説明

粒子状組成物の製造方法

【課題】生菌が高含量に封入され、封入された生菌の保存安定性が良好で、食品や医薬品をはじめとした幅広い用途に適応することのできる粒子状組成物を、凍結乾燥等で乾燥した生菌原末を使用せずに、高い生産効率で工業生産できる製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性賦形剤、生菌および水を含有する水相を、油性成分中に懸濁させた後、油性成分中で水相中の水分を除去して固体状粒子を得ることを特徴とする、生菌含有粒子状組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、生菌を含有する粒子状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、欧米や日本を中心にプロバイオティクスの観点から、死菌ではなく生菌を含有した食品、機能性食品、医薬品を経口摂取し、宿主に有益な微生物を生きたまま消化管内にとどめる、または増殖促進させることにより、消化管内の細菌叢を改善し、整腸作用、免疫賦活作用などの生理効果を発揮させる、といった試みがさかんに行われている。
【0003】
乳酸菌、ビフィズス菌等の生菌を含有した食品、機能性食品、医薬品は、ヨーグルト、カプセル、タブレット等の形態で実際に製品化されているが、これらの多くは乾燥した生菌原末を原料として使用している。中でも、生菌を含有した粒子状カプセルの場合、保存安定性を維持する上で、製剤中の水分活性を低くする必要があるため、その多くは生菌を油脂等の油性成分で被覆、または油脂中に懸濁した形態をとっている。
【0004】
従来、生菌を生きたまま乾燥粉末化し、保存安定性、ハンドリング性を付加する方法として、生菌を含有した培養液、またはその濃縮液を凍結乾燥し、賦形剤を加えるなどしてハンドリング性を改善し、生菌を原末化するのが一般的手段として実施されてきた。一方で、生菌を含有した培養液を凍結乾燥する際、凍結時に生菌の細胞に損傷が生じ、死滅を招きやすくすることから、培養液に各種凍結保護剤を添加した後に凍結乾燥し、死滅率を低下させる試みが行われている(特許文献1)。しかしながら、凍結保護剤を添加した場合でも、凍結乾燥処理により大半の生菌が死滅するといわれている。また、凍結乾燥処理した乾燥菌体はハンドリング性が悪いことから、通常、乾燥菌体重量の1〜200倍量のデキストリン等の賦形剤を添加し、生菌原末とすることが多い。この場合、賦形剤による希釈のため、原末重量当たりの生菌含量は、凍結乾燥直後の乾燥菌体の生菌含量に比べて低下することとなり、高濃度の生菌を含有する生菌原末の調製は難しい。
【0005】
凍結乾燥以外の方法により、菌体懸濁液から乾燥生菌原末を製造する方法として、噴霧乾燥による試みが知られている(特許文献2)。この方法では、噴霧時の液滴形成をコントロールすることで、生菌の死滅を抑制する効果を見出しているが、条件によっては約半分の生菌が死滅するうえ、量産化を想定した場合、装置内の生菌滞留時間が長くなり、生菌がより長く高温に曝されることが考えられるため、生菌の死滅を招きやすい系となることが予想される。
【0006】
乳酸菌やビフィズス菌等の生菌は、保存時に空気中の酸素や水分との接触で生菌率が低下することが知られている。そのため、生菌の保存安定性の観点から、乾燥生菌原末を植物性油脂等の油性成分で被覆し、生菌に対して空気、水分を遮断し、保存安定性を高めるための方法が提案されている(特許文献3)。この方法では、原料に凍結乾燥処理した生菌原末の使用が考えられるが、その場合、培養生産した生菌の大半が死滅した原末を原料として使用することとなり、その上、油性成分被覆時にもいくらかの生菌の死滅が予想されることから、製造し得る製剤において、培養、乾燥、製剤といった工程を経た場合の生菌収率は非常に低くなると考えられる。
【0007】
生菌原末をそのまま打錠する方法に代わるものとして、これまでに、生菌を生きたままカプセル化して生菌含有製剤を得る製造方法、例えば、乾燥生菌原末に微粒子状の油脂を被覆する方法や(特許文献4)、生菌を分散させた油脂を多重オリフィスノズルを用いて水溶性賦形剤中に封入する方法(特許文献5)、流動層造粒機により生菌を油脂で被覆する方法(特許文献6)等が提案されている。しかし、いずれの製造方法も原料に凍結乾燥処理した生菌原末を使用するため、上述したように収率や含量等において課題があった。
【0008】
一方で、凍結乾燥や噴霧乾燥等の菌体乾燥処理を介さずに、乳酸菌やビフィズス菌の培養液を、多重オリフィスノズルを用いてそのままカプセル化する方法が提案されている(特許文献7)。この方法によると、活性の高い状態で生菌をカプセル化することが可能となるが、保存中に生菌の代謝物の蓄積やpHの変化が生じることから、長期的に生菌の活性を維持することは困難である。また、多重オリフィスノズルを用いた製造方法では、作製し得るカプセル粒子径が数mmオーダーの大粒子径であることが多く、選択できる粒子径範囲の自由度が低いため、ソフトカプセルや打錠向けの用途等の幅広い分野への応用展開が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3509148号
【特許文献2】特許第3363438号
【特許文献3】特許第2890746号
【特許文献4】特開2005−68094
【特許文献5】特開平8−242763
【特許文献6】US7157258 B2
【特許文献7】特許第4020289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来の生菌を含有した粒子状カプセルのほとんどが保存安定性の観点から油脂中に生菌を封入した形態をとっているため、該カプセルを例えば水性の食品や飲料に添加する場合には、成分である油脂が分離したりするなど、その応用には限界があった。また、このような形態をとるカプセルを作製するにあたっては、凍結乾燥等、あらかじめ乾燥処理した生菌原末を原料に使用する必要があった。乾燥処理した生菌原末は、乾燥過程において大半の生菌が死滅しているため、これを用いて作製した製剤は、高い生菌含量とすることが困難であり、また、乾燥、製剤の各工程を経ることによって、培養生産した生菌のほとんどが死滅している状況にあることから、全工程を通して、生菌の収率が非常に悪いこと等が課題であった。
【0011】
本発明の課題は、生菌が高含量に封入され、食品や医薬品をはじめとした幅広い用途に適応することのできる粒子状組成物を高い生産効率で工業生産できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、油性成分中に水溶性賦形剤と生菌を含有する水相を分散させたまま、水相中の水分を除去することで、凍結乾燥等の乾燥処理を行わずとも、生菌を含有する固形状粒子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、水溶性賦形剤、生菌および水を含有する水相を、油性成分中に懸濁させた後、油性成分中で水相中の水分を除去して固体状粒子を得ることを特徴とする、生菌含有粒子状組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、生菌が高含有量封入された粒子状組成物の製造方法を提供する。また、本発明の製造方法では、凍結乾燥等の乾燥処理を行わずとも、生菌を含有する培養液や生菌を懸濁した水溶液等をそのまま直接、乾燥製剤化することができるため、培養由来の生菌の大半を死滅させることなく、生菌を生きたまま効率良く粒子中に封入させることが可能である。更に本発明により得られる粒子状組成物は幅広い範囲で粒子径のコントロールが可能で、中間素材としても適用できる微細な粒子形態にも調製可能であり、また油脂を使用する必要がないことから、食品、機能性食品、医薬品等の分野において、中間素材から末端製品までの様々な用途として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、水溶性賦形剤、生菌および水を含有する水相を、油性成分中に懸濁させた後、油性成分中で水相中の水分を除去して固体状粒子を得ることを特徴とする、生菌含有粒子状組成物の製造方法である。本発明の製造方法によって得られる粒子状組成物は、水溶性賦形剤中に生菌が多分散している固形粒子である。
【0017】
本発明の製造方法において、原料となる生菌は、乾燥菌体、湿菌体の形態を問わず適用することができ、例えば、生菌の乾燥物、生菌を含有する培養液、生菌を懸濁した水溶液、湿生菌等の生菌含有物として使用することができる。
【0018】
上記生菌の乾燥物は、例えば、培養後の生菌を含有する培養液を、凍結乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥、自然乾燥等の乾燥処理を施すことで得られる。
【0019】
上記生菌を含有する培養液としては、培養生産で得た培養液中に培養基質を含んだまま使用することもでき、培養液を遠心分離等で適宜濃縮し、所望の生菌含量に調整して使用することもできる。
【0020】
また、培養後一旦単離された生菌や市販の生菌粉末などを、水や緩衝液などに懸濁した水溶液も、生菌含有物として使用できる。
【0021】
これらの生菌含有物は2種以上混合して使用することもできる。また、生菌含有物に含まれる生菌含量の制限は特に無いが、生菌含量の高い粒子状組成物の製造を目的とした場合、例えば、固形状の乾燥菌体であれば、105cfu/g以上が好ましく、液状の培養液、懸濁液等であれば、105cfu/mL以上が好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては、どのような種類の生菌でも適用できるが、哺乳動物にとって経口消費されるのに好適であるものが好ましく、そのような生菌として、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母、麹菌、酢酸菌、酪酸菌、プロピオン酸菌、糖化菌等が挙げられる。なお、上記生菌の中でも乳酸菌、ビフィズス菌は凍結乾燥処理を行うことにより、死滅しやすいことが知られているため、これら生菌を使用するにあたっては、収率と安定性の観点から、生菌を含有する培養液をそのまま原料として使用することにより粒子状組成物を作製することが好ましい。
【0023】
上記乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブリュック(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバチルス・フェルメンチイ(Lactobacillus fermrntii)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum) 、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri) 、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・ライシュマニ(Lactobacillus leichmanii)、ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サーモフィルス(Lactobacillus thermophilus)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、 ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilacticii)、ペディオコッカス・セレビジア(Pediococcus cerevisiae)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メゼントロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・ラクティス(Leuconostoc lactis)、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス・ブルガリカス(Streptococcus bulgaricus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等が挙げられる。
【0024】
上記ビフィズス菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アンギュレイタム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリ(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・カテニュレイタム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・デンティコレンス(Bifidobacterium denticolens)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・ガリカ(Bifidobacterium gallicum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・イノピナータム(Bifidobacterium inopinatum)、ビフィドバクテリウム・ロンガ(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュレイタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum) 等が挙げられる。
【0025】
上記酵母としては、例えば、サッカロマイセス・ボウラディ(Saccharomyces boulardi)、サッカロマイセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・サケ(Saccharomyces sake) 等が挙げられる。
【0026】
上記麹菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger) 、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae) 等が挙げられる。
【0027】
上記酢酸菌としては、例えば、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)等が、上記酪酸菌としては、例えば、バチルス・トヨイ(Bacillus toyoi)、バチルス・リケニホルムス(Bacillus licheniformis)、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum) 等が、上記プロピオン酸菌としては、例えば、プロピオニバクテリウム・シェルマニー(Propionibacterium shermanii)、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)等が挙げられる。
【0028】
また、上記糖化菌としてはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・メッセンテリカス(Bacillus mesentericus)、バチルス・ポリファーメンチカス(Bacillus polyfermenticus) 等が挙げられる。
【0029】
その他、哺乳動物にとって経口消費されるのに好適であるものの例として、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)やバチルス・プミラス(Bacillus pumilus)等が挙げられる。これらの生菌は単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用することもできる。
【0030】
上記の生菌は、公知の条件またはそれに準じる条件で培養することにより得ることが出来る。また、上記生菌の培養液には、保護剤を添加しても良い。保護剤は、当業界で通常使用されるものであれば、特に限定されないが、アスコルビン酸等のビタミン類、グルタミン、グルタミン酸、L-システイン、グリシン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン等のアミノ酸、グルコース、果糖、ショ糖、マルトース、マンニトール、マルチトール等の糖類もしくは糖アルコール類、オリゴ糖、シクロデキストリン、デキストリン等の多糖類、牛乳、大豆等より得られるタンパクやペプチド、硫酸マグネシウム等の無機類、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤、その他、リンゴ酸、核酸類、酵母エキス、脱脂粉乳、ペプトン、ゼラチン、タンニン等が例示され、これらのなかから1種または2種以上を任意に選択することができる。
【0031】
本発明の製造方法において使用する水溶性賦形剤としては、特に限定されないが、食品用または医薬品用として使用できるものが好ましく、また、粒子状組成物の製造時、水と混合する際の優れた水溶解性、作業性を有するものが好ましく、更に、得られた粒子状組成物の打錠性が良好であるような物質が好ましい。本発明において使用される水溶性賦形剤は、得られる粒子状組成物のマトリックスの主成分となる。ここでいう主成分とは、マトリックス成分のうち80重量%以上が水溶性賦形剤であることを意味する。
【0032】
本発明で使用できる水溶性賦形剤としては、例えば、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ゼラチン、寒天、澱粉、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、カゼイン、カゼイン化合物、カードラン、アルギン酸類、糖類、プルラン、セルロース類、キサンタンガム、カルメロース塩等を挙げることができる。
【0033】
上記アルギン酸類としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等が挙げられる。
【0034】
上記糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖、糖アルコール類、およびその他多糖類等が挙げられる。単糖類としては、具体的には、アラビノース、キシロース、リボース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、ラムノース等を挙げることができる。二糖類としては、具体的には、麦芽糖、セロビオース、トレハロース、乳糖、ショ糖等を挙げることができる。オリゴ糖としては、具体的には、マルトトリオース、ラフィノース糖、スタキオース等が挙げられる。糖アルコール類としては、具体的には、アラビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、アドニトール、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、ラクチトール等が挙げられる。その他多糖類としては、大豆多糖類、キチン、キトサン、アガロース、ヘパリン、ヒアルロン酸、キシログルカン、グリコーゲン、ペクチン、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸等が挙げられる。
【0035】
上記セルロース類としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0036】
ここで示した水溶性賦形剤は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0037】
また、上記水溶性賦形剤として、例えばペクチンやジェランガム、アルギン酸ナトリウム等の酸性条件でゲル化する物質を使用することで、粒子状組成物自体を耐酸性化することができ、経口摂取時に胃では崩壊せず、腸内に届いてはじめて内包物質を放出する腸溶カプセルとすることもできる。
【0038】
本発明の製造方法では、使用する水性成分として、上記水溶性賦形剤の他に、親水性生理活性物質を使用することもできる。本発明の製造方法において、水相中に親水性生理活性物質を添加、混合しておくことで、得られる粒子状組成物中に親水性生理活性物質を共存させることができる。
【0039】
本発明において使用できる親水性生理活性物質としては、水溶性のものであれば、用途に応じて適宜選択することができ、そのような親水性生理活性物質としては、例えば、ペプチド類、アミノ酸類、抗生物質、核酸類、有機酸類、水溶性ビタミン類、水溶性補酵素類、ミネラル類等が挙げられる。
【0040】
上記ペプチド類としては、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)、インスリン、ソマトスタチン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン(GH−RH)、プロラクチン、エリスロポエチン、副腎皮質ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、バソプレシン、オキシトシン、カルシトニン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エンケファリン、エンドルフィン、キョウトルフィン、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモチムリン、胸腺液性因子、血中胸腺因子、腫瘍壊死因子、コロニー誘導因子、モチリン、デイノルフィン、ボンベシン、ニューロテンシン、セルレイン、ブラジキニン、グルタチオン、カルノシン、アンセリン、ホモアンセリン、バレニン、アスパルテーム、心房性ナトリウム排泄増加因子、神経成長因子、細胞増殖因子、神経栄養因子、エンドセリン拮抗作用を有するペプチド類等やその誘導体、さらにはこれらのフラグメントまたはフラグメントの誘導体等が挙げられる。
【0041】
上記アミノ酸類としては、具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。
【0042】
上記抗生物質としては、例えば、β−ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリエンマクロライド系、グリコペプチド系、核酸系、ポリドンカルボン酸系等の抗生物質を挙げることができる。
【0043】
上記核酸類としては、具体的には、イノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸、ATP、GTP、DNA、RNA等を挙げることができる。
【0044】
上記有機酸類としては、具体的には、クエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸等を挙げることができる。
【0045】
上記水溶性ビタミン類としては、具体的には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、アスコルビン酸、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リポ酸、ビオチン等を挙げることができる。
【0046】
上記水溶性補酵素類としては、チアミン二リン酸、NADH、NAD、NADP、NADPH、FMN、FAD、補酵素A、ピリドキサルリン酸、テトラヒドロ葉酸等を挙げることができる。
【0047】
上記ミネラル類としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、カリウム、ナトリウム、銅、バナジウム、マンガン、セレン、モリブデン、コバルト等、及びこれらのミネラルが結合した化合物等を挙げることができる。
【0048】
ここで示した親水性生理活性物質は言うまでもなく2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0049】
本発明の製造方法においては、まず、水溶性賦形剤と生菌を含有する水相を調製する。水相の調整方法としては特に限定されないが、例えば、水溶性賦形剤、生菌含有物、さらに必要に応じて水やその他の成分を同時に仕込んで混合する。ここで、生菌含有物として生菌の乾燥物や湿菌体を使用する場合には、水性の懸濁液が得られるよう、水または緩衝液などの水溶液を添加する必要があるが、生菌含有物として生菌を含有する培養液や生菌を懸濁した水溶液を使用する場合には、必ずしもその必要はない。また水溶性賦形剤を一旦水に溶解させた水溶液として使用することもできる。
【0050】
水相の調製における混合操作には、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、撹拌、ラインミキサー、噴流、ポンプ等の一般的な混合方法を適宜選択して実施することができる。
【0051】
次に、本発明の製造方法では、調製した上記水相を、油性成分中に懸濁させ、液滴状に分散させる。この場合の、水相と油性成分との混合比には、特に制限はないが、水相と油性成分の混合液全体に対するの水相の割合が、1〜70重量%の範囲であることが好ましく、10〜60重量%の範囲であることがより好ましく、15〜55重量%の範囲であることが最も好ましい。水相と油性成分の混合液全体に対する水相の割合が1重量%未満の場合は、生産効率が低下する。また、水相と油性成分の混合液全体に対する水相の割合が70重量%以上の場合には、水相を油性成分中に良好に乳化・懸濁させることが困難となる傾向にある。
【0052】
本発明の製造方法で使用される油性成分としては、上記水相を懸濁させることができる油性成分であれば特に制限はなく、その主成分としては例えば動植物からの天然油脂、合成油脂や加工油脂等の油脂が使用でき、より好ましくは、食品、化粧品又は医薬用に許容されるものである。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、つばき油、玄米胚芽油、菜種油、米油、落花生油、コーン油、小麦胚芽油、大豆油、エゴマ油、綿実油、ヒマワリ種子油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ゴマ油、サフラワー油、オリーブ油等を挙げることができ、動物油脂としては、例えば、豚脂、乳脂、魚油、牛脂等を挙げることができ、更に、これらを分別、水素添加、エステル交換等により加工した油脂(例えば、硬化油)も挙げることができる。言うまでもなく、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)も使用しうる。又、これらの混合物を使用しても良い。
【0053】
中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、脂肪酸の炭素数が各々6〜12、好ましくは8〜12のトリグリセリドを挙げることができる。
【0054】
上記、油脂のうち、取り扱い易さ、臭気等の面から植物油脂、合成油脂や加工油脂等が好ましい。例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米油、大豆油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、MCT等が好ましい。
【0055】
本発明の製造方法においては、必要に応じ、油性成分中に、HLBが10以下の界面活性剤を添加することができる。油性成分中の水相の液滴は、乾燥が進行するに従って、徐々に粘着性が増大し、粒子間で凝集しやすくなる傾向にある。しかし、油性成分中にHLBが10以下の界面活性剤を共存させておくと、粘着性の増した乾燥途中の水相分散液滴間の凝集が大幅に緩和され、その結果、所望の体積平均粒子径を有する粒子状組成物の回収率を飛躍的に向上させることができ好ましい。
【0056】
油性成分中の界面活性剤の含有量には特に制限はないが、油性成分の組成が、油脂5〜99.99重量%に対し、界面活性剤0.01〜95重量%の範囲内となるよう任意に調整するのが好ましい。界面活性剤の添加量が、0.01重量%よりも少ない場合は、乾燥途中の水中油型乳化組成物の液滴間の凝集抑制効果が得られにくくなる傾向にある。
【0057】
上記、界面活性剤としては、HLBが10以下で、食品、化粧品、医薬品用途に許容できるものであれば特に制限されないが、特に食品に許容できるものが好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリンエステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、レシチン類が挙げられる。
【0058】
上記グリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、脂肪酸の部分グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等を挙げることができる。脂肪酸の部分グリセリドとしては、例えば、モノグリセリンモノカプリル酸エステル、モノグリセリンモノカプリン酸エステル、モノグリセリンジカプリル酸エステル、モノグリセリンジカプリン酸エステル、モノグリセリンジラウリン酸エステル、モノグリセリンジミリスチン酸エステル、モノグリセリンジステアリン酸エステル、モノグリセリンジオレイン酸エステル、モノグリセリンジエルカ酸エステル、モノグリセリンジベヘニン酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリンカプリル酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸クエン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸酢酸エステル、モノグリセリンステアリン酸コハク酸エステル、モノグリセリンステアリン酸乳酸エステル、モノグリセリンステアリン酸ジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリンオレイン酸クエン酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸有機酸エステル等を挙げることができる。
【0059】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、重合度が2から10のポリグリセリンを主成分とするポリグリセリンに、ポリグリセリンの水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜22の脂肪酸がエステル化したものが挙げられる。具体的には、例えば、ヘキサグリセリンモノカプリル酸エステル、ヘキサグリセリンジカプリル酸エステル、デカグリセリンモノカプリル酸エステル、トリグリセリンモノラウリン酸エステル、テトラグリセリンモノラウリン酸エステル、ペンタグリセリンモノラウリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、トリグリセリンモノミリスチン酸エステル、ペンタグリセリンモノミリスチン酸エステル、ペンタグリセリントリミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸エステル、テトラグリセリンモノオレイン酸エステル、ペンタグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノステアリン酸エステル、テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリンモノステアリン酸エステル、ペンタグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリントリステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンジステアリン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンジステアリン酸エステル、デカグリセリントリステアリン酸エステル等が挙げられる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンの平均重合度が2〜10、ポリリシノレイン酸の平均縮合度(リシノレイン酸の縮合数の平均)が2〜4であるものが挙げられ、例えば、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ペンタグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が挙げられる。
【0060】
上記ショ糖脂肪酸エステル類としては、ショ糖の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜22の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。具体的には、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が挙げられる。
【0061】
上記ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタン類の水酸基の1つ以上に炭素数が各々6〜18、好ましくは6〜12の脂肪酸をエステル化したものが挙げられる。具体的には、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0062】
上記レシチン類としては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ジセチルリン酸、ステアリルアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールアミン、カルジオリピン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、リゾレシチン、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0063】
言うまでもなく、ここで示した界面活性剤は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0064】
次に、本発明の製造方法においては、水相を油性成分中で、液滴状に分散させたまま、水相中の水分の除去を行う。水相から水分を除去する手法としては、特に限定されず、公知の方法を使用することができるが、例えば、減圧下で25〜50℃、好ましくは30〜40℃に加温して、水分を除去することができる。ここでいう水分の除去とは、水分が完全に除去されていない状態であっても、水相分散液滴の乾燥が進行し、粒子形態での回収が可能な状態であれば良い。残存水分量は、通常、回収後粒子重量の30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることが最も好ましい。
【0065】
本発明の製造方法において、水分除去後の粒子状組成物の回収方法としては特に限定されないが、固液分離により油性成分を除去した後、得られた粒子状組成物を有機溶剤等で洗浄して油性成分の大部分を流去し、さらに有機溶剤を乾燥により除去し、粉体として回収するのが最も簡便であり好ましい。
【0066】
油性成分を洗浄する有機溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、ヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等を挙げることができるがこれに限定されない。上記、有機溶剤の乾燥方法としては、真空乾燥、加熱乾燥、凍結乾燥、風乾等を用いることができるが、これらに限定されない。なお、回収後の粒子状組成物は、所定の製品として望ましい粒子径に揃えるために、分級操作を実施することもできる。
【0067】
上述した本発明の製造方法によって、水溶性賦形剤を主成分とするマトリックスが粒子の形状を構築し、該マトリックス中において生菌が多分散した構造をしている粒子状組成物を得ることができる。本発明の製造方法によって得られる粒子状組成物は、上記構造を有する固体粒子を意味するものであり、O/W、またはW/O型の液状の複合エマルションとは構造が異なる。
【0068】
また、本発明の製造方法を採用することで、原料として使用する生菌を著しく死滅させることなく、高い生菌生存率を維持したままで粒子状に製剤化することが可能である。本発明の製造方法における好ましい生菌生存率(得られた粒子状組成物中の生菌数/原料に使用した生菌含有物の生菌数(%))は、通常1%以上であり、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは30%以上である。
【0069】
本発明の製造方法により得られる粒子状組成物は、そのままの形態での経口投与することもできるだけでなく、打錠して錠剤としたり、ソフトカプセルやハードカプセルへの充填も可能であるほか、他の素材に混合、加工して使用することもできる。
【実施例】
【0070】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0071】
実施例で生菌含有物として培養液を用いる場合、全て下記培養操作にて調製した培養液を使用することとした。
【0072】
<生菌培養液の調製>
シリコ栓付き試験管にM.R.Sブロス(関東化学製)を10mL入れ、オートクレーブした後に菌株(ラクトバチルス・ブレビス、またはラクトバチルス・カゼイ:ATCC4356株)を一白金耳量接種し、37℃で24時間静置培養した。さらに上記の種菌2.5mLをシリコ栓付き300mL三角フラスコに入れたM.R.Sブロス250mLに接種し、37℃で24時間静置培養した。
【0073】
<生菌含有量の測定法>
実施例で作製した粒子状組成物中の生菌含有量は、該粒子状組成物を一旦室温で生理食塩水に溶解し、段階希釈した溶液を寒天培地プレートに植菌し、48時間後にプレート上に生育したコロニーの数をカウントすることによって算出した。
【0074】
<平均粒子径測定法>
実施例、比較例で作製した粒子状組成物の平均粒子径の測定には堀場製作所製LA−950を使用した。
【0075】
(実施例1)
20.8gの蒸留水に、アラビアガム(コロイドナチュレル製)5.6g、エリスリトール5.6g(日研化学製)を40℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作製した。この水溶性賦形剤水溶液に、ラクトバチルス・ブレビスの凍結乾燥原末(4.8×1010cfu/g)3.0gを添加し、撹拌機にて混合して水相を調製した。
【0076】
調製した水相を、あらかじめ35℃に保温しておいた、MCT(理研ビタミン製アクターM−2)300gおよび界面活性剤(ペーストレシチン)1.0gからなる油性成分に撹拌しながら添加し、油性成分中に水相を分散させた懸濁液を調製した。更に、上記懸濁液を35℃、圧力1.3kPaの減圧条件で5時間撹拌を継続して水分を除去するとともに、粒子形成を行った。次いで、常法に従って固液分離により油性成分をろ別し、約100gのエタノールで粒子に付着した油性成分を洗浄後、40℃、24hr真空乾燥して、生菌を含有する粒子状組成物を得た。得られた組成物の平均粒子径は195μmであり、生菌含有量は2.0×109cfu/gであった。また、仕込んだ原末中の生菌量と得られた粒子中の生菌含有量より算出した、粒子状組成物の製造における生菌の生存率(収率)は21.8%であった。
【0077】
(実施例2)
45.5gの蒸留水に、アラビアガム(コロイドナチュレル製)24.5gを40℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作製した。この水溶性賦形剤水溶液を30℃に冷却した後にラクトバチルス・ブレビスの培養液(9.1×1010cfu/mL)20mLを添加し、撹拌機にて混合して水相を調製した。
【0078】
調製した水相を、あらかじめ35℃に保温しておいた、MCT(理研ビタミン製アクターM−2)300gおよび界面活性剤(リゾレシチン)1.5gからなる油性成分(B)に撹拌しながら添加し、油性成分(B)中に水相を分散させた懸濁液を調製した。更に、上記懸濁液を35℃、圧力1.3kPaの減圧条件で3時間撹拌を継続して水分を除去するとともに、粒子形成を行った。次いで、常法に従って固液分離により油性成分(B)をろ別し、約100gのエタノールで粒子に付着した油性成分(B)を洗浄後、40℃、24hr真空乾燥して、生菌を含有する粒子状組成物を得た。得られた組成物の平均粒子径は256μmであり、生菌含有量は3.0×1010cfu/gであった。また、仕込んだ培養液中の生菌量と得られた粒子中の生菌含有量より算出した、粒子状組成物の製造における生菌の生存率(収率)は44.8%であった。
【0079】
(実施例3)
20.8gの蒸留水に、アラビアガム(コロイドナチュレル製)11.2gを40℃で溶解させ、水溶性賦形剤水溶液を作製した。この水溶性賦形剤水溶液を30℃に冷却した後にラクトバチルス・カゼイの培養液(1.8×1011cfu/mL)50mLを添加し、撹拌機にて混合して水相を調製した。
【0080】
調製した水相を、あらかじめ35℃に保温しておいた、MCT(理研ビタミン製アクターM−2)300gおよび界面活性剤(リゾレシチン)1.5gからなる油性成分に撹拌しながら添加し、油性成分中に水相を分散させた懸濁液を調製した。更に、上記懸濁液を35℃、圧力1.3kPaの減圧条件で3時間撹拌を継続して水分を除去するとともに、粒子形成を行った。次いで、常法に従って固液分離により油性成分をろ別し、約100gのエタノールで粒子に付着した油性成分を洗浄後、40℃、24hr真空乾燥して、生菌を含有する粒子状組成物を得た。得られた組成物の平均粒子径は230μmであり、生菌含有量は1.2×1011cfu/gであった。また、仕込んだ培養液中の生菌量と得られた粒子中の生菌含有量より算出した、粒子状組成物の製造における生菌の生存率(収率)は51.1%であった。
【0081】
(参考例1)
ラクトバチルス・ブレビスの培養液(1.2×1011cfu/mL)50mLを36hrかけて凍結乾燥処理し、7.5gの乾燥菌体を得た。この乾燥菌体を粗粉砕後、デキストリン(松谷化学製)50gを添加、混合し、乾燥生菌原末を得た。得られた乾燥生菌原末の生菌含有量は4.8×1010cfu/gであった。また、仕込んだ培養液中の生菌量と得られた原末中の生菌含有量より算出した、乾燥生菌原末の製造における生菌の生存率(収率)は46.0%であった。
【0082】
表1に実施例1〜3、および比較例1における実験条件と、得られた粒子状組成物の粒子径、生菌含量、生存率(収率)の測定結果を示す。
【0083】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性賦形剤、生菌および水を含有する水相を、油性成分中に懸濁させた後、油性成分中で水相中の水分を除去して固体状粒子を得ることを特徴とする、生菌含有粒子状組成物の製造方法。
【請求項2】
生菌の乾燥物、生菌を含有する培養液、生菌を懸濁した水溶液および湿生菌からなる群より選択される少なくとも1種類の生菌含有物を原料として使用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
生菌が、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母、麹菌、酢酸菌、酪酸菌、プロピオン酸菌および糖化菌からなる群より選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
水溶性賦形剤が、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ゼラチン、寒天、澱粉、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、カゼイン、カゼイン化合物、カードラン、アルギン酸類、糖類、プルラン、セルロース類、キサンタンガムおよびカルメロース塩からなる群より選択される少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
水相に、さらに親水性生理活性物質を含有させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
油性成分が、油脂5〜99.99重量%およびHLBが10以下の界面活性剤0.01〜95重量%を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
界面活性剤が、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリンエステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステルおよびレシチン類からなる群より選択される少なくとも1種類の、HLBが10以下の界面活性剤であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
得られる粒子状組成物中の生菌の生存率が、原料に使用した生菌数に対して10%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−168306(P2010−168306A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12153(P2009−12153)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】