説明

粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法

【課題】燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生させることができる粒子状物質発生装置を提供する。
【解決手段】燃焼用空気F1を供給するための空気入口1及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスF2を排出するためのガス出口2を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する燃焼室3と、燃焼室3に挿入され、気体燃料を燃焼室3内に連続的に供給する供給孔(気体燃料を供給する孔)5が形成されたメインバーナ4と、燃焼室3に配設され燃焼室3に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナ6と、燃焼室3の空気入口1に配設され、燃焼用空気F1の流れ方向に直交する断面における燃焼用空気F1の流速の速い領域を中央部から偏らせて燃焼用空気F1に偏流を生じさせる偏流形成用配管11とを備える粒子状物質発生装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法に関し、さらに詳しくは、燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生させることができる粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の内燃機関等から排出される排気ガス中の微粒子や有害物質は、人体、環境への影響が大きく、これらの大気への放出を防止する必要性が高まっている。特にディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(Particulate Matter:PM)やNO(窒素酸化物)等は影響が甚大であり、それらにかかる規制は世界的に強化されている。そこで、PMを捕集するためのフィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)や、NOを窒素と水に還元する等の特性を有する触媒、を備えた排気ガス浄化装置の研究、開発が進められ、高性能な排気ガス浄化装置が市場に提供されるようになった。
【0003】
このような排気ガス浄化装置を製造するに際しては、その排気ガス浄化装置を試験し、その性能や耐久性を正確に高い精度で評価する必要がある。排気ガス浄化装置の性能等を評価する手段としては、実際の自動車エンジン等からの排気ガスを排気ガス浄化装置に供給して、その処理ガスを分析する方法が挙げられる。また、カーボン粉末や実際の排気ガスから採取した粒子状物質を用い、これをガス中に混合して、実際の自動車エンジンからの排気ガスを模した排気ガスを製造し、それを排気ガス浄化装置に供給して、その処理ガスを分析する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。更には、軽油又は炭化水素を燃焼させて粒子状物質を含む排気ガスを発生させる方法や、黒鉛電極をスパークさせて粒子状物質を含む排気ガスを発生させる方法が知られており、これらにより得られた排気ガスを用いて、排気ガス浄化装置の性能等を評価することが可能である(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、燃料間欠噴射手段を備え、燃焼用空気の中に燃料を間欠的に噴射することにより、燃焼ガス中に多量の粒子状物質を発生させ、その多量の粒子状物質を含む燃焼ガスを安全に、安定して排ガス浄化装置に供給することができるPM(粒子状物質)発生装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−214742号公報
【特許文献2】特開2007−155712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の自動車エンジン等からの排気ガスを利用する方法では、設備が大型化し高額になるという問題があった。また、自動車エンジンからの排気ガスを模した排気ガスを製造する方法では、一旦採取されたPMを用いることから、実際の排気ガスを十分に模擬したものとはいえないという問題があった。更に、軽油又は炭化水素を燃焼させてPMを含む排気ガスを発生させる方法ではPMの発生量の制御が困難であり且つ失火し易いという問題があった。黒鉛電極をスパークさせて粒子状物質を含む排気ガスを発生させる方法では、粒子状物質発生量が少なく、多量の粒子状物質を短時間に発生出来ないという問題があった。
【0007】
また、燃料間欠噴射手段を備え、燃焼用空気の中に燃料を間欠的に噴射するPM(粒子状物質)発生装置は、粒子状物質を多量に発生させることができる優れたものであるが、発生する粒子状物質の燃焼温度の観点から、更に改良の余地のあるものであった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生させることができる粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の粒子状物質発生装置及び粒子状物質発生方法を提供する。
【0010】
[1] 燃焼用空気を供給するための空気入口及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスを排出するためのガス出口を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する燃焼室と、前記燃焼室に挿入され、気体燃料を前記燃焼室内に連続的に供給する供給孔が形成されたメインバーナと、前記燃焼室に配設され前記燃焼室に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナと、前記燃焼室の前記空気入口に配設され、前記燃焼用空気の流れ方向に直交する断面における前記燃焼用空気の流速の速い領域を中央部から偏らせて前記燃焼用空気に偏流を生じさせる偏流形成用配管とを備える粒子状物質発生装置。
【0011】
[2] 前記偏流形成用配管が、一方の端部側に直線状に延びる入口側直管を有するとともに他方の端部側に直線状に延びる出口側直管を有し、前記入口側直管及び前記出口側直管に繋がる角部が曲線状に形成されたL字状配管である[1]に記載の粒子状物質発生装置。
【0012】
[3] 前記偏流形成用配管の前記出口側直管の長さが140mm以下である[1]又は[2]に記載の粒子状物質発生装置。
【0013】
[4] 前記燃焼室入口から、前記メインバーナまでの距離が70〜400mmである[1]〜[3]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0014】
[5] 前記メインバーナから供給される気体燃料の前記メインバーナからの供給方向が、前記燃焼用空気の流れ方向を含む平面内における、前記燃焼用空気の流れ方向を0°方向とし前記燃焼用空気の流れ方向に直交する一の方向を90°方向としたときの、90〜270°方向である[1]〜[4]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0015】
[6] 前記メインバーナが管状構造であり、前記メインバーナに前記気体燃料を供給する供給孔が1個形成され、前記供給孔の開口径が4〜10mmである[1]〜[5]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0016】
[7] 前記メインバーナの前記供給孔が、前記燃焼用空気の流れ方向に直交する平面で前記メインバーナが挿入されている位置を切断した前記燃焼室の断面において、前記燃焼室の中心から前記燃焼室の内径の35%までの範囲に位置する[1]〜[6]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0017】
[8] 前記燃焼室が、中心軸方向における中央部に直径が均一な直管部を有するとともに中心軸方向における両端部にテーパー状に細く形成されたテーパー部を有する円筒状であり、前記燃焼室の直管部の内径が、前記直管部を流れる前記燃焼用空気の流量が使用時における最大流量であるときに前記燃焼用空気の平均流速が4.0m/秒以下となるような大きさである[1]〜[7]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【0018】
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置を用いて、粒子状物質を発生させる粒子状物質発生方法。
【0019】
[10] 平均空気過剰率が0.8〜3.0になるように、前記空気入口から前記燃焼用空気を供給し、前記メインバーナから前記気体燃料を連続的に供給し、前記パイロットバーナにより前記気体燃料に着火して前記気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させ、前記粒子状物質を含有するガスを前記ガス出口から排出する[9]に記載の粒子状物質発生方法。
【0020】
[11] 前記メインバーナに着火後、パイロットバーナを消火する[9]又は[10]に記載の粒子状物質発生方法。
【0021】
[12] [1]〜[8]のいずれかに記載の粒子状物質発生装置と、前記粒子状物質発生装置のガス出口側に配設された、評価試料である多孔質セラミック構造体を収納する試料収納容器とを備え、前記粒子状物質発生装置で発生した粒子状物質をガスと共に前記試料収納容器に送り、前記粒子状物質を含有する前記ガスを前記試料収納容器に収納された多孔質セラミック構造体に供給することができる多孔質セラミック構造体評価装置。
【0022】
[13] 冷却空気供給手段と、前記冷却空気供給手段から供給される空気の流量を制御する冷却空気流量制御手段とを更に備え、前記冷却空気供給手段から、前記粒子状物質発生装置と前記試料収納容器との間に、冷却空気を導入し、冷却空気と粒子状物質を含有するガスとを混合し、排気ガスの温度制御をすることができる[12]に記載の多孔質セラミック構造体評価装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の粒子状物質発生装置は、気体燃料を燃焼室内に連続的に供給することにより、高い空気過剰率で気体燃料を燃焼させることができるため、燃焼温度の高い粒子状物質を発生させることができる。また、偏流形成用配管により燃焼用空気に偏流を生じさせることにより、燃焼用空気の流速の遅い領域を作り、燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生させることができる。
【0024】
また、本発明の粒子状物質発生方法は、上記本発明の粒子状物質発生装置を用いて、粒子状物質を発生させるものであるため、燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を構成する燃焼室の断面を示す模式図である。
【図4】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を構成するメインバーナを模式的に示す平面図である。
【図6】本発明の粒子状物質発生装置の他の実施形態を構成するメインバーナを模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面を示す模式図である。
【図8】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図9】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【図10】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図11】本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体のセルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0027】
(1)粒子状物質発生装置:
本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態は、図1〜図3に示すように、「燃焼用空気F1を供給するための空気入口1及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスF2を排出するためのガス出口2を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する」燃焼室3と、「燃焼室3に挿入され、気体燃料を燃焼室3内に連続的に供給する供給孔(気体燃料を供給する孔)5が形成された」メインバーナ4と、燃焼室3に配設され燃焼室3に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナ6と、「燃焼室3の空気入口1に配設され、燃焼用空気F1の流れ方向に直交する断面における燃焼用空気F1の流速の速い領域を中央部から偏らせて燃焼用空気F1に偏流を生じさせる」偏流形成用配管11とを備えるものである。図1は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。図2は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を模式的に示す平面図である。図3は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を構成する燃焼室の断面(燃焼用空気F1の流れ方向に平行であると共に、円筒状のメインバーナ4の中心軸に直交する断面)を示す模式図である。各図面において、燃焼用空気F1を示す矢印の長さは、燃焼用空気F1の流速を示し、矢印の長さが長いほうが流速が速いことを示す。
【0028】
このように、本実施形態の粒子状物質発生装置100は、気体燃料を燃焼室3内に連続的に供給することにより、高い空気過剰率で気体燃料を燃焼させることができるため、燃焼温度の高い炭素を主成分とする粒子状物質を発生させることができる。また、偏流形成用配管11により燃焼用空気に偏流を生じさせることにより、燃焼用空気の流速の速い領域を中央部から偏らせて燃焼用空気の流速の遅い領域を作り、燃焼温度の高い炭素を主成分とする粒子状物質を多量に発生させることができる。尚、通常、真っ直ぐに延びる配管内にガスを流すと、ガスの流れる方向(配管の中心軸方向)に直交する断面において、中央部分のガスの流速が最も速くなる。粒子状物質の燃焼温度としては、具体的には、500〜520℃とすることができる。ここで、「炭素を主成分とする」とは、粒子状物質全体において炭素が90質量%以上含有されることを意味する。粒子状物質中には、炭素以外にはSOF(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)分等が含有されることがある。
【0029】
本実施形態の粒子状物質発生装置100は、燃焼用空気F1を供給するための空気入口1及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスF2を排出するためのガス出口2を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する燃焼室3を備えるものである。燃焼室3の形状は、図1、図2に示すように、「中心軸方向における中央部に直径(中心軸方向に直交する断面における直径)が均一な直管部3aを有するとともに、中心軸方向における両端部にテーパー状に細く形成されたテーパー部3b,3bを有する円筒状」であることが好ましいが、両端部にテーパーが形成されていない通常の円筒状であってもよいし、底面が「四角形等の多角形(両端部がテーパー状であるものも含む)」の筒状であってもよい。燃焼室3の形状が、図1、図2に示すように、「両端部にテーパー部3b,3bを有する形状」であると、燃焼用空気および燃焼排気ガスの流れがスムースとなり、粒子状物質の発生量を多くすることができ、更に、圧損を低く抑えることができる。また、燃焼室3の空気入口1とガス出口2には、図1、図2に示すように、他の部材(偏流形成用配管等)との接合のために、フランジ(鍔部)7が配設されていることが好ましい。
【0030】
燃焼室3の大きさは、特に限定されないが、必要範囲の排気ガス流量および粒子状物質を生成させることができる大きさであることが好ましい。例えば、燃焼室の直管部の内径が、直管部を流れる燃焼用空気の流量が使用時における最大流量であるときに燃焼用空気の平均流速が4.0m/秒以下となるような大きさであることが好ましい。また、例えば、評価に必要な排気ガス流量を得るために、0.25Nm/分〜4Nm/分の燃焼空気流量を必要とする場合、燃焼室3の内径(燃焼用空気が流れる方向に直交する断面における、燃焼室3の内壁により形成される形状の直径)は100〜300mmであることが好ましく、130〜210mmであることが更に好ましい。また、同様に必要とする燃焼空気流量範囲が0.25Nm/分〜4Nm/分の場合の燃焼室3の内容積は、6000〜35000cmであることが好ましく、9000〜30000cmであることが更に好ましい。燃焼室3の内径が100mmより小さいと、粒子状物質の生成量が少なくなることがある。また、燃焼室3の内径が300mmより大きいと、高い燃焼温度を維持するために燃焼用空気流量を多くする必要があり、最小燃焼用空気流量が大きくなってしまうことがある。燃焼室の内容積が、6000cmより小さいと、燃焼室3の壁が高温となるため、燃焼室3が酸化劣化することがあり、更に周辺への熱遮蔽が必要となることがある。また、燃焼室3の内容積が、35000cmより大きいと、粒子状物質発生装置が大きくなるため、粒子状物質発生装置の製造コストや運転コストが大きくなり、また、粒子状物質発生装置を設置するためのスペースを大きくする必要がある。
【0031】
また、燃焼室3の形状が、図1、図2に示すように、「両端部がテーパー状に細く形成された円筒状」である場合、燃焼室3の空気入口1及びガス出口2の「ガスの流れる方向に直交する断面」の面積(空間部分の面積)は、燃焼室3の直管部3aの「ガスの流れる方向に直交する断面」の面積(空間部分の面積)の25〜65%であることが好ましく、35〜60%であることが更に好ましい。
【0032】
また、燃焼室3の壁の厚さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜7mmであることが更に好ましい。燃焼室3の壁の厚さが薄すぎると、燃焼室3の壁面の温度が高くなるため、酸化劣化が激しく、粒子状物質発生装置の強度が低下することがある。燃焼室3の壁の厚さが厚すぎると、燃焼条件が安定するまでの時間が長くなることがある。更に、粒子状物質発生装置が重くなり過ぎることがあり、また、粒子状物質発生装置の製造コストが高くなることがある。また、燃焼室3の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル合金等を挙げることができる。
【0033】
本実施形態の粒子状物質発生装置100は、燃焼用空気F1の流速を、燃焼用空気F1の流れ方向に直交する断面において偏らせて、燃焼用空気F1に偏流を生じさせる偏流形成用配管11が、燃焼室3の空気入口1に配設されている。このように、燃焼用空気F1に偏流を生じさせる偏流形成用配管11が、燃焼室3の空気入口1に配設されていることにより、燃焼室3内におけるメインバーナ4に形成された供給孔5の位置における燃焼用空気F1の流速が、燃焼室3内における燃焼用空気F1全体の平均流速より遅くなるようにすることができる。ここで、「偏流」とは、ガスの流れる方向に直交する断面において、ガスの流れの速い部分と遅い部分とが形成された状態を意味する。また、「平均流速」とは、「平均流速(m/秒)=燃焼用空気流量(m/秒)/燃焼室断面積(m)」の計算式で算出した値である。「燃焼用空気流量」とは、燃焼室3内を流れる燃焼用空気F1の流量である。「燃焼室断面積」とは、燃焼室3における、「燃焼用空気F1の流通方向に直交する断面(空間部分における断面)の面積が一定の領域(テーパー状になっていない領域)」の、当該断面の面積(例えば、直管部3aの、中心軸方向に直交する断面の面積)のことである。また、「燃焼用空気F1の平均流速」は、気体燃料を燃焼室内に供給していない状態での値である。
【0034】
偏流形成用配管11は、図1、図2に示すように、一方の端部側に直線状に延びる入口側直管18を有するとともに他方の端部側に直線状に延びる出口側直管19を有し、入口側直管18及び出口側直管19に繋がる角部14が曲線状に形成されたL字状配管であることが好ましい。図1、図2に示す偏流形成用配管11は、一方の端部に偏流形成用配管入口12を有し、他方の端部に偏流形成用配管出口13を有する管状の構造物である。そして、偏流形成用配管出口13が、燃焼室3の空気入口1に接続されている。これにより、偏流形成用配管入口12から偏流形成用配管11内に流入した燃焼用空気F1が、偏流形成用配管11内を通過して偏流形成用配管出口13から排出され、偏流形成用配管出口13から排出された燃焼用空気F1が空気入口1から燃焼室3内に流入する。このように、偏流形成用配管11は、角部14が曲線状のL字状配管であることにより、偏流形成用配管11内(角部14内)における「L字形状」の外側寄り(外周14a寄り)を流れる燃焼用空気F1が、偏流形成用配管11内における「L字形状」の内側寄り(内周14b寄り)を流れる燃焼用空気F1より、流速が速くなる。このように流速が遅くなった燃焼用空気F1を、燃焼室3内におけるメインバーナ4に形成された供給孔5の位置に流れるようにすることにより、又は、メインバーナ4から、流速が遅くなった燃焼用空気F1に向けて気体燃料を供給することにより、燃焼室3内におけるメインバーナ4に形成された供給孔5の位置における燃焼用空気F1の流速が、燃焼室3内における燃焼用空気F1全体の平均流速より遅くなるようにすることができる。また、メインバーナ4から、流速が遅くなった燃焼用空気F1に向けて気体燃料を供給することにより、更に、効果的に燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生させることができる。
【0035】
また、偏流形成用配管11の偏流形成用配管入口12と偏流形成用配管出口13には、図1、図2に示すように、他の部材(燃焼室等)との接合のために、フランジ(鍔部)15が配設されていることが好ましい。
【0036】
偏流形成用配管11は、燃焼室3の空気入口1の「ガスが流通する方向に直交する断面」の形状と同じ形状の断面(ガスが流通する方向に直交する断面)を有する配管が、角部が曲線状になるようにして、L字状に曲げられた構造であることが好ましい。
【0037】
偏流形成用配管11の大きさは、特に限定されないが、燃焼用空気を偏流させ、燃焼室3内におけるメインバーナ4に形成された供給孔5の位置における燃焼用空気F1の流速が、燃焼室3内における燃焼用空気F1全体の平均流速より遅くなるようにできることが好ましい。偏流形成用配管入口12から角部14に向かって直線状に延びる入口側直管18と、円弧状の角部14との境界を「曲がり初めの位置16」とし、偏流形成用配管出口13から角部14に向かって直線状に延びる出口側直管19と、円弧状の角部14との境界を「曲がり終りの位置17」としたときに、偏流形成用配管出口13から「曲がり終わりの位置17」までの距離(出口側直管19の長さ)D2は、140mm以下であることが好ましい。また、偏流形成用配管の曲がり角度は90度前後であることが好ましい。
【0038】
また、偏流形成用配管11の壁の厚さは、2〜6mmであることが好ましく、3〜5mmであることが更に好ましい。偏流形成用配管11の壁の厚さが薄すぎると、粒子状物質発生装置の強度が低下することがある。偏流形成用配管11の壁の厚さが厚すぎると、粒子状物質発生装置が重くなり過ぎることがあり、また、粒子状物質発生装置の製造コストが高くなることがある。また、偏流形成用配管の材質としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、炭素鋼等を挙げることができる。
【0039】
燃焼用空気F1は、コンプレッサーによって空気を加圧して生成させることが好ましい。そして、コンプレッサーによって生成され、減圧弁、流量調整弁等によって調整された燃焼用空気(圧縮空気)F1が、偏流形成用配管11の偏流形成用配管入口12に供給されることが好ましい。燃焼用空気F1を発生させる装置は、冷却空気供給手段41(図9を参照)としてもよい。つまり、冷却空気供給手段41(図9を参照)で生成させた圧縮空気を、燃焼用空気F1及び冷却空気F3(図9を参照)の両方に使用してもよい。
【0040】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、燃焼室3内におけるメインバーナ4の位置における燃焼用空気F1の流速は、4.0m/秒以下であることが好ましい。4.0m/秒より速いと、粒子状物質の発生量が少なくなることがある。
【0041】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、燃焼室3の直管部3aの燃焼用空気F1の平均流速が0.1〜4.0m/秒であることが好ましい。0.1m/秒より遅いと、粒子状物質の燃焼温度が低くなることがある。4.0m/秒より速いと、粒子状物質の発生量が少なくなることがある。
【0042】
メインバーナ4から供給される気体燃料としては、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス等を挙げることができる。
【0043】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、燃焼室3内の平均空気過剰率が0.8〜3.0であることが好ましく、1.0〜1.5であることが更に好ましい。平均空気過剰率が0.8より小さいと、粒子状物質の燃焼温度が低くなることがある。平均空気過剰率が3.0より大きいと、粒子状物質の燃焼温度が低くなることがある。燃焼室3内の「平均空気過剰率」は、燃焼室3内を流れる燃焼用空気全体の流量(体積基準)と、供給している燃料全体の流量(体積基準)と、を用いて算出した「空気過剰率」のことである。「空気過剰率」は、空気の流量(体積基準)を、「供給している燃料」を過不足なく燃焼させるために必要な空気の理論流量(体積基準)で、除した値である。
【0044】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、図1〜3に示すように、気体燃料の供給孔5が形成された筒状のメインバーナ4が、中心軸が燃焼用空気F1に直交するように、燃焼室3の側面から燃焼室3の直管部3aの内部に挿入されていることが好ましい。そして、図4に示すように、「メインバーナ4から供給される気体燃料」のメインバーナ4からの供給方向(気体燃料の供給方向)Qが、燃焼用空気F1の流れ方向を含む(燃焼用空気F1の流れ方向に平行な)平面内における、燃焼用空気F1の流れ方向を0°方向(Q0)とし燃焼用空気F1の流れ方向に直交する一の方向を90°方向(Q90)としたときの、90〜270°方向(90°方向(Q90)〜270°方向(Q270))であることが好ましく、120〜180°方向であることが更に好ましく、120〜135°方向であることが特に好ましい。この場合、燃焼用空気F1の流れる方向に対して反対の方向が、180°方向(Q180)となる。このように、気体燃料の供給方向Qを、燃焼用空気F1の流れ方向を含む平面内における、90〜270°方向とすることにより、粒子状物質の発生量を多くすることができる。「気体燃料の供給方向」は、メインバーナ4の「供給孔5の向き」であるということもできる。図4は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面を示す模式図である。図4は、燃焼用空気F1の流れ方向に平行であるとともに、メインバーナ4に直交する平面で切断した断面である。また、図4は、偏流形成用配管11の、入口側直管18の中心軸と出口側直管19の中心軸とを含む平面で切断した断面であるということもできる。
【0045】
更に、「メインバーナ4から供給される気体燃料」のメインバーナ4からの供給方向(気体燃料の供給方向)Qが、燃焼用空気F1の流れ方向を含む(燃焼用空気F1の流れ方向に平行な)平面内における、燃焼用空気の流れ方向を0°方向とし燃焼用空気の流れ方向に直交する一の方向を90°方向としたときの、90〜270°方向であり、且つ、偏流形成用配管と燃焼室の空気入口との接続部分の「燃焼用空気の流れ方向に直交する断面」における、重心(中心:断面が円形の場合は、円の中心であり、断面が多角形の場合は当該多角形の中心)21から燃焼用空気の流れが最も遅い位置22に向かう方向23が、「燃焼用空気の流れ方向に直交する一の方向」である上記90°方向(Q90)に平行になるようにして、偏流形成用配管11が燃焼室3の空気入口1に配設されたものであることが好ましい。これにより、粒子状物質の発生量を、より多くすることができる。
【0046】
そして、気体燃料の供給方向Qが、120〜180°方向であることが更に好ましく、120〜135°方向であることが特に好ましい。このよに、重心(中心)21から燃焼用空気の流れが最も遅い位置22に向かう方向23が、「燃焼用空気の流れ方向に直交する一の方向」である90°方向(Q90)に平行になるようにして、偏流形成用配管11を燃焼室3の空気入口1に配設した状態で、気体燃料の供給方向Qを、120〜180°方向とし、更に好ましくは120〜135°方向とすることにより、「燃焼用空気の流れが遅い領域」に向かって気体燃料を供給することになるため、粒子状物質の発生量をより多くすることができる。本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、「燃焼用空気の流れが最も遅い位置22」は、偏流形成用配管11の、入口部18の中心軸と出口部19の中心軸とを含む平面で切断した断面(図4を参照)において、偏流形成用配管11の角部14の内部における「内周14b側の、曲がり終わりの位置17」から、偏流形成用配管出口13に向かって燃焼用空気の流れ方向に平行に直線(内周側の直線)を引いたときに、当該「内周側の直線」と「偏流形成用配管と燃焼室の空気入口との接続部分における、燃焼用空気の流れ方向に直交する断面」とが交わる部分である。
【0047】
本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、燃焼室の空気入口1から、メインバーナまでの距離が70〜400mmであることが好ましい。70mmより短い場合、又は400mmより長い場合には、粒子状物質の生成量が少なくなることがある。
【0048】
図5に示すように、本実施形態の粒子状物質発生装置100においては、メインバーナ4は、「気体燃料を供給する供給孔5が1個形成され、供給孔5の開口径(直径)が4〜10mmである管状構造」であることが好ましい。メインバーナ4に供給孔5が1個形成される場合に、供給孔5の開口径が4mmより小さい場合、又は10mmより大きい場合には、粒子状物質の生成量が少なくなることがある。メインバーナ4の形状は、図1、図5に示すように、円筒状であることが好ましいが、底面が「四角形等の多角形」の筒状であってもよい。図5は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を構成するメインバーナを模式的に示す平面図である。
【0049】
また、図7に示すように、メインバーナ4の供給孔5の位置は、燃焼用空気の流れ方向に直交する平面で「メインバーナ4が挿入されている位置」を切断した燃焼室の断面において、燃焼室の中心8から燃焼室3の内径(直径)dの35%までの範囲(範囲S)に位置することが好ましい。メインバーナ4の供給孔5の位置が、燃焼室の中心8から燃焼室3の内径dの35%だけ離れた位置より、燃焼室の中心8から遠いと、粒子状物質の生成量が減少することがある。図7は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の断面を示す模式図である。図7は、粒子状物質発生装置の燃焼室3及びメインバーナ4を、ガスの流れる方向に直交する平面で切断した断面を示している。
【0050】
メインバーナ4の燃焼室3に挿入されている部分の長さ及び内径(メインバーナ4の内部の空間部分の、中心軸方向に直交する断面における直径)は、特に限定されないが、燃焼室の径、メインバーナ4の供給孔5の位置及び孔径で略決まる。一方、メインバーナ4の供給孔5の孔径は、燃焼エア流量範囲が0.25〜4Nm/分では4mm〜10mmであることが好ましい。また、メインバーナ4の壁の厚さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜7mmであることが更に好ましい。メインバーナ4の壁の厚さが薄すぎると、燃焼室3の壁面の温度が高くなるため、酸化劣化が激しくなることがある。メインバーナ4の壁の厚さが厚すぎると、燃焼条件が安定するまでの時間が長くなることがある。更に、粒子状物質発生装置が重くなり過ぎることがあり、また、粒子状物質発生装置の製造コストが高くなることがある。
【0051】
また、メインバーナ4の材質としては、ステンレス鋼およびインコネル等を挙げることができる。
【0052】
本実施形態の粒子状物質発生装置100は、図1〜図3に示すように、燃焼室3に配設され燃焼室に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナ6を備えている。パイロットバーナ6は、筒状であることが好ましく、燃焼室3の側面から燃焼室3の直管部3aの壁面に配設されていることが好ましい。パイロットバーナ6の構造は、自動点火が可能であること、圧縮空気の使用が可能であること、火炎検知器の取り付けが可能であることが好ましい。パイロットバーナ6は、メインバーナ4の下流側(ガスの流れる方向における下流側)に配置されていることが好ましいが、メインバーナ4の上流側に配置されていてもよい。
【0053】
パイロットバーナ6の材質としては、ステンレス鋼、炭素鋼等を挙げることができる。
【0054】
(2)粒子状物質発生装置の製造方法:
本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態の製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下の方法を挙げることができる。
【0055】
燃焼室、メインバーナ、パイロットバーナ及び偏流形成用配管を所定の材料を用いてそれぞれ作製する。燃焼室、メインバーナ、パイロットバーナ及び偏流形成用配管の材料は、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態において好ましいとされた材料であることが好ましい。燃焼室、メインバーナ、パイロットバーナ及び偏流形成用配管は、それぞれ、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態において好ましいとされた形状等に形成することが好ましい。
【0056】
作製した、燃焼室、メインバーナ、パイロットバーナ及び偏流形成用配管を、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態において好ましいとされた位置関係になるように組み立てて本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を得ることが好ましい。
【0057】
(3)粒子状物質発生方法:
本発明の粒子状物質発生方法の一の実施形態は、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を用いて、粒子状物質を発生させる方法である。
【0058】
このように、本発明の粒子状物質発生方法の一の実施形態は、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態を用いて、粒子状物質を発生させるため、燃焼温度の高い粒子状物質を多量に発生させることができる。具体的には、粒子状物質の燃焼温度を、500〜520℃とすることができる。そして、燃焼用空気1Nm当たり、0.75g以上の粒子状物質を生成させることができる。これにより、DPFの評価を効率よく実施することができる。
【0059】
本実施形態の粒子状物質発生方法は、図1〜図3に示す粒子状物質発生装置100を用いて、空気入口1から燃焼用空気F1を供給し、メインバーナ4から気体燃料を連続的に供給し、パイロットバーナ6により気体燃料に着火して気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させ、粒子状物質を含有するガス(粒子状物質含有ガス)F2をガス出口2から排出するものである。そして、本実施形態の、粒子状物質発生方法に使用する粒子状物質発生装置100は、偏流形成用配管11が配設されており、偏流形成用配管11を通過した燃焼用空気F1が燃焼室3の空気入口1に供給される。
【0060】
本実施形態の粒子状物質発生方法においては、平均空気過剰率(燃焼室内の平均空気過剰率)が0.8〜3.0になるように、空気入口1から燃焼用空気F1を供給することが好ましい。平均空気過剰率は、1.0〜1.5であることが更に好ましい。平均空気過剰率が0.8より小さいと、発生する「炭素を主成分とする粒子状物質」の燃焼温度が低くなることがある。平均空気過剰率が3.0より大きいと、粒子状物質の燃焼温度が低くなることがある。また、平均空気過剰率と粒子状物質の生成量との関係は以下の通りである。例えば、平均空気過剰率が1.2の条件の時に、0.77〜1.16g/Nmの粒子状物質を生成させることができる。更には、平均空気過剰率を下げ、パイロットバーナを消火する等により1.0〜1.6g/Nmの粒子状物質を生成させることができる。平均空気過剰率を3.0にすれば、粒子状物質の発生量を最小で0.03g/Nmにすることができる。
【0061】
本実施形態の粒子状物質発生方法においては、メインバーナ4に着火後、パイロットバーナ6を消火することが好ましい。パイロットバーナ6を消火することで、粒子状物質の発生量を多くすることができる。この原因は、メインバーナにより発生した粒子状物質が、パイロットバーナにより燃焼してしまうためと考えられる。尚、このパイロットバーナの消火時間は、メインバーナ4に着火してから10〜20秒後とすることが好ましい。10秒後より前にパイロットバーナ6を消火すると、メインバーナ4がその後消えることがあるためである。従って、メインバーナが失火することなく安定して燃焼するまでの時間であれば良い。
【0062】
(4)多孔質セラミック構造体評価装置:
本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態(多孔質セラミック構造体評価装置200)は、図8に示すように、上記本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態(粒子状物質発生装置100)と、粒子状物質発生装置100のガス出口2側に配設された、評価試料である多孔質セラミック構造体32を収納する試料収納容器31とを備え、粒子状物質発生装置100で発生した粒子状物質をガスと共に試料収納容器31に送り(粒子状物質含有ガスF2を試料収納容器31に送り)、粒子状物質を含有するガス(粒子状物質含有ガスF2)を試料収納容器31に収納された多孔質セラミック構造体32に供給することができるものである。図8は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0063】
このように、本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200は、本発明の粒子状物質発生装置の一の実施形態(粒子状物質発生装置100)で生成させた粒子状物質を試料収納容器31に送り、試料収納容器31内に収納された多孔質セラミック構造体32に供給することができるため、燃焼温度の高い粒子状物質を所望量だけ多孔質セラミック構造体32に送り、多孔質セラミック構造体32について、粒子状物質を捕集して行う試験を効率的に行うことができる。そして、多孔質セラミック構造体32を自動車等に搭載して粒子状物質を捕集した場合の結果に近い試験結果を得ることができる。
【0064】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200は、図8に示すように、冷却空気導入ノズル33を側面に備えた冷却空気混合管34を、粒子状物質発生装置100と試料収納容器31との間に、備えることが好ましい。そして、冷却空気導入ノズル33から冷却空気混合管34内に供給された冷却空気F3と、粒子状物質含有ガスF2とを、冷却空気混合管34内で混合し、排気ガス(粒子状物質含有ガスF2)の温度制御をすることができることが好ましい。これにより、より実際の使用に近い温度条件で多孔質セラミック構造体32の評価をすることができる。冷却空気混合管34と粒子状物質発生装置100との接合、及び冷却空気混合管34と試料収納容器31との接合は、フランジを介して行われていることが好ましい。
【0065】
また、本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200は、図9に示すように、冷却空気供給手段41と、冷却空気供給手段41から供給される空気(冷却空気F3)の流量を制御する冷却空気流量制御手段42とを更に備え、冷却空気供給手段41から、粒子状物質発生装置100と試料収納容器31との間に、冷却空気F3を導入し、冷却空気F3と粒子状物質を含有するガス(粒子状物質含有ガスF2)とを混合し、排気ガス(粒子状物質含有ガスF2)の温度制御をすることができることが好ましい。冷却空気供給手段41と冷却空気供給ノズルとが配管で接続されていることが好ましい。図9は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0066】
冷却空気供給手段41としては、特に限定されないが、具体的には、コンプレッサー、ブロア等を挙げることができる。冷却空気流量制御手段42としては、特に限定されないが、具体的には、減圧弁、流量調整弁等を挙げることができる。
【0067】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200において、試料収納容器31は、円筒状の缶体であることが好ましいが、底面が「四角形等の多角形」の筒状の缶体であってもよい。また、試料収納容器31は、ガスの入口側に入口管31aが配設され、ガスの出口側に出口管31bが配設されていることが好ましい。そして、冷却空気混合管34に整流管35および入口管31aが接続され、冷却空気混合管34から排出された粒子状物質含有ガスF2と冷却空気F3との混合ガスが、入口管31aから試料収納容器31内に流入し、試料収納容器31を通過して出口管31bから外部に排出されることが好ましい。尚、冷却空気混合管34を使用しない場合には、入口管31aが、燃焼室3のガス出口2に接続されることが好ましい。
【0068】
試料収納容器31の大きさは、試験を行う多孔質セラミック構造体を内部に収納することができれば特に限定されない。試料収納容器31の材質としては、ステンレス鋼を挙げることができる。入口管31aの材質と出口管31bの材質は、試料収納容器31の材質と同じであることが好ましい。入口管31aの内径(直径)は、試料の径により略決まり、通常用いられる試料の径を考慮すると、50〜106mmが好ましい。また、入口管31aの最大内径と、冷却空気混合管34の内径と略同じ長さであることも好ましい態様である。また、入口管31aの、ガスの流れる方向における長さも、試料の径により略決まり、通常用いられる試料の径を考慮すると、50〜200mmが好ましい。出口管31bの内径(直径)は、入口管31aの内径と略等しいことが好ましい。また、出口管31bの、ガスの流れる方向における長さは、50〜300mmが好ましい。
【0069】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200において、冷却空気混合管34は、燃焼室3のガス出口2と同じ形状の開口部を有する配管であることが好ましい。冷却空気混合管34のガスの流れる方向における長さは、特に限定はないが、冷却空気供給ノズルの内径の2倍以上の長さがあることが望ましい。冷却空気と粒子状物質含有ガスとの混合が不十分にならないように、冷却空気混合管34出口と入口管31aの入口の間に冷却空気と粒子状物質含有ガス混合用の配管(整流管35)を設置することが好ましい。整流管35の長さとしては、冷却空気供給ノズル33の内径の3倍以上の長さであることが好ましい。
【0070】
冷却空気混合管34に配設される冷却空気供給ノズル33の接続位置は特に限定はないが、冷却空気混合管34の「燃焼室3と接続されている側の端部」から「冷却空気混合管34の長さの30%の長さだけ離れた位置」から、冷却空気混合管34の燃焼室3と接続されている側の端部から「冷却空気混合管34の長さの80%の長さだけ離れた位置」までの範囲に接続されていることが好ましい。冷却空気供給ノズル33の内径は、50〜110mmが好ましい。
【0071】
冷却空気供給ノズル33は、当該冷却空気供給ノズル33から流入する冷却空気の進行方向と、冷却空気混合管34のガスが流れる方向とにより形成される角度(小さい側の角度)が30〜60°となるように冷却空気混合管34に配設されていることが好ましい。これにより、冷却空気と、粒子状物質含有ガスとの混合を十分に行うことができる。冷却空気供給ノズル33及び冷却空気供給ノズル33の材質としては、ステンレス鋼、ニッケル合金等を挙げることができる。
【0072】
本実施形態の多孔質セラミック構造体評価装置200によって評価を行う多孔質セラミック構造体32は、排気ガス等から粒子状物質を捕集するためのフィルターとして使用されるものであれば特に限定されない。例えば、図10、図11に示すような、「一方の端面55から他方の端面56まで貫通し」流体の流路となる複数のセル52を区画形成する「多孔質セラミックからなる隔壁51」と、外周に位置する外周壁54とを備え、一方の端面55における所定のセルの開口部と、他方の端面56における残余のセルの開口部に目封止部53を有するセラミックハニカム構造体50を挙げることができる。図10、図11に示すセラミックハニカム構造体50は、一方の端面55側に目封止部53が形成された上記所定のセルと、他方の端面56側に目封止部53が形成された上記残余のセルとが交互に並び、一方の端面55と他方の端面56に市松模様が形成されている。図10は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体50を模式的に示す斜視図である。図11は、本発明の多孔質セラミック構造体評価装置の一の実施形態で評価を行うセラミックハニカム構造体50のセルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
図8に示すような構造の多孔質セラミック構造体評価装置200を、厚さ9mmのステンレス鋼を材料として作製した。偏流形成用配管11における「入口部の長さD1」(図1参照)を30mmとし、「出口部の長さD2」(図1参照)を14mmとし、角部14(図1参照)の外側(外周14a側)の円弧の半径を130mmとした。また、偏流形成用配管11の直線部分(入口部及び出口部)の内径(直径)を70mmとした。偏流形成用配管11は、円筒状のステンレス鋼が曲げられた形状(角部が曲線状のL字状配管)とした。また、燃焼室3のガスの流れる方向における長さを800mmとし、空気入口1(図1参照)の内径(直径)を70mmとし、ガス出口2(図1参照)における内径(直径)を106mmとし、中央の平行部分(テーパーになっていない部分)の内径(直径)を130mmとした。燃焼室3は、円筒形状の両端部がテーパー状に細く形成された構造とした。冷却空気混合管34のガスの流れる方向における長さを450mmとし、内径を燃焼室3のガス出口2(図1参照)における内径と同じ長さにした。冷却空気混合管34に配設される冷却空気供給ノズル33は、内径(直径)106mmとした。冷却空気混合管34及び冷却空気供給ノズル33は円筒状とした。試料収納容器31は、内径(直径)313mm、長さ360mmの円筒状とした。冷却空気流量調整手段としては、減圧弁と流量調整弁を用いた。また、冷却空気供給手段によって発生させた空気(冷却空気)を、燃焼用空気及び冷却空気として用いた。
【0075】
また、燃焼室3の入口1(図1参照)から、メインバーナ4までの距離を210mmとした。メインバーナ4は、直径(内径)10.5mmの円筒状とし、直径6mmの供給孔5(図2参照)が1つ形成されたものとした。メインバーナ4は、ガスの流れる方向に直交する断面において供給孔が燃焼室3の中心に位置するように配置した。また、供給孔の向きを、「気体燃料の、メインバーナからの供給方向」が120°方向(図4参照)(「供給孔の向き」が120°方向)になるようにした。尚、図4に示すように、偏流形成用配管と燃焼室の空気入口との接続部分の「燃焼用空気の流れ方向に直交する断面」における、重心(中心)21から燃焼用空気の流れが最も遅い位置22に向かう方向23が、「燃焼用空気の流れ方向に直交する一の方向」である90°方向(Q90)に平行になるようにして、偏流形成用配管11を燃焼室3の空気入口1に配設した。そして、「燃焼用空気の流れが最も遅い位置22」は、偏流形成用配管11の、入口部18の中心軸と出口部19の中心軸とを含む平面で切断した断面(図4に示す断面)において、偏流形成用配管11の角部14の内部における「内周14b側の曲がり終わりの位置17」から、偏流形成用配管出口13に向かって燃焼用空気の流れ方向に平行に直線(内周側の直線)を引いたときに、当該「内周側の直線」と「偏流形成用配管と燃焼室の空気入口との接続部分の燃焼用空気の流れ方向に直交する断面」とが交わる部分である。これにより、燃焼室内におけるメインバーナに形成された供給孔の位置における燃焼用空気の流速が、燃焼室内における燃焼用空気全体の平均流速より遅くなる。
【0076】
上記多孔質セラミック構造体評価装置200を用いて、粒子状物質を発生させた。燃料としては、LPG(液化プロパンガス)を気化させたものを用いた。気体燃料使用量(LPGの使用量)を25.7リットル/分とした。燃焼用空気は0.5Nm/分で供給し、冷却空気を加えた後のガス総量は3.5Nm/分であった。平均空気過剰率λは、0.8であった。平均空気過剰率λは、「λ=燃焼用空気流量(Nm/分)/(燃料流量(Nm/分)×24.3)」の式で求めた値である。パイロットバーナは、メインバーナを着火後も点火したままとした。
【0077】
上記粒子状物質発生方法によって発生した粒子状物質の発生量(粒子状物質発生量)を以下の方法で測定し、発生した粒子状物質の燃焼温度(粒子状物質燃焼温度)を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0078】
(粒子状物質の発生量)
粒子状物質発生方法によって発生した粒子状物質を濾紙で捕集し、その増加質量から単位時間当たりの粒子状物質の発生量を算出した。
【0079】
(粒子状物質の燃焼温度)
上記「粒子状物質の発生量」の測定方法によって得られた「粒子状物質が捕集された濾紙」を、電気炉で450℃に加熱し、その後、「10℃昇温する毎に10分間保持する」という操作を繰り返しながら昇温し、濾紙上の粒子状物質が完全に焼失したときの温度を粒子状物質の燃焼温度とした。
【0080】
【表1】

【0081】
(実施例2〜7)
気体燃料使用量を表1に示すように変更することにより、平均空気過剰率を変化させた以外は、実施例1と同様にして、粒子状物質を発生させた。また、「粒子状物質発生量」及び「粒子状物質燃焼温度」についても実施例1と同様にして上記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0082】
(参考例)
特開2007−155712号公報に記載のPM発生装置を用いて、粒子状物質を発生させた。使用燃料である液体燃料としては、軽油を用いた。軽油の使用量(液体燃料使用量)は、3.6リットル/時間とした。燃料間欠噴射手段における、燃料の噴射時間(開弁時間)を15ミリ秒とし、燃料噴射周期(開弁周期)を60ミリ秒とした。これにより、デューティー比(開弁時間/開弁周期)は0.25であった。また、燃焼用空気の供給量を0.45Nm/分とし、総空気量を4.0Nm/分とした。平均空気過剰率λを0.81とし、瞬間空気過剰率を0.20とした。瞬間空気過剰率とは、液体燃料を噴射した瞬間の、液体燃料の濃度が高くなった部分の空気過剰率である。実施例1と同様にして、「粒子状物質発生量」及び「粒子状物質燃焼温度」を上記方法で測定した。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
(実施例8)
燃焼用空気の供給量を1.0Nm/分とし、平均空気過剰率λを1.2とし、メインバーナ4の燃料供給孔の向きを、0°方向(図4参照)とした以外は、実施例1と同様にして、粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表3に示す。尚、粒子状物質濃度は測定値である粒子状物質発生量から、燃焼用空気1Nm当たりの粒子状物質の質量を計算により求めたものである。
【0085】
【表3】

【0086】
(実施例9〜16)
「供給孔の向き」を、表3に示すように変更した以外は、実施例8と同様にして、粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表3に示す。
【0087】
(実施例17)
燃焼用空気の供給量を2.0Nm/分とし、メインバーナ4を、図6に示すような「9個の供給孔5を形成した形状」とし、各供給孔5の開口径(直径)を2mmとし、平均空気過剰率λを1.2とした以外は、実施例1と同様にして、粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表4に示す。
【0088】
【表4】

【0089】
(実施例18〜23)
メインバーナ4の供給孔5の個数を1個とし、供給孔5の直径を、表4に示すように変更した以外は、実施例17と同様にして、粒子状物質を発生させた。上記方法により、粒子状物質発生量を測定した。結果を表4に示す。尚、実施例23においては、円筒状のメインバーナ4の直径(内径)を14mmにした。
【0090】
(実施例24)
偏流形成用配管11における曲がり終わりの位置17(偏流が生じる位置)から、燃焼用空気入口1までの長さである、出口側直管19の長さD2(図1参照)を420mmとし、燃焼用空気入口1からメインバーナ4までの距離を、210mmとした。また、燃焼用空気の供給量を3.0Nm/分とし、平均空気過剰率λを1.2とした。また、メインバーナ4の直径、供給孔の向き、径、および燃焼室3等は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表5に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
(実施例25〜29)
偏流形成用配管11における曲がり終わりの位置17(偏流が生じる位置)から、燃焼用空気入口1までの長さである、出口側直管19の長さD2を表5に示すように変更した以外は、実施例24と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表5に示す。
【0093】
(実施例30)
燃焼用空気入口1からメインバーナ4までの距離を、30mmとし、偏流形成用配管11における曲がり終わりの位置17(偏流が生じる位置)から、燃焼用空気入口1までの長さである、出口側直管19の長さD2(図1参照)を14mmとし、燃焼用空気の供給量を1.0Nm/分とし、平均空気過剰率λを1.2とした。また、メインバーナ4の直径、供給孔の向き、径、および燃焼室3等は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表6に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
(実施例31〜35)
燃焼用空気入口1からメインバーナ4までの距離を表5に示すように変更した以外は、実施例30と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表6に示す。
【0096】
(実施例36〜38)
偏流形成用配管11における曲がり終わりの位置17(偏流が生じる位置)から、燃焼用空気入口1までの長さである、出口側直管19の長さD2(図1参照)を420mmとし、燃焼用空気の供給量を表7に示すように変更した以外は、空気過剰率λ、メインバーナ4の直径、供給孔の向き、径、および燃焼室3等は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表7に示す。
【0097】
【表7】

【0098】
(実施例39〜41)
偏流形成用配管11における曲がり終わりの位置17(偏流が生じる位置)から、燃焼用空気入口1までの長さである、出口側直管19の長さD2(図1参照)を14mmとし、燃焼用空気の流量を表7に示すように変更した以外は、空気過剰率λ、メインバーナ4の直径、供給孔の向き、径、および燃焼室3等は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表7に示す。
【0099】
(実施例42)
燃焼室3の中央の平行部分(直管部3a)(図1参照)の内径(直径)を81mmとし、偏流形成用配管11の直線部分(入口側直管18及び出口側直管19)(図1参照)の内径(直径)を43mmとし、偏流形成用配管11における、出口側直管19の長さD2(図1参照)を14mmとした。また、燃焼用空気入口1からメインバーナ4までの距離を偏流形成用配管11の直線部分(入口側直管18及び出口側直管19)の内径(直径)の3倍(129mm)とし、また、燃焼室3のガスの流れる方向における長さを800mmとした。また、燃焼用空気の供給量を0.25Nm/分、平均空気過剰率λを1.2とした。また、メインバーナ4の直径、供給孔の向き、径等の、その他の条件は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表8に示す。
【0100】
【表8】

【0101】
(実施例43〜59)
偏流形成用配管11の出口側直管19の長さ(図1参照)を14mmとし、燃焼用空気入口1からメインバーナ4までの距離を偏流形成用配管11の直線部分(入口側直管18及び出口側直管19)の内径(直径)の3倍とした。また、燃焼室3のガスの流れる方向における長さを800mmとし、燃焼室の内径(ガスの流れる方向における中央部の直径)、偏流形成用配管11の内径、燃焼用空気の供給量、燃焼用空気の平均流速を表7に示す。また、メインバーナ4の直径、供給孔の向き、径等の、その他の条件は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表8に示す。
【0102】
(実施例60)
「供給孔の向き」を120°とし、燃焼室の内径(ガスの流れる方向における中央部の直径)を130mmとし、燃焼用空気の供給量を3.0Nm/分とし、平均空気過剰率λを1.2とした以外は、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。尚、実施例1と同様に、メインバーナ4は、ガスの流れる方向に直交する断面において、「供給孔が、燃焼室3の中心に位置する」ように配置した(供給孔位置:0mm)。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表9に示す。
【0103】
【表9】

【0104】
(実施例61〜64)
供給孔の中心からの位置を表9に示すように中心から外側へ変更した以外は、実施例60と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表9に示す。
【0105】
(実施例65、66)
燃焼用空気の供給量を1.0Nm/分とし、平均空気過剰率λを1.2とし、実施例1と同様にして粒子状物質を発生させた。尚、実施例1と同様に、メインバーナ4は、ガスの流れる方向に直交する断面において、「供給孔が、燃焼室3の中心に位置する」ように配置した(供給孔位置:0mm)。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表10に示す。尚、実施例66は、実施例65において「パイロットバーナを、メインバーナを着火して15秒後に消火した」ものである。
【0106】
【表10】

【0107】
(実施例67、68)
燃焼用空気の供給量を2.0Nm/分とした以外は、実施例65と同様にして粒子状物質を発生させた。上記方法により、「粒子状物質発生量」を測定した。結果を表10に示す。尚、実施例68は、実施例67において「パイロットバーナを、メインバーナを着火して15秒後に消火した」ものである。
【0108】
表1、表2より、実施例1〜7の粒子状物質発生方法によって発生した粒子状物質の燃焼温度は、従来例の粒子状物質発生方法によって発生した粒子状物質の燃焼温度より高いことがわかる。実際のディーゼルエンジンから排出される粒子状物質の燃焼温度が500〜560℃程度であるため、実施例1〜7の粒子状物質発生方法によって、これと同等の粒子状物質が得られていることが分かる。
【0109】
表3より、「供給孔の向き」が120〜180°である場合に特に粒子状物質が多く発生していることがわかる。
【0110】
表4より、メインバーナの供給孔の個数を1個にして、気体燃料を分散させずに集中して燃焼室内に供給したほうが、粒子状物質が多く発生していることがわかる。更に、メインバーナ4の供給孔5の直径は4〜10mmの範囲である場合に特に粒子状物質が多く発生していることがわかる。
【0111】
表5より、「偏流形成用配管11における燃焼用空気に偏流が生じる位置(曲がり終わりの位置)17(図1参照)から燃焼室入口1までの距離「出口側直管の長さD2」(図1参照)は140mm以下で粒子状物質の発生量が多くなることが分かる。短い程、メインバーナ付近の偏流程度が大きくなるためと思われる。
【0112】
表6より、燃焼用空気入口1からメインバーナ4までの距離が70〜400mmで粒子状物質は多く発生していることがわかる。メインバーナ4までの距離が30mmの場合、燃焼用空気入口1に近過ぎるため、燃焼用空気の流速が速く、燃料と燃焼用空気の混合が良くなり、粒子状物質の発生量が少なくなったものと思われる。一方、600mmの場合、偏流配管から距離が遠いため、燃焼用空気の整流が進行し、偏流効果が小さくなり、粒子状物質の発生量が少なくなったものと思われる。
【0113】
表7より、セラミック構造体の耐熱衝撃性、耐久性を効率的に評価するためには、粒子状物質の発生量は多いほうが好ましい。具体的には、粒子状物質の濃度は燃焼用空気1Nmあたり、0.75g以上であることが好ましい。「偏流形成用配管11における燃焼用空気に偏流が生じる位置(曲がり終わりの位置)17(図1参照)から燃焼室入口1までの距離「出口側直管の長さD2」(図1参照)が長い場合、粒子状物質の濃度を燃焼用空気1Nmあたり0.75g以上とするには、燃焼室3の内径(直径)が130mmの場合、燃焼用空気の供給量は約1Nm/分が限界であることが分かる。一方、「出口側直管の長さD2」の短い場合、3Nm/分まで0.75(g/Nm)以上の濃度で発生できることが分かる。従って、「出口部の長さD2」を短くし、偏流を大きくすることで、燃焼室を小型化することが可能となる。
【0114】
表8より、粒子状物質の濃度0.75(g/Nm)以上を達成するためには、燃焼用空気供給量2.0(Nm/分)の場合には燃焼室の内径が106mm以上必要であり、燃焼用空気供給量3.0(Nm/分)の場合には燃焼室の内径が130mm以上必要であり、燃焼用空気供給量4.0(Nm/分)の場合には燃焼室の内径が155mm以上必要であり、この時の燃焼室3の直管部の平均流速は4.0m/秒以下であることが分かる。
【0115】
表9より、メインバーナの供給孔は、燃焼室の中心より、燃焼用空気の流速が遅い外側にずれた位置に配置したほうが、粒子状物質の発生量が多くなることが分かる。特に供給孔位置の燃焼室の中心から、燃焼室内径(直径)に対する比率で15〜35%の距離だけ離れた範囲である場合に、特に粒子状物質が多く発生していることがわかる。
【0116】
表10より、パイロットバーナを、「メインバーナを着火した後」に消火することにより、粒子状物質の発生量が多くなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の粒子状物質発生装置は、自動車用エンジン、建設機械用エンジン、産業用定置エンジン、燃焼機器等から排出される排ガスに含有される粒子状物質を捕集するための多孔質セラミック構造体の評価を行うために好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1:空気入口、2:ガス出口、3:燃焼室、3a:直管部、3b:テーパー部、4:メインバーナ、5:供給孔(気体燃料を供給する孔)、6:パイロットバーナ、7:フランジ(鍔部)、8:燃焼室の中心、11:偏流形成用配管、12:偏流形成用配管入口、13:偏流形成用配管出口、14:角部、14a:外周(角部の外周)、14b:内周(角部の内周)、15:フランジ、16:曲がり始めの位置、17:曲がり終わりの位置(偏流が生じる位置)、18:入口側直管、19:出口側直管、21:重心(中心)、22:燃焼用空気の流れが最も遅い位置、23:重心(中心)から燃焼用空気の流れが最も遅い位置に向かう方向、31:試料収納容器、31a:入口管、31b:出口管、32:多孔質セラミック構造体、33:冷却空気、34:冷却空気混合管、35:整流管、41:冷却空気供給手段、42:冷却空気流量制御手段、50:ハニカム構造体、51:隔壁、52:セル、53:目封止部、54:外周壁、55:一方の端面、56:他方の端面、100:粒子状物質発生装置、200:多孔質セラミック構造体評価装置、D1:入口側直管の長さ、D2:出口側直管の長さ、F1:燃焼用空気、F2:粒子状物質含有ガス、F3:冷却空気、Q:気体燃料の供給方向(供給孔の向き)、Q0:0°方向、Q90:90°方向、Q180:180°方向、Q270:270°方向、d:内径、S:範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気を供給するための空気入口及び発生した粒子状物質を含有する粒子状物質含有ガスを排出するためのガス出口を有し、気体燃料が内部で燃焼されて粒子状物質が発生する燃焼室と、
前記燃焼室に挿入され、気体燃料を前記燃焼室内に連続的に供給する供給孔が形成されたメインバーナと、
前記燃焼室に配設され前記燃焼室に供給された気体燃料に着火するパイロットバーナと、
前記燃焼室の前記空気入口に配設され、前記燃焼用空気の流れ方向に直交する断面における前記燃焼用空気の流速の速い領域を中央部から偏らせて前記燃焼用空気に偏流を生じさせる偏流形成用配管とを備える粒子状物質発生装置。
【請求項2】
前記偏流形成用配管が、一方の端部側に直線状に延びる入口側直管を有するとともに他方の端部側に直線状に延びる出口側直管を有し、前記入口側直管及び前記出口側直管に繋がる角部が曲線状に形成されたL字状配管である請求項1に記載の粒子状物質発生装置。
【請求項3】
前記偏流形成用配管の前記出口側直管の長さが140mm以下である請求項1又は2に記載の粒子状物質発生装置。
【請求項4】
前記燃焼室入口から、前記メインバーナまでの距離が70〜400mmである請求項1〜3のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項5】
前記メインバーナから供給される気体燃料の前記メインバーナからの供給方向が、前記燃焼用空気の流れ方向を含む平面内における、前記燃焼用空気の流れ方向を0°方向とし前記燃焼用空気の流れ方向に直交する一の方向を90°方向としたときの、90〜270°方向である請求項1〜4のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項6】
前記メインバーナが管状構造であり、前記メインバーナに前記気体燃料を供給する供給孔が1個形成され、前記供給孔の開口径が4〜10mmである請求項1〜5のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項7】
前記メインバーナの前記供給孔が、前記燃焼用空気の流れ方向に直交する平面で前記メインバーナが挿入されている位置を切断した前記燃焼室の断面において、前記燃焼室の中心から前記燃焼室の内径の35%までの範囲に位置する請求項1〜6のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項8】
前記燃焼室が、中心軸方向における中央部に直径が均一な直管部を有するとともに中心軸方向における両端部にテーパー状に細く形成されたテーパー部を有する円筒状であり、
前記燃焼室の直管部の内径が、前記直管部を流れる前記燃焼用空気の流量が使用時における最大流量であるときに前記燃焼用空気の平均流速が4.0m/秒以下となるような大きさである請求項1〜7のいずれかに記載の粒子状物質発生装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の粒子状物質発生装置を用いて、粒子状物質を発生させる粒子状物質発生方法。
【請求項10】
平均空気過剰率が0.8〜3.0になるように、前記空気入口から前記燃焼用空気を供給し、前記メインバーナから前記気体燃料を連続的に供給し、前記パイロットバーナにより前記気体燃料に着火して前記気体燃料を燃焼させて粒子状物質を発生させ、前記粒子状物質を含有するガスを前記ガス出口から排出する請求項9に記載の粒子状物質発生方法。
【請求項11】
前記メインバーナに着火後、パイロットバーナを消火する請求項9又は10に記載の粒子状物質発生方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の粒子状物質発生装置と、前記粒子状物質発生装置のガス出口側に配設された、評価試料である多孔質セラミック構造体を収納する試料収納容器とを備え、
前記粒子状物質発生装置で発生した粒子状物質をガスと共に前記試料収納容器に送り、前記粒子状物質を含有する前記ガスを前記試料収納容器に収納された多孔質セラミック構造体に供給することができる多孔質セラミック構造体評価装置。
【請求項13】
冷却空気供給手段と、前記冷却空気供給手段から供給される空気の流量を制御する冷却空気流量制御手段とを更に備え、
前記冷却空気供給手段から、前記粒子状物質発生装置と前記試料収納容器との間に、冷却空気を導入し、冷却空気と粒子状物質を含有するガスとを混合し、排気ガスの温度制御をすることができる請求項12に記載の多孔質セラミック構造体評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−209202(P2011−209202A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78870(P2010−78870)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】