説明

粒子線治療装置

【課題】粒子線照射部や治療用ベッドなどの被駆動部の干渉を容易に監視できる粒子線治療装置を提供する。
【解決手段】回転ガントリ1と共に回転駆動され、患者7の患部に粒子線を照射する粒子線照射部2と、患者7を搭載し、患者7の病巣が粒子線照射部2照射される粒子線のアイソセンタ6に合致するように駆動される治療用ベッド3と、単一または複数の球によって粒子線照射部2を覆い包む第一の球モデル9を生成する第一の球モデル生成手段と、単一または複数の球によって治療用ベッドを覆い包む第二の球モデルを生成する第二の球モデル生成手段と、第一の球モデルと第二の球モデルの干渉を監視する球モデル干渉監視手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、がん(癌)等を治療する医療用の粒子線治療装置、特に粒子線の回転照射が可能な粒子線治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
がん治療用の粒子線治療装置には、回転ガントリ(gantry:樽形状の構造物)を用いて患者に対して自在に粒子線の回転照射が可能な治療装置が報告されている。
例えば、特開平11−47287号公報(特許文献1)には、患者の周りに回転自在な放射線照射部を有する放射線治療用回転照射室において、放射線照射部の移動経路を挟んで配置される固定側リングレールおよび移動側リングレールと、この固定側および移動側リングレールによって形成される「下側が水平なかまぼこ型の通路内」に配置される「互いにリンクで屈曲自在に連結された多数の板」からなる連続した移動床と、放射線照射部の回転と同期して移動床を移動させると共に、移動側リングレールを逆方向に同じ量だけ回転させる駆動手段とを備えた放射線治療用回転照射室が示されている。
【0003】
また、特許第3599995号公報(特許文献2)には、回転中心軸に沿って入射される粒子線を一旦外方向に湾曲させた後所定治療空間に導く偏向装置を備え、この偏向装置および治療空間を含む回転構造体が回転中心軸の周りに回転可能な回転照射治療装置において、回転構造体の重量を支える支持ローラに係合し回転中心位置の精度を司る回転基準面と、支持ローラとは係合せず回転構造体に回転または移動を伝達する回転駆動面または制動面とを有する回転照射治療装置が示されている。
【0004】
これらの従来の装置では、所望の粒子線照射方向を得るために粒子線照射部を回転ガントリにより回転したり、また、患部をアイソセンタ(即ち、照射される粒子線の中心部)に配置するために治療用ベッドを回動して使用するが、このとき、粒子線照射部や治療用ベッドなどの被駆動部分が互いに接触・衝突したり、他の装置構成機器、構造部材、患者などに接触・衝突しないようにする必要がある。
例えば、粒子線照射部を治療用ベッドの下側に回転するとき、粒子線照射部は治療用ベッドと平行して下側に配置されている張り出しデッキと干渉(接触や衝突すること)してしまうが、それに対し、張り出しデッキの床を張り出し/退避できる移動床構造や、多数の板からなる連続したかまぼこ型の移動床にすることによって干渉を防ぐ方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、特開平5−337208号公報(特許文献3)には、粒子線治療装置よりは小型で構造がよく似た従来の放射線(X線、ガンマ線等)治療計画方法に関してではあるが、治療用ガントリと治療台の回転運動を組み合わせて、多方向から定位的に一転に集中させて放射線を照射して治療する定位的放射線治療装置の線量計画、治療条件決定等を行う治療計画作成方法において、治療台図および治療用ガントリズおよび患者の病巣部図および幹事の全体図を、病巣部をアイソセンタとして実配置となるように、表示画面に表示すると共に、この表示画面から治療条件の設定および点検を行うようにした定位的放射線治療装置の治療計画作成方法が記載されている。
そして、治療用ベッド、治療用ガントリ、患者の外形座標データベースを用いて、治療用ベッドの回転角度位置に対する治療用ガントリの回転運動できる許容範囲をあらかじめ演算することによって、患者あるいは治療用ベッドに治療用ガントリが衝突しないよう工夫することが提案されている。
【特許文献1】特開平11−47287号公報
【特許文献2】特許第3599995号公報
【特許文献3】特開平5−337208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、特許文献1または特許文献2に示されたような従来の粒子線治療装置においては、回転ガントリと移動床との干渉に限っては、回転ガントリ角度という単一の情報から容易に干渉条件が求まるので、事前にプログラムできるシーケンシャルな指令だけではなくJOG運転にも対応してリアルタイム監視を行っている。
なお、JOG運転とは、操作ボタンを押している間だけ操作対象(駆動対処)を動かす運転のことである。
また、特許文献3で示される治療計画で作成した治療装置の目標軌道(姿勢)については、オフラインであらかじめ演算を実施することができるので、移動床以外についても、従来の3次元CADの干渉チェック機能等と同様な方法によって事前に確認でき、衝突を防ごうとしている。
【0007】
しかしながら、実際には病巣をアイソセンタに微調整して位置合わせする作業やメンテナンス作業等において、回転ガントリ、治療用ベッド、画像取得装置等のJOG運転が必要な場合が出てくる。
JOG運転時の衝突防止(即ち、回転ガントリ、治療用ベッド、画像取得装置等の衝突防止)は、操作者が目視で確認するほか、エリア分割方式や座標空間分割方式が実施されている場合がある。
エリア分割方式とは、回転ガントリ、治療用ベッド、画像取得装置などの被駆動部が配置されるエリアをいくつかに分割して、同じエリアに2つ以上の被駆動部が存在する場合は干渉の恐れありとして警告を出す方式である。
【0008】
この考え方と同様なのが座標空間分割方式であるが、この方式は実際の空間を分割する代わりに各被駆動部の座標空間を分割していく。
即ち、治療装置の座標空間をいくつかの部分空間に分割し、各部分空間において、少しでも被駆動部が干渉する可能性がある場合は警告を出す。
例えば、回転ガントリの回転角度を分割(例えば、0度〜90度、90度〜180度・・・などに分割)して、分割したそれぞれの領域において、「粒子線照射部が通過しうる領域」と、「例えば治療用ベッドのX座標を分割して、分割したそれぞれの領域において治療用ベッドが通過しうる領域」とを比較して、粒子線照射部と治療用ベッド干渉の可能性が少しでもある場合は、データベースに警告を出す領域として登録する。
【0009】
いずれの方式においても、空間分割数によっては保守的(安全過保護的)になってしまう傾向にあり、過敏に警告が出てしまう問題があった。
警告が出る可能性のある領域では、操作者は警告システムのインターロックをはずし、目視で確認しながら低速で運転(即ち、被駆動部の運転操作)しなければならず、作業が煩わしいという問題点もあった。
また、衝突防止に近接センサや監視カメラを用いることも考えられる。
近接センサあるいは監視カメラを用いても、効果的に機能するためには十分な個数が必要となり、個数増加にともない配線もしくは通信方法等を考える必要が生じる。
また放射線に対するロバスト(robust:強健)性も保障しなければならず、実現は容易ではない。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、リアルタイムに粒子線照射部、治療用ベッドなどの被駆動部同士の干渉(接触・衝突)を容易に監視(チェック)することが可能な粒子線治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る粒子線治療装置は、回転ガントリと共に回転駆動され、患者の患部に粒子線を照射する粒子線照射部と、前記患者を搭載し、粒子線の照射対象である前記患者の病巣が前記粒子線照射部から照射される粒子線のアイソセンタに合致するように駆動される治療用ベッドと、前記病巣の画像を取得する画像取得手段と、単一または複数の球によって、前記粒子線照射部の全部または一部を覆い包む第一の球モデルを生成する第一の球モデル生成手段と、単一または複数の球によって、前記治療用ベッドの全部または一部を覆い包む第二の球モデルを生成する第二の球モデル生成手段と、前記第一の球モデルと前記第二の球モデルの干渉を監視する球モデル干渉監視手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、粒子線照射部や治療用ベッド等の被駆動部に対し、それぞれの被駆動部(特に衝突の可能性がある部分)を単一もしくは複数の球によって包むような球モデルを考え、各駆動部の球モデル間の干渉を確認する手段を設けたことにより、被駆動部のJOG運転を行ったときに対しても、リアルタイムで容易に被駆動部間の干渉をチェックすることが可能であり、被駆動部同士の衝突を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態例について説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による粒子線治療装置の治療室を表した概念図である。
粒子線治療装置の治療室は、回転ガントリ1、回転ガントリ1と共に回転運動し、角度を変えて粒子線を患者7の病巣(患部)に照射可能な粒子線照射部2、患者7を搭載して病巣を照射中心であるアイソセンタ6へ合致させるために回動可能な治療用ベッド3、例えば、回転ガントリ1によって下方からアイソセンタ6へ向けて粒子線を照射できるように粒子線照射部2を回転移動したときに、粒子線照射部2が床と干渉(接触や衝突)しないように奥(図に示すy方向)へ退避が可能な移動床4、患者7の患部の画像を取得するための画像取得手段(画像撮像装置)5などからなる。
なお、治療用ベッド3は、図示しない駆動制御装置によって、x方向(横方向)、y方向(奥行き方向)、z方向(高さ方向)への移動、およびx軸、y軸、z軸周りの回転移動も可能である。
また、移動床4および画像取得手段5は、y方向(奥行き方向)への移動が可能である。
【0014】
図2は、実施の形態1による粒子線治療装置における駆動制御系(駆動制御システム)を表したブロック図であり、回転ガントリ1、治療用ベッド3、移動床4および画像取得手段5は、制御装置8によって駆動制御される。
また、回転ガントリ1と共に回転運動する粒子線照射部2は、必要に応じて粒子線の照射方向に沿って移動する。
図3は、実施の形態1による粒子線治療装置の被駆動部を球モデルによりモデル化した球モデル概念図であり、図3(a)は図1に相当する部分を、図3(b)は図3(a)のA部を拡大したものである。
図3では、例えば、粒子線照射部2をモデル化した粒子線照射部球モデル9および治療用ベッド3をモデル化した治療用ベッド部球モデル10を示している。
ここで、治療用ベッド部球モデル10は、治療用ベッド3に搭載されている患者7をも含む球モデルであってもよい。
なお、図3は、粒子線照射部球モデル9および治療用ベッド部球モデル10が複数の球でモデル化された場合を示している。
図4は、実施の形態1による球モデルを用いた干渉チェックの原理を説明するための模式図である。
【0015】
次に、図2〜図4を用いて、本実施の形態による粒子線治療装置の特徴的な動作について説明する。
放射線の一種である粒子線を用いた粒子線治療は、他の一般的な放射線(例えば、X線、ガンマ線)治療と同じように、粒子線を癌などの患部に照射し、細胞のDNAなどを破壊することによって治療する方法である。
したがって、本装置を用いた治療においても、治療前準備を行う治療計画段階と実際に粒子線を行う治療段階がある。
【0016】
まず、治療計画段階において、X線CTやMRIなどの画像取得手段5を用いて患者7の患部画像を取得(撮像)し、取得した患部の画像に基づいて治療部位を特定すると共に、過去の実績データ等を勘案して放射線の線量及び治療日程等の治療計画を立てる。
その後、実際の治療段階においては、患者7を治療室の治療用ベッド3に固定し、画像取得装置5によって患者7の患部の画像を治療画像として取得する。
治療計画段階で作成した参照画像に基づいて、治療画像中の患部を特定し、治療用ベッド3を回動して粒子線の照射中心であるアイソセンタ6に患部の位置と姿勢を合わせて治療を行う。
【0017】
本粒子線治療装置では、治療計画時、治療時およびメンテナンス時において、回転ガントリ1に取り付けられた粒子線照射部2、治療用ベッド3、移動床4、画像取得手段5などの被駆動部を必要に応じて駆動して使用する。
そのため、図2に示したように、制御装置8によって、粒子線照射部2を取り付けた回転ガントリ1、治療用ベッド3、移動床4および画像撮像手段5のそれぞれを駆動制御できるように構成されている。
制御装置8は、目標座標を入力して動かす位置決め制御モードと、操作ボタンを押している間だけ特定軸だけを一定方向に動かすいわゆるJOG運転モードとを備える。
【0018】
本実施の形態1における制御装置8においては、図3に示すように各被駆動部(例えば、粒子線照射部2および治療用ベッド3など)に対して、単数もしくは複数の球によって被駆動部の全体もしくは一部を覆い包むような球モデルを想定し、それぞれの球モデルの中心座標と半径を記憶しておく。
前述したように、図3は、粒子線照射部2に対応した(粒子線照射部2を覆い包む)粒子線照射部球モデル9と、治療用ベッド3に対応した(治療用ベッド3および患者7を覆い包む)治療用ベッド部球モデル10を示している。
本実施の形態おいては、各被駆動部(例えば、粒子線照射部2および治療用ベッド3など)は、単数もしくは複数の球によって球モデル化され、モデル化された球モデルの干渉をチェック(監視)することにより、各被駆動部の接触・衝突を防止するものである。
【0019】
続いて図4を用いて干渉チェックの原理をについて説明する。
前述したように、図4は、実施の形態1による球モデルを用いた干渉チェックの原理を説明するための模式図であり、図4(a)は球モデルAと球モデルBが干渉していないときを、図4(b)は球モデルAと球モデルBが干渉しているときを示している。
なお、図4において、例えば、球Aは治療用ベッド3の球モデルを、球Bは粒子線照射部2の球モデルを概念的に示している。
また、図4において、“r”は球Aの半径、“r”は球Bの半径、“O”は座標系の原点である。
【0020】
球Aと球Bとの干渉は、球Aと球Bの中心間距離とそれぞれの球の半径から容易に計算することができる。
中心間距離が2つの球の半径の和よりも大きければ干渉することはない。
2つの球の半径の和が中心間距離と一致したとき、2つの球は接する(干渉の境界)。
この球モデルは、あたかも近接センサのセンシング範囲を表しているかのごとく働くので、球モデルの半径は制動距離や安全率を考慮して設定すればよい。
このように、球モデル同士の干渉チェックは非常に簡単に行えるため、本方式は高速に演算が要求されるリアルタイム処理に適している。
【0021】
制御装置8において、干渉チェックはこの球モデルをもとに、リアルタイムで、即ち、駆動と同時進行で行われる。
制御装置8には、各被駆動部の現在位置、姿勢、大きさ等の幾何学的情報が記憶されている。
球モデルは、これら幾何学的情報から対応する被駆動部に張り付いて動くかのように、その中心座標を計算する。
【0022】
例えば、粒子線照射部2に対応した球モデル9については、以下のとおりである。
治療室に張り付いた固定座標系と、粒子線照射部2に張り付いた移動座標系を考える。
球モデル9は粒子線照射部2に張り付いているため、粒子線照射部2に張り付いた移動座標系でその中心座標を記憶する。
回転ガントリ1を駆動すると、制御装置8は回転ガントリの状態量(この場合回転角度)が判り、記憶されている幾何学的情報から、固定座標系から移動座標系の座標変換(式、行列、写像)が求まる。
【0023】
この座標変換の逆変換(移動座標系⇒固定座標系)から、固定座標系からみた球モデルの中心座標を計算する。同様にして、固定座標系からみた各被駆動部に対応した球モデルの中心座標を計算する。
前述した干渉チェックの原理(図4)を用いて、球モデル間の干渉をチェックする。
なお、球モデル間の干渉をチェックするための座標系は、実座標系である固定座標系でなくともよく、実座標系を変換して得られる任意の新たな座標系で定義されていてもよい。
このように、本実施の形態においては、制御装置8に各被駆動部に対応した球モデルの干渉をチェックする機能を設けたことにより、リアルタイムに(即ち、駆動と並行して)干渉をチェックが行え、治療計画時、治療時、またはメンテナンス時、必要に応じて行われるJOG運転等において、被駆動部同士の衝突防止がなされる。
という顕著な効果を奏する。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態による粒子線治療装置は、回転ガントリ1と共に回転駆動され、患者7の患部に粒子線を照射する粒子線照射部2と、患者7を搭載し、粒子線の照射対象である患者7の病巣が粒子線照射部2から照射される粒子線のアイソセンタ6に合致(一致)するように駆動される治療用ベッド3と、病巣の画像を取得する画像取得手段5と、単一または複数の球によって、粒子線照射部2を覆い包む第一の球モデル(9)を生成する第一の球モデル生成手段(図示なし)と、単一または複数の球によって、患者7および粒子線照射部2を覆い包む第二の球モデル(10)を生成する第二の球モデル生成手段(図示なし)と、第一の球モデル(9)と第二の球モデル(10)の干渉を監視する球モデル干渉監視手段(図示なし)とを備えている。
従って、被駆動部のJOG運転を行ったときに対しても、リアルタイムに(即ち、駆動中に)被駆動部間の干渉をチェックでき、衝突を防止できる。
また、エリア分割方式のように保守的(安全過保護的)に過剰な警告を出すことがないので、作業者がインターロックをはずして目視しながら低速で運転する、といった煩わしさがない。
【0025】
また、本実施の形態の形態においては、第一の球モデル(9)および第二の球モデル(10)は、実座標系を変換して得られる新たな座標系で定義してもよい。
また、本実施の形態による粒子線治療装置は、単一または複数の球によって、他の被駆動部、例えば、移動床や画像取得手段の全部または一部を覆い包むあらたな球モデルをそれぞれ生成する球モデル生成手段を更に備え、球モデル干渉監視手段は、すべての球モデルの干渉を監視するようにしてもよい。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態1で前述したように、球モデルはあたかも近接センサのセンシング範囲を表しているかのごとく働く。
従って、球モデルの半径は、被駆動部の制動距離や安全率を考慮して設定すればよい。
例えば、回転ガントリ1と治療用ベッド3とを比べると、圧倒的に回転ガントリ1の方が重く慣性があり、したがって制動距離は回転ガントリ1の方が長い。
したがって、回転ガントリ1と共に動く粒子線照射部2の球モデル9の半径を、他の球モデルの半径よりも大きくすることは合理的である。
【0027】
そこで、実施の形態2においては、粒子線照射部2の球モデルを、制動距離を考慮して他の被駆動部の球モデルよりも大きくした。
球モデルの配置場所や個数は、被駆動部の形状に合わせて、干渉の可能性がある部分を覆うように決定する。
このように、被駆動部の制動距離を考慮して球モデル半径を決めたことにより、被駆動部の制動距離に応じて決め細かくセンシングすることができる。
【0028】
実施の形態3.
実施の形態3では、さらに工夫して球モデルを定義する。
実施の形態2でも述べたが、粒子線治療装置において、回転ガントリ1は重くて慣性があり、治療用ベッド3など他の被駆動部に比べて圧倒的に制動距離が長い。
したがって、回転ガントリ1の移動方向に座標軸がくるような座標系を考える。
具体的には、回転ガントリ1と同心の円柱座標系20を考えて、この円柱座標系上で球を定義する。
【0029】
図5は、実施の形態3における球モデルを定義する円柱座標系20を説明するための図である。
回転ガントリ1と同心の円柱座標系20の座標軸は、半径方向r、角度方向θ、奥行き方向yの3軸からなる。
これら座標の単位長も制動距離と関連して定義すればよい。
粒子線照射部2は、回転ガントリ1とともに動く角度方向θと、半径方向rに動き、奥行き方向yへは動かない。
また、制動距離は回転ガントリ1とともに動く角度方向θが長いので、θ軸の単位長を制動距離に合わせて長くすればよい。
円柱座標系20上で定義した球モデルの数式は、以下の式(1)のとおり表される。
【0030】
【数1】

【0031】
また、円柱座標系から直交座標系への変換は、以下の式(2)により行うことができる。
【0032】
【数2】

【0033】
以上説明したように、実施の形態3による粒子線治療装置においては、第一および第二の球モデルを定義する座標系を、回転ガントリ1と同心の円柱座標系20とし、更に、各軸方向の制動距離を考慮して各軸の単位長さを定義することにより、より決め細かいセンシングを行うことが可能となる。
また、円柱座標系20上で定義される球モデルは、前掲の式式(1)で表される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、粒子線照射部や治療用ベッドなどの被駆動部の干渉を容易に監視できる粒子線治療装置の実現に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施の形態1による粒子線治療装置の治療室を表した概念図である。
【図2】実施の形態1による粒子線治療装置における駆動制御系を表すブロック図である。
【図3】実施の形態1による粒子線治療装置の被駆動部を球モデルによりモデル化した概念図である。
【図4】実施の形態1による球モデルを用いた干渉チェックの原理を説明するための模式図である。
【図5】実施の形態3における球モデルを定義する円柱座標系を説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
1 回転ガントリ 2 粒子線照射部
3 治療用ベッド 4 移動床
5 画像取得手段 6 アイソセンタ
7 患者 8 制御装置
9 粒子線照射部球モデル(第一の球モデル)
10 治療用ベッド部球モデル(第二の球モデル)
20 円柱座標系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ガントリと共に回転駆動され、患者の患部に粒子線を照射する粒子線照射部と、
前記患者を搭載し、粒子線の照射対象である前記患者の病巣が前記粒子線照射部から照射される粒子線のアイソセンタに合致するように駆動される治療用ベッドと、
前記病巣の画像を取得する画像取得手段と、
単一または複数の球によって、前記粒子線照射部の全部または一部を覆い包む第一の球モデルを生成する第一の球モデル生成手段と、
単一または複数の球によって、前記治療用ベッドの全部または一部を覆い包む第二の球モデルを生成する第二の球モデル生成手段と、
前記第一の球モデルと前記第二の球モデルの干渉を監視する球モデル干渉監視手段とを備えたことを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
前記第一の球モデルおよび前記第二の球モデルは、実座標系を変換して得られる新たな座標系で定義されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項3】
単一または複数の球によって、前記画像取得手段を覆い包む第三の球モデルを生成する第三の球モデル生成手段を備え、
前記球モデル干渉監視手段は、前記第一、第二よび第三3の球モデルの干渉を監視することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項4】
前記第一の球モデルは、前記第二の球モデルより大きいことを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項5】
前記第一の球モデルおよび前記第二の球モデルは、前記回転ガントリと同心の円柱座標系で定義されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
【請求項6】
上記円柱座標系で定義される球モデルは、以下の式で表されることを特徴とする請求項5に記載の粒子線治療装置。
(r−r+(θ−θ+(y−y=r
ただし、rは球モデルの半径、(r、θ、y)は球の中心座標

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−57811(P2010−57811A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228492(P2008−228492)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】