説明

粒子線ビーム照射装置

【課題】粒子線ビームの走査範囲や照射時間を拡大することなく患部の深さ方向の全域に渡って所望の線量分布平坦度を確保することができる粒子線ビーム照射装置を提供する。
【解決手段】粒子線ビーム照射装置は、ビーム走査部と、粒子線ビームのビーム幅を所定のビーム幅に拡大する散乱体と、粒子線ビームの体内飛程を、患部のビーム進行方向の大きさに合わせて分散し拡大するビーム飛程拡大装置と、粒子線ビームの最深体内飛程を、患部の奥側の外郭形状に合致させる補償フィルタと、ビーム進行方向と直交する面における患部の外周形状の外側へのビーム照射を遮蔽するコリメータと、ビーム進行方向と直交する面における線量分布の平坦度を測定する平坦度モニタと、を備え、各構成品は、患部に近い方から、補償フィルタ、コリメータ、ビーム飛程拡大装置、平坦度モニタ、散乱体、ビーム走査部、の順に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素などの重粒子線ビームや陽子ビームなどを患部に照射し、がん治療を行う粒子線ビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の日本国において、がんは死因として最も多いものであり、毎年30万人以上の国民がなくなっている。このような状況の中、治療効果の高さや副作用の少なさなどの優れた特徴を有する、炭素ビームや陽子ビームを用いた粒子線治療法が注目されている。この治療法は、加速器から出射された粒子線ビームをがん細胞に照射することで、正常細胞に与える影響を小さくしながら、がん細胞を死滅させることができる。
【0003】
この治療法において、現在、国内で使用されている粒子線照射方法は、ワブラー法と呼ばれる方法である(非特許文献1−3等参照)。このワブラー法は、散乱体を用いて粒子線ビームのビームサイズ(ビームのスポット径)を拡大し、拡大した粒子線ビームを電磁石(ワブラー電磁石と呼ばれる)によってターゲット(患部)の領域よりやや広い領域に亘って走査することにより平坦な線量分布を形成するものである。ワブラー法は、粒子線ビームの走査方法によって、通常ワブラー法(単円ワブラー法)とらせんワブラー法に大別される。通常ワブラー法は粒子線ビームを単円に沿って走査する方法であり、らせんワブラー法は粒子線ビームをスパイラル状に走査する方法である。
【0004】
ワブラー法では、線量分布を患部サイズ以上に拡大したのち、多葉コリメータと呼ばれる真ちゅう製あるいは鉄製のコリメータにより照射領域を制限することにより、患部形状に合致させて照射を行う。また、ビーム進行方向(ビーム軸方向)にはリッジフィルタと呼ばれるビーム飛程拡大装置を設けている。リッジフィルタによってビーム軸方向のエネルギーの幅を患部のビーム軸方向の幅まで拡大する。その後、ボーラスと呼ばれるポリエチレン製の補償フィルタによってビーム停止位置を深い位置での患部形状(外郭)に合致させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Irradiation System for HIMAC, Masami TORIKOSHI et al., Journal of Radiation Research, Vol. 48 (2007), Suppl.A, May 19, 2007.
【非特許文献2】Commissioning of conformal irradiation system for heavy-ion radiotherapy using a layer-stacking method, Tatsuaki Kanai et al., Medical Physics 33 (8), August 2006.
【非特許文献3】Optimization of Spiral-Wobbler System for Heavy-Ion Radiotherapy, Masataka KOMORI et al., Japanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No.9A, 2004, pp. 6463-6467.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワブラー法では、患部領域における線量分布平坦度を確保するために、ビーム断面方向の患部サイズに対して、ビームサイズ(ビームのスポット径)やビーム走査範囲を調整する必要がある。ワブラー法の場合、ビーム走査範囲をワブラー半径で表すことができる。ワブラー半径は、通常ワブラー法の場合円の半径であり、らせんワブラー法の場合にはスパイラルの最大半径である。
【0007】
患部位置におけるビームサイズが常に一定であれば、そのビームサイズを前提として比較的簡単にビーム走査範囲を調整することができる。しかしながら、実際には、リッジフィルタの影響を受けて、患部の深さ方向の位置によってビームサイズが異なってくる。
【0008】
リッジフィルタは、粒子線ビームが通過するパス長を所定の幅内で変化させ、粒子線ビームに対する減衰特性を所定の幅内で変化させる装置である。リッジフィルタのうち、パス長の短い領域を通過した粒子線ビームの成分は、減衰が少ないため患部の深い位置に達し、パス長の長い領域を通過した粒子線ビームの成分は、減衰が大きいため患部の浅い位置に留まる。
【0009】
患部の深い位置に達する粒子線ビームの成分は、リッジフィルタの通過パス長が短いため、リッジフィルタであまり散乱を受けず、ビームサイズはそれ程変化しない。これに対して、患部の浅い位置における粒子線ビームの成分は、リッジフィルタの通過パス長が長いため、リッジフィルタによって大きく散乱の影響を受け、ビームサイズが拡大する。つまり、リッジフィルタの影響により、患部の深い位置と浅い位置とでビームサイズが異なってくる。このため、患部の深い位置と浅い位置での、線量分布平坦度を確保するための条件が異なり、患部領域全域にわたって線量分布の平坦度(通常は±2.5%以内)を確保するのが難しくなる。
【0010】
この問題を解決するため、通常は患部の浅い位置に対して線量分布平坦度を確保できるよう条件を合わせることが行われる。患部の浅い位置ではビームサイズが大きいため、平坦度を確保するにはより大きな範囲をビーム走査することになる。
【0011】
患部サイズに対して大きな範囲をビーム走査することは、患部に照射されるビーム量の割合(ビーム利用効率)が低下することになり、照射時間の増大をもたらす。また、粒子線ビームを走査するためのワブラー電磁石を励磁する電源(ワブラー電源)に対して要求される出力電流値が大きくなり、コストアップをもたらす。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、粒子線ビームの走査範囲や照射時間を拡大することなく、患部の深さ方向の全域に渡って所望の線量分布平坦度を確保することができる粒子線ビーム照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る粒子線ビーム照射装置は、粒子線ビームをビーム進行方向と直交する方向に走査するビーム走査部と、前記粒子線ビームのビーム幅を所定のビーム幅に拡大する散乱体と、前記粒子線ビームの体内飛程を、患部のビーム進行方向の大きさに合わせて分散し拡大するビーム飛程拡大装置と、体内飛程が分散、拡大された前記粒子線ビームの最深体内飛程を、前記患部の奥側の外郭形状に合致させる補償フィルタと、前記ビーム進行方向と直交する面における前記患部の外周形状の外側へのビーム照射を遮蔽するコリメータと、前記ビーム進行方向と直交する面における線量分布の平坦度を測定する平坦度モニタと、を備え、前記各構成品は、前記患部に近い方から、前記補償フィルタ、前記コリメータ、前記ビーム飛程拡大装置、前記平坦度モニタ、前記散乱体、前記ビーム走査部、の順に配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る粒子線ビーム照射装置によれば、粒子線ビームの走査範囲や照射時間を拡大することなく、患部の深さ方向の全域に渡って所望の線量分布平坦度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の粒子線ビーム照射装置の構成と、粒子線ビーム照射時の各構成品の配置を示す図。
【図2】従来の粒子線ビーム照射装置の構成と、患部の位置合わせ時の各構成品の配置を示す図。
【図3】らせんワブラー法のビーム走査パタンの一例を示す図。
【図4】リッジフィルタを通過する粒子線ビームの成分と通過パスの関係を模式的に示す図。
【図5】リッジフィルタの影響によって、患部の最深位置と最浅位置とで線量分布の形状が大きく異なるという、従来の問題点を説明する図。
【図6】本発明の一実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の構成と、粒子線ビーム照射時の各構成品の配置を示す図。
【図7】本発明の一実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の構成と、患部の位置合わせ時の各構成品の配置を示す図。
【図8】本発明の一実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の構成と各構成品の配置によって得られる効果を説明する第1の図。
【図9】本発明の一実施形態に係る粒子線ビーム照射装置の構成と各構成品の配置によって得られる効果を説明する第2の図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る粒子線ビーム照射装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0017】
(1)従来の粒子線ビーム照射装置とビーム照射方法
図1は、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1に対する比較例として、従来の粒子線ビーム照射装置100の構成を示す図である。
【0018】
粒子線ビーム照射装置100は、正線量計2、副線量計3、X用ワブラー電磁石4、Y用ワブラー電磁石5、散乱体6、中性子シャッタ7、リッジフィルタ(ビーム飛程拡大装置)8、レンジシフタ(ビーム飛程調整装置)9、平坦度モニタ10、ビーム位置モニタ11、X線管12、X線駆動機構13、4枚ばねコリメータ14、多葉コリメータ15、ボーラス(補償フィルタ)16、フラット・パネル・ディテクタ(FPD)17等を備えて構成されている。
【0019】
サイクロトロン等の加速器を具備する粒子線ビーム生成装置(図示せず)で生成された粒子線ビームは、正線量計2を透過する。
【0020】
正線量計2は、照射する線量を測定するためのものである。正線量計2の検出部としては、筐体内にて粒子線の電離作用により生じた電荷を平行電極で収集する電離箱や、筐体内に配置された二次電子放出膜から放出される二次電子を計測するSEM装置などが用いられる。正線量計2と同じ構成をもつ副線量計3が正線量計2の下流側に配置されており、正線量計2のバックアップとして用いられる。例えば、正線量計2と副線量計3で検出する線量の値が異なれば異常が発生したとしてインターロック信号が発せられ、粒子線ビームの照射を停止する。
【0021】
X用およびY用ワブラー電磁石4、5は、ワブラー電磁石4、5に入射した粒子線ビームを、ビーム進行方向(ビーム軸方向)と直行する面に2次元(X方向、Y方向)で走査する。X用およびY用ワブラー電磁石4、5でビーム走査部を構成する。粒子線ビームの走査位置(X、Y)は、ワブラー電磁石4、5の夫々に接続されたワブラー電源(図示せず)の出力電流を制御することで設定される。
【0022】
散乱体6は、ターゲット(患部50)位置においてビームを適切なビームサイズ(ビームのスポット径)に拡大するためのものであり、鉛やタンタルなどの重金属の膜で構成されている。
【0023】
中性子シャッタ7は、治療室60と前室61(X用およびY用ワブラー電磁石4、5等が配置される部屋)とを仕切る壁63に埋め込まれており、必要なとき(治療を行うとき)以外はシャッタを閉じることでビームを遮断し、治療室60内の患者や医療スタッフの安全を確保している。
【0024】
リッジフィルタ(ビーム飛程拡大装置)8は、粒子線ビームの体内飛程を、患部50のビーム軸方向の大きさに合わせて分散し拡大する。単エネルギー粒子線ビームは非常にシャープな体内深さ方向のピーク線量をもつ。このピーク線量はブラッグピークと呼ばれる。リッジフィルタ8は、患部50のビーム軸方向の大きさ(長さ)に対応するようにブラッグピークを分散し拡大するためのものである。リッジフィルタ8は、アルミニウム製の棒片(バー)が複数並べられて構成されている。これら棒片はほぼ二等辺三角形の形状を持ち、この棒片を粒子線ビームが通過するときの経路長の違いによって、ビーム停止位置、即ち体内飛程が変化するようになっている。リッジフィルタ8は、通常ワブラー法およびらせんワブラー法で共通のものが使用される。ただし、後述する積層原体照射法と呼ばれる方法のためのリッジフィルタは、スライス間隔に合わせてビーム飛程を拡大するため、高さの短い棒片のリッジフィルタが使用される。
【0025】
レンジシフタ(体内飛程調整装置)9は、体内患部50内のビーム軸方向の位置(Z)を調整する。リッジフィルタ8で体内飛程が拡大されている場合、患部50の最も深い位置(最深体内飛程)がレンジシフタ9で調整されることになる。レンジシフタ9は、複数の厚さのアクリル板から構成されており、これらアクリル板を組み合わせることによりレンジシフタ9を通過するビームエネルギー、すなわち体内飛程を調整する。この体内飛程の調整はサイクロトロン等の粒子線ビーム生成装置側でも行うことができるが、微調整はレンジシフタ9を用いる方が簡単であるため、もっぱらレンジシフタが用いられる。
【0026】
上述したワブラー法は、患部50全体を一度に照射する方法であるが、これに対して積層原体照射法は、患部50をビーム軸方向の複数のスライスに分割し、スライス毎に順次ビーム照射を行う方法である。積層原体照射法の場合、スライスの位置に合わせてレンジシフタのアクリル板の挿入厚を順次段階的に変化させながら照射する。
【0027】
平坦度モニタ10は、照射ビームが平坦な線量分布を形成しているか否かを確認するためのモニタである。粒子線ビームの照射中(治療中)は、図1に示すように粒子線ビームの経路上に配置される。
【0028】
一方、ビーム位置モニタ11は、治療開始前などにワブラー電磁石4,5に電流を流さない条件でビーム位置が正しいことを確認するためのモニタである。
【0029】
また、X線管12はX線を発生させ、患者の奥側に対向して設置されるFPD17により患者の透視画像を取得することによって、患者の患部50が正しい位置に設置できているか否かを確認する。
【0030】
平坦度モニタ10、ビーム位置モニタ11、およびX線管12は同一の駆動機構(X線管駆動機構13)に取り付けられ、ビーム照射時、ビーム位置確認時、および透視画像撮影時の夫々に応じて配置を替えて使用される。
【0031】
4枚ばねコリメータ14および多葉コリメータ15(両者を合わせて単にコリメータと呼ぶ場合もある)は、ビーム進行方法と直交する面における患部50の外周形状の外側へのビーム照射を遮蔽するためのものである。
【0032】
多葉コリメータ15は、厚さ3mm程度の真ちゅう製あるいは鉄製のリーフを多数組み合わせたものであり、各リーフの位置を電動あるいはエアシリンダで調整することにより、患部形状に合わせて開閉することができる。
【0033】
4枚バネコリメータ14は、多葉コリメータ15のリーフの隙間からビームがもれ出るのを抑制するためのコリメータである。
【0034】
なお、積層原体照射法の場合は多葉コリメータ15および4枚バネコリメータ14はスライス毎に位置を変更しながら照射される。
【0035】
ボーラス(補償フィルタ)16は、ポリエチレン製のブロックの内側が患部形状に合わせて繰りぬかれたものである。ボーラス16によってビーム停止位置(最深体内飛程)を患部50の奥側の外郭形状に合致させている。
【0036】
上述した各構成品を用いて粒子線ビームの照射が行われる。以下では、ワブラー照射法のうち、らせんワブラー法の手順について概略説明する。
【0037】
まず、治療台(図示なし)に患者を載せ、患者の患部50の中央がビーム軸中心(アイソセンター51)にくるよう治療台を移動する。
【0038】
続いて、図2に示すように、X線管駆動機構13を用いてX線管12をビーム軸上に配置し、患者に対してX線管12が対向する位置にFPD17を配置する。そして、X線管12とFPD17を用いて患部周辺のX線透視画像を取得して、そのX線透視画像とあらかじめ取得しておいた参照画像と比較する。X線透視画像の患部50に位置と、参照画像の患部50の位置が一致していれば位置決めは終了する。一方、位置にずれがあればずれ分だけ治療台を移動(ずれ補正)する。治療台を移動するたびにX線透視画像を取得して参照画像との比較し、患部50の位置が一致するまでずれ補正を行う。
【0039】
患者の位置決めが終了すると、患部の最深位置(最深体内飛程)に合わせて加速器から出射されるビームエネルギーが選ばれる。このビームエネルギーに対して、加速器を形成する多数の電磁石の電流値を設定する必要があるので、通常は数点の設定値のなかから選ばれる。そして、最深体内飛程の微調整(0.5mm程度の調整)はビーム飛程調整装置であるレンジシフタ9の挿入厚を調整することによって行われる。
【0040】
並行して、患部50のビーム軸方向の長さの最大値に対応させて体内飛程を深さ方向に拡大するため、数種類あるリッジフィルタの中から一つのリッジフィルタ8が選択される。
【0041】
また、患部形状をもとに製作されたボーラス(補償フィルタ)16を多葉コリメータ15のビーム下流側に取り付ける。その後、患部50のビーム断面形状に対応させて多葉コリメータ15の開口形状が設定される。
【0042】
また、患部50のビーム断面形状を十分覆うように、散乱体6の厚さと、ワブラー法によってビームを走査する範囲の最大半径(この最大半径をワブラー半径と呼ぶ)が設定される。ビームの走査は図示しないワブラー電源(X、Y)のあらかじめ決められた出力電流波形にしたがって行われ、ビームを走査する最大半径とビームエネルギーに紐付けられた係数をあらかじめ決められた出力電流波形に積算することで各々の患部50ビーム断面サイズに適用する。
【0043】
らせんワブラー法では、ワブラー電磁石で走査されるビームが描く軌道は、以下の(式1)〜(式3)となる(非特許文献3)。
【数1】

【0044】
ここで、Fはビーム軌道の水平成分と垂直成分、Tは径方向の動作周期、ωは回転の各周波数、nは整数である。また、Aはワブラー半径、Rは照射野径(半径)、σはビームサイズである。
【0045】
図3は、らせんワブラー法によるビーム走査の概念を示す図である。らせんワブラー軌道としては、(式1)−(式3)の軌道を修正したものも使用することができるが、その場合にも本発明が適用可能であり、同様の効果が得られるため、説明は省略する。
【0046】
次に散乱体6の厚さの設定を行う。散乱体の厚さは、患部の最深位置でビームサイズが標準偏差σ≧2.5cmになるように設定される。ビームサイズがσ<2.5cmでは形成される線量分布の平坦度が低下する。つまり、粒子線ビームのピークでの線量とビームとビームの間の位置での線量との差が大きくなり、線量分布に許容範囲以上の凹凸が生じる。他方、ビームサイズが2.5cmより大きい場合は、平坦度±2.5%以内という基準は確保できるものの、ビームサイズが大きくなるにしたがって、同じビーム軌道に対して平坦度を確保できる範囲が小さくなる。
【0047】
上記のような各構成品に対する設定が完了すると、加速器からは設定されたエネルギーの粒子線ビームが出射され、患部50に対する照射が行われる。
【0048】
患者位置決め後には平坦度モニタ10がビーム軸上に移動され、照射時において患部に照射されるビームが形成する分布の平坦度を監視する。万一、平坦度に異常があれば、インターロック信号を出力する。加速器はインターロック信号を受信するとビーム出射を停止するようになっている。
【0049】
患部50に照射される線量は正線量計2で計測され、あらかじめ設定された線量に達すると粒子線ビームの出射が停止され、照射が完了する。
【0050】
このような装置構成・手順で照射されるらせんワブラー法において、次のような問題がある。
【0051】
図4は、リッジフィルタ8を通過するビーム成分を図示したものである。リッジフィルタ8は、パスAで示したようにリッジフィルタ8のバー80をほとんど通過しない成分から、パスBで示したようにリッジフィルタ8のバー80をすべて通過する成分までを混ぜ合わせることによってビームの体内飛程を分散し、拡大している。パスAを通る成分は損失が最も少なく、患部50の最深位置に達するビーム成分である。一方、パスBを通る成分は損失が最も大きく、患部50の最も浅い位置に達するビーム成分である。
【0052】
粒子線ビームがリッジフィルタ8のバー80を通過する間に散乱を受けるが、パスBはバー80を通る距離が最も長いため散乱の影響を最も受け、この成分(患部50の最浅位置のビーム成分)のビームサイズが最も広がってしまうことになる。一方、パスAはバーを通る距離が最も短いため散乱の影響を最も受けず、この成分(患部50の最深位置のビーム成分)のビームサイズの広がりは最も小さい。
【0053】
このため、図5に示すように、患部の最深位置での線量分布と、最浅位置での線量分布とでは異なった分布形状を示すことになる。図5から判るように、最深位置での線量分布は中心部をほとんどが平坦な領域となるが、最浅位置での線量分布は、中心部の平坦な領域が少なく両端に向かって緩やかな傾斜で減少する傾向を示す。つまり、患部50の最浅位置での平坦度は、最深位置の平坦度よりも低い。
【0054】
患部50の浅い位置から深い位置まで、所定の平坦度を確保するためには、平坦度の低い方の線量分布、即ち、最浅位置での線量分布の平坦度が所定の基準を満たすように、ワブラー半径Aを(式1)〜(式3)から決めざるを得ない。
【0055】
このため、大きなワブラー半径をもって照射野分布を形成する必要がある。大きなワブラー半径を得るためにワブラー電源の出力電流値を大きくする必要があり、電源コストが高くなってしまう。
【0056】
また、図5から判るように、患部領域に比べてワブラー半径、すなわちビームが走査される範囲が大きいため、患部領域に照射される粒子線ビームの割合(ビーム利用効率)が小さくなってしまう。この結果、照射時間の長時間化をもたらすことになる。
【0057】
他方、積層原体照射法は、前述したように、患部を深さ方向に複数個の領域(スライス)に分割し、スライス毎に多葉コリメータの形状を調整して模擬的に3次元的な照射を行う方法である。積層原体照射法による照射装置およびその構成は図1と同じであるが、リッジフィルタは積層原体照射法用のものに変更する。これは、積層原体照射法ではスライス幅分だけビーム軸方向に拡大するためである。
【0058】
積層原体照射法における照射の手順は以下のとおりである。なお、ここではビームの拡大はらせんワブラー法により行われるものとする。
【0059】
患者の位置決めから各構成品の設定が完了するまでの手順は概ね上述と同様である。ただし、リッジフィルタ8は積層原体照射用のものが選択され、レンジシフタ9は最深スライスにビームが停止するよう設定される。また、多葉コリメータ15は最深スライスの形状に合わせて設定される。
【0060】
各構成品の設定が完了すると、加速器からは設定されたエネルギーのビームが出射され、患部の最深スライスの照射が行われる。このとき、最深スライスに照射される線量は正線量計2で計測され、あらかじめ設定された線量に達するとビームの出射が停止され、スライスの切り換えが行われる。
【0061】
スライスの切り換えでは、次のスライスの位置に対応するようレンジシフタ9の設定が行われ、また次のスライスの形状に合わせて多葉コリメータ15の開口形状が変更される。これらが完了後に再度、ビームの出射が開始され、正線量計2の監視のもと、該当するスライスに対してあらかじめ設定された線量の照射が行われる。順次、この手順を患部50の長さ方向の全領域にわたり行っていく。
【0062】
このような手順で照射される積層原体照射においても、前述した問題と類似した次のような問題がある。
【0063】
患部50の最も浅い位置を照射するときには、レンジシフタ9の挿入厚が大きくなっている。一方、患部50の最も深い位置を照射するときには、レンジシフタ9の挿入厚は小さくなっている。このため、患部50の最深位置でのビームサイズに比べて患部の最も浅い位置でのビームサイズは大きくなってしまう。このため、前述した問題と同様に、患部50の最浅位置での平坦度は、最深位置の平坦度よりも低くなり、患部50の浅い位置から深い位置まで、所定の平坦度を確保するためには、最浅位置での線量分布の平坦度が所定の基準を満たすように、ワブラー半径Aを(式1)〜(式3)から決めざるを得ない。
【0064】
このため、前述の問題と同様に、大きなワブラー半径をもって照射野分布を形成する必要があり、ワブラー電源の出力電流値増大に伴って電源コストが高くなってしまう。また、ビーム利用効率も小さく、照射時間が長くなる。
【0065】
(2)本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置とビーム照射方法
図6は、本発明の実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1の構成を示す図である。図6に示す各構成品の種類や数は、従来の粒子線ビーム照射装置100(図1)と同じであり、対応する構成品には同じ符号を付している。
【0066】
本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1と、従来の粒子線ビーム照射装置100との第1の相違点は、各構成品の配置順序にある。
【0067】
従来の粒子線ビーム照射装置100では、粒子線ビーム照射中の各構成品は、図1(或は非特許文献1のFig.2)に示すように、患部50に近い方から、ボーラス(補償フィルタ)16、コリメータ(多葉コリメータ15、4枚ばねコリメータ14)、平坦度モニタ10、レンジシフタ(ビーム飛程調整装置)9、リッジフィルタ(ビーム飛程拡大装置)8、散乱体6、ビーム走査部の順に配置されている。
【0068】
これに対して、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、図6に示すように、患部50に近い方から、ボーラス(補償フィルタ)16、コリメータ(多葉コリメータ15、4枚ばねコリメータ14)、リッジフィルタ(ビーム飛程拡大装置)8、レンジシフタ(ビーム飛程調整装置)9、平坦度モニタ10、散乱体6、ビーム走査部の順に配置されている。また、リッジフィルタ8は可能なかぎりコリメータに近接させて配置している。
【0069】
粒子線ビーム照射装置1の配置の要点は、リッジフィルタ8を可能な限り患部50に近づけ、リッジフィルタ8と患部50との距離が極力小さくなるようにしている点である。
【0070】
ボーラス(補償フィルタ)16とコリメータ(多葉コリメータ15、4枚ばねコリメータ14)は、粒子線ビームの照射範囲を患部50の形状に精度よく合致させる必要性から、患部50に再接近させて配置せざるを得ないが、リッジフィルタ8をコリメータの次に配置し、リッジフィルタ8をコリメータに近接させることにより、リッジフィルタ8と患部50との距離が最大限小さくなるようにしている。
【0071】
また、従来の粒子線ビーム照射装置100では、レンジシフタ9はリッジフィルタ8よりも患部50に近い位置に配置されているが、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、この順序を逆にして、リッジフィルタ8をレンジシフタ9よりも患部50に近い位置に配置している。
【0072】
本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1と、従来の粒子線ビーム照射装置100との第2の相違点は、患部50の位置決め時におけるX線管12とFPD17の位置である。
【0073】
従来の粒子線ビーム照射装置100では、図2に示すように、X線管12は、レンジシフタ9とコリメータとの間に配置されおり、FPD17は粒子線ビームの照射元から見て患者50の奥側に配置されている。これに対して、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、この位置関係を逆転させ、患者の奥側にX線管12を配置し、患者50とコリメータの間にFPD17を配置する構成としている。この結果、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、患者50を中心としたX線管12とFPD17との距離を、従来の粒子線ビーム照射装置100よりも近づけることができる。
【0074】
本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1を用いて粒子線ビームの照射(ワブラー法)を行う手順について以下に説明する。
【0075】
まず、治療台(図示せず)に患者を載せ、患者の患部50の中央がビーム軸中心(アイソセンター51)にくるよう治療台を移動する。
【0076】
続いて、駆動機構(図示せず)を用いてボーラス(補償フィルタ)16とFPD17を移動させ、FPD17を多葉コリメータ15後方のビーム軸上に配備する(図7参照)。そして、X線管12とFPD17を用いて患部50周辺のX線透視画像を取得して、その透視画像とあらかじめ取得しておいた参照画像とを比較する。取得した透視画像の患部50の位置が参照画像の患部50の位置と一致していれば位置決めは終了する。一方、両者の患部50の位置にずれがあればずれ分だけ治療台を移動(ずれ補正)する。治療台を移動するたびにX線透視画像を取得し、参照画像との比較し、位置が一致するまでずれ補正を行う
このようにして位置決めが完了すると、駆動機構を用いてFPD17を多葉コリメータ16の後方の位置から退避させ、替わりにボーラス(補償フィルタ)16を多葉コリメータ16の後方のビーム軸上の位置へ移動させる(図6参照)。
【0077】
各構成品に対する設定の手順、および粒子線ビームの照射開始から照射終了までの手順は前述した従来の粒子線ビーム照射装置100に対する手順と同じであり、説明を省略する。
【0078】
本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、リッジフィルタ8を可能な限り患部50に近づけ、リッジフィルタ8と患部50との距離が極力小さくなるようにしている。
【0079】
一方、前述したように、粒子線ビームはリッジフィルタ8を通過する間に散乱を受け、患部50の最浅位置のビーム成分はビームサイズが最も広がり、患部50の最深位置のビーム成分のビームサイズの広がりは最も小さい。より具体的には、リッジフィルタ8のバー80のうち、通過パスの長い領域を通るビーム成分(患部50の浅い位置を照射するビーム成分)は大きな散乱を受けてビーム幅が広がり、通過パスの短い領域を通るビーム成分(患部50の深い位置を照射するビーム成分)はあまり散乱を受けないため、ビーム幅の広がりも小さい。
【0080】
図8は、リッジフィルタ8によって広がったビーム幅と、患部50の位置におけるビームサイズ(ビームのスポット径)との関係を模式的に示したものである。
【0081】
従来の粒子線ビーム照射装置100では、図8(a)に示すように、リッジフィルタ8から患部50までの距離が大きいため、ビーム幅の広がりの差異の影響を大きく受け、患部50の最浅位置でのビームサイズと最深位置でのビームサイズとの差は大きく異なる。
【0082】
これに対して、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、図8(b)に示すように、リッジフィルタ8から患部50までの距離が小さいため、ビーム幅の広がりの差異の影響をほとんど受けず、患部50の最浅位置でのビームサイズと最深位置でのビームサイズはほとんど同じとなる。
【0083】
この結果、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、図9に示すように、患部の最深位置での線量分布と、最浅位置での線量分布とで、ほぼ同じ分布形状を示すことになる。また、患部50の領域全域にわたって、最深位置の線量分布と最浅位置の線量分布はいずれも良好な平坦度を確保できるようになる。
【0084】
このため、必要となるワブラー半径は従来の粒子線ビーム照射装置100で必要とされたワブラー半径(図5参照)よりも小さくなり、ワブラー半径を与えるためのワブラー電源の出力電流値も小さくなり、電源コストを小さくすることができる。
【0085】
また、患部領域とワブラー半径、すなわちビームが走査される範囲の差異が小さくなるため、患部領域に照射される粒子線ビームの割合(ビーム利用効率)も小さくなり、照射時間を短縮することができる。
【0086】
一方、積層原体照射法では、レンジシフタ9の挿入厚を調整することによってスライス位置を調整するが、レンジシフタ9の挿入厚によってビームの散乱の程度が異なり、患部の浅い位置のスライスに照射するときの方が、患部の深い位置のスライスに照射するときに比べるとビーム幅は大きくなる。しかしながら、本実施形態に係る粒子線ビーム照射装置1では、レンジシフタ9の位置も従来の粒子線ビーム照射装置100に比べると、患部50に近い位置に配置されている。このため、リッジフィルタ8を患部50に近づけて配置することのよって得られる上記の効果と同様の効果が、レンジシフタ9を患部50に近づけて配置することによっても得られる。
【0087】
リッジフィルタ8とレンジシフタ9はともにビームを散乱し、患部位置におけるビームサイズを大きくするようにはたらく。しかしながら、レンジシフタ9はアクリル等の有機材料が使用されるので散乱効果はそれ程大きくない。これに対して、リッジフィルタ8は、アルミニウムなどの金属で構成されており、散乱効果はレンジシフタ9に比べると大きい。したがって、患部50に近い位置にリッジフィルタ8を配置し、そのビーム上流にレンジシフタ9を配置した方が、散乱効果の大きなリッジフィルタ8をより患部50に近づけることが可能となり、患部50の最浅位置と最深位置におけるビームサイズの差をより小さくすることができる。
【0088】
さらに、本実施形態における粒子線ビーム照射装置1では、図7に示したように、患部50の位置あわせ時に、多葉コリメータ15に近接してそのビーム下流側にFPD17を配置し、患者を挟んでFPD17と逆側にX線管12を配置している。FPD17とX線管12の配置をこのようにすることによって、従来に比べてFPD17とX線管12との間の距離を短くすることができる。このため、FPD17が受けるX線量が増加し、従来の粒子線ビーム照射装置100に比べてより鮮明な画像を取得できるようになる。この結果、画像処理によりずれ量を算出することが容易になり、患者位置決め時間が短縮化され、患者の負荷が低減される。
【0089】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0090】
1 粒子線ビーム照射装置
4 X用ワブラー電磁石(ビーム走査部)
5 Y用ワブラー電磁石(ビーム走査部
6 散乱体
8 リッジフィルタ(ビーム飛程拡大装置)
9 レンジシフタ(ビーム飛程調整装置)
10 平坦度モニタ
11 ビーム位置モニタ
12 X線管
14 4枚ばねコリメータ(コリメータ)
15 多葉コリメータ(コリメータ)
16 ボーラス(補償フィルタ)
17 FPD(フラット・パネル・ディテクタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線ビームをビーム進行方向と直交する方向に走査するビーム走査部と、
前記粒子線ビームのビーム幅を所定のビーム幅に拡大する散乱体と、
前記粒子線ビームの体内飛程を、患部のビーム進行方向の大きさに合わせて分散し拡大するビーム飛程拡大装置と、
体内飛程が分散、拡大された前記粒子線ビームの最深体内飛程を、前記患部の奥側の外郭形状に合致させる補償フィルタと、
前記ビーム進行方向と直交する面における前記患部の外周形状の外側へのビーム照射を遮蔽するコリメータと、
前記ビーム進行方向と直交する面における線量分布の平坦度を測定する平坦度モニタと、
を備え、
前記各構成品は、前記患部に近い方から、前記補償フィルタ、前記コリメータ、前記ビーム飛程拡大装置、前記平坦度モニタ、前記散乱体、前記ビーム走査部、の順に配置される、
ことを特徴とする粒子線ビーム照射装置。
【請求項2】
前記ビーム飛程拡大装置は、前記コリメータに近接して配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項3】
前記粒子線ビームの最深体内飛程を調整するビーム飛程調整装置、をさらに備え、
前記ビーム飛程調整装置は、前記ビーム飛程拡大装置と前記平坦度モニタとの間に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項4】
前記ビーム飛程調整装置は、前記ビーム飛程拡大装置に近接して配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項5】
前記患部を含む患部周辺部にX線を照射するX線管と、
前記X線で照射された前記患部周辺部の透視画像を得るフラット・パネル・ディテクタと、をさらに備え、
前記フラット・パネル・ディテクタは、前記コリメータと前記患部との間に配置され、
前記X線管は、前記患部を挟んで前記フラット・パネル・ディテクタと反対側の位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の粒子線ビーム照射装置。
【請求項6】
前記透視画像は、前記粒子線ビームの照射前に前記の患部の位置決めのために得る画像であり、
前記フラット・パネル・ディテクタは、前記透視画像の撮像時には、前記粒子線ビームの通過経路上の位置にあり、前記粒子線ビームの照射時には、前記粒子線ビームの通過経路上の位置からはずれた退避位置へ移動する、
ことを特徴とする請求項5に記載の粒子線ビーム照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−120810(P2011−120810A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282643(P2009−282643)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】