粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置
【課題】信頼性の高いビームの位置ずれ検出を行うと共に、一部のビーム位置モニタが故障でもビームの位置ずれ検出を可能とする。
【解決手段】シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置であって、各照射コース毎にビーム位置モニタを複数個設置し、各照射コースの各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、各照射コースの複数のビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースのビームの位置ずれを判定する。
【解決手段】シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置であって、各照射コース毎にビーム位置モニタを複数個設置し、各照射コースの各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、各照射コースの複数のビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースのビームの位置ずれを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療装置は、一般に粒子ビームを発生させる入射器、入射された粒子ビームを必要な速度まで加速させるシンクロトロン、加速させた粒子ビームを患者に照射する複数の照射室、シンクロトロンから各照射室にビームを導入する照射コースから構成され、照射コースにはコースの進行方向に対する中心位置からX,Y方向へのビームの位置ずれを測
定するビーム位置モニタが設置されている。従来の粒子線治療装置においては、特許文献1や特許文献4にあるようにビーム位置モニタ自体の機構に関するもの、特許文献2や特許文献3にあるように複数のビーム位置モニタの情報から電磁石の電流値を調整するものがある。
【0003】
従来の粒子線治療装置は、図12に示すように、ビーム位置ずれを検出するために、各照射コース毎に1つのビーム位置モニタが設置されている。1は入射器、2はシンクロトロン、3a,3b,3cは各照射室、4a,4b,4cは各照射室へビームを導入する各照射コース、5は照射コース4aに設置されたビーム位置モニタ、6は照射コース4bに設置されたビーム位置モニタ、7は照射コース4cに設置されたビーム位置モニタである。
【0004】
次に、従来の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置の動作について説明する。照射コース4aを使用して治療を行う場合、入射器1から入射された粒子ビームはシンクロトロン2により加速され、照射コース4aを経由して、照射室3aに導入される。この時、ビーム位置モニタ5にてビーム位置を測定し、ビームの位置ずれを判定する。位置ずれの判定にあたっては例えば、図13で表されるようなビーム位置モニタの判定パラメータ表があらかじめ全ビーム位置モニタについて定義してある。
【0005】
ビーム位置モニタ5にて測定したビームの重心位置と標準偏差と判定パラメータ表から重心位置と標準偏差についてそれぞれ次のようにビームの位置ずれを判定する。
|測定した重心位置―数値1|>数値2 ---(1)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―数値3|>数値4 ---(2)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、ビーム位置モニタ5にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれかがビーム位置ずれと判定された場合、全体として該当ビーム位置モニタ5ではビームの位置ずれと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−334567号公報
【特許文献2】特開2003−282300号公報
【特許文献3】特開2005−329252号公報
【特許文献4】特開2002−006051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置では、照射コース毎に1つのビーム位置モニタで判定を行っているため、判定に対する信頼性の確保が不十分であ
り、ビーム位置モニタが故障したときにはビームの位置ずれを検出できなくなるという問題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、照射コース毎に複数のビーム位置モニタを設置し、各々のビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定することにより、より信頼性の高いビームの位置ずれ検出を行うと共に、一部のビーム位置モニタが故障でもビームの位置ずれ検出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置は、シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置において、前記各照射コース毎に前記ビーム位置モニタを複数個設置し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースのビームの位置ずれを判定するようにしたものである。
【0009】
また、複数の前記照射コースに共通する照射コース共通部に設置された前記ビーム位置モニタには、前記ビーム位置モニタの測定値と前記各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して、該当照射コースにおける前記ビーム位置モニタのビームの位置ずれを判定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置によれば、照射コース毎に複数のビーム位置モニタを設置し、各々のビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定することにより、該当照射コースにおいて、より信頼性の高いビームの位置ずれ検出を行うと共に、一部のビーム位置モニタが故障でもビームの位置ずれ検出が可能である。
また、複数の照射コースに共通する照射コース共通部に設置されたビーム位置モニタには、ビーム位置モニタの測定値と各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して、該当照射コースにおけるビーム位置モニタのビームの位置ずれを判定するようにしたので、複数の前記照射コースに共通する照射コース共通部に設置された前記ビーム位置モニタを前記各照射コースに共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1における粒子線治療装置を示すシステム構成図である。
【図2】実施の形態1における個別部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表を示す図である。
【図3】実施の形態1における共通部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表を示す図である。
【図4】実施の形態4のビーム位置モニタの測定値における重み付け表を示す図である。
【図5】実施の形態4のビーム位置モニタの測定値における判定結果に対する照射コース毎の判定基準値表を示す図である。
【図6】実施の形態5の照射コース毎の重心位置ずれ許容量表を示す図である。
【0012】
【図7】実施の形態5の照射コース毎の標準偏差ずれ許容量表を示す図である。
【図8】実施の形態6の照射コース毎の重心位置ずれ許容量表を示す図である。
【図9】実施の形態6の照射コース毎の標準偏差ずれ許容量表を示す図である。
【図10】実施の形態7のビーム照射毎の判定方法を定義する定義ファイルを示す図である。
【図11】実施の形態8のビーム照射毎の判定方法を定義する定義ファイルを示す図である。
【図12】従来の粒子線治療装置を示すシステム構成図である。
【図13】従来のビーム位置ずれ検出装置における位置ずれの判定パラメータ表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における粒子線治療装置を示すシステム構成図である。図1において、1は入射器、2はシンクロトロン、3a,3b,3cは各照射室、4a,4b,4cは各照射室へビームを導入する照射コース、8,9は各照射コースの共通部に設置されたビーム位置モニタ、10,11,12は各照射コースの個別部に設置されたビーム位置モニタである。図1のビーム位置モニタの設置場所や数については、一例であり、図1と異なる位置に設置しても構わない。また、数についても1つの照射コースに2つ以上設置されていればよい。
【0014】
次に粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置の動作について説明する。照射コース4aを使用して治療を行う場合、入射器1から入射された粒子ビームはシンクロトロン2により加速され、照射コース4aを経由して、照射室3aに導入される。この時、ビーム位置モニタ8,9,10にてぞれぞれビーム位置を測定し、測定結果からビームの位置ずれを判定する。
【0015】
実施の形態1でのビーム位置ずれ検出装置については、図2,図3で示す判定パラメータ表をあらかじめ全ビーム位置モニタについて定義しておく。この判定パラメータ表はビーム位置モニタ10,11,12については、各照射コース4a,4b,4cの場合のみの値で良いため、個別部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表である図2のように表される。一方、ビーム位置モニタ8、9については、どの照射コース4a,4b,4cの場合も共通して使用するため、共通部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表である図3のように表される。つまり、各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して該当照射コースのビームの位置ずれを判定する。
【0016】
各照射コースの個別部に設置されたビーム位置モニタ10,11,12にて測定したビームの重心位置と標準偏差と判定パラメータ表(図2)から重心位置と標準偏差についてそれぞれ次のようにビーム位置ずれを判定する。
|測定した重心位置―基準重心位置|>重心位置ずれ許容値 ---(3)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―基準標準偏差|>標準偏差ずれ許容値 ---(4)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、ビーム位置モニタ10,11,12にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれかがビームの位置ずれと判定された場合、該当ビーム位置モニタ10,11,12では、ビームの位置ずれと判定する。
【0017】
各照射コースの共通部に設置されたビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心
位置と標準偏差と判定パラメータ表(図3)から重心位置と標準偏差についてそれぞれ次のようにビームの位置ずれを判定する。ビーム位置モニタ8,9は各照射コース4a,4b,4cの共通部に設置されたビーム位置モニタ8,9であり、各照射コース毎に基準重心位置,重心位置ずれ許容値,基準標準偏差,標準偏差ずれ許容値が異なっているため、各照射
コース毎に個別にそれらの判定パラメータが設定されている。そのため、ビーム位置モニタ8,9に対しては、照射コース毎に個別に設定された判定パラメータを基にビームの位
置ずれを判定する。
【0018】
照射コース4a:
|測定した重心位置―照射コース4aの基準重心位置|>照射コース4aの重心位置ずれ許容値 ---(5)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―照射コース4aの基準標準偏差|>照射コース4aの標準偏差ずれ許容値 ---(6)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、照射コース4aに対して、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位
置と標準偏差のいずれかがビーム位置ずれと判定された場合、照射コース4aに対する該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置ずれと判定する。
【0019】
同様に、
照射コース4b:
|測定した重心位置―照射コース4bの基準重心位置|>照射コース4bの重心位置ずれ許容値 ---(7)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―照射コース4bの基準標準偏差|>照射コース4bの標準偏差ずれ許容値 ---(8)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、照射コース4bに対して、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位
置と標準偏差のいずれかがビームの位置ずれと判定された場合、照射コース4bに対する該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置ずれと判定する。
【0020】
照射コース4c:
|測定した重心位置―照射コース4cの基準重心位置|>照射コース4cの重心位置ずれ許容値 ---(9)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―照射コース4cの基準標準偏差|>照射コース4cの標準偏差ずれ許容値 ---(10)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、照射コース4cに対して、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位
置と標準偏差のいずれかがビームの位置ずれと判定された場合、照射コース4cに対する該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置ずれと判定する。
【0021】
照射コース毎に設置された複数のビーム位置モニタについて、各ビーム位置モニタ毎に判定を行った後、一台でもビームの位置ずれと判定されたビーム位置モニタが設置されたその照射コースは全体としてビーム位置ずれと判定する。例えば、照射コース4aで照射された場合、ビーム位置モニタ8、9の測定値については、式(5),(6)に図3の判定パラメータを代入して、
|測定した重心位置―数値A1|>数値A2 ---(11)
|測定した標準偏差―数値A3|>数値A4 ---(12)
による判定方法により重心位置と標準偏差のそれぞれについてビームの位置ずれを判定する。そして、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれ
かがビーム位置ずれと判定された場合、該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置
ずれと判定する。
【0022】
ビーム位置モニタ10の測定値については、式(3),(4)に図2の判定パラメータを代入して
|測定した重心位置―数値1|>数値2 ---(13)
|測定した標準偏差―数値3|>数値4 ---(14)
による判定方法により重心位置と標準偏差のそれぞれについてビームの位置ずれを判定する。そして、ビーム位置モニタ10にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれかがビーム位置ずれと判定された場合、ビーム位置モニタ10では、ビーム位置ずれと判定する。
【0023】
同様に、照射コース4bで照射された場合は、ビーム位置モニタ8,9,11の各ビーム位置モニタの測定値と図2,図3の判定パラメータを使用して判定し、照射コース4cで照射された場合は、ビーム位置モニタ8,9,12の各ビーム位置モニタの測定値と図2,図3の判定パラメータを使用して判定を行う。
【0024】
このように、照射コース毎に設置された複数のビーム位置モニタについて、各ビーム位置モニタ毎に判定を行った後、一台でもビームの位置ずれと判定されたビーム位置モニタがあると、その照射コースは全体としてビーム位置ずれと判定する。もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値について判定は行わず、残りのビーム位置モニタの測定値のみで判定する。
なお、実施の形態1では、複数のビーム位置モニタにより1台でも位置ずれと判定した場合は位置ずれと見なすこととしたので、ビーム位置ずれ検出の信頼性が向上する。
なお、実施の形態1では、ビーム位置モニタの測定値に対する判定パラメータとして重心位置の数値と標準偏差の数値を挙げたが、モニタの種類により電流の数値など他のパラメータでもよい。
【0025】
実施の形態2.
実施の形態2における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態2における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値に対する判定方法は実施の形態1と同一である。照射コース毎に全てのビーム位置モニタの測定値に対してビームが位置ずれであると判定された場合、全体として該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。例えば、照射コース4aで照射された場合、ビーム位置モニタ8,9,10の全てのビーム位置モニタの測定値に対してビームが位置ずれであると判定された場合、全体として照射コース4aに対してビームが位置ずれであると判定する。
【0026】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値では判定は行わず、残りのビーム位置モニタの測定値のみで判定する。
なお、実施の形態2では、全てのビーム位置モニタの測定値がビームの位置ずれと判定された場合のみ位置ずれと見なすこととしたので、例えばビーム調整段階で全ての判定パラメータの値が確定する前の不正なビームの位置ずれ判定の抑止が行えるという効果が得られる。
なお、実施の形態2でも、ビーム位置モニタの測定値に対する判定パラメータとして重心位置の数値と標準偏差の数値を挙げたが、モニタの種類により電流の数値など他のパラメータでもよい。これは以下各実施の形態でも同じである。
【0027】
実施の形態3.
実施の形態3における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態3における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値に対する判定方法は実施の形態1と同一である。照射コース毎の複数
の各ビーム位置モニタの測定値に対する判定結果において、多数決を取り、ビームが位置ずれであると判定されたビーム位置モニタの数の方が、ビームが位置ずれでないと判定されたビーム位置モニタの数よりも多い場合、全体として該当照射コースに対してビームが位置ずれであると判定する。もし、両者が同数の場合には全体として該当照射コースに対してビームが位置ずれであると判定する。
【0028】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値では判定は行わず、残りのビーム位置モニタの測定値のみで判定する。実施の形態3では、各ビーム位置モニタの測定値に対する判定結果に対して、多数決を取って判定を行うようにしたので、例えば一部のビーム位置モニタの測定値が何らかの理由により常に不正な為に常にビームが位置ずれであると判定している場合にそのビーム位置モニタの判定結果を無視してビームの位置ずれの判定を行うことができる。
【0029】
実施の形態4.
実施の形態4における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態4における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値に対する判定方法は実施の形態1と同一である。照射コース毎の各ビーム位置モニタの測定値に対するビームの位置ずれの判定結果について、重み付けを加味する。例えば、図4で示すような各ビーム位置モニタの測定値における判定結果に対する重み付け表、図5で示すような照射コース毎の判定基準値表をあらかじめ定義しておき、次の判定方法により照射コースに対する判定を行う。
【0030】
各ビーム位置モニタの判定結果α=
各ビーム位置モニタでビームが位置ずれであると判定された場合は1、ビームが位置ずれでないと判定された場合は0、
ビーム位置モニタ8〜12の判定結果をそれぞれα8〜α12とすると、
照射コース4a:
α8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+α9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+α10×ビーム位置モニタ10の重み付け値
>照射コース4aの判定基準値 ---(15)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0031】
照射コース4b:
α8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+α9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+α11×ビーム位置モニタ11の重み付け値
>照射コース4bの判定基準値 ---(16)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
α8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+α9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+α12×ビーム位置モニタ12の重み付け値
>照射コース4cの判定基準値 ---(17)
であれば、照射コース4cに対してビームの位置ずれと判定する。
【0032】
例えば、照射コース4aで照射を行い、ビーム位置モニタ10の測定値に対してビームが位置ずれと判定され、ビーム位置モニタ8,9の測定値に対してビームが位置ずれと判
定されなかった場合、α8=α9=0、α10=1であり、計算結果は
0×0.5+0×0.5+1×1=1となり、照射コース4aの判定基準値0.9を超えるため、照射コース4aについてはビームが位置ずれであると判定する。
【0033】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、α=0と
して算出する。実施の形態4では、各ビーム位置モニタの測定値に対するビームの位置ずれの判定結果に重み付けを加味して照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにしたので、ビームの位置ずれの判定に重要なビーム位置モニタの測定値に対する判定結果を優先することが可能となり、照射コースに対してより信頼性の高いビームの位置ずれを検出することができる。
【0034】
なお、実施の形態4では照射コースが複数の場合について説明したが、照射コースが1つの、例えば照射コース4aだけの場合でも、照射コース4aにおける各ビーム位置モニタの測定値に対するビームの位置ずれの判定結果に重み付けを加味して加算して照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにしても、ビームの位置ずれの判定に重要なビーム位置モニタの測定値に対する判定結果を優先することが可能となり、照射コースに対してより信頼性の高いビームの位置ずれを検出することができる。
【0035】
実施の形態5.
実施の形態5における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態5における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値と図2,図3に示す判定パラメータ表とから次に示す算出方法により
ビーム位置モニタ毎の重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量を算出する。
【0036】
各照射コースの個別部に設置されたビーム位置モニタ10,11,12にて測定したビームの重心位置と標準偏差と判定パラメータ表(図2)からビーム位置モニタ10,11,12の重心位置ずれ量と標準偏差ずれ量を算出する。
|測定した重心位置−基準重心位置|=重心位置ずれ量---(18)
|測定した標準偏差−基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(19)
すなわち
|測定した重心位置−数値1|=重心位置ずれ量 ---(20)
|測定した標準偏差−数値3|=標準偏差ずれ量 ---(21)
【0037】
各照射コースの共通部に設置されたビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心
位置と標準偏差と判定パラメータ表(図3)からビーム位置モニタ8,9の重心位置ずれ
量と標準偏差ずれ量を算出する。
照射コース4a:
|測定した重心位置−照射コース4aの基準重心位置|=重心位置ずれ量---(22)
|測定した標準偏差−照射コース4aの基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(23)
すなわち
|測定した重心位置−数値A1|=重心位置ずれ量 --(24)
|測定した標準偏差−数値A3|=標準偏差ずれ量 --(25)
【0038】
照射コース4b:
|測定した重心位置−照射コース4bの基準重心位置|=重心位置ずれ量---(26)
|測定した標準偏差−照射コース4bの基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(27)
すなわち
|測定した重心位置−数値B1|=重心位置ずれ量 --(28)
|測定した標準偏差−数値B3|=標準偏差ずれ量 --(29)
【0039】
照射コース4c:
|測定した重心位置−照射コース4cの基準重心位置|=重心位置ずれ量---(30)
|測定した標準偏差−照射コース4cの基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(31)
すなわち
|測定した重心位置−数値C1|=重心位置ずれ量 ---(32)
|測定した標準偏差−数値C3|=標準偏差ずれ量 ---(33)
【0040】
各ビーム位置モニタ毎に算出された重心位置ずれ量と図6の照射コース毎の重心位置ずれ許容量表を基にそれぞれ次に示す算出方法にて照射コース毎のビームの位置ずれを判定する。
ビーム位置モニタ8〜12の重心位置ずれ量をそれぞれβ8〜β12とすると、
照射コース4a:
β8+β9+β10>ωA ---(34)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0041】
照射コース4b:
β8+β9+β11>ωB ---(35)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
β8+β9+β12>ωC ---(36)
であれば、照射コース4cに対してビーム位置ずれと判定する。
【0042】
各ビーム位置モニタ毎に算出された標準偏差ずれ量と図7の照射コース毎の標準偏差ずれ許容量表を基にそれぞれ次に示す算出方法にて照射コース毎のビームの位置ずれを判定する。
ビーム位置モニタ8〜12の標準偏差ずれ量をそれぞれγ8〜γ12とすると
照射コース4a:
γ8+γ9+γ10>εA ---(37)
であれば、照射コース4aに対してビーム位置ずれと判定する。
【0043】
照射コース4b:
γ8+γ9+γ11>εB ---(38)
であれば、照射コース4bに対してビーム位置ずれと判定する。
照射コース4c:
γ8+γ9+γ12>εC ---(39)
であれば、照射コース4cに対してビーム位置ずれと判定する。
このようにして、照射コース毎の重心位置ずれ量、照射コース毎の標準偏差ずれ量のどちらかがビームの位置ずれの判定となった場合に該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。
【0044】
例えば、照射コース4aの場合、ビーム位置モニタ8,9については式(24)(25
)の算出方法によりビーム位置モニタ毎の重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量を求める。ビーム位置モニタ10については式(20)(21)の算出方法により重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量を求める。ビーム位置モニタ毎に求めた重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量をそれぞれ式(34)(37)の判定方法によりビームの位置ずれを判定する。どちらかがビームの位置ずれと判定された場合に全体として該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。
【0045】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値に対する重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量は0として算出する。実施の形態5では、各照射コースの各ビーム位置モニタ毎の位置ずれ量を加算して判定するようにしたので、各照射コースのビーム位置モニタ数が多い場合に個々のビーム位置モニタ毎では位置ずれ量が小さいが、多数のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれ量が累積すると加算値として位置ずれが大きくなる場合に該当照射コースのビームの位置ずれを検出できる。
【0046】
なお、実施の形態5では照射コースが複数の場合について説明したが、照射コースが1つの、例えば照射コース4aだけの場合でも、照射コース4aの各ビーム位置モニタ毎にビームの位置を測定し、照射コース4aの各ビーム位置モニタに対して、それぞれ前記各ビーム位置モニタの測定値に対する基準位置からのずれ量を加算し、その加算値により、照射コース4aに対するビームの位置ずれを判定するようにしても、照射コース4aのビーム位置モニタ数が多い場合に個々のビーム位置モニタ毎では位置ずれ量が小さいが、多数のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれ量が累積すると加算値として位置ずれが大きくなる場合に照射コース4aのビームの位置ずれを検出できる。
【0047】
実施の形態6.
実施の形態6における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態6における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタ毎の測定値に対する重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量の算出方法は実施の形態5と同一である。
【0048】
各照射コースの各ビーム位置モニタ毎に算出された重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量をそれぞれ図4に示すような重み付け表と、図8に示すような照射コース毎の重心位置ずれ許容量表、図9に示すような照射コース毎の標準偏差許容量表を使い、次に示す算出方法にて該当照射コースに対する重心位置、標準偏差それぞれについてビームの位置ずれを判定する。
ビーム位置モニタ8〜12の重心位置ずれ量をそれぞれβ8〜β12とすると
照射コース4a:
β8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+β9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+β10×ビーム位置モニタ10の重み付け値>θA ---(40)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0049】
照射コース4b:
β8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+β9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+β11×ビーム位置モニタ11の重み付け値>θB ---(41)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
β8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+β9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+β12×ビーム位置モニタ12の重み付け値>θC ---(42)
であれば、照射コース4cに対してビームの位置ずれと判定する。
【0050】
ビーム位置モニタ8〜12の標準偏差ずれ量をそれぞれγ8〜γ12とすると
照射コース4a:
γ8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+γ9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+γ10×ビーム位置モニタ10の重み付け値>ηA ---(43)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0051】
照射コース4b:
γ8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+γ9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+γ11×ビーム位置モニタ11の重み付け値>ηB ---(44)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
γ8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+γ9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+γ12×ビーム位置モニタ12の重み付け値>ηC ---(45)
であれば、照射コース4cに対してビーム位置ずれと判定する。
【0052】
このようにして、照射コース毎の重心位置ずれ量、照射コース毎の標準偏差ずれ量のどちらかがビームの位置ずれの判定となった場合に該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。実施の形態6では、各ビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれ量に重み付けと、各照射コースの各ビーム位置モニタ毎の位置ずれ量を加算して判定するようにしたので、実施の形態4と実施の形態5の両方の効果が得られる。
【0053】
実施の形態7.
実施の形態7における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態7における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。図10は実施の形態7におけるビーム照射毎の判定方法を定義する定義ファイルを示す図である。図10で示すようにあらかじめビーム照射毎にどの判定方法を使用するか定義しておき、ビーム照射毎に判定方法を選択切替えしてビームの位置ずれを判定する。なお、実施の形態7では、ビーム照射に際して判定方法が切替えられるようにしたので、ビームの使用目的や状況に応じて判定方法を使い分けできる。
【0054】
実施の形態8.
実施の形態8における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態8における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。ビーム照射の1回毎に粒子線治療装置の運転員が判定方法を選択する操作を行うことにより、例えば、図11で示すような定義ファイルに実施の形態1〜実施の形態6記載の判定方法が書き込まれる。書き込まれた後、ビーム照射を行い、各ビーム位置モニタの測定値に対して書き込まれた判定方法に従い、ビーム位置ずれを判定する。実施の形態8では、運転員が判定方法を定義ファイルに書き込み選択できるようにしたので、ビームの使用目的や状況に応じてその場で判定方法を使い分けできる。
【符号の説明】
【0055】
1 入射器 2 シンクロトロン
3a,3b,3c 照射室 4a,4b,4c 照射コース
8,9,10,11,12 ビーム位置モニタ
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療装置は、一般に粒子ビームを発生させる入射器、入射された粒子ビームを必要な速度まで加速させるシンクロトロン、加速させた粒子ビームを患者に照射する複数の照射室、シンクロトロンから各照射室にビームを導入する照射コースから構成され、照射コースにはコースの進行方向に対する中心位置からX,Y方向へのビームの位置ずれを測
定するビーム位置モニタが設置されている。従来の粒子線治療装置においては、特許文献1や特許文献4にあるようにビーム位置モニタ自体の機構に関するもの、特許文献2や特許文献3にあるように複数のビーム位置モニタの情報から電磁石の電流値を調整するものがある。
【0003】
従来の粒子線治療装置は、図12に示すように、ビーム位置ずれを検出するために、各照射コース毎に1つのビーム位置モニタが設置されている。1は入射器、2はシンクロトロン、3a,3b,3cは各照射室、4a,4b,4cは各照射室へビームを導入する各照射コース、5は照射コース4aに設置されたビーム位置モニタ、6は照射コース4bに設置されたビーム位置モニタ、7は照射コース4cに設置されたビーム位置モニタである。
【0004】
次に、従来の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置の動作について説明する。照射コース4aを使用して治療を行う場合、入射器1から入射された粒子ビームはシンクロトロン2により加速され、照射コース4aを経由して、照射室3aに導入される。この時、ビーム位置モニタ5にてビーム位置を測定し、ビームの位置ずれを判定する。位置ずれの判定にあたっては例えば、図13で表されるようなビーム位置モニタの判定パラメータ表があらかじめ全ビーム位置モニタについて定義してある。
【0005】
ビーム位置モニタ5にて測定したビームの重心位置と標準偏差と判定パラメータ表から重心位置と標準偏差についてそれぞれ次のようにビームの位置ずれを判定する。
|測定した重心位置―数値1|>数値2 ---(1)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―数値3|>数値4 ---(2)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、ビーム位置モニタ5にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれかがビーム位置ずれと判定された場合、全体として該当ビーム位置モニタ5ではビームの位置ずれと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−334567号公報
【特許文献2】特開2003−282300号公報
【特許文献3】特開2005−329252号公報
【特許文献4】特開2002−006051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置では、照射コース毎に1つのビーム位置モニタで判定を行っているため、判定に対する信頼性の確保が不十分であ
り、ビーム位置モニタが故障したときにはビームの位置ずれを検出できなくなるという問題があった。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、照射コース毎に複数のビーム位置モニタを設置し、各々のビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定することにより、より信頼性の高いビームの位置ずれ検出を行うと共に、一部のビーム位置モニタが故障でもビームの位置ずれ検出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置は、シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置において、前記各照射コース毎に前記ビーム位置モニタを複数個設置し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースのビームの位置ずれを判定するようにしたものである。
【0009】
また、複数の前記照射コースに共通する照射コース共通部に設置された前記ビーム位置モニタには、前記ビーム位置モニタの測定値と前記各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して、該当照射コースにおける前記ビーム位置モニタのビームの位置ずれを判定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置によれば、照射コース毎に複数のビーム位置モニタを設置し、各々のビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定することにより、該当照射コースにおいて、より信頼性の高いビームの位置ずれ検出を行うと共に、一部のビーム位置モニタが故障でもビームの位置ずれ検出が可能である。
また、複数の照射コースに共通する照射コース共通部に設置されたビーム位置モニタには、ビーム位置モニタの測定値と各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して、該当照射コースにおけるビーム位置モニタのビームの位置ずれを判定するようにしたので、複数の前記照射コースに共通する照射コース共通部に設置された前記ビーム位置モニタを前記各照射コースに共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1における粒子線治療装置を示すシステム構成図である。
【図2】実施の形態1における個別部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表を示す図である。
【図3】実施の形態1における共通部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表を示す図である。
【図4】実施の形態4のビーム位置モニタの測定値における重み付け表を示す図である。
【図5】実施の形態4のビーム位置モニタの測定値における判定結果に対する照射コース毎の判定基準値表を示す図である。
【図6】実施の形態5の照射コース毎の重心位置ずれ許容量表を示す図である。
【0012】
【図7】実施の形態5の照射コース毎の標準偏差ずれ許容量表を示す図である。
【図8】実施の形態6の照射コース毎の重心位置ずれ許容量表を示す図である。
【図9】実施の形態6の照射コース毎の標準偏差ずれ許容量表を示す図である。
【図10】実施の形態7のビーム照射毎の判定方法を定義する定義ファイルを示す図である。
【図11】実施の形態8のビーム照射毎の判定方法を定義する定義ファイルを示す図である。
【図12】従来の粒子線治療装置を示すシステム構成図である。
【図13】従来のビーム位置ずれ検出装置における位置ずれの判定パラメータ表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における粒子線治療装置を示すシステム構成図である。図1において、1は入射器、2はシンクロトロン、3a,3b,3cは各照射室、4a,4b,4cは各照射室へビームを導入する照射コース、8,9は各照射コースの共通部に設置されたビーム位置モニタ、10,11,12は各照射コースの個別部に設置されたビーム位置モニタである。図1のビーム位置モニタの設置場所や数については、一例であり、図1と異なる位置に設置しても構わない。また、数についても1つの照射コースに2つ以上設置されていればよい。
【0014】
次に粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置の動作について説明する。照射コース4aを使用して治療を行う場合、入射器1から入射された粒子ビームはシンクロトロン2により加速され、照射コース4aを経由して、照射室3aに導入される。この時、ビーム位置モニタ8,9,10にてぞれぞれビーム位置を測定し、測定結果からビームの位置ずれを判定する。
【0015】
実施の形態1でのビーム位置ずれ検出装置については、図2,図3で示す判定パラメータ表をあらかじめ全ビーム位置モニタについて定義しておく。この判定パラメータ表はビーム位置モニタ10,11,12については、各照射コース4a,4b,4cの場合のみの値で良いため、個別部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表である図2のように表される。一方、ビーム位置モニタ8、9については、どの照射コース4a,4b,4cの場合も共通して使用するため、共通部のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれの判定パラメータ表である図3のように表される。つまり、各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して該当照射コースのビームの位置ずれを判定する。
【0016】
各照射コースの個別部に設置されたビーム位置モニタ10,11,12にて測定したビームの重心位置と標準偏差と判定パラメータ表(図2)から重心位置と標準偏差についてそれぞれ次のようにビーム位置ずれを判定する。
|測定した重心位置―基準重心位置|>重心位置ずれ許容値 ---(3)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―基準標準偏差|>標準偏差ずれ許容値 ---(4)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、ビーム位置モニタ10,11,12にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれかがビームの位置ずれと判定された場合、該当ビーム位置モニタ10,11,12では、ビームの位置ずれと判定する。
【0017】
各照射コースの共通部に設置されたビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心
位置と標準偏差と判定パラメータ表(図3)から重心位置と標準偏差についてそれぞれ次のようにビームの位置ずれを判定する。ビーム位置モニタ8,9は各照射コース4a,4b,4cの共通部に設置されたビーム位置モニタ8,9であり、各照射コース毎に基準重心位置,重心位置ずれ許容値,基準標準偏差,標準偏差ずれ許容値が異なっているため、各照射
コース毎に個別にそれらの判定パラメータが設定されている。そのため、ビーム位置モニタ8,9に対しては、照射コース毎に個別に設定された判定パラメータを基にビームの位
置ずれを判定する。
【0018】
照射コース4a:
|測定した重心位置―照射コース4aの基準重心位置|>照射コース4aの重心位置ずれ許容値 ---(5)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―照射コース4aの基準標準偏差|>照射コース4aの標準偏差ずれ許容値 ---(6)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、照射コース4aに対して、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位
置と標準偏差のいずれかがビーム位置ずれと判定された場合、照射コース4aに対する該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置ずれと判定する。
【0019】
同様に、
照射コース4b:
|測定した重心位置―照射コース4bの基準重心位置|>照射コース4bの重心位置ずれ許容値 ---(7)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―照射コース4bの基準標準偏差|>照射コース4bの標準偏差ずれ許容値 ---(8)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、照射コース4bに対して、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位
置と標準偏差のいずれかがビームの位置ずれと判定された場合、照射コース4bに対する該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置ずれと判定する。
【0020】
照射コース4c:
|測定した重心位置―照射コース4cの基準重心位置|>照射コース4cの重心位置ずれ許容値 ---(9)
であればビームの位置ずれと判定する。
|測定した標準偏差―照射コース4cの基準標準偏差|>照射コース4cの標準偏差ずれ許容値 ---(10)
であればビームの位置ずれと判定する。
そして、照射コース4cに対して、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位
置と標準偏差のいずれかがビームの位置ずれと判定された場合、照射コース4cに対する該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置ずれと判定する。
【0021】
照射コース毎に設置された複数のビーム位置モニタについて、各ビーム位置モニタ毎に判定を行った後、一台でもビームの位置ずれと判定されたビーム位置モニタが設置されたその照射コースは全体としてビーム位置ずれと判定する。例えば、照射コース4aで照射された場合、ビーム位置モニタ8、9の測定値については、式(5),(6)に図3の判定パラメータを代入して、
|測定した重心位置―数値A1|>数値A2 ---(11)
|測定した標準偏差―数値A3|>数値A4 ---(12)
による判定方法により重心位置と標準偏差のそれぞれについてビームの位置ずれを判定する。そして、ビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれ
かがビーム位置ずれと判定された場合、該当ビーム位置モニタ8,9では、ビームの位置
ずれと判定する。
【0022】
ビーム位置モニタ10の測定値については、式(3),(4)に図2の判定パラメータを代入して
|測定した重心位置―数値1|>数値2 ---(13)
|測定した標準偏差―数値3|>数値4 ---(14)
による判定方法により重心位置と標準偏差のそれぞれについてビームの位置ずれを判定する。そして、ビーム位置モニタ10にて測定したビームの重心位置と標準偏差のいずれかがビーム位置ずれと判定された場合、ビーム位置モニタ10では、ビーム位置ずれと判定する。
【0023】
同様に、照射コース4bで照射された場合は、ビーム位置モニタ8,9,11の各ビーム位置モニタの測定値と図2,図3の判定パラメータを使用して判定し、照射コース4cで照射された場合は、ビーム位置モニタ8,9,12の各ビーム位置モニタの測定値と図2,図3の判定パラメータを使用して判定を行う。
【0024】
このように、照射コース毎に設置された複数のビーム位置モニタについて、各ビーム位置モニタ毎に判定を行った後、一台でもビームの位置ずれと判定されたビーム位置モニタがあると、その照射コースは全体としてビーム位置ずれと判定する。もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値について判定は行わず、残りのビーム位置モニタの測定値のみで判定する。
なお、実施の形態1では、複数のビーム位置モニタにより1台でも位置ずれと判定した場合は位置ずれと見なすこととしたので、ビーム位置ずれ検出の信頼性が向上する。
なお、実施の形態1では、ビーム位置モニタの測定値に対する判定パラメータとして重心位置の数値と標準偏差の数値を挙げたが、モニタの種類により電流の数値など他のパラメータでもよい。
【0025】
実施の形態2.
実施の形態2における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態2における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値に対する判定方法は実施の形態1と同一である。照射コース毎に全てのビーム位置モニタの測定値に対してビームが位置ずれであると判定された場合、全体として該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。例えば、照射コース4aで照射された場合、ビーム位置モニタ8,9,10の全てのビーム位置モニタの測定値に対してビームが位置ずれであると判定された場合、全体として照射コース4aに対してビームが位置ずれであると判定する。
【0026】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値では判定は行わず、残りのビーム位置モニタの測定値のみで判定する。
なお、実施の形態2では、全てのビーム位置モニタの測定値がビームの位置ずれと判定された場合のみ位置ずれと見なすこととしたので、例えばビーム調整段階で全ての判定パラメータの値が確定する前の不正なビームの位置ずれ判定の抑止が行えるという効果が得られる。
なお、実施の形態2でも、ビーム位置モニタの測定値に対する判定パラメータとして重心位置の数値と標準偏差の数値を挙げたが、モニタの種類により電流の数値など他のパラメータでもよい。これは以下各実施の形態でも同じである。
【0027】
実施の形態3.
実施の形態3における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態3における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値に対する判定方法は実施の形態1と同一である。照射コース毎の複数
の各ビーム位置モニタの測定値に対する判定結果において、多数決を取り、ビームが位置ずれであると判定されたビーム位置モニタの数の方が、ビームが位置ずれでないと判定されたビーム位置モニタの数よりも多い場合、全体として該当照射コースに対してビームが位置ずれであると判定する。もし、両者が同数の場合には全体として該当照射コースに対してビームが位置ずれであると判定する。
【0028】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値では判定は行わず、残りのビーム位置モニタの測定値のみで判定する。実施の形態3では、各ビーム位置モニタの測定値に対する判定結果に対して、多数決を取って判定を行うようにしたので、例えば一部のビーム位置モニタの測定値が何らかの理由により常に不正な為に常にビームが位置ずれであると判定している場合にそのビーム位置モニタの判定結果を無視してビームの位置ずれの判定を行うことができる。
【0029】
実施の形態4.
実施の形態4における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態4における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値に対する判定方法は実施の形態1と同一である。照射コース毎の各ビーム位置モニタの測定値に対するビームの位置ずれの判定結果について、重み付けを加味する。例えば、図4で示すような各ビーム位置モニタの測定値における判定結果に対する重み付け表、図5で示すような照射コース毎の判定基準値表をあらかじめ定義しておき、次の判定方法により照射コースに対する判定を行う。
【0030】
各ビーム位置モニタの判定結果α=
各ビーム位置モニタでビームが位置ずれであると判定された場合は1、ビームが位置ずれでないと判定された場合は0、
ビーム位置モニタ8〜12の判定結果をそれぞれα8〜α12とすると、
照射コース4a:
α8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+α9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+α10×ビーム位置モニタ10の重み付け値
>照射コース4aの判定基準値 ---(15)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0031】
照射コース4b:
α8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+α9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+α11×ビーム位置モニタ11の重み付け値
>照射コース4bの判定基準値 ---(16)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
α8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+α9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+α12×ビーム位置モニタ12の重み付け値
>照射コース4cの判定基準値 ---(17)
であれば、照射コース4cに対してビームの位置ずれと判定する。
【0032】
例えば、照射コース4aで照射を行い、ビーム位置モニタ10の測定値に対してビームが位置ずれと判定され、ビーム位置モニタ8,9の測定値に対してビームが位置ずれと判
定されなかった場合、α8=α9=0、α10=1であり、計算結果は
0×0.5+0×0.5+1×1=1となり、照射コース4aの判定基準値0.9を超えるため、照射コース4aについてはビームが位置ずれであると判定する。
【0033】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、α=0と
して算出する。実施の形態4では、各ビーム位置モニタの測定値に対するビームの位置ずれの判定結果に重み付けを加味して照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにしたので、ビームの位置ずれの判定に重要なビーム位置モニタの測定値に対する判定結果を優先することが可能となり、照射コースに対してより信頼性の高いビームの位置ずれを検出することができる。
【0034】
なお、実施の形態4では照射コースが複数の場合について説明したが、照射コースが1つの、例えば照射コース4aだけの場合でも、照射コース4aにおける各ビーム位置モニタの測定値に対するビームの位置ずれの判定結果に重み付けを加味して加算して照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにしても、ビームの位置ずれの判定に重要なビーム位置モニタの測定値に対する判定結果を優先することが可能となり、照射コースに対してより信頼性の高いビームの位置ずれを検出することができる。
【0035】
実施の形態5.
実施の形態5における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態5における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタの測定値と図2,図3に示す判定パラメータ表とから次に示す算出方法により
ビーム位置モニタ毎の重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量を算出する。
【0036】
各照射コースの個別部に設置されたビーム位置モニタ10,11,12にて測定したビームの重心位置と標準偏差と判定パラメータ表(図2)からビーム位置モニタ10,11,12の重心位置ずれ量と標準偏差ずれ量を算出する。
|測定した重心位置−基準重心位置|=重心位置ずれ量---(18)
|測定した標準偏差−基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(19)
すなわち
|測定した重心位置−数値1|=重心位置ずれ量 ---(20)
|測定した標準偏差−数値3|=標準偏差ずれ量 ---(21)
【0037】
各照射コースの共通部に設置されたビーム位置モニタ8,9にて測定したビームの重心
位置と標準偏差と判定パラメータ表(図3)からビーム位置モニタ8,9の重心位置ずれ
量と標準偏差ずれ量を算出する。
照射コース4a:
|測定した重心位置−照射コース4aの基準重心位置|=重心位置ずれ量---(22)
|測定した標準偏差−照射コース4aの基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(23)
すなわち
|測定した重心位置−数値A1|=重心位置ずれ量 --(24)
|測定した標準偏差−数値A3|=標準偏差ずれ量 --(25)
【0038】
照射コース4b:
|測定した重心位置−照射コース4bの基準重心位置|=重心位置ずれ量---(26)
|測定した標準偏差−照射コース4bの基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(27)
すなわち
|測定した重心位置−数値B1|=重心位置ずれ量 --(28)
|測定した標準偏差−数値B3|=標準偏差ずれ量 --(29)
【0039】
照射コース4c:
|測定した重心位置−照射コース4cの基準重心位置|=重心位置ずれ量---(30)
|測定した標準偏差−照射コース4cの基準標準偏差|=標準偏差ずれ量---(31)
すなわち
|測定した重心位置−数値C1|=重心位置ずれ量 ---(32)
|測定した標準偏差−数値C3|=標準偏差ずれ量 ---(33)
【0040】
各ビーム位置モニタ毎に算出された重心位置ずれ量と図6の照射コース毎の重心位置ずれ許容量表を基にそれぞれ次に示す算出方法にて照射コース毎のビームの位置ずれを判定する。
ビーム位置モニタ8〜12の重心位置ずれ量をそれぞれβ8〜β12とすると、
照射コース4a:
β8+β9+β10>ωA ---(34)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0041】
照射コース4b:
β8+β9+β11>ωB ---(35)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
β8+β9+β12>ωC ---(36)
であれば、照射コース4cに対してビーム位置ずれと判定する。
【0042】
各ビーム位置モニタ毎に算出された標準偏差ずれ量と図7の照射コース毎の標準偏差ずれ許容量表を基にそれぞれ次に示す算出方法にて照射コース毎のビームの位置ずれを判定する。
ビーム位置モニタ8〜12の標準偏差ずれ量をそれぞれγ8〜γ12とすると
照射コース4a:
γ8+γ9+γ10>εA ---(37)
であれば、照射コース4aに対してビーム位置ずれと判定する。
【0043】
照射コース4b:
γ8+γ9+γ11>εB ---(38)
であれば、照射コース4bに対してビーム位置ずれと判定する。
照射コース4c:
γ8+γ9+γ12>εC ---(39)
であれば、照射コース4cに対してビーム位置ずれと判定する。
このようにして、照射コース毎の重心位置ずれ量、照射コース毎の標準偏差ずれ量のどちらかがビームの位置ずれの判定となった場合に該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。
【0044】
例えば、照射コース4aの場合、ビーム位置モニタ8,9については式(24)(25
)の算出方法によりビーム位置モニタ毎の重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量を求める。ビーム位置モニタ10については式(20)(21)の算出方法により重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量を求める。ビーム位置モニタ毎に求めた重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量をそれぞれ式(34)(37)の判定方法によりビームの位置ずれを判定する。どちらかがビームの位置ずれと判定された場合に全体として該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。
【0045】
もし、一部のビーム位置モニタが故障などにより計測不能となった場合には、該当ビーム位置モニタの測定値に対する重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量は0として算出する。実施の形態5では、各照射コースの各ビーム位置モニタ毎の位置ずれ量を加算して判定するようにしたので、各照射コースのビーム位置モニタ数が多い場合に個々のビーム位置モニタ毎では位置ずれ量が小さいが、多数のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれ量が累積すると加算値として位置ずれが大きくなる場合に該当照射コースのビームの位置ずれを検出できる。
【0046】
なお、実施の形態5では照射コースが複数の場合について説明したが、照射コースが1つの、例えば照射コース4aだけの場合でも、照射コース4aの各ビーム位置モニタ毎にビームの位置を測定し、照射コース4aの各ビーム位置モニタに対して、それぞれ前記各ビーム位置モニタの測定値に対する基準位置からのずれ量を加算し、その加算値により、照射コース4aに対するビームの位置ずれを判定するようにしても、照射コース4aのビーム位置モニタ数が多い場合に個々のビーム位置モニタ毎では位置ずれ量が小さいが、多数のビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれ量が累積すると加算値として位置ずれが大きくなる場合に照射コース4aのビームの位置ずれを検出できる。
【0047】
実施の形態6.
実施の形態6における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態6における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。各ビーム位置モニタ毎の測定値に対する重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量の算出方法は実施の形態5と同一である。
【0048】
各照射コースの各ビーム位置モニタ毎に算出された重心位置ずれ量、標準偏差ずれ量をそれぞれ図4に示すような重み付け表と、図8に示すような照射コース毎の重心位置ずれ許容量表、図9に示すような照射コース毎の標準偏差許容量表を使い、次に示す算出方法にて該当照射コースに対する重心位置、標準偏差それぞれについてビームの位置ずれを判定する。
ビーム位置モニタ8〜12の重心位置ずれ量をそれぞれβ8〜β12とすると
照射コース4a:
β8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+β9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+β10×ビーム位置モニタ10の重み付け値>θA ---(40)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0049】
照射コース4b:
β8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+β9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+β11×ビーム位置モニタ11の重み付け値>θB ---(41)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
β8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+β9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+β12×ビーム位置モニタ12の重み付け値>θC ---(42)
であれば、照射コース4cに対してビームの位置ずれと判定する。
【0050】
ビーム位置モニタ8〜12の標準偏差ずれ量をそれぞれγ8〜γ12とすると
照射コース4a:
γ8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+γ9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+γ10×ビーム位置モニタ10の重み付け値>ηA ---(43)
であれば、照射コース4aに対してビームの位置ずれと判定する。
【0051】
照射コース4b:
γ8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+γ9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+γ11×ビーム位置モニタ11の重み付け値>ηB ---(44)
であれば、照射コース4bに対してビームの位置ずれと判定する。
照射コース4c:
γ8×ビーム位置モニタ8の重み付け値+γ9×ビーム位置モニタ9の重み付け値
+γ12×ビーム位置モニタ12の重み付け値>ηC ---(45)
であれば、照射コース4cに対してビーム位置ずれと判定する。
【0052】
このようにして、照射コース毎の重心位置ずれ量、照射コース毎の標準偏差ずれ量のどちらかがビームの位置ずれの判定となった場合に該当照射コースに対してビームの位置ずれと判定する。実施の形態6では、各ビーム位置モニタの測定値に対する位置ずれ量に重み付けと、各照射コースの各ビーム位置モニタ毎の位置ずれ量を加算して判定するようにしたので、実施の形態4と実施の形態5の両方の効果が得られる。
【0053】
実施の形態7.
実施の形態7における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態7における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。図10は実施の形態7におけるビーム照射毎の判定方法を定義する定義ファイルを示す図である。図10で示すようにあらかじめビーム照射毎にどの判定方法を使用するか定義しておき、ビーム照射毎に判定方法を選択切替えしてビームの位置ずれを判定する。なお、実施の形態7では、ビーム照射に際して判定方法が切替えられるようにしたので、ビームの使用目的や状況に応じて判定方法を使い分けできる。
【0054】
実施の形態8.
実施の形態8における粒子線治療装置のシステム構成図は図1と同じである。次に実施の形態8における粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置について説明する。ビーム照射の1回毎に粒子線治療装置の運転員が判定方法を選択する操作を行うことにより、例えば、図11で示すような定義ファイルに実施の形態1〜実施の形態6記載の判定方法が書き込まれる。書き込まれた後、ビーム照射を行い、各ビーム位置モニタの測定値に対して書き込まれた判定方法に従い、ビーム位置ずれを判定する。実施の形態8では、運転員が判定方法を定義ファイルに書き込み選択できるようにしたので、ビームの使用目的や状況に応じてその場で判定方法を使い分けできる。
【符号の説明】
【0055】
1 入射器 2 シンクロトロン
3a,3b,3c 照射室 4a,4b,4c 照射コース
8,9,10,11,12 ビーム位置モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置において、
前記各照射コース毎に前記ビーム位置モニタを複数個設置し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースのビームの位置ずれを判定するようにした粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項2】
複数の前記照射コースに共通する照射コース共通部に設置された前記ビーム位置モニタには、前記ビーム位置モニタの測定値と前記各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して該当照射コースにおける前記ビーム位置モニタのビームの位置ずれを判定するようにした請求項1記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項3】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果のうち1台でもビームが位置ずれであると判定した場合に該当照射コースのビームが位置ずれであると判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項4】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果がいずれもビームが位置ずれであると判定した場合に該当照射コースのビームが位置ずれであると判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項5】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果に対して、ビームが位置ずれであると判定した前記ビーム位置モニタの台数がビームが位置ずれでないと判定した前記ビーム位置モニタと同台数以上の場合に該当照射コースのビームが位置ずれであると判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項6】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタの判定結果に対して、それぞれ重み付けを加味した加算値により、該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項7】
シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置において、
前記各照射コース毎に前記ビーム位置モニタを複数個設置し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置を測定し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタに対して、それぞれ前記各ビーム位置モニタの測定値に対する基準位置からのずれ量を求め、求めたずれ量を加算し、その加算値により、該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項8】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置を測定し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタに対して、それぞれ前記各ビーム位置モニタの測定値に対
する基準位置からのずれ量を重み付けを加味して求め、重み付けを加味したずれ量を加算し、その加算値により、該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした請求項7記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8に記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置のいずれかをビーム照射に際して選択して照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項1】
シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置において、
前記各照射コース毎に前記ビーム位置モニタを複数個設置し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果を基に該当照射コースのビームの位置ずれを判定するようにした粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項2】
複数の前記照射コースに共通する照射コース共通部に設置された前記ビーム位置モニタには、前記ビーム位置モニタの測定値と前記各照射コース毎に設定された判定パラメータとを比較して該当照射コースにおける前記ビーム位置モニタのビームの位置ずれを判定するようにした請求項1記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項3】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果のうち1台でもビームが位置ずれであると判定した場合に該当照射コースのビームが位置ずれであると判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項4】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果がいずれもビームが位置ずれであると判定した場合に該当照射コースのビームが位置ずれであると判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項5】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの複数の前記ビーム位置モニタの判定結果に対して、ビームが位置ずれであると判定した前記ビーム位置モニタの台数がビームが位置ずれでないと判定した前記ビーム位置モニタと同台数以上の場合に該当照射コースのビームが位置ずれであると判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項6】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置ずれを測定しビームの位置ずれを判定し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタの判定結果に対して、それぞれ重み付けを加味した加算値により、該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした請求項1又は請求項2記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項7】
シンクロトロンから複数の照射室にビームを導入する複数の照射コース毎に、それぞれビームの位置ずれを検出するビーム位置モニタを設置する粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置において、
前記各照射コース毎に前記ビーム位置モニタを複数個設置し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置を測定し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタに対して、それぞれ前記各ビーム位置モニタの測定値に対する基準位置からのずれ量を求め、求めたずれ量を加算し、その加算値により、該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項8】
前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタ毎にビームの位置を測定し、前記各照射コースの前記各ビーム位置モニタに対して、それぞれ前記各ビーム位置モニタの測定値に対
する基準位置からのずれ量を重み付けを加味して求め、重み付けを加味したずれ量を加算し、その加算値により、該当照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした請求項7記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8に記載の粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置のいずれかをビーム照射に際して選択して照射コースに対するビームの位置ずれを判定するようにした粒子線治療装置のビーム位置ずれ検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−179038(P2010−179038A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27359(P2009−27359)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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