説明

粒子線エピタキシャル装置、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、粒子線強度の制御方法、及び薄膜形成基板の製造方法

【課題】 基板及びその周辺に粒子線を照射することによって成膜を行う際に、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御できる粒子線強度の制御方法を提供する。
【解決手段】 分子線エピタキシャル装置に適用される分子線強度の制御方法は、原子吸光式成膜モニタによって分子線に含まれる原子数を測定する原子数測定工程S6・S7と、原子数測定工程S6・S7において測定した原子数を基に、基板上に照射される領域における分子線強度を算出する分子線強度算出工程S12と、分子線強度算出工程S12において算出した分子線強度と、所望の分子線強度とに基づいて、設定温度を算出する照射強度算出工程S13・S14と、照射強度算出工程S13・S14によって算出した設定温度に基づいて、粒子線源の加熱温度を制御する照射強度制御工程S5とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板及びその周辺に粒子線を照射することによって成膜を行う粒子線エピタキシャル装置、これを実現するプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、粒子線エピタキシャル装置において利用される粒子線強度の制御方法、及び粒子線強度の制御方法を利用した薄膜形成基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に所望の薄膜をエピタキシャル成長させる方法の1つに、分子線エピタキシャル法(以下、「MBE法」という)がある。このMBE法では、真空条件下で薄膜材料となる各種原子が含まれる坩堝を加熱し、各種原子を蒸発させる。そして、蒸発させた各種原子を分子線として基板上に照射する。ここで、薄膜形成の対象となる基板は、坩堝と同様に真空中に置かれ、適正な温度に保持される。
【0003】
MBE法を用いる装置の分子線照射部周辺は、主として、分子線材料を入れる坩堝、この坩堝を加熱するためのヒータ、坩堝の温度を測定するための熱電対、熱の逃げを防ぐためのラジエーションシールド、ヒータを加熱するための加熱源(ヒータ電源)、及び熱電対で得た温度信号を受けて加熱源の出力を制御する温度調節器等から構成される。ここで、分子線照射部から照射される分子線の照射強度は、坩堝の温度すなわち加熱源からヒータに投入される電力を調整することにより行われる。
【0004】
MBE法では、基板上に照射される分子線の強度が、エピタキシャル層の成膜速度(ひいては膜厚)に影響を及ぼす重要なパラメータとなる。また、基板上に異なる種類の原子からなる複数種類の薄膜を形成する場合は、複数種類の分子線をそれぞれ基板に対して照射することになるが、複数種類の分子線間における分子線強度比が薄膜の組成比に影響を及ぼす重要なパラメータとなる。従って、分子線照射部から照射される分子線の強度を精度良く、かつ再現性良く制御する必要性がある。
【0005】
分子線照射部から照射される分子線の強度を制御する方法としては、予め試験的に成膜を行い、その結果に基づいて坩堝の温度等の分子線照射部の条件を決定し、その条件に従って成膜を行う方法がある。
【0006】
しかしながら、この方法では、成膜を連続的に繰り返すうちに生じる成膜材料の減少や予期せず外乱等の変化に対応できないので、形成された薄膜の特性を安定させることが困難である。このような理由から、分子線強度の制御は成膜中に行う必要がある。
【0007】
分子線照射部から照射される分子線強度を成膜中に制御する方法としては、分子線が照射される領域に水晶振動子を設置し、水晶振動子に成膜される膜の厚さに対応した水晶振動子の共振振動数の変化を計測することによって照射される分子線量を測定し、その測定した分子線量から分子線強度を算出し、これを分子線照射部にフィードバックする方法がある。
【0008】
また、別の方法としては、四重極質量分析計に代表される質量分析計を分子線が照射される領域に設置し、分子線内の各種原子の比率を測定して、その測定データを各分子線照射部フィードバックする方法がある。
【0009】
しかしながら、上述した水晶振動子を用いる方法では、水晶振動子上に薄膜が形成されるために、水晶振動子の寿命が限られている。よって、一定量成膜する毎に水晶振動子を交換する必要がある。ところが、水晶振動子を交換するために成膜室を一旦開放してしまうと、特に分子線エピタキシャル装置(以下、「MBE装置」という)のように成膜室が超高真空となる装置では、再度超高真空状態に回復させるために煩雑な作業と長い時間を必要とする。このため、水晶振動子の交換作業を容易にできないという問題がある。
【0010】
また、上述した質量分析計を用いる方法では、質量分析計の質量検出部が分子線にさらされるために、感度が劣化してしまうという問題がある。
【0011】
これらの諸問題を解消した制御方法として、特許文献1には、成膜中に粒子線源から照射される粒子線量を所謂吸光法により測定し、その測定値を粒子線源にフィードバックして、粒子線源からの出射量を制御する方法が記載されている。
【0012】
この方法で用いられる原子吸光法とは、測定対象となる粒子の蒸気に対して、その粒子固有の波長を有するスペクトル光を照射し、蒸気を透過した光を光検出器で測定することによって実際に照射されている粒子線量を求めるものである。この測定方法によれば、測定器が直接粒子線(分子線)にさらされることがないので、上記の問題を克服することができる。
【0013】
このようにして粒子線源から照射される粒子線量を制御することによって、各材料の基板への成膜速度を所望の値に制御することがなされている。
【特許文献1】特公平5−4360号公報(昭和60年(1985)10月23日公開)
【特許文献2】特公平1−36977号公報(昭和60年(1985)4月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、基板への成膜速度を精度よく制御することができないという問題を有している。その理由について、一般的なMBE装置を用いて以下に説明する。
【0015】
MBE装置では、特許文献2に記載されているように、分子線投射密度が所謂余弦則で近似されることが知られている。余弦則とは、図3に示す坩堝の中心Aから、坩堝の軸線Bと角θをなす方向に、Rの距離にある点Dにおいて、単位時間に単位面積上に得られる膜厚Tは、次の式(1)のようになるというものである。
【0016】
膜厚 T=(K/R)×cos(nθ)・・・・・・(1)
ただし、K:比例常数、
n:坩堝入口Aから材料の液面中央までの距離をl、坩堝の内径半径をrとしたときに、l/rに応じて変化する値であり、
例えば、l/r=0のときn≒1、
l/r=2のときn≒4、
l/r=4のときn≒7、
l/r=10のときn≒10である。
【0017】
上記式(1)から、θ=0度となる坩堝の中心線上の位置C以外の点では、分子線強度が、分子線材料の残量減少(すなわち上記l値の増加)に伴って減少することが分かる。すなわち、分子線材料の残量の変化に伴って、坩堝24から照射される分子線の分子線強度分布が変化する。
【0018】
さらに、通常、MBE装置では同時に複数の材料を使用するために、分子線源の開口部を基板もしくは基板ホルダの中心に向けて放射状に構成することが多い。この場合、坩堝の軸線は地軸に対し傾斜するので分子線源の材料液面は坩堝の軸線に対し傾くことになる。液面が傾くと、特に坩堝が大口径で液面が入口に近接している場合は、分子線投射のパターンは軸線に対し非対象形となり式(1)で近似できなくなるが、分子線の強度分布が液面の低下に伴って激変することになる。
【0019】
上述した原子吸光法を用いる一般的な原子吸光式成膜モニタでは、原子吸光式成膜モニタの光源からの光が、その光路(すなわち、光源と光検出器を結ぶ光路であり、以下、「光パス」という)上にある測定対象の原子によって吸収される。このため、原子吸光式成膜モニタによって測定される原子数は、光パス上の全原子数となる。従って、この原子吸光式成膜モニタによって求められる分子線強度は、各領域に照射される分子線強度の平均値に相当する。
【0020】
ここで、特許文献1に記載されている制御方法によれば、原子吸光式成膜モニタの測定結果のみに基づいて分子線照射部を制御する。しかしながら、上述したように、分子線の強度分布は分子線材料の残量に応じて変化してしまう。よって、分子線照射部から照射される分子線強度を一定に保っても、基板上に照射される領域における分子線強度は一定とならない。つまり、分子線材料の残量を考慮せずに、原子吸光式成膜モニタによって測定された平均分子線強度のみに基づいて、基板上に照射される分子線の強度を精確に制御することはできない。
【0021】
このような理由から、特許文献1に記載された制御方法では、成膜速度が分子線材料の残量に応じて変化してしまい、基板上に精度よく薄膜を形成することができないという問題が発生する。この問題は、MBE装置に材料を充填した後、材料がなくなるまで成膜を連続して行う生産工程等において、特に大きな問題となる。
【0022】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御できる粒子線エピタキシャル装置及び粒子線の制御方法を提供することにある。
【0023】
また、本発明の別の目的は、上記の粒子線の制御方法によって基板上に精度よく薄膜が形成された薄膜形成基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る粒子線エピタキシャル装置は、基板及びその周辺に粒子線を照射することによって成膜を行う粒子線エピタキシャル装置であって、上記課題を解決するために、上記基板に向けて粒子線を照射する粒子線照射部と、上記粒子線照射部から照射された粒子線に含まれる粒子数を測定する粒子数測定部と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数を基に、上記粒子線照射部から照射された粒子線の、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出する粒子線強度算出手段と、上記粒子線強度算出手段によって算出された粒子線強度に基づいて、上記粒子線照射部の照射強度を制御する照射制御部とを備えていることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、粒子数測定部によって測定された値に基づいて、粒子線照射部から照射される粒子線の照射強度がフィードバック制御される。従って、本発明の粒子線エピタキシャル装置は、外乱に強い構成となっている。
【0026】
ところで、通常、粒子線照射部から照射される粒子線のうち、実際に基板上に照射される粒子線の割合は状況(例えば、粒子線材料の残量等)に応じて変化する。よって、粒子線照射部から照射された粒子線の強度を測定しても、実際に基板上に照射される粒子線の強度を精確に求めることはできない。
【0027】
しかしながら、本発明の粒子線エピタキシャル装置では、粒子線強度算出手段が、粒子数測定部によって測定された粒子数を基に、基板上に照射される領域(以下、「基板照射領域」という)における粒子線強度を算出するようになっている。そして、照射制御部が、算出された粒子線強度に基づいて、粒子線照射部の照射強度を制御する。よって、基板照射領域の粒子線強度が何らかの原因によって変化するような場合であっても、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御でき、ひいては基板上に精度よく薄膜を形成することができる。
【0028】
なお、本明細書において、「粒子」の語は、分子、原子、イオン、及びラジカルを総称する意味で使用される。
【0029】
また、上記の「粒子線強度」とは、単位時間あたりの粒子線量等、粒子線強度と実質的に同じ因子であってもよいのはいうまでもない。
【0030】
また、上記の「粒子線照射部の照射強度」は、照射する粒子線の強度そのものに限定されるものではなく、照射される粒子線の強度を決定する因子であってもよい。この因子としては、例えば、粒子線材料に対する加熱温度等が挙げられる。
【0031】
また、上記粒子線エピタキシャル装置は、上記粒子線照射部が有する粒子線材料の残量と相関する因子の情報と、粒子線の強度情報との対応情報である残量相関因子−強度対応情報を予め記憶している記憶部をさらに備え、上記粒子線強度算出手段が、上記記憶部に記憶されている残量相関因子−強度対応情報を参照することによって、測定又は算出によって得られた粒子線材料の残量と相関する因子の情報と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数とを基に、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出することが好ましい。
【0032】
基板照射領域に照射される粒子線の割合は、粒子線材料の残量に応じて変化する。ここで、残量相関因子−強度対応情報を予め有しておくことによって、粒子線材料の残量と相関する因子の情報(以下、「残量相関因子情報」という)を基に、基板照射領域における粒子線強度を算出することができる。従って、粒子線材料の残量に応じて基板照射領域に照射される粒子線の割合が変化しても、そのときに基板上に照射される粒子線の強度を精確に算出することができる。従って、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御でき、ひいては基板上に精度よく薄膜を形成することができる。
【0033】
なお、残量相関因子情報としては、粒子線材料の残量と相関するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、粒子線の累積照射量、粒子線材料の重さ等の残量そのものに関する情報、累積照射時間等の粒子線の照射時間に関する情報等が挙げられる。
【0034】
また、上記粒子線エピタキシャル装置は、上記残量相関因子−強度対応情報が、上記粒子線照射部が有する粒子線材料の残量情報と、粒子線の強度情報との対応情報である残量−強度対応情報であり、上記粒子線強度算出手段が、上記記憶部に記憶されている残量−強度対応情報を参照することによって、測定又は算出によって得られた粒子線材料の残量情報と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数とを基に、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するものであってもよい。
【0035】
上記構成によれば、粒子線エピタキシャル装置は、残量−強度率分布対応情報を有している。そして、この残量−強度対応情報を参照して、粒子線強度算出手段が粒子線材料の残量を基に、基板照射領域における粒子線強度を算出するようになっている。これにより、基板照射領域における粒子線強度を、粒子線材料の残量を考慮して算出することができる。よって、粒子線材料の残量の変化に伴って粒子線照射部から照射される粒子線の強度率分布が変化するような場合であっても、基板上に照射される粒子線の強度を精確に算出することができる。従って、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御でき、ひいては基板上に精度よく薄膜を形成することができる。
【0036】
また、上記構成によれば、粒子数測定工程において測定された値に基づいて、粒子線照射部から照射される粒子線の照射強度がフィードバック制御されている。従って、外乱に強い構成となっている。
【0037】
また、上記粒子線エピタキシャル装置は、上記粒子数測定部によって測定された粒子数に基づいて粒子線材料の残量を算出する残量算出手段をさらに備え、上記粒子線強度算出手段が上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するのに用いる粒子線材料の残量情報が、上記残量算出手段によって算出された粒子線材料の残量に基づくものであることが好ましい。
【0038】
上記構成によれば、残量算出手段が、照射された粒子線の累積粒子数に基づいて粒子線材料の残量を算出するので、粒子線材料の残量を測定する測定装置を必要としない。従って、小型化や低コスト化を実現することができる。
【0039】
また、上記粒子線エピタキシャル装置は、上記粒子線照射部の粒子線を照射した照射時間を計測する計時部をさらに備え、上記残量相関因子−強度対応情報が、上記粒子線照射部が粒子線を照射した照射時間情報と、粒子線の強度情報との対応情報である照射時間−強度対応情報であり、上記粒子線強度算出手段が、上記記憶部に記憶されている照射時間−強度対応情報を参照することによって、上記計時部によって計測された照射時間と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数とを基に、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するものであってもよい。
【0040】
基板に対する成膜速度が常に一定の値に制御される場合、基板照射領域における粒子線強度も常に一定となるように制御される。この場合、粒子線材料の残量は、粒子線の累積照射時間と相関する。よって、照射時間−強度対応情報を予め有していれば、累積照射時間を基に、そのときの基板照射領域における粒子線強度を算出することができる。
【0041】
上記構成によれば、残量算出手段が累積照射時間に基づいて粒子線材料の残量を算出するので、粒子線材料の残量を測定する測定装置を必要としない。従って、小型化や低コスト化を実現することができる。
【0042】
また、上記粒子線エピタキシャル装置は、上記粒子線照射部及び上記粒子数測定部を複数セット備え、各粒子数測定部が、対応する粒子線照射部から照射される粒子数を測定し、上記粒子線強度算出手段及び上記照射制御部が、上記複数の粒子線照射部のそれぞれについて上記処理を行うものであることが好ましい。
【0043】
上記構成によれば、複数の粒子線照射部を備え、基板上に照射される粒子線の強度を各粒子線照射部について個別に精度よく制御できる。よって、粒子線照射部に異なる種類の粒子線材料を用いることによって、粒子の組成比が精度よく制御された薄膜や、各層の膜厚が精度よく制御された多層薄膜を基板上に形成することができる。
【0044】
ところで、上記粒子線エピタキシャル装置の各手段は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、上記何れかの粒子線エピタキシャル装置の各手段としてコンピュータを動作させるためのプログラムであり、また、本発明に係る記録媒体は、当該プログラムが記録された記録媒体である。
【0045】
これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、上記粒子線エピタキシャル装置の各手段として動作する。従って、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御できる粒子線エピタキシャル装置を実現することができる。
【0046】
本発明に係る粒子線強度の制御方法は、基板及びその周辺に粒子線を照射することによって成膜を行う際の、粒子線強度の制御方法であって、上記課題を解決するために、照射した粒子線の粒子数を測定する粒子数測定工程と、上記粒子数測定工程において測定した粒子数を基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出する粒子線強度算出工程と、上記粒子線強度算出工程において算出した粒子線強度に基づいて、照射する粒子線の照射強度を制御する照射強度制御工程とを含んでいることを特徴とする。
【0047】
上記構成によれば、粒子線強度算出工程では、粒子数測定工程において測定した粒子数を基に、基板照射領域における粒子線強度を算出する。そして、照射制御工程では、この粒子線強度に基づいて照射強度を制御する。このように、本発明の粒子線強度の制御方法では、照射強度を制御する際に、全領域の平均粒子線強度に基づいてではなく、基板照射領域の粒子線強度に基づいて制御する。よって、基板照射領域における粒子線の強度が何らかの原因によって変化するような場合であっても、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御できる。
【0048】
また、上記粒子線強度の制御方法は、上記粒子線強度算出工程が、上記粒子数測定工程において測定した粒子数と、粒子線材料の残量と相関する因子とを基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するものであることが好ましい。
【0049】
上記構成によれば、基板照射領域における粒子線強度を、粒子線材料の残量と相関する因子に応じて求めることができる。よって、粒子線材料の残量の変化に伴って粒子線照射部から照射される粒子線の強度分布が変化するような場合であっても、基板上に照射される粒子線の強度を精確に算出することができる。従って、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御できる。
【0050】
また、上記粒子線強度の制御方法は、上記粒子線材料の残量と相関する因子が、粒子線材料の残量であり、上記粒子数測定工程において測定した粒子数に基づいて粒子線材料の残量を算出する残量算出工程をさらに含み、上記粒子線強度算出工程が、上記粒子数測定工程において測定した粒子数と、上記残量算出工程において算出した粒子線材料の残量とを基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するもの
であってもよい。
【0051】
上記構成によれば、粒子線材料の残量を、粒子数測定工程において測定した粒子数に基づいて算出する。よって、基板照射領域における粒子線強度を、粒子線材料の残量に応じて求めることができる。
【0052】
また、上記粒子線強度の制御方法は、上記粒子線材料の残量と相関する因子が、粒子線の照射時間であり、上記粒子線強度算出工程が、上記粒子数測定工程において測定した粒子数と、粒子線の照射時間とを基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するものであってもよい。
【0053】
上記構成によれば、基板照射領域における粒子線強度を、累積照射時間に応じて算出することができる。ここで、累積照射時間は、粒子線材料の残量と相関する因子である。よって、粒子線材料の残量の変化に伴って粒子線照射部から照射される粒子線の強度分布が変化するような場合であっても、基板上に照射される粒子線の強度を精確に算出することができる。
【0054】
また、本発明に係る薄膜形成基板の製造方法は、基板に対して粒子線を照射する粒子線照射工程と、上記何れかの粒子線強度の制御方法によって、上記粒子線照射工程において照射する粒子線の粒子線強度を制御する粒子線強度制御工程とを含んでいることを特徴とする。
【0055】
上記構成によれば、基板上に照射する粒子線の強度を精度よく制御できるので、基板上に精度よく薄膜が形成された薄膜形成基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明に係る粒子線エピタキシャル装置は、基板に向けて粒子線を照射する粒子線照射部と、上記粒子線照射部から照射された粒子線に含まれる粒子数を測定する粒子数測定部と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数を基に、上記粒子線照射部から照射された粒子線の、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出する粒子線強度算出手段と、上記粒子線強度算出手段によって算出された粒子線強度に基づいて、上記粒子線照射部の照射強度を制御する照射制御部とを備えた構成となっている。従って、上述したように、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御でき、ひいては基板上に精度よく薄膜を形成できるという効果を奏する。
【0057】
また、本発明に係るプログラムは、上記粒子線エピタキシャル装置の各手段としてコンピュータを動作させるためのプログラムであり、また、本発明に係る記録媒体は、当該プログラムが記録された記録媒体である。従って、上述したように、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御でき、ひいては基板上に精度よく薄膜を形成できる粒子線エピタキシャル装置を実現できるという効果を奏する。
【0058】
また、本発明に係る粒子線強度の制御方法は、照射した粒子線の粒子数を測定する粒子数測定工程と、上記粒子数測定工程において測定した粒子数を基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出する粒子線強度算出工程と、上記粒子線強度算出工程において算出した粒子線強度に基づいて、照射する粒子線の照射強度を制御する照射強度制御工程とを含んだ構成となっている。従って、上述したように、基板上に照射される粒子線の強度を精度よく制御できるという効果を奏する。
【0059】
また、本発明に係る薄膜形成基板の製造方法は、基板に対して粒子線を照射する粒子線照射工程と、上記何れかの粒子線強度の制御方法によって、上記粒子線照射工程において照射する粒子線の粒子線強度を制御する粒子線強度制御工程とを含んだ構成となっている。従って、上述したように、基板上に精度よく薄膜が形成された薄膜形成基板を製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
〔実施形態1〕
本発明に係る粒子線エピタキシャル装置及び粒子線強度の制御方法の一実施形態について、図1,2,4,5,6,7を用いて説明すれば以下の通りである。本実施形態では、粒子線エピタキシャル装置の一実施形態である分子線エピタキシャル装置(以下、「MBE装置」という)によって基板上に多層膜のエピタキシャル成長を実施する例を用いて説明する。なお、本実施形態のMBE装置は、基板及びその周辺に分子線を照射することによって当該基板上に薄膜を形成するものである。また、本MBE装置は、分子線の照射強度をフィードバック制御しているので、外乱に強い構成となっている。
【0061】
図4は、本実施形態のMBE装置1の要部構成を示す概略構成図である。ただし、図4においては、原子吸光式成膜モニタを除く各種測定装置及び排気装置等の記載を省略している。MBE装置1は、主として、真空容器26、光源ユニット37及び受光ユニット38を備える原子吸光式成膜モニタ(粒子数測定部)、温度制御部(照射制御部)32、演算処理装置39、及び記憶部42を備えている。
【0062】
真空容器26内には、薄膜を形成する基板34を回転させるマニピュレータ33、各種元素の分子線源(粒子線照射部)31a・31b、及びシャッタ28a・28bが設けられている。
【0063】
分子線源31a・31bは、基板34に向けて分子線を照射するものであり、分子線源31aと分子線源31bとは、異なる種類の分子線を照射するものである。分子線源31a・32bは、それぞれヒータ29a・29b、及び坩堝30a・30bを備えている。坩堝の中には、蒸発して分子線となる各種材料が入っている。そして、ヒータ29a・29bが坩堝30a・30bを加熱することにより、坩堝の中の分子線材料が蒸発もしくは昇華して、分子線35が基板34及びその周辺に向けて照射される。
【0064】
また、それぞれの分子線源31a・31bに対して、シャッタ28a・28bが設けられており、シャッタ28a・28bの開閉によって、分子線源31a・31bから基板に分子線が照射されるか否かを切り換えている。図4に示すように、シャッタ28bが開かれると、分子線源31bからの分子線35が基板に向けて照射される。これにより、基板34上に、分子線源31bの坩堝30b内の材料による薄膜が形成される。
【0065】
なお、基板34に向けて照射される分子線の強度は、坩堝30a・30bの温度によって決定される。坩堝30a・30bの温度は、近傍に設置された図示しない熱電対等によって随時測定されており、温度制御部32がヒータ29a・29bの出力を制御することによって調節されている。温度制御部32は、具体的には、ヒータ29a・29bに供給する電力を調節することによって、ヒータ29a・29bの出力を制御している。
【0066】
なお、本実施形態では分子線源の制御は温度によって行っており、その加熱はヒータ29a・29bで行っているが、ヒータ29a・29bの代わりに各種熱源からの輻射、レーザ照射などの加熱手段を備えていてもよい。また、この場合においても、同様の方法によって制御することができる。
【0067】
図2は、分子線源31aとその周辺部の構成を示す概略図である。分子線源31aとその周辺部は、図2に示すように、主として、分子線材料25を入れる坩堝30a、この坩堝を加熱するためのヒータ29a、坩堝温度を測定するための熱電対22、熱の逃げを防ぐためのラジエーションシールド18、及び熱電対22で得た温度信号を受けてヒータ29aの加熱温度を制御するための温度制御部32等から構成される。ここで、分子線源31aから照射される分子線の照射強度は、坩堝30aの温度、すなわち温度制御部32がヒータ29aに投入する電力を調整することにより行われている。なお、分子線源31bも同様の構成となっている。
【0068】
以上のように、本実施形態のMBE装置1は、複数の分子線源を備え、複数種類の分子線を独立制御して照射することができるようになっている。これにより、基板34に異なる複数種類の薄膜を順次形成することができる。
【0069】
本実施形態のMBE装置1は、分子線源31a・31bから照射された分子線に含まれる原子数を測定するために、原子吸光式成膜モニタを備えている。原子吸光式成膜モニタは、分子線源から照射された分子線に対して光を照射し、吸光度を測定することによって、その分子線に含まれる原子数を測定するものである。より具体的に説明すると、原子吸光式成膜モニタは、光源ユニット37及び受光ユニット38を備えている。光源ユニット37は、分子線材料に対応したスペクトル光を発光するホロカソードランプを備えており、これにより、分子線材料に対応したスペクトル光を照射することができる。また、受光ユニット38は、光源ユニット37から照射されたスペクトル光を受光する光検出器を備えており、これにより、光源ユニット37から照射されたスペクトル光の強度を検出することができる。
【0070】
光源ユニット37からのスペクトル光は、真空容器26に設けられた光学窓27aから真空容器内に導入される。導入されたスペクトル光は、光パス36上に存在する測定対象の分子線に含まれる原子によりスペクトル光の一部が吸収される。ここで、スペクトル光の吸収量は、分子線に含まれる原子数と相関する。そして、一部が吸収されたスペクトル光は、真空容器26に設けられた光学窓27bから真空容器26外に導出され、受光ユニット38に入射する。この入射したスペクトル光は、光検出器にて光強度が検出され、検出した光強度から光吸収量(吸光度)が算出される。この光吸収量に基づいて、分子線源31a・31bから照射される分子線に含まれる原子数が算出される。
【0071】
なお、原子吸光式成膜モニタは、分子線の種類に対応したホロカソードランプとそこから発する光を光検出器に導く光学装置とのセットを、MBE装置1に備えられる分子線源の数だけ有しており、同時に照射される複数の分子線の光吸収量を個別に測定することが可能となっている。すなわち、本実施形態のMBE装置1は、分子線源の数だけ原子吸光式成膜モニタを備えているともいえる。
【0072】
演算処理装置39は、分子線源31a・31bから照射される分子線の強度を制御するために各種演算を行うためのものである。また、記憶部42は、演算処理装置39において各種演算を行う際に必要なデータを記憶しておくためのものである。演算処理装置39及び記憶部42の機能について詳細に説明すると以下の通りである。
【0073】
図5は、本実施形態のMBE装置1の機能ブロック図である。図5に示すように、演算装置39は、残量算出部(残量算出手段)51、分子線強度算出部(粒子線強度算出手段)52、及び温度算出部(照射強度算出手段)53を備えている。また、記憶部42は、データベース40を備えており、データベース40には、残量−強度率分布対応テーブル(残量−強度対応情報)41が格納されている。
【0074】
残量算出部53は、原子吸光式成膜モニタ(粒子数測定部)37・38によって測定された原子数(粒子数)とその照射時間とに基づいて、分子線材料(粒子線材料)の残量を算出するものである。上述したように、分子線源31a・31bから照射される分子線に含まれる原子数は、原子吸光式成膜モニタ37・38によって測定される。すなわち、原子吸光式成膜モニタ37・38で照射される分子線をモニタリングすることによって、分子線源31a・31bの分子線材料の残量を求めることが可能となっている。
【0075】
例えば、予備実験等により、原子吸光式成膜モニタ37・38によって得られた累積原子数と分子線材料の残量との関係を、関数又はテーブルとして予め取得しておく。実際の成膜時には、残量算出部53は、原子吸光式成膜モニタ37・38によって測定された原子数を照射時間により累積計算する。そして、累積計算によって得られた累積原子数から、上記の関数又はテーブルを用いて分子線材料の残量を算出する。
【0076】
なお、本実施形態では、分子線源31a・31bの分子線材料の残量を算出によって求めているが、分子線源31a・31bが保有する分子線材料の重量等をセンサ等で計測することによって求めてもよい。
【0077】
残量−強度率分布対応テーブル41は、分子線源31a・31bが有する分子線材料の残量と、分子線源31a・31bから照射される分子線の強度率分布との対応情報を含むものである。強度率分布とは、分子線照射部31a・31bから照射された分子線が、どのような率(割合)で各領域に分布する(配分される)かを示すものである。
【0078】
例えば、分子線照射部31a・31bから照射された分子線が、領域A,B,Cに照射されるとすると、「領域A50%、領域B20%、領域C30%」というような情報が強度率分布である。この例では、照射された分子線のうち、50%が領域Aに分配され、20%が領域Bに分配され、30%が領域Cに分配されることが分かる。従って、分子線全体の強度が分かれば、各領域に照射される局所的な分子線強度を求めることができる。本実施形態では、強度率分布によって、基板上に照射される領域(以下、「基板照射領域」という)に分配される分子線の率を求めることができる。
【0079】
また、残量−強度率分布対応テーブル41は、分子線材料の残量と強度率分布との対応情報をテーブルにしたものであるので、これにより、照射された分子線のうち、基板34上に照射される領域にどれだけ分配されるかを、分子線材料の残量に応じて算出することができる。
【0080】
なお、残量−強度率分布対応テーブル41は、本MBE装置1又はこれと同型のMBE装置において、残量と、その時の強度率分布とを予め実際に測定することによって作成される。強度率分布は、複数の位置で分子線強度を測定することによって得られる。ここで、分子線強度の測定は、例えばイオンゲージ等の、真空容器26内で分子線強度を測定できる機器を用いて行われる。また、残量−強度率分布対応テーブル41は、MBE装置10が備えている複数の分子線源のそれぞれについて個別に作成される。さらに、分子線強度率分布は、分子線材料の残量が上限から下限になるまでの複数の時点において測定される。
【0081】
なお、上記の残量−強度率分布対応テーブル41は一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、残量−強度率分布対応テーブル41の代わりに、別の情報を備えていてもよい。別の情報として、分子線源の材料残量と分子線強度との対応情報を有しており、分子線源の材料残量を基に、基板照射領域における分子線強度を求められるものであってもよい。
【0082】
分子線強度算出部52は、原子吸光式成膜モニタ(粒子数測定部)37・38によって測定された原子数(粒子数)を基に、分子線源(粒子線照射部)31a・31bから照射された分子線(粒子線)の、基板照射領域における分子線強度(粒子線強度)を算出するものである。
【0083】
具体的には、分子線強度算出部52は、残量算出部53によって算出された分子線材料の残量を用いて残量−強度率分布対応テーブル41をルックアップ(参照)し、その残量に対応する強度率分布を検索する。また、原子吸光式成膜モニタ37・38によって測定された原子数から、分子線源31a・31bから照射される分子線の平均分子線強度を算出する。そして、検索した強度率分布と算出した分子線強度とから、基板34上に照射される領域における分子線強度を算出する。
【0084】
温度算出部53は、分子線強度算出部(粒子線強度算出手段)52によって算出された分子線強度(粒子線強度)と、所望の分子線強度(粒子線強度)とに基づいて、分子線源31a・31bの加熱温度(粒子線照射部における粒子線の照射強度)を算出するものである。具体的には、温度算出部53は、分子線源31a・31bから照射される分子線の照射強度に対してフィードバック制御を行うための、次段階の加熱温度を算出する。
【0085】
なお、本実施形態では、残量算出部51、分子線強度算出部52、及び温度算出部53を同一の演算処理装置39によって実現しているが、個別の演算処理装置によって実現してもよい。また、残量算出部51、分子線強度算出部52、及び温度算出部53は、専用IC等のハードウェアのみによって構成されていてもよいし、CPU、メモリ、及びプログラムの組み合わせのように、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0086】
次に、本実施形態のMBE装置の動作について説明すると以下の通りである。図1は、本実施形態のMBE装置1の成膜工程を示すフロー図である。
【0087】
まず、成膜される基板34を真空容器26内に導入する(ステップS1)。
【0088】
次に、基板34に対して分子線を照射する分子線源31a及び/又は31bを選択する(ステップS2)。そして、選択した分子線源内の坩堝30a及び/又は30bを、初期温度にする(ステップS3)。具体的には、分子線源31a及び/又は31bが初期温度になるように、温度制御部32が分子線源の温度を制御する。この初期温度は、条件設定試験やその後の調整によって決定される。このステップにより、分子線の照射準備が完了する。
【0089】
続いて、照射する分子線源31a及び/又は31bに対応するシャッター28a及び/又は28bを開放する(ステップS4)。これにより、基板34に対して、選択した分子線源からの分子線の照射が開示される。
【0090】
次に、照射する分子線の照射強度を制御する。具体的には、照射に用いる分子線源内の坩堝30a及び/又は30bが設定温度になるように、温度制御部32が分子線源31a・31bを制御する(ステップS5)。ここで、制御に用いられる設定温度は、後述するステップS14で算出された値となっている。なお、第1段階においては、上記の初期温度が設定温度となる。このステップは、照射強度制御工程に相当する。
【0091】
続いて、照射した分子線に含まれる原子数を測定する。具体的には、原子吸光式成膜モニタ37・38が、基板照射領域と基板外に照射される領域(以下、「基板外照射領域」という)との双方に延在する光パス36上にスペクトル光を照射し、分子線による吸光量を算出する(ステップS6)。そして測定した吸光量に基づいて光パス36上に存在する原子数を算出する(ステップS7)。ここで、原子吸光式成膜モニタ37・38が測定する領域は、必ずしも分子線の全領域である必要はなく、後の工程において、基板上に照射される分子線の強度を算出するのに最低限必要な領域を含んでいればよい。これらのステップS6・S7は、原子数測定工程(粒子数測定工程)に相当する。
【0092】
次に、ステップS7において算出された原子数に基づいて、分子線材料の残量を算出する。具体的には、残量算出部51が、ステップS7において算出された原子数を累積計算し(ステップS8)、上述した方法によって分子線材料の残量を求める(ステップS9)。これらのステップS8・S9は、残量算出工程に相当する。
【0093】
続いて、成膜を終了するかどうかを判断する(ステップS10)。成膜の終了は、基板34上に薄膜が所定の厚みだけ形成されたかどうかに基づいて判断される。例えば、基板34上に照射された分子線に含まれる原子数を累積計算しておき、計算した累積原子数が所望の値に到達した場合に、成膜を終了してもよい。ここで、成膜を終了する場合は、ステップ15に進む。一方、成膜を続行する場合は、ステップ11に進む。
【0094】
成膜を続行する場合、残量−強度率分布対応テーブル41を参照することによって、ステップS9で算出された分子線材料の残量を基に、分子線の強度率分布を検索する(ステップS11)。そして、検索した分子線の強度率分布と、ステップS7において算出した分子線に含まれる原子数とを基に、基板照射領域における分子線強度を算出する(ステップS12)。より具体的には、分子線強度算出部52が、ステップS9で測定された光パス36上の原子数から、照射されている分子線の平均分子線強度を算出する。また、分子線強度算出部52は、残量−強度率分布対応テーブル41を参照することによって、ステップS9において算出した分子線材料の残量から、その残量における分子線強度率分布を検索する。そして、分子線強度算出部52は、先ほどの平均分子線強度と分子線強度率分布とから、基板照射領域における局所的な分子線強度を算出する。これらのステップS11・S12は、分子線強度算出工程(粒子線強度算出工程)に相当する。
【0095】
次に、算出された分子線強度に基づいて、照射強度を調節するための設定温度を算出する。より具体的には、算出された分子線強度が所望の分子線強度と一致するかどうかを、温度算出部53が比較する(ステップS13)。ここで、算出された分子線強度が所望の分子線強度と一致しない場合は、算出された分子線強度が所望の分子線強度と一致するように、現在の設定温度情報を補正して、新たな設定温度情報を算出する(ステップS14)。例えば、現在、基板上に照射されている領域の分子線強度が所望の分子線強度よりも大きい場合、加熱温度を現在の加熱温度よりも低い温度に設定する。これにより、基板照射領域の分子線強度が小さくなり、所望の分子線強度に近づくことになる。また、算出された分子線強度が所望の分子線強度と一致する場合、現在の設定温度情報を、そのまま新たな設定温度情報とする。そして、温度制御部53は、算出した新たな設定温度情報を温度制御部32に送信する。これらのステップS13・S14は、照射強度算出工程に相当する。
【0096】
ステップS14の次は、ステップS5となる。このように、本実施形態の分子線強度の制御方法では、照射される分子線強度情報を用いてフィードバック制御を行っている。これにより、基板上に照射される分子線強度が所望の値になるよう調節されている。
【0097】
一方、ステップ10において成膜の終了が判断された場合は、現在の基板に対して、全ての薄膜層が形成されたかどうかを判断する(ステップS15)。ここで、全ての薄膜層が形成されておらず、次の薄膜層を形成する場合は、ステップS2に戻って新たな薄膜を形成するための分子線源を選択する。また、全ての薄膜層が形成されている場合は、メンテナンス時期かどうかを判断する(ステップS16)。メンテナンス時期は、例えば、分子線材料の残量や、分子線による真空容器26内の汚れ等によって判断される。
【0098】
次に、分子線材料の残量と分子線強度との関係、及び分子線強度の制御方法を具体例に基いて説明する。図7は、光パス36に沿った、分子線の強度分布を示す図である。強度分布46は、分子線材料の残量が多いときの強度分布を示しており、強度分布47は、分子線材料の残量が少ないときの強度分布を示している。
【0099】
図7(a)に示すように、強度分布46、強度分布47ともに、基板照射領域である基板エリア49における分子線強度が、基板外エリアにおける分子線強度に比べて大きくなっている。しかしながら、強度分布47では、基板エリア49と基板外エリアとの間での分子線強度の格差が、強度分布46の場合よりも大きくなっている。
【0100】
従来の方法では、原子吸光式成膜モニタによって測定した光パス36上の原子数のみに基づいて分子線の加熱温度を調節する。具体的には、測定した原子数から平均分子線強度を算出し、この平均分子線強度が常に一定になるように、坩堝30a・30bの温度を調節する。
【0101】
しかしながら、図7(a)に示すように、分子線の強度分布は、分子線材料の残量に応じて変化する。ここで、平均分子線強度を一定に保つ場合、分子線材料の残量が多い場合と少ない場合との強度分布の関係は、図7(a)に示す強度分布46と強度分布47との関係となる。すなわち、平均分子線強度は同じであるものの、基板エリア49における分子線強度は、強度分布47の方が強度分布46よりも大きくなっている。このように、分子線材料の残量が少なくなってくると基板エリア49における分子線強度が増すため、成膜速度が一定にはならない。具体的には、図6(b)に示すように、成膜時間とともに成膜速度が上昇する。
【0102】
これに対して、本実施形態のMBE装置1は、残量−強度率分布対応テーブルを有しており、ここから、図7(a)に示すような、分子線強度分布を算出することができる。そして、基板エリア49における平均分子線強度が一定となるようにフィードバック制御を行う。一例として、基板エリア49における現在の平均分子線強度が、残量の多いときの値に近づくように制御することが挙げられる。なお、この例では、「基板エリア49における残量の多いときの平均分子線強度」が、ステップS13で述べた「所望の分子線強度」に相当する。この場合、図7(b)に示す強度分布47が、強度分布48になるように加熱温度を下げる。これにより、基板エリア49における平均分子線強度は、残量の多寡に関わらず同じ値となる。従って、図6(a)に示すように、基板上における成膜速度が一定になる。
【0103】
以上のように、本実施形態の分子線強度の制御方法によれば、基板上に照射される分子線の強度を、材料残量の多寡、もしくは成膜中の材料残量の減少に関わらず精度よく制御できる。そして、本実施形態のMBE装置によれば、基板上に照射される分子線の強度を、材料残量の多寡、もしくは成膜中の材料残量の減少に関わらず精度よく制御でき、ひいては基板上に精度よく薄膜を形成できる。
【0104】
また、基板に対して分子線(粒子線)を照射する分子線照射工程(粒子線照射工程)と、上記の分子線強度(粒子線強度)の制御方法によって、分子線照射工程(粒子線照射工程)において照射する分子線の分子線強度を制御する照射強度制御工程(照射強度制御工程)とを組み合わせることによって、薄膜形成基板を製造することができる。
【0105】
なお、本実施形態では分子線を照射するMBE装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、粒子線を照射する粒子線照射装置であればよい。
【0106】
また、上記実施形態のMBE装置1の残量算出部51、分子線強度算出部52、及び温度算出部53や各処理ステップは、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボード等の入力手段、ディスプレイ等の出力手段、及び/又はインターフェース回路等の通信手段を制御することにより実現することができる。従って、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行することによって、本実施形態のMBE装置の残量算出部51、分子線強度算出部52、温度算出部53、及び各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の残量算出部51、分子線強度算出部52、及び温度算出部53及び各種処理を実現することができる。
【0107】
上記の記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理を行うためのメモリ、例えばROMのようなものであっても良いし、あるいは、外部記憶装置に挿入することにより読み取り可能な記録媒体であっても良い。
【0108】
また、何れの場合でも、記録媒体に記録されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行できる構成であることが好ましい。さらに、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされ、実行される構成であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0109】
また、上記記録媒体としては、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD/MO/MD/DVD等のディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する記録媒体等が挙げられる。
【0110】
また、インターネットを含む通信ネットワークに接続できるシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードして、流動的にプログラムを担持できる記録媒体であることが好ましい。
【0111】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものであるか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0112】
ところで、本実施形態に記載した分子線の制御方法は、異なる観点から見れば、分子線エピタキシャル成長による成膜において、分子線源から基板周辺に向けて照射される原子の数量を原子吸光法により計測し、さらにその計測結果に、あらかじめデータベースに蓄積されたデータに基づく計算処理を施すことで、基板に照射される原子の数量を算出し、その算出された原子の数量を、分子線源が備えている加熱ヒータなどの成膜材料の加熱手段の制御装置にフィードバックすることで成膜速度制御を行うものであるともいえる。
【0113】
そして、データベースに蓄積されているデータがあらかじめ計測してある分子線源内の成膜材料の残量に対応した分子線強度分布であり、そのデータは分子線源内の材料残量を算出した後にデータベースから呼び出され、呼び出された分布データに基づいて、基板に照射される原子の数量を算出することが好ましい。
【0114】
さらに、データベースに蓄積されているデータがあらかじめ計測してある分子線源の累積使用時間に応じた分子線強度分布であり、そのデータは分子線源の累積使用時間を算出した後にデータベースから呼び出され、呼び出された分布データに基づいて、基板に照射される原子の数量を算出することが好ましい。
【0115】
また、本実施形態のMBE装置は、異なる観点から見れば、分子線源の材料を入れる容器、容器を加熱する加熱手段を含む少なくとも1個の坩堝と坩堝から発生する分子線のオン・オフを行う開閉手段と、エピタキシャル膜を堆積すべき基板を保持する基板保持手段と、該基板に照射される原子の数量を計測する原子吸光式成膜モニタを具備する分子線エピタキシャル装置において、上記のデータベースと上記の計算手段により分子線源の制御信号を計算する計算処理装置を備え、計算処理装置の出力に応じて上記加熱手段を制御するものであるともいえる。
【0116】
〔実施形態2〕
本発明に係る粒子線エピタキシャル装置及び粒子線強度の制御方法の他の実施形態について、図8,9を用いて説明すれば以下の通りである。なお、説明の簡略化のため、上述の〔実施形態1〕で説明した部材と同じ機能を有する部材や同じステップについては、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0117】
図9に示すように、本実施形態のMBE装置2は、残量算出部51の代わりに計時部54を備えている点において、上述の〔実施形態1〕のMBE装置1と異なっている。また、データベース40には、照射時間−強度率分布対応テーブル56が記憶されている。
【0118】
本実施形態のMBE装置2は、基板上への成膜速度が常に一定になるように分子線を照射する。そして、基板照射領域における分子線強度を、分子線源が分子線を照射した累積時間に基づいて算出する。
【0119】
照射時間−強度率分布対応テーブル56は、分子線源の累積照射時間と強度率分布との対応情報を含むものである。本実施形態のMBE装置2では、基板照射領域における分子線強度が常に一定に保たれている。よって、分子線材料は、常に同じ減少過程をたどることになる。従って、累積照射時間と強度率分布との関係を予め取得しておき、これをテーブルにしておけば、累積照射時間を基に、そのときの強度率分布を求めることができる。
【0120】
なお、照射時間−強度率分布対応テーブル56は、本実施形態のMBE装置2又はこれと同型のMBE装置において予め測定を行うことによって作成される。また、強度率分布は、複数の位置で分子線強度を測定することによって行われる。ここで、分子線強度の測定は、例えばイオンゲージ等の、真空容器26内で分子線強度を測定できる機器を用いて行われる。また、照射時間−強度率分布対応テーブル41は、MBE装置が備えている複数の分子線源のそれぞれについて個別に作成される。さらに、分子線強度率分布は、分子線源からの照射開始後、複数の時点において測定される。
【0121】
計時部54は、分子線源31a・31bの照射時間を計測するものである。また、分子線強度算出部55は、照射時間−強度率分布対応テーブル41を参照することによって、計時部54によって計測された照射時間と、原子吸光式成膜モニタ37・38によって測定された原子数とを基に、基板照射領域における分子線強度を算出するものである。具体的には、分子線強度算出部55は、計時部54によって測定された照射時間を累積計算し、各分子線源の累積照射時間を算出する。そして、累積照射時間を用いて照射時間−強度率分布対応テーブル56をルックアップ(参照)し、累積照射時間に対応する強度率分布を検索する。また、原子吸光式成膜モニタ37・38によって測定された原子数から、分子線源31a・31bから照射される分子線の平均分子線強度を算出する。そして、検索した強度率分布と算出した分子線強度とから、基板34上に照射される領域における分子線強度を算出する。
【0122】
次に、本実施形態のMBE装置2の動作について説明する。ステップS7までは、〔実施形態1〕と同じである。
【0123】
ステップS7の後、計時部54から得られた照射時間に基づいて、分子線強度算出部55が累積照射時間を算出する(ステップS17)。続いて、成膜を終了するかどうかを判断する(ステップS10)。ここで、成膜が終了しない場合は、強度率分布の検索を行う(ステップS18)。
【0124】
具体的には、照射時間−強度率分布対応テーブル56を参照することによって、ステップS17で算出された累積照射時間を基に、分子線の強度率分布を検索する。そして、検索した分子線の強度率分布と、ステップS7において算出した分子線に含まれる原子数とを基に、基板照射領域における分子線強度を算出する(ステップS12)。以降は、〔実施形態1〕と同じである。
【0125】
本実施形態のMBE装置2は、分子線材料の残量と相関する因子として、分子線源の累積照射時間を用いている。この構成は、分子線源の使用時間から分子線の強度分布が直接関係付けることが可能な場合について有効である。このような場合としては、分子線源に材料を充填してから材料を使い切るまでの間、常に分子線強度の目標値が一定であるような場合が挙げられる。
【0126】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、基板に対して粒子線を照射する粒子線エピタキシャル装置、例えば、薄膜形成に用いられる分子線エピタキシャル装置等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、分子線エピタキシャル装置の処理工程を示すフロー図である。
【図2】分子線エピタキシャル装置の分子線源周辺の概略構成図である。
【図3】分子線エピタキシャル装置から照射される分子線の照射範囲を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであり、分子線エピタキシャル装置の概略構成図である。
【図5】図1の分子線エピタキシャル装置の要部構成を示すブロック図である。
【図6】成膜時間と成膜速度との関係を示す図である。
【図7】分子線エピタキシャル装置から照射される分子線の強度分布を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態を示すものであり、分子線エピタキシャル装置の処理工程を示すフロー図である。
【図9】図8の分子線エピタキシャル装置の要部構成を示すブロック図である
【符号の説明】
【0129】
1,2 分子線エピタキシャル装置(粒子線エピタキシャル装置)
31a,31b 分子線源(粒子線照射部)
32 温度制御部(照射制御部)
37,38 原子吸光式成膜モニタ(粒子数測定部)
41 残量−強度率分布対応テーブル(残量相関因子−強度対応情報、残量−強度対応情報)
42 記憶部
49 基板エリア(基板上に照射される領域)
51 残量算出部(残量算出手段)
52,55 分子線強度算出部(粒子線強度算出手段)
53 温度算出部(照射強度算出手段)
54 計時部
56 照射時間−強度率分布対応テーブル(残量相関因子−強度対応情報、照射時間−強度対応情報)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及びその周辺に粒子線を照射することによって成膜を行う粒子線エピタキシャル装置であって、
上記基板に向けて粒子線を照射する粒子線照射部と、
上記粒子線照射部から照射された粒子線に含まれる粒子数を測定する粒子数測定部と、
上記粒子数測定部によって測定された粒子数を基に、上記粒子線照射部から照射された粒子線の、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出する粒子線強度算出手段と、
上記粒子線強度算出手段によって算出された粒子線強度に基づいて、上記粒子線照射部の照射強度を制御する照射制御部とを備えていることを特徴とする、粒子線エピタキシャル装置。
【請求項2】
上記粒子線照射部が有する粒子線材料の残量と相関する因子の情報と、粒子線の強度情報との対応情報である残量相関因子−強度対応情報を予め記憶している記憶部をさらに備え、
上記粒子線強度算出手段が、上記記憶部に記憶されている残量相関因子−強度対応情報を参照することによって、測定又は算出によって得られた粒子線材料の残量と相関する因子の情報と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数とを基に、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出することを特徴とする、請求項1に記載の粒子線エピタキシャル装置。
【請求項3】
上記残量相関因子−強度対応情報が、上記粒子線照射部が有する粒子線材料の残量情報と、粒子線の強度情報との対応情報である残量−強度対応情報であり、
上記粒子線強度算出手段が、上記記憶部に記憶されている残量−強度対応情報を参照することによって、測定又は算出によって得られた粒子線材料の残量情報と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数とを基に、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出することを特徴とする、請求項2に記載の粒子線エピタキシャル装置。
【請求項4】
上記粒子数測定部によって測定された粒子数に基づいて粒子線材料の残量を算出する残量算出手段をさらに備え、
上記粒子線強度算出手段が上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するのに用いる粒子線材料の残量情報が、上記残量算出手段によって算出された粒子線材料の残量に基づくものであることを特徴とする、請求項3に記載の粒子線エピタキシャル装置。
【請求項5】
上記粒子線照射部の粒子線を照射した照射時間を計測する計時部をさらに備え、
上記残量相関因子−強度対応情報が、上記粒子線照射部が粒子線を照射した照射時間情報と、粒子線の強度情報との対応情報である照射時間−強度対応情報であり、
上記粒子線強度算出手段が、上記記憶部に記憶されている照射時間−強度対応情報を参照することによって、上記計時部によって計測された照射時間と、上記粒子数測定部によって測定された粒子数とを基に、上記基板上に照射される領域における粒子線強度を算出することを特徴とする、請求項2に記載の粒子線エピタキシャル装置。
【請求項6】
上記粒子線照射部及び上記粒子数測定部を複数セット備え、
各粒子数測定部が、対応する粒子線照射部から照射される粒子数を測定し、
上記粒子線強度算出手段及び上記照射制御部が、上記複数の粒子線照射部のそれぞれについて上記処理を行うことを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の粒子線エピタキシャル装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の各手段として、コンピュータを動作させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項9】
基板及びその周辺に粒子線を照射することによって成膜を行う際の、粒子線強度の制御方法であって、
照射した粒子線の粒子数を測定する粒子数測定工程と、
上記粒子数測定工程において測定した粒子数を基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出する粒子線強度算出工程と、
上記粒子線強度算出工程において算出した粒子線強度に基づいて、照射する粒子線の照射強度を制御する照射強度制御工程とを含んでいることを特徴とする、粒子線強度の制御方法。
【請求項10】
上記粒子線強度算出工程が、上記粒子数測定工程において測定した粒子数と、粒子線材料の残量と相関する因子とを基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するものであることを特徴とする、請求項9に記載の粒子線強度の制御方法。
【請求項11】
上記粒子線材料の残量と相関する因子が、粒子線材料の残量であり、
上記粒子数測定工程において測定した粒子数に基づいて粒子線材料の残量を算出する残量算出工程をさらに含み、
上記粒子線強度算出工程が、上記粒子数測定工程において測定した粒子数と、上記残量算出工程において算出した粒子線材料の残量とを基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するものであることを特徴とする、請求項10に記載の粒子線強度の制御方法。
【請求項12】
上記粒子線材料の残量と相関する因子が、粒子線の照射時間であり、
上記粒子線強度算出工程が、上記粒子数測定工程において測定した粒子数と、粒子線の照射時間とを基に、照射した粒子線の、基板上に照射される領域における粒子線強度を算出するものであることを特徴とする、請求項10に記載の粒子線強度の制御方法。
【請求項13】
基板に対して粒子線を照射する粒子線照射工程と、
請求項9から12の何れか1項に記載の粒子線強度の制御方法によって、上記粒子線照射工程において照射する粒子線の粒子線強度を制御する粒子線強度制御工程とを含んでいることを特徴とする薄膜形成基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−84402(P2007−84402A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277681(P2005−277681)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】