説明

粒子状物質検出装置

【課題】小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】一方の端部に貫通孔2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設された高電圧電極11及び低電圧電極12と、検出装置本体1の表面に配置された高電圧取り出し端子11aと、少なくとも高電圧取り出し端子11aが配置された部位を覆うように配置された筒状の高電圧取り出し端子絶縁部材20と、高電圧取り出し端子絶縁部材20の更に外側を覆うように配置された金属材料からなる検出装置外筒30と、備え、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置に関する。更に詳しくは、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものになるという問題があった。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることができないため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きいという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の粒子状物質検出装置を提供するものである。
【0008】
[1] 一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、前記貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた低電圧電極及び高電圧電極を有する少なくとも一対の電極と、前記低電圧電極に電気的に接続され、前記検出装置本体の他方の端部に配設された低電圧取り出し端子と、前記高電圧電極に電気的に接続され、前記検出装置本体の表面における、前記一方の端部と前記他方の端部との間の位置に配置された高電圧取り出し端子と、電気絶縁性を有するセラミックスからなり、その一方の端面から他方の端面に貫通する貫通部が形成され、前記貫通部の内部を前記検出装置本体が貫通して、少なくとも前記検出装置本体の前記高電圧取り出し端子が配設された部位を覆うように配置された、筒状の高電圧取り出し端子絶縁部材と、金属材料からなり、前記高電圧取り出し端子絶縁部材を少なくとも覆い、且つ、前記検出装置本体の前記一方の端部における前記貫通孔が形成された部位を外部に露出させるように配置された、筒状の検出装置外筒と、を備え、前記検出装置本体の前記一方の端部に形成された前記貫通孔内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、前記一対の電極に電圧を印加することにより前記貫通孔内に生じる放電により荷電された、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を、前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【0009】
[2] 前記高電圧取り出し端子絶縁部材に形成された前記貫通部は、前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記一方の端面から所定の長さの範囲における貫通方向に垂直な断面の大きさが、前記検出装置本体の長手方向に垂直な断面の大きさと略同一に形成された第一貫通部と、前記第一貫通部から前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記他方の端面まで貫通し、その貫通方向に垂直な断面の大きさが、前記検出装置本体の前記高電圧取り出し端子が配置された側において、前記第一貫通部よりも大きくなるように形成された第二貫通部と、から構成されている前記[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0010】
[3] 前記貫通部の前記第二貫通部における、前記検出装置本体と前記高電圧取り出し端子絶縁部材との隙間に、電気絶縁性を有する無機粉末が充填されている前記[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0011】
[4] 前記検出装置外筒の内部に、前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記一方の端面に接するよう配置された第一蓋栓部材と、前記検出装置外筒の内部に、前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記他方の端面に接するよう配置された第二蓋栓部材と、を更に備えた前記[2]又は[3]に記載の粒子状物質検出装置。
【0012】
[5] 前記高電圧取り出し端子絶縁部材が、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、チタニア及びシリコンからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスからなる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0013】
[6] 前記検出装置本体の前記高電圧取り出し端子に配線が電気的に接続され、前記高電圧取り出し端子と前記配線とが、電気絶縁性を有する接着剤によって被覆されている前記[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粒子状物質検出装置によれば、貫通孔を形成する検出装置本体の壁の内部に少なくとも一対の電極が埋設され、その一対の電極に電圧を印加して貫通孔内に放電を起こし、その放電により貫通孔内に存在する粒子状物質を荷電することができ、その荷電した粒子状物質を電極(具体的には、貫通孔の壁面)に電気的に吸着させることが可能である。これにより、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガス中の粒子状物質の質量を測定することが可能となる。このように、本発明の粒子状物質検出装置は、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質量を概算することができる。これにより、従来の検査方法では検知することが不可能であった、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の粒子状物質検出装置は、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、装置を小型化することができ、狭いスペースに設置することが可能となる。更に、このような小型化に伴って、粒子状物質検出装置を安価に製造することができる。
【0016】
また、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけを貫通孔内に導入するため、貫通孔内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0017】
また、検出装置本体が一方向に長く形成され、その一方の端部に、貫通孔が形成されるとともに、少なくとも一対の電極が配設(埋設)されるため、貫通孔及び一対の電極の部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、一対の電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0018】
更に、上述したように、検出装置本体に形成された貫通孔の内部に放電を起こすためには、検出装置本体の取り出し端子に高電圧を印加する必要があるため、単に装置を小型化した場合には、高電圧の取り出し端子(高電圧取り出し端子)と、検出装置本体を覆うように配置された金属性の検出装置外筒との距離が短くなってしまう。このため、上記した高電圧取り出し端子と検出装置外筒との間で本来必要の無い放電が起こり、絶縁破壊が生じることが予想されるが、本発明の粒子状物質検出装置においては、高電圧取り出し端子が、所定の形状に形成された高電圧取り出し端子絶縁部材によって覆われているため、検出装置外筒との電気的な絶縁性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図1B】図1Aに示す粒子状物質検出装置の側面図である。
【図1C】図1BのA−A’断面を示す模式図である。
【図2A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられる検出装置本体の構成を模式的に示す正面図である。
【図2B】図2Aに示す検出装置本体の側面図である。
【図2C】図2BのB−B’断面を示す模式図である。
【図3】図2CのC−C’断面を示す模式図である。
【図4】図2CのD−D’断面を示す模式図である。
【図5】図2CのE−E’断面を示す模式図である。
【図6】図2CのF−F’断面を示す模式図である。
【図7】図2CのG−G’断面を示す模式図である。
【図8】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示し、図5に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
【図9A】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含む断面を示す模式図である。
【図9B】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含まない断面を示す模式図である。
【図10A】実施例1の粒子状物質検出装置の高電圧取り出し端子絶縁部材の一方の端面側を示す平面図である。
【図10B】図10Aの高電圧取り出し端子絶縁部材の他方の端面側を示す断面図である。
【図10C】図10AのH−H’断面を示す断面図である。
【図10D】図10AのI−I’断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
〔1〕粒子状物質検出装置:
図1A〜図1C、及び図2A〜図2Cに示すように、本発明の一の実施形態の粒子状物質検出装置100は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔2が形成された一方向に長い検出装置本体1、貫通孔2を形成する壁の内部に配設(埋設)された少なくとも一対の電極11,12、及びこの電極11,12に電気的に接続された取り出し端子11a,12b等によって構成される、粒子状物質を検出するためのセンサーとなる部位(以下、これらからなる部位を「センサー部40」ということがある)と、この検出装置本体1の一部を覆うように配置された筒状の高電圧取り出し端子絶縁部材20と、高電圧取り出し端子絶縁部材20の更に外側を覆うように配置された金属材料からなる検出装置外筒30と、備えた粒子状物質検出装置100である。
【0022】
ここで、図1Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図であり、図1Bは、図1Aに示す粒子状物質検出装置の側面図であり、図1Cは、図1BのA−A’断面を示す模式図である。また、図2Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態に用いられる検出装置本体(具体的には、上記センサー部)の構成を模式的に示す正面図であり、図2Bは、図2Aに示す検出装置本体の側面図であり、図2Cは、図2BのB−B’断面を示す模式図である。なお、図1A、図2A、及び図2Cにおいては、一部の取り出し端子(取り出し端子12a等)を捨象した形で作図を行った。
【0023】
また、図3は、図2CのC−C’断面を示す模式図であり、図4は、図2CのD−D’断面を示す模式図であり、図5は、図2CのE−E’断面を示す模式図であり、図6は、図2CのF−F’断面を示す模式図であり、図7は、図2CのG−G’断面を示す模式図である。
【0024】
上述したセンサー部40は、図2A〜図2C、及び図3〜図7に示すように、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する壁の内部に配設(埋設)され、誘電体で覆われた低電圧電極12及び高電圧電極11を有する少なくとも一対の電極11,12と、低電圧電極12に電気的に接続され、検出装置本体1の他方の端部1bに配設された低電圧取り出し端子12aと、高電圧電極11に電気的に接続され、検出装置本体1の表面における、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配置された高電圧取り出し端子11aと、を備えている。
【0025】
ここで、上記貫通孔2は少なくとも一つ形成されている必要があり、二つ以上であってもよい。また、一対の電極11,12は少なくとも一対備えることが必要であり、二対以上であってもよい。
【0026】
図1A〜図1C、及び図2A〜図2Cに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、一対の電極11,12が検出装置本体1の内部に埋設されており、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の電極11,12がそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。そして、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の電極11,12に電圧を印加することにより貫通孔2内に生じる放電により荷電された、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能である。更に、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより、貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能である。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。これにより、従来の検査方法では検知することが不可能であった、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0027】
このように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔2内に流入した排ガス中の粒子状物質の質量を測定することが可能となり、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔2内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質量を概算することができる。
【0028】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、装置を小型化することができ、例えば、自動車の排気系のような狭いスペースに設置することが可能となる。更に、このような小型化に伴って、粒子状物質検出装置100を安価に製造することができる。
【0029】
また、例えば、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部を貫通孔2内に導入するため、貫通孔2内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0030】
また、検出装置本体1が一方向に長く形成され、その一方の端部1aに、貫通孔2が形成されるとともに、少なくとも一対の電極11,12が配設(埋設)されるため、貫通孔2及び一対の電極11,12が配設される部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、一対の電極11,12の取り出し端子11a,12a等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0031】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、低電圧取り出し端子12aが検出装置本体1の他方の端部1bに配設され、且つ、高電圧取り出し端子11aが検出装置本体1の表面における、一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配置されており、高電圧取り出し端子11aと低電圧取り出し端子12aとを間隔を開けて配設することができる。このため、一対の電極11,12間に電圧を印加するために、高電圧取り出し端子11aと低電圧取り出し端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを防止することができる。
【0032】
ここで、本実施形態において、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の30%の長さに相当する位置までの範囲をいう。従って、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる。
【0033】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、高電圧取り出し端子11aと低電圧取り出し端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がし易くなることがある。一方、100mmより長いと、高電圧取り出し端子11aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100の検出装置本体1を配管等に装着したときに、検出装置本体1の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0034】
なお、一対の電極11,12と各取り出し端子11a,12aとは、一対の電極11,12からそれぞれ検出装置本体1の他方の端部1bに向かって延びる配線11b,12bによって電気的に接続されている。
【0035】
そして、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、筒状の高電圧取り出し端子絶縁部材20と、筒状の検出装置外筒30と、を更に備えている。高電圧取り出し端子絶縁部材20は、電気絶縁性を有するセラミックスからなり、その一方の端面20aから他方の端面20bに貫通する貫通部22が形成され、この貫通部22の内部を検出装置本体1が貫通して、少なくとも検出装置本体1の高電圧取り出し端子11aが配設された部位を覆うように配置されたものであり、また、検出装置外筒30は、金属材料からなり、高電圧取り出し端子絶縁部材20を少なくとも覆い、且つ、検出装置本体1の一方の端部1aにおける貫通孔2が形成された部位を外部に露出させるように配置ものである。
【0036】
上述したように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、検出装置本体1に形成された貫通孔2の内部に放電を起こすために、取り出し端子11a,12a相互間に高電圧を印加する必要があるが、例えば、単に粒子状物質検出装置100を小型化した場合には、高電圧取り出し端子11aと、金属材料からなる検出装置外筒30との距離が短くなってしまうため、高電圧取り出し端子11aと検出装置外筒30との間で本来必要の無い放電が起こり、絶縁破壊が生じる可能性がある。本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、高電圧取り出し端子11aが、所定の形状に形成された高電圧取り出し端子絶縁部材20によって覆われているため、検出装置外筒30との電気的な絶縁性を確保することができる。これにより、装置内における絶縁破壊の発生を有効に防止することができる。
【0037】
〔1−1〕粒子状物質検出装置の構成要素:
次に、本実施形態の粒子状物質検出装置を構成する各構成要素について更に具体的に説明する。
【0038】
〔1−1a〕検出装置本体:
検出装置本体は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長く構成された、粒子状物質検出装置の基体となる部位である。検出装置本体は誘電体から構成されており、この貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部には少なくとも一対の電極が配置されており、一対の電極に電圧を印加することにより貫通孔内に放電を生じさせることができる。なお、検出装置本体の一方の端部における貫通孔が形成された部位は、排ガスが流通する配管内に挿入して、排ガス中の粒子状物質の測定を行うため、高電圧取り出し端子絶縁部材及び検出装置外筒によって覆われておらず、外部に露出するように構成されている。
【0039】
検出装置本体を構成する誘電体は、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アルミナを好適に用いることができる。このような誘電体からなる検出装置本体の内部に電極(高電圧電極及び低電圧電極)を埋設することにより、誘電体に覆われた電極を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、本実施形態において、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0040】
図2A〜図2Cに示すように、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排ガス配管に挿入した時に排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。
【0041】
また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さ(ガス流通方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。そして、検出装置本体1の長手方向長さは、検出装置本体1の厚さの10〜100倍であることが好ましく、検出装置本体1のガス流通方向の長さの3〜100倍であることが好ましい。
【0042】
検出装置本体1の形状は、図2A〜図2Cに示すように、長手方向に直行する断面形状が長方形の板状であってもよいし、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよいし、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0043】
貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体1の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、一対の電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。
【0044】
貫通孔2の大きさを上記範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、貫通孔2内に粒子状物質を荷電するために効果的な放電を起こすことが可能となる。
【0045】
また、貫通孔2の形状としては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)させることや、流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。
【0046】
図8に示す本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置200)においては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分2aのみが拡開され、拡開部分2bが形成されている。また、図8に示す粒子状物質検出装置200においては、貫通孔2は、検出装置本体1の長手方向に広がるように拡開されているが、検出装置本体1の厚さ方向に広がるように拡開されてもよい。図8は、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示し、図5に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態(粒子状物質検出装置100)の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
【0047】
拡開部分2bの拡開された幅(貫通孔2のガス流通方向における最先端部分の幅)W1は、貫通孔2の拡開されていない部分の幅W2に対して2〜200%が好ましい。また、拡開部分2bの、貫通孔2のガス流通方向における奥行き(拡開部分の奥行き)L1は、検出装置本体1の、貫通孔2のガス流通方向における長さL2の5〜30%が好ましい。
【0048】
図9A、及び図9Bに示すように、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置300)は、検出装置本体1の中心軸に直交する断面形状が、貫通孔2の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状であることが好ましい。検出装置本体の形状をこのようにすることにより、貫通孔のガスの流通方向を、配管内の排気ガスの流通方向に合わせた(平行にした)ときに、配管内の排気ガスの流れを良好にすることができる。
【0049】
粒子状物質検出装置(検出装置本体)の、貫通孔の貫通方向における「中央部分」とは、粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向における長さを3等分したときの、中央に位置する「3分の1の範囲」を意味する。従って、「粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向において、中央部分で最も太く」というときは、上記「中央部分に位置する3分の1の範囲」に最も太い部分が位置することを意味する。ここで、図9Aは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含む断面を示す模式図であり、図9Bは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含まない断面を示す模式図である。
【0050】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極(例えば、高電圧電極11や低電圧電極12)、及び配線等を挟みながら積層してセンサー部40を作製することができるため、本実施形態の粒子状物質検出装置を効率的に製造することが可能となる。
【0051】
〔1−1b〕電極(高電圧電極,低電圧電極):
本実施形態の粒子状物質検出装置は、図2A〜図2Cに示すように、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設された一対の電極(高電圧電極11及び低電圧電極12)を備えている。この一対の電極11,12は、貫通孔2を挟むようにして誘電体で覆われており、この一対の電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に放電を起こすことが可能に構成されている。
【0052】
一対の電極11,12は、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設されていればよく、例えば、図2Cに示すように貫通孔2を挟むように配設されていることが好ましいが、壁の電気的特性を検知でき、貫通孔2内に放電を起こせれば、貫通孔2を取り囲む壁のどの位置に一対の電極が配設されていてもよい。また、複数対の電極を配設し、異なる対の電極により、放電と電気的特性の検知とを別々に行ってもよい。このような場合には、放電を行うための一対の電極として高電圧電極と低電圧電極とを有することとなる。
【0053】
放電の種類としては、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群より選択される一種であることが好ましい。このような放電を生じさせるため、本実施形態の粒子状物質検出装置は、高電圧取り出し端子11a及び低電圧取り出し端子12aに接続された、放電用の電源(図示せず)を更に備えることが好ましい。放電用の電源としては、高電圧の交流電源、直流電源等が好ましい。なお、例えば、このような放電用の電源は、高電圧取り出し端子11a及び低電圧取り出し端子12aにそれぞれ電気的に接続された配線19によって接続することができる。
【0054】
また、放電させるために印加する電圧としては、パルス電圧、矩形波等の交流電圧、等の電圧が好ましい。また、印加する電圧の条件としては、ギャップ(一対の電極相互間の距離)、ガス温度によって変わるが50〜200kV/cmが好ましい。また、電圧を印加するときの、電力は、0.1〜10Wが好ましい。
【0055】
図1A〜図1C、及び図2A〜図2Cに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に流入する流体(即ち、排ガス)に含有される粒子状物質が荷電されていない場合に、貫通孔2内に放電を起こすことにより、粒子状物質を荷電して、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させるものである。そして、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内の放電により改めて荷電させる必要がないため、貫通孔2内に放電を起こすことなく、貫通孔2の壁面にその荷電されている粒子状物質を電気的に吸着させるものである。
【0056】
上述したように、貫通孔2内に放電を起こして粒子状物質を荷電させる場合には、荷電した粒子状物質は、放電中に、その荷電した粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられ、壁面に吸着される。これに対し、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合には、一対の電極11,12間に、所定の条件の電圧を印加し、荷電している粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する電極側に電気的に引き寄せられるようにする。ここで、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合に、一対の電極11,12間に印加する電圧の条件は、4〜40kV/cmであることが好ましい。
【0057】
電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0058】
電極11,12の厚さは特に限定されず、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、5〜30μmであることが好ましい。電極11,12の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0059】
一対の電極のなかの一方の電極(例えば、高電圧電極11)と貫通孔2との間の距離、及び他方の電極(例えば、低電圧電極12)と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に放電を生じさせることができる。高電圧電極11及び低電圧電極12と、貫通孔2との間の距離は、高電圧電極11を覆う誘電体及び低電圧電極12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0060】
〔1−1c〕取り出し端子(高電圧取り出し端子,低電圧取り出し端子):
一対の電極を構成する高電圧電極11及び低電圧電極12は、それぞれの電極11,12から検出装置本体1の他方の端部1b側に向かって配線11b,12bが延出され、それぞれの取り出し端子(高電圧取り出し端子11a,低電圧取り出し端子12a)と電気的に接続されている。この取り出し端子は、一対の電極に電圧を印加するための電源等からの配線(例えば、配線19)を接続する部分である。
【0061】
低電圧電極12の取り出し端子(低電圧取り出し端子12a)は、検出装置本体1の他方の端部1bに配置されており、貫通孔2及び一対の電極が配設される部分(即ち、一方の端部1a)と低電圧取り出し端子12aとの間隔を大きくとることができる。このため、貫通孔2等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、低電圧取り出し端子12aが配設されている他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。低電圧取り出し端子12aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になったりするため、低電圧取り出し端子12aを配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0062】
低電圧取り出し端子12aは、図2Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。また、低電圧取り出し端子12aは、検出装置本体1の他方の端部1bにおける側面の、幅方向における一方の端部に配置されていることが好ましい。また、図2Bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。低電圧取り出し端子12aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2.0mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。また、低電圧取り出し端子12aの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜1000μm程度が好ましい。低電圧取り出し端子12aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等を挙げることができる。
【0063】
また、高電圧電極11と電気的に接続された高電圧取り出し端子11aは、検出装置本体1の表面における、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配置されている。これにより、高電圧取り出し端子11aと低電圧取り出し端子12aとを間隔を開けて配設することができる。このため、一対の電極11,12間に電圧を印加するために、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを防止することができる。
【0064】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、高電圧取り出し端子11aと低電圧取り出し端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がし易くなることがある。一方、100mmより長いと、高電圧取り出し端子11aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100の検出装置本体1を配管等に装着したときに、検出装置本体1の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0065】
また、高電圧取り出し端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100を、貫通孔2の部分が配管内に挿入されるように、配管に装着したときに、配管内を流通する高温の排ガスの熱が、高電圧取り出し端子11aに影響を及ぼし易くなることがある。
【0066】
高電圧取り出し端子11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜4mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。また、高電圧取り出し端子11aの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜1000μm程度が好ましい。高電圧取り出し端子11aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0067】
また、各電極11,12と各取り出し端子11a,12aとを電気的に接続する配線11b,12bの幅は、特に限定されず、例えば、0.7〜4mm程度が好ましい。また、配線11b,12bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。配線11b,12bの材質としては、各取り出し端子と同様の材質を挙げることができる。
【0068】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置における粒子状物質の質量を検出する方法としては、荷電した粒子状物質が、貫通孔の壁面に吸着されることによる、一対の電極11,12の電気的な特性変化を測定する方法を挙げることができる。具体的には、例えば、一対の電極11,12間の静電容量等から計算されるインピーダンスを測定し、インピーダンスの変化から吸着された粒子状物質の質量を算出し、排ガス中の粒子状物質(質量)を検出する方法を挙げることができる。従って、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、取り出し端子11a,12aに接続された、電極11,12間のインピーダンスを測定する測定部(図示せず)を更に備えることが好ましい。測定部としては、静電容量だけでなく、インピーダンス計測可能なLCRメーターやインピーダンスアナライザ等を挙げることができる。
【0069】
〔1−1d〕加熱部:
図2C、図3、及び図7に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置は、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を更に備えることが好ましい。加熱部13により、貫通孔2を形成する壁に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができ、また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。
【0070】
加熱部13は、幅広のフィルム状であってもよいが、線状の金属材料を、波状に配置し、先端部分でU−ターンするように配置したものであることが好ましい。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱することが可能となる。加熱部13の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されることが好ましいが、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子(検出装置本体)の破損が起きにくいという利点がある。なお、このような加熱部により、貫通孔の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
【0071】
本実施形態の粒子状物質検出装置においては、一対の電極11,12のなかの少なくとも一方の電極の、貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に、少なくとも一の加熱部13が配設されていることが好ましい。このように、加熱部13が、一対の電極11,12の貫通孔が形成されている側に対して反対側の位置に配設されていることにより、加熱部13の影響を受けることなく、一対の電極11,12により、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定し易くなる。図2Cにおいては、一対の電極のうちのそれぞれの電極(即ち、高電圧電極11及び低電圧電極12)の貫通孔2が形成されている側に対して反対側の位置に、それぞれ一つずつ加熱部13が配設された場合の例を示している。
【0072】
なお、加熱部13の配置及び数は、温度調節、捕集した粒子状物質の酸化除去等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。例えば、図2Cにおいては、それぞれの電極11,12が埋設された壁の内部に、それぞれ一つずつ加熱部13が配設されているが、各電極11,12の貫通孔2が配設されている側に対して反対側の位置に複数の加熱部が配設されてもよい。また、例えば、一対の電極11,12のうちのいずれか一方の電極が埋設された壁の内部に加熱部を配置する場合には、低電圧電極12が配設された壁の内部に加熱部を配設することが好ましい。
【0073】
また、図3及び図7に示す加熱部13は、配線13bに接続され、それぞれの配線13bは、図2Bに示すように、各取り出し端子13aに層間接続されている。加熱部13の取り出し端子13aも、低電圧電極12の低電圧取り出し端子12aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図2Bにおいては、取り出し端子12aが、検出装置本体1の側面においてその幅方向における一方の端縁に配置され、取り出し端子13a,13aが、取り出し端子12aの横に、2本が並ぶように配置されているが、取り出し端子12a及び取り出し端子13a,13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0074】
加熱部13が線状である場合、その線の幅は、特に限定されず、例えば、0.05〜1mm程度が好ましい。また、加熱部13の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。配線13bの幅は、特に限定されず、例えば、0.7〜4mm程度が好ましい。また、配線13bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。加熱部13に対応する取り出し端子13aの幅は、特に限定されず、例えば、0.1〜2mm程度が好ましい。また、取り出し端子13aの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜1000μm程度が好ましい。配線13b及び取り出し端子13aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0075】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、貫通孔を形成する壁又は一対の電極に吸着された粒子状物質を、一対の電極に電圧を印加して貫通孔内に放電(即ち、粒子状物質の荷電とは別の条件の放電)を起こして、酸化除去することができるものであってもよい。粒子状物質を酸化除去する場合の放電を生じさせる条件としては、電界強度が10〜200kV/cmであり、エネルギー投入量が、被処理物質(粒子状物質)に対して0.05〜10J/μgであることが好ましい。
【0076】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、加熱部の取り出し端子に接続された、加熱用の電源(図示せず)を更に備えることが好ましい。加熱用の電源としては、定電流電源等を挙げることができる。
【0077】
〔1−1e〕接地電極:
更に、本実施形態の粒子状物質検出装置は、図2C、及び図5に示すように、一対の電極11,12のそれぞれから検出装置本体1の他方の端部1bに向かって延びる配線11b,12bの間に挟まれる位置に、帯状の接地電極14が配設されていてもよい。接地電極14とは、接地されている電極である。
【0078】
本実施形態の粒子状物質検出装置は、一対の電極間の所定の電気的特性を検知することにより、貫通孔を形成する壁の電気的特性の変化を測定し、貫通孔の壁面に吸着した粒子状物質を検出するものであるが、一対の電極間の所定の電気的特性を検知するときには、一対の電極に接続されるとともに誘電体に埋設された2本の配線間の当該所定の電気的特性も合わせて検知することができる。
【0079】
このため、例えば、得られる測定値としては、一対の電極と2本の配線との両方により検知された値となる。このような2本の配線間の当該所定の電気的特性の影響が大きい場合には、貫通孔を形成する壁の電気的特性が変化し、その変化が一対の電極により検知されたとしても、同時に一対の電極に接続された当該2本の配線間の電気的特性も測定していることになるため、貫通孔を形成する壁の電気的特性の変化を正確に測定することが困難になることがあるが、接地電極が配設された粒子状物質検出装置は、上記一対の電極のそれぞれから延びる配線の影響を接地電極により抑制しながら、上記一対の電極間の電気的特性を検知することができるため、上記配線の影響による測定誤差を小さくすることができる。これにより、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を更に精度よく測定することが可能となる。
【0080】
接地電極を有さない場合には、一対の電極に電圧を印加したときに、例えば、高電圧電極に接続された配線(一方の配線)から、低電圧電極に接続された配線(他方の配線)へと、2本の配線の間に挟まれた誘電体を通じて電流が流れることにより、2本の配線間の電気的特性が検知される。これに対し、接地電極を有する場合には、2本の配線間に接地電極が配設されているため、一方の配線から接地電極に電流が流れ、一方の配線から他方の配線への電流の流れは生じない。そのため、一方の配線と他方の配線との間の電気的特性は検知されず、一対の電極に電圧を印加したときには、一対の電極間に位置する貫通孔を形成する壁の電気的特性のみを検知することができる。
【0081】
図2A〜図2C、及び図5に示すように、一対の電極11,12から延びるそれぞれの配線11b、12bの間に挟まれる位置に、帯状の接地電極14が配設されている場合には、接地電極14が配設される範囲は、一方の配線(例えば、配線11b)から他方の配線(例えば、配線12b)へと流れる電流を妨げることができる範囲であることが好ましく、少なくとも一方の配線を、接地電極14に対して垂直方向に移動させて接地電極14に重ね合わせたときに、当該配線の長さの95%以上が接地電極14と重なることが好ましい。更に、接地電極14が、検出装置本体1の長手方向及び幅方向の両方に平行な平面内に配置されていることが好ましい。
【0082】
また、この接地電極14は、その幅が、検出装置本体1の幅の70〜95%であり、接地電極14の長さが、検出装置本体1の長さの50〜95%であることが好ましく、接地電極14の幅が、検出装置本体1の幅の80〜90%であり、接地電極14の長さが、検出装置本体1の長さの70〜90%であることが更に好ましい。これにより、更に効果的に、一方の配線から他方の配線へと流れる電流を妨げることができる。ここで、「接地電極14の幅」というときは、貫通孔2の貫通方向(流体の流通方向)における、接地電極14の長さをいい、「検出装置本体1の幅」というときは、貫通孔2の貫通方向(流体の流通方向)における、検出装置本体1の長さをいう。
【0083】
接地電極14の形状は、特に限定されず、長方形、長円形等を挙げることができる。また、接地電極14の厚さは特に限定されず、一対の電極11,12から延出された一方の配線11bから他方の配線12bへと流れる電流を妨げることが可能であればよい。例えば、10〜200μmであることが好ましい。接地電極の材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0084】
接地電極14と配線11bとの間の距離、及び接地電極14と配線12bとの間の距離は、それぞれ100〜500μmであることが好ましく、150〜250μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に一方の配線から他方の配線へと流れる電流を妨げることができる。
【0085】
また、このような接地電極14には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線14bが接続されており、配線14bが、その先端(接地電極14に接続されていない側の先端)部分で、図2Bに示す取り出し端子14aに層間接続(ビア接続)されている。
【0086】
配線14bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線14bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線14bの材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0087】
〔1−1f〕高電圧取り出し端子絶縁部材:
図1A〜図1Cに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、電気絶縁性を有するセラミックスからなり、その一方の端面20aから他方の端面20bに貫通する貫通部22が形成され、貫通部22の内部を検出装置本体1が貫通して、少なくとも検出装置本体1の高電圧取り出し端子11aが配設された部位を覆うように配置された、筒状の高電圧取り出し端子絶縁部材20を備えている。なお、この高電圧取り出し端子絶縁部材20は、粒子状物質検出装置100の外筒となる検出装置外筒30に更に挿嵌された状態で保持されている。
【0088】
この高電圧取り出し端子絶縁部材20によって、高電圧電極11(図2C参照)に電気的に接続された高電圧取り出し端子11aと、検出装置本体1の一部を覆うように配置された金属性の検出装置外筒30との間に絶縁破壊が生じることを有効に防止することができ、粒子状物質検出装置100の小型化を良好に実現することができる。
【0089】
この高電圧取り出し端子絶縁部材20は、検出装置外筒30と検出装置本体1との間に配置され、その一方の端面20aから他方の端面20bに貫通する貫通部22に検出装置本体1を貫通させ、検出装置外筒30の一方の端面30a側から、検出装置本体1の貫通孔2が形成された部位を露出させることができるような大きさに構成されたものであれば、その形状については特に制限はない。例えば、図1A〜図1Cに示すように、検出装置外筒30の内部に挿入されるような円柱状の外周形状を有し、その内部に、検出装置本体1を貫通させ得る貫通部22が形成されたものであればよい。
【0090】
上述した高電圧取り出し端子絶縁部材20に形成された貫通部22は、高電圧取り出し端子絶縁部材20の一方の端面20aから所定の長さの範囲における貫通方向に垂直な断面の大きさが、検出装置本体1の長手方向に垂直な断面の大きさと略同一に形成された第一貫通部22aと、この第一貫通部22aから高電圧取り出し端子絶縁部材20の他方の端面20bまで貫通し、その貫通方向に垂直な断面の大きさが、検出装置本体1の高電圧取り出し端子11aが配置された側において、第一貫通部22aよりも大きくなるように形成された第二貫通部22bと、から構成されていることが好ましい。
【0091】
このように構成することによって、高電圧取り出し端子絶縁部材20の他方の端面20b側から検出装置本体1を挿入した場合に、高電圧取り出し端子絶縁部材20を貫通させて検出装置本体1の一方の端部1aを露出させることができるとともに、第二貫通部22b内に、検出装置本体1の表面に配置された高電圧取り出し端子11aに接続された配線19を取り回すことができる。
【0092】
この高電圧取り出し端子絶縁部材20を構成する電気絶縁性を有するセラミックスとしては、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、チタニア及びシリコンからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスであることが好ましい。より具体的には、アルミナ、コージェライト、ジルコニアを好適例として挙げることができる。
【0093】
高電圧取り出し端子絶縁部材20は、検出装置本体1の表面に配置された高電圧取り出し端子11aを少なくとも覆い、且つ、検出装置本体1の一方の端部側の貫通孔2が形成された部位を外部に露出させることができるように構成されていれば、その長さ(即ち、高電圧取り出し端子絶縁部材20の一方の端面20aから他方の端面20bまでの長さ)については特に制限はないが、検出装置本体1の長手方向の長さに対して、5〜35%に相当する長さであることが好ましく、10〜30%に相当する長さであることが更に好ましい。このように構成することによって、高電圧取り出し端子11aからの絶縁破壊を有効に防止することができる。
【0094】
また、高電圧取り出し端子絶縁部材20は、粒子状物質検出装置100の外筒となる検出装置外筒30に更に挿嵌された状態で保持されるため、高電圧取り出し端子絶縁部材20の長手方向に垂直な断面の外周形状は、例えば、検出装置外筒30の内部に隙間なく挿嵌され得る形状であることが好ましい。このように構成することによって、高電圧取り出し端子絶縁部材20及び検出装置本体1を安定した状態で保持することが可能となる。
【0095】
また、高電圧取り出し端子絶縁部材20は、高電圧取り出し端子絶縁部材20の第二貫通部22bが形成された部位の厚さ(肉厚)が2.0mm以上であることが好ましい。
【0096】
また、このような高電圧取り出し端子絶縁部材20の貫通部22に、検出装置本体1を配置(挿嵌)する際には、検出装置本体1の高電圧取り出し端子11aと、この取り出し端子11aに接続された配線19とを、例えば、電気絶縁性を有する接着剤等によって被覆しておくことが好ましい。このように構成することによって、高電圧取り出し端子11aからの絶縁破壊をより有効に防止することができる。なお、このような接着剤としては、例えば、アルミナを主成分とし、溶媒としてアルコール系溶剤を用いた接着剤を挙げることができる。
【0097】
更に、例えば、第二貫通部22b内における検出装置本体との隙間26に、電気絶縁性を有する無機粉末が充填されていてもよい。このように構成することによって、高電圧取り出し端子11aと検出装置外筒30との絶縁破壊をより有効に防止することができるとともに、高電圧取り出し端子11aと低電圧取り出し端子12a等の他の取り出し端子との沿面放電も有効に防止することが可能となる。上述した無機粉末としては、例えば、タルク粉末、炭酸カルシウム粉末、ドロマイト粉末、及びマイカ粉末からなる群より選択される少なくとも一種の電気絶縁性を有する無機粉末を挙げることができる。
【0098】
なお、第二貫通部22b内における検出装置本体1との隙間26に、無機粉末を充填する際には、高電圧取り出し端子絶縁部材20の他方の端面20b側から圧力をかけて、第二貫通部22b内の隙間26に充填した無機粉末を押し固めることが好ましい。
【0099】
また、第二貫通部22b内における検出装置本体1との隙間26には、例えば、電気絶縁性を有する接着剤を充填してもよい。このように構成することによって、無機粉末を充填した場合と同様の効果を得ることができる。
【0100】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、検出装置外筒30の内部に、高電圧取り出し端子絶縁部材20の一方の端面20aに接するよう配置された第一蓋栓部材23と、検出装置外筒30の内部に、高電圧取り出し端子絶縁部材20の他方の端面20bに接するよう配置された第二蓋栓部材24と、を更に備えたものであってもよい。
【0101】
上記した第一蓋栓部材23及び第二蓋栓部材24は、検出装置外筒30の内部に、高電圧取り出し端子絶縁部材20及び検出装置本体1を良好に保持するための蓋栓部材であり、例えば、図1Cにおいては、第一蓋栓部材23が、セラミックスによって形成された蓋栓部材23aと、タルク粉末を押し固めて形成した蓋栓部材23bとの二つ蓋栓部材によって構成され、一方、第二蓋栓部材24が、セラミックスによって形成された蓋栓部材24aと、タルク粉末を押し固めて形成した蓋栓部材24bと、更にその外側に配置されたセラミックスによって形成された蓋栓部材24cとの三つ蓋栓部材によって構成された場合の例を示している。
【0102】
このような蓋栓部材(第一蓋栓部材23及び第二蓋栓部材24)を配置することによって、押し固めたタルク粉末の洩れを防止することができる。また、タルクを押し固めるために圧力をかける際、高電圧取り出し端子絶縁部材20の内部に侵入してきたタルク粉末によって高電圧線接続部の接続が切断されることを防ぐことも可能となる。
【0103】
〔1−1g〕検出装置外筒:
検出装置外筒30は、金属材料からなり、高電圧取り出し端子絶縁部材20を少なくとも覆い、且つ、この高電圧取り出し端子絶縁部材20を貫通するように配置(挿嵌)された検出装置本体1の一方の端部1aにおける貫通孔2が形成された部位を外部に露出させるように配置された、筒状の外筒である。
【0104】
このような検出装置外筒30を備えることにより、排ガスが流通する配管内に、検出装置本体1の貫通孔2が形成された部位を挿入した状態で、粒子状物質検出装置100を良好に設置することができる。例えば、図示は省略するが、煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスが通過する配管に、検出装置外筒の直径と同程度のネジ穴を開け、そのネジ穴に、検出装置本体の一方の端部における貫通孔が形成された部位を挿入し、上記ネジ穴と検出装置外筒と固定し、粒子状物質検出装置を設置することができる。
【0105】
検出装置外筒は、例えば、鉄、ニッケル、白金、銅、金、モリブデン、タングステン等の金属材料によって構成することができ、合金としては、例えば、ステンレス、コバール等を挙げることができる。特に、耐腐食性に強く、熱伝導性が高く、安価な材料である、ステンレスを好適例として挙げることができる。
【0106】
図1A〜図1Cに示すように、この検出装置外筒30は、例えば、検出装置外筒30の内部における第二蓋栓部材24よりも更に外側に、所定形状の座金25(ワッシャー)を配置し、第一蓋栓部材23、高電圧取り出し端子絶縁部材20、及び第二蓋栓部材24を強固に密着させるように、検出装置外筒30の後方の部位(即ち、検出装置外筒30の他方の端面30b側の端部)がかしめられたものであってもよい。これにより、蓋栓部材23b,24bを構成するタルク粉末や、第二貫通部22b内に充填された無機粉末がより強固に押し固められて、絶縁破壊や不要な沿面放電を更に有効に防止することが可能となる。
【0107】
検出装置外筒30の形状は、その内部に高電圧取り出し端子絶縁部材を配置(挿嵌)することができるような筒状のものであれば、例えば、円筒状以外の、その断面の形状が多角形の角柱状等であってもよい。検出装置外筒30の長さ(即ち、検出装置外筒30の一方の端面30aから他方の端面30bまでの長さ)については特に制限はないが、検出装置本体1の長手方向の長さに対して、50〜100%に相当する長さであることが好ましく、80〜90%に相当する長さであることが好ましい。
【0108】
〔2〕粒子状物質検出装置の製造方法:
次に、本実施形態の粒子状物質検出装置を製造する方法について、図1A〜図1Cに示す本実施形態の粒子状物質検出装置100を製造する場合の例を説明する。
【0109】
〔2−1〕成形原料の調製:
まず、検出装置本体1を含むセンサー部40を、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)を用いて作製する。具体的には、アルミナ、コージェライト化原料、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種のセラミック原料(誘電体原料)と、成形原料として使用する他の成分とを混合し、スラリー状の成形原料を調製する。セラミック原料(誘電体原料)としては、上記原料が好ましいが、これに限定されるものではない。他の原料としては、バインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等を使用することが好ましい。
【0110】
バインダーとしては、特に限定されるものではないが、水系バインダー、非水系バインダーのどちらでもよい。例えば、水系バインダーとしてはメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用でき、非水系バインダーとしてはポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することができる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を好適例として挙げることができる。
【0111】
バインダーの添加量は、誘電体原料100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましく、6〜17質量部であることが更に好ましい。このようなバインダー含有量とすることにより、スラリー状の成形原料を成形してグリーンシートを成形したとき、及び、乾燥、焼成したときに、クラック等の発生を防止することが可能となる。
【0112】
可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等を使用することができる。
【0113】
可塑剤の添加量は、バインダー添加量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることが更に好ましい。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形し易くなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入るなどハンドリング性が悪くなることがある。
【0114】
分散剤としては、水系の分散剤としては、アニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等を使用することができ、非水系の分散剤としては、脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等を使用することができる。
【0115】
分散剤は、誘電体原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることが更に好ましい。0.5質量部より少ないと、誘電体原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、誘電体原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
【0116】
分散媒としては、水等を使用することができる。分散媒は、誘電体原料100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、75〜150質量部であることが更に好ましい。
【0117】
上記各原料をアルミナ製ポット及びアルミナ玉石を用いて十分に混合してグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製する。また、これらの材料を、モノボールによりボールミル混合して作製してもよい。
【0118】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、さらに所定の粘度となるように調製する。成形原料の調製において得られるスラリー状の成形原料の粘度は、2.0〜6.0Pa・sであることが好ましく、3.0〜5.0Pa・sであることが更に好ましく、3.5〜4.5Pa・sであることが特に好ましい。粘度範囲をこのように調整すると、スラリーをシート状に成形し易くなるため好ましい。スラリー粘度は、高過ぎても低過ぎても成形し難くなることがある。なお、スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した値である。
【0119】
〔2−2〕成形加工:
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をテープ状に成形加工して、一方向に長いグリーンシートを作製する。成形加工方法は、成形原料をシート状に成形してグリーンシートを形成することができれば特に限定されず、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、カレンダーロール法等の公知の方法を使用することができる。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、貫通孔形成用のグリーンシートを作製する。作製するグリーンシートの厚さは、50〜800μmであることが好ましい。
【0120】
〔2−3〕グリーンシート積層体の形成:
次に、得られたグリーンシートの表面に各電極(高電圧電極、低電圧電極、接地電極)、配線、加熱部、及び取り出し端子を配設する。例えば、まず、配設する各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成するための導体ペーストを調製し、得られた導体ペーストを、図3〜図7に示すように、各グリーンシートの対応する位置に印刷して、各電極(高電圧電極11、低電圧電極12、接地電極14)、配線(配線11b,12b,13b,14b)、加熱部13、及び取り出し端子(取り出し端子11a,12a,13a,14a)を形成する。
【0121】
上述した導体ペーストは、各電極や配線等のそれぞれの形成に必要なそれぞれの材質に合わせて、金、銀、白金、ニッケル、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する粉末に、バインダー及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミル等を用いて十分に混錬して調製することができる。導体ペーストの印刷方法については特に制限はないが、例えば、スクリーン印刷等を用いることができる。
【0122】
各電極、配線、加熱部等のより具体的な形成方法としては、まず、複数のグリーンシートのなかの1つのグリーンシートについて、一方の面の一方の端部側に低電圧電極を配設し、低電圧電極から他方の端部に向かって延びる配線を配設して、低電圧電極配設グリーンシートを形成する。また、他の1つのグリーンシートについて、一方の面の一方の端部側に高電圧電極を配設し、高電圧圧電極から、このグリーンシートの一方の端部と他方の端部との間の位置(例えば、中間部分)まで配線を配設して、高電圧電極配設グリーンシートを形成する。なお、この高電圧電極の配線は、後に形成する加熱部配設グリーンシートを経由して、検出装置本体の表面に配設された取り出し端子に層間接続される。
【0123】
更に、他の1つのグリーンシートについて、高電圧電極配設グリーンシートと重ねたときに電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成する。なお、この切断部形成グリーンシートには、高電圧電極配設グリーンシート及び低電圧電極配設グリーンシートと重ねたときに、各配線と重なる位置に接地電極を配設してもよい。なお、貫通孔となる切断部を形成するグリーンシートと、接地電極を配設するグリーンシートとを、別々のグリーンシートを用いてもよい。
【0124】
更に、他の2つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部配設グリーンシートを2つ形成する。
【0125】
次に、このようにして得られた複数のグリーンシートを、図2Cに示すようなセンサー部40の構成に合わせて積層して、グリーンシート積層体を得る。
【0126】
〔2−4〕焼成:
次に、得られたグリーンシート積層体を乾燥、焼成して、検出装置本体を含むセンサー部を得る。具体的には、得られた、グリーンシート積層体を60〜150℃で乾燥し、1200〜1600℃で焼成してセンサー部を作製する。なお、グリーンシートが有機バインダーを含有する場合には、焼成の前に、400〜800℃で脱脂することが好ましい。
【0127】
〔2−5〕高電圧取り出し端子絶縁部材、及び検出装置外筒の作製:
また、上記センサー部とは別に、高電圧取り出し端子絶縁部材、及び検出装置外筒を作製する。高電圧取り出し端子絶縁部材は、所定の粉末を円柱形の金型に封入し、加圧成型後、高温で焼成することで絶縁性セラミックスを作製し、得られた絶縁性セラミックスを所定の形状に切り出し加工することで作製する。
【0128】
また、検出装置外筒は、円筒形の金属あるいは合金管を所定の形状に切り出し加工することで作製する。
【0129】
〔2−6〕粒子状物質検出装置の組み立て:
まず、上述したグリーンシートによって製造した検出装置本体(センサー部)の各取り出し端子に、電源及び測定部に電気的に接続するための配線を接続する。なお、高電圧取り出し端子に配線を接続する際には、高電圧取り出し端子と接続された配線とを、電気絶縁性を有する接着剤によって被覆することが好ましい。
【0130】
次に、この検出装置本体(センサー部)を、高電圧取り出し端子絶縁部材の他方の端面側から貫通部に挿入する。検出装置本体は、高電圧取り出し端子絶縁部材の一方の端面側から、検出装置本体の貫通孔が形成された部位が露出するように貫通させ、且つ、高電圧取り出し端子絶縁部材によって検出装置本体の高電圧取り出し端子が覆われる挿嵌状態とする。
【0131】
その後、必要に応じて、高電圧取り出し端子絶縁部材の第二貫通部内における検出装置本体との隙間に、電気絶縁性を有する無機粉末(例えば、タルク粉末)を充填する。
【0132】
次に、高電圧取り出し端子絶縁部材の貫通部に検出装置本体が挿嵌された状態で、検出装置外筒の内部に高電圧取り出し端子絶縁部材を配置して、粒子状物質検出装置を製造する。この際、高電圧取り出し端子絶縁部材の両端に蓋栓部材を配置することが好ましい。
【0133】
例えば、セラミックス製の蓋栓部材、及びタルク粒子を押し固めた蓋栓部材がこの順番で配置された第一蓋栓部材を検出装置外筒の内部に配置し、その後、検出装置本体が挿嵌された高電圧取り出し端子絶縁部材を配置し、次に、セラミックス製の蓋栓部材、タルク粒子を押し固めた蓋栓部材、及びセラミックス製の蓋栓部材がこの順番で配置された第二蓋栓部材を配置し、最後に、座金(ワッシャー)を配置し、第一蓋栓部材、高電圧取り出し端子絶縁部材、及び第二蓋栓部材を強固に密着させるように、検出装置外筒の後方の部位(即ち、検出装置外筒の他方の端面側の端部)をかしめることによって粒子状物質検出装置を製造することができる。
【0134】
このような製造方法によれば、効率的に本実施形態の粒子状物質検出装置を製造することができる。なお、本実施形態の粒子状物質検出装置を製造する方法については、これまでに説明した製造方法に限定されることはない。
【実施例】
【0135】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0136】
(実施例1)
(成形原料の調製)
アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン:ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0137】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0138】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。この際、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、切断部形成グリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、250μmとした。
【0139】
得られたグリーンシートの表面に、図2B、及び図3〜図7に示されるような各電極、接地電極、加熱部、各配線、及び各取り出し端子を形成した。配設する各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0140】
また、加熱部を形成するための導体ペーストは、タングステン粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、タングステン:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=75.5:15:5:50:7:3.5:1)。
【0141】
所定の形状の各電極、接地電極、各配線、各取り出し端子、及び加熱部の形成は、上記の方法によって得られた各ペーストを用いて、スクリーン印刷により行った。
【0142】
より具体的には、まず、複数のグリーンシートのなかの1つのグリーンシートについて、一方の面の一方の端部側に低電圧電極を配設し、この低電圧電極から他方の端部に向かって延びる配線を配設して、低電圧電極配設グリーンシートを形成した。また、他の1つのグリーンシートについて、一方の面の一方の端部側に高電圧電極を配設し、この高電圧電極から、このグリーンシートの一方の端部と他方の端部との間の位置(他方の端部から47mmの位置)まで配線を配設して、高電圧電極配設グリーンシートを形成した。
【0143】
他の1つのグリーンシートについて、高電圧電極配設グリーンシートと重ねたときに電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成し、更に、各配線と重なる位置に接地電極を配設して、切断部形成グリーンシートを形成した。更に、他の2つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部配設グリーンシートを2つ形成した。
【0144】
そして、高電圧電極配設グリーンシート及び低電圧電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて、各電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、電極埋設グリーンシートとするとともに、2つの電極埋設グリーンシートで切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、加熱部配設グリーンシートを電極埋設グリーンシートの外側に位置するように積層し、2つの電極(高電圧電極及び低電圧電極)で切断部を挟み且つ2つの配線で接地電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成した。各配線と、各配線に対応する取り出し端子とは、導体ペーストの埋め込み方法により、層間接続(ビア接続)した。なお、高電圧電極の高電圧取り出し端子は、グリーンシート積層体の一の表面における、他方の端部から47mmの位置に、2mm×3mmの大きさで形成した。
【0145】
グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシート積層体からなる粒子状物質検出装置のセンサー部の未焼成体を得た。
【0146】
(焼成)
得られた、グリーンシート積層体(センサー部の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置のセンサー部を作製した。得られたセンサー部は、0.7cm×0.2cm×12cmの直方体において、他方の端部が、図1Bに示すように細くなった形状であった。細くなった他方の端部は、幅4.25cm、長さ1.2cmであった。貫通孔は、排ガスの流通方向に垂直な断面形状が10cm×0.5cmの長方形であった。
【0147】
(高電圧取り出し端子絶縁部材の作製)
高電圧取り出し端子絶縁部材は、アルミナ粉末を円柱形の金型に封入し、加圧成型後、高温で焼成することでアルミナセラミックスを作製し、得られたアルミナセラミックスを所定の形状に切り出し加工することで作製した。
【0148】
得られた高電圧取り出し端子絶縁部材は、図10A〜図10Dに示すように、外径12.8mm、長さ30mmの円柱状であり、その内部に、検出装置本体を挿嵌するための貫通部22が形成されている。貫通部22は、高電圧取り出し端子絶縁部材20の一方の端面20aから7.0mmの範囲において、貫通方向に垂直な断面が、検出装置本体の長手方向に垂直な断面の大きさと略同一の大きさ(7.35mm×2.45mmの長方形)に形成された第一貫通部22aと、第一貫通部22aから高電圧取り出し端子絶縁部材の他方の端面20bまで貫通し、その貫通方向に垂直な断面が、検出装置本体の高電圧取り出し端子が配置される側において、第一貫通部22aよりも大きくなるように構成された第二貫通部22bとから構成されている。なお、第二貫通部22bの貫通方向に垂直な断面の形状は、第一貫通部22aと同じ大きさの貫通部における高電圧取り出し端子が配置される側が、半径3.68mmの半円状に更に刳り貫かれた形状である。
【0149】
ここで、図10Aは、実施例1の粒子状物質検出装置の高電圧取り出し端子絶縁部材の一方の端面側を示す平面図であり、図10Bは、図10Aの高電圧取り出し端子絶縁部材の他方の端面側を示す断面図である。また、図10Cは、図10AのH−H’断面を示す断面図であり、図10Dは、図10AのI−I’断面を示す断面図である。
【0150】
(検出装置外筒の作製)
また、検出装置外筒は、円筒形のステンレス管を外径14mm(内径13mm)×70mmの円筒状に切り出し加工することで作製した。
【0151】
(粒子状物質検出装置の組み立て)
検出装置本体(センサー部)の各取り出し端子に、電源及び測定部に電気的に接続するための配線を接続し、高電圧取り出し端子絶縁部材の貫通部に、他方の端面側(第二貫通部側)から検出装置本体を挿入し、高電圧取り出し端子絶縁部材の一方の端部側から、検出装置本体の一方の端部が51mm出現する状態とした。なお、高電圧取り出し端子に配線を接続する際には、高電圧取り出し端子及び接続された配線とを、電気絶縁性を有する接着剤(アルミナを主成分とし、溶媒としてアルコール系溶剤を用いた接着剤)によって被覆した。
【0152】
次に、高電圧取り出し端子絶縁部材の貫通部に検出装置本体が挿嵌された状態で、検出装置外筒の内部に高電圧取り出し端子絶縁部材を配置して、粒子状物質検出装置を製造した。なお、本実施例(実施例1)においては、高電圧取り出し端子絶縁部材の第二貫通部内における検出装置本体との隙間に、タルク粉末を充填した。
【0153】
(放電用電源)
放電用の電源としては、パルス電源とDC電源を用い、電極の取り出し端子に接続した。
【0154】
(測定部)
電極間のインピーダンスを測定するための測定部としては、アジレントテクノロジー社製のインピーダンスアナライザを用い、電極の取り出し端子に接続した。また、接地電極の取り出し端子は接地させた。
【0155】
(粒子状物質測定試験)
得られた粒子状物質検出装置を、ディーゼルエンジンの排気管に設置した。ディーゼルエンジンとしては、排気量2000ccの直噴−ディーゼルエンジンを使用し、回転数1500rpm、トルク24N・m、EGR(exhaust gas recirculation)開度50%、排ガス温度200℃、吸入空気1.3m(室温換算)/分の運転条件下で排ガスを発生させた。
【0156】
スモークメータ(AVL社製、商品名:型式4158)による排ガス中の粒子状物質量は、2.0mg/mであった。粒子状物質の検出は、以下のように行った。ディーゼルエンジンから排ガスを発生させながら、粒子状物質を荷電集塵する前に、一対の電極間の初期の静電容量(pF)を、1分間に亘って6回測定し、その後、粒子状物質を1分間に亘って荷電集塵し、その後、荷電集塵操作を停止して、再度、静電容量(一対の電極間の1分間集塵後の静電容量)(pF)を、1分間に亘って6回測定した。初期の静電容量及び1分間集塵後の静電容量は、いずれも6回の測定の平均値を求めた。そして、初期の静電容量と1分間集塵後の静電容量との差から、集塵された粒子状物質の質量を算出した。
【0157】
粒子状物質の質量の算出は、粒子状物質の吸着量に対する静電容量の変化について、予め検量線を作成しておき、その検量線を用いて行った。なお、本測定においては、加熱部(ヒーター)による粒子状物質の燃焼は行わないこととした。粒子状物質を荷電集塵する際には、高電圧電源による印加電圧をDC2.0kVとし、電極間の静電容量測定時には、測定部から印加電圧をAC2V、周波数を10kHzとした。結果を表1に示す。
【0158】
(耐高電圧試験)
粒子状物質検出装置の検出装置外筒の外側に、加熱用のヒーター線を捲回し、粒子状物質検出装置を外側から加熱する。その後、下記の温度条件において、高電圧取り出し端子と検出装置外筒との間に、交流5kVを1分間印加し、高電圧取り出し端子−検出装置外筒間における、絶縁抵抗値値(MΩ)を計測した。測定結果を表1に示す。
【0159】
(耐高電圧試験条件)
測定機器:HIOKI社製、商品名「3158 AC WITHSTANDING VOLTAGE Hi TESTER」、
印加電圧:AC5kV、
測定雰囲気:大気中、
温度条件(測定温度):室温、200℃、300℃、及び400℃の4点。
【0160】
【表1】

【0161】
(実施例2)
高電圧取り出し端子絶縁部材の大きさを、外径12.8mm、長さ14mmの円柱状とし、且つ、高電圧取り出し端子絶縁部材の第二貫通部内における検出装置本体との隙間に、電気絶縁性を有する接着剤を充填したこと以外は、実施例1と同様の方法によって粒子状物質検出装置を製造し、上述した耐高電圧試験を行った。結果を表1に示す。なお、第二貫通部内に充填した接着剤としては、検出装置本体の高電圧取り出し端子と配線とを被覆した接着剤と同様の接着剤を用いた。
【0162】
(比較例1)
高電圧取り出し端子絶縁部材を用いずに、検出装置本体の高電圧取り出し端子と配線とを電気絶縁性を有する接着剤によって被覆した後、検出装置本体を検出装置外筒に挿入し、検出装置外筒と検出装置本体との隙間にタルク粉末を充填して押し固め、検出装置外筒の両端に蓋栓部材を配置した以外は、実施例1と同様の方法によって粒子状物質検出装置を製造した。この比較例1の粒子状物質検出装置においても、上述した耐高電圧試験を行った。結果を表1に示す。
【0163】
(結果)
表1より、実施例1の粒子状物質検出装置は、粒子状物質測定試験における、初期測定時と集塵後の静電容量(インピーダンス)の差が明確に示された。これより、1分間のインピーダンス測定でも、排ガス中の粒子状物質量の増加を検出することが可能であることがわかる。なお、実施例2の粒子状物質検出装置においても、センサー部の構成が同様であるため、実施例1と同様の粒子状物質測定試験において、静電容量(インピーダンス)の差が明確に示され、粒子状物質の測定を良好に行うことができる。しかし、比較例1の粒子状物質検出装置においては、荷電集塵するための印加電圧を印加した際、高電圧取り出し端子周辺で絶縁破壊が生じたため、排ガス中の粒子状物質を集塵することができず、1分間でのインピーダンス測定で静電容量(インピーダンス)の値が変化しなかった。
【0164】
また、実施例1及び2の粒子状物質検出装置は、耐高電圧試験における各温度条件下において、高電圧取り出し端子と検出装置外筒との間に放電が起こらず、高電圧取り出し端子と検出装置外筒との間の電気的な絶縁性を確保することができた。高電圧取り出し端子絶縁部材の長さを実施例1よりも短くした実施例2の粒子状物質検出装置は、実施例1と比較して絶縁抵抗値は低下したものの、400℃に加熱した条件下でも絶縁破壊は見られなかった。この結果より、高電圧取り出し端子絶縁部材の長さを短くした実施例2においても、実施例1と同等レベルの絶縁性を確保でき、また、高電圧取り出し端子絶縁部材の長さを短くすることにより、検出装置本体(センサー部)の長さを短縮化することが可能になることがわかる。
【0165】
一方、比較例1の粒子状物質検出装置は、耐高電圧試験における室温条件下において、高電圧取り出し端子と検出装置外筒との間に放電が生じ、絶縁破壊が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の粒子状物質検出装置は、DPFの欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識するために好適に利用することができ、これにより大気汚染の防止に貢献することができる。
【符号の説明】
【0167】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、2a:入り口部分、2b:拡開部分、11:電極(高電圧電極)、11a:取り出し端子(高電圧取り出し端子)、11b,12b,13b,14b,19:配線、12:電極(低電圧電極)、12a:取り出し端子(低電圧取り出し端子)、13:加熱部、13a,14a:取り出し端子、14:接地電極、19:配線、20:高電圧取り出し端子絶縁部材、20a:高電圧取り出し端子絶縁部材の一方の端面(一方の端面)、20b:高電圧取り出し端子絶縁部材の他方の端面(他方の端面)、22:貫通部、22a:第一貫通部、22b:第二貫通部、23,23a,23b:第一蓋栓部材、24,24a,24b,24c:第二蓋栓部材、25:座金、26:隙間(第二貫通部内における検出装置本体との隙間)、30:検出装置外筒、30a:一方の端面(検出装置外筒の一方の端面)、30b:他方の端面(検出装置外筒の他方の端面)、40:センサー部、100,200,300:粒子状物質検出装置、W1:拡開された幅、W2:拡開されていない幅、L1:拡開部分の奥行き、L2:貫通孔のガス流通方向における長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、
前記貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、誘電体で覆われた低電圧電極及び高電圧電極を有する少なくとも一対の電極と、
前記低電圧電極に電気的に接続され、前記検出装置本体の他方の端部に配設された低電圧取り出し端子と、
前記高電圧電極に電気的に接続され、前記検出装置本体の表面における、前記一方の端部と前記他方の端部との間の位置に配置された高電圧取り出し端子と、
電気絶縁性を有するセラミックスからなり、その一方の端面から他方の端面に貫通する貫通部が形成され、前記貫通部の内部を前記検出装置本体が貫通して、少なくとも前記検出装置本体の前記高電圧取り出し端子が配設された部位を覆うように配置された、筒状の高電圧取り出し端子絶縁部材と、
金属材料からなり、前記高電圧取り出し端子絶縁部材を少なくとも覆い、且つ、前記検出装置本体の前記一方の端部における前記貫通孔が形成された部位を外部に露出させるように配置された、筒状の検出装置外筒と、を備え、
前記検出装置本体の前記一方の端部に形成された前記貫通孔内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、前記一対の電極に電圧を印加することにより前記貫通孔内に生じる放電により荷電された、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を、前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記高電圧取り出し端子絶縁部材に形成された前記貫通部は、前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記一方の端面から所定の長さの範囲における貫通方向に垂直な断面の大きさが、前記検出装置本体の長手方向に垂直な断面の大きさと略同一に形成された第一貫通部と、
前記第一貫通部から前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記他方の端面まで貫通し、その貫通方向に垂直な断面の大きさが、前記検出装置本体の前記高電圧取り出し端子が配置された側において、前記第一貫通部よりも大きくなるように形成された第二貫通部と、から構成されている請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記貫通部の前記第二貫通部における、前記検出装置本体と前記高電圧取り出し端子絶縁部材との隙間に、電気絶縁性を有する無機粉末が充填されている請求項2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記検出装置外筒の内部に、前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記一方の端面に接するよう配置された第一蓋栓部材と、
前記検出装置外筒の内部に、前記高電圧取り出し端子絶縁部材の前記他方の端面に接するよう配置された第二蓋栓部材と、を更に備えた請求項2又は3に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記高電圧取り出し端子絶縁部材が、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、チタニア及びシリコンからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスからなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記検出装置本体の前記高電圧取り出し端子に配線が電気的に接続され、前記高電圧取り出し端子と前記配線とが、電気絶縁性を有する接着剤によって被覆されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate