧端子に接着した状態での大きさは、高電圧端子11aの大きさの80〜130%であることが好ましい。このような範囲であることにより、電線固定用部材31を強固に高電圧端子11aに接着することができる。また、電線固定用部材31の折り曲げる前の金属板の状態での大きさは、高電圧端子11aの大きさの100〜200%であることが好ましい。このような範囲であることにより、電線固定用部材31を折り曲げたときに、上記「折り曲げた後の高電圧端子に接着した状態での大きさの好ましい範囲」を得ることができる。
【0032】
また、電線固定用部材31は、図4に示すような、長方形の翼部42と、翼部42の長手方向における中央部分から翼部42の長手方向に対して垂直な方向に延びる長方形の胴部43とを有するT字状の金属板41が、図2A、図2Bに示すように、翼部42の長手方向の両端部42a,42aが翼部42の長手方向の中央に向かって折り返されるように折り曲げられた形状であることが好ましい。そして、翼部42の折り曲げられた部分と、翼部42の中央部分との間に電線21の先端部分32が挟み込まれて固定されていることが好ましい。図4に示すように、T字状の金属板41は、同一平面上において、長方形の翼部42から長方形の胴部43が延びるように形成されている。図4は、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を構成する電線固定用部材31を形成するT字状の金属板41を模式的に示す平面図である。
【0033】
電線固定用部材31を、T字状の金属板41の翼部42を折り曲げて形成するため、容易に手早く形成できる利点がある。尚、電線固定用部材31の折り曲げる前の平面形状は、T字状が好ましいが、T字状に限定されるものではなく、四角形等の多角形、H字状(折りたたんで接合する箇所が2箇所あるもの)等のいずれの形状でもよい。
【0034】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、電線固定用部材31がT字状の金属板41から形成されているが、図5に示すように、電線固定用部材31が、電線21の先端部分32を覆う金属ペースト51であり、電線21の先端部分32が金属ペースト51を介して高電圧端子(他方の電極の取り出し端子)11aに接合されていてもよい。金属ペースト51としては、銀、及び白金ペースト等を用いることができる。金属ペーストを電線固定用部材として用いる場合、金属ペーストを塗布した後に加熱炉に入れ、金属ペースト部分を100℃条件化で1時間加熱乾燥させることで、所望の接着強度を得ることが出来る。図5は、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態の、電線21と、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置の表面に配設された取り出し端子11aとの接合部分22を正面から見たときの拡大模式図である。尚、本実施形態の粒子状物質検出装置は、電線固定用部材31として金属ペースト51を用いた以外は、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態と同様である。
【0035】
本実施形態の粒子状物質検出装置100において、電線21は、導体からなる導線部23と導線部23の外周を覆う絶縁体からなる絶縁被膜24とを備えるものである。導線部23の一方の端部には、高電圧端子11aに電気的に接続されるために、絶縁被膜24が配設されておらず、この絶縁被膜24が配設されていない部分が、先端部分32である。尚、電線21の高電圧端子11aに接合された端部に対して反対側の端部は、使用時に、高電圧電源、インピーダンスを測定する測定部等に接続されることが好ましい。先端部分32の長さは、高電圧端子11aの幅の30〜200%であることが好ましい。「高電圧端子11aの幅」とは、電線21を高電圧端子11aに接合した状態において、電線21の長手方向における高電圧端子11aの長さを意味する。また、先端部分32は、電線21を高電圧端子11aに接合したときに、その先端が高電圧端子11aからはみ出さないことが好ましい。導線部23の材質、太さ、及び絶縁被膜24の材質、厚さは、50〜200kV/cmの電圧を印加するのに適した通常の値であればよい。例えば、導線部23の材質としては、ニッケル、銅等を挙げることができる。また、導線部23の長手方向に直交する断面の形状は、特に限定されないが、長方形、円形、楕円形等が好ましい。また導線部23の太さは、断面積が0.1〜1.0mmであることが好ましい。また、絶縁被膜24の材質は、マイカガラステープ、純度90%以上のシリカヤーン、ポリイミドテープ等を挙げることができる。また、絶縁被膜24の厚さは、0.2〜1.0mmが好ましい。また、電線21の長さは、15〜30cmが好ましい。
【0036】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、検出装置本体1の他方の端部1bに、一対の電極11,12のなかの一方の電極12の取り出し端子が配設されている。取り出し端子は、粒子状物質検出装置100の検出装置本体1に配設された電極に電気的に接続され、外部からその電極に電圧を印加するための電源等からの電線を接続する部分である。粒子状物質検出装置100は、一対の電極11,12、加熱部13、接地電極14等に、それぞれ独立して接続された複数の取り出し端子(取り出し端子11a,12a,13a,14a)を有している。図1Bに示す本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、電極12の取り出し端子12aが、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されている。このように、一対の電極11,12のなかの一方の電極の取り出し端子を、検出装置本体1の他方の端部1bに配設することにより、貫通孔及び一対の電極が配設される部分(一方の端部1a)と取り出し端子との間隔を大きくとることができるため、貫通孔等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、取り出し端子12aが配設されている他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。取り出し端子12aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になるため、取り出し端子12aを配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0037】
検出装置本体1の他方の端部1bに配設された取り出し端子12aは、図1Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。また、取り出し端子12aは、検出装置本体1の他方の端部1bにおける側面の、幅方向における一方の端部に配置されていることが好ましい。また、図1Bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取り出し端子12aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2.0mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取り出し端子12aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu等を挙げることができる。
【0038】
一対の電極11,12の中の他方の電極11の取り出し端子(高電圧端子)11aを、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、一方の電極12の取り出し端子(取り出し端子12a)と、他方の電極11の取り出し端子(取り出し端子11a)とを、間隔を開けて配設することになり、それにより、一対の電極11,12間に電圧を印加するために、取り出し端子11aを高電圧側として、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを防止することができる。ここで、本実施形態において、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。従って、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がしやすくなることがあり、100mmより長いと、取り出し端子11aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100の検出装置本体1を配管等に装着したときに、検出装置本体1の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0039】
また、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設した取り出し端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100を、貫通孔2の部分が配管内に挿入されるように、配管に装着したときに、配管内を流通する高温の排ガスの熱が取り出し端子11aに影響を及ぼしやすくなることがある。
【0040】
取り出し端子(高電圧端子)11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましい。取り出し端子11aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0041】
粒子状物質を検出する方法は、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質を検出ものである。具体的には、例えば、一対の電極11,12間の静電容量等から計算されるインピーダンスを測定し、インピーダンスの変化から吸着された粒子状物質の質量を算出し、排ガス中の粒子状物質を検出する方法を挙げることができる。従って、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、取り出し端子11a,12aに接続された、電極11,12間のインピーダンスを測定する測定部を更に備えることが好ましい。測定部としては、静電容量だけでなく、インピーダンス計測可能なLCRメーターやインピーダンスアナライザ等を挙げることができる。尚、上記電極11,12間のインピーダンスを測定する代わりに、貫通孔の壁の電気的な特性の変化を測定するための他の一対の電極を貫通孔内に配設し、その一対の電極間のインピーダンスを測定するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態の粒子状物質検出装置100において、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排ガス配管に挿入した時に排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、上記長手方向の一方の端部1aに貫通孔2が形成されている。また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さ(ガス流通方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。そして、検出装置本体1の長手方向長さは、検出装置本体1の厚さの10〜100倍であることが好ましく、検出装置本体1のガス流通方向の長さの3〜100倍であることが好ましい。検出装置本体1の形状は、図1A及び図1Bに示すように、長手方向に直行する断面形状が長方形の板状であってもよいし、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよいし、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。検出装置本体1の材質は、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。そして、熱衝撃性に優れるため、コージェライトが更に好ましい。これらの材質はいずれも誘電体であるため、電極11,12を検出装置本体1の内部に埋設することにより、誘電体に覆われた電極11,12を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置100が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、本実施形態において、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0043】
図3に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2を形成する壁の内部に一対の電極11,12が埋設されており、貫通孔2を挟むようにして誘電体で覆われた電極11,12が配置された状態になっている。これにより、電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に放電を起こすことが可能となる。尚、電極としては、少なくとも一対配設されていることが必要であり、二対以上配設されてもよい。また、電極は、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設されていればよく、図3に示すように貫通孔2を挟むように配設されていることが好ましいが、壁の電気的特性を検知でき、貫通孔2内に放電を起こせれば、貫通孔2を取り囲む壁のどの位置に一対の電極が配設されてもよい。また、複数対の電極を配設し、異なる対の電極により、放電と電気的特性の検知とを別々に行ってもよい。放電の種類としては、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群から選択される一種であることが好ましい。このような放電を生じさせるため、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、取り出し端子11a,12aに接続された、放電用の電源を更に備えることが好ましい。放電用の電源としては、高電圧の交流電源、直流電源等が好ましい。また、放電させるために印加する電圧としては、パルス電圧、矩形波等の交流電圧、等の電圧が好ましい。また、印加する電圧の条件としては、ギャップ、ガス温度によって変わるが50〜200kV/cmが好ましい。また、電圧を印加するときの、電力は、0.1〜10Wが好ましい。
【0044】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質が荷電されていない場合に、貫通孔2内に放電を起こすことにより、粒子状物質を荷電して、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させることができる。そして、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内の放電により改めて荷電させる必要がないため、貫通孔2内に放電を起こすことなく、貫通孔2の壁面にその荷電されている粒子状物質を電気的に吸着させることができる。貫通孔2内に放電を起こして粒子状物質を荷電させる場合には、荷電した粒子状物質は、放電中に、その荷電した粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられ、壁面に吸着される。これに対し、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合には、電極11,12間に、所定の条件の電圧を印加し、荷電している粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられるようにする。ここで、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合に、電極11,12間に印加する電圧の条件は、4〜40kV/cmであることが好ましい。
【0045】
電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0046】
電極11,12の厚さは特に限定されず、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、5〜30μmであることが好ましい。電極11,12の材質としては、Pt、Mo、W等を挙げることができる。
【0047】
一対の電極のなかの一方の電極(電極11)と貫通孔2との間の距離、及び他方の電極(電極12)と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に放電を生じさせることができる。電極11及び電極12と、貫通孔2との間の距離は、電極11を覆う誘電体及び電極12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0048】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、図6に示すように、電極11には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線11bが接続されて居り、配線11bが、その先端(電極11に接続されていない側の先端)部分で、図1Bに示す取り出し端子(高電圧端子)11aに層間接続(ビア接続)されている。また、図7に示すように、検出装置本体1の一方の端部1aに貫通孔2が形成されている。ここで、図6は、図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のB−B’断面を示す模式図であり、図7は、図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のC−C’断面を示す模式図である。
【0049】
また、図8に示すように、電極12には検出装置本体1の長手方向に延びる配線12bが接続され、配線12bは、図1Bに示す取り出し端子12aに層間接続されている。ここで、図8は、図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のD−D’断面を示す模式図である。
【0050】
配線11b及び配線12bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線11b及び配線12bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線11b及び配線12bの材質としては、Pt、Mo、W等を挙げることができる。
【0051】
図3、図6〜図8に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、一対の電極11,12から延びるそれぞれの配線11b、12bの間に挟まれる位置に、帯状の接地電極14が配設されていることが好ましい。接地電極とは、接地されている電極である。接地電極14が配設される範囲は、一方の配線(例えば配線11b)から他方の配線(例えば配線12b)へと流れる電流を妨げることができる範囲であることが好ましく、少なくとも一方の配線を、接地電極14に対して垂直方向に移動させて接地電極14に重ね合わせたときに、当該配線の長さの95%以上が接地電極14と重なることが好ましい。更に、接地電極14が、検出装置本体1の長手方向及び幅方向の両方に平行な平面内に配置されていることが好ましい。また、接地電極14の幅が、検出装置本体1の幅の70〜95%であり、接地電極14の長さが、検出装置本体1の長さの50〜95%であることが好ましく、接地電極14の幅が、検出装置本体1の幅の80〜90%であり、接地電極14の長さが、検出装置本体1の長さの70〜90%であることが更に好ましい。これにより、更に効果的に、一方の配線から他方の配線へと流れる電流を妨げることができる。ここで、「接地電極14の幅」というときは、貫通孔2の貫通方向(流体の流通方向)における、接地電極14の長さをいい、「検出装置本体1の幅」というときは、貫通孔2の貫通方向(流体の流通方向)における、検出装置本体1の長さをいう。また、図4に示すように、検出装置本体1の一方の端部1aに貫通孔2が形成され、検出装置本体1の内部には、貫通孔2から他方の端部1b側に向かって帯状に延びる接地電極14が埋設されている。
【0052】
本実施形態の粒子状物質検出装置は、一対の電極間の所定の電気的特性を検知することにより、貫通孔を形成する壁の電気的特性の変化を測定し、貫通孔の壁面に吸着した粒子状物質を検出するものであるが、一対の電極間の所定の電気的特性を検知するときには、一対の電極に接続されるとともに誘電体に埋設された2本の配線間の当該所定の電気的特性も合わせて検知することになる。つまり、得られる測定値としては、一対の電極と2本の配線との両方により検知された値となる。このような2本の配線間の当該所定の電気的特性の影響が大きい場合には、貫通孔を形成する壁の電気的特性が変化し、その変化が一対の電極により検知されたとしても、同時に一対の電極に接続された当該2本の配線間の電気的特性も測定していることになるため、貫通孔を形成する壁の電気的特性の変化を正確に測定することができないという問題がある。本実施形態の粒子状物質検出装置は、上記一対の電極のそれぞれから延びる配線の影響を接地電極により抑制しながら、上記一対の電極間の電気的特性を検知することができるため、上記配線の影響による測定誤差の問題を解決することができる。これにより、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を精度良く測定することが可能となる。
【0053】
接地電極を必ずしも有さなくてもよいが、接地電極を有さない場合には、一対の電極に電圧を印加したときに、一対の電極の一方に接続された一方の配線から、一対の電極の他方に接続された他方の配線へと、2本の配線の間に挟まれた誘電体を通じて電流が流れることにより、2本の配線間の電気的特性が検知される。これに対し、本実施形態の粒子状物質検出装置は、2本の配線間に接地電極が配設されているため、一方の配線から接地電極に電流が流れ、一方の配線から他方の配線への電流の流れは生じない。そのため、一方の配線と他方の配線との間の電気的特性は検知されず、一対の電極に電圧を印加したときには、一対の電極間に位置する貫通孔を形成する壁の電気的特性のみを検知することができる。
【0054】
接地電極14の形状は、特に限定されず、長方形、長円形等を挙げることができる。また、接地電極14の厚さは特に限定されず、一方の配線から他方の配線へと流れる電流を妨げることが可能であればよい。例えば、10〜200μmであることが好ましい。接地電極14の材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0055】
接地電極14と配線11bとの間の距離、及び接地電極14と配線12bとの間の距離は、それぞれ100〜500μmであることが好ましく、150〜250μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に一方の配線から他方の配線へと流れる電流を妨げることができる。
【0056】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、図7に示すように、接地電極14には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線14bが接続されて居り、配線14bが、その先端(接地電極14に接続されていない側の先端)部分で、図1Bに示す取り出し端子14aに層間接続(ビア接続)されている。
【0057】
配線14bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線14bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線14bの材質としては、Pt、Mo、W等を挙げることができる。
【0058】
図3及び図9に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を更に備えることが好ましい。加熱部13により、電極に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができ、また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。加熱部13は、幅広のフィルム状であってもよいが、図9に示すように、線状の金属材料を、波状に配置し、先端部分でU−ターンするように配置したものであることが好ましい。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱することが可能となる。加熱部13の材質としては、Pt、Mo、W等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されることが好ましいが、図7に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子の破損が起きにくいという利点がある。加熱部13により、貫通孔2の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。図9は、図3に示される本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態のE−E’断面を示す模式図である。
【0059】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、一対の電極11,12のなかの少なくとも一方の電極の、貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の加熱部13が配設されていることが好ましい。図3に示す本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、電極12の貫通孔2が形成されている側に対して反対側の位置に、加熱部13が配設されている。このように、加熱部13が、一対の電極11,12のなかの少なくとも一方の電極の、貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に配設されていることにより、加熱部13の影響を受けることなく、一対の電極11,12により、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定しやすくなる。図3においては、加熱部13は一つであるが、電極12の貫通孔2が配設されている側に対して反対側の位置に複数配設されてもよい。また、図3においては、一対の電極のなかの一方の電極(電極12)の、貫通孔2が配設されている側に対して反対側の位置に加熱部13が配設されているが、一対の電極11,12のそれぞれの(両方の)、貫通孔2が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の加熱部13が配設されることも好ましい。加熱部13の配置及び数は、温度調節、捕集した粒子状物質の酸化除去等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
【0060】
図9に示すように、加熱部13は、配線13b,13bに接続され、配線13b,13bは、それぞれ図1Bに示す取り出し端子13a,13aに層間接続されている。加熱部13の取り出し端子13aも、電極11,12の取り出し端子11a,12aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図1Bにおいては、取り出し端子12aが、検出装置本体1の側面においてその幅方向における一方の端縁に配置され、取り出し端子13a,13aが、取り出し端子12aの横に、2本が並ぶように配置されているが、取り出し端子12a及び取り出し端子13a,13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0061】
加熱部13が線状である場合、その線の幅は、特に限定されず、例えば、0.05〜1mm程度が好ましい。また、加熱部13の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。配線13bの幅は、特に限定されず、例えば、0.7〜4mm程度が好ましい。また、配線13bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。加熱部13に対応する取り出し端子13aの幅は、特に限定されず、例えば、0.1〜2mm程度が好ましい。また、取り出し端子13aの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜1000μm程度が好ましい。配線13b及び取り出し端子13aの材質としては、Ni、Pt、Cr、W、Mo、Al、Au、Ag、Cu、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0062】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、電極に吸着された粒子状物質を、一対の電極11,12に電圧を印加して貫通孔2内に放電を起こして、酸化除去することができるものであることが好ましい。粒子状物質を酸化除去する場合の放電を生じさせる条件としては、電界強度が10〜200kV/cmであり、エネルギー投入量が、被処理物質に対して0.05〜10J/μgであることが好ましい。
【0063】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、加熱部13の取り出し端子13aに接続された、加熱用電源を更に備えることが好ましい。加熱用電源としては、定電流電源等を挙げることができる。
【0064】
本実施形態の粒子状物質検出装置100において、貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、0.3〜3mm程度が好ましい。このような範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、貫通孔2内に粒子状物質を荷電するために効果的な放電を起こすことが可能となる。
【0065】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置100を作製することができるため、本実施形態の粒子状物質検出装置100を効率的に製造することが可能となる。
【0066】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
【0067】
次に、本実施形態の粒子状物質検出装置100の製造方法について説明する。
【0068】
(成形原料の調製)
アルミナ、コージェライト化原料、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一種のセラミック原料(誘電体原料)と、成形原料として使用する他の成分とを混合し、スラリー状の成形原料を調製する。セラミック原料(誘電体原料)としては、上記原料が好ましいが、これに限定されるものではない。他の原料としては、バインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等を使用することが好ましい。
【0069】
バインダーとしては、特に限定されるものではないが、水系バインダー、非水系バインダーのどちらでもよく、水系バインダーとしてはメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用でき、非水系バインダーとしてはポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することができる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0070】
バインダーの添加量は、誘電体原料100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましく、6〜17質量部であることが更に好ましい。このようなバインダー含有量とすることにより、スラリー状の成形原料を成形してグリーンシートを成形したとき、及び、乾燥、焼成したときに、クラック等の発生を防止することが可能となる。
【0071】
可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等を使用することができる。
【0072】
可塑剤の添加量は、バインダー添加量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることが更に好ましい。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形しやすくなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入るなどハンドリング性が悪くなることがある。
【0073】
分散剤としては、水系ではアニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等を使用することが出来、非水系では脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等を使用することができる。
【0074】
分散剤は、誘電体原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることが更に好ましい。0.5質量部より少ないと、誘電体原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、誘電体原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
【0075】
分散媒としては、水等を使用することができる。分散媒は、誘電体原料100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、75〜150質量部であることが更に好ましい。
【0076】
上記各原料をアルミナ製ポット及びアルミナ玉石を用いて十分に混合してグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製する。また、これらの材料を、モノボールによりボールミル混合して作製してもよい。
【0077】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、さらに所定の粘度となるように調製する。成形原料の調製において得られるスラリー状の成形原料の粘度は、2.0〜6.0Pa・sであることが好ましく、3.0〜5.0Pa・sであることが更に好ましく、3.5〜4.5Pa・sであることが特に好ましい。粘度範囲をこのように調整すると、スラリーをシート状に成形し易くなるため好ましい。スラリー粘度は、高過ぎても低過ぎても成形し難くなることがある。尚、スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した値である。
【0078】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をテープ状に成形加工して、一方向に長いグリーンシートを作製する。成形加工方法は、成形原料をシート状に成形してグリーンシートを形成することができれば特に限定されず、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、カレンダーロール法等の公知の方法を使用することができる。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、貫通孔形成用のグリーンシートを作製する。
【0079】
製造するグリーンシートの厚さは、50〜800μmであることが好ましい。
【0080】
得られたグリーンシートの表面に各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を配設する。例えば、図1A、図1B及び図2に示すような、粒子状物質検出装置100を作製する場合には、図1B、図4〜図7に示されるように、各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子が所定の位置に配設されるように、グリーンシートの対応する位置に各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を印刷することが好ましい。配設する各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成するための導体ペーストを調製する。この導体ペーストは、各電極、配線等のそれぞれの形成に必要なそれぞれの材質に合わせて、金、銀、白金、ニッケル、モリブデン、及びタングステンからなる群から選択される少なくとも一種を含有する粉末に、バインダ及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミル等を用いて十分に混錬して調製することができる。このようにして形成した、各電極、配線等の形成に必要な材質を含有するそれぞれの導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷等を用いて印刷して、所定の形状の各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成する。
【0081】
更に具体的には、複数のグリーンシートを作製し、それらのなかの2つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面の一方の端部側に電極を配設し、それぞれの電極から他方の端部に向かって延びる配線を配設して、電極配設グリーンシートを2つ形成する。更に、他の1つのグリーンシートについて、電極配設グリーンシートと重ねたときに配線と重なる位置に接地用電極を配設して、接地電極配設グリーンシートを形成する。更に、他の1つのグリーンシート又は、上記接地電極配設グリーンシートについて、電極配設グリーンシートと重ねたときに電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成する。接地電極配設グリーンシートに切断部を形成する場合には、接地電極配設グリーンシートと切断部形成グリーンシートとは同一のグリーンシートとなる。また、接地電極配設グリーンシートに切断部を形成する場合には、先に切断部を形成し、その後に接地電極を配設してもよい。そして、2つの電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、電極埋設グリーンシートとする。そして、上記複数のグリーンシートを、2つの電極埋設グリーンシートで接地電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、2つの電極で切断部を挟み且つ2つの配線で接地電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成する。上記複数のグリーンシートの積層は、同時に行ってもよいし、電極埋設グリーンシートをまず作製してから、他のグリーンシートと積層してもよい。積層は加圧しながら行うことが好ましい。
【0082】
上記本発明の粒子状物質検出装置の製造方法は、複数のグリーンシートに所望の電極等を配設して、電極等を配設したグリーンシートを積層し、乾燥、焼成して粒子状物質検出装置を製造するため、効率的に本発明の粒子状物質検出装置を製造することができる。
【0083】
(焼成)
グリーンシート積層体を乾燥、焼成して、粒子状物質検出装置を得る。更に具体的には、得られた、グリーンシート積層体を60〜150℃で乾燥し、1200〜1600℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製する。グリーンシートが有機バインダーを含有する場合には、焼成の前に、400〜800℃で脱脂することが好ましい。
【0084】
(電線の高電圧端子への接合)
所定の電線の端部の絶縁被膜を剥がして先端部分を形成する。所定の材質の金属板をT字状に形成し、電線固定用部材として使用することが好ましい。電線の先端部分をT字状の金属板の上に載せ、T字状の金属板の翼部の両端部を折り返すように折り曲げて、電線の先端部分を挟み込むことが好ましい。電線の先端部分をT字状の金属板に載せるときには、電線の先端部分をT字状の金属板の翼部の長手方向に直交する方向に向けて、胴部側に先端が位置するように翼部の長手方向の中央部に配置することが好ましい。
【0085】
所定の接合用金属板を高電圧端子の表面にろう付けすることが好ましい。ろう付けの方法としては、以下に示す方法が好ましい。まず、ろうのなじみを良くするため母材表面を洗浄し、加熱による母材表面の酸化を防ぎ、ろうの流れを促進させるためフラックスを接合面に塗布する。そして、部材を組み立て加熱した後、接合部にろうを押し付けて溶かし、ろうを接合面全体に行き渡らせる。その後、ゆっくりと冷まし部品全体が一体化したら、必要に応じて、フラックスの残滓を除き、加熱によってできた酸化膜を除く目的で洗浄し、ろう付けを完了させる。接合用金属板と高電圧端子とを、ろう付けすることは、熱膨張係数の整合する金属板材料を選定できる点で好ましい。そして、電線を固定した電線固定用部材を、溶接により接合用金属板の表面に接着し、本実施形態の粒子状物質検出装置を得ることが好ましい。溶接の方法としては、スポット溶接が好ましい。電線固定用部材と接合用金属板とを、溶接により接着させることは、接合強度を強固に出来る点で好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0087】
(実施例1)
(成形原料の調製)
アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン:ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0088】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0089】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、切断部形成グリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、250μmとした。
【0090】
得られたグリーンシートの表面に、図1B、図4〜図7に示されるような各電極、接地電極、加熱部、各配線、及び各取り出し端子を形成した。配設する各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。また、加熱部を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。このようにして形成した導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極等を形成した。具体的には、複数のグリーンシートのなかの2つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面の一方の端部側に電極を配設し、それぞれの電極から他方の端部に向かって延びる配線を配設して、電極配設グリーンシートを2つ形成した。更に、他の1つのグリーンシートについて、電極配設グリーンシートと重ねたときに配線と重なる位置に接地用電極を配設して、接地電極配設グリーンシートを形成した。更に、他の1つのグリーンシートについて、電極配設グリーンシートと重ねたときに電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成した。更に、他の1つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部形成グリーンシートを形成した。そして、2つの電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、電極埋設グリーンシートとするとともに、2つの電極埋設グリーンシートで接地電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、加熱部形成グリーンシートを電極埋設グリーンシートの外側に位置するように積層し、2つの電極で切断部を挟み且つ2つの配線で接地電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成した。各配線と、各配線に対応する取り出し端子とは、導体ペーストの埋め込み方法により、層間接続(ビア接続)した。
【0091】
グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシート積層体からなる粒子状物質検出装置の未焼成体を得た。
【0092】
(焼成)
得られた、グリーンシート積層体(粒子状物質検出装置の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製した。得られた粒子状物質検出装置は、0.7cm×0.2cm×12cmの直方体において、他方の端部が、図1Bに示すように細くなった形状であった。細くなった他方の端部は、幅4.25cm、長さ1.2cmであった。貫通孔は、排ガスの流通方向に垂直な断面形状が0.75mm×5.0mmの長方形であった。また、高電圧端子は2.0mm×3.0mmの長方形とした。
【0093】
(電線の接合)
T字状の金属板を電線固定用部材として用い、T字状の金属板に電線の先端部分を配置して、T字状の金属板の翼部の両端部を折り曲げ、電線の先端部分を電線固定用部材で固定した。これにより、図2A,図2Bに示す、先端部分32を電極固定用部材31で固定した構造にした。T字状の金属板の折り曲げは、ペンチなどの工具を用いて行った。電線固定用部材としては、翼部が4.8mm×1.0mm、胴部が7.0mm×2.0mmのT字状の金属板を用いた。T字状の金属板としては、翼部の長手方向と胴部の長手方向とが直交するものを用いた。T字状の金属板の材質はステンレスであった。また、T字状の金属板の厚さは、0.1mmであった。高電圧端子に接合する電線としては、長手方向に直交する断面が円形の導線部を、厚さ0.7mmの絶縁被膜で覆ったものを用いた。導線部の断面積は0.3mmであった。導線部の材質は、ニッケルであり、絶縁被膜の材質は、マイカガラステープおよび純度90%以上のシリカヤーンであった。
【0094】
接合用金属板をろう付けにより高電圧端子に接着した。ろう付けは、以下の方法で行った。先ず母材表面を洗浄し、接合面にフラックスを塗布し、部材を組み立て加熱した後、接合部にろうを押し付けて溶かすことで、ろうを接合面全体に行き渡らせた。部品全体が一体化したら、フラックスの残滓を洗浄した。接合用金属板としては、2.0mm×3.0mmの金属板を用いた。接合用金属板の厚さは0.1mmであった。接合用金属板の材質は、コバールであった。
【0095】
電線を固定した電線固定用部材を、接合用金属板にスポット溶接により接着し、電線を高電圧端子に接合して、粒子状物質検出装置(実施例1)を得た。電線を高電圧端子に接合した状態は、図2A、図2Bに示す電線21と高電圧端子11aとの接合部分22のような状態であった。放電用の電源としては、パルス電源とDC電源を用い、電極の取り出し端子に接続した。電極間のインピーダンスを測定するための測定部としては、アジレントテクノロジー社製のインピーダンスアナライザを用い、電極の取り出し端子に接続した。また、接地電極の取り出し端子は接地させた。得られた粒子状物質検出装置について、以下に示す方法で、電線と高電圧端子との接合状態を検査し、粒子状物質測定を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(接合状態検査方法)
電線から、高電圧端子11aを介して、高電圧電極11に2kVの電圧を印加し、暗室内で検出装置本体の貫通孔内部で放電が生じているかを目視にて観察することで、電線と高電圧端子が導通していることを検査した。放電を確認できた場合、導通が良好(良)であり、接合状態が良好であることになり、放電を確認できない場合、導通が不良であり、接合状態が不良であることになる。
【0097】
(粒子状物質測定方法)
得られた粒子状物質検出装置を、ディーゼルエンジンの排気管に設置した。ディーゼルエンジンとしては、排気量2000ccの直噴−ディーゼルエンジンを使用し、回転数1500rpm、トルク24N・m、EGR(exhaust gas recirculation)開度50%、排ガス温度200℃、吸入空気1.3m(室温換算)/分の運転条件下で排ガスを発生させた。スモークメータ(AVL社製、商品名:型式4158)による排ガス中の粒子状物質量は、2.0mg/mであった。粒子状物質の検出は、以下のように行った。ディーゼルエンジンから排ガスを発生させながら、粒子状物質を荷電集塵する前に、一対の電極間の初期の静電容量(pF)を、1分間に亘って6回測定し、その後、粒子状物質を1分間に亘って荷電集塵し、その後、荷電集塵操作を停止して、再度、静電容量(一対の電極間の1分間集塵後の静電容量)(pF)を、1分間に亘って6回測定した。初期の静電容量及び1分間集塵後の静電容量は、いずれも6回の測定の平均値を求めた。そして、初期の静電容量と1分間集塵後の静電容量との差から、集塵された粒子状物質の質量を算出した。粒子状物質の質量の算出は、粒子状物質の吸着量に対する静電容量の変化について、予め検量線を作成しておき、その検量線を用いて行った。尚、本測定においては、ヒーターによる粒子状物質の燃焼は行わないこととした。粒子状物質を荷電集塵する際には、高電圧電源による印加電圧をDC2.0kVとし、電極間の静電容量測定時には、測定部から印加電圧をAC2V、周波数を10kHzとした。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
(実施例2)
電線を固定した電線固定用部材を、導電性接着剤を介して高電圧端子に接着した以外は、実施例1と同様にして粒子状物質検出装置を作製した。導電性接着材としては、ニッケルあるいはアルミニウム等の金属粉が配合されたセラミックス接着剤を使用した。得られた粒子状物質検出装置について、上記方法で、電線と高電圧端子との接合状態を検査し、粒子状物質測定を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(実施例3)
電線を、金属ペーストを介して高電圧端子に接着した以外は、実施例1と同様にして粒子状物質検出装置を作製した。金属ペーストとしては、銀ペーストを使用した。得られた粒子状物質検出装置について、上記方法で、電線と高電圧端子との接合状態を検査し、粒子状物質測定を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例1)
電線をはんだ付けの方法で高電圧端子に直接接合した以外は、実施例1と同様にして粒子状物質検出装置を作製した。得られた粒子状物質検出装置について、上記方法で、電線と高電圧端子との接合状態を検査し、粒子状物質測定を行った。結果を表1に示す。
【0102】
表1より、実施例1の粒子状物質検出装置が最も電線と高電圧端子とが剥がれ難いものであった。実施例2の粒子状物質検出装置が、次に電線と高電圧端子とが剥がれ難く、実施例3の粒子状物質検出装置が、更にその次に電線と高電圧端子とが剥がれ難く、比較例1が最も電線と高電圧端子とが剥がれ易いものであった。また、表1より、初期測定時と集塵後の静電容量(インピーダンス)の差が明確に示された。これより、1分間のインピーダンス測定でも、排ガス中の粒子状物質量の増加を検出することが可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
DPFの欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識するために好適に利用することができ、これにより大気汚染の防止に貢献することができる。
【符号の説明】
【0104】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、11:電極(他方の電極)、12:電極(一方の電極)、11a:取り出し端子(高電圧端子)、12a,13a,14a:取り出し端子、11b,12b,13b,14b:配線、13:加熱部、14:接地電極、21:電線、22:接合部分、23:導線部、24:絶縁被膜、31:電線固定用部材、31a:金属板、32:先端部分、33:接合用金属板、41:T字状の金属板、42:翼部、43:胴部、51:金属ペースト、61:検出装置本体、62:貫通孔、63,64:取り出し端子、65:一方の端部、66:他方の端部、100,200:粒子状物質検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、前記貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の電極と、前記一対の電極からそれぞれ前記検出装置本体の他方の端部に向かって延びる配線と、前記検出装置本体の他方の端部の表面に配設され、前記一対の電極のなかの一方の電極から延びる配線に接続された前記一方の電極の取り出し端子と、前記一方の端部と前記他方の端部との間の位置の表面に配設された、前記一対の電極のなかの他方の電極から延びる配線に接続された前記他方の電極の取り出し端子と、先端部分に電線固定用部材が配設され、前記電線固定用部材を介して前記他方の電極の取り出し端子に接合された電線を備え、
前記他方の電極を高電圧側として、前記一対の電極に、それぞれの取り出し端子を通じて50〜200kV/cmの電圧を印加して、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記電線固定用部材が、前記電線の先端部分を挟み込んで固定するように折り曲げられた金属板である請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記電線固定用部材は、長方形の翼部と、前記翼部の長手方向における中央部分から前記翼部の長手方向に対して垂直な方向に延びる長方形の胴部とを有するT字状の金属板が、前記翼部の長手方向の両端部が翼部の長手方向の中央に向かって折り返されるように折り曲げられた形状であり、
折り曲げられた前記翼部と、翼部の中央部分との間に前記電線の先端部分が挟み込まれて固定された請求項2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記電線固定用部材が、接合用金属板を介して前記他方の電極の取り出し端子に接着された請求項2又は3に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記電線固定用部材が、導電性接着剤を介して前記他方の電極の取り出し端子に接着された請求項2又は3に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記電線固定用部材が、前記電線の先端部分を覆う金属ペーストであり、前記電線の先端部分が前記金属ペーストを介して前記他方の電極の取り出し端子に接合された請求項1に記載の粒子状物質検出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2010−210535(P2010−210535A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58849(P2009−58849)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】