説明

粒子線治療システムの監視システム

【課題】監視対象機器に異常が発生した際に故障部位の特定を早急に行うことができ、新たな機器の増加にも柔軟に対応できる粒子線治療システムの監視システムを提供する。
【解決手段】監視サーバ1と監視対象機器5〜13に、医療業界標準規格であるDICOM規格を適用した。監視サーバ1は、DICOM通信により、各監視対象機器5〜13に対し、アソシエーション確立要求、「C-ECHO-RQ」送信、及び「C-ECHO-RSP」受信等によって各機器の状態を定周期で監視し、これらのいずれかのステップで通信が成功しなかった場合にその監視対象機器を異常すなわち故障状態であると判断し、異常を検出したことを画面表示やパトライト点滅、電子メール等の異常情報通報手段により直ちに通報する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視サーバと監視対象機器に医療業界標準規格であるDICOM規格を適用した粒子線治療システムの監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療は、サイクロトロンやシンクロトロン等の加速器から得られる陽子線や重粒子(重イオン)線を病巣に照射することによって、主にがんを治す治療法である。陽子線や重イオン線を用いた粒子線治療は、人体の表面からある深さにおいて吸収量がピークになる特性を備えるため、粒子線のエネルギーを調整し腫瘍の位置に合わせて高い線量を与えることができ、体表面近くで線量が最大になる従来のX線治療に比べて正常組織の損傷が少ない治療法として期待されている。日本国内ではこれまで6台の粒子線治療装置が導入されており、今後さらに数ヶ所での建設が計画されている。
【0003】
粒子線治療装置本体は、主に、イオンビームを予備加速する入射系(イオン源)、ビームを加速するシンクロトロン、ビームを照射室に導く高エネルギービーム輸送系、照射系、及び調整、運転管理、状態監視等を統括して司る制御系から構成される。さらに、計算機システムとして、粒子線情報システム、治療計画システム及び照射系システムを備え、CTやMR等のモダリティによる画像情報や、患者毎の治療計画及び治療記録等の膨大なデータが管理されている。
【0004】
一方、従来の医療機関における障害通知システムとして、例えば特許文献1では、医療機器、PC、PDAなどの端末機関などの装置の障害を障害監視サーバにより検知し、障害通知サーバの担当者決定手段により発生した障害に対応する主担当者および副担当者を決定して障害通知メールを送信する障害通知システムが提示されている。この例では、医療データや患者のカルテなどを格納する医療業務支援サーバに記録された通信ログを、障害監視サーバの障害監視手段により監視し、通信ログに含まれるエラーメッセージを検出している。
【特許文献1】特開2006−163509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の粒子線治療システムにおいては、加速器や照射機器のような各機器の異常を検出する機構は備えていたが、モダリティや計算機システムの監視は行われておらず、各機器の動作状態を把握できていなかった。このため、異常が発生した場合、故障部位の特定に時間を要し、長時間にわたり治療を停止しなければならないという問題があった。また、引用文献1に提示されたような従来の障害通知システムでは、新たな医療機器及び計算機の増加に即座に対応することが容易でなく、日々進化する医療現場に適した監視システムの構築が求められている。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、監視対象機器に異常が発生した際に故障部位の特定を早急に行うことができ、新たな機器の増加にも柔軟に対応できる粒子線治療システムの監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による粒子線治療システムの監視システムは、医用画像診断装置及びその画像データを管理する画像管理サーバを含む粒子線情報システムと、患者毎の治療計画を作成する治療計画端末及び治療計画を管理する治療計画サーバを含む粒子線治療計画システムと、治療計画に対する治療記録を管理する患者ファイルサーバ及び治療計画に基づき治療日程をスケジュールするスケジューラを含む照射系システムと、粒子線情報システム、粒子線治療計画システム及び照射系システムを構成する各機器を監視対象とし、これら監視対象機器の異常を検出する監視サーバを備えた粒子線治療システムの監視システムであって、監視サーバと監視対象機器にDICOM規格を適用し、監視サーバは、DICOM通信により各監視対象機器に定周期で規定のコマンドを送信し、コマンドに対して規定の応答がない監視対象機器を異常であると判断し、異常情報通報手段により通報するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粒子線治療システムの粒子線情報システム、粒子線治療計画システム及び照射系システムを構成する各機器に異常が発生した際に、故障部位の特定を早急に行い対応することができるため、治療停止時間を短縮することが可能となる。また、医療業界標準規格であるDICOM規格を採用しているので、新たな機器の増加にも柔軟に対応することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る粒子線治療システムの監視システムの構成を示している。本実施の形態において監視システムの監視対象となるのは、粒子線情報システム(Radiology Information System;以下RISと略す)2、粒子線治療計画システム(RadiotherapyTreatment Planning;以下RTPと略す)3、及び照射系システム4をそれぞれ構成する各機器を含む計算機システムである。
【0010】
本実施の形態における粒子線治療システムの監視システムは、監視サーバ1と監視対象機器5〜13に、医療業界標準規格であるDICOM規格を適用したことを特徴としている。DICOM規格は、医療現場におけるCTをはじめとするモダリティ(医用画像診断装置)及びコンピュータ運用の普及に伴い、医用画像の転送仕様を統一するために米国で制定されたものであり、現在では医用画像の画像規格及び通信プロトコルを決める全世界共通仕様となっている。
【0011】
監視サーバ1は、DICOM通信により各機器の動作状況を監視するものであり、DICOM規格のVerification Service Classのサービスクラスユーザ(Service Class User;SCU)として動作し、サービスオブジェクトペア(Service Object Pair;SOP)クラスとして「Verification SOP Class」(1.2.840.10008.1.1)をサポートする。監視サーバ1の監視対象機器5〜13は、DICOM規格のVerification Service Classのサービスクラスプロバイダ(Service Class Provider;SCP)として動作し、監視サーバ1と同様に「Verification SOP Class」(1.2.840.10008.1.1)をサポートする。
【0012】
次に、監視対象機器5〜13について説明する。まず、RIS2を構成する機器として、RISサーバ5は、患者情報や患者毎の治療状況等のデータを管理するサーバである。画像管理サーバ6は、複数台のモダリティ8が撮影した画像データを管理するサーバであり、画像配信サーバ7は画像管理サーバ6で管理している画像データをWeb配信するサーバである。モダリティ8は、医用画像診断装置であり、コンピュータX線断層撮影装置(CT)、核磁気共鳴断層撮影装置(MR)、ポジトロン断層装置(PET)等である。
【0013】
また、RTP3を構成する機器として、治療計画サーバ9は、患者毎の治療計画を管理するサーバであり、治療計画端末10によって作成された患者毎の治療計画を治療状況情報として管理している。また、輪郭入力端末11は、CTやMR等のモダリティ8で得られた医用画像の重ね合わせや、画像上に各種臓器の輪郭を入力する装置である。
【0014】
さらに、照射系システム4を構成する機器として、患者ファイルサーバ12は、患者毎に作成された治療計画に対する治療記録を治療状況情報として管理するサーバであり、スケジューラ13は作成された治療計画に基づき、各患者の治療を実施する日をスケジュールする装置である。
【0015】
次に、フローチャートを参照しながら、監視サーバ1及び監視対象機器5〜13の動作について説明する。図2は、本実施の形態における監視サーバの動作を示すフローチャート、図3は、監視対象機器の動作を示すフローチャートである。
【0016】
図2に示すように、ステップ21(S21)において、監視サーバ1は、監視対象機器の情報を定義した設定ファイルを読込む。次に、DICOM規格のVerification Service ClassのSCUとして動作するため、ステップ22(S22)にて監視対象機器に対してアソシエーション確立要求を送信する。なお、アソシエーション確立とは、通信を始める前に暗号化方式や暗号鍵等の情報を交換、共有し、安全な通信路を確立することである。
【0017】
ステップ22においてアソシエーション確立が成功しなかった場合にはステップ23(S23)を実行し、成功した場合にはステップ24(S24)を実行する。ステップ23では、アソシエーション確立が成功しなかった監視対象機器に対して異常(故障状態)であると判断し、異常を検出したことを画面表示やパトライト点滅、または電子メール等の異常情報通報手段(図示せず)により通報する。
【0018】
また、ステップ24では、アソシエーション確立が成功した監視対象機器に対して「C-ECHO-RQ」を送信する。ここで送信が成功しなかった場合には、ステップ23において異常を検出したことを画面表示や電子メール等の異常情報通報手段により通報する。一方、「C-ECHO-RQ」の送信が成功した場合、ステップ25(S25)にて監視対象機器からの「C-ECHO-RSP」の受信を待つ。なお、「C-ECHO-RQ」「C-ECHO-RSP」等はコマンドのイメージであり、例えば監視サーバ1から送信した文字を監視対象機器がそのまま送り返してくるエコーバックのようなものである。
【0019】
ステップ25において、監視対象機器から「C-ECHO-RSP」を受信した場合には、その監視対象機器が正常に動作していると判断し、ステップ26(S26)においてその監視対象機器に対してアソシエーション切断要求を送信する。アソシエーション切断要求を受信した監視対象機器は、アソシエーションを切断する。
【0020】
一方、ステップ25において規定の応答がない場合、すなわち「C-ECHO-RSP」以外の応答を受信した場合や、設定ファイルに定義されたタイムアウト時間を過ぎても「C-ECHO-RSP」が受信されない場合には、ステップ23においてその監視対象機器に対して異常であると判断し、異常を検出したことを画面表示や電子メール等の異常情報通報手段により通報する。監視サーバ1は、上記の処理を監視対象機器5〜13に対して定周期で実施することにより、各機器の監視を行う。
【0021】
また、図3に示すように、監視対象機器5〜13の各機器は、監視サーバ1による監視が開始されるとステップ31(S31)のループに入り、ステップ32(S32)において監視サーバ1からのアソシエーション確立要求待ちの状態となる。ここでアソシエーション確立要求を受信すると、ステップ33(S33)にて「C-ECHO-RQ」受信待ちの状態となる。一方、アソシエーション確立要求を受信しない場合、最初のステップ31のループに戻り、ステップ32のアソシエーション確立要求待ちの状態となる。
【0022】
アソシエーション確立要求を受信し、さらに監視サーバ1からの「C-ECHO-RQ」受信に成功すると、ステップ34(S34)において監視サーバ1に応答し、「C-ECHO-RSP」を送信する。一方、監視サーバ1からの「C-ECHO-RQ」受信に成功しない場合、最初のステップ31のループに戻り、ステップ32のアソシエーション確立要求待ちの状態となる。
【0023】
ステップ34において「C-ECHO-RSP」送信に成功した場合、ステップ35(S35)にて監視サーバ1からのアソシエーション切断要求待ちの状態となり、アソシエーション切断要求を受信後、アソシエーションを切断する。その後、最初のステップ31のループに戻り、監視サーバ1からのアソシエーション確立要求待ちの状態となる。また、ステップ34において「C-ECHO-RSP」送信に成功しなかった場合も、最初のステップ31のループに戻る。
【0024】
以上のように、本実施の形態における粒子線治療システムの監視システムでは、監視サーバ1と各監視対象機器5〜13をDICOM通信により接続し、監視サーバ1は、各機器に対して定周期で規定のコマンドを送信し、送信したコマンドに対して規定の応答をしない機器を異常であると判断する。
【0025】
具体的には、監視サーバ1は、DICOM通信により、アソシエーション確立要求、「C-ECHO-RQ」送信、及び「C-ECHO-RSP」受信等によって各機器の状態を定周期で監視し、これらのいずれかのステップで通信が成功しなかった場合にその監視対象機器を異常すなわち故障状態であると判断し、異常を検出したことを画面表示やパトライト点滅、電子メール等の異常情報通報手段により直ちに通報するものである。
【0026】
本実施の形態によれば、粒子線治療システムのRIS2、RTP3及び照射系システム4を構成する監視対象機器5〜13に異常が発生した際に、故障部位の特定を早急に行い対応することができるため、治療停止時間を短縮することが可能となり、治療を待っている患者の負担を軽減することができる。また、医療業界標準規格であるDICOM規格を採用しているので、新たな機器の増加にも柔軟に対応することが可能である。
【0027】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視対象機器の動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、上記実施の形態1と同様の処理に加え、各監視対象機器5〜13が監視サーバ1に対して「C-ECHO-RSP」を送信する際に、その機器の動作状態を「機器状態情報」として付加することで、各監視対象機器5〜13の状態をより詳細に監視するものである。
【0028】
図4に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態における監視対象機器の動作について説明する。なお、図4に示すフローチャートは、ステップ41(S41)からステップ45(S45)については、上記実施の形態1における監視対象機器の動作を示すフローチャート(図3)のステップ31からステップ35と同様である。
【0029】
監視対象機器5〜13の各機器は、監視サーバ1による監視が開始され、ステップ41(S41)のループに入ると、ステップ42(S42)において監視サーバ1からのアソシエーション確立要求待ちの状態となる。ここでアソシエーション確立要求を受信すると、ステップ43(S43)にて「C-ECHO-RQ」受信待ちの状態となる。一方、アソシエーション確立要求を受信しない場合、最初のステップ41のループに戻り、ステップ42のアソシエーション確立要求待ちの状態となる。
【0030】
アソシエーション確立要求を受信し、さらに監視サーバ1からの「C-ECHO-RQ」受信に成功すると、ステップ46(S46)において、その機器自身の機器状態情報を取得する。機器状態情報とは、機器の動作状態を示すもので「停止中」、「起動中」のように自動的に遷移するものである。また、メンテナンスツール等から任意に変更することができ、「定期点検」や「修理中」等の状態を設定することができる。
【0031】
次に、ステップ44(S44)にて、「C-ECHO-RSP」送信時に、プライベートタグのデータとしてステップ46で得た機器状態情報を付加し、監視サーバ1に応答する。一方、監視サーバ1からの「C-ECHO-RQ」受信に成功しない場合、最初のステップ41のループに戻り、ステップ42のアソシエーション確立要求待ちの状態となる。
【0032】
ステップ44において「C-ECHO-RSP」送信に成功した場合、ステップ45(S45)にて監視サーバ1からのアソシエーション切断要求待ちの状態となり、アソシエーション切断要求を受信後、アソシエーションを切断する。その後、最初のステップ41のループに戻り、監視サーバ1からのアソシエーション確立要求待ちの状態となる。また、ステップ44において「C-ECHO-RSP」送信に成功しなかった場合も、最初のステップ41のループに戻る。
【0033】
以上のように、本実施の形態によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、監視サーバ1において各機器の機器状態情報が得られるため、各機器の動作状態を詳細に監視することができ、定期点検中や修理中の機器に対して異常(故障中)と判断することを回避でき、効率の良い監視を行うことができる。その結果、異常が発生した際により早急な対応を行うことが可能となる。
【0034】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視サーバの動作を示すフローチャートである。上記実施の形態2では、監視対象機器5〜13が監視サーバ1に対して「C-ECHO-RSP」を送信する際に、機器状態情報を付加することで、各機器の動作状態を監視するようにしたが、本実施の形態では、定期点検や修理により意図的に停止された監視対象機器5〜13を、監視サーバ1の監視対象から除外するようにしたものである。
【0035】
図5に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態における監視サーバの動作について説明する。なお、図5に示すフローチャートは、ステップ51(S51)からステップ56(S56)については、上記実施の形態1における監視サーバの動作を示すフローチャート(図2)のステップ21からステップ26と同様であるので説明を省略する。
【0036】
監視対象機器5〜13のうち、定期点検や修理、機材交換等のために停止している機器は、監視サーバ1からの「C-ECHO-RQ」に対して応答することができないため、上記実施の形態1においては異常と判断される。そこで、本実施の形態では、ステップ52(S52)で監視サーバ1が各機器に対してアソシエーション確立要求を送信する前に、ステップ57(S57)において、定期点検や修理、機材交換等のために停止している監視対象機器を監視対象から除外するようにしたものである。
【0037】
具体的には、監視サーバ1を停止することなく、画面上の操作、メンテナンスツール等から任意に該当する機器を監視対象から除外することができる。これにより、監視対象外となった機器に対しては、以降のステップ52、ステップ54(S54)においてアソシエーション確立要求や「C-ECHO-RQ」送信は行われない。
【0038】
また、定期点検や修理が完了し、監視対象から除外されていた機器が起動を開始した場合も同様に、ステップ57において、監視サーバ1を停止することなく、監視対象から除外されていた機器を監視対象に加えることができる。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、定期点検や修理により意図的に停止された監視対象機器を、監視サーバ1の監視対象から除外するようにしたので、監視サーバ1が定期点検中や修理中の機器に対して異常(故障中)と判断することを回避でき、効率の良い監視を行うことができる。
【0040】
実施の形態4.
図6は、本発明の実施の形態4に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視サーバの動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、監視対象機器5〜13のうち、患者の治療計画や治療記録を含む治療状況情報を保持管理する機器に対して監視サーバ1が患者IDを送信し、これを受信した監視対象機器が患者IDに対応する治療状況情報を監視サーバ1に送信することにより、監視サーバ1が患者の治療状況情報を統括して監視するようにしたものである。
【0041】
図6に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態における監視サーバの動作について説明する。なお、図6に示すフローチャートは、ステップ61(S61)からステップ66(S66)については、上記実施の形態3における監視サーバの動作を示すフローチャート(図5)のステップ51からステップ56(ただしステップ54を除く)と同様であるので説明を省略する。
【0042】
監視サーバ1は、ステップ62(S62)において、監視対象機器5〜13に対してアソシエーション確立要求を送信し、これが成功した場合、ステップ640(S640)にて、監視対象機器5〜13の各機器について、患者状況を監視可能な機器であるか否か、言い換えると患者の治療状況情報を保持管理している機器か否かを判断する。
【0043】
その結果、治療計画を管理する治療計画サーバ9や、治療記録を管理する患者ファイルサーバ12のように、患者の治療状況情報を保持管理している機器に対しては、ステップ641(S641)において、「C-ECHO-RQ」を送信する際に、治療状況情報を取得したい患者ID(タグ番号:0010,0020)のリストを付加して送信する。なお、患者IDのリストは、プライベートなシーケンスタグの要素として付加する。
【0044】
一方、治療計画端末10、輪郭入力端末11及びスケジューラ13など、患者の治療状況情報を保持管理していない機器については、ステップ642(S642)において、上記実施の形態1と同様に「C-ECHO-RQ」のみを送信する。
【0045】
次に、図7に示すフローチャートを参照しながら、患者の治療状況情報を保持管理する監視対象機器の動作について説明する。なお、図7に示すフローチャートは、ステップ71(S71)からステップ76(S76)については、上記実施の形態2における監視対象機器の動作を示すフローチャート(図4)のステップ41からステップ46と同様であるので説明を省略する。
【0046】
患者の治療状況情報を保持管理する監視対象機器は、計算機の状態が正常の場合、ステップ77(S77)において監視サーバ1が「C-ECHO-RQ」送信時に付加したプライベートなシーケンスタグ内の患者IDのリストを取得する。続いて、ステップ78(S78)においてリストに載っている患者IDに対応した患者毎の治療状況情報を取得する。全ての患者IDに対する治療状況情報の取得が完了した後、ステップ79(S79)において患者IDに対応した治療状況情報のリストを作成し、ステップ74(S74)において患者IDに対応した治療状況情報のリストを「C-ECHO-RSP」に付加して送信する。なお、計算機の状態が正常でない場合には、治療状況情報の送信は行われない。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、上記実施の形態1〜3と同様の効果に加え、監視サーバ1により患者の治療状況情報を統括して監視することが可能となるため、粒子線治療の効率が上がり、医療機関及び患者双方にとって多大な利益が得られる。
【0048】
実施の形態5.
図8は、本発明の実施の形態5に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視対象機器の動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、監視サーバ1と異なるネットワーク上に存在する外部機器と監視サーバ1との接続を仲介するプロキシ機能を監視対象機器に持たせ、外部機器の監視を可能としたものある。なお、本実施の形態におけるプロキシ機能とは、監視サーバ1と直接接続できない機器(計算機)に代わって、代理として接続を行う機能を意味している。
【0049】
図8に示すフローチャートを参照しながら、本実施の形態におけるプロキシ機能を備えた監視対象機器の動作について説明する。なお、図8に示すフローチャートは、ステップ81(S81)からステップ89(S89)については、上記実施の形態4における監視対象機器の動作を示すフローチャート(図7)のステップ71からステップ79と同様であるので説明を省略する。
【0050】
プロキシ機能を備えた監視対象機器は、ステップ80(S80)において、起動時にDICOM規格に記述されているAEタイトル(Application Entity Title)毎の定義がされた設定ファイルを読込む。その後、ステップ90(S90)において、監視サーバ1がDICOM規格に則ってアソシエーション確立要求時に指定してきたAEタイトルが、これを受けた監視対象機器(計算機)自身のものであるか否かを判断する。
【0051】
前述のAEタイトルが、これを受けた監視対象機器自身のものであった場合には、ステップ87(S87)に進み、上記実施の形態4と同様の動作を行う。一方、前述のAEタイトルが、これを受けた監視対象機器自身のものではなく、設定ファイルに記述されたAEタイトルであれば、「C-ECHO-RQ」受信時に指定されたAEタイトルに対応する機器に対して、ステップ91(S91)においてアソシエーション確立要求を送信する。すなわち、これ以降のステップ91〜ステップ94(S94)は、プロキシ機能を備えた監視対象機器が、AEタイトルに対応する機器に対して、監視サーバと同様の動作を行うものである。
【0052】
ステップ91においてアソシエーション確立要求が成功した場合、ステップ92(S92)にて、AEタイトルに対応する機器について、患者状況を監視可能な機器であるか否かを判断する。患者の治療状況情報を保持管理している機器に対しては、ステップ921(S921)において、「C-ECHO-RQ」を送信する際に、治療状況情報を取得したい患者IDのリストを付加して送信する。一方、患者の治療状況情報を保持管理していない機器については、ステップ922(S922)において「C-ECHO-RQ」のみを送信する。
【0053】
「C-ECHO-RQ」の送信が成功した場合、ステップ93(S93)にてAEタイトルに対応する機器からの「C-ECHO-RSP」の受信を待つ。「C-ECHO-RSP」を受信した場合には、その機器が正常に動作していると判断し、ステップ94(S94)においてAEタイトルに対応する機器に対してアソシエーション切断要求を送信する。
【0054】
また、ステップ91においてアソシエーション確立要求送信が成功しなかった場合、ステップ921及びステップ922において「C-ECHO-RQ」送信が成功しなかった場合、及びステップ93において「C-ECHO-RSP」受信が成功しなかった場合は、AEタイトルに対応する機器に対して異常であると判断し、ステップ84(S84)において監視サーバ1に対して「C-ECHO-RSP」を送信する際に異常情報を付加する。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、上記実施の形態1〜4と同様の効果に加え、監視対象機器にプロキシ機能を持たせることにより、監視サーバ1と異なるネットワーク上に存在する外部機器(計算機)に対しても監視することが可能となり、新たな機器の増加にも柔軟に対応できる監視システムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明にかかる粒子線治療システムの監視システムは、粒子線治療装置に関連した計算機システムにおいて異常が発生した際に故障部位の特定を早急に行うことが可能な監視システムとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る粒子線治療システムの監視システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視サーバの動作を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視対象機器の動作を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視対象機器の動作を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視サーバの動作を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る粒子線治療システムの監視システムにおける監視サーバの動作を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る粒子線治療システムの監視システムにおける患者の治療状況情報を保持管理する監視対象機器の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係る粒子線治療システムの監視システムにおけるプロキシ機能を備えた監視対象機器の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 監視サーバ、2 粒子線情報システム(RIS)、3 粒子線治療計画システム(RTP)、4 照射系システム、5 RISサーバ、6 画像管理サーバ、7 画像配信サーバ、8 モダリティ、9 治療計画サーバ、10 治療計画端末、11 輪郭入力端末、12 患者ファイルサーバ、13 スケジューラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置及びその画像データを管理する画像管理サーバを含む粒子線情報システムと、
患者毎の治療計画を作成する治療計画端末及び前記治療計画を管理する治療計画サーバを含む粒子線治療計画システムと、
前記治療計画に対する治療記録を管理する患者ファイルサーバ及び前記治療計画に基づき治療日程をスケジュールするスケジューラを含む照射系システムと、
前記粒子線情報システム、前記粒子線治療計画システム及び前記照射系システムを構成する各機器を監視対象とし、これら監視対象機器の異常を検出する監視サーバを備えた粒子線治療システムの監視システムであって、
前記監視サーバと前記監視対象機器にDICOM規格を適用し、前記監視サーバは、DICOM通信により前記各監視対象機器に定周期で規定のコマンドを送信し、前記コマンドに対して規定の応答がない前記監視対象機器を異常であると判断し、異常情報通報手段により通報するようにしたことを特徴とする粒子線治療システムの監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の粒子線治療システムの監視システムであって、前記監視対象機器は、前記監視対象機器の動作状態を示す機器状態情報を、前記規定の応答に付加して前記監視サーバに応答することを特徴とする粒子線治療システムの監視システム。
【請求項3】
請求項2記載の粒子線治療システムの監視システムであって、前記監視対象機器が定期点検や修理により停止される場合、前記機器状態情報をメンテナンスツールにより任意に変更可能であることを特徴とする粒子線治療システムの監視システム。
【請求項4】
請求項1記載の粒子線治療システムの監視システムであって、前記監視対象機器が定期点検や修理により停止される場合、前記監視サーバを停止することなく前記監視対象機器を監視対象から除外し、定期点検や修理が完了して前記監視対象機器が起動を開始した場合、前記監視サーバを停止することなく前記監視対象機器を監視対象に加えることを特徴とする粒子線治療システムの監視システム。
【請求項5】
請求項1記載の粒子線治療システムの監視システムであって、前記監視サーバは、前記治療計画及び前記治療記録を含む治療状況情報を管理する前記監視対象機器に対して患者IDを送信し、これを受信した前記監視対象機器が前記患者IDに対応する前記治療状況情報を前記監視サーバに送信することを特徴とする粒子線治療システムの監視システム。
【請求項6】
請求項1記載の粒子線治療システムの監視システムであって、前記監視対象機器は、前記監視サーバと異なるネットワーク上に存在する外部機器と前記監視サーバとの接続を仲介するプロキシ機能を備え、前記外部機器の監視を行うことを特徴とする粒子線治療システムの監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−136313(P2009−136313A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312352(P2007−312352)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】