説明

粒子線治療施設

【課題】イメージングステーションの占有スペースを削減することで粒子線治療施設の敷地面積を縮小できる粒子線治療施設を提供することにある。
【解決手段】本発明は、加速された荷電粒子ビームを照射対象に出射する照射装置2、照射対象を支持する支持台10、及びX線を発生して前記照射対象のX線撮像をするX線撮像装置8a,8b,9a,9cを設置する治療照射室3と、X線撮像装置8a,8b,9a,9cを操作する機器を設置するイメージングステーション4と、治療照射室3とその外部である廊下6とをつなぐ通路5とを備え、イメージングステーション4を、この廊下6から治療照射室3へ向かう通路5の終端部に設置することによって、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線照射システムを設置する粒子線治療施設に係り、特に、荷電粒子ビーム(陽子線や重粒子線)を照射する粒子線照射システムに適用するのに好適な粒子線治療施設に関する。
【背景技術】
【0002】
各種放射線を照射することによって、腫瘍細胞を壊死させることを目的とする放射線治療は、近年広く行われている。患者に照射する放射線としては、広く利用されているX線だけでなく、陽子線や重粒子線(炭素線)等の荷電粒子ビームを使った治療も行われている。
【0003】
放射線治療の重要なプロセスの一つにベッド位置決め(患者位置決め)がある。ベッド位置決めとは、一般に、治療計画装置から出力されたDRR(Digital Reconstructed Radiograph)画像と治療のための放射線照射の前にX線撮像装置を用いて治療用ベッド(以下、ベッド)の上に患者を寝かせた状態で撮影するX線画像(DR画像,Digital Radiograph画像)とを比較することで、治療計画時に決定した照射標的の位置と現在のベッド上の照射標的の位置とのズレを算出し、ベッドの移動量を求め、ベッド(患者)を位置決めするプロセスである。このようなベッド位置決め時に、現在のベッド上の照射標的をX線撮影するのがX線撮像装置である。粒子線治療施設には、このようなX線撮像装置を含むX線撮像システムを操作する領域(以下、イメージングステーション)と、患者を支持するベッド及び粒子線照射システムの照射装置が設置される治療照射室と、粒子線を生成する粒子線発生装置が配置される領域がある。
【0004】
まず、患者が治療照射室に入室すると、医療スタッフが患者を患者支持台(ベッド)に固定する。その後、医療スタッフはイメージングステーションのもとへ向かいX線撮像システムの操作を行い、X線撮影を行う。ベッドに固定された患者を現在撮影したX線画像(現在画像)と治療計画時に作成された画像(治療計画画像)を比較し、治療計画時に決定した照射標的の位置と現在画像であるベッド上の照射標的の位置を比較する。これらの位置がすれている場合、患者支持台を移動してベッド位置決めを行う。ベッド上の照射標的の位置と治療計画時に決定した照射標的の位置とが一致したことを確認すると、医療スタッフは、治療のための粒子線照射開始を出力する。これにより、患者に対し正確な位置に粒子線を照射することが可能となる。
【0005】
粒子線治療施設内でのイメージングステーションの配置として、図6に示すように、治療照射室内に専用の部屋として設置する方法や、図7に示すように、治療照射室と外部とをつなぐ通路(迷路)の途中にスペースを設けて設置する方法がある。特許文献1では、治療照射室の外に別途、イメージングステーションを設置する例が記載されている。このように、粒子線治療施設では粒子線の照射のための制御室とは別に患者位置確認のためにイメージングステーションを設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−27681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粒子線治療施設は、粒子線より発生した二次放射線が漏洩しないよう大掛かりな遮蔽が必要となる。遮蔽のために、治療照射室を囲む壁や扉を厚くしなければならない。そのため、粒子線治療施設の敷地面積は大きくなる。
【0008】
粒子線治療施設では、背景技術記載の技術を実現するため、また医療スタッフをX線から防護するためイメージングステーション4を設置するための占有スペースを確保しなければならない。この占有スペースを設けることにより、敷地面積が大きくなるという課題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために鑑みてなされたものであり、その目的は、照射治療室或いは迷路に設置されたイメージングステーションの占有スペースを削減することで粒子線治療施設の敷地面積を縮小することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、加速された荷電粒子ビームを照射対象に出射する照射装置2、照射対象を支持する患者支持台10、及びX線を発生して前記照射対象のX線撮像をするX線撮像装置8a,8b,9a,9cを設置する治療照射室3と、X線撮像装置8a,8b,9a,9cを操作する機器を設置するイメージングステーション4と、治療照射室3とその外部である廊下6とをつなぐ通路5とを備え、イメージングステーション4を、この廊下6から治療照射室3へ向かう通路5の終端部に設置することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒子線治療施設の敷地面積を縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な一実施形態である粒子線治療施設ガントリ照射室の全体配置を表す図である。
【図2】本発明の好適な一実施形態である粒子線治療施設固定照射室の全体配置を表す図である。
【図3】患者位置確認のためのX線撮像システムの機器構成を表す図である。
【図4】図1,図2の配置におけるイメージングステーション4の全体構成を表すレイアウト図である。
【図5】粒子線治療における患者位置確認の手順の例である。
【図6】従来の粒子線治療施設ガントリ照射室の全体配置において、イメージングステーション4を治療照射室3内に1つの部屋として設置した配置を表す図である。
【図7】従来の粒子線治療施設ガントリ照射室の全体配置において、イメージングステーション4を通路5途中に占有のスペースを設けて設置した配置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の粒子線治療施設の配置について、図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0014】
本実施例の粒子線治療施設は、図1に示すように、治療照射室3、治療照射室3と外部とをつなぐ通路5、治療照射室3と通路5の間に設置される遮蔽ドア40、通路5と外部の廊下の間に設置される遮蔽ドア41、イメージングステーション4、加速器設置室(図示せず)を備える。図1は本実施例の粒子線治療施設ガントリ照射室の全体配置を表す図である。本実施例の粒子線治療施設の配置は、粒子線治療施設に設置されている回転ガントリを備える治療照射室に適応することができる。この粒子線治療施設は、図示しないが、荷電粒子(陽子や重粒子(炭素イオン)等)を生成するイオン源、生成された荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速する円形加速器(例えば、シンクロトロンやサイクロトロン)、加速された荷電粒子ビームを照射対象に出射する照射装置2、円形加速器と照射装置をつなぎ、円形加速器から出射された荷電粒子ビームを照射装置に輸送するビーム輸送装置を備える。イオン源、円形加速器及びビーム輸送装置は、加速器設置室に設置されている。この加速器設置室は、放射線を遮蔽する機能を有する遮蔽壁によって囲まれている。
【0015】
本実施例のイメージングステーション4は、図1に示すように、通路5の治療照射室3側終端(通路5と治療照射室3の境界)に設置されている。このイメージングステーション4は、後述するが、治療照射室3とイメージングステーション4との間に鉛ガラス窓11が設置されている(図4)。このため、医療スタッフ(医師,診断放射線技師など)は、イメージングステーション4内で作業しながら、別室である治療照射室3内の患者の状態を直接、確認・監視できる。治療照射室3内では、ベッド位置決め(患者位置決め)のためのX線撮像や粒子線治療システムからの粒子線(陽子線や重粒子線)の照射を実施するため、治療照射室3を取り囲むように遮蔽壁42を設置することが必要となる。遮蔽壁42は、治療照射室3内で発生した放射線を遮蔽する機能を有する。治療照射室3とその外部にある廊下6をつなぐ通路5は、放射線を遮蔽するために迷路状に形成されている。本実施例の通路5は、図1に示すように、治療照射室3を出ると、コの字状になっており、その終端部の突き当たりが直角に曲がって外部の廊下6に繋がる。通路5を形成するコの字部分の中心部分及び外周部分には、遮蔽壁42が形成されている。通路5は、放射線を遮蔽するための遮蔽壁42によって取り囲まれている。治療照射室3と通路5の間には遮蔽ドア40が設置され,外部の廊下6と通路5の間(廊下6から通路5へ入る入口)には遮蔽ドア41が設置されている。
【0016】
図3は患者位置確認のためのX線撮像システムの機器構成を表す図である。X線撮像システムは、X線画像撮影装置及びX線画像撮影制御装置を備える。
【0017】
X線画像撮像装置は、治療照射室3内に配置され、図3に示すように、X線発生装置(X線源)8a,8bと、このX線発生装置8a,8bから放射されたX線を受信するX線受像装置9a,9bを備える。治療照射室3内には、図1に示すように、加速された粒子線を照射対象に出射する照射装置2と、照射対象を支持する患者支持台(ベッドやイス等)10と、X線を発生して照射対象のX線撮像をするX線撮像装置が設置される。X線受像装置9aが、X線発生装置8aから放射されたX線を受信するように、X線発生装置8aに対向する位置に配置される。X線受像装置9bは、X線発生装置8bから放射されたX線を受信するように、X線発生装置8bに対向する位置に配置される。X線受像装置9a,9bは、フラットパネルディテクタやイメージインテンシファイア等を使用する。患者支持台10は、X線発生装置とX線受像装置との間に位置し、患者支持台10上に照射標的が存在する。このようなX線画像撮像装置が患者支持台10上に横たわる照射標的を撮像する。本実施例では、患者支持台10はベッドであるが、イス等であってもよい。
【0018】
X線画像撮像制御装置は、イメージングステーション4内に配置される。図4は、図1の配置におけるイメージングステーション4の全体構成を表すレイアウト図である。X線画像撮像制御装置は、図4に示すように、ベッド位置決めのためにX線撮影するX線画像撮像装置を制御するX線制御卓12、撮影したX線画像を表示装置に表示し、現在画像と治療計画画像と比較して患者位置のズレを計算する位置決め支援システム16、算出した位置ズレを補正するために患者支持台10を動かし微調整するためのペンダント13、X線撮影を二方向同時に行うためのリレーパネル制御卓14を備える。X線制御卓12は、X線画像撮影装置を使ったX線撮像のための、例えばX線源の電圧や撮影時間等の撮影に必要な撮影条件を設定する機能と、これらの設定された撮影条件に基づいて、X線画像撮影装置(X線発生装置8a,8bやX線受像装置9a,9b)を制御する機能を持つ。X線画像撮像装置で撮影されたX線画像は、位置決め支援システム16に送信される。また、イメージングステーション4には、X線照射中に患者7を監視するための鉛ガラス窓11が設置されている。
【0019】
粒子線治療システムにおけるベッド位置決めの手順を図5に示す。
【0020】
まず、患者が治療照射室3に入室すると(ステップ17)、医療スタッフが患者支持台10に患者を固定する。その後、医療スタッフは、治療照射室3に設置された制御装置(図示せず)を用いて、患者支持台10を移動させ、患者の粗位置決めを実施する(ステップ19)。この患者粗位置決めが終了すると、医療スタッフは、図3のように、X線撮像装置をセットする(ステップ20)。具体的には、X線発生装置8aとX線受像装置9aとが対向する位置であって、これらを結ぶ線上に患者支持台10上の患者患部が位置するように、X線発生装置8a及びX線受像装置9aを移動する。また、X線発生装置8bとX線受像装置9bとが対向する位置であって、これらを結ぶ線上に患者支持台10上の患者患部が位置するように、X線発生装置8b及びX線受像装置9bを移動する。このようなX線撮像装置のセットが完了すると、医療スタッフはイメージングステーション4に移動する。
【0021】
イメージングステーション4に到着し、遮蔽ドア40,41が閉じられ、照射治療室3に他の人(患者支持台10上にのせられた患者以外の人や医療スタッフ)が居ないことを確認すると、医療スタッフは、X線制御卓12からX線撮像開始信号を入力する。このX線撮像開始信号を受信したX線撮像装置は、X線発生装置8a,8bからのX線の放射を開始する。X線発生装置8aから放射されて患者患部を通過したX線を、X線受像装置9aで受信することによって、患者患部の正面からのX線撮像をする。また、X線発生装置8bから放射されて患者患部を通過したX線を、X線受像装置9bで受信することによって、患者患部の正面からのX線撮像をする。このように、本実施例では、正面及び側面の二方向からのX線撮影(ステップ21)を行う。X線画像の作成に必要なX線画像データが取得されると、X線発生装置8a,8bからのX線照射が停止される。
【0022】
医療スタッフは、治療照射室3内にいる患者位置を確認する。X線受像装置9a,9bは、受信したX線画像データを、位置決め支援システム16に出力する。位置決め支援システム16は、受信したX線画像データから、患者患部の現在画像を作成し、表示装置に表示する。また、位置決め支援システム16は、事前に治療計画装置から受信して記憶装置に記憶していた当該患者の治療計画画像を読み込み、表示装置に表示する。位置決め支援システム16は、表示装置に表示された現在画像と治療計画画像とを比較し、患者支持台10にある現在の照射標的の位置と治療計画時に決定した照射標的の位置とがずれているか否か(予め定められた許容範囲内にあるか)を判断する。現在の照射標的の位置が、治療計画時の照射標的の位置からずれている(許容範囲外である)と判断した場合、位置決め支援システム16は、照射標的の位置を一致させる(許容範囲内とする)ために、この照射標的の位置のズレ量に基づいて、患者支持台10の移動量を求める。支持台制御装置(図示せず)は、位置決め支援システム16からの支持台移動量を受信すると、この支持台移動量に基づいて、患者支持台10を移動させて患者位置の微調整を行う(ステップ22)。患者支持台10が停止すると、医療スタッフは、必要に応じて、X線操作卓12からX線撮像開始信号を入力し、再度、X線撮影を実施し、位置確認を行う。位置決め支援システム16が、患者支持台10にいる現在の照射標的の位置と治療計画時に決定した照射標的の位置とが一致していると判断した場合(予め定められた許容範囲内であり、照射標的の位置が一致していると判断された場合)、X線撮像が終了し、ベッド位置決めが終了する。X線発生装置8a,8bからのX線照射の停止を確認すると、医療スタッフは、イメージングステーション4から出て、治療照射室3と通路5の間に設置される遮蔽ドア40を開け、治療照射室3に入室する。その後、医療スタッフは、X線撮像装置を移動させて退避させる(ステップ23)。
【0023】
医療スタッフは、粒子線照射のための準備を開始する。具体的には、患者支持台10に横たわる患者に対応する患者コリメータを、照射装置2内のビーム軌道上に設置する(ステップ24)。その後、医療スタッフがイメージステーション4に戻り、操作装置(図示せず)から治療準備開始信号を出力すると、回転ガントリ1が所定の回転角度に回転され(ステップ25)、照射装置のスノートが所定の位置に設置される(ステップ26)。その後、患者支持台10に横たわる患者に対応する患者ボーラスが照射装置内のビーム軌道上に設置される(ステップ27)。粒子線照射のための準備が完了し、治療照射室3内に患者支持台10に横たわる患者以外の人(他の医療スタッフや他の患者等)が居ないことを確認すると、医療スタッフはイメージステーション4内の操作装置(図示せず)から粒子線照射開始信号を入力する。この粒子線照射開始信号が粒子線照射システムの制御装置に出力されると、照射装置2からの粒子線照射が開始され、治療開始となる(ステップ27)。
【0024】
本実施例の粒子線治療施設の配置によれば、X線撮影を実施している間及びその前後において、医療スタッフはイメージステーション4に設置された鉛ガラス窓11より、直接、患者7の様子を監視・確認することができる。このように、患者7の状態を直接、確認することができるため、モニタ監視する場合と比較してより広い視野にて、患者7及びその周辺状況を監視することができる。更に、本実施例の粒子線治療施設の配置によれば、患者7の監視中に異変が生じた場合、図1に表されているようにイメージングステーション4と患者支持台10の距離が近いため、即座に患者7の元へ駆けつけることができる。上記二点より、患者7に対する安全性の向上が期待できる。
【0025】
本実施例では、イメージステーション4内に設置されるガラス窓は鉛ガラス窓を採用したが、X線不透過物質を含む窓であればよく、この鉛ガラス窓11の代わりに放射線遮蔽元素としてストロンチウムやバリウムなどを含む放射線遮蔽ガラスを用いた窓を使用することもできる。
【0026】
また、本実施例によれば、イメージングステーション4が治療照射室3と人が往来する治療照射室3外の廊下6を結ぶ通路5に配置されているため、イメージングステーション4にいる医療スタッフはX線照射中に誤って廊下6より治療照射室3へ進入する者に対する監視も同時に行うことができる。
【0027】
このように、本実施例によれば、粒子線治療施設内に滞在する者全員に対する安全性の向上することができる。
【0028】
本実施例により削減できた敷地面積分の有効利用として、遮蔽の強化が挙げられる。図1に表されているように、例えば粒子線治療施設同等の敷地面積において、イメージングステーション4に対し遮蔽壁を併設追加することができる。これにより遮蔽能力が増し、同等の遮蔽能力が必要な粒子線治療施設において、通路5と廊下6の間に遮蔽のための重厚な扉の設置が不要となる。これにより、扉の開閉時間が短縮でき、粒子線治療におけるスループットを向上することができる。
【0029】
本実施例によれば、イメージングステーション4を通路5の途中に占有スペースを設けず、通路スペースとイメージングステーション4の占有スペースを共通化することで、粒子線治療施設の敷地面積を縮小することが期待できる。
【0030】
さらに、X線不透過物質を含む窓を設置することで、医療スタッフは窓より直接患者7の様子を監視することができ、モニタによる監視より広い視野にて患者7及びその周辺状況を監視できるようになり、患者7に対する安全性の向上が期待できる。
【実施例2】
【0031】
以下に、本発明の他の実施例である粒子線治療施設について、図2を用いて説明する。
【0032】
本実施例の粒子線治療施設は、実施例1の粒子線治療施設において回転ガントリ1を有する治療照射室3を、固定照射装置用の治療照射室(固定照射室)3Aに替えた構成を有する。図2は、本実施例の粒子線治療施設の固定照射室3Aの全体配置を表す図である。本実施例の粒子線治療施設の配置は、固定照射用の治療照射室3Aにも適用することができる。
【0033】
本実施例の粒子線治療施設は、図2に示すように、治療照射室3A、治療照射室3Aと外部とをつなぐ通路5、治療照射室3と通路5の間に設置される遮蔽ドア40、通路5と外部の廊下の間に設置される遮蔽ドア41、イメージングステーション4を備える。本実施例においても、図2に示すように、イメージングステーション4は通路5の治療照射室3側終端に配置されている。
【0034】
本実施例の粒子線治療施設の配置によれば、X線撮影を実施している間及びその前後において、医療スタッフはイメージステーション4に設置された鉛ガラス窓11より、直接、患者7の様子を監視・確認することができる。このように、患者7の状態を直接、確認することができるため、モニタ監視する場合と比較して広い視野にて、患者7及びその周辺状況を監視することができる。更に、本実施例の粒子線治療施設の配置によれば、患者7の監視中に異変が生じた場合、図1に表されているようにイメージングステーション4と患者支持台10の距離が近いため、即座に患者7の元へ駆けつけることができる。上記二点より、患者7に対する安全性の向上が期待できる。
【0035】
本実施例では、イメージステーション4内に設置されるガラス窓は鉛ガラス窓を採用したが、この鉛ガラス窓11の代わりに放射線遮蔽元素としてストロンチウムやバリウムなどを含む放射線遮蔽ガラスを用いた窓を使用することもできる。
【0036】
また、本実施例によれば、図2に表されているように、イメージングステーション4が治療照射室3と人が往来する治療照射室3外の廊下6を結ぶ通路5に配置されているため、イメージングステーション4にいる医療スタッフは、X線照射中に誤って廊下6より治療照射室3へ進入する者に対する監視も同時に行うことができる。
【0037】
このように、本実施例によれば、粒子線治療施設内に滞在する者全員に対する安全性の向上することができる。
【0038】
本実施例により削減できた敷地面積分の有効利用として、遮蔽の強化が挙げられる。図2に表されているように、例えば粒子線治療施設同等の敷地面積において、イメージングステーション4に対し遮蔽壁を併設追加することができる。これにより遮蔽能力が増し、同等の遮蔽能力が必要な粒子線治療施設において、通路5と廊下6の間に遮蔽のための重厚な扉の設置が不要となる。これにより、扉の開閉時間が短縮でき、粒子線治療におけるスループットを向上することができる。
【0039】
本実施例によれば、イメージングステーション4を通路5の途中に占有スペースを設けず、通路スペースとイメージングステーション4の占有スペースを共通化することで、粒子線治療施設の敷地面積を縮小することができる。
【0040】
さらに、X線不透過物質を含む窓を設置することで、医療スタッフは窓より直接患者7の様子を監視することができ、モニタによる監視より広い視野にて患者7及びその周辺状況を監視できるようになり、患者7に対する安全性の向上できる。
【符号の説明】
【0041】
1 ガントリ
3 治療照射室
4 イメージングステーション
5 通路
6 廊下
7 患者
8 X線撮像システム(X線発生装置)
9 X線撮像システム(X線受像器)
10 患者支持台
11 鉛ガラス窓
12 X線操作卓
13 ペンダント
14 リレーパネル制御卓
15 位置決め計算装置
16 位置決め支援システム
40,41 遮蔽ドア
42 遮蔽壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速された荷電粒子ビームを照射対象に出射する照射装置、前記照射対象を支持する支持台、及びX線を発生して前記照射対象のX線撮像をするX線撮像装置が設置される治療照射室と、
前記X線撮像装置を操作する機器を設置するイメージングステーションと、
前記治療照射室とその外部である廊下とをつなぐ通路とを備え、
前記イメージングステーションは、前記廊下から前記治療照射室へ向かう前記通路の終端部に設置されていることを特徴とする粒子線治療施設。
【請求項2】
前記イメージングステーションは、放射線を遮蔽し、前記支持台に支持された前記照射対象を直接確認できる遮蔽窓を設置することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療施設。
【請求項3】
前記治療照射室と前記通路の間に、放射線を遮蔽する遮蔽ドアを設置することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子線治療施設。
【請求項4】
前記廊下と前記通路の間に、放射線を遮蔽する遮蔽ドアを設置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粒子線治療施設。
【請求項5】
前記粒子線治療施設は、
荷電粒子ビームを加速する円形加速器、前記円形加速器から出射した前記荷電粒子ビームを前記照射対象に照射する前記照射装置、及び前記円形加速器と前記照射装置をつなぐビーム輸送装置とを備える粒子線治療システムを設置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粒子線治療施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−72460(P2011−72460A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225910(P2009−225910)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】