説明

粒子線照射装置、粒子線照射方法、及び粒子線照射プログラム

【課題】スポット切替の安定性・確実性を有するとともに、スポットの切替指示の出力遅延を短縮してスポット切替の高速化を実現する粒子線照射技術を提供する。
【解決手段】粒子線照射装置10において、自然数mで表される被検体内の複数の第mスポットの各々に対応するパラメータを蓄積する蓄積部21と、各々の前記パラメータを目標として偏向磁場付与手段12に出力する電流を切り替えて前記複数の第mスポットに対し荷電粒子線を順番に入射させる励磁部30と、第m−1スポットに入射した荷電粒子線の線量が規定値に達したところで第1信号s1を出力する線量積算部14と、前記第1信号s1の出力に同期して蓄積部21から第m+1スポットに対応する前記パラメータを取得する取得部22と、先に取得部22で取得されている第mスポットに対応する前記パラメータを第1信号s1に同期して励磁部30に出力する切替指示部23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線をがん等の患部に照射して治療を行う粒子線照射技術に関する。
【背景技術】
【0002】
がん等の悪性腫瘍に対し、高い治療効果、少ない副作用、及び身体への負担軽減等の優れた特徴により、炭素や陽子の荷電粒子線を用いた粒子線照射治療法が注目されている。この治療法によれば、加速器から出射された荷電粒子線でがん細胞を狙い撃ちし、正常細胞への影響を最小限にとどめ、がん細胞を死滅させることができる。
この治療法において、従来から適用される拡大ビーム法と呼ばれる粒子線照射方法は、荷電粒子線径を患部サイズ以上に拡大し、患部形状に合致するように照射領域をコリメータで制限している。
しかし、この拡大ビーム法は、3次元的な患部形状に照射領域を厳密に合致させることが困難で、患部周りの正常細胞への影響を小さくするのに限界がある。
【0003】
そこで、3次元スキャニング照射法と呼ばれる、患部領域を3次元格子点に切り分けたスポットに対し、高精度で荷電粒子線を入射させる技術が開発された。この3次元照射方法によれは、照射領域を患部領域に高精度に合致させることが可能になり、正常細胞への被曝を抑制することができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−237687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元スキャニング照射法においては、スポットの切替を高速化することが望まれる。スポットの切替速度を向上させるには、偏向磁場付与手段を励磁させる電流の速度を向上させる方法が考えられる。しかし、この励磁電流の速度を上げすぎると、スポットの目標到達点に対するオーバーシュートが大きくなりスポット切替の正確性が低下するために、その速度向上には限界がある。
【0006】
一方で、一つのスポットに入射する荷電粒子線の線量が規定値に達した後、次のスポットに荷電粒子線を照準させる切替指示の出力が遅延することも、スポット切替の高速化を妨げる要因として挙げられる。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、スポット切替の安定性・確実性を有するとともに、スポットの切替指示の出力遅延を短縮してスポット切替の高速化を実現する粒子線照射技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
粒子線照射装置において、自然数mで表される被検体内の複数の第mスポットの各々に対応するパラメータを蓄積する蓄積部と、各々の前記パラメータを目標として偏向磁場付与手段に出力する電流を切り替えて前記複数の第mスポットに対し荷電粒子線を順番に入射させる励磁部と、第m−1スポットに入射した荷電粒子線の線量が規定値に達したところで第1信号を出力する線量積算部と、前記第1信号の出力に同期して前記蓄積部から第m+1スポットに対応する前記パラメータを取得する取得部と、先に前記取得部で取得されている第mスポットに対応する前記パラメータを前記第1信号に同期して前記励磁部に出力する切替指示部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スポット切替の安定性・確実性を有するとともに、スポットの切替指示の出力遅延を短縮してスポット切替の高速化を実現する粒子線照射技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る荷電粒子線照射装置の実施形態を示す構成図。
【図2】第mスポット(m:自然数)の各々に対応するパラメータを示すテーブル。
【図3】本発明に係る荷電粒子線照射装置の構成要素の動作を示すタイミングチャート。
【図4】本発明に係る荷電粒子線照射装置の構成要素の動作を示すタイミングチャート。
【図5】本発明に係る荷電粒子線照射装置の構成要素の動作を示すタイミングチャート。
【図6】本発明に係る荷電粒子線照射装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように荷電粒子線照射装置10(以下、単に装置10という)は、Z軸方向に荷電粒子を出射する荷電粒子銃11と、この荷電粒子をX方向に偏向させる第1偏向磁場付与手段12x(12)と、この荷電粒子をY方向に偏向させる第2偏向磁場付与手段12y(12)と、この荷電粒子の線量を検出する線量検出部13と、線量積算部14と、荷電粒子銃11から出射される荷電粒子のエネルギーを制御する銃制御部15と、第1偏向磁場付与手段12xに励磁電流を出力する第1励磁部30x(30)と、第2偏向磁場付与手段12yに励磁電流を出力する第2励磁部30y(30)と、これら励磁部30が出力する励磁電流の強度・タイミングを制御する制御部20と、から構成される。
なお、第2励磁部30yの構成は、第1励磁部30xと同じであるために、図面において詳細な記載が省略されている。
【0012】
このように構成される装置10は、被検体(図示略)の患部領域40の各スライス面41,42,43に設定されたスポット(1〜n)に対して、荷電粒子線を順番に入射させるものである。
ここで、全照射スポット数をn個とし、1≦m≦nで表される自然数nは、任意のスポットを示す変数とする。そして、照射開始時のスポットを第1スポットとして、荷電粒子線が入射する順番に従って、第mスポット(m:自然数)のように連番を割り振る。
【0013】
次に、荷電粒子線が侵入する患部領域40の深さと荷電粒子線のエネルギーとの関係を説明する。
荷電粒子線は、被検体内を通過する際に運動エネルギーを失って速度を低下させるとともに、速度の二乗にほぼ反比例する抵抗を受けてある一定の速度まで低下すると急激に停止する。そして、荷電粒子線の停止点近傍では、ブラッグピークと呼ばれる大線量が発生する。
【0014】
各々の第mスポットは、荷電粒子線のブラッグピークの位置になるように設定される。このブラッグピークの位置は、荷電粒子線のエネルギーに依存する。
このために、患部領域40を荷電粒子線の出射方向(Z軸)に対して直交するX−Y面に複数のスライス面41,42,43が設定される。そして、銃制御部15により、荷電粒子銃11から出射されるエネルギーを変えることによって、荷電粒子線が入射するスライス面41,42,43の位置を変える。なお、このスライス面41,42,43の位置を変えるその他の方法として、被検体の前にプラスチック板等を挿入して荷電粒子線のエネルギーを落とす方法等もある。
【0015】
荷電粒子銃11は、図示略のイオン源、荷電粒子線発生装置(ライナック)及び加速器(シンクロトロン)から構成されている。
このイオン源で発生したイオン(例えば、陽子イオン(または炭素イオン))はライナックで加速される、さらにシンクロトロンでエネルギーを与えられて加速される。
そして、荷電粒子線は、エネルギーが例えば100〜200MeVまでに高められた後、被検体に出射される。
【0016】
なお、詳細な説明を省略するが、銃制御部15は、荷電粒子銃11から出射される荷電粒子線のエネルギーを可変するための手段や、被検体に対する荷電粒子線の出射を停止させる手段を有している。
荷電粒子銃11は、図3の最上段に示されるように、スポット1に安定した荷電粒子線が入射する前からスポットnに荷電粒子線が入射し終わるまで、連続的に荷電粒子線を出射している。
さらに、図示では、荷電粒子線のエネルギー出力は、全期間に亘って一定に記載されているが、スポット毎に異なる最適値に設定してもよい。
【0017】
偏向磁場付与手段12(図1)は、対向する一対のコイルに励磁部30から電流を印加することによりその間に磁場を形成する。そして、この磁場を通過する荷電粒子線は、ローレンツ力によりX軸方向及びY軸方向に曲げられて、スライス面41上の任意の位置のスポットに入射する。
そして、この励磁部30に印加する電流の強度を変化させて磁場強度を変化させることにより、荷電粒子線を入射させるスポットの照準を切り替える。
【0018】
ここで、図3の最下段に示される曲線は、荷電粒子線を各々のスポット(m−2,m−1,m,m+1,m+2)に切り替えて入射させる場合の、偏向磁場付与手段12に供給される電流の応答を示している。
スポットを素早く切り替えることにより、荷電粒子線の強度を上げて短時間で患部領域40への照射を完了することができ、患者への負担を減らすことができ、治療人数を増やすことが可能となる。
【0019】
さらに、荷電粒子線の照射中は、呼吸等により患部の位置が常に変化しているが、スポットの切り替えを素早くすることにより、患部領域40と現実の照射位置のズレを小さくすることができる。
このような、スポットの素早い切り替えを実現するには、電流の応答が破線のプロファイルを示すことが望ましいが、現実には図示されるような応答遅れや過渡応答を示すものである。
【0020】
線量積算部14(図1)は、図3の二段目に示すように、線量検出部13で検出された荷電粒子線の線量を積算し、照準されたスポットに入射した荷電粒子線の線量が規定値qに達したところで第1信号s1を制御部20に出力する。
そして、この第1信号s1の出力と同時に、積算をリセットして再び荷電粒子線の線量が規定値qに到達するまで積算を繰り返す。
この荷電粒子線の線量の規定値qは、図2の二段目に示されるように、各スポット毎に規定され、パラメータの蓄積部21(図1)に収められている。
【0021】
このように、線量積算部14が動作することにより、荷電粒子線の強度等が変動しても、照準された各々のスポットに入射される線量を所望する値にすることができる。また、スポット毎に規定値qを設定することができるので、患部領域40に照射する荷電粒子線に強度分布を与えることができる。
【0022】
制御部20は、パラメータの蓄積部21と、パラメータの取得部22と、パラメータの切替指示部23と、切替の可否の判定部24と、電流値表示部25とから構成されている。
また第1励磁部30x及び第2励磁部30y(以下、単に励磁部30という)は、偏向磁場付与手段12に電流を供給する電流発生器33と、この供給される電流値を検出する電流検出器35と、供給される電流値と目標値とを対比する比較部36と、供給される電流値を表示用の信号に置き換えるAD変換部37とから構成されている。
【0023】
このように制御部20が構成されることにより、線量積算部14から出力された第1信号s1をトリガにして、荷電粒子線を入射させるスポットの照準を切り替える指示が、励磁部30に与えられる。
そして、励磁部30は、偏向磁場付与手段12に供給する電流を、照準のスポットに対応するパラメータの電流目標値(図2)に切り替える。
【0024】
このような動作を繰り返すことにより、図1に示される患部領域40内の複数のスポットに対し荷電粒子線を順番に入射させる。そして、あるスライス41上の全てのスポットに対する荷電粒子線の照射を完了したら、銃制御部15により荷電粒子線のエネルギーを変更し次のスライス42にブラッグピークが位置するようにする。このように、患部領域40を深さ方向に切り分けたすべてのスライス41,42,43に対してこのような照射を繰り返し、患部全体の照射が完了する。
【0025】
蓄積部21には、図2に示されるように、自然数mで表される被検体内の複数の第mスポットの各々に対応するパラメータが蓄積されている。このパラメータは、後述するように、縦一列分の電流目標値及び制御定数が一つのまとまった送信信号pとなって、最終的に励磁部30に送られ、線量の規定値は線量積算部14に送られる。また、これらパラメータは、患者毎の治療計画で作成された荷電粒子線の照射位置、照射量、照射エネルギー、照射装置の特性等のデータに基づいて定められる。
【0026】
本実施形態においてパラメータは、励磁部30が偏向磁場付与手段12に供給する電流の電流目標値(図2の三、四段目)の他に、この励磁部30の制御定数(図2の五、六段目)又は荷電粒子線の線量の規定値q(図2の二段目)が含まれる。
ここで、励磁部30の制御定数とは、図3の最下段に示される電流プロファイルにおける立ち上がりの応答遅れや、目標値に到達した後の過渡応答を解消させることを目的にしている。
【0027】
取得部22(図1)は、図3を参照して、第m−1スポットに入射する荷電粒子線の線量が規定値qに達し、照準を第mスポットに切り替えることを指示する第1信号s1の出力に同期して、蓄積部21から第m+1スポットに対応するパラメータを取得する。
そして、取得部22は、蓄積部21から取得したパラメータを、その後、切替指示部23が励磁部30に送信するための送信信号p*に演算し、切替指示部23に送信する。
【0028】
切替指示部23は、先に取得部22で取得されている第mスポットに対応するパラメータの送信信号pを、線量積算部14から受信した第1信号s1に同期して励磁部30に出力する。
このように、パラメータの取得部22及び切替指示部23が連係することで、スポット照準の切替指示の遅れが解消される。つまり、この取得部22を用い無い場合、取得部22で第1信号s1を受信してから演算を実行して送信信号p*を送信するまでの期間だけ、励磁部30における実際の電流供給が遅延することになる。
本実施形態によれば、切替指示部23においてパラメータを送信信号pに演算する必要がないために、線量積算部14から第1信号s1を受信すると、即座にパラメータの送信信号pを励磁部30に送信することができ、スポットの照準の高速切替に貢献する。
【0029】
電流発生器33は、切替指示部23からパラメータの送信信号pを受信して、次のスポットに荷電粒子線を移動させるための電流を偏向磁場付与手段12に供給する。
この偏向磁場付与手段12に供給される電流の切り替えは、電流発生器33を構成するスイッチング素子(図示略)の動作により行われる。
【0030】
電流検出器35は、電流発生器33から偏向磁場付与手段12に供給される電流の値を検出するもので、具体的に図4の四段目に示されるプロファイルを出力する。
比較部36は、この図4の五段目に示されるように、電流検出器35で検出される電流値が、パラメータの送信信号pに含まれる電流目標値(図2)の前後に到達すると、第2信号s2を出力する。
【0031】
判定部24は、図1に示すように、線量積算部14からの第1信号s1と、比較部36からの第2信号s2を受信して、切替指示部23におけるパラメータの送信信号pの出力の可否を判定するものである。
具体的には、図4に示すように、切替指示部23から第mスポットに対するパラメータの送信信号pが出力された後、比較部36からの第2信号s2よりも先に、次の第m+1スポットに対する第1信号s1が出力された場合がある。
【0032】
このような場合、荷電粒子線は、現実には第mスポットに入射されていないために、この第m+1スポットに対する第1信号s1よりも後に出力される第2信号s2に同期して、第m+1スポットに対する送信信号pを切替指示部23は励磁部30に出力する。
このような動作は、図4の六段目に示すように、判定部24において、第1信号s1又は第2信号s2のいずれかを入力する度に、真/偽を交互に示す二値信号を出力し、真の信号に同期してパラメータの送信信号pを励磁部30に出力するようにする。
または、このような場合(第2信号s2よりも先に第1信号s1が出力される場合)は、図面の記載を省略するが、銃制御部15に対し、荷電粒子線の被検体への入射を停止させてもよい。
これにより、照準したスポットに対し的確に荷電粒子線を入射させることができるとともに、患者の被曝量が増すことが懸念される場合は、治療を中断することができる。
【0033】
さらに、図4の最下段に示されるように、切替指示部23から前回のパラメータの送信信号pが出力された後に、励磁部30における電流切替の安定動作が保障される間隔vよりも短い間隔で次回の送信信号pが出力される場合がある。
このような場合、判定部24は、この次回のパラメータの出力に同期して励磁部30が電流の切り替えを実行しないようにするとともに、銃制御部15に対し、荷電粒子線の被検体への入射を停止させる。
【0034】
これは、電流発生器33から供給される電流の切替頻度が高い状態が続くと、スイッチング素子への負荷が大きくなり発熱、劣化、損傷に至る場合がある。本実施形態によれば、電流発生器33における電流の切替頻度を制限し、さらに荷電粒子線の出射を中止することによりスイッチング素子の性能を越える動作を防止し、電流の高速切替の健全性を維持することができる。
なお、切り替えをする前後の電流目標値が同じである場合や、その他、電流の切り替えがスイッチング素子の負荷を増加させないことが明らかな場合は、必ずしもこの判定を実施する必要はない。また、電流切替の安定動作が保障される間隔vは、スイッチング素子の発熱等の状態に応じて決めたり、適宜変更したりすることができる。
【0035】
AD変換部37は、図5の最下段に示すように、切替指示部23からパラメータの送信信号pが出力されるのに同期して電流値を示すアナログ信号をデジタル信号に変換する。ここで、AD変換部37は、送信信号pの送信時点における電流検出器35のアナログ値をホールドし、これをデジタル変換する。期間uは、このデジタル変換に要する時間であり、変換後の電流値rを電流値表示部25に送信する。
これによれば、電流の高速変換を妨げることなく電流値の読み取りが可能になるとともに、電流の正確な到達値を把握することができる。そして、照準したスポットに対し、荷電粒子線が正確に入射しているか否かを判断することができる。
【0036】
図6に基づいて(適宜図1参照)、装置10の動作を説明する。
まず、被検体の患部領域40を確定し、荷電粒子線を入射させるスポットを設定する(S11)。そして、各々のスポットに対し、荷電粒子線の線量の規定値q、励磁部30の電流目標値等のパラメータ(図2)を設定し蓄積部21に収める(S12)。
【0037】
次に、偏向磁場付与手段12に供給する電流を励磁部30において調整して荷電粒子線の照準を第mスポットに合わせ(S13)、荷電粒子銃11を動作させて荷電粒子線を被検体に入射させる(S14;Yes,S15)。このとき、励磁部30は、短時間のうちにパラメータの電流目標値に収束するように、偏向磁場付与手段12に供給する電流を制御する。
そして、この照準したスポットに入射した荷電粒子線の線量が線量積算部14において規定値qに到達するまで、励磁部30は電流を供給し続ける(S16:No)。
【0038】
そして、荷電粒子線の線量が規定値qに到達したところで、線量積算部14は、第1信号s1を出力する(S17)。このとき、励磁部30から第2信号s2がすでに出力されていれば、励磁部30が供給する電流がすでに目標値に到達していることが明らかなため、次の判断に進む(S18:Yes)。
さらに、第1信号s1の出力される間隔が、電流発生器33の安定動作が保障される間隔vを満たしていれば(S19:Yes)、切替指示部23から次のスポットに対するパラメータの送信信号pが励磁部30に送られる(S20)。
【0039】
なお、第2信号s2が出力されず連続して第1信号s1が出力されたり(S18:No実線)、励磁部30の切替頻度が高く動作が不安定と判定されたりすると(S19:No実線)、荷電粒子銃11からの荷電粒子線の入射を停止させる(S23)。若しくは、時間を待ってから(S18,S19:No破線)、スポットの切替指示を行う(S20)。
【0040】
次に、荷電粒子線の入射した位置が、照準したスポットに一致していたか否かを判断するために、パラメータの送信信号pが切替指示部23から送信されたタイミングにおいて、電流検出器35で検出されているアナログ信号をデジタル信号に変換して表示する(S21)。
そして、荷電粒子線の照準を次のスポットに合わせ(S22:No,S14:No)、全てのスポットの照射が終わるまで繰り返す(S22:Yes)。
【0041】
以上の説明において、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、共通する技術思想の範囲内において、適宜変形して実施することができる。
例えば、荷電粒子線照射装置10は、コンピュータによって各手段を各機能プログラムとして実現することも可能であり、各機能プログラムを結合して粒子線照射プログラムとして機能させることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…荷電粒子線照射装置、11…荷電粒子銃、12(12x,12y)…偏向磁場付与手段、13…線量検出部、14…線量積算部、15…銃制御部、20…制御部、21…蓄積部、22…取得部、23…切替指示部、24…判定部、25…電流値表示部、30x(30)…第1励磁部(励磁部)、30y(30)…第2励磁部(励磁部)、33…電流発生器、35…電流検出器、36…比較部、37…AD変換部、40…患部領域、41,42,43…スライス面、s1…第1信号、s2…第2信号、p…送信信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然数mで表される被検体内の複数の第mスポットの各々に対応するパラメータを蓄積する蓄積部と、
各々の前記パラメータを目標として偏向磁場付与手段に出力する電流を切り替えて前記複数の第mスポットに対し荷電粒子線を順番に入射させる励磁部と、
第m−1スポットに入射した荷電粒子線の線量が規定値に達したところで第1信号を出力する線量積算部と、
前記第1信号の出力に同期して前記蓄積部から第m+1スポットに対応する前記パラメータを取得する取得部と、
先に前記取得部で取得されている第mスポットに対応する前記パラメータを前記第1信号に同期して前記励磁部に出力する切替指示部と、を備えることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子線照射装置において、
前記励磁部は、前記出力する電流が入力した前記パラメータに到達したことを示す第2信号を出力する比較部を有し、
前記切替指示部から前回のパラメータが出力された後、前記第2信号よりも先に前記第1信号が出力された場合は、この第1信号よりも後に出力される第2信号に同期して次回のパラメータを出力させる判定部を備えることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子線照射装置において、
前記判定部は、前記第2信号よりも先に前記第1信号が出力された場合は、前記荷電粒子線の前記被検体への入射を停止させることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粒子線照射装置において、
前記励磁部は、切替指示部から前記パラメータが出力されるのに同期して前記電流の値を示すアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部を備えることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒子線照射装置において、
前記切替指示部から前回のパラメータが出力された後に、前記励磁部における電流切替の安定動作が保障される間隔よりも短い間隔で次回のパラメータが出力される場合、前記励磁部はこの次回のパラメータの出力に同期した前記電流の切り替えを実行しないことを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の粒子線照射装置において、
さらに、荷電粒子線の被検体への入射を停止させることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粒子線照射装置において、
前記パラメータは、前記励磁部が出力する前記電流の目標値の他に、この励磁部の制御定数又は前記荷電粒子線の線量の規定値が含まれることを特徴とする粒子線照射装置。
【請求項8】
自然数mで表される被検体内の複数の第mスポットの各々に対応するパラメータを蓄積するステップと、
各々の前記パラメータを目標として偏向磁場付与手段に出力する電流を切り替えて前記複数の第mスポットに対し荷電粒子線を順番に入射させるステップと、
第m−1スポットに入射した荷電粒子線の線量が規定値に達したところで第1信号を出力するステップと、
前記第1信号の出力に同期して前記蓄積部から第m+1スポットに対応する前記パラメータを取得するステップと、
先に取得されている第mスポットに対応する前記パラメータを前記第1信号に同期して前記励磁部に出力するステップと、を含むことを特徴とする粒子線照射方法。
【請求項9】
コンピュータを、
自然数mで表される被検体内の複数の第mスポットの各々に対応するパラメータを蓄積させる手段、
各々の前記パラメータを目標として偏向磁場付与手段に出力する電流を切り替えて前記複数の第mスポットに対し荷電粒子線を順番に入射させる手段、
第m−1スポットに入射した荷電粒子線の線量が規定値に達したところで第1信号を出力する手段、
前記第1信号の出力に同期して前記蓄積部から第m+1スポットに対応する前記パラメータを取得する手段、
先に取得されている第mスポットに対応する前記パラメータを前記第1信号に同期して前記励磁部に出力する手段、として機能させることを特徴とする粒子線照射プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239841(P2011−239841A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112395(P2010−112395)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】