説明

粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法

【課題】燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる粒子状物質発生装置を提供する。
【解決手段】燃焼用空気F1を供給するための空気入口1及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスF2を排出するためのガス出口2を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する燃焼室3と、燃焼室3に挿入され気体燃料を燃焼室3内に連続的に供給するメインバーナ4と、燃焼室3取り付けられ燃焼室3に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナ6とを備え、メインバーナが配置されている位置が、パイロットバーナが配置されている位置から下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナが配置されている位置から上流側に向かって200mmの位置までの範囲内である粒子状物質発生装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法に関し、さらに詳しくは、燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の内燃機関等から排出される排気ガス中の微粒子や有害物質は、人体、環境への影響が大きく、これらの大気への放出を防止する必要性が高まっている。特にディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(Particulate Matter:PM)やNO(窒素酸化物)等は影響が甚大であり、それらにかかる規制は世界的に強化されている。そこで、PMを捕集するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)や、NOを窒素と水に還元する等の特性を有する触媒、を備えた排気ガス浄化装置の研究、開発が進められ、高性能な排気ガス浄化装置が市場に提供されるようになった。
【0003】
このような排気ガス浄化装置を製造するに際しては、その排気ガス浄化装置を試験し、その性能や耐久性を正確に高い精度で評価する必要がある。排気ガス浄化装置の性能等を評価する手段としては、実際の自動車エンジン等からの排気ガスを排気ガス浄化装置に供給して、その処理ガスを分析する方法が挙げられる。また、カーボン粉末や実際の排気ガスから採取した粒子状物質を用い、これをガス中に混合して、実際の自動車エンジンからの排気ガスを模した排気ガスを製造し、それを排気ガス浄化装置に供給して、その処理ガスを分析する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。更には、軽油又は炭化水素を燃焼させて粒子状物質を含む排気ガスを発生させる方法や、黒鉛電極をスパークさせて粒子状物質を含む排気ガスを発生させる方法が知られており、これらにより得られた排気ガスを用いて、排気ガス浄化装置の性能等を評価することが可能である(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、燃料間欠噴射手段を備え、燃焼用空気の中に燃料を間欠的に噴射することにより、燃焼ガス中に多量の粒子状物質を発生させ、その多量の粒子状物質を含む燃焼ガスを安全に、安定して排ガス浄化装置に供給することができるPM(粒子状物質)発生装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−214742号公報
【特許文献2】特開2007−155712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の自動車エンジン等からの排気ガスを利用する方法では、設備が大型化し高額になるという問題があった。また、自動車エンジンからの排気ガスを模した排気ガスを製造する方法では、一旦採取されたPMを用いることから、実際の排気ガスを十分に模擬したものとはいえないという問題があった。更に、軽油又は炭化水素を燃焼させてPMを含む排気ガスを発生させる方法ではPMの発生量の制御が困難であり且つ失火し易いという問題があった。黒鉛電極をスパークさせて粒子状物質を含む排気ガスを発生させる方法では、粒子状物質発生量が少なく、多量の粒子状物質を短時間に発生出来ないという問題があった。
【0007】
また、燃料間欠噴射手段を備え、燃焼用空気の中に燃料を間欠的に噴射するPM(粒子状物質)発生装置は、粒子状物質を多量に発生させることができる優れたものであるが、発生する粒子状物質の燃焼温度の観点から、更に改良の余地のあるものであった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法を提供する。
【0010】
[1] 燃焼用空気を供給するための空気入口及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスを排出するためのガス出口を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する燃焼室と、前記燃焼室に取り付けられ気体燃料を前記燃焼室内に連続的に供給するメインバーナと、前記燃焼室に挿入され前記燃焼室に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナとを備え、メインバーナが配置されている位置が、パイロットバーナが配置されている位置から下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナが配置されている位置から上流側に向かって200mmの位置までの範囲内である粒子状物質発生装置。
【0011】
[2] 前記燃焼室内の平均空気過剰率が0.9〜2.0である[1]に記載の粒子状物質発生装置。
【0012】
[3] 燃焼用空気の平均流速が、0.1〜2m/秒である[1]又は[2]に記載の粒子状物質発生装置。
【0013】
[4] 気体燃料が、メタン、エタン、プロパン、及びブタンから選択される少なくとも一種である[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0014】
[5] 前記メインバーナから供給される気体燃料の前記メインバーナからの供給方向が、前記燃焼用空気の流れ方向を含む平面内における、前記燃焼用空気の流れ方向を0°方向とし前記燃焼用空気の流れ方向に直交する方向を90°方向としたときの、90°〜270°方向である[1]〜[4]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0015】
[6] 前記メインバーナが、前記気体燃料を供給する供給孔が1個形成され、前記供給孔の開口径が4〜10mmである管状構造である[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0016】
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置を用いて、粒子状物質を発生させる粒子状物質発生方法。
【0017】
[8] 平均空気過剰率が0.9〜2.0になるように、前記空気入口から前記燃焼用空気を供給し、前記メインバーナから前記気体燃料を連続的に供給し、前記パイロットバーナにより前記気体燃料に着火して前記気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させ、前記粒子状物質を含有するガスを前記ガス出口から排出する[7]に記載の粒子状物質発生方法。
【0018】
[9] [1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置と、前記粒子状物質発生装置のガス出口側に配設された、評価試料である多孔質セラミック構造体を収納する試料収納容器とを備え、前記粒子状物質発生装置で発生した粒子状物質をガスと共に前記試料収納容器に送り、前記粒子状物質を含有する前記ガスを前記試料収納容器に収納された多孔質セラミック構造体に供給することができる多孔質セラミック構造体評価装置。
【0019】
[10] 冷却空気供給手段と、前記冷却空気供給手段から供給される空気の流量を制御する冷却空気流量制御手段とを更に備え、前記冷却空気供給手段から、前記粒子状物質発生装置と前記試料収納容器との間に、冷却空気を導入し、冷却空気と粒子状物質を含有するガスとを混合し、前記粒子状物質を含有するガスの温度制御をすることができる[9]に記載の多孔質セラミック構造体評価装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粒子状物質発生装置は、メインバーナとパイロットバーナの距離を近くし、燃焼エア(燃焼用空気)と気体燃料を、燃焼室内に共に連続的に供給しながら、高い空気過剰率で、当該気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させるため、燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる。
【0021】
また、本発明の粒子状物質発生方法は、上記本発明の粒子状物質発生装置を用いて、粒子状物質を発生させるものであるため、燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面を示す模式図である。
【図4】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を構成するメインバーナを模式的に示す平面図である。
【図6】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図8】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図9】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0024】
(1)粒子状物質発生装置:
本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態は、図1〜図3に示すように、「燃焼用空気F1を供給するための空気入口1及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスF2を排出するためのガス出口2を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する」燃焼室3と、「燃焼室3に挿入され気体燃料を燃焼室3内に連続的に供給する」メインバーナ4と、「燃焼室3に取り付けられ燃焼室3に供給された気体燃料に着火する」パイロットバーナ6とを備えるものである。そして、メインバーナが配置されている位置が、パイロットバーナが配置されている位置から下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナが配置されている位置から上流側に向かって200mmの位置までの範囲内である。メインバーナ4には、気体燃料を供給する供給孔(気体燃料を供給する孔)5」が形成されている。図1は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。図2は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す平面図である。図3は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面(燃焼用空気F1の流れ方向に平行であると共に、円筒状のメインバーナ4の中心軸に直交する断面)を示す模式図である。
【0025】
このように、本実施形態の粒子状物質発生装置100は、メインバーナとパイロットバーナの距離を近くし、燃焼エア(燃焼用空気)と気体燃料を燃焼室3内に共に連続的に供給しながら、当該気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させるため、燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる。更に詳細には、気体燃料を燃焼室3内に連続的に供給し空気過剰率を0.9〜2.0の間の高い範囲で燃焼させることにより、燃焼温度が高くなり、燃焼温度の高い炭素を主成分とする粒子状物質を生成させることができる。具体的には、粒子状物質の燃焼温度を、520〜560℃とすることができる。ここで、「炭素を主成分とする」とは、粒子状物質全体において炭素が90質量%以上含有されることを意味する。粒子状物質中には、炭素以外にはSOF(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)分等が含有されることがある。
【0026】
本実施形態の粒子状物質発生装置100は、燃焼用空気F1を供給するための空気入口1及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスF2を排出するためのガス出口2を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する、「両端部がテーパー状に細く形成された円筒状」の燃焼室3を備えるものである。燃焼室3の形状は、図1、図2に示すように、「両端部がテーパー状に細く形成された円筒状」であることが好ましいが、「一方の端部がテーパー状に細く形成された円筒状」であってもよく、また、両端部にテーパーが形成されていない通常の円筒状であってもよく、更には、底面が「四角形等の多角形(両端部又は一方の端部がテーパー状であるものも含む)」の筒状であってもよい。燃焼室3の形状が、図1、図2に示すように、「一方の端部がテーパー状に細く形成された円筒状」であると、「一方の端部がテーパー状に形成されている」ため、燃焼用空気および粒子状物質含有ガスの流れがスムースとなり、粒子状物質の発生量が多く、且つ、圧損を低く抑えることができる。また、燃焼室3の空気入口1とガス出口2には、図1、図2に示すように、他の部材や配管との接合のために、フランジ(鍔部)7が配設されていることが好ましい。
【0027】
燃焼室3の大きさは、特に限定されないが、必要な範囲の燃焼エア(燃焼用空気)により、燃料を燃焼させ、粒子状物質を生成させることができる大きさであることが好ましい。例えば、評価試料の大きさの範囲から、必要な範囲の排気ガス流量が燃焼空気流量で4Nm/分〜0.25Nm/分であって、粒子状物質の発生量(濃度)が0.25〜0.75g/Nm必要となる場合、燃焼室内径(直径)は130〜250mmであることが好ましく、150〜200mmであることが更に好ましい。また、同様に燃焼空気流量が4Nm/分〜0.25Nm/分の場合の燃焼室3の容積は、6,000〜35,000cmであることが好ましく、6,000〜30,000cmであることが更に好ましい。燃焼室内径が130mmより小さいと、粒子状物質の生成量が少なくなることがある。また、燃焼室内径が250mmより大きいと最小燃焼空気流量が制限されることがある。燃焼室の内容積が、6,000cmより小さいと燃焼室壁が高温となり、燃焼室が酸化劣化したり、周辺への熱遮蔽が必要となることがある。また、燃焼室の積が、35,000cmより大きいと、粒子状物質発生装置が大きくなるため、粒子状物質発生装置の製造コストや運転コストが大きくなり、粒子状物質発生装置を設置するためのスペースを大きくする必要が生じることがある。
【0028】
ここで、燃焼空気流量とは、評価試験に必要となる所定温度の排気ガス流量を得るために必要となる燃焼空気流量を言う。排気ガス流量は、試料の容積に比例して決まり、最大燃焼空気流量及び最小燃焼空気流量とは、評価試料の容積が最大の場合に必要となる燃焼空気流量を最大燃焼空気流量、評価試料容量が最小の場合の燃焼空気流量を最小燃焼空気流量と言い、粒子状物質発生装置の設計仕様範囲である。
【0029】
また、燃焼室3の形状が、図1、図2に示すように、「両端部がテーパー状に細く形成された円筒状」である場合、燃焼室3の空気入口1の「ガスの流れる方向に直交する断面」の面積は、燃焼室3の、「ガスの流れる方向に直交する断面」の面積の最も大きな部分における、当該最も大きな断面積の15〜60%であることが好ましく、25〜50%であることが更に好ましい。
【0030】
また、燃焼室3の壁の厚さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜7mmであることが更に好ましい。燃焼室3の壁の厚さが薄すぎると、粒子状物質発生装置の強度が低下することがある。燃焼室3の壁の厚さが厚すぎると、粒子状物質発生装置が重くなり過ぎることがあり、また、粒子状物質発生装置の製造コストが高くなることがある。また、燃焼室3の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル合金等を挙げることができる。
【0031】
燃焼用空気F1は、コンプレッサーによって空気を加圧して生成させることが好ましい。そして、減圧弁および流量制御弁によって調整された燃焼用空気(圧縮空気)F1が、燃焼室3の空気入口1に供給されることが好ましい。燃焼用空気F1を発生させる装置は、冷却空気供給手段41(図7を参照)としてもよい。つまり、冷却空気供給手段41(図7を参照)で生成させた圧縮空気を、燃焼用空気F1及び冷却空気F3(図7を参照)の両方に使用してもよい。
【0032】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、燃焼室3内の平均空気過剰率が0.9〜2.0であることが好ましく、1〜1.5であることが更に好ましい。平均空気過剰率が0.9より小さくても、平均空気過剰率が2.0より大きくても、粒子状物質の燃焼温度が低くなることがある。燃焼室3内の平均空気過剰率は、燃焼室3を流れる燃焼用空気全体の流量(体積)と供給している燃料全体の流量(体積)と、を用いて算出した値である。ここで、「空気過剰率」は、燃焼空気の流量(体積)を、「供給している燃料」を過不足なく燃焼させるために必要な空気の理論流量(体積)と燃料の流量(体積)で、除した値である。そして、燃焼室3内の平均空気過剰率は、燃焼室3内を流れる燃焼用空気全体の流量(体積)と、供給している燃料全体の流量(体積)と、を用いて算出した「空気過剰率」のことである。
【0033】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、燃焼用空気F1の平均流速(燃焼室3内における燃焼用空気F1の平均流速)は、0.1〜4.0m/秒であることが好ましく、0.1〜2.0m/秒であることが更に好ましい。0.1m/秒より遅いと、粒子状物質の燃焼温度が低くなることがある。4.0m/秒より速いと、粒子状物質の発生量が少なくなることがある。
【0034】
メインバーナ4から供給される気体燃料としては、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス等を挙げることができる。
【0035】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、図1〜3に示すように、気体燃料の供給孔5が形成された筒状のメインバーナ4が、中心軸が燃焼用空気F1の流れる方向に直交するように、燃焼室3の側面から燃焼室3内部に挿入されていることが好ましい。そして、図4に示すように、「メインバーナ4から供給される気体燃料」のメインバーナ4からの供給方向(気体燃料の供給方向)Qが、燃焼用空気F1の流れ方向を含む(燃焼用空気F1の流れ方向に平行な)平面内における、燃焼用空気F1の流れ方向を0°方向(Q0)とし燃焼用空気F1の流れ方向に直交する方向を90°方向(Q90)としたときの、90°方向〜270°方向(90°方向(Q90)〜270°方向(Q270))であることが好ましく、135°方向〜225°方向であることが更に好ましい。このように、気体燃料の供給方向Qを、燃焼用空気F1の流れ方向を含む平面内における、90°方向〜270°方向とすることにより、より燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生することができ135°方向〜225°方向とすることにより、更に燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生することができる。「気体燃料の供給方向」は、メインバーナ4の「供給孔5の向き」であるということもできる。図4は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面を示す模式図である。図4は、燃焼用空気F1の流れ方向に平行であるとともに、メインバーナ4に直交する平面で切断した断面である。
【0036】
燃焼室3内においてメインバーナ4が配置されている位置は、パイロットバーナ6から下流側(燃焼用空気F1の流れ方向における下流側)に向かって100mmの位置から、パイロットバーナ6から上流側(燃焼用空気F1の流れ方向における上流側)に向かって200mmの位置までの範囲内であり、パイロットバーナ6から下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナ6から上流側に向かって100mmの位置までの範囲内であることが好ましく、パイロットバーナ6から下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナ6から上流側に向かって50mmの位置までの範囲内であることが更に好ましい。
【0037】
図5に示すように、本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、メインバーナ4は、「気体燃料を供給する供給孔5が1個形成され、供給孔5の開口径が4〜10mmである管状構造」であることが好ましい。メインバーナ4に供給孔5が1個形成される場合に、供給孔5の開口径が4mmより小さく、10mmより大きいと、気体燃料と燃焼エア(燃焼用空気)の混合が良くなる場合があり、粒子状物質の生成量が少なくなることがある。メインバーナ4の形状は、図1、図5に示すように、円筒状であることが好ましいが、底面が「四角形等の多角形」の筒状であってもよい。図5は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を構成するメインバーナを模式的に示す平面図である。
【0038】
メインバーナ4の燃焼室3に挿入されている部分の長さ及び内径(メインバーナ4の内部の空間部分の、中心軸方向に直交する断面における直径)は、特に限定されないが、燃焼室の径、メインバーナ4の供給孔5の位置及び孔径で略決まる。一方、メインバーナ4の供給孔5の孔径は、粒子状物質発生装置の燃焼エア流量範囲とメインバーナ4の位置の流速で略決まり、燃焼エア流量範囲が0.25Nm/分〜4Nm/分では4mm〜10mmであることが好ましい。また、メインバーナ4の壁の厚さは、3〜10mmが好ましい。3mmより薄いと、メインバーナ4の強度が低下することがある。10mmより厚いと、メインバーナの内径が小さくなるか、メインバーナの外径(メインバーナ4の、中心軸方向に直交する断面における外周の直径)が大きくなることがある。メインバーナ4の外径が大きいと、燃焼室3内の燃焼空間が小さくなり、粒子状物質の生成量が少なくなることがある。
【0039】
また、メインバーナ4の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル合金等を挙げることができる。
【0040】
本実施形態の粒子状物質発生装置100は、図1〜図3に示すように、燃焼室3の壁面に取り付けられ、燃焼室に供給された気体燃料に着火する、パイロットバーナ6を備えている。パイロットバーナ6は、筒状であることが好ましく、燃焼室3の壁面に取り付けられていることが好ましい。パイロットバーナ6の構造としては、自動点火が可能であることが好ましく、また、圧縮空気の使用が可能であることが好ましく、また、火炎検知器の取り付けが可能であることが好ましい。
【0041】
パイロットバーナ6の材質としては、ステンレス鋼、炭素鋼等を挙げることができる。
【0042】
(2)粒子状物質発生装置の製造方法:
本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下の方法を挙げることができる。
【0043】
燃焼室、メインバーナ及びパイロットバーナを所定の材料を用いてそれぞれ作製する。燃焼室、メインバーナ及びパイロットバーナの材料は、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態において好ましいとされた材料であることが好ましい。燃焼室、メインバーナ及びパイロットバーナは、それぞれ、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態において好ましいとされた形状等に形成することが好ましい。
【0044】
作製した、燃焼室、メインバーナ及びパイロットバーナを、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態において好ましいとされた位置関係になるように組み立てて本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を得ることが好ましい。
【0045】
(3)粒子状物質発生方法:
本発明の粒子状物質発生方法の一の実施形態は、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を用いて、粒子状物質を発生させる方法である。
【0046】
このように、本発明の粒子状物質発生方法の一の実施形態は、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を用いて、粒子状物質を発生させるため、燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる。具体的には、粒子状物質の燃焼温度を、500〜560℃とすることができる。そして、DPFの評価を効率よく実施可能な、粒子状物質発生装置として望ましい燃焼エア1Nm当たり、0.75g以上の粒子状物質を生成させることができる。
【0047】
本実施形態の粒子状物質発生方法は、図1〜図3に示す粒子状物質発生装置100を用いて、空気入口1から燃焼用空気F1と、メインバーナ4から気体燃料を共に連続的に供給し、(燃焼用空気F1、気体燃料共に連続的に供給する)パイロットバーナ6により気体燃料に着火して気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させ、冷却用空気F3により排気ガス温度を調整し、粒子状物質を含有するガス(粒子状物質含有ガス)F2をガス出口2から排出するものである。
【0048】
本実施形態の粒子状物質発生方法においては、平均空気過剰率(燃焼室内の平均空気過剰率)が0.9〜2.0になるように、空気入口から燃焼用空気を供給することが好ましい。平均空気過剰率は、1.0〜1.5であることが更に好ましい。平均空気過剰率が0.9より小さくても、平均空気過剰率が2.0より大きくても、発生する炭素を主成分とする粒子状物質の燃焼温度は低くなる。
【0049】
本実施形態の粒子状物質発生方法においては、メインバーナ4に着火してから、10〜20秒後に、パイロットバーナ6を消火することが好ましい。10秒後より前にパイロットバーナ6を消火すると、メインバーナ4がその後消えることがある。10〜20秒後にパイロットバーナ6を消火すると、安定した燃焼状態でさらにPMを効率よく発生することができる。
【0050】
(4)多孔質セラミック構造体評価装置:
本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態(多孔質セラミック構造体評価装置200)は、図6に示すように、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態(粒子状物質発生装置100)と、粒子状物質発生装置100のガス出口2側に配設された、評価試料である多孔質セラミック構造体32を収納する試料収納容器31とを備え、粒子状物質発生装置100で発生した粒子状物質をガスと共に試料収納容器31に送り(粒子状物質含有ガスF2を試料収納容器31に送り)、粒子状物質を含有するガス(粒子状物質含有ガスF2)を試料収納容器31に収納された多孔質セラミック構造体32に供給することができるものである。図6は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0051】
このように、本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態(粒子状物質発生装置100)で生成させた粒子状物質を試料収納容器31に送り、試料収納容器31内に収納された多孔質セラミック構造体32に供給することができるため、燃焼温度の高い粒子状物質を多孔質セラミック構造体32に送り、多孔質セラミック構造体32についての、粒子状物質を捕集して行う試験を効果的に行うことができる。そして、自動車等に搭載した場合に近い試験結果を得ることができる。
【0052】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200は、図6に示すように、冷却空気導入ノズル33を側面に備えた冷却空気混合管34を、粒子状物質発生装置100と試料収納容器31との間に、備えることが好ましい。そして、冷却空気導入ノズル33から冷却空気混合管34内に供給された冷却空気F3と、粒子状物質含有ガスF2とを、冷却空気混合管34内で混合しして混合ガスを生成させ、当該混合ガス(冷却空気F3と粒子状物質含有ガスF2との混合ガス)の温度を制御することができることが好ましい。そして、この場合、混合ガス(冷却空気F3と粒子状物質含有ガスF2との混合ガス)が試料収納容器31に送られる。これにより、より実際の使用に近い排気ガス温度・流量条件で多孔質セラミック構造体32の評価をすることができる。冷却空気混合管34と粒子状物質発生装置100との接合、及び冷却空気混合管34と試料収納容器31との接合は、フランジを介して行われていることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200は、図7に示すように、冷却空気供給手段41と、冷却空気供給手段41から供給される空気(冷却空気F3)の流量を制御する冷却空気流量制御手段42とを更に備え、冷却空気供給手段41から、粒子状物質発生装置100と試料収納容器31との間(粒子状物質発生装置100と試料収納容器31との間に配設された冷却空気混合管34内)に、冷却空気F3を導入し、冷却空気F3と粒子状物質を含有するガス(粒子状物質含有ガスF2)とを混合し、粒子状物質含有ガスF2の温度調整が可能であることが好ましい。粒子状物質含有ガスF2の温度制御の結果、得られるガスは、「冷却空気F3と粒子状物質含有ガスF2との混合ガス」である。また、冷却空気供給手段41と冷却空気供給ノズルとが配管で接続されていることが好ましい。図7は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0054】
冷却空気供給手段41としては、特に限定されないが、具体的には、コンプレッサーによる空気の供給、ブロアによる空気の供給等を挙げることができる。冷却空気流量制御手段42としては、特に限定されないが、具体的には、減圧弁や流量制御バルブ等を挙げることができる。
【0055】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200において、試料収納容器31は、円筒状の缶体であることが好ましいが、底面が「楕円形及び四角形等の多角形」の筒状の缶体であってもよい。また、試料収納容器31は、ガスの入口側に入口管31aが配設され、ガスの出口側に出口管31bが配設されていることが好ましい。そして、冷却空気混合管34に入口管31aが接続され、冷却空気混合管34から排出された粒子状物質含有ガスF2と冷却空気F3との混合ガスが、入口管31aから試料収納容器31内に流入し、試料収納容器31を通過して出口管31bから外部に排出されることが好ましい。
【0056】
試料収納容器31の大きさは、試験を行う多孔質セラミック構造体を内部に収納することができれば特に限定されない。試料収納容器31の材質としては、ステンレス鋼を挙げることができる。入口管31aの材質と出口管31bの材質は、試料収納容器31の材質と同じであることが好ましい。入口管31a出口管31bおよび整流管35の内径(直径)は、試料の容積によって異なり、実エンジンの排気管径と略等しい径であることが好ましい。またテーパ部の傾きは30°〜60°であることが好ましい。また、整流管35の、ガスの流れる方向における長さは、整流管35の内径(直径)の5倍以上であることが好ましい。
【0057】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200において、冷却空気混合管34は、燃焼室3のガス出口2と同じ形状の開口部を有する円筒状の配管であることが好ましい。冷却空気混合管34のガスの流れる方向における長さは、特に限定はないが、冷却空気混合管34の内径の3倍以上の長さがあることが好ましい。
【0058】
冷却空気混合管34に配設される冷却空気供給ノズル33の接続位置は特に限定はないが、冷却空気供給ノズル33の内径(直径)は、冷却空気混合管34の内径と同内径であることが好ましい。
【0059】
冷却空気供給ノズル33は、当該冷却空気供給ノズル33から流入する冷却空気の進行方向と、冷却空気混合管34のガスが流れる方向とにより形成される角度(小さい側の角度)が30°〜60°となるように冷却空気混合管34に配設されていることが好ましい。これにより、冷却空気と、粒子状物質含有ガスとの混合を良くすることができる。冷却空気供給ノズル33及び冷却空気供給ノズル33の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル合金等を挙げることができる。
【0060】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200によって評価を行う多孔質セラミック構造体32は、排気ガス等から粒子状物質を捕集するためのフィルターとして使用されるものであれば特に限定されない。例えば、図8、図9に示すような、「一方の端面55から他方の端面56まで貫通し」流体の流路となる複数のセル52を区画形成する「多孔質セラミックからなる隔壁51」と、外周に位置する外周壁54とを備え、一方の端面55における所定のセルの開口部と、他方の端面56における残余のセルの開口部に目封止部53を有するセラミックハニカム構造体50を挙げることができる。図8、図9に示すセラミックハニカム構造体50は、一方の端面55側に目封止部53が形成された上記所定のセルと、他方の端面56側に目封止部53が形成された上記残余のセルとが交互に並び、一方の端面55と他方の端面56に市松模様が形成されている。図8は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体50を模式的に示す斜視図である。図9は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体50のセルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
図7に示すような構造の多孔質セラミック構造体評価装置200を、厚さ9mmのステンレス鋼を材料として作製した。また、燃焼室3のガスの流れる方向における長さを900mmとし、空気入口1(図1参照)における内径(直径)を70mmとし、ガス出口2(図1参照)における内径を106mmとし、燃焼室3の中央の平行部分(テーパになっていない部分)の内径(直径)を130mmとした。燃焼室3は、空気入口側及び空気出口側がテーパー状に細く形成された構造とし、テーパー状に形成された部分の、ガスの流れる方向における長さを100mmとした。冷却空気混合管34のガスの流れる方向における長さを450mmとし、内径を燃焼室3のガス出口2(図1参照)における内径と同じ長さにした。冷却空気混合管34に配設される冷却空気供給ノズル33は、内径(直径)106mmとした。冷却空気混合管34及び冷却空気供給ノズル33は円筒状とした。試料収納容器31は、内径(直径)313mm、長さ360mmの円筒状とした。冷却空気供給手段としては、コンプレッサーを用い、空気を加圧して冷却空気を生成させた。冷却空気流量制御手段としては、減圧弁と流量制御弁を用いた。また、冷却空気供給手段によって発生させた空気(冷却空気)を、燃焼用空気及び冷却空気として用いた。
【0063】
メインバーナ4は、直径(内径)10.5mmの円筒状とし、直径6mmの供給孔5(図2参照)が1つ形成されたものとした。メインバーナ4は、ガスの流れる方向に直交する断面において供給孔が燃焼室3の中心に位置するように配置した。また、供給孔の向きを、「気体燃料の、メインバーナからの供給方向」が0°方向(図4参照)(「供給孔の向き」が0°方向(Q0))になるようにした。メインバーナ4は、パイロットバーナ6の位置から、ガスの流れる方向における下流側に向かって50mmの位置に配置した。パイロットバーナ6は、自動点火が可能で、圧縮空気の使用が可能であり、火炎検知器の取り付けが可能であるものとしたパイロットバーナ6は、ガスの流れる方向に直交するように、燃焼室3の壁面に設置した。パイロットバーナ6は、燃焼室3の空気入口1から、燃焼室3の「ガスの流れる方向における長さ」の400mmの位置に配置した。
【0064】
上記多孔質セラミック構造体評価装置200を用いて、粒子状物質を発生させた。気体燃料としては、LPG(液化石油ガス)を気化させたものを用いた。気体燃料使用量(LPGの使用量)を34.3リットル/分とした。燃焼用空気は1.0Nm/分で供給し、冷却空気を加えた後の混合ガスのガス総量は7.0Nm/分であった。燃焼室内の平均空気過剰率λは、1.2であった。平均空気過剰率λは、体積基準で求めた値である。パイロットバーナは、メインバーナを着火して20秒後に消火した。
【0065】
上記粒子状物質発生方法によって発生した粒子状物質の燃焼温度(粒子状物質燃焼温度)を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0066】
(粒子状物質の燃焼温度)
粒子状物質発生方法によって発生した粒子状物質を濾紙で捕集した。そして、「粒子状物質が捕集された濾紙」を、電気炉で450℃に加熱し、その後、「10℃昇温する毎に10分間保持する」という操作を繰り返しながら昇温し、濾紙上の粒子状物質が完全に焼失したときの温度を粒子状物質の燃焼温度とした。
【0067】
【表1】

【0068】
(実施例2〜7)
「供給孔の向き」を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質燃焼温度」を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(参考例)
特開2007−155712号公報に記載のPM発生装置を用いて、粒子状物質を発生させた。使用燃料である液体燃料としては、軽油を用いた。軽油の使用量(液体燃料使用量)は、3.6リットル/時間とした。燃料間欠噴射手段における、燃料の噴射時間(開弁時間)を15ミリ秒とし、燃料噴射周期(開弁周期)を60ミリ秒とした。これにより、デューティー比(開弁時間/開弁周期)は0.25であった。また、燃焼用空気の供給量を0.45Nm/分とし、総空気量を4.0Nm/分とした。平均空気過剰率λを0.81とし、瞬間空気過剰率を0.20とした。瞬間空気過剰率とは、液体燃料噴射時(開弁時)における、液体燃料の濃度が高くなった時点の空気過剰率である。実施例1と同様にして、「粒子状物質発生量」及び「粒子状物質燃焼温度」を上記方法で測定した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
(実施例8〜13、比較例1,2)
メインバーナの、供給孔の向きを180°方向(Q180))とし、メインバーナの「パイロットバーナからの距離」を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。表3の「パイロットバーナからの距離」の欄における、「プラスの数値(例えば、実施例8における「200mm」)」は、「メインバーナ4が、パイロットバーナ6の位置から、ガスの流れる方向における上流側に向かって、当該数値だけ離れた位置に配置されている」ことを示す。また、表3の「パイロットバーナからの距離」の欄における、「マイナスの数値(例えば、実施例13における「−100」)」は、「メインバーナ4が、パイロットバーナ6の位置から、ガスの流れる方向における下流側に向かって、「当該数値の絶対値」だけ離れた位置に配置されている」ことを示す。上記方法により、「粒子状物質燃焼温度」を測定した。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
(実施例14〜20)
メインバーナの、供給孔の向きを180°方向(Q180))とし、気体燃料使用量を表4に示すように変更することにより、燃焼室内の平均空気過剰率を変化させた以外は、実施例1と同様にして、粒子状物質を発生させた。実施例1と同様にして、「粒子状物質燃焼温度」を上記方法で測定した。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
表1より、燃焼室内に気体燃料を連続的に供給することにより、500℃以上という高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。
【0076】
また、表1より、「供給孔の向き」が90〜270°である場合に、520℃以上という高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。更に、「供給孔の向き」が135〜225°である場合に、540℃以上という更に高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。
【0077】
表3より、燃焼室内におけるメインバーナが、「パイロットバーナから下流側(燃焼用空気の流れ方向における下流側)に向かって100mmの位置から、パイロットバーナから上流側(燃焼用空気の流れ方向における下流側)に向かって200mmの位置までの範囲」、に配置されることにより、520〜560℃という高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。更に、メインバーナが、「パイロットバーナから下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナから上流側に向かって150mmの位置までの範囲」に配置されることにより、530〜560℃という更に高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。更に、メインバーナが、「パイロットバーナから下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナから上流側に向かって100mmの位置までの範囲」に配置されることにより、540〜560℃という更に高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。更に、メインバーナが、「パイロットバーナから下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナから上流側に向かって50mmの位置までの範囲」に配置されることにより、550〜560℃という更に高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。尚、メインバーナが、「パイロットバーナから下流側に向かって150mmの位置」に配置された場合(実施例14)、メインバーナとパイロットバーナとの間の距離が遠いため、メインバーナが失火し易かった。そして、メインバーナが、「パイロットバーナから下流側に向かって100mmの位置」に配置された場合(実施例13)には、失火の恐れはなかった。
【0078】
表4より、燃焼室内の平均空気過剰率が、0.8および3.0の場合に、500℃という高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。また、燃焼室内の平均空気過剰率が、0.9〜2.0の場合に、520℃〜560℃という更に高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。更に、燃焼室内の平均空気過剰率が、1.0〜1.5の場合に、560℃という更に高い燃焼温度の粒子状物質を得ることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の粒子状物質発生装置は、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガスに含有される粒子状物質を捕集するための多孔質セラミック構造体の評価を行うために好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1:空気入口、2:ガス出口、3:燃焼室、4:メインバーナ、5:供給孔(気体燃料を供給する孔)、6:パイロットバーナ、7:フランジ(鍔部)、8:燃焼室の中心、31:試料収納容器、31a:入口管、31b:出口管、32:多孔質セラミック構造体、33:冷却空気導入ノズル、34:冷却空気混合管、35:整流管、41:冷却空気供給手段、42:冷却空気流量制御手段、50:ハニカム構造体、51:隔壁、52:セル、53:目封止部、54:外周壁、55:一方の端面、56:他方の端面、100:粒子状物質発生装置、200:多孔質セラミック構造体評価装置、F1:燃焼用空気、F2:粒子状物質含有ガス、F3:冷却空気、Q:気体燃料の供給方向(供給孔の向き)、Q0:0°方向、Q90:90°方向、Q180:180°方向、Q270:270°方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気を供給するための空気入口及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスを排出するためのガス出口を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する燃焼室と、
前記燃焼室に挿入され気体燃料を前記燃焼室内に連続的に供給するメインバーナと、
前記燃焼室に取り付けられ前記燃焼室に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナとを備え、
メインバーナが配置されている位置が、パイロットバーナが配置されている位置から下流側に向かって100mmの位置から、パイロットバーナが配置されている位置から上流側に向かって200mmの位置までの範囲内である粒子状物質発生装置。
【請求項2】
前記燃焼室内の平均空気過剰率が0.9〜2.0である請求項1に記載の粒子状物質発生装置。
【請求項3】
燃焼用空気の平均流速が、0.1〜2m/秒である請求項1又は2に記載の粒子状物質発生装置。
【請求項4】
気体燃料が、メタン、エタン、プロパン、及びブタンから選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項5】
前記メインバーナから供給される気体燃料の前記メインバーナからの供給方向が、前記燃焼用空気の流れ方向を含む平面内における、前記燃焼用空気の流れ方向を0°方向とし前記燃焼用空気の流れ方向に直交する方向を90°方向としたときの、90°〜270°方向である請求項1〜4のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項6】
前記メインバーナが、前記気体燃料を供給する供給孔が1個形成され、前記供給孔の開口径が4〜10mmである管状構造である請求項1〜5のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の粒子状物質発生装置を用いて、粒子状物質を発生させる粒子状物質発生方法。
【請求項8】
平均空気過剰率が0.9〜2.0になるように、前記空気入口から前記燃焼用空気を供給し、前記メインバーナから前記気体燃料を連続的に供給し、前記パイロットバーナにより前記気体燃料に着火して前記気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させ、前記粒子状物質を含有するガスを前記ガス出口から排出する請求項7に記載の粒子状物質発生方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の粒子状物質発生装置と、前記粒子状物質発生装置のガス出口側に配設された、評価試料である多孔質セラミック構造体を収納する試料収納容器とを備え、
前記粒子状物質発生装置で発生した粒子状物質をガスと共に前記試料収納容器に送り、前記粒子状物質を含有する前記ガスを前記試料収納容器に収納された多孔質セラミック構造体に供給することができる多孔質セラミック構造体評価装置。
【請求項10】
冷却空気供給手段と、前記冷却空気供給手段から供給される空気の流量を制御する冷却空気流量制御手段とを更に備え、
前記冷却空気供給手段から、前記粒子状物質発生装置と前記試料収納容器との間に、冷却空気を導入し、冷却空気と粒子状物質を含有するガスとを混合し、前記粒子状物質を含有するガスの温度制御をすることができる請求項9に記載の多孔質セラミック構造体評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−196909(P2011−196909A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65901(P2010−65901)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】