説明

粒子線治療計画装置および粒子線治療装置

【課題】均一走査又は積層原体照射において、荷電粒子ビームを有効に利用すると同時に治療時間を短縮する。
【解決手段】均一走査では、コリメータ開口領域を一様に照射する最適な荷電粒子ビーム走査経路を治療計画装置が計算する。積層原体照射では、層分割した患部各層のマルチリーフコリメータ開口領域を一様に照射する最適な荷電粒子ビーム走査経路を層毎に治療計画装置が計算する、あるいは、各層のマルチリーフコリメータ開口領域をおおう最小の照射野サイズを治療計画装置が計算し、粒子線治療制御装置のメモリ上に記憶されている照射野サイズに対応した荷電粒子ビーム走査経路を選択する。コリメータ開口領域に合わせて、均一走査あるいは積層原体照射の各層での横方向の荷電粒子ビーム走査経路を最適に変化させることによって、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線加速器により加速された荷電粒子ビームを、がん患部に照射してがん治療を行う粒子線治療装置ならびに粒子線治療の治療計画を行う粒子線治療計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線がん治療装置は、粒子線加速器により加速された荷電粒子ビームを、がん患部に照射してがん治療を行う装置である。荷電粒子ビームは、シンクロトロン加速器あるいはサイクロトロン加速器といった粒子線加速器により光速程度まで加速された後、ビーム輸送系により照射ノズルまで輸送され、照射ノズル内で患部形状に合うように照射野形成され、患者に照射される。照射ノズルで、荷電粒子ビームを照射野形成する方法として、散乱体により荷電粒子ビームを拡大して必要な部分をコリメータにより切り出して照射する散乱体照射法、あるいは、ビーム輸送系により輸送されてきた荷電粒子ビームを、走査電磁石により患部形状に合わせて直接走査しながら照射するスキャニング照射法などがある。スキャニング照射法は、粒子線加速器で加速され、ビーム輸送系で輸送されてきた細い荷電粒子ビームを直接電磁石により走査しながら照射するため、患部形状に一致した線量分布を形成することが可能である。
【0003】
散乱体照射法とスキャニング照射法の中間に位置する照射方法として、非特許文献1,非特許文献2に示されているような均一走査と呼ばれる照射方法がある。均一走査は、散乱体で拡大した荷電粒子ビームを走査電磁石により横方向に一様な線量分布を形成するように走査しながら照射する照射法である。均一走査では、深さ方向の線量分布拡大すなわちSOBP(Spread Out Bragg Peak)形成にリッジフィルタを用いる。あるいは、患部を多数の層に分割した上で、荷電粒子ビームのエネルギー変化により照射する層を移動し、各層の荷電粒子ビーム照射量を深さ方向の線量分布が一様になるように適切に配分することで、SOBP形成する。均一走査では、患部底形状に線量分布を合わせるための患者固有具であるボーラスを使用することもある。均一走査では、患部形状に合わせた横方向の照射野形状を決めるために、自動で照射野形状を整形するマルチリーフコリメータ、あるいは、金属板より患部形状に合った形状を放電加工などにより掘削する患者コリメータが使用される。
【0004】
均一走査では、一つのコリメータ開口形状のみを使用するが、非特許文献3に示されているように、患部を層に分割して各層の照射野形状にマルチリーフコリメータ開口を合わせて照射していく積層原体照射と呼ばれる照射法がある。積層原体照射は、患部を多数の層に分割し、各層を均一走査と同様に走査電磁石により横方向の線量分布が一様となるように走査しながら照射していく。積層原体照射では、患者固有具であるボーラスを用いて線量分布を患部底面形状に合わせた上で、各層を照射する際マルチリーフコリメータにより横方向の照射野を患部各層の横方向形状に合わせて照射するため、患部形状に合致した線量分布が形成可能である。積層原体照射は、各層の照射時の横方向の照射野を規定するのにマルチリーフコリメータを用い、層毎に自動で照射野形状を変化させる。積層原体照射では、層分割した患部各層を同じエネルギーの荷電粒子ビームで照射していき、荷電粒子ビームのエネルギーを変更することで照射する層を移動する。積層原体照射は、散乱体照射法、均一走査と比べてより患部形状に合致した線量分布が形成可能である。
【0005】
以上のように、均一走査と積層原体照射ではともに散乱体で拡大した荷電粒子ビームを走査しながら横方向に照射していくが、スキャニング照射法と比べて、よりビームサイズの大きい荷電粒子ビームを走査するため、横方向はコリメータにより患部形状に合うように照射野形成する必要がある。均一走査では、放電加工により掘削する患者コリメータ、あるいは、自動で患部形状に整形するマルチリーフコリメータを使用し、積層原体照射では、層分割した各層毎にコリメータ開口を変える必要があるため、マルチリーフコリメータを使用する。
【0006】
均一走査あるいは積層原体照射では、荷電粒子ビーム進行方向と直交する横方向に一様な線量分布を形成するために、特許文献1ならびに非特許文献1〜4に示すように、荷電粒子ビームを散乱体により拡大し、スキャニング照射法と比較してより大きなビームサイズの荷電粒子ビームを横方向に走査しながら照射する。このより大きなビームサイズの荷電粒子ビームを走査電磁石により走査しながら、ガウス分布形状の線量分布を重ね合わせて一様な分布を形成する方法として、特許文献1ならびに非特許文献1〜4に示すようにさまざまなものがある。
【0007】
非特許文献1に示すラスター走査は、荷電粒子ビームを加速器でオンオフすることなく、連続的に矩形形状の走査経路を一筆書きで走査していく。ラスター走査の走査線の間隔を、荷電粒子ビームのビームサイズσに対して<2σにすることにより、一様な線量分布領域を形成可能である。
【0008】
非特許文献2に示すジグザグ走査は、XY平面内でX方向とY方向の荷電粒子ビームの走査速度を独立に決め、ラスター走査と同様に荷電粒子ビームをオンオフせずに、連続的に一筆書きでジグザグ形状に走査していく。ジグザグ走査では、ジグザグ形状を構成する走査線の間隔をラスター走査と同様にビームサイズσに対して<2σにすることにより、一様な線量分布領域を形成可能である。
【0009】
非特許文献3に示す単円走査は、ラスター走査,ジグザグ走査と同様に荷電粒子ビームをオンオフせずに、連続的に円形の走査経路で走査する。円形の走査経路の中心部分に一様な線量分布領域が形成される。非特許文献4に示すらせん走査は、荷電粒子ビームをオンオフせずに、連続的にらせん形の走査経路で走査する。単円走査と同様に、らせん型の走査経路の中心部分に一様な線量分布領域が形成される。
【0010】
特許文献1に示すライン走査は、ラスター走査において荷電粒子ビームを加速器でオンオフする制御を組み合わせ、XY平面内でX方向は荷電粒子ビームをオンし連続的に照射し、Y方向は荷電粒子ビームをオフして照射しない。このライン走査はX方向の連続的なライン状の線量分布をY方向に重ね合わせて一様な線量分布領域を形成する。
【0011】
以上の走査方法のうち、ラスター走査,ジグザグ走査,らせん走査,ライン走査は、単円走査と比較して、散乱体で拡大する荷電粒子ビームのビームサイズが単円走査のビームサイズより小さいため、散乱体の厚さを薄くすることができ、荷電粒子ビームの散乱体でのエネルギー損失を少なくでき、そのため飛程を長くできる利点がある。また、荷電粒子ビームのビームサイズが小さいため、単円走査と比較してビーム利用効率を向上させることが可能となる利点がある。一方、荷電粒子ビームのビームサイズが小さいため、走査経路が長くなり横方向に一様な線量分布を形成するための一面走査時間が長くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3518270号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】V.A.Anferov, “Scan pattern optimization for uniform proton beam scanning”, Med.Phys. 36 (2009) 3560-3567.
【非特許文献2】S.Yonai, et al., “Evaluation of beam wobbling methods for heavy-ion radiotherapy”, Med.Phys. 35 (2008) 927-938.
【非特許文献3】T.Kanai, et al., “Commissioning of a conformal irradiation system for heavy-ion radiotherapy using a layer-stacking method”, Med.Phys. 33 (2006) 2989-2997.
【非特許文献4】M.Komori, et al., “Optimization of Spiral-Wobbler System for Heavy-Ion Radiotherapy”, Jpn.J.Appl.Phys. 43 (2004) 6463-6467.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
均一走査では、患部の大きさより決まる照射野サイズに対応した横方向のビーム走査経路により照射を行っていた。そのため、コリメータ開口領域が照射野サイズより内側に入る領域で、コリメータ開口領域の外側にも照射を行っていた。そのため、ビーム走査経路が長くなり、照射に必要な時間が長くなる傾向にあった。また、コリメータ開口領域の外側に照射を行うことにより、荷電粒子ビームの損失量が多かった。
【0015】
積層原体照射では、従来は深い層から浅い層にいたるまですべての層で同一の走査経路に基づきビーム走査していた。そのため、積層原体照射において、浅い層の照射の際、マルチリーフコリメータが小さく閉じられた場合にも、深い層と同一の走査経路で荷電粒子ビームを走査していた。そのため、浅い側の層において患部の投影形状が小さくなり、マルチリーフコリメータ開口が小さくなった場合にも、開口領域の外側に照射を行っていた。そのため、浅い層において照射に必要な時間が長くなる傾向にあった。また、浅い層においてマルチリーフコリメータ開口領域の外側に照射を行うことにより、荷電粒子ビームの損失量が多かった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、均一走査における横方向の荷電粒子ビーム走査経路を、コリメータ開口形状を考慮して、コリメータ開口領域以外の照射を極力減らすような最適な走査経路を治療計画装置が決定する。また、本発明は、積層原体照射において層分割した患部各層を横方向に一様に照射していく際、最も深い層のマルチリーフコリメータ開口領域が最も大きく、浅い層につれてマルチリーフコリメータ開口領域が小さくなっていくことに注目し、浅い層の照射において、マルチリーフコリメータ開口領域が小さくなった場合、開口領域のみを一様に照射できるように走査経路を変化させる。例えば、各層を横方向に単円走査により照射する場合、浅い層においてマルチリーフコリメータ開口領域が小さくなった場合、この小さくなった開口領域のみを一様に照射できるように単円走査の回転半径を小さくする。
【0017】
均一走査における治療計画装置は、X線CT画像をもとに患部内部を探索して、コリメータ開口形状を計算する。その後、治療計画装置は、このコリメータ開口領域のみを一様な線量で照射するための荷電粒子ビーム走査経路を計算する。積層原体照射における治療計画装置はX線CT画像をもとに患部を層分割し、各層を照射する際のマルチリーフコリメータ開口を計算する。その後、治療計画装置は、各層のマルチリーフコリメータ開口領域のみを一様に照射するための必要最低限の走査経路を計算する。このように、治療計画装置が、コリメータ開口領域を考慮して、開口領域のみを一様に照射するための最低限の荷電粒子ビームの走査経路を計算する。また別の手段として、積層原体照射では、層分割した患部各層を照射するマルチリーフコリメータ開口領域より、各層の照射野サイズなる量が定義できる。例えば、ある層のマルチリーフコリメータ開口領域が直径10cmの円に含まれる場合、この層の照射野サイズは直径10cmであるとする。また、ラスターの照射野サイズも定義可能である。ある層の開口領域が10cm×10cmの正方形領域に含まれる場合、この層の照射野サイズは10cm×10cmであるとする。以上のように定義される照射野サイズに対応した走査経路をテーブルとして、粒子線治療装置の制御装置がメモリ上に持っている。治療計画装置において各層の照射野サイズを計算し、浅い層においてマルチリーフコリメータ開口領域が小さくなった場合、すなわち、照射野サイズが小さくなった場合に、制御装置がメモリ上に記憶している複数の走査経路のなかから、その小さい照射野サイズに対応した走査経路を選択する。このような制御装置を追加することにより、層分割した各層の照射において、各層の横方向形状を覆う最低限の走査経路で荷電粒子ビームを照射して横方向の線量分布を一様とすることが可能となる。
【0018】
以上の手段により、均一走査ではコリメータ開口領域のみを一様な線量分布で照射し、コリメータ開口領域以外の照射を減らした照射が可能となる。また、積層原体照射においては、各層のマルチリーフコリメータ開口領域に対応した最低限の照射経路で荷電粒子ビームを照射することが可能となる。その結果、均一走査では従来より走査経路を短縮化でき、照射に必要な時間を短縮することが可能となる。積層原体照射法では、浅い層において走査経路を従来より短縮化でき、照射に必要な時間を短縮することが可能となる。また、均一走査,積層原体照射のいずれの場合もコリメータ開口領域の外側の荷電粒子ビームの照射を減らすことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、均一走査法あるいは積層原体照射法において、従来よりも荷電粒子ビーム走査経路を短縮することが可能となり、治療時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が関係する粒子線治療装置と制御装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明が関係する照射ノズルと制御装置の構成を示す図である。
【図3】球形の患部を、積層原体照射により照射する様子を示す図である。
【図4】(a)図3に示す球形の患部に対して、治療計画装置が計算した最も深い層1をビーム照射方向から見た形状と、その層1の形状に対してマルチリーフコリメータ開口の計算結果を示す図である。(b)図3に示す球形の患部に対して、治療計画装置が計算した最も深い層から数えて6番目の層6をビーム照射方向から見た形状と、その層6の形状に対してマルチリーフコリメータ開口の計算結果を示す図である。
【図5】積層原体照射において、治療計画装置で深さ方向の線量分布が一様となるように各層の照射量を調節して、SOBPを形成したことを示す図である。
【図6】積層原体照射において、深さ方向の線量分布が一様となる各層の照射量を治療計画装置が計算した結果を示す図である。
【図7】積層原体照射において、各層をラスター走査により横方向照射した場合の走査経路を示す図である。
【図8】積層原体照射において、各層をジグザグ走査により横方向照射した場合の走査経路を示す図である。
【図9】積層原体照射において、各層を単円走査により横方向照射した場合の走査経路を示す図である。
【図10】積層原体照射において、各層をらせん走査により横方向照射した場合の走査経路を示す図である。
【図11】積層原体照射において、各層をライン走査により横方向照射した場合の走査経路を示す図である。
【図12】(a)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた最も深い層1に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくラスター走査の走査経路を示す図であり、(b)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた浅い側に位置する層6に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくラスター走査の走査経路を示す図である。
【図13】積層原体照射において、本発明に基づきラスター走査を行う場合の走査電磁石励磁電流値を示すテーブルである。
【図14】(a)積層原体照射において、横方向照射にラスター走査を用いた場合の、照射野サイズ25cm×25cmに対応した走査経路を示す図であり、(b)積層原体照射において、横方向照射にラスター走査を用いた場合の、照射野サイズ15cm×15cmに対応した走査経路を示す図であり、(c)積層原体照射において、横方向照射にラスター走査を用いた場合の、照射野サイズ10cm×10cmに対応した走査経路を示す図である。
【図15】(a)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた最も深い層1に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくジグザグ走査の走査経路を示す図であり、(b)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた浅い側に位置する層6に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくジグザグ走査の走査経路を示す図である。
【図16】(a)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた最も深い層1に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づく単円走査の走査経路を示す図であり、(b)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた浅い側に位置する層6に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づく単円走査の走査経路を示す図である。
【図17】(a)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた最も深い層1に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくらせん走査の走査経路を示す図であり、(b)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた浅い側に位置する層6に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくらせん走査の走査経路を示す図である。
【図18】(a)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた最も深い層1に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくライン走査の走査経路を示す図であり、(b)図3に示す球形の患部に対して、積層原体照射の治療計画が決めた浅い側に位置する層6に対するマルチリーフコリメータ開口領域と本発明に基づくライン走査の走査経路を示す図である。
【図19】積層原体照射において、本発明に基づきライン走査を行う場合の走査電磁石励磁電流値とビームオンオフ制御信号を示すテーブルである。
【図20】均一走査において、コリメータ開口領域と従来のラスター走査経路を示す図である。
【図21】均一走査において、本発明に基づきラスター走査を行う場合のコリメータ開口とラスター走査経路を示す図である。
【図22】均一走査において、コリメータ開口領域と従来のライン走査経路を示す図である。
【図23】均一走査において、本発明に基づきライン走査を行う場合のコリメータ開口とライン走査経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための最適の形態を、図面を用いて説明する。
【0022】
図1に本発明が関係する粒子線治療装置の全体構成を示す。荷電粒子ビームは入射器21より加速器22に入射され、所望のエネルギーまで加速される。粒子線加速器200により加速された荷電粒子ビームは、複数の電磁石配列より構成されるビーム輸送系300により、照射ノズル400まで輸送される。荷電粒子ビームは、照射ノズル400で患部形状に合うように整形された後、ベッド装置500に横になっている患者5に照射される。治療計画装置104は、X線CT画像などの患者の体内情報をもとに、医者が患部を特定し、患部を一様な線量で照射するための照射計画を立てる。治療計画装置104から、粒子線治療装置の全体制御装置102に、荷電粒子ビームの照射位置,照射量などの情報が送信される。その情報に基づき、全体制御装置102は、適宜、加速器,ビーム輸送系制御装置101と照射ノズル制御装置103と情報をやりとりして照射を行う。
【0023】
図2に本発明が関係する照射ノズル400と照射ノズル制御装置103を示す。照射ノズル400には、上流より荷電粒子ビームを横方向に走査するための水平,垂直走査用の走査電磁石41A,41Bが各一台、荷電粒子ビームのビームサイズを拡大するための散乱体42、深さ方向のブラッグピークを拡大させるリッジフィルタ43、荷電粒子ビーム照射時の横方向の線量分布の一様度を確認するための平坦度モニタ44、荷電粒子ビームの照射量を測定するための線量モニタ45、マルチリーフコリメータ46、深さ方向の線量分布を患部底形状に合わせるための患者固有具であるボーラス47、荷電粒子ビームの到達深さを微調整するためのレンジシフタ48が配置される。
【0024】
均一走査の治療計画の流れを説明する。
【0025】
均一走査に対応した治療計画装置104は、X線CT画像をもとに患部51内に位置する点を探索して、荷電粒子ビーム照射方向から見たコリメータ開口形状を計算する。また、患部51内に位置する各点の水等価厚を計算して、患部領域を深さ方向に一様な線量で照射するために必要な水等価の患部厚さ、すなわち必要なSOBP長を計算する。また、均一走査でボーラスを使用する場合は、患部51底面に位置する各点の水等価厚より、荷電粒子ビームの到達位置が患部底面に一致するようにボーラス47の掘削形状を計算する。コリメータ開口形状は、必要に応じてマージンを付与することが可能である。その後、治療計画装置104は、コリメータ開口領域を一様な線量で照射するための荷電粒子ビーム走査経路を計算する。その後、線量分布計算を実施して患部を一様な線量で照射するための荷電粒子ビーム照射量を計算する。治療計画装置104の出力であるコリメータ開口形状,SOBP長,ボーラス形状,荷電粒子ビーム走査経路と照射量は、粒子線治療装置の全体制御装置102に送信される。また、均一走査では、患部を層に分割して、各層を同一エネルギーの荷電粒子ビームで照射していき、荷電粒子ビームのエネルギーを変更して照射する層を変化させ、各層の照射量を適切に配分して患部深さ方向に一様な線量分布を形成することも可能である。この場合、治療計画装置104からは照射する荷電粒子ビームのエネルギーも全体制御装置102に出力される。
【0026】
均一走査の照射手順について説明する。
【0027】
照射を開始する前に全体制御装置102より、コリメータ開口形状が照射ノズル制御装置103に送られてくる。均一走査においてマルチリーフコリメータを使用する場合、マルチリーフコリメータ制御装置76は、その形状をマルチリーフコリメータ駆動部66に送り、マルチリーフコリメータ46を動かして開口形状を設定する。また、均一走査において放電加工の患者コリメータを使用する場合、あらかじめ所定の形状に掘削しておき照射前に照射ノズルの所定の位置に設置する。コリメータの設定が完了すると、マルチリーフコリメータ駆動部66は、マルチリーフコリメータ制御装置76に完了信号を送る。また、ボーラスを使用する場合、照射前に掘削形状に従い掘削し、照射ノズル内の所定位置に設置する。SOBP長は、全体制御装置102より照射ノズル制御装置103内のリッジフィルタ制御部73に送られ、リッジフィルタ制御部73はSOBP長より対応するリッジフィルタ43を選択し、リッジフィルタ駆動部63にそのリッジフィルタを設置するように信号を送る。リッジフィルタ43設置が完了すると、リッジフィルタ制御部73に設定完了信号を送る。また、走査電磁石電源制御部71は走査を開始する始点の励磁電流値を全体制御装置102から受け取り、走査電磁石電源61A,61Bに送り設定する。設定が完了すると、走査電磁石電源61A,61Bは完了信号を走査電磁石電源制御部71に送る。これで照射開始する準備が完了したので、全体制御装置102は、加速器,ビーム輸送系制御装置101にビームオン信号を送り、同時に、照射ノズル制御装置103内の走査電磁石電源制御部71に走査開始信号を送ることで、照射が開始される。
【0028】
線量モニタ45は、照射した荷電粒子ビームの電荷量を測定し、照射ノズル制御装置103内のビーム照射量管理部75は、治療計画装置104で決められた照射量に到達すると、照射完了信号を出す。照射完了信号は、照射ノズル制御装置103より全体制御装置102に送られ、全体制御装置102は即座に加速器,ビーム輸送系制御装置101にビームオフ信号を送る。これにより照射が完了する。照射中、平坦度モニタ44は、照射中の横方向の線量分布が一様であるかどうか確認する。もし、許容値を超えて平坦度が悪化したことが検出されると、全体制御装置102に送られ、即座にビームオフの処理が行われる。
【0029】
また、患部を複数の層に分割し、各層を同じエネルギーの荷電粒子ビームを走査して照射していく場合、ある層の照射が完了すると、次の層に対応した荷電粒子ビームのエネルギーを加速器,ビーム輸送系制御装置101に送り、走査電磁石電源制御部71は、走査開始点に走査電磁石電源61A,61Bの励磁電流値を設定する。この設定が完了した後、ビーム照射を再開する。治療計画装置104で決められた各層の照射量になると、ビーム停止し、その層の照射を終了する。これを全ての層に対して繰り返し行う。荷電粒子ビームのエネルギーを変化させる手段としては、加速器によりエネルギー変更する方法や、照射ノズル内のレンジシフタあるいはビーム輸送系途中に設置されたディグレーダと呼ばれる物質をビーム通過途中に適切な量だけ挿入するなどの方法がある。
【0030】
積層原体照射の治療計画の流れを説明する。
【0031】
積層原体照射に対応した治療計画装置104は、患部内部に位置する各点の水等価厚を計算して、同一エネルギーの荷電粒子ビームで照射できる層に分割する。これにより患部各層の三次元的な形が決まり、各層を荷電粒子ビーム進行方向から見た形に合わせて、各層のマルチリーフコリメータ開口形状を計算する。また、各層のマルチリーフコリメータ開口領域を覆う照射野サイズを計算する。照射野サイズは、10cm四角などの長方形形状、あるいは10cm直径などの円形形状で表現する。各層のマルチリーフコリメータ開口形状は、必要に応じてマージンを付与することが可能である。治療計画装置104は、各層のマルチリーフコリメータ開口領域を一様な線量で照射するための荷電粒子ビームの走査経路を計算する。その後、線量分布計算を実施して、患部を一様な線量で照射するための各層の荷電粒子ビーム照射量を計算する。治療計画装置104の出力である荷電粒子ビーム走査経路と照射量は、粒子線治療装置の全体制御装置102に送信される。
【0032】
以上の積層原体照射の治療計画装置104の動作をより具体的に、図3を用いて積層原体照射で球形の患部を照射する場合で説明する。治療計画装置104は、球形の患部51の底面に位置する各点の水等価厚を計算して、荷電粒子ビームの到達位置が患部底面に合致するようにボーラス47の掘削形状を計算する。また、患部51内部の各点の水等価厚を計算して、同じ荷電粒子ビームエネルギーで照射できるように患部51を層分割し、各層を照射するための荷電粒子ビームのエネルギー、あるいは、各層に到達飛程を合わせるためのレンジシフタ48の挿入量を計算する。図3では、球体の患部51を層1から層8までの合計8層に分割した図を示しており、層1は一番深い層を表し、層2,層3と順に浅い位置に位置する。層6は深い層から6番目の層を表す。治療計画装置104は、同一層に位置する層内の各点を探索して、各層のマルチリーフコリメータ46の開口形状を計算する。図4(a),(b)にそれぞれ一番深い層1と深い層から数えて6番目の層6の、ビーム進行方向から見た層の横方向形状と、治療計画装置104によるマルチリーフコリメータ開口の計算結果を示す。図4(a),(b)に示すように、治療計画装置は各層の横方向形状に合うようにマルチリーフコリメータ46開口領域を決める。また、マルチリーフコリメータ46の開口領域は、治療計画装置104からの指定により適宜マージンを付与することがあり、マルチリーフコリメータ開口は図4に示すより、患部51形状に対して余裕を持って広がることがある。積層原体照射では、ボーラスを使用するため一番深い層は、ビーム進行方向から見た患部の最大外周を照射するため、一番深い層のマルチリーフコリメータ開口が最も大きくなり、浅い層につれてマルチリーフコリメータは閉じていくことになる。図4を見て分かるように、最も深い層である層1と層6を比較すると、浅い側に位置する層6のマルチリーフコリメータ開口は層6の投影形状が小さくなるため、層1より小さくなっている。各層のマルチリーフコリメータ開口が決まると、治療計画装置104は、マルチリーフコリメータ開口領域を一様な線量分布で荷電粒子ビームを照射するための適切な走査経路を計算する。荷電粒子ビームを横方向に一様に照射するための走査経路は、後述するように何種類かの方法がある。最後に、治療計画装置104は、層分割した患部を一様な線量で照射するための各層の荷電粒子ビームの照射量を決める。図5に示すように各層の照射量を適切に決めることにより深さ方向に一様な線量分布SOBP(Spread Out Bragg Peak)を形成することが可能となる。図5に、球体を一様な線量で照射するための層1から層8までの各層の照射量の計算結果を示す。治療計画装置104からの出力である荷電粒子ビーム走査経路と各層の荷電粒子ビーム照射量は、粒子線治療装置の全体制御装置102に送られる。横方向に一様な線量分布を形成するための走査経路の情報は、水平,垂直走査電磁石の目標励磁電流値の配列に変換され、全体制御装置102に送られる。この目標励磁電流値は、照射ノズル制御装置103内の走査電磁石電源制御部71に送られ、走査電磁石電源制御部71は、走査電磁石電源61A,61Bに励磁電流値を送る。
【0033】
積層原体照射の照射手順について説明する。
【0034】
まず、ある層の照射を開始する前に全体制御装置102よりマルチリーフコリメータ46開口形状がマルチリーフコリメータ制御装置76に送られてくる。その情報に基づき、マルチリーフコリメータ駆動部66は、マルチリーフコリメータ46を動かして開口形状を設定する。完了するとマルチリーフコリメータ駆動部66は、マルチリーフコリメータ制御装置76に完了信号を送る。また、走査電磁石電源制御部71は走査を開始する始点の励磁電流値を全体制御装置102から受け取り、走査電磁石電源61A,61Bに送り設定する。設定が完了すると、走査電磁石電源61A,61Bは完了信号を走査電磁石電源制御部71に送る。これである層を照射開始する準備が完了したので、全体制御装置102は、加速器,ビーム輸送系制御装置101にビームオン信号を送り、同時に、照射ノズル制御装置103内の走査電磁石電源制御部71に走査開始信号を送ることで、ある層の照射が開始される。
【0035】
線量モニタ45は、ある層を照射中に照射した荷電粒子ビームの電荷量を測定し、照射ノズル制御装置103内のビーム照射量管理部75は、治療計画装置104で決められた照射量に到達すると、その層の照射完了信号を出す。照射完了信号は、照射ノズル制御装置103より全体制御装置102に送られ、全体制御装置102は即座に加速器,ビーム輸送系制御装置101にビームオフ信号を送る。これによりある層の照射が完了する。また、ある層の照射中、平坦度モニタ44は、照射中の横方向の線量分布が一様であるかどうか確認する。もし、許容値を超えて平坦度が悪化したことが検出されると、全体制御装置102に送られ、即座にビームオフの処理が行われる。
【0036】
ある層の照射が完了すると、次の層の照射の準備に移る。全体制御装置102は、次の層に対応した荷電粒子ビームのエネルギーを加速器,ビーム輸送系制御装置101に送り、次の層に対応したマルチリーフコリメータ開口形状をマルチリーフコリメータ制御装置76に送る。また、前述した通り、走査電磁石電源制御部71は、走査開始点に走査電磁石電源61A,61Bの励磁電流値を設定する。荷電粒子ビームのエネルギーを変化させる手段としては、加速器によりエネルギー変更する方法や、照射ノズル内のレンジシフタあるいはビーム輸送系途中に設置されたディグレーダと呼ばれる物質をビーム通過途中に適切な量だけ挿入することにより行う。
【0037】
均一走査では、散乱体42で拡大した荷電粒子ビームをガウス分布形状の線量分布を重ね合わせて、横方向の線量分布が一様となるように走査電磁石41A,41Bにより走査しながら照射する。また、積層原体照射では、層分割した患部51の各層を同一エネルギーの荷電粒子ビームで横方向の線量分布が一様となるように走査電磁石41A,41Bにより走査しながら照射する。均一走査あるいは積層原体照射において、走査電磁石41A,41Bにより横方向に一様な線量分布を形成するための走査方法として、ラスター走査,ジグザグ走査,円形走査,らせん走査,ライン走査などの手法がある。
【0038】
図7から図11に横方向に一様な線量分布で照射するための荷電粒子ビーム走査経路を説明する。
【0039】
図7は、ラスター走査の場合の走査経路602を示す。ラスター走査は、図7において始点よりビームオンし、X方向走査,Y方向走査を繰り返し、終点に至る。加速器でビームオンオフせずに荷電粒子ビームを切らずに連続的に一筆書きで始点から終点まで走査する。Y方向に並ぶ走査経路の間隔は、荷電粒子ビームのサイズσとして<2σが妥当であり、この時XY平面内で一様な線量分布を形成することができる。
【0040】
図8は、ジグザグ走査の走査経路603を示す。ジグザグ走査は、図8の原点よりビームオンし、X方向走査とY方向走査を同時に開始する。X方向走査とY方向走査を同時に行うことにより、図8に示すように走査経路は斜めに進行することになる。X方向,Y方向それぞれの端点に到達すると、走査方向を逆転させる。+X方向に走査している時、X方向の端点に到達すると、走査方向を−X方向に逆転して走査する。Y方向も同様である。X方向,Y方向の走査速度を適切に選択することにより、図8に示すような原点をスタートして原点に戻ってくるジグザグ状の走査経路を描く。ジグザグ走査は、ラスター走査と同じく原点から原点まで、ビームを切らずに連続的に一筆書きで走査する。ラスター走査と同様に、斜めに進行する走査ラインの間隔を、ビームサイズσに対して<2σに選択することにより、一様な線量分布を可能である。
【0041】
図9は、単円走査の走査経路604を示す。単円走査は、ビームを切らずに連続的に単円を描くように走査する。走査円の半径と荷電粒子ビームのビームサイズを適切に選択することにより、中心部分に一様な線量分布が形成される。
【0042】
図10は、らせん走査の走査経路605を示す。らせん走査は、原点を出発し原点に戻ってくる一つのらせんを多数回繰り返す。単円走査と同様に、らせん走査の中心部分に一様な線量分布が形成される。
【0043】
図11は、ライン走査の場合の走査経路601を示す。ライン走査では、図7の始点よりビームオンし荷電粒子ビームをX方向に走査、図7の終点でビームオフする。その後Y方向に移動し、再びX方向にビーム走査を繰り返す。このようにライン走査は、X方向にビーム走査する場合ビームを切らずに走査し、Y方向に走査する際はビームを切り走査することで、X方向のライン状の線量分布をY方向に重ね合わせて一様な線量分布を形成する。Y方向に並ぶラインの間隔を、ラスター走査と同様に、ビームサイズσに対して<2σとすることにより一様な線量分布を形成する。
【0044】
図7から図11に示すいずれの横方向の走査方法も、走査経路に対応した水平,垂直走査電磁石の励磁電流値の配列をテーブルとして、図1に示す粒子線治療装置の全体制御装置102内のメモリ上に格納しておく。この励磁電流値を図2に示す照射ノズル制御装置103内の走査電磁石電源制御部71に送る。同時に全体制御装置102より加速器,ビーム輸送系制御装置101にビームオン,ビームオフ信号を適宜送ることにより、図7から図11に示す走査経路に基づく横方向の照射が行われる。
【0045】
[実施例1]
本発明の好適な実施例である第一実施例では、均一走査において横方向にラスター走査で照射する場合に関する。従来の均一走査におけるラスター走査経路を図20に示す。図20では、コリメータ開口領域を斜線塗りつぶしに示し、点線がコリメータ開口領域をおおう矩形の照射野を表し、実線がラスター走査経路602を表す。図20中始点と記す点よりラスター走査を開始し、ビームを切ることなくX方向走査,Y方向走査を繰り返し、終点と記す点に至る。従来の均一走査では、図20に示すように、治療計画装置104はコリメータ開口領域に対してこれをおおう照射野を求め、この照射野を一様な線量分布で照射するためのラスター走査経路602を計算する。あるいは、あらかじめ照射野に対応したラスター走査経路を計算しておき、照射野に対応したデータとして持っておく。例えば図20では患部をおおう矩形領域の点線で示す照射野サイズを25cm×25cmとし、ビームサイズを1σで2cm程度と決め、Y方向の走査間隔をビームサイズの2倍程度の4cmとし、Y方向の走査本数を9本とする。X方向の走査範囲は、X方向の照射野サイズ25cmを連続ビームで照射して一様な線量分布を形成し、端部での線量分布の落ち方を考慮して、−18cmから+18cmまで走査すると決める。
【0046】
本発明による治療計画装置104におけるラスター走査経路602を図21に示す。図21中、コリメータ開口領域を斜線塗りつぶしに示すのは、図20同様である。図21では、コリメータ開口領域のみを一様な線量分布で照射するためのラスター走査経路を示している。本実施例での治療計画装置104におけるラスター走査の走査経路602の計算方法について説明する。コリメータ開口領域のY方向の範囲を求める。荷電粒子ビームのビームサイズを、例えば、1σで2cmと決める。ラスター走査経路を構成する図7のY方向の走査間隔を決めてY方向の走査本数を決める。例えば図21では、Y方向の開口領域が−10cmから+10cmまでの幅20cmとすると、Y方向の走査間隔をビームサイズ2倍程度の4cm、走査線の本数を7本と決める。X方向の走査範囲は、Y方向の走査線ごとにビームサイズによる端部での線量分布の落ち方を考慮してコリメータ開口領域を一様な線量で照射できるように走査領域を決める。
【0047】
決めたビームサイズの情報は全体制御装置102に送られ、ノズル制御装置より散乱体の厚さが適切に制御されることになる。図13に、ラスター走査の場合の走査経路に対応した励磁電流値の配列を示す。図13の配列は、図2に示す2台の走査電磁石41A,41Bの励磁電流値の配列となる。図13に示す配列を、粒子線治療装置の全体制御装置102のメモリ上に格納して、全体制御装置は上から順に走査電磁石電源制御部71に励磁電流値を送り、横方向の走査が行われる。
【0048】
以上のように本実施例では、図21に示すように、治療計画装置104が患部を照射するためのコリメータ開口を計算した後に、このコリメータ開口領域のみを一様の線量で照射するための最適のラスター走査経路602を計算する。図20と図21を比較してみると分かるように、図21では図20においてコリメータ開口が照射野サイズ内側に入る領域の走査経路がなくなっている。これによりラスター走査経路602の走査距離を従来と比較して短縮することが可能となり、治療時間の短縮化が可能となる。また、従来コリメータ開口領域以外に当たっていた荷電粒子ビームを減らすことが可能となり、照射ノズルに輸送されてきた荷電粒子ビームを効率よく利用することが可能となる。
【0049】
[実施例2]
本発明の好適な実施例である第二実施例では、均一走査において横方向にライン走査で照射する場合に関する。従来の均一走査におけるライン走査経路を図22に示す。図22では、コリメータ開口領域を斜線塗りつぶしに示し、点線がコリメータ開口領域をおおう矩形の照射野を表し、実線がライン走査経路601を表す。図22中始点と記す点よりライン走査をX方向に開始し、終点と記す点に至る。これがライン走査の1ラインの照射でこれをY方向に繰り返し行い一面走査が終了する。従来の均一走査では、図22に示すように、治療計画装置104はコリメータ開口領域に対してこれをおおう照射野を求め、この照射野を一様な線量分布で照射するためのライン走査経路601を計算する。あるいは、あらかじめ照射野に対応したラスター走査経路を計算しておき、照射野に対応したデータとして持っておく。例えば図22では患部をおおう矩形領域の点線で示す照射野サイズを25cm×25cmとし、ビームサイズを1σで2cm程度と決め、Y方向の走査間隔をビームサイズの2倍程度の4cmとし、Y方向の走査本数を9本とする。X方向の走査範囲は、X方向の照射野サイズ25cmを連続ビームで照射して一様な線量分布となり端部での線量分布の落ち方を考慮して、−18cmから+18cmまで走査すると決める。
【0050】
本発明による治療計画装置104におけるライン走査経路601を図23に示す。図23中、コリメータ開口領域を斜線塗りつぶしに示すのは、図22同様である。図23では、コリメータ開口領域のみを一様な線量分布で照射するためのライン走査経路601を示している。本実施例での治療計画装置104におけるライン走査の走査経路601の計算方法について説明する。コリメータ開口領域のY方向の範囲を求める。荷電粒子ビームのビームサイズを、例えば、1σで2cmと決める。ラスター走査経路を構成するY方向の走査間隔を決めてY方向の走査本数を決める。例えば図23では、Y方向の開口領域が−10cmから+10cmまでの幅20cmとすると、Y方向の走査間隔をビームサイズ2倍程度の4cm、走査線の本数を7本と決める。X方向の走査範囲は、Y方向の走査線ごとにビームサイズによる端部での線量分布の落ち方を考慮してコリメータ開口領域のみを一様な線量で照射できるように走査領域を決める。
【0051】
決めたビームサイズの情報は全体制御装置102に送られ、ノズル制御装置より散乱体の厚さが適切に制御されることになる。図19に、ライン走査の場合の走査経路に対応した励磁電流値とビーム制御信号の配列を示す。図19の配列は、図2に示す2台の走査電磁石41A,41Bの励磁電流値の配列となる。図19に示す配列を、粒子線治療装置の全体制御装置102のメモリ上に格納して、全体制御装置は上から順に走査電磁石電源制御部71に励磁電流値を送り、また、ビーム制御信号に従いビームオンオフを行い、横方向のライン走査が行われる。
【0052】
以上のように本実施例では、図23に示すように、治療計画装置104が患部を照射するためのコリメータ開口を計算した後に、このコリメータ開口領域のみを一様の線量で照射するための最適のライン走査経路601を計算する。図22と図23を比較してみると、図23では図22においてコリメータ開口が照射野サイズ内側に入る領域の走査経路がなくなっている。これによりライン走査経路601の走査距離を従来と比較して短縮することが可能となり、治療時間の短縮化が可能となる。また、従来コリメータ開口領域の外側に当たっていた荷電粒子ビームを減らすことが可能となり、照射ノズルに輸送されてきた荷電粒子ビームを効率よく利用することが可能となる。
【0053】
[実施例3]
本発明の好適な実施例である第一実施例では、積層原体照射において、層分割した患部各層を横方向にラスター走査で照射する場合に関する。従来の積層原体照射では、図7に示すラスター走査の走査経路602ですべての層を照射していた。図12(a)は本実施例における最も深い層1のラスター走査の走査経路602を示し、図12(b)は浅い側に位置する層6のラスター走査の走査経路602を示す。図12では、層6のラスター走査経路は、マルチリーフコリメータ開口領域が小さくなっているため、層1のラスター走査経路と比較して短縮化している。図12の走査経路は、治療計画装置104が、層分割された患部各層のマルチリーフコリメータ開口を計算した後に、最小の走査経路を計算する。
【0054】
治療計画装置104におけるラスター走査の走査経路602の計算方法について説明する。マルチリーフコリメータの開口領域のX方向とY方向の範囲を求める。荷電粒子ビームのビームサイズを決める。例えば、ビームサイズを1σで2cmと決める。ラスター走査経路を構成する図7のY方向の走査間隔を決めてY方向の走査本数を決める。例えばY方向の開口領域が−5cmから+5cmまでの幅10cmとすると、走査間隔をビームサイズ2倍以下の3.5cm、走査線の本数を5本と決める。X方向の走査範囲は、X方向の開口領域にビームサイズによる線量分布の落ち方を考慮して走査領域を決める。各層でマルチリーフコリメータの開口領域は異なるため、このようにラスター走査経路を層毎に計算して決める。
【0055】
決めたビームサイズの情報は全体制御装置102に送られ、ノズル制御装置より散乱体の厚さが適切に制御されることになる。図13に、ラスター走査の場合の走査経路に対応した励磁電流値の配列を示す。図13の配列は、図2に示す2台の走査電磁石41A,41Bの励磁電流値の配列となる。図13に示す配列を、粒子線治療装置の全体制御装置102のメモリ上に格納して、全体制御装置は上から順に走査電磁石電源制御部71に励磁電流値を送り、横方向の走査が行われる。
【0056】
以上のように本実施例では、積層原体照射において、治療計画装置104が層分割した患部各層のマルチリーフコリメータ開口を計算した後で、各層のマルチリーフコリメータ開口領域のみを一様な線量分布で照射するための最低限のラスター走査経路を計算する。これにより、各層のラスター走査経路の走査長が従来の積層原体照射と比較して短縮するため、治療時間の短縮化が可能であり、また、従来よりマルチリーフコリメータ閉領域に当たっていた荷電粒子ビームを減らすことが可能となり、照射ノズルに輸送されてきた荷電粒子ビームを効率よく利用することが可能となる。
【0057】
[実施例4]
本発明の他の実施例である第2実施例について、図面を用いて説明する。実施例1では治療計画装置104が各層の走査経路を計算したが、本実施例では、積層原体照射で層分割した患部各層をラスター走査で照射していく場合、あらかじめ照射野サイズに対応したラスター走査経路を用意しておき、このなかから各層を照射するのに適した走査経路を選択する場合に関する。
【0058】
治療計画装置104は、層分割された患部各層のマルチリーフコリメータ開口を計算する。治療計画装置104は、この開口領域を覆う最小の照射野サイズを計算する。照射野サイズとは、例えば10cm×10cmの場合、マージンを含めたマルチリーフコリメータ開口領域が10cm×10cmの内部に含まれることを意味する。このように積層原体照射における層分割した患部各層の照射野サイズを治療計画装置104が計算する。
【0059】
一方、横方向に一様に照射することが可能な、照射野サイズに対応した複数のラスター走査経路を、あらかじめ計算して求めておく。図14に照射野サイズに対応した走査経路を示す。図14(a),(b),(c)はそれぞれ、照射野サイズ25cm×25cm,照射野サイズ15cm×15cm,照射野サイズ10cm×10cmに対応したラスター走査の走査経路を示す。照射野サイズ25cm×25cmに対応した図19(a)に示すラスター走査の走査経路602は、矩形領域25cm×25cmの領域を横方向に一様に照射可能である。各照射野サイズに対応したラスター走査経路の決め方は、実施例1に記述したものと同様で、ビームサイズ,Y方向の走査線間隔,走査本数を決めた後、X方向の走査領域を照射野領域を一様に照射できるように決定する。図14では3つの照射野サイズに対応した、3種類の走査経路を示すが、実際はもっと細かく照射野サイズを分けて、各照射野サイズに対応した走査経路をあらかじめ用意しておく。そして、これら複数のラスター走査経路に対応した図13に示す走査電磁石励磁電流値の配列を、粒子線治療装置の全体制御装置102のメモリ上に照射野サイズと組みにして格納しておく。
【0060】
治療計画装置104は各層の照射野サイズを全体制御装置102に送る。全体制御装置102は治療計画装置から送られてきた各層の照射野サイズ情報をもとに、メモリ上に登録された複数のラスター走査経路のなかから照射野サイズに対応するラスター走査経路を選択し、その走査経路の走査電磁石励磁電流値の配列を、走査電磁石電源制御部71に送る。
【0061】
これにより、各層のマルチリーフコリメータ開口領域を覆う最小の走査経路で、各層の横方向照射を行うことが可能となる。そのため、実施例1と同様に、各層の走査経路が従来と比較して短縮するため、治療時間の短縮化が可能であり、また、照射ノズルに輸送されてきた荷電粒子ビームを従来より効率よく利用することが可能となる。
【0062】
本実施例では、照射野サイズとして正方形照射野を想定したが、これは円でも構わない。照射野サイズを直径10cm,15cm,20cmとしてこれに対応したラスター走査の走査経路を用意しておけば良い。
【0063】
[実施例5]
本発明の他の実施例である第3実施例について、図面を用いて説明する。本実施例では、積層原体照射において、層分割した患部各層を横方向にジグザグ走査で照射する場合について説明する。
【0064】
従来の積層原体照射では、図8に示すジグザグ走査の走査経路603ですべての層を照射していた。図15(a)は本実施例における最も深い層1のジグザグ走査の走査経路603を示し、図15(b)は浅い側に位置する層6のジグザグ走査の走査経路603を示す。図15では、層6のジグザグ走査経路は、マルチリーフコリメータ開口領域が小さくなっているため、層1のジグザグ走査経路と比較して短縮化している。図15の走査経路は、実施例1と同様、治療計画装置104が、層分割された患部各層のマルチリーフコリメータ開口を計算した後に、最小のジグザグ走査経路を計算する。
【0065】
治療計画装置104におけるジグザグ走査の走査経路603の計算方法を説明する。各層のマルチリーフコリメータのX方向,Y方向それぞれの開口範囲を求める。ビームサイズを例えば1σで2cmと決め、ジグザグ走査を構成する斜めに走る走査線間隔と走査線本数をY方向の開口範囲より求める。X方向の走査領域は、連続的に荷電粒子ビームを照射することにより端部での線量分布の落ち方を考慮して決める。これを各層のマルチリーフコリメータ開口領域に対して計算する。
【0066】
本実施例の走査電磁石励磁電流値の配列は、図13に示すのと同じである。ジグザグ走査の場合も、ラスター走査と同様、ビームをオンしたまま一筆書きで走査を行う。図13に示す走査電磁石の励磁電流値配列を、全体制御装置102のメモリ上に格納して、照射が行われるのは実施例1のラスター走査の場合と同様である。
【0067】
また、ジグザグ走査の場合も、実施例2に示すように照射野サイズに対応した複数のジグザグ走査経路をあらかじめ用意しておく方法も可能である。治療計画装置104は、層分割した各層の照射野サイズを計算して全体制御装置に送るので、その情報をもとに対応するジグザグ走査経路を選択する。図14に示す照射野サイズに対応した複数のジグザグ走査経路をあらかじめ作っておけば良い。
【0068】
[実施例6]
本発明の他の実施例である第4実施例について、図面を用いて説明する。本実施例では、積層原体照射において、層分割した患部各層を横方向に単円走査で照射する場合について説明する。
【0069】
従来の積層原体照射では、図9に示す単円走査の走査経路604ですべての層を照射していた。図16(a)は本実施例における最も深い層1の単円走査の走査経路604を示し、図16(b)は浅い側に位置する層6の単円走査の走査経路604を示す。図16では、層6の単円走査経路は、マルチリーフコリメータ開口領域が小さくなっているため、層1の円形走査経路と比較して、回転半径が小さくなっている。図16の走査経路は、実施例1と同様、治療計画装置104が、層分割された患部各層のマルチリーフコリメータ開口に応じて、最小の回転半径を計算する。
【0070】
治療計画装置104における単円走査の走査経路604の計算方法を説明する。各層のマルチリーフコリメータ開口より開口範囲を覆う円の半径を求める。この円の約1.4倍程度を単円走査の回転半径とする。ビームサイズを単円走査の回転半径の0.6倍から0.7倍程度にすることで、コリメータ開口領域を一様に照射することが可能となる。照射する層が浅くなるにつれて、回転半径を小さくした場合、線量分布の一様度を保つために、散乱体の挿入量を変化させてビームサイズを回転半径に対応して小さくする。
【0071】
円形走査による本実施例の走査電磁石励磁電流値の配列は、図13に示すのと同じである。図13の配列を、全体制御装置102のメモリ上に格納して、照射が行われるのは実施例1のラスター走査の場合と同様である。
【0072】
また、単円走査の場合も、実施例2に示すように照射野サイズに対応した複数の単円走査経路をあらかじめ用意しておく方法も可能である。治療計画装置104は、層分割した患部各層の照射野サイズを計算して全体制御装置に送るので、その情報をもとに対応する単円走査経路を選択する。図14に示す照射野サイズに対応した複数の単円走査経路をあらかじめ作っておく。
【0073】
[実施例7]
本発明の他の実施例である第5実施例について、図面を用いて説明する。本実施例では、積層原体照射において、層分割した患部各層を横方向にらせん走査で照射する場合について説明する。
【0074】
従来の積層原体照射では、図10に示すらせん走査の走査経路605ですべての層を照射していた。図17(a)は本実施例における最も深い層1のらせん走査の走査経路605を示し、図17(b)は浅い側に位置する層6のらせん走査の走査経路605を示す。
図17では、層6のらせん走査経路は、マルチリーフコリメータ開口領域が小さくなっているため、層1のらせん走査経路と比較して、最大半径が小さくなっている。図18の走査経路は、実施例1と同様、治療計画装置104が、層分割された患部各層のマルチリーフコリメータ開口に応じて、らせん走査の最大半径を計算する。
【0075】
治療計画装置104におけるらせん走査の走査経路605の計算方法を説明する。各層のマルチリーフコリメータ開口より開口範囲を覆う円の半径を求める。ビームサイズを例えば1σで2cmと決め、この円の半径にビームサイズ2倍程度を加えた数値をらせん走査経路の最大半径とすれば良い。これにより開口領域を一様な線量分布で照射することが可能となる。
【0076】
らせん走査による本実施例の走査電磁石励磁電流値の配列は、図15に示すのと同じである。図15の配列を、全体制御装置102のメモリ上に格納して、照射が行われるのは実施例2のラスター走査の場合と同様である。
【0077】
らせん走査の場合も、実施例2に示すように照射野サイズに対応した複数のらせん走査経路をあらかじめ用意しておく方法も可能である。治療計画装置104は、層分割した患部各層の照射野サイズを計算して全体制御装置に送るので、その情報をもとに対応するらせん走査経路を選択する。図14に示す照射野サイズに対応した複数のらせん走査経路をあらかじめ作っておく。
【0078】
[実施例8]
本発明の他の実施例である第6実施例について、図面を用いて説明する。本実施例では、積層原体照射において、層分割した患部各層を横方向にライン走査で照射する場合について説明する。
【0079】
従来の積層原体照射では、図11に示すライン走査の走査経路601ですべての層を照射していた。図18(a)は本実施例における最も深い層1のライン走査の走査経路601を示し、図18(b)は浅い側に位置する層6のライン走査の走査経路601を示す。
本発明では、層分割した患部各層をビーム進行方向から見た時、浅い層では横方向の患部形状は小さくなっていくことに着目する。そのため、マルチリーフコリメータ開口領域も、深い層と比較して層が浅くなっていくと小さくなる。そのため、図18に示すように、一番深い層1を照射する時の走査経路と比較して、浅い層6を照射する時の走査経路は小さくなったマルチリーフコリメータ開口領域のみを一様に照射できるように、走査経路を短縮化することが可能となる。各層のマルチリーフコリメータ開口は治療計画装置が計算するので、各層のマルチリーフコリメータ開口領域に応じて開口部分の線量分布を一様に照射できる最小の走査経路を治療計画装置が計算する。
【0080】
治療計画装置104におけるライン走査の走査経路601の計算方法を説明する。マルチリーフコリメータの開口領域のX方向とY方向の範囲を求める。荷電粒子ビームのビームサイズを決める。例えば、ビームサイズを1σで2cmと決める。ライン走査経路を構成する図11のY方向の走査間隔を決めてY方向の走査本数を決める。例えばY方向の開口領域が−5cmから+5cmまでの幅10cmとすると、走査間隔をビームサイズ2倍以下の3.5cm、走査線の本数を5本と決める。X方向の走査範囲は、X方向の開口領域にビームサイズによる線量分布の落ち方を考慮して走査領域を決める。各層でマルチリーフコリメータの開口領域は異なるため、このようにライン走査経路を層毎に計算して決める。
【0081】
治療計画装置104が各層の最適の走査経路を計算すると、この結果を粒子線治療装置の全体制御装置102に送信する。全体制御装置102では、走査経路の座標値を水平,垂直走査電磁石の励磁電流値に変換する。さらにライン走査は走査ライン毎にビームオン,ビームオフのビーム制御を行うため、走査経路に対応した励磁電流値の配列にビーム制御情報を追加する。このように計算された走査電磁石の励磁電流値とビーム制御情報の配列を図19に示す。図19の情報をテーブルとして、全体制御装置102のメモリ上に格納する。図19に示す配列を上から順に、励磁電流値の情報を走査電磁石電源制御部71に送り、ビーム制御信号を加速器,ビーム輸送系制御装置101に送る。
【0082】
以上により、横方向の荷電粒子ビームの照射にライン走査を行う積層原体照射において、層分割した患部各層のマルチリーフコリメータ開口領域のみを一様に照射する最小の走査経路で照射することが可能となる。走査経路が、従来の積層原体照射と比較して短縮した結果、治療時間を従来よりも短縮することが可能となる。また、各層の照射において最低限の走査経路で照射を行うことから、従来の積層原体照射で発生していたマルチリーフコリメータ遮蔽部分に当たっていた荷電粒子ビーム量を減らすことになり、照射ノズルに輸送されてきた荷電粒子ビームを従来より効率よく利用することが可能となる。
【0083】
ライン走査の場合も、実施例2に示すように照射野サイズに対応した複数のライン走査経路をあらかじめ用意しておく方法も可能である。治療計画装置104は、層分割した患部各層の照射野サイズを計算して全体制御装置に送るので、その情報をもとに対応するライン走査経路を選択する。図14に示す照射野サイズに対応した複数のライン走査経路をあらかじめ作っておけば良い。
【符号の説明】
【0084】
5 患者
21 入射器
22 加速器
31 ビーム輸送系偏向電磁石
41 走査電磁石
42 散乱体
43 リッジフィルタ
44 平坦度モニタ
45 線量モニタ
46 マルチリーフコリメータ
47 ボーラス
48 レンジシフタ
51 患部
61 走査電磁石電源
63 リッジフィルタ駆動部
64 平坦度モニタ信号取得部
65 線量モニタ信号取得部
66 マルチリーフコリメータ駆動部
71 走査電磁石電源制御部
73 リッジフィルタ制御部
74 線量平坦度演算部
75 ビーム照射量管理部
76 マルチリーフコリメータ制御装置
100 粒子線治療制御装置
101 加速器,ビーム輸送系制御装置
102 全体制御装置
103 照射ノズル制御装置
104 治療計画装置
200 粒子線加速器
300 ビーム輸送系
400 照射ノズル
500 ベッド装置
601 ライン走査の走査経路
602 ラスター走査の走査経路
603 ジグザグ走査の走査経路
604 単円走査の走査経路
605 らせん走査の走査経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石により荷電粒子ビームを走査して横方向に一様な線量分布を形成する均一走査を計画する治療計画装置において、コリメータ開口部を考慮して最適の横方向の走査経路を計算することを特徴とする治療計画装置。
【請求項2】
前記横方向の走査経路がラスター走査経路であることを特徴とする請求項1に記載の治療計画装置。
【請求項3】
前記横方向の走査経路がライン走査経路であることを特徴とする請求項1に記載の治療計画装置。
【請求項4】
患部を層に分割し、線量分布を患部形状に合わせるためのボーラスを使用し、層分割した患部各層を、マルチリーフコリメータにより横方向の照射野形状を各層毎に変化させながら照射していく積層原体照射を計画する治療計画装置において、
各層のマルチリーフコリメータ開口を計算し、その計算された開口領域に対して適した最小の荷電粒子ビームの走査経路を計算し、各層毎に荷電粒子ビーム走査経路を変化させることを特徴とする治療計画装置。
【請求項5】
患部を層に分割し、線量分布を患部形状に合わせるためのボーラスを使用し、層分割した患部各層を、マルチリーフコリメータにより横方向の照射野形状を各層毎に変化させながら照射していく積層原体照射を行う粒子線治療装置において、
前記治療計画装置は各層のマルチリーフコリメータ開口を計算し、その計算された開口領域を含む照射野サイズを計算し、粒子線治療装置の制御装置はその照射野サイズに対応した複数の走査経路をあらかじめ持っており、前記計算された照射野サイズに対応した走査経路に基づき各層毎に荷電粒子ビーム走査経路を変化させることを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項6】
前記各層を照射していく横方向の照射方法がラスター走査であることを特徴とする請求項3に記載の治療計画装置。
【請求項7】
前記各層を照射していく横方向の照射方法がジグザグ走査であることを特徴とする請求項3に記載の治療計画装置。
【請求項8】
前記各層を照射していく横方向の照射方法が円形走査であることを特徴とする請求項3に記載の治療計画装置。
【請求項9】
前記各層を照射していく横方向の照射方法がらせん走査であることを特徴とする請求項3に記載の治療計画装置。
【請求項10】
前記各層を照射していく横方向の照射方法がライン走査であることを特徴とする請求項3に記載の治療計画装置。
【請求項11】
前記各層を照射していく横方向の照射方法がラスター走査であることを特徴とする請求項4に記載の粒子線治療装置。
【請求項12】
前記各層を照射していく横方向の照射方法がジグザグ走査であることを特徴とする請求項4に記載の粒子線治療装置。
【請求項13】
前記各層を照射していく横方向の照射方法が円形走査であることを特徴とする請求項4に記載の粒子線治療装置。
【請求項14】
前記各層を照射していく横方向の照射方法がらせん走査であることを特徴とする請求項4に記載の粒子線治療装置。
【請求項15】
各層を照射していく横方向の照射方法がライン走査であることを特徴とする請求項4に記載の粒子線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−223259(P2012−223259A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91660(P2011−91660)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】