説明

粒子状物質検出装置

【課題】小型で測定誤差が小さく、高精度な測定を行うことが可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】一方の端部に貫通孔2が形成された検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面に配設された一対の計測電極15,16と、計測電極15,16から延びる一対の計測電極配線15b,16bと、貫通孔2を形成する壁の内部に埋設された、誘電体で覆われた一対の集塵電極11,12と、誘電体を通じて計測電極配線15b,16bに流れる電流を遮断するためのシールド電極17と、を備え、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を一対の電極11,12により荷電して貫通孔2の壁面に吸着させ、一対の計測電極15,16により貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することにより貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置に関する。さらに詳しくは、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能であるとともに、計測用の電極に接続された各配線間に生じる寄生容量の影響を抑制して高精度な測定を行うことが可能な粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道排ガスやディーゼルエンジン排ガスには煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)が含まれており、大気汚染の原因になっていた。これらを除去するために、セラミック等で作製されたフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ:DPF)が広く用いられている。セラミック製のDPFは、長期間の使用が可能であるが、熱劣化等によりクラックや溶損等の欠陥が発生することがあり、微量ではあるが粒子状物質が漏れる可能性がある。このような欠陥が発生した場合には、その欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識することが、大気汚染防止の観点から極めて重要である。
【0003】
このような欠陥の発生を検知する方法として、DPFの下流側に粒子状物質検出装置を設ける方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定するものである。このように、粒子状物質を帯電させてそのイオン電流を測定する方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であるため、その微弱なイオン電流を検出するために大掛かりな検出回路が必要になり、高価なものになるという問題があった。また、排ガスが高流量である場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることができないため、粒子状物質の測定値が、実際に排ガスに含有されている粒子状物質の量より小さい値となり、その誤差が大きいという問題があった。また、例えば、計測用の電極に接続された各配線間に生じる寄生容量が測定値に大きな影響を及ぼすことがあり、正確な測定が困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、小型で測定誤差が小さく、安価に製造することが可能であるとともに、計測用の電極に接続された各配線間に生じる寄生容量の影響を抑制して高精度な測定を行うことが可能な粒子状物質検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、以下の粒子状物質検出装置を提供するものである。
【0008】
[1] 一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、前記一対の計測電極からそれぞれ前記検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線と、前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極と、前記一対の計測電極配線のうちの少なくとも一方の計測電極配線と誘電体を挟んで配置され、前記誘電体を通じて前記少なくとも一方の計測電極配線に流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地されたシールド電極と、を備え、前記貫通孔内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、前記一対の集塵電極に電圧を印加することにより前記貫通孔内に生じる放電により荷電された、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を、前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、前記貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を、前記一対の計測電極によって測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【0009】
[2] 前記シールド電極が、前記一対の計測電極配線の間の位置に配置され、前記誘電体を通じて前記一対の計測電極配線間に流れる電流を遮断するための第一シールド電極を有する前記[1]に記載の粒子状物質検出装置。
【0010】
[3] 前記シールド電極が、前記一対の計測電極配線と前記一対の集塵電極のうちの高電圧が印加される高電圧集塵電極に接続された配線との間の位置に配置された第二シールド電極と、前記一対の集塵電極のうちの接地された接地集塵電極からなる第三シールド電極と、を有する前記[1]又は[2]に記載の粒子状物質検出装置。
【0011】
[4] 前記一対の計測電極間の電気的な特性の変化を測定するための測定部と、前記測定部と前記一対の計測電極配線とを電気的に接続するための一対の測定部接続配線と、を更に備え、前記一対の測定部接続配線のうちの少なくとも一方の測定部接続配線は、前記一対の測定部接続配線間の空間を通して流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地された接続配線用シールド電極によって被覆されている前記[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0012】
[5] 前記一対の計測電極間の電気的な特性の変化を測定するための測定部と、前記測定部と前記一対の計測電極配線とを電気的に接続するための一対の測定部接続配線と、を更に備え、前記測定部は、前記一対の測定部接続配線に電気的に接続された測定部内配線と、前記測定部内配線の周囲の少なくとも一部に配置され、前記測定部内にて隣接配置された前記測定部内配線間に流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地された測定部内配線用シールド電極と、を有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0013】
[6] 前記測定部内配線、及び前記測定部内配線用シールド電極が、絶縁性のプリント基板上に配置されたプリント配線である前記[5]に記載の粒子状物質検出装置。
【0014】
[7] 前記貫通孔の壁面に沿うようにして検出装置本体の内部に配設された、前記貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調用の加熱部を更に備えた前記[1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0015】
[8] 前記貫通孔の、前記流体が流入する入口部分及び前記流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されている前記[1]〜[7]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0016】
[9] 前記検出装置本体の中心軸に直交する断面形状が、前記貫通孔の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状である前記[1]〜[8]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0017】
[10] 前記貫通孔の壁面に吸着した粒子状物質を、前記一対の集塵電極に電圧を印加して前記貫通孔内に放電を起こして酸化除去することが可能な前記[1]〜[9]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0018】
[11] 前記貫通孔内に起きる放電が、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群より選択される一種である前記[1]〜[10]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【0019】
[12] 前記誘電体が、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]〜[11]のいずれかに記載の粒子状物質検出装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粒子状物質検出装置は、貫通孔を形成する検出装置本体の壁の内部に少なくとも一対の集塵電極が埋設され、その一対の集塵電極に電圧を印加して貫通孔内に放電を起こし、その放電により貫通孔内に存在する粒子状物質を荷電することができ、その荷電した粒子状物質を貫通孔の壁面又はこの壁の内表面に配置された計測電極に電気的に吸着させることが可能である。そして、所定の間隔を空けて対向配置された一対の計測電極によって、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定し、DPFの下流側を流れる排ガスのなかの貫通孔内に流入した排ガス中の粒子状物質の質量を測定することが可能となる。
【0021】
このように、本発明の粒子状物質検出装置は、DPFの下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質量を概算することができる。これにより、従来の検査方法では検知することが不可能であった、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明の粒子状物質検出装置は、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、装置を小型化することができ、狭いスペースに設置することが可能となる。更に、このような小型化に伴って、粒子状物質検出装置を安価に製造することができる。
【0023】
また、DPFの下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけを貫通孔内に導入するため、貫通孔内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0024】
また、検出装置本体が一方向に長く形成され、その一方の端部に、貫通孔が形成されるとともに、一対の計測電極及び一対の集塵電極が配設(埋設)されるため、貫通孔及び各電極の部分だけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、各電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0025】
更に、一対の計測電極に接続された計測電極配線に対して、誘電体を通じて計測電極配線に流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地されたシールド電極を備えているため、計測電極配線による測定値への影響、例えば、各計測電極配線間に生じる寄生容量の影響を抑制して、上記一対の計測電極間の電気的特性を良好に検知することができる。これにより、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図である。
【図1B】図1Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図である。
【図1C】図1Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図である。
【図1D】図1Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。
【図2】図1BのA−A’断面を示す模式図である。
【図3】図2のB−B’断面を示す模式図である。
【図4】図2のC−C’断面を示す模式図である。
【図5】図2のD−D’断面を示す模式図である。
【図6】図2のE−E’断面を示す模式図である。
【図7】図2のF−F’断面を示す模式図である。
【図8】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す模式図である。
【図9】本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態に用いられる測定部の電気的回路を模式的に示す回路図である。
【図10】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示し、図4に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
【図11A】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含む断面を示す模式図である。
【図11B】本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含まない断面を示す模式図である。
【図12】実施例1における検出装置本体の構成を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0028】
〔1〕粒子状物質検出装置:
図1Aは、本発明の粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す正面図であり、図1Bは、図1Aに示す粒子状物質検出装置の一方の側面を示す側面図であり、図1Cは、図1Aに示す粒子状物質検出装置の他方の側面を示す側面図であり、図1Dは、図1Aに示す粒子状物質検出装置の背面図である。また、図2は、図1BのA−A’断面を示す模式図である。また、図3は、図2のB−B’断面を示す模式図であり、図4は、図2のC−C’断面を示す模式図であり、図5は、図2のD−D’断面を示す模式図であり、図6は、図2のE−E’断面を示す模式図であり、図7は、図2のF−F’断面を示す模式図である。
【0029】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、図1A〜図1D、及び図2〜図7に示すように、一方の端部1aに少なくとも一の貫通孔(空洞)2が形成された一方向に長い検出装置本体1と、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極15,16と、一対の計測電極15,16からそれぞれ検出装置本体1の他方の端部1bに向かって延びる一対の計測電極配線15b,16bと、貫通孔2を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、一対の計測電極15,16の埋設位置よりも貫通孔2を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極11,12と、一対の計測電極配線15b,16bのうちの少なくとも一方の計測電極配線と誘電体を挟んで配置され、誘電体を通じて少なくとも一方の計測電極配線15b,16bに流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地されたシールド電極17と、を備えるものである。
【0030】
そして、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、一対の集塵電極11,12に電圧を印加することにより貫通孔2内に生じる放電により荷電された、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質を、貫通孔2の壁面に電気的に吸着させることが可能なものである。更に、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を、上記一対の計測電極15,16によって測定することにより、貫通孔2の壁面に吸着された粒子状物質の質量を検出することが可能である。これにより、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に排ガス等を通過させて、排ガス中に含有される粒子状物質を検出することができる。
【0031】
このように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、DPF等の下流側を流れる排ガスに含有される全ての粒子状物質を直接測定するのではなく、貫通孔2内に流入した粒子状物質を測定し、この測定値に基づいて、排ガス全体の粒子状物質量を概算することができる。これにより、従来の検査方法では検知することが不可能であった、微量の粒子状物質の測定を行うことが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、上述したように排ガスの全量を測定するものではないため、粒子状物質検出装置100を小型化することができ、狭いスペースに設置することが可能となる。更に、このような小型化に伴って、粒子状物質検出装置100を安価に製造することができる。
【0033】
また、DPF等の下流側を流れる排ガスの全流量が高流量の場合でも、その排ガス(即ち、排ガスに含まれる粒子状物質)の一部だけを貫通孔2内に導入するため、貫通孔2内の粒子状物質を効果的に荷電することができ、誤差の少ない測定値を得ることができる。
【0034】
また、検出装置本体1が一方向に長く形成され、その一方の端部1aに、貫通孔2が形成されるとともに、一対の集塵電極11,12及び一対の計測電極15,16が配設(埋設)されるため、貫通孔2及び各電極(例えば、集塵電極11や一対の計測電極15,16)を高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。これにより、各電極の取り出し端子等の高温に曝さないことが望ましい部分を、配管の外に出した状態とすることが可能となり、精度が高く、且つ安定した測定を行うことができる。
【0035】
更に、一対の計測電極15,16に接続された計測電極配線15b,16bに対して、誘電体を通じて計測電極配線15b,16bに流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地されたシールド電極17を備えているため、計測電極配線15b,16bによる測定値への影響、例えば、各計測電極配線15b,16b間、或いは、各計測電極配線15b,16bと他の配線との間に生じる寄生容量の影響を抑制して、一対の計測電極間15,16の電気的特性を良好に検知することができる。これにより、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を精度良く測定することが可能となる。
【0036】
なお、上述した寄生容量とは、各種配線や回路内部、また近接する金属物等によって発生する静電容量のことである。本実施形態の粒子状物質検出装置100は、一対の計測電極15,16間のインピーダンスや静電容量の電気特性を測定し、測定されたインピーダンス等の電気特性の変化から吸着された粒子状物質の質量を算出して、排ガス中の粒子状物質(質量)を検出する等の検出方法を用いることができるが、上記したインピーダンス等の電気特性を測定する際に、計測電極配線15b,16bによる寄生容量の影響が大きくなると、測定値に誤差を生じることがある。
【0037】
例えば、図5に示すように、計測電極配線15b,16bが、検出装置本体1の厚さ方向における同一平面上に、検出装置本体1の一方の端部1aから他方の端部1bに向けて対向配置されている場合には、検出装置本体1を構成する誘電体を通じて計測電極配線15b,16b間に電流が流れるため、計測電極配線15b,16b間に静電容量(寄生容量)が生じる。このため、測定値として、一対の計測電極15,16間の静電容量に、上記寄生容量が加えられた値が測定されることとなる。つまり、一対の計測電極15,16間の電気的特性を検知する際には、対向配置された計測電極配線間の電気的特性も合わせて検知することとなる。
【0038】
このため、本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、シールド電極17として、一対の計測電極配線15b,16bの間の位置に第一シールド電極17aを配設している。この第一シールド電極17aは接地されており、一方の計測電極配線15bから誘電体を通じて電流が流れた場合、他方の計測電極配線16bに到達する前に第一シールド電極17aによって電流が遮断され、計測電極配線15b,16b間に生じる寄生容量の影響を排除することができる。このように、本実施形態の粒子状物質検出装置は、上記一対の計測電極15,16のそれぞれから延びる計測電極配線15b,16bの影響をシールド電極17により抑制しながら、上記一対の計測電極15,16間の電気的特性を検知することができるため、上記計測電極配線15b,16bの影響による測定誤差の問題を解決することができる。これにより、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を精度良く測定することが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置に用いられるシールド電極は、計測電極配線15b,16bによって生じる寄生容量の影響を排除し、一対の計測電極15,16間に流れる電流を選択的に測定することができるものであれば、図5に示すような、一対の計測電極配線15b,16bの間の位置に配置された第一シールド電極17aに限定されることはない。
【0040】
例えば、各計測電極配線は、粒子状物質を集塵するための集塵電極や、この集塵電極に接続された配線に対しても電流が流れ、寄生容量が生じることがある。このため、図2に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100のシールド電極17は、一対の計測電極配線15b,16bと一対の集塵電極11,12のうちの高電圧が印加される高電圧集塵電極11に接続された配線11bとの間の位置に配置された第二シールド電極17bと、一対の集塵電極11,12のうちの接地された接地集塵電極12からなる第三シールド電極17cと、と有していてもよい。
【0041】
即ち、一対の計測電極配線15b,16bと、一対の集塵電極11,12及びその配線11bとは、誘電体を挟んで検出装置本体1の厚さ方向に積層されているため、この間に生じる寄生容量の影響を排除するためのシールド電極17(例えば、第二シールド電極17b,第三シールド電極17c)を配置してもよい。このように、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、検出装置本体の厚さ方向にもシールド電極を配設し、計測電極配線と、計測電極配線以外の各電極やその電極に接続された配線とに生じる寄生容量の影響を排除することができるように構成されたものであってもよい。
【0042】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、一対の集塵電極のうちの接地された接地集塵電極を、シールド電極の一部(即ち、上述した第三シールド電極)として利用している。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の粒子状物質検出装置は、計測電極配線に流れ込む余分な電流を有効に遮断することにより、一対の計測電極間に流れる電流をより正確に測定することができる。
【0044】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置に用いられる検出装置本体1には、上記貫通孔2が少なくとも一つ形成されている必要があり、二つ以上であってもよい。また、検出装置本体1が誘電体から形成されることにより、一対の集塵電極11,12や、各種の配線11b,13b,15b,16bがそれぞれ誘電体で覆われた状態となっている。
【0045】
また、上記一対の計測電極15,16は、少なくとも一対備えることが必要であり、二対以上であってもよい。なお、図2においては、一対の計測電極15,16が、貫通孔2を形成する一方の壁の内側面に配設された場合の例を示しているが、貫通孔2を形成する一方の壁の内部に埋設されていてもよい。
【0046】
また、一対の計測電極の形状については特に制限はなく、粒子状物質を貫通孔の壁に吸着させた際に、その壁の電気的な特性の変化を測定することができるように配置された一対の電極であればよい。なお、図5に示すように、一対の計測電極15,16は、線状を呈し、貫通孔2の壁の内側面又はその内部に長く対向しているものであることが好ましく、更に、線状を呈する一対の計測電極15,16は、一対をなすそれぞれが複数に分岐(例えば、図5に示すように、櫛歯状に分岐)をして、複数の対向部分を有するものであることが好ましい(例えば、上記櫛歯状の部分を所定の間隔を空けて噛み合わせるように対向配置されたものであることが好ましい)。このように構成することによって、一対の計測電極15,16の対向配置された部分を長く(広く)とることができ、より正確な測定値を得ることができる。
【0047】
また、本発明の粒子状物質検出装置は、例えば、図8に示すように、一対の計測電極15,16(図2参照)間の電気的な特性の変化を測定するための測定部50と、測定部50と一対の計測電極配線15b,16b(図5参照)とを電気的に接続するための一対の測定部接続配線61,62と、を更に備えたものであってもよい。ここで、図8は、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す模式図である。
【0048】
上記した測定部50は、一対の計測電極15,16(図5参照)間の静電容量を測定することができるものであることが好ましく、更に、静電容量だけでなく、インピーダンスを計測可能なLCRメーターやインピーダンスアナライザ等を好適に用いることができる。そして、この測定部50と、一対の計測電極配線15b,16b(より具体的には、一対の計測電極配線15b,16bのそれぞれの取り出し端子15a,16a(図5参照))とは、一対の測定部接続配線61,62によって電気的に接続されている。
【0049】
そして、図8に示す粒子状物質検出装置200においては、一対の測定部接続配線61,62のうちの少なくとも一方の測定部接続配線61が、一対の測定部接続配線61,62間の空間を通して流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地された接続配線用シールド電極63によって被覆されている。なお、図8における符号64は、検出装置本体1の内部に配置されたシールド電極(例えば、図5における第一シールド電極17a)に電気的に接続されたシールド配線64を示す。
【0050】
このように構成することによって、検出装置本体1と測定部50とを電気的に接続する測定部接続配線61,62による寄生容量の影響も排除することができ、より高精度な測定を実現することができる。なお、図8においては、接続配線用シールド電極63が、一方の測定部接続配線61を被覆するように配置された例を示しているが、測定部50によって測定される電流への影響を考慮して、両方の測定部接続配線61,62に接続配線用シールド電極63を配置してもよい。
【0051】
上記した接続配線用シールド電極は、導電性を有する材料からなり、測定部接続配線を被覆するように配置され、その一部がアースへと接地された電極であり、測定部接続配線間、或いは、他の配線等から測定部接続配線に電流が流れることを防止するための電極である。このような接続配線用シールド電極は、細い導線、金属箔、金属メッシュによって構成することができ、被覆付きの測定部接続配線の表面を覆うように配置して用いることができる。即ち、接続配線用シールド電極と測定部接続配線とは、公知のシールド線と同様に構成することができる。
【0052】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、測定部の内部配線についても、これまで説明した粒子状物質検出装置と同様に、隣接配置された内部配線間に流れる電流の少なくとも一部を遮断するための構造(以下、このような構造を「シールド構造」ということがある)を有してもよい。
【0053】
ここで、図9は、本発明の粒子状物質検出装置の更に他の実施形態に用いられる測定部の電気的回路を模式的に示す回路図である。図9に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置300は、一対の計測電極15,16(図2参照)間の電気的な特性の変化を測定するための測定部50と、測定部50と一対の計測電極配線15b,16b(図5参照)とを電気的に接続するための一対の測定部接続配線61,62と、を更に備え、上記測定部50は、一対の測定部接続配線61,62に電気的に接続された測定部内配線51,52と、測定部内配線51,52の周囲の少なくとも一部に配置され、測定部50内にて隣接配置された測定部内配線間(例えば、測定部内配線52と測定部内配線53)に流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地された測定部内配線用シールド電極54と、を有している。
【0054】
このように構成することによって、測定部50内部に配置された配線(測定部内配線)による寄生容量の影響も排除することができ、より高精度な測定を実現することができる。
【0055】
なお、測定部の内部に測定部内配線用シールド電極を配置する場合には、測定部内配線の全てに測定部内配線用シールド電極を配置しなくとも、その測定部内配線の寄生容量により測定値に影響を及ぼす範囲に少なくとも配置されていればよい。
【0056】
例えば、図9に示す測定部は、一の測定部内配線51から一方の計測電極(例えば、計測電極15(図5参照))へ電流が流れ、対向配置された他方の計測電極(例えば、計測電極16(図5参照))から測定部50に計測すべき電流が流れ込む。測定部50においては、一の測定部内配線51から流れる電流の電圧をV1とし、計測すべき電流が他の測定部内配線52に流れ込み、抵抗56(抵抗値をRsとする)及びオペアンプ55を通過した後の電圧をV2とした場合に、一対の計測電極配線15b,16bによって計測されるインピーダンス(|Z|)は、下記式(1)の関係を有する。
【0057】
V2=V1/|Z|×Rs ・・・ (1)
【0058】
このため、測定部内配線の影響を考慮する場合には、図9に示すように、計測電極から流れる電流が通過する測定部内配線52における、抵抗56及びオペアンプ55の入り口側までの範囲に測定部内配線用シールド電極54を配置することが好ましい。勿論、上記以外の範囲に測定部内配線用シールド電極を配置してもよい。なお、測定部内配線52、及び測定部内配線用シールド電極54は、絶縁性のプリント基板上に配置されたプリント配線によって構成することができる。
【0059】
このように、本実施形態の粒子状物質検出装置においては、検出装置本体の内部の配線、検出装置本体と測定部とを接続する配線、及び測定部の内部の配線のうち、測定すべき電流が流れる配線に対して、余分な電流が流れることを防止することによって、高精度な測定を実現することができる。
【0060】
なお、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内を通過する粒子状物質が、ディーゼルエンジンより排出される煤であるときに、特にその効果を発揮させることができる。
【0061】
〔1−1〕粒子状物質検出装置の構成:
以下、粒子状物質検出装置の各構成要素について更に具体的に説明する。
【0062】
〔1−1a〕検出装置本体:
検出装置本体は、一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長く構成された、粒子状物質検出装置の基体となる部位である。検出装置本体は誘電体から構成されており、この貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部には少なくとも一対の集塵電極が配置されており、この一対の集塵電極に電圧を印加することにより貫通孔内に放電を生じさせることができる。
【0063】
検出装置本体を構成する誘電体は、例えば、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アルミナを好適に用いることができる。このような誘電体からなる検出装置本体の内部に集塵電極を埋設することにより、誘電体に覆われた集塵電極を形成することが可能となる。そして、粒子状物質検出装置が、優れた耐熱性、耐絶縁破壊特性等を有するものとなる。ここで、本実施形態において、「誘電体」とは、導電性よりも誘電性が優位である物質で、直流電圧に対して絶縁体として振舞う物質のことをいう。
【0064】
本実施形態において、「検出装置本体の一方の端部」というときは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。また、「検出装置本体の他方の端部」というときは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の50%の長さに相当する位置までの範囲をいう。なお、検出装置本体の一方の端部は、好ましくは、検出装置本体の一方の先端部分1cから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。また、検出装置本体の他方の端部は、好ましくは、検出装置本体の他方の先端部分1dから、検出装置本体1の全長の40%の長さに相当する位置までの範囲であり、更に好ましくは、30%の長さに相当する範囲である。検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置とは、検出装置本体1から、上記一方の端部1aと他方の端部1bの範囲を除いた部分ということになる。
【0065】
図1A〜図1Dに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100において、検出装置本体1は、一方向に長く形成され、その長手方向の長さは、特に限定されないが、排ガス配管に挿入した時に排ガス中の粒子状物質を効率よくサンプリングできる長さであることが好ましい。
【0066】
また、検出装置本体1の厚さ(「検出装置本体の長手方向」及び「ガスの流通方向」の両方に垂直な方向(厚さ方向)における長さ)は、特に限定されないが、例えば、0.5〜3mm程度が好ましい。ここで、「検出装置本体1の厚さ」というときは、上記厚さ方向において最も厚い部分の厚さをいう。また、検出装置本体1の、貫通孔2にガスが流通するときの流通方向における長さ(ガス流通方向の長さ)は、特に限定されないが、例えば、2〜20mm程度が好ましい。そして、検出装置本体1の長手方向長さは、検出装置本体1の厚さの10〜100倍であることが好ましく、検出装置本体1のガス流通方向の長さの3〜100倍であることが好ましい。
【0067】
検出装置本体1の形状は、図1A〜図1Dに示すように、長手方向に直行する断面形状が長方形の板状であってもよいし、当該断面形状が円形、楕円形等の棒状であってもよいし、一方向に長い形状であれば、その他の形状であってもよい。
【0068】
本実施形態の粒子状物質検出装置100において、貫通孔2の形状、及び大きさは特に限定されず、排ガスを通過させ、粒子状物質の量を測定できるものであればよい。例えば、貫通孔2の、検出装置本体の長手方向における長さは、2〜20mm程度が好ましく、貫通孔2の、集塵電極11,12で挟まれる部分の幅(検出装置本体の長手方向、及びガスの流通方向の両方に垂直な方向における長さ)は、3〜30mm程度が好ましい。
【0069】
貫通孔2の大きさを上記範囲とすることにより、粒子状物質を含む排ガスを貫通孔2内に十分に流通させることができ、更に、貫通孔2内に粒子状物質を荷電するために効果的な放電を起こすことが可能となる。
【0070】
また、貫通孔2の形状としては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることが好ましい。貫通孔2の、流体が流入する入口部分及び流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されていることにより、より効率的に配管内を流通する排ガス等を粒子状物質検出装置の貫通孔内に流入(入口部分が拡開された場合)させることや、流出(出口部分が拡開された場合)させることが可能となる。
【0071】
図10に示す本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置400)においては、貫通孔2の、流体が流入する入口部分2aのみが拡開され、拡開部分2bが形成されている。また、図10に示す粒子状物質検出装置400においては、貫通孔2は、検出装置本体1の長手方向に広がるように拡開されているが、検出装置本体1の厚さ方向に広がるように拡開されてもよい。図10は、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示し、図4に示す本発明の粒子状物質検出装置の一実施形態(粒子状物質検出装置100)の断面を示す模式図に相当する、模式図である。
【0072】
拡開部分2bの拡開された幅(貫通孔2のガス流通方向における最先端部分の幅)W1は、貫通孔2の拡開されていない部分の幅W2に対して2〜200%が好ましい。また、拡開部分2bの、貫通孔2のガス流通方向における奥行き(拡開部分の奥行き)L1は、検出装置本体1の、貫通孔2のガス流通方向における長さL2の5〜30%が好ましい。
【0073】
図11A、及び図11Bに示すように、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態(粒子状物質検出装置500)は、検出装置本体1の中心軸に直交する断面形状が、貫通孔2の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状であることが好ましい。検出装置本体の形状をこのようにすることにより、貫通孔のガスの流通方向を、配管内の排気ガスの流通方向に合わせた(平行にした)ときに、配管内の排気ガスの流れを良好にすることができる。
【0074】
粒子状物質検出装置(検出装置本体)の、貫通孔の貫通方向における「中央部分」とは、粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向における長さを3等分したときの、中央に位置する「3分の1の範囲」を意味する。従って、「粒子状物質検出装置の、貫通孔の貫通方向において、中央部分で最も太く」というときは、上記「中央部分に位置する3分の1の範囲」に最も太い部分が位置することを意味する。ここで、図11Aは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含む断面を示す模式図であり、図11Bは、本発明の粒子状物質検出装置の他の実施形態を示す、中心軸に直交し、貫通孔を含まない断面を示す模式図である。
【0075】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置は、検出装置本体1が、複数のテープ状セラミック(セラミックシート)が積層されてなるものであることが好ましい。これにより、複数のテープ状セラミックを、それぞれの間に各電極、配線等を挟みながら積層して粒子状物質検出装置を作製することができるため、本実施形態の粒子状物質検出装置を効率的に製造することが可能となる。
【0076】
〔1−1b〕計測電極:
計測電極は、貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に少なくとも一対配置されたものであり、集塵電極によって貫通孔の壁面に粒子状物質を電気的に吸着させることにより生じる、貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定するための電極である。
【0077】
計測電極の形状については、上述したように貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を測定することが可能なものであれば特に制限はないが、図5に示すような櫛歯状に分岐した形状を好適例として挙げることができる。このように構成することによって、より正確な測定を行うことができる。
【0078】
計測電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、計測電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0079】
この計測電極には、それぞれ検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線が電気的に接続されている。それぞれの計測電極配線の幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、計測電極配線の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、計測電極配線の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。そして、これまでに説明したように、この計測電極配線は、シールド電極によって、計測電極配線相互間、及び他の電極や配線との間に電流が流れないように構成されている。
【0080】
また、図1A〜図1Dに示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100の一対の計測電極15,16は、検出装置本体1の他方の端部1bに、それぞれの電極の取り出し端子15a,16aを有している。
【0081】
一対の計測電極15,16の取り出し端子15a,16aを、検出装置本体1の他方の端部1bに配設することにより、貫通孔2が配設される部分(即ち、一方の端部1a)と取り出し端子15a,16aとの間隔を大きくとることができるため、貫通孔2等が配設される一方の端部1aだけを高温の排ガスが流通する配管内に挿入し、取り出し端子15a,16aが配設されている他方の端部1b側を配管から外に出した状態にすることが可能となる。取り出し端子15a,16aを高温にすると、粒子状物質の検出精度が低下し、安定した検出が行い難くなることがあったり、長期にわたって使用した場合に電気端子と外部に接続するためのハーネスとの接点不良が発生し測定不能になったりすることがあるため、取り出し端子15a,16aを配管の外に出し、高温に曝されない状態とすることにより、精度の高い、安定した粒子状物質の検出を行うことが可能となる。
【0082】
検出装置本体1の他方の端部1bに配設された取り出し端子15a,16aは、図1Bに示すように、検出装置本体1の他方の端部1bの側面に、長手方向に延びるように配置されていることが好ましい。なお、図1Bにおいては、検出装置本体1の他方の端部1bは、幅が狭くなっているが、他方の端部1bの幅は、このように狭くなっていてもよいし、狭くなっていなくてもよい。取り出し端子15a,16aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.1〜2.0mm、長さ0.5〜20mmの帯状であることが好ましい。取り出し端子15a,16aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等を挙げることができる。
【0083】
〔1−1c〕集塵電極:
集塵電極は、貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、上記一対の計測電極の埋設位置よりも貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、検出装置本体を構成する誘電体で覆われた電極である。このような集塵電極11,12間に所定の電圧を印加することにより、貫通孔2内に放電を起こすことができる。
【0084】
集塵電極は、貫通孔を形成する壁の内部に埋設され、貫通孔2内に放電を起こすことができるものであれば、その形状については特に制限はない。本実施形態の粒子状物質検出装置においては、集塵電極の一方の電極が、図3に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と貫通孔2を隔てて反対側の壁の内部に配置された(図2参照)、高電圧が印加される高電圧集塵電極11であり、また、集塵電極の他方の電極が、図6に示すように、上記計測電極15,16が配置された壁と同一側の壁の内部に配置された(図2参照)、接地された接地集塵電極12である。それぞれの集塵電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、集塵電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0085】
集塵電極11,12の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、貫通孔2内に放電を起こすことが可能であればよい。例えば、形状としては、長方形、円形、長円形等を挙げることができる。また、集塵電極11,12の大きさは、例えば、貫通孔2の、側面から見たときの面積の70%以上であることが好ましい。
【0086】
例えば、図3においては、高電圧集塵電極11が、貫通孔と略同じ大きさに形成された場合の例を示している。この高電圧集塵電極11には、検出装置本体1の長手方向に延びる配線11bが接続されており、配線11bが、その先端(電極11に接続されていない側の先端)部分で、図1Bに示す取り出し端子11aに層間接続(ビア接続)されている。配線11bの幅は、特に限定されず、例えば、0.2〜1mm程度が好ましい。また、配線11bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。また、配線11bの材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。
【0087】
なお、一対の集塵電極の両方の取り出し端子を、検出装置本体の他方の端部に配設してもよいが、図1A〜図1Dに示すように、接地された集塵電極(接地集塵電極12)の取り出し端子12aを検出装置本体1の他方の端部1bに配設し、高電圧集塵電極11の取り出し端子11aを、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設することが好ましい。これにより、接地集塵電極12の取り出し端子12aと、高電圧集塵電極11の取り出し端子11aとを、間隔を開けて配設することができる。このため、一対の集塵電極11,12間に電圧を印加するために、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間に電圧を印加したときに、検出装置本体1の表面に沿面放電が生じることを有効に防止することができる。
【0088】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、取り出し端子11aと取り出し端子12aとの間の距離が、5〜100mmであることが好ましく、10〜70mmであることが更に好ましい。5mmより短いと沿面放電による短絡がし易くなることがある。一方、100mmより長いと、取り出し端子11aが配管の外に位置するように、粒子状物質検出装置100の検出装置本体1を配管等に装着したときに、検出装置本体1の配管の外側に突き出る部分が長くなりすぎ、検出装置本体1を狭い空間に取り付けることが難しくなることがある。
【0089】
また、検出装置本体1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間の位置に配設した取り出し端子11aと、貫通孔2との間の距離は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。10mmより短いと、粒子状物質検出装置100を、貫通孔2の部分が配管内に挿入されるように、配管に装着したときに、配管内を流通する高温の排ガスの熱が取り出し端子11aに影響を及ぼし易くなることがある。
【0090】
高電圧集塵電極11の取り出し端子11aの形状及び大きさは、特に限定されるものではない。例えば、幅0.5〜3mm、長さ0.5〜3mmの四角形等の多角形状であることが好ましいが、円形、楕円形、レーストラック形状、その他の形状等であってもよい。取り出し端子11aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0091】
本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、集塵電極のうちの接地集塵電極12が、計測電極配線15b,16b用のシールド電極の一部(第三シールド電極)を構成している。このため、接地集塵電極12は、貫通孔2を形成する壁の内部から、検出装置本体1の他方の端部1bに向けて、計測電極配線15b,16bが配置されている領域を含むように、検出装置本体1の長手方向の略全域に亘って配置されている。そして、検出装置本体1の他方の端部1bにて取り出し端子12aに接続されている。
【0092】
高電圧集塵電極11と貫通孔2との間の距離、及び接地集塵電極12と貫通孔2との間の距離は、50〜500μmであることが好ましく、100〜300μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に貫通孔内に放電を生じさせることができる。各集塵電極11,12と、貫通孔2との間の距離は、各集塵電極11,12を覆う誘電体の、貫通孔2に面する部分の厚さということになる。
【0093】
集塵電極により発生する放電の種類としては、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群より選択される一種であることが好ましい。このような放電を生じさせるため、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、取り出し端子11a,12aに接続された、放電用の電源を更に備えることが好ましい。放電用の電源としては、高電圧の交流電源、直流電源等が好ましい。また、放電させるために印加する電圧としては、パルス電圧、矩形波等の交流電圧、等の電圧が好ましい。また、印加する電圧の条件としては、ギャップ(一対の集塵電極相互間の距離)、ガス温度によって変わるが50〜200kV/cmが好ましい。また、電圧を印加するときの、電力は、0.1〜10Wが好ましい。
【0094】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2内に流入する流体(即ち、排ガス)に含有される粒子状物質が荷電されていない場合に、貫通孔2内に放電を起こすことにより、粒子状物質を荷電して、貫通孔2の壁面に荷電した粒子状物質を電気的に吸着させるものである。そして、貫通孔2内に流入する流体に含有される粒子状物質が、貫通孔2内に流入する前から既に荷電されている場合には、貫通孔2内の放電により改めて荷電させる必要がないため、貫通孔2内に放電を起こすことなく、貫通孔2の壁面にその荷電されている粒子状物質を電気的に吸着させるものである。
【0095】
上述したように、貫通孔2内に放電を起こして粒子状物質を荷電させる場合には、荷電した粒子状物質は、放電中に、その荷電した粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する集塵電極側に電気的に引き寄せられ、壁面に吸着される。これに対し、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合には、集塵電極11,12間に、所定の条件の電圧を印加し、荷電している粒子状物質の極性に対して反対の極性を有する集塵電極側に電気的に引き寄せられるようにする。ここで、粒子状物質が貫通孔2内に流入する前から荷電されている場合に、集塵電極11,12間に印加する電圧の条件は、4〜40kV/cmであることが好ましい。
【0096】
〔1−1d〕シールド電極:
シールド電極は、これまでに説明したように、各計測電極配線間、或いは、各計測電極配線と他の配線等との間に生じる寄生容量の影響を抑制して、計測電極により高精度な測定を行うための電極である。
【0097】
シールド電極の厚さは特に限定されず、例えば、5〜30μmであることが好ましい。また、シールド電極の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。なお、シールド電極の形状については、シールド対象となる電流の流れの少なくとも一部を遮断することができるように配置されたものであれば、計測電極配線の形状等に応じて適宜決定することができる。
【0098】
図6に示す第一シールド電極17aは、計測電極配線15b,16b相互間に流れる電流を遮断するものであるため、一対の計測電極配線15b,16bを含む同一平面上における、一対の計測電極配線15b,16bの間の位置に配置されていればよい。
【0099】
また、図2に示すような、第二シールド電極17b、及び第三シールド電極17cは、計測電極配線15b,16bと、他の電極や配線との間(即ち、検出装置本体の厚さ方向)に流れる電流を遮断するものである。このような第二シールド電極17b、及び第三シールド電極17cと、計測電極配線15b,16bとの距離については、例えば、それぞれ100〜500μmであることが好ましく、150〜250μmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、効果的に電流の流れを遮断することができる。
【0100】
このようなシールド電極についても、例えば、図1A〜図1Dに示すように、シールド電極17を接地するための取り出し端子18を有しており、この接地用の取り出し端子18が、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されている。なお、接地用の取り出し端子18についても、他の取り出し端子と同様に構成することができる。なお、図5に示す第一シールド電極17aは、検出装置本体1の他方の先端部分1dにて、接地用の取り出し端子18と接続されている。
【0101】
〔1−1e〕加熱部:
図2及び図7に示すように、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔2の壁面(検出装置本体1の側面に並行する壁面)に沿うようにして検出装置本体1の内部に配設(埋設)された加熱部13を更に備えることが好ましい。加熱部13により、貫通孔2を形成する壁に吸着された粒子状物質を加熱酸化させることができ、また、粒子状物質の質量測定時等において、貫通孔2の内部空間を所望の温度に調節し、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調を行うことができる。
【0102】
加熱部13は、幅広のフィルム状であってもよいが、図7に示すように、線状の金属材料を、波状に配置し、先端部分でU−ターンするように配置したものであることが好ましい。このような形状にすることにより、貫通孔内部を均一に過熱することが可能となる。加熱部13の材質としては、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等を挙げることができる。加熱部13は、貫通孔2の壁面に沿うようにして検出装置本体1の内部に埋設されることが好ましいが、図7に示すように、貫通孔2が配置されている位置だけでなく、更に検出装置本体1の他方の端部1b側に延びるように形成されていてもよい。これにより、貫通孔内部と貫通孔付近との温度差を小さくでき、急加熱しても素子(検出装置本体)の破損が起きにくいという利点がある。加熱部により、貫通孔の内部空間の温度を650℃まで上昇できることが好ましい。
【0103】
図2に示す本実施形態の粒子状物質検出装置100においては、計測電極15,16が配設された側の、貫通孔2を形成する壁の内部に、且つ計測電極15,16、及び集塵電極12よりも壁の外側(即ち、検出装置本体1の外側)に埋設されている。このように構成することによって、一対の計測電極15,16が加熱部13の影響を受けることなく、貫通孔2を形成する壁の電気的な特性の変化を測定し易くなる。
【0104】
また、図7においては、二本の配線によって二つの加熱部13が形成された場合の例を示しているが、加熱部は一つであってもよいし、三つ以上の複数であってもよい。また、図示は省略するが、貫通孔が形成される両側の壁に、それぞれ加熱部が配置されていてもよい。即ち、加熱部の配置及び数は、温度調節、捕集した粒子状物質の酸化除去等の目的を達成するために必要な配置及び数とすることができる。
【0105】
また、図7に示す加熱部13は、配線13bに接続され、それぞれの配線13bは、図1Dに示すように、各取り出し端子13aに層間接続されている。加熱部13の取り出し端子13aも、計測電極15,16の取り出し端子15a,16aの場合と同様に、検出装置本体1の一方の端部1a側が加熱されたときの熱の影響を回避するために、検出装置本体1の他方の端部1bに配設されることが好ましい。図1Dにおいては、四つの取り出し端子13aが、検出装置本体1の他方の側面側に、四本が並ぶように配置されているが、取り出し端子13aの配置は、このような配置に限定されるものではない。
【0106】
加熱部13が線状である場合、その線の幅は、特に限定されず、例えば、0.05〜1mm程度が好ましい。また、加熱部13の厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。配線13bの幅は、特に限定されず、例えば、0.7〜4mm程度が好ましい。また、配線13bの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜30μm程度が好ましい。加熱部13に対応する取り出し端子13aの幅は、特に限定されず、例えば、0.1〜2mm程度が好ましい。また、取り出し端子13aの厚さは、特に限定されず、例えば、5〜1000μm程度が好ましい。配線13b及び取り出し端子13aの材質としては、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ステンレス、コバール等を挙げることができる。
【0107】
また、本実施形態の粒子状物質検出装置100は、貫通孔を形成する壁又は計測電極に吸着された粒子状物質を、一対の集塵電極11,12に電圧を印加して貫通孔2内に放電(即ち、粒子状物質の荷電とは別の条件の放電)を起こして、酸化除去することができるものであってもよい。粒子状物質を酸化除去する場合の放電を生じさせる条件としては、電界強度が10〜200kV/cmであり、エネルギー投入量が、被処理物質(粒子状物質)に対して0.05〜10J/μgであることが好ましい。
【0108】
本実施形態の粒子状物質検出装置100は、加熱部13の取り出し端子13aに接続された、加熱用の電源を更に備えることが好ましい。加熱用の電源としては、定電流電源等を挙げることができる。
【0109】
〔1−1f〕その他の構成要素:
本実施形態の粒子状物質検出装置は、一対の計測電極間の電気的な特性の変化を測定するための測定部や、この測定部と一対の計測電極配線とを電気的に接続するための一対の測定部接続配線等を更に備えていてもよい。また、上述したように、放電用の電源や加熱部用の電源、及びそれらとの電気的な接続を行うための配線等を更に備えていてもよい。
【0110】
〔1−2〕粒子状物質検出装置の製造方法:
次に、本実施形態の粒子状物質検出装置の製造方法について、図1A〜図1Dに示す粒子状物質検出装置100を製造する方法を例に説明する。
【0111】
〔1−2a〕成形原料の調製:
まず、検出装置本体1を製造するための成形原料を調製する。具体的には、例えば、アルミナ、コージェライト化原料、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種のセラミック原料(誘電体原料)と、成形原料として使用する他の成分とを混合し、スラリー状の成形原料を調製する。セラミック原料(誘電体原料)としては、上記原料が好ましいが、これに限定されるものではない。他の原料としては、バインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等を使用することが好ましい。
【0112】
バインダーとしては、特に限定されるものではないが、水系バインダー、非水系バインダーのどちらでもよく、水系バインダーとしてはメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用でき、非水系バインダーとしてはポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することができる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0113】
バインダーの添加量は、誘電体原料100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましく、6〜17質量部であることが更に好ましい。このようなバインダー含有量とすることにより、スラリー状の成形原料を成形してグリーンシートを成形したとき、及び、乾燥、焼成したときに、クラック等の発生を防止することが可能となる。
【0114】
可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等を使用することができる。
【0115】
可塑剤の添加量は、バインダー添加量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることが更に好ましい。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形しやすくなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入るなどハンドリング性が悪くなることがある。
【0116】
分散剤としては、水系ではアニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等を使用することが出来、非水系では脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等を使用することができる。
【0117】
分散剤は、誘電体原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることが更に好ましい。0.5質量部より少ないと、誘電体原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、誘電体原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
【0118】
分散媒としては、水等を使用することができる。分散媒は、誘電体原料100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、75〜150質量部であることが更に好ましい。
【0119】
上記各原料をアルミナ製ポット及びアルミナ玉石を用いて十分に混合してグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製する。また、これらの材料を、モノボールによりボールミル混合して作製してもよい。
【0120】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、さらに所定の粘度となるように調製する。成形原料の調製において得られるスラリー状の成形原料の粘度は、2.0〜6.0Pa・sであることが好ましく、3.0〜5.0Pa・sであることが更に好ましく、3.5〜4.5Pa・sであることが特に好ましい。粘度範囲をこのように調整すると、スラリーをシート状に成形し易くなるため好ましい。スラリー粘度は、高過ぎても低過ぎても成形し難くなることがある。尚、スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した値である。
【0121】
〔1−2b〕成形加工:
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をテープ状に成形加工して、一方向に長いグリーンシートを作製する。成形加工方法は、成形原料をシート状に成形してグリーンシートを形成することができれば特に限定されず、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、カレンダーロール法等の公知の方法を使用することができる。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、貫通孔形成用のグリーンシートを作製する。製造するグリーンシートの厚さは、50〜800μmであることが好ましい。
【0122】
得られたグリーンシートの表面に各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を配設する。図1A〜図1Dに示す粒子状物質検出装置100を作製する際には、図3〜図7に示されるように、各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子が所定の位置に配設されるように、グリーンシートの対応する位置に各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を印刷することが好ましい。
【0123】
各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成(印刷)するための導体ペーストは、各電極、配線等のそれぞれの形成に必要なそれぞれの材質に合わせて、金、銀、白金、ニッケル、モリブデン、及びタングステンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する粉末に、バインダ及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミル等を用いて十分に混錬して調製することができる。このようにして形成した、各電極、配線等の形成に必要な材質を含有するそれぞれの導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷等を用いて印刷して、所定の形状の各電極、配線、加熱部、及び取り出し端子を形成する。
【0124】
更に具体的には、複数のグリーンシートを作製し、それらのなかの二つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面に集塵電極を配設し、配設したそれぞれの集塵電極に対して必要に応じて配線を配設して、集塵電極配設グリーンシートを二つ形成する。
【0125】
更に、他の一つのグリーンシートについて、検出装置本体の貫通孔が形成される位置に、一対の計測電極を配設して、計測電極配設グリーンシートを形成する。なお、この際、それぞれの計測電極から検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線を配設し、更に、この一対の計測電極配線の間の位置に、第一シールド電極を配設する。
【0126】
更に、計測電極配設グリーンシートと重ねたときに、計測電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成する。この際、計測電極配設グリーンシートと重ねたときに、計測電極配線と重なる位置に、第二シールド電極を配設する。なお、第二シールド電極については、切断部形成グリーンシート上に配設せずに、更に別のグリーンシートを用いて作製してもよいが、切断部形成グリーンシート上に第二シールド電極を配設することによって、使用するグリーンシートの枚数を少なくし、粒子状物質検出装置の薄型化を実現することができる。
【0127】
更に、別の他の一つのグリーンシートについて、少なくとも貫通孔が形成される位置に、加熱部を配設して、加熱部配設グリーンシートを形成する。この加熱部配設グリーンシートについても、検出装置本体の他方の端部に向かって延びる配線を配設する。
【0128】
その後、二つの集塵電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて集塵電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、集塵電極埋設グリーンシートとする。そして、二つの集塵電極埋設グリーンシートで計測電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、その外側に加熱部配設グリーンシートを積層して、二つの集塵電極で切断部を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成する。
【0129】
上記複数のグリーンシートの積層は、同時に行ってもよいし、例えば、集塵電極埋設グリーンシートをまず作製してから、他のグリーンシートと積層してもよい。積層は加圧しながら行うことが好ましい。
【0130】
上記本発明の粒子状物質検出装置の製造方法は、複数のグリーンシートに所望の電極等を配設して、電極等を配設したグリーンシートを積層し、乾燥、焼成して粒子状物質検出装置を製造するため、効率的に本発明の粒子状物質検出装置を製造することができる。
【0131】
〔1−2c〕焼成:
次に、グリーンシート積層体を乾燥、焼成して、粒子状物質検出装置を得る。更に具体的には、得られた、グリーンシート積層体を60〜150℃で乾燥し、1200〜1600℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製する。グリーンシートが有機バインダーを含有する場合には、焼成の前に、400〜800℃で脱脂することが好ましい。
【実施例】
【0132】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0133】
(実施例1)
(成形原料の調製)
アルミナを誘電体原料として使用し、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエートを使用し、分散媒として有機溶剤(キシレン、ブタノール=6:4(質量比))を使用し、これらをアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7質量部、可塑剤3.5質量部、分散剤1.5質量部、有機溶剤100質量部とした。
【0134】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0135】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工した。このとき、グリーンシートを積層したときに貫通孔が形成されるように、切断部形成グリーンシートも作製した。グリーンシートの厚さは、計測電極が配置されるグリーンシートを50μmとし、それ以外のグリーンシートを250μmとした。
【0136】
得られたグリーンシートの表面に、図2〜図7に示されるような、各電極(計測電極、シールド電極、及び集塵電極)、加熱部、各配線、及び各取り出し端子を形成した。配設する各電極、接地電極、配線、及び取り付け端子を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0137】
また、加熱部を形成するための導体ペーストは、白金粉末に、溶剤として2−エチルヘキサノール、バインダーとしてポリビニルブチラール、可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、分散剤としてソルビタントリオレエート、グリーンシートの共生地としてアルミナ、焼結助剤としてガラスフリットを加え、らいかい機及びトリロールミルを用いて十分に混錬して調製した(質量比で、白金:アルミナ:ガラスフリット:2−エチルヘキサノール:ポリビニルブチラール:フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:ソルビタントリオレエート=80:15:5:50:7:3.5:1)。
【0138】
このようにして形成した導体ペーストを、グリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極等を形成した。具体的には、複数のグリーンシートのなかの二つのグリーンシートについて、それぞれの一方の面に集塵電極を配設し、高電圧集塵電極については他方の端部に向かって延びる配線を配設して、集塵電極配設グリーンシートを二つ形成した。
【0139】
更に、厚さ50μmのグリーンシートについて、貫通孔を形成する部位に、櫛歯状の一対の計測電極を形成した。櫛歯状の一対の計測電極は、櫛歯部分の線間ピッチが0.35mm(櫛歯部分のクリアランスが0.15mm、各櫛歯部分の幅が0.20mm)となるように間隔を空けて噛み合うように対向配置した。なお、計測電極については他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線配線を配設し、更に、一対の計測電極配線配線の間の位置に、第一シールド電極を配置した。なお、計測電極、及び計測電極配線配線の幅は、それぞれ0.2mmとした。
【0140】
更に、他の一つのグリーンシートについて、計測電極配設グリーンシートと重ねたときに計測電極と重なる位置に貫通孔となる切断部を形成して切断部形成グリーンシートを形成した。なお、切断部形成グリーンシートには、上記した計測電極配設グリーンシートと重ねたときに、計測電極配線と重なる位置に、第二シールド電極も合わせて配設した。
【0141】
更に、別の他の一つのグリーンシートについて、切断部形成グリーンシートと重ねたときに貫通孔となる切断部と重なる位置に加熱部を形成し、加熱部から他方の端部に向かって延びる配線を配設して加熱部形成グリーンシートを形成した。
【0142】
そして、二つの集塵電極配設グリーンシートのそれぞれに、他の電極等が配設されていないグリーンシートを重ねて集塵電極及び配線をグリーンシートで覆った状態として、集塵電極埋設グリーンシートとするとともに、二つの集塵電極埋設グリーンシートで計測電極配設グリーンシート及び切断部形成グリーンシートを挟むように積層し、更に、加熱部形成グリーンシートを集塵電極埋設グリーンシートの外側に位置するように積層し、二つの集塵電極で切断部を挟み且つ二つの配線で計測電極を挟んだ状態のグリーンシート積層体を形成した。各配線と、各配線に対応する取り出し端子とは、導体ペーストの埋め込み方法により、層間接続(ビア接続)した。
【0143】
グリーンシートの積層は、グリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、グリーンシート積層体からなる粒子状物質検出装置の未焼成体を得た。
【0144】
(焼成)
得られた、グリーンシート積層体(粒子状物質検出装置の未焼成体)を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して粒子状物質検出装置を作製した。得られた粒子状物質検出装置は、0.625cm×0.205cm×7cmの直方体において、他方の端部が、図1Bに示すように二段階に細くなった形状とした。細くなった他方の端部は、他方の端部から12cmまでの部分(一段目の部分)の幅が4.25cmであり、この一段目の部分から他方の端部から16cmまでの部分(二段目の部分)の幅が6.24cmであった。
【0145】
(放電用電源)
放電用の電源としては、パルス電源とDC電源を用い、電極の取り出し端子に接続した。
【0146】
(測定部)
計測電極間のインピーダンスを測定するための測定部としては、アジレントテクノロジー社製のインピーダンスアナライザを用い、計測電極の取り出し端子に接続した。測定部については、図9に示すように、計測電極から流れる電流が通過する測定部内配線52の、抵抗56とオペアンプ55の入り口側までの範囲に測定部内配線用シールド電極54を配置し、余分な電流が外部から流れ込むことを防止した。なお、測定部内配線用シールド電極は、銅メッシュ線によって形成し、接地端子に電気的に接続した。
【0147】
(測定部接続配線)
測定部と計測電極の取り出し端子とを接続する測定部接続配線は、測定部に入力される配線を、接続配線用シールド電極によって被覆(シールド)した。なお、検出装置本体のそれぞれの取り出し端子、測定部接続配線、及び測定部は、図12に示すように電気的に接続した。ここで、図12は、実施例1における検出装置本体の構成を模式的に示す模式図である。なお、図3〜図9に示す粒子状物質検出装置の各要素と同様に構成されているものについては、同一の符号を付して説明を省略する。なお、図12においては、符号65は、集塵電極11と測定部50とを電気的に接続する配線を示し、符号66は、第二集塵電極17と測定部50とを電気的に接続する配線を示し、符号67は、集塵電極12と測定部50とを電気的に接続する配線を示し、符号68は、加熱部13と測定部50とを電気的に接続する配線を示す。
【0148】
上述した各電極と測定部との接続に使用する配線は、絶縁体としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた絶縁電線を用い、測定部内配線用シールド電極は銅メッシュ線を使用した。また、測定部と計測電極の取り出し端子とを接続する測定部接続配線の長さは500mmとした。
【0149】
(粒子状物質測定方法)
得られた粒子状物質検出装置を、ディーゼルエンジンの排気管に設置した。ディーゼルエンジンとしては、排気量2000ccの直噴−ディーゼルエンジンを使用し、回転数1500rpm、トルク24N・m、EGR(exhaust gas recirculation)開度50%、排ガス温度200℃、吸入空気1.3m(室温換算)/分の運転条件下で排ガスを発生させた。スモークメータ(AVL社製、商品名:型式4158)による排ガス中の粒子状物質量は、2.0mg/mであった。粒子状物質の検出は、以下のように行った。
【0150】
ディーゼルエンジンから排ガスを発生させながら、粒子状物質を荷電集塵する前に、一対の電極間の初期のインピーダンスを、10秒ごとに3分間に亘って測定し、その後、粒子状物質を30秒に亘って荷電集塵し、その後、荷電集塵操作を停止して、再度、インピーダンス(一対の電極間の30秒集塵後のインピーダンス)(pF)を、10秒ごとに3分間に亘って測定した。
【0151】
初期のインピーダンス及び30秒集塵後のインピーダンスは、いずれもインピーダンスの変化がなくなり安定した6回の測定の平均値を求めた。そして、初期のインピーダンスと30秒集塵後のインピーダンスとの差から、集塵された粒子状物質の質量を算出した。粒子状物質の質量の算出は、粒子状物質の吸着量に対するインピーダンスの変化について、予め検量線を作成しておき、その検量線を用いて行った。尚、本測定においては、ヒーターによる粒子状物質の燃焼は行わないこととした。粒子状物質を荷電集塵する際には、高電圧電源による印加電圧をDC2.0kVとした。インピーダンス値の計測結果を表1に示す。また、表1に、インピーダンス変化率として、初期のインピーダンス値に対する、30秒集塵後のインピーダンス値の変化量(初期のインピーダンス値から30秒集塵後のインピーダンス値を減算した値)の割合を示す。
【0152】
なお、上記のインピーダンスの計測には、アジレントテクノロジー社製のインピーダンスアナライザを使用した。インピーダンスの計測は、正弦波2V、1kHzで行い、計測における接続方法は、図12に示すとおりである。
【0153】
【表1】

【0154】
(実施例2)
表1に示すように、測定部に測定部内配線用シールド電極を配置しなかったこと以外は、実施例1と同様に構成された粒子状物質検出装置を製造し、実施例1と同様の方法にてインピーダンスの計測を行った。結果を表1に示す。
【0155】
(比較例1,2)
表1に示すように、検出装置本体の計測電極配線に対してシールド電極を配置しなかったこと以外は、実施例1と同様に構成された粒子状物質検出装置を製造し(比較例1)、実施例1と同様の方法にてインピーダンスの計測を行った。また、計測電極配線、測定部接続配線、及び測定部の全てにシールド電極を配置しなかったこと以外は、実施例1と同様に構成された粒子状物質検出装置を製造し(比較例2)、実施例1と同様の方法にてインピーダンスの計測を行った。結果を表1に示す。
【0156】
表1より、実施例1及び2の粒子状物質検出装置は、インピーダンス値の変化量が大きく(0.41以上)、初期のインピーダンス値と、30秒集塵後のインピーダンス値の差が明確に示されていることがわかった。一方、計測電極配線に対してシールド電極を配置しなかった比較例1は、計測電極配線にて生じる寄生容量の影響により、実施例1と比較してインピーダンス値の変化量が小さくなっており、測定値に誤差を生じやすいということが判明した。更に、シールド電極を一切配置しなかった比較例2は、インピーダンス値の変化量が実施例1の十分の1程度と極めて小さく、測定値により大きな誤差を生じやすいということが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0157】
DPFの欠陥の発生を即座に検知し、装置の異常を認識するために好適に利用することができ、これにより大気汚染の防止に貢献することができる。
【符号の説明】
【0158】
1:検出装置本体、1a:一方の端部、1b:他方の端部、1c:一方の先端部分、1d:他方の先端部分、2:貫通孔、2a:入り口部分、2b:拡開部分、11:集塵電極(高電圧集塵電極)、12:集塵電極(接地集塵電極)、11a,12a,13a:取り出し端子、11b,12b,13b:配線、13:加熱部、15,16:計測電極、15a,16b:計測電極取り出し端子、15b,16b:計測電極配線、17:シールド電極、17a:第一シールド電極(シールド電極)、17b:第二シールド電極(シールド電極)、17c:第三シールド電極(シールド電極)、18:取り出し端子、、50:測定部、51,52,53:測定部内部配線、54:測定部内配線用シールド電極、55:オペアンプ、56:抵抗、61,62:測定部接続配線、63:接続配線用シールド電極、64:シールド配線、65,66,67,68:配線、100,200,300,400,500:粒子状物質検出装置、W1:拡開された幅、W2:拡開されていない幅、L1:拡開部分の奥行き、L2:貫通孔のガス流通方向における長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に少なくとも一の貫通孔が形成された一方向に長い検出装置本体と、
前記貫通孔を形成する一方の壁の内側面又は内部に配設された少なくとも一対の計測電極と、
前記一対の計測電極からそれぞれ前記検出装置本体の他方の端部に向かって延びる一対の計測電極配線と、
前記貫通孔を形成する対向するそれぞれの壁の内部に、且つ、前記一対の計測電極の埋設位置よりも前記貫通孔を形成する壁の外側に埋設され、誘電体で覆われた少なくとも一対の集塵電極と、
前記一対の計測電極配線のうちの少なくとも一方の計測電極配線と誘電体を挟んで配置され、前記誘電体を通じて前記少なくとも一方の計測電極配線に流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地されたシールド電極と、を備え、
前記貫通孔内に流入する流体に含有される荷電された粒子状物質、又は、前記一対の集塵電極に電圧を印加することにより前記貫通孔内に生じる放電により荷電された、前記貫通孔内に流入する流体に含有される粒子状物質を、前記貫通孔の壁面に電気的に吸着させることが可能であり、前記貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を、前記一対の計測電極によって測定することにより前記貫通孔の壁面に吸着された粒子状物質を検出することが可能な粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記シールド電極が、前記一対の計測電極配線の間の位置に配置され、前記誘電体を通じて前記一対の計測電極配線間に流れる電流を遮断するための第一シールド電極を有する請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記シールド電極が、前記一対の計測電極配線と前記一対の集塵電極のうちの高電圧が印加される高電圧集塵電極に接続された配線との間の位置に配置された第二シールド電極と、前記一対の集塵電極のうちの接地された接地集塵電極からなる第三シールド電極と、を有する請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記一対の計測電極間の電気的な特性の変化を測定するための測定部と、前記測定部と前記一対の計測電極配線とを電気的に接続するための一対の測定部接続配線と、を更に備え、
前記一対の測定部接続配線のうちの少なくとも一方の測定部接続配線は、前記一対の測定部接続配線間の空間を通して流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地された接続配線用シールド電極によって被覆されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記一対の計測電極間の電気的な特性の変化を測定するための測定部と、前記測定部と前記一対の計測電極配線とを電気的に接続するための一対の測定部接続配線と、を更に備え、
前記測定部は、前記一対の測定部接続配線に電気的に接続された測定部内配線と、前記測定部内配線の周囲の少なくとも一部に配置され、前記測定部内にて隣接配置された前記測定部内配線間に流れる電流の少なくとも一部を遮断するための、接地された測定部内配線用シールド電極と、を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記測定部内配線、及び前記測定部内配線用シールド電極が、絶縁性のプリント基板上に配置されたプリント配線である請求項5に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項7】
前記貫通孔の壁面に沿うようにして検出装置本体の内部に配設された、前記貫通孔を形成する壁の電気的な特性の変化を安定的に測定するための温調用の加熱部を更に備えた請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項8】
前記貫通孔の、前記流体が流入する入口部分及び前記流体が流出する出口部分の少なくとも一つが、拡開されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項9】
前記検出装置本体の中心軸に直交する断面形状が、前記貫通孔の貫通方向において、一方の端部側から中央部に向かって漸次太くなり、中央部分で最も太く、更に他方の端部側に向かって漸次細くなる形状である請求項1〜8のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項10】
前記貫通孔の壁面に吸着した粒子状物質を、前記一対の集塵電極に電圧を印加して前記貫通孔内に放電を起こして酸化除去することが可能な請求項1〜9のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項11】
前記貫通孔内に起きる放電が、無声放電、ストリーマ放電、及びコロナ放電からなる群より選択される一種である請求項1〜10のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項12】
前記誘電体が、アルミナ、コージェライト、ムライト、ガラス、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜11のいずれか一項に記載の粒子状物質検出装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−210538(P2010−210538A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58855(P2009−58855)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】