説明

粒子線供給装置およびIII−V化合物半導体を成長する方法

【課題】分子線エピタキシ装置のための粒子線供給装置を提供する。
【解決手段】粒子線供給装置17では、粒子線生成器31は、分子線エピタキシ成長のための原料を提供する開口31aを有する。シャッタ装置33では、シャッタ35は粒子線生成器31の開口31aの前方に位置し、回転軸37は、シャッタ35を支持しており所定の軸Axに沿って延び、駆動機構39は、回転軸37を所定の軸Axの回りに回転駆動する。シャッタ35は、開口31aの位置に合わせて設けられた窓35aを有する。粒子線生成器31からの粒子線は、窓35aを通して進み、或いは、シャッタ35の遮蔽部35bによって遮断される。矢印Arrowの一方向のみにシャッタ35を等角速度で回転させたとき、シャッタ35の移動と停止を成長中に繰り返すことなく、一定の周期で、粒子線が窓35aを介して軸Bxに沿って供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線供給装置およびIII−V化合物半導体を成長する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、改良された分子線エピタキシによって低温成長されたGaAsおよびAlAs−GaAs量子井戸について記載されている。マイグレーションエンハンストエピタキシャル成長(MEE)法を用いて結晶性の良好なGaAsを低温(摂氏300度)で成長した。
【0003】
非特許文献2には、MEE法によって低温成長されたAlGaAs−GaA量子井戸について記載されている。ヒ素を含まない雰囲気中において清浄なGaAs表面にガリウム原子またはアルミニウム原子を供給するとき、これらの原子は低温(摂氏300度)においても移動しやすく、マイグレーションが生じる。この方法により、ガリウムおよび/またはアルミニウム並びにヒ素をGaAs表面に供給して、優れたフォトルミネッセンス特性を有するAlGaAs−GaA量子井戸が成長された。
【0004】
非特許文献3には、MnおよびBeを共添加して高正孔濃度のGaAsを低温で成長することについて記載されている。Mnを添加して高正孔濃度のGaAsを低温で成長することができるし、Beを添加して高正孔濃度のGaAsを低温で成長できる。しかしながら、MnおよびBeを共添加すると高抵抗のGaAsが得られた。ところが、MEE法によってMnおよびBeを別個に供給してGaAsを成長すると、高正孔濃度のGaAsが得られた。
【0005】
非特許文献4には、MEE法を用いてInNを成長することについて記載されている。
【0006】
非特許文献5には、AlGaN/GaNヘテロ接合デバイスを作製するための分子線エピタキシについて記載されている。GaNテンプレート上に高温成長AlN薄層をMEE法で成長した後に、GaNを成長した。このGaNのらせんヒルロック密度を下げることができた。
【非特許文献1】Y. Horiknshi, M. Kawashima, and H. Yamaguchi Jpn. J. Appl. Phys. 25, L868 (1986).
【非特許文献2】Y. Horikoshi, et al. Appl. Phys. Lett. l50 (23), 8June 1987
【非特許文献3】K. Onomitsu, et al. J. Vac. Sci. Technol. B 22.4., Jul/Aug 2004
【非特許文献4】H. Lu, et al. Appl. Phvs. Lett., Vol. 77, No. 16, l6 October 2000
【非特許文献5】K. Kishino and A. Kikuchi: phys. stal. sot. (a) 190, No. 1, 23 31 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
MBE法で半導体結晶を一原子層づつ成長するMEE法を実現ためには、原料を交互に間欠的に供給する必要がある。なぜなら、MEE法では原子層の成長毎に原料の供給を停止して原子のマイグレーションを促進する必要があるからでる。このため、一原子層毎に原料セルのシャッタを開閉する必要がある。この開閉には、以下のようないくつかの駆動方式がある。例えば、ベローズの先端にシャッタ板を取り付けて、ステッピングモータの駆動によりベローズの左回転および右回転を交互に行って開閉を行う。別の方法では、磁気駆動により左回転および右回転を行って開閉を行う。アオリ方式では、ベローズを有する回転導入機の先端にシャッタ板を取り付けて、ステッピングモータの駆動によりシャッタ板の移動を行って開閉を行う。スライド方式では、アクチェータによる磁石の平行移動を利用して開閉のためにシャッタ板のスライドを行う。或いは、ステッピングモータの回転運動を並進運動に変換して、開閉のためにシャッタ板のスライドを行う。
【0008】
これらの方式のいずれにおいても、1μmのエピタキシャル膜を成長するためには、機械的な移動により数千回程度のシャッタの開閉を行う。これらのシャッタ機構の動作では、シャッタの移動と停止が成長中に繰り返されるので、シャッタに付着した堆積物の落下による結晶欠陥の発生や機械的な故障などが発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、成長中にシャッタの移動と停止の繰り返しを行うことがない、分子線エピタキシ装置のための粒子線供給装置を提供することを目的とし、また粒子線供給装置を用いた分子線エピタキシ装置によりIII−V化合物半導体を成長する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、分子線エピタキシ装置のための粒子線供給装置である。粒子線供給装置は、(a)分子線エピタキシ成長のための原料を提供する開口を有する粒子線生成器と、(b)前記粒子線生成器の前記開口の前方に位置するシャッタ、該シャッタを支持しており所定の軸に沿って延びる回転軸、および該回転軸を前記所定の軸の回りに回転駆動する駆動機構を含むシャッタ装置とを備え、前記シャッタは、前記粒子線生成器の前記開口の位置に合わせて設けられた窓を有する。
【0011】
この粒子線供給装置によれば、回転駆動のための駆動機構により、回転軸に支持されたシャッタを一方向に回転させることができる。この回転により、シャッタに設けられた窓が、回転の速度に応じた頻度で粒子線生成器の開口上を通過する。シャッタ装置が開かれた状態では、粒子線生成器からの粒子線が窓を通して供給される。また、シャッタ装置が閉じられた状態では、粒子線生成器からの粒子線がシャッタによって遮断される。
【0012】
本発明に係る粒子線供給装置では、前記シャッタは、追加の窓を有しており、前記窓および前記追加の窓は前記所定の軸を中心とする円周上に配置されていることができる。この粒子線供給装置によれば、窓および追加の窓を通して粒子線が供給される。窓および追加の窓の窓サイズ(円周に沿って規定される長さ)に応じて、粒子線の供給期間が規定される。また、窓および追加の窓との間隔(円周に沿って規定される間隔)に応じて粒子線の停止期間が規定される。
【0013】
本発明に係る粒子線供給装置では、前記駆動機構は磁気カップリングによる駆動であることが好ましい。磁気カップリングによる駆動は、非接触により駆動力の伝達が可能であるので、粒子線供給装置の回転軸にチャンバ外から駆動力を与えることができる。
【0014】
本発明の別の側面は、III−V化合物半導体を成長する方法である。この方法は、(a)III−V化合物半導体のうちのIII族元素のための第1の粒子線供給装置からIII族原料を基板上に供給する工程と、(b)前記III−V化合物半導体のうちのV族元素のための第2の粒子線供給装置からV族原料を前記基板上に供給する工程とを備え、前記第1の粒子線供給装置は、上記の一側面のいずれか一つである粒子線供給装置であり、前記第1の粒子線供給装置の前記シャッタは一方向に回転しており、前記III族原料は、この粒子線供給装置の前記シャッタの前記窓を通して供給され、前記第2の粒子線生成装置は、上記の一側面のいずれか一つである粒子線供給装置であり、前記第2の粒子線供給装置の前記シャッタは一方向に回転しており、前記V族原料は、この粒子線供給装置の前記シャッタの前記窓を通して供給される。
【0015】
この方法によれば、シャッタを支持する回転軸を一方向に回転させることによって、III−V化合物半導体のIII族原料及びV族原料を供給できる。この回転により、シャッタに設けられた窓が、回転の速度に応じた頻度で粒子線生成器の開口上を通過する。III族原料及びV族原料を供給する粒子線供給装置のシャッタの窓の大きさに応じて、それぞれの粒子線が供給される。また、III族原料を供給する粒子線供給装置のシャッタの窓の位置とV族原料を供給する粒子線供給装置のシャッタの窓の位置との違いに応じて、III族原料及びV族原料を供給するタイミングが決定される。本発明の別の側面に係る方法では、III族原料の供給とV族原料の供給を繰り返す工程は、各シャッタの回転により実現される。これによって、所望の膜厚のIII−V化合物半導体を成長できる。
【0016】
本発明に係る方法は、(c)前記III族原料または前記V族原料の少なくともいずれか一方を前記基板上に供給した後に、前記III族原料および前記V族原料のいずれも供給することなく前記基板をマイグレーションのための温度に保持する工程を更に備え、マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第1の粒子線供給装置からの前記III族原料は、前記第1の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断され、マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第2の粒子線供給装置からの前記V族原料は、前記第2の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断される。
【0017】
この発明によれば、原料中のIII族原子またはV族原子のマイクレーションが成長表面において生じするので、三次元成長が抑制されて、平坦なエピタキシャル面が得られる。
【0018】
本発明に係る方法は、更に、前記III族原料および前記V族原料のいずれも供給することなく、前記III−V化合物半導体のためのドーパントのための第3の粒子線供給装置から前記ドーパントを前記基板上に供給する工程を備えることができる。前記第3の粒子線供給装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された粒子線供給装置であり、前記第3の粒子線供給装置の前記シャッタは一方向に回転しており、前記ドーパントは、この粒子線供給装置の前記シャッタの前記窓を通して供給される。
【0019】
この方法によれば、シャッタを支持する回転軸を一方向に回転させることによって、III−V化合物半導体のためのドーパントを供給できる。この回転により、シャッタに設けられた窓が、回転の速度に応じた頻度で粒子線生成器の開口上を通過する。ドーパントを供給する粒子線供給装置のシャッタの窓の大きさに応じて粒子線が供給される。また、III族原料およびV族原料を供給する粒子線供給装置のシャッタの窓の位置とドーパントを供給する粒子線供給装置のシャッタの窓の位置との違いに応じて、ドーパントを供給するタイミングが決定される。本発明の別の側面に係る方法では、III族原料の供給、V族原料の供給およびドーパントの供給を繰り返す工程は、各シャッタの回転により実現される。これによって、所望の導電性および膜厚のIII−V化合物半導体を成長できる。
【0020】
本発明に係る方法は、更に、前記ドーパントを前記基板上に供給した後に、前記III族原料、前記V族原料および前記ドーパントのいずれも供給することなく前記基板をマイグレーションのための温度に保持する工程を備えることができる。マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第1の粒子線供給装置からの前記III族原料は、前記第1の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断され、マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第2の粒子線供給装置からの前記V族原料は、前記第2の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断され、マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第3の粒子線供給装置からの前記ドーパントは、前記第3の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断される。
【0021】
この方法によれば、前記III族原料、前記V族原料および前記ドーパントが供給されない期間に、マイクグレーションが促進される。
【0022】
本発明に係る方法では、前記ドーパントはベリリウムであることが好ましい。ベリリウムの付着係数は小さい。このため、ベリリウムが基板に到達しても、基板に留まる確率が小さい。また、基板温度の上昇により、基板に付着したベリリウムが脱離する。しかしながら、ドーパントのベリリウムを基板上に供給した後に、III族原料、V族原料およびドーパントのいずれも供給することなく基板をマイグレーションのための温度に保持するので、ベリリウムのマイグレーションが基板上において促進される。
【0023】
本発明に係る方法では、前記III−V化合物半導体は、GaN系半導体であり、前記第2の粒子線供給装置は、窒素ラジカルを生成するための高周波ラジカルガンを含むことができる。本発明は、III−V化合物半導体としてGaN系半導体の成長に適用できる。
【0024】
本発明に係る方法では、前記III族原料を前記基板に供給する期間は、前記V族原料を前記基板に供給する期間の少なくとも一部と重なっていてもよい。
【0025】
本発明に係る方法では、前記III−V化合物半導体はGaAs系半導体であることができる。本発明は、III−V化合物半導体としてGaAs系半導体の成長に適用できる。
【0026】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、成長中にシャッタの移動と停止の繰り返しを行うことない、分子線エピタキシ装置のための粒子線供給装置が提供される。また、本発明によれば、粒子線供給装置を用いた分子線エピタキシ装置によりIII−V化合物半導体を成長する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の粒子線供給装置およびIII−V化合物半導体を成長する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0029】
図1は、III−V化合物半導体を成長するための分子線エピタキシ装置の一例を示す図面である。III−V化合物半導体の成長のために分子線エピタキシ装置13を用いることができる。III−V化合物半導体の結晶成長に先立って、半導体膜を成長するための基板11を分子線エピタキシ装置13に設置する。分子線エピタキシ装置13において原料またはドーパントを供給して半導体膜15を基板11上に成長する。詳細に説明すると、分子線エピタキシ装置13は、チャンバ13aと、ホルダ13bと、ソース13cと、RHEEDといったモニタ装置13dと、真空ポンプが接続された排気口13eとを含む。ソース13cには、ドーパントのための粒子線供給装置17、29および原料のための粒子線供給装置19、21、23、25、27を含む。粒子線供給装置17は、III−V化合物半導体中においてp型ドーパントとして働く例えばベリリウムを供給するものであり、粒子線供給装置29は、III−V化合物半導体中においてn型ドーパントとして働く例えばシリコンを供給するものである。粒子線供給装置17は、ドーパント17aを供給する。粒子線供給装置19、21は、それぞれ、半導体の構成原料19a、21aを供給する。ドーパント17aおよび構成原子19a、21aは、それぞれの粒子線供給装置17、19、21のシャッタの窓を通して供給される。分子線エピタキシ装置13を用いた成長では、粒子線により表面に供給された粒子のマイグレーションのための期間を原料および/またはドーパントの供給の後に設けている。
【0030】
図2は、粒子線供給装置の一例を示す図面である。図2(a)は、図1の粒子線供給装置17に示されるI−I線に沿って取られた断面を示す。図2(b)は、粒子線供給装置17のシャッタの正面を示す図面である。引き続く説明では、粒子線供給装置17の説明は例示として示されるものであり、他の粒子線供給装置19、21、23、25、27、29も同一または類似の構造を有することができる。
【0031】
粒子線供給装置17は、粒子線生成器31およびシャッタ装置33を備える。粒子線生成器31は、分子線エピタキシ成長のための原料を提供する開口31aを有する。シャッタ装置33は、シャッタ35、回転軸37および駆動機構39を含む。
【0032】
粒子線生成器31が室温において固体である材料(例えば、ガリウム、ヒ素)のために用いられるとき、粒子線生成器31は、固体材料をチャージするためのセルおよび加熱用のヒータを含んでおり、加熱により生成された蒸気が開口31aから放出されて粒子線を形成する。粒子線生成器31が室温において気体である分子(例えば、窒素分子)のために用いられるとき、高純度のガス源から供給された分子のラジカル生成のための高周波(RF)ラジカルガンを含んでいる。また、高周波プラズマにより生成されたラジカルが開口31aから放出されて粒子線を形成する。
【0033】
シャッタ35は、粒子線生成器31の開口31aの前方に位置する。回転軸37は、シャッタ35を支持しており所定の軸Axに沿って延びる。駆動機構39は、回転軸37を所定の軸Axの回りに回転駆動する。シャッタ35は、開口31aの位置に合わせて設けられた窓35aを有する。粒子線生成器31からの粒子線は窓35aを通過し、或いは、シャッタ35の遮蔽部35bにより遮断される。粒子線生成器31からの粒子線Bは、窓35aのほぼ中心を通り軸Axに平行な軸Bxに沿って進む。図2には、軸Axと軸Bxとの距離に相当する半径Rの円が破線で描かれており、矢印Arrowの向きにシャッタ35を等角速度で回転させたとき、一定の周期で、粒子線が窓35aを介して軸Bxに沿って供給される。例えば、一例の回転速度は、例えば5rpm程度である。回転は一方向のみであるので、シャッタ35の移動と停止が、成長中に繰り返されることはない。
【0034】
この粒子線供給装置17によれば、回転駆動のための駆動機構39により、回転軸37に支持されたシャッタ35を一方向に回転させることができる。この回転により、シャッタ35に設けられた窓35aが、回転の速度に応じた頻度で粒子線生成器31の開口31a上を通過する。シャッタ装置33が開かれた状態では、粒子線生成器31からの粒子線が窓35aを通して供給される。また、シャッタ装置33が閉じられた状態では、粒子線生成器31からの粒子線がシャッタ35によって遮断される。
【0035】
粒子線供給装置17では、駆動機構39は磁気カップリングによる駆動であることが好ましい。磁気カップリングによる駆動機構としては、磁気結合型回転導入器等が使用可能である。磁気カップリングによる駆動は、非接触により駆動力の伝達が可能であるので、減圧されたチャンバ13aの気密を保持するための隔壁40外から粒子線供給装置17の回転軸37に駆動力を与えることができる。
【0036】
図3は、シャッタの変形例を示す図面である。図3(a)を参照すると、変形例のシャッタ34が示されている。シャッタ34は、開口31aの位置に合わせて設けられた窓34aを有する。粒子線生成器31からの粒子線は窓34aを通過し、或いは、シャッタ34の遮蔽部34bにより遮断される。窓34aの窓サイズ(円周に沿って規定される長さL1または角度Agl1)は、粒子線の供給期間を規定する。また、窓34aのエッジと基準線Refとの間隔(円周に沿って規定される間隔L2)は、粒子線の供給のタイミングを規定する。また、窓34aの2つのエッジの間隔(円周に沿って規定される間隔L3)は、粒子線の停止期間を規定する。
【0037】
シャッタ34は、粒子線の種類毎に準備される。例えば、上記の長さL1〜L3を所望の成長に合わせて設計することにより、それぞれの粒子線が供給される期間、相互のタイミング、それぞれの粒子線が供給されない期間が規定される。
【0038】
シャッタ36は、単一の窓に限定されることなく複数の窓を有することができる。図3(b)を参照すると、変形例のシャッタ36が示されている。シャッタ36は、開口31aの位置に合わせて設けられた窓36aと追加の窓36cを有する。粒子線生成器31からの粒子線は窓36a又は窓36cを通過し、或いは、シャッタ36の遮蔽部36bにより遮断される。窓36aおよび追加の窓36cは所定の軸Axを中心とする円周R上に配置されている。このシャッタ36では、一回転の間に、2回の粒子線の提供が行われる。窓36aの窓サイズ(角度Agl2により規定される)は、粒子線の第1の供給期間を規定し、また窓36cの窓サイズ(角度Agl3により規定される)は、粒子線の第2の供給期間を規定する。窓36aのエッジと窓36cのエッジとの間隔(角度Agl4により規定される)は、粒子線の停止期間を規定する。シャッタ34と同様に、シャッタ36においても、窓36a、36cのエッジと基準線Refとの間隔は粒子線の供給のタイミングを規定する。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態に係る粒子線供給装置によれば、成長中にシャッタの移動と停止の繰り返しを行うことがない。
【0040】
引き続き、本実施の形態に係る粒子線供給装置を用いた分子線エピタキシ装置によりIII−V化合物半導体を成長する方法を説明する。III−V化合物半導体は、一又は複数のIII族構成元素と一又は複数のV族構成元素とを含む。典型的なIII族構成元素は、例えばGa、In、Al、B等であり、また典型的なV族構成元素は、例えばAs、P、Sb、N等である。例示すれば、III−V化合物半導体は、例えばGaAs、InP、InAs、GaP、GaSb、InSb、AlGaAs、GaInAs、GaAsP、GaInP、AlGaInAs、GaInAsP、GaN、AlN、InN、GaInN、AlGaN、AlGaInN、GaNAs、GaInNAs等である。
【0041】
図4は、本実施の形態に係るIII−V化合物半導体を成長する方法の主要な工程を示す図面である。この図面では、主要な工程の各々におけるシャッタの回転における位置が示されている。シンボル「ω」は、回転駆動の定角速度を示している。図4を参照すると、シャッタ45は、III族元素のための粒子線生成器41の開口41aからの粒子線を制御しており、またシャッタ55は、V族元素のための粒子線生成器51の開口51aからの粒子線を制御する。シャッタ45、55は、それぞれ、角加速度ωで一方向に回転運動している。
【0042】
図4(a)を参照すると、工程S101では、シャッタ45、55は、III族元素のための期間を示す角度内に位置する。開口41aからのIII族元素粒子線が、シャッタ45の窓45aを介して基板上に供給される一方で、開口51aからのV族元素粒子線が、シャッタ55の遮蔽部55bにより遮断されている。
【0043】
次いで、図4(c)を参照すると、工程S102では、シャッタ45、55は、V族元素のための期間を示す角度内に位置する。開口51aからのV族元素粒子線が、シャッタ55の窓55aを介して基板上に供給される一方で、開口41aからのIII族元素粒子線が、シャッタ45の遮蔽部45bにより遮断されている。
【0044】
この実施例では、III族元素粒子線とV族元素粒子線は互いに排他的に供給されている。
【0045】
この成長方法によれば、シャッタ45、55を支持する回転軸を一方向に回転させることによって、III−V化合物半導体のIII族原料及びV族原料を供給できる。この回転により、シャッタ45、55に設けられた窓45a、55aが、回転の速度に応じた頻度で粒子線生成器41、51の開口41a、51a上を通過する。III族原料及びV族原料を供給するシャッタ45、55の窓45a、55aの大きさに応じて、III族原料及びV族原料の粒子線がそれぞれ供給される。また、III族原料を供給する窓45aの位置とV族原料を供給する窓55aの位置との違いに応じて、III族原料及びV族原料を供給するタイミングが決定される。この成長方法では、III族原料の供給とV族原料の供給を繰り返す工程は、各シャッタの回転により実現される。これによって、所望の膜厚のIII−V化合物半導体を成長できる。また、成長中にシャッタの移動と停止の繰り返しを行うことがない。
【0046】
この成長方法は、上記の工程に加えて、工程S103、S104の少なくともいずれか一方を含むことができる。図4(b)を参照すると、工程S103では、シャッタ45、55は、III族元素およびV族元素の供給休止の期間を示す角度内に位置する。III族元素粒子線が供給された後に、開口51aからのV族元素粒子線が、シャッタ55の遮蔽部55bにより遮断され、同時に、開口41aからのIII族元素粒子線が、シャッタ45の遮蔽部45bにより遮断される。このため、III族原料およびV族原料のいずれも供給することなく、基板をマイグレーションのための温度に保持する。この温度保持により、原料中のIII族原子のマイクレーションが成長表面において生じするので、三次元成長が抑制されて、平坦なエピタキシャル面が得られる。
【0047】
図4(d)を参照すると、工程S104では、シャッタ45、55は、III族元素およびV族元素の供給休止の期間を示す角度内に位置する。V族元素粒子線が供給された後に、開口51aからのV族元素粒子線が、シャッタ55の遮蔽部55bにより遮断され、同時に、開口41aからのIII族元素粒子線が、シャッタ45の遮蔽部45bにより遮断される。このため、III族原料およびV族原料のいずれも供給することなく、基板をマイグレーションのための温度に保持する。この温度保持により、V族原子のマイクレーションが成長表面において生じするので、三次元成長が抑制されて、平坦なエピタキシャル面が得られる。
【0048】
図5は、本実施の形態に係るIII−V化合物半導体を成長する方法の主要な工程を示す図面である。この図面では、主要な工程の各々におけるシャッタの回転角が示されている。図5を参照すると、シャッタ45、55に追加されて、シャッタ65が示されている。シャッタ65は、III−V化合物半導体のためのドーパントの粒子線生成器61の開口61aからの粒子線を制御している。シャッタ45、55、65は、それぞれ、角加速度ωで一方向に回転運動している。この方法においても、シャッタの移動と停止の繰り返しを成長中に行うことがない。
【0049】
ドーパントは、例えば、III−V化合物半導体にp型を付与するベリリウムであることが好ましい。ベリリウムの付着係数は小さい。このため、ベリリウムが基板に到達しても、基板に留まる確率が小さい。また、基板温度の上昇により、基板に付着したベリリウムが脱離する。しかしながら、ドーパントのベリリウムを基板上に供給した後に、III族原料、V族原料およびドーパントのいずれも供給することなく基板をマイグレーションのための温度に保持するので、ベリリウムのマイグレーションが基板上において促進される。ドーパントはベリリウムに限定されることなく、例えばp型ドーパントとしてMg等を用いることができ、Mgは、Beと比較してアクセプタレベルが深いが、取扱に関してはBeより安全で簡便であるという利点がある。また、例えばn型ドーパントとしてSi等を用いることができ、活性化率がほぼ100%に近いという利点がある。
【0050】
図5(a)を参照すると、工程S201では、シャッタ45、55は、それぞれ、III族元素およびV族元素の供給のための期間を示す角度内に位置する。開口41aからのIII族元素粒子線が、シャッタ45の窓45aを介して基板上に供給され、開口51aからのV族元素粒子線が、シャッタ55の窓55aを介して基板上に供給される一方で、開口61aからのドーパント粒子線が、シャッタ65の遮蔽部65bにより遮断されて基板上には供給されていない。
【0051】
次いで、図5(c)を参照すると、工程S202では、シャッタ65は、ドーパントの供給ための期間を示す角度内に位置する。開口61aからのドーパント粒子線が、シャッタ65の窓65aを介して基板上に供給される一方で、開口41aからのIII族元素粒子線が、シャッタ45の遮蔽部45bにより遮断され、開口51aからのV族元素粒子線が、シャッタ55の遮蔽部55bにより遮断されて、III族元素およびV族元素は基板上に供給されていない。
【0052】
シャッタ65を支持する回転軸を一方向に回転させることによって、III−V化合物半導体のためのドーパントを供給できる。この回転により、シャッタ65に設けられた窓65aが、回転の速度に応じた頻度で粒子線生成器61の開口61a上を通過する。ドーパントを供給する粒子線供給装置61のシャッタ65の窓65aの大きさに応じて粒子線が供給される。また、III族原料およびV族原料を供給する粒子線供給装置41、51のシャッタ45、55の窓45a、55aの位置と粒子線供給装置61のシャッタ65の窓65aの位置との違いに応じて、ドーパントを供給するタイミングが決定される。各シャッタの回転により、III族原料の供給、V族原料の供給およびドーパントの供給の繰り返しが実現される。これによって、所望の導電性および膜厚のIII−V化合物半導体を成長できる。また、III族原料およびV族原料の供給からドーパントの供給を分離することによって、ドーパント原子が構成元素と結合する前に、ドーパント原子のマイグレーションが生じうる。
【0053】
III族原料を基板に供給する期間は、V族原料を基板に供給する期間の少なくとも一部と重なっていてもよい。この方法によれば、脱離しやすいV族元素の表面脱離を防ぐことができる。
【0054】
この成長方法は、上記の工程に加えて、工程S203、S204の少なくともいずれか一方を含むことができる。図5(b)を参照すると、工程S203では、シャッタ45、55、65は、III族元素、V族元素およびドーパント原子の供給休止の期間を示す角度内に位置する。III族元素およびV族元素の粒子線が供給された後に、開口41a、51aからのIII族元素およびV族元素粒子線が、シャッタ45、55の遮蔽部45b、55bにより遮断され、同時に、開口61aからのドーパント粒子線が、シャッタ65の遮蔽部65bにより遮断される。このため、III族原料、V族原料およびドーパントのいずれも供給することなく、基板をマイグレーションのための温度に保持する。この温度保持により、原料中のIII族原子およびV族原料のマイクレーションが成長表面において生じするので、三次元成長が抑制されて、平坦なエピタキシャル面が得られる。V族元素は結晶表面より脱離しやすいので、脱離による結晶性の劣化をもたらさないように短時間の供給時間が望ましい。
【0055】
図5(d)を参照すると、工程S204では、シャッタ45、55、65は、III族元素、V族元素およびドーパント元素の供給休止の期間を示す角度内に位置するドーパント粒子線が供給された後に、開口61aからの粒子線が、シャッタ65の遮蔽部65bにより遮断され、同時に、開口41a、51aからのIII族元素およびV族元素の粒子線が、それぞれ、シャッタ45、55の遮蔽部45b、55bにより遮断される。このため、III族原料、V族原料およびドーパントのいずれも供給することなく、基板をマイグレーションのための温度に保持する。この温度保持により、ドーパント原子のマイクレーションが成長表面において生じるので、高い正孔濃度のIII−V化合物半導体を成長する方法が提供される。
【0056】
III−V化合物半導体はGaAs系半導体であることができる。或いは、III−V化合物半導体は、GaN系半導体であることができる。第2の粒子線供給装置が、窒素ラジカルを生成するための高周波ラジカルガンを含むことによって、上記の方法をGaN系半導体の成長に適用できる。
【0057】
(実施例1)
回転シャッタを用いて、GaAsエピタキシャル膜をGaAs基板上に成長した。回転シャッタは、円形状の窓もしくは円周に沿った楕円状の窓を円盤状の金属板で形成した。MBE成長装置の原料セルの前に、上記の窓がセルの開口と重なるように回転シャッタを設置して、シャッタの回転軸をチャンバ外部の磁気駆動装置と磁気カップリングさせた。この回転シャッタを原料セルの上部において一定速度で回転させることによって、回転シャッタの窓から一原子層分の原料を供給した。この供給の後に、所定の時間だけ原料の供給を停止した。二元化合物では、2種類の構成元素のための原料の供給タイミングをずらすことによって、MEE法を実現した。
【0058】
摂氏300度の成長温度でGaとAsを交互に供給し、それぞれの原料供給の間に5秒インターバルを設けた。その結果、得られたGaAs膜のエピタキシャル面は、通常の連続成長では表面モフォロジ(凹凸が発生していた)より優れており、鏡面であった。これは、成長中断中に原料(特にGa)がAs面上をマイグレーションすることにより3次元成長が抑制されるので、平坦なエピタキシャル面が実現できた。
【0059】
(実施例2)
また、ドーピングを行う成長では、マトリックスの原料は同じタイミングで供給し、ドーパントのみをマトリックス結晶の成長中断時に供給した。マトリックスの原料およびドーパントのいずれの回転シャッタも、一定の方向に連続的に回転させた。このため、回転機構の故障や堆積物の落下等は少なくできた。
【0060】
ドーパントとしてBeを用いた。BeがドーピングされたGaAsの成長では、通常の成長温度ではBeのマイグレーション距離が短いので、Be原子の多くは、p型キャリアとして活性化する格子位置に入ることができず、格子間位置に入って不活性しない。これを避けるために基板温度を上げると、マイグレーションが促進されてBeが格子位置に配置されるようになる。しかし、Beは付着係数が小さいので、基板温度を上けると脱離が促進されドーピングされなくなる。マイグレーションのために十分なエネルギをBeに与えるために、Beセルの温度を高くすると、必要以上のBe原子がエピタキシャル表面に供給され、所望のドーピング量を越えて異常なドーピングが発生する。
【0061】
回転シャッタを用いて周期的にBe粒子線を供給してMEE法を適用することによって、Beを格子位置に配置可能になると共に所望のドーパント濃度を得ることができた。
【0062】
具体的には、Beセル温度を摂氏500度に設定して、Beフラクッスを通常の10倍程度、例えば2.0×10−8Torr(1Torrは、133.322Paで換算される)に設定し、回転シャッタの窓の長さと円周長との比率を0.1に設定し、シャッタ回転数を1rpmに設定し、GaAsを成長した。Beの窓が開いていない期間に、GaセルおよびAsセルのための回転シャッタを同時に10秒間だけ開いて、GaフラックスおよびAsフラックスを供給した。この設定では、10秒間だけBeを供給した後に、25秒間の期間にBeがAs面上をマイグレーションして格子位置に入る。Beの脱離を抑制するために、成長温度は摂氏300度といった低温に設定した。SIMS分析の結果、1×1019cm−3程度のBeがドーピングされ、また、ホール測定によれば、5×1018cm−3のホール濃度が観測された。
【0063】
(実施例3)
実施例2と同様にBeをドーパントとして用いた。回転シャッタを適用して、BeがドーピングされたGaNを成長した。GaNの成長でも、通常の成長温度ではBeのマイグレーション距離が短いので、Be原子の多くは、p型キャリアとして活性化する格子位置に入らす格子問位置に入って不活性しない。基板温度を上げると、マイグレーションが促進されてBeが格子位置に配置されるけれども、GaNの分解によりGaN結晶性が悪化する。また、マイグレーションのための十分なエネルギをBeに与えるために、Beセルの温度を高くすると、必要以上のBe原子がエピタキシャル表面に供給され、所望のドーピング量を越えた異常ドーピングが発生した。
【0064】
ドーパントのために回転シャッタを適用して、間欠的にBe原子をGaNに供給することによって、Beを回折格子上に配置させると共に所望のBe濃度を得ることができた。
【0065】
具体的には、Beセル温度を摂氏500度に設定して、Beフラクッスを通常の10倍程度の1.0×10−9Torrに設定した。回転シャッタにおけるの窓の長さと、円周長との比率を0.1に設定し、回転数を1rpmに設定し、GaNを成長した。窒素源には、窒素ガスをRFプラズマ分解して窒素ラジカルを生成するRF−ラジカルガンを用いた。Beの窓が開いていない期間に、GaセルとNセルの回転シャッタを同時に10秒の期間だけ開き、GaフラックスとNフラックスを供給した。この設定では、10秒間だけBeを供給した後に、25秒間の期間にBeがGa面上をマイグレーションして格子位置に入る。成長温度は摂氏700度といった低温に設定した。SIMS分析の結果、2×1019cm−3程度のBeがドーピングされたまた、ホール測定の結果、1×1018cm−3のホール濃度が観測された。
【0066】
以上説明したように、分子線エピタキシ成長装置において、原料セルの開口の位置に合わせた窓を有する遮蔽板を設置すると共に、この遮蔽版を一定速度で回転させて原料を間欠的に供給して結晶成長を行った。このシャッタ機構によれば、間欠的な原料供給を一方向に回転する遮蔽板で制御するので、装置の故障や堆積物の落下による欠陥等が減少する。また、複数個の窓が遮蔽板に設けられており、また円周方向に均等の間隔をおいて配置されていてもよい。
【0067】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、III−V化合物半導体を成長するための分子線エピタキシ装置の一例を示す図面である。
【図2】図2は、粒子線供給装置の一例を示す図面である。
【図3】図3は、シャッタの変形例を示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係るIII−V化合物半導体を成長する方法の主要な工程を示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るIII−V化合物半導体を成長する方法の主要な工程を示す図面である。
【符号の説明】
【0069】
11…基板、13…分子線エピタキシ装置、15…半導体膜、17、29…ドーパントのための粒子線供給装置、19、21、23、25、27…原料のための粒子線供給装置、31…粒子線生成器、31a…粒子線生成器の開口、33…シャッタ装置、34、35、36…シャッタ、37…回転軸、39…駆動機構、34a、35a、36a、36c…窓、34b、35b、36b…遮蔽部、41…III族元素のための粒子線生成器、41a…III族元素のための粒子線生成器の開口、45…シャッタ、45a…シャッタの窓、45b…シャッタの遮蔽部、51…V族元素のための粒子線生成器、51a…V族元素のための粒子線生成器の開口、55…シャッタ、55a…シャッタの窓、55b…シャッタの遮蔽部、61…V族元素のための粒子線生成器、61a…V族元素のための粒子線生成器の開口、65…シャッタ、65a…シャッタの窓、65b…シャッタの遮蔽部、ω…角加速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子線エピタキシ装置のための粒子線供給装置であって、
分子線エピタキシ成長のための原料を提供する開口を有する粒子線生成器と、
前記粒子線生成器の前記開口の前方に位置するシャッタ、該シャッタを支持しており所定の軸に沿って延びる回転軸、および該回転軸を前記所定の軸の回りに回転駆動する駆動機構を含むシャッタ装置と
を備え、
前記シャッタは、前記粒子線生成器の前記開口の位置に合わせて設けられた窓を有する、ことを特徴とする粒子線供給装置。
【請求項2】
前記シャッタは、追加の窓を有しており、
前記窓および前記追加の窓は前記所定の軸を中心とする円周上に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載された粒子線供給装置。
【請求項3】
前記駆動機構は磁気カップリングによる駆動である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された粒子線供給装置。
【請求項4】
III−V化合物半導体を成長する方法であって、
III−V化合物半導体のうちのIII族元素のための第1の粒子線供給装置からIII族原料を基板上に供給する工程と、
前記III−V化合物半導体のうちのV族元素のための第2の粒子線供給装置からV族原料を前記基板上に供給する工程と
を備え、
前記第1の粒子線供給装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された粒子線供給装置であり、前記第1の粒子線供給装置の前記シャッタは一方向に回転しており、前記III族原料は、この粒子線供給装置の前記シャッタの前記窓を通して供給され、
前記第2の粒子線生成装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された粒子線供給装置であり、前記第2の粒子線供給装置の前記シャッタは、一方向に回転しており、前記V族原料は、この粒子線供給装置の前記シャッタの前記窓を通して供給される、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記III族原料または前記V族原料の少なくともいずれか一方を前記基板上に供給した後に、前記III族原料および前記V族原料のいずれも供給することなく前記基板の温度をマイグレーションのための温度に保持する工程を更に備え、
マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第1の粒子線供給装置からの前記III族原料は、前記第1の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断され、
マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第2の粒子線供給装置からの前記V族原料は、前記第2の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断される、ことを特徴とする請求項4に記載された方法。
【請求項6】
前記III族原料および前記V族原料のいずれも供給することなく、前記III−V化合物半導体のためのドーパントのための第3の粒子線供給装置から前記ドーパントを前記基板上に供給する工程を更に備え、
前記第3の粒子線供給装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された粒子線供給装置であり、前記第3の粒子線供給装置の前記シャッタは、一方向に回転しており、前記ドーパントは、この粒子線供給装置の前記シャッタの前記窓を通して供給される、ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記ドーパントを前記基板上に供給した後に、前記III族原料、前記V族原料および前記ドーパントのいずれも供給することなく前記基板の温度をマイグレーションのための温度に保持する工程を更に備え、
マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第1の粒子線供給装置からの前記III族原料は、前記第1の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断され、
マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第2の粒子線供給装置からの前記V族原料は、前記第2の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断され、
マイグレーションのための温度に保持する前記工程では、前記第3の粒子線供給装置からの前記ドーパントは、前記第3の粒子線供給装置の前記シャッタによって遮断される、ことを特徴とする請求項6に記載された方法。
【請求項8】
前記ドーパントはベリリウムである、ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載された方法。
【請求項9】
前記III−V化合物半導体は、GaN系半導体であり、
前記第2の粒子線供給装置は、窒素ラジカルを生成するための高周波ラジカルガンを含む、ことを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載された方法。
【請求項10】
前記III−V化合物半導体はGaAs系半導体である、ことを特徴とする請求項4〜請求項8のいずれか一項に記載された方法。
【請求項11】
前記III族原料を前記基板に供給する期間は、前記V族原料を前記基板に供給する期間の少なくとも一部と重なっている、ことを特徴とする請求項9または請求項10に記載された方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−64984(P2009−64984A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231959(P2007−231959)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】