説明

粒子融着繊維シート及びその製造方法

【課題】 導電性に優れると共に撥水性にも優れ、且つ通気性に優れる粒子融着繊維シートを提供する。
【解決手段】 少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂によって撥水性粒子及び導電性粒子が融着しており、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の粒子径が前記熱可塑性繊維の平均繊維径以下であることを特徴とする粒子融着繊維シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気材料として好適に用いられる導電性を有する粒子融着繊維シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子を含有する繊維シートは電気材料として様々な用途に用いられているが、特に燃料電池の膜−電極接合体の材料として注目されている。このような膜−電極接合体は反応ガスの拡散を向上させるために、また反応によって形成された水を速やかに排出するためにガス拡散層が必要とされており、このガス拡散層は導電性とガス透過性のみならず、反応によって形成された水を速やかに排出するための撥水性を有することが求められている。
【0003】
このようなガス拡散層としては、導電性の粒子と撥水性の樹脂を含有させた多孔質の基材シートであることが望ましく、特許文献1には、多孔質基材シート全体に、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体及び導電剤が充填されているガス拡散層が開示されており、このガス拡散層を備えた膜−電極接合体が燃料電池の部材として用いられることが記載されている。そして、このガス拡散層はフッ素系樹脂と導電剤を含んでいるため、速やかに水を排出することができ、高加湿条件下においても導電性に優れ発電が可能であることが示されている。
【0004】
特許文献1では、これらのフッ素樹脂はディスパーションの形態で、また導電剤はカーボンブラックの形態で、共にミキサーで混合して形成した導電性ペーストとしてガラス不織布に塗布し、その後乾燥、焼結、ホットプレス加工の各工程を経ることでガス拡散層が形成される。このような工程によって、フッ素樹脂が一種の接着剤としてカーボンブラックをガラス不織布に固定しているものと考えられる。しかしながら、導電性ペーストとしてガラス不織布に塗布されるため、ガラス繊維間の隙間を導電性ペーストが埋めてしまい、またフッ素樹脂とカーボンブラックによる層が厚くなってしまう。そのため、このガス拡散層はより通気性が必要とされる用途に対しては用いることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−192350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決して、導電性に優れると共に撥水性にも優れ、且つ通気性に優れる粒子融着繊維シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明では、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂によって撥水性粒子及び導電性粒子が融着しており、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の粒子径が前記熱可塑性繊維の平均繊維径以下であることを特徴とする粒子融着繊維シートをその解決手段とした。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記撥水性粒子がフッ素樹脂粒子であり、前記導電性粒子がカーボン粒子であることを特徴とする請求項1に記載の粒子融着繊維シートである。
【0009】
請求項3に係る発明では、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する撥水性粒子及び導電性粒子を融着する粒子融着繊維シートの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記撥水性粒子を前記熱可塑性繊維シートに接触させ、前記熱可塑性樹脂により前記撥水性粒子を融着させて撥水性粒子融着繊維シートを形成し、次いで、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記導電性粒子を前記撥水性粒子融着繊維シートに接触させて、前記可塑性樹脂により前記導電性粒子を融着させることを特徴とする、粒子融着繊維シートの製造方法である。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記撥水性粒子がフッ素樹脂粒子であり、前記導電性粒子がカーボン粒子であることを特徴とする請求項3に記載の粒子融着繊維シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、導電性に優れると共に撥水性にも優れ、且つ通気性に優れる粒子融着繊維シートを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法で使用する粒子融着繊維シートの製造装置の一例を模式的に示す構成図である。
【図2】本発明の製造方法で使用する粒子融着繊維シートの製造装置の別の例を模式的に示す概略図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る粒子融着繊維シート又は粒子融着繊維シートの製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明による粒子融着繊維シートは、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂によって撥水性粒子及び導電性粒子が融着しており、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の粒子径が前記熱可塑性繊維の平均繊維径以下であることを特徴とする。
【0015】
前記熱可塑性繊維は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる繊維であり、繊維表面が加熱(例えば、50℃以上の加熱、好ましくは80℃以上の加熱)により溶融する繊維であれば、繊維の種類は問わず適宜選択することができる。このような繊維としては、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、静電防止法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009−287138号公報)など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0016】
また、前記熱可塑性繊維の断面形状はアルファベット型、略多角形型、丸型、だ円型、半円型、星型など公知の形態から適宜選択することができる。前記熱可塑性繊維が複合繊維である場合、その態様としては芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型などが可能であり、特に芯鞘型及びサイドバイサイド型であることが好ましい。
【0017】
前記溶融紡糸法又は直接紡糸法によって得られる繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、又はポリアミドなど)からなる合成繊維を挙げることができ、前記合成繊維は、1種類の熱可塑性樹脂からなる合成繊維であっても、異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維であっても適宜選択して使用することができる。このような複合繊維としては、融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維を挙げることができ、例えば、共重合ポリエステル/ポリエステル、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリアミド、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリエステル、又はポリエチレン/ポリエステルなどの樹脂の組み合わせからなる複合繊維を挙げることができる。また、複合繊維が、芯に高融点樹脂を有し、鞘に低融点樹脂を有する芯鞘型複合繊維である場合には、撥水性粒子および導電性粒子(以下、撥水性粒子及び導電性粒子を総称して固体粒子と称することがある。)が熱可塑性繊維の表面に融着される際に繊維の収縮や糸切れが更に生じにくくなるので好ましい。なお、本発明において融点はJIS K 7121−1987に則して示差走査熱量分析計を用いて求める。
【0018】
また、前記熱可塑性繊維は、芯部分が融点を有せずに分解温度を有するような繊維、例えば、レーヨン繊維、アセテート繊維、羊毛繊維、又は炭素繊維などの繊維の表面に、鞘部分として、熱可塑性樹脂が、例えば、コーティングや粉体塗装などにより塗布された繊維も適用可能である。また、前記熱可塑性繊維は、芯部分が無機繊維であり、高融点を有するような繊維、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、又は金属繊維などの繊維の表面に鞘部分として、熱可塑性樹脂が、例えば、コーティングや粉体塗装などにより塗布された繊維も適用可能である。
【0019】
また、前記熱可塑性繊維は表面が1又はそれ以上の熱可塑性樹脂からなる繊維であることが可能であり、当該熱可塑性樹脂が、繊維表面の構成樹脂に対して、50mass%以上、好ましくは60mass%以上、より好ましくは70mass%以上、特に好ましくは90mass%以上であることが可能である。
【0020】
前記熱可塑性繊維の平均繊維径は、固体粒子が融着可能である限り特に限定されず、0.1〜50μmの範囲とすることができ、好ましくは0.5〜30μmの範囲であり、より好ましくは1〜20μmの範囲である。ここで、平均繊維径とは、500本の繊維を測定して各繊維の断面形状から求められる繊維径の平均値を意味し、繊維の断面形状が円である場合には繊維断面の直径を繊維径とし、繊維の断面形状が円以外の場合には繊維の断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とする。
【0021】
前記熱可塑性繊維シートは、繊維シート中に、前記熱可塑性繊維を有する繊維シートである限り、特に限定されるものではなく、この熱可塑性繊維シートは、前記熱可塑性繊維のみを含むこともできるし、あるいは、前記熱可塑性繊維以外の繊維を含むこともできる。前記熱可塑性繊維(すなわち、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる繊維)以外の繊維としては、特に限定されず、表面が熱可塑性樹脂でない繊維、例えば、無機繊維、あるいは、融点を有さず、分解温度を有する繊維などを用いることができる。前記熱可塑性繊維シート中に含まれる前記熱可塑性繊維の割合は、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0022】
前記熱可塑性繊維シートの構造としては、例えば、織物、編物、若しくは不織布などの布帛、又はそれらの組合せなどを挙げることができる。織物又は編物の場合には、例えば、前記熱可塑性繊維を織機又は編機により加工することによって得られる。また、前記熱可塑性繊維シートが不織布の場合には、例えば、従来の不織布の製法である、乾式法、湿式法、直接紡糸法(スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、静電防止法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009−287138号公報)など)などによって製造される不織布を適用することができる。また、これらの製法によって形成される不織布に、接着性繊維又は融点の異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維などを予め混入させてから、加熱処理することにより、繊維間が接合された熱可塑性繊維シートとすることができる。また、前記不織布を機械的絡合処理(例えば、水流絡合又はニードルパンチなど)によって絡合させた熱可塑性繊維シートとすることもできる。また、前記不織布を、平滑なロール同士の間、凹凸のあるロール同士の間、あるいは平滑なロールと凹凸のあるロールとの間に供することで、部分的に加熱結合あるいは厚さ調整された熱可塑性繊維シートとすることもできる。また、種類の異なる前記熱可塑性繊維シートを複数積層して更に一体化してなる熱可塑性繊維シートとすることもできる。
【0023】
また、前記熱可塑性繊維シートの外観も特に限定されるものではなく、例えば、長尺状(例えば、ロールに巻回した繊維シート)、又は非長尺状(すなわち、前記長尺状繊維シートを切断して得ることのできる繊維シート)等を挙げることができる。
【0024】
また、前記熱可塑性繊維シートの面密度、厚さ、空隙率などの諸特性も特に限定されるものではないが、面密度は2〜150g/mであることが好ましく、3〜90g/mであることがより好ましく、5〜60g/mであることが更に好ましい。また厚さは0.01〜0.8mmであることが好ましく、0.02〜0.5mmであることがより好ましく、0.03〜0.3mmであることが更に好ましい。なお、本発明において厚さは、厚さ測定器(ダイヤルシックネスゲージ0.01mmタイプH型式(株)尾崎製作所製)により測定した、5点の厚さの算術平均値を適用する。また空隙率は30〜99%であることが好ましく、50〜95%であることがより好ましく、70〜90%であることが更に好ましい。なお、本発明において空隙率とは、熱可塑性繊維シートの総体積に対する空隙の存在比率を意味しており、〔1−(面密度÷厚さ)÷比重〕×100で求められる値(面密度g/m、厚さμm、比重g/cm)のことをいう。
【0025】
前記撥水性粒子は、撥水性粒子が融着している前記熱可塑性繊維の表面を構成する熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有し、且つ撥水性を付与せしめることができる固体状の粒子であれば特に限定されるものではなく、フッ素樹脂粒子、フッ素樹脂含有粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーン樹脂含有粒子、ゴム粒子および疎水化処理粒子などが望ましい。また特に燃料電池用素材としてはフッ素樹脂粒子、フッ素樹脂含有粒子が好ましい。
【0026】
前記フッ素樹脂粒子、フッ素樹脂含有粒子に用いるフッ素系樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン―フッ化ビニリデン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピオン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン―プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)―テトラフルオロエチレン共重合体、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)―テトラフルオロエチレン系共重合体フッ化ビニル系重合体、フッ化ビニリデン系重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン―テトラフルオロエチレン系共重合体樹脂が挙げられる。これらの中で、特に、四フッ化エチレン樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン―フッ化ビニリデン共重合体、或いはこれらの二種類の粒子を混合したものからなる粒子が好ましい。これらの撥水性粒子は、広い温度範囲、耐薬品性、低摩擦性、耐侯性、耐溶剤性が更に優れているからである。
【0027】
前記PTFEの市販品としては、例えばファインテック(株)製のPTFEパウダー、粒子径D50:5.6μmを挙げることができる。
【0028】
また、フッ素系樹脂には、官能基を含有するフッ素樹脂も含まれる。官能基含有フッ素樹脂は、特に限定されずに、広範囲なものが使用できる。例えば、フルオロオレフィンおよびこれと共重合可能なモノマーであれば可能である。フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレンなどの炭素数2または3のフルオロオレフィンが挙げられる。また、フルオロオレフィンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アリルエーテル、カルボン酸アリルエステル、イソプロペニルエーテル、カルボン酸イソプロペニルエーテル、メタリルエーテル、カルボン酸メタクリルエーテル、α―オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどから選ばれる1種以上のモノマーが挙げられる。上記ビニルエーテルとして、例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)などアルキルビニルエーテルが挙げられる。上記カルボン酸ビニルエステルとしては、分岐状のアルキル基を有するベオバー10(シェル化学製商品名)、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類が例示される。アリルエーテルとして、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテルなどのアルキルアリルビニルエーテルが例示される。カルボン酸アリルエステルとして、プロピオン酸アリル、酢酸アリルなどの脂肪酸アリルエステルが例示される。上記イソプロペニルエーテルとしては、メチルイソプロペニルエーテルなどのアルキルイソプロペニルエーテルが例示される。α―オレフィンとして、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどが例示される。なお、フルオロオレフィン(モノマー)の共重合割合が少なすぎると、撥水性が十分に発揮されないこととなるので、上記フルオロオレフィンと共重合可能なモノマーからなるフッ素樹脂では、フルオロオレフィンに基づく重合単位が共重合体中30〜70モル%の割合、特に、40〜60モル%の割合である共重合体が好ましい。
【0029】
更に、水酸基またはカルボキシル基を含むフッ素樹脂も挙げられる。例えば、クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどの含フッ素オレフィン類と水酸基またはカルボキシル基を含むモノマーを共重合したものが挙げられる。また、これに必要に応じて、他のモノマーを共重合させることも可能である。上記水酸基を含むモノマーとして、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどの水酸基を有するビニルエーテル類、エチレングリコールモノアリルエーテルなどのアリルエーテル類などが例示される。上記カルボキシル基を含むモノマーとして、クロトン酸、ウンデゼン酸などの不飽和酸化合物が例示される。また、カルボキシル基は、水酸基を有するフッ素樹脂に無水コハク酸、無水フタル酸などを高分子反応によりハーフエステル化して、カルボン酸基を導入したものであっても良い。また、他のモノマーとして、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテルなどの鎖状または脂環状のアルキルビニルエーテル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル類などが例示される。水酸基またはカルボキシル基を含むフッ素樹脂は、含フッ素オレフィン類を好ましくは20〜80モル%、さらに30〜70モル%の割合で共重合させた含フッ素オレフィン系共重合体が好ましい。また、フルオロオレフィン/イソブチレン共重合体と無水マレイン酸/イソブチレン共重合体からなるフッ素樹脂も可能である。
【0030】
前記導電性粒子は、導電性粒子が融着している前記熱可塑性繊維の表面を構成する熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有し、且つ導電性を付与せしめることができる固体状の粒子であれば特に限定されるものではなく、金属粒子またはカーボン粒子などを挙げることができるが、特に燃料電池用素材としてはカーボン粒子が好ましい。
【0031】
前記カーボン粒子としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、メソフェーズカーボン、コークス、グラファイト粒子、アモルファスカーボン粒子、カーボンブラック、グラッシーカーボン、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる粒子を挙げることができる。またカーボンブラックとしては、例えばサーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、およびケッチェンブラックからなる粒子を挙げることができる。これらの中でも、特にアセチレンブラックは導電性に優れ、電池用途として優れる。
【0032】
前記カーボンブラックの市販品としては、例えば電気化学工業(株)製の品名:デンカブラック(一次粒子径:30〜40nm、二次粒子径D50:2〜7μm、形状:粒状、材質:アセチレンブラック)を挙げることができる。
【0033】
前記固体粒子の融点又は分解温度は、前記熱可塑性繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する樹脂の融点より高いことが必要であり、もし、固体粒子の融点又は分解温度が、最も低い融点を有する樹脂の融点より低い場合は、加熱した固体粒子の熱により熱可塑性繊維表面が溶けず、固体粒子が熱可塑性繊維表面に融着された形態にはならない。すなわち、熱可塑性繊維表面に固体粒子が融着されないか、あるいは、熱可塑性繊維表面に固体粒子が融着されたとしても、その形態は、固体粒子が繊維表面よりも先に溶けて固体粒子が凝集体となったり、固体粒子と繊維表面とが広い面積で融着してしまう形態となり、融着された固体粒子の有効面積は少ないものとなってしまう。
【0034】
前記固体粒子の粒子径分布における累積高さ50%点の粒子径を粒子径D50とすると、粒子径D50は、前記熱可塑性繊維の平均繊維径以下であることが望ましい。固体粒子の粒子径D50が当該平均繊維径を超えると、固体粒子は熱可塑性繊維の表面より脱落し易くなり、繊維表面に固体粒子が融着した状態を保ち難くなることがある。また、このような固体粒子が融着した繊維を得ようとしても、固体粒子を繊維表面に融着させることが困難になることがある。なお、固体粒子の粒子径分布における累積高さ50%点の粒子径D50の値は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器((株)セイシン企業製 LMS−30)を用いて、乾式法により、一次粒子としての固体粒子または凝集体となった二次粒子としての固体粒子につき500個以上の固体粒子を測定して求めることができる。
【0035】
前記固体粒子の粒子径D50は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。また35μm以下とすることができ、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。詳細には、撥水性粒子の粒子径D50は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上が更に好ましい。また30μm以下とすることができ、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。また導電性粒子の粒子径D50は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。また35μm以下とすることができ、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。
【0036】
本発明では、固体粒子の粒子径D50が前記熱可塑性繊維の平均繊維径以下であることが必要である。固体粒子の粒子径D50が平均繊維径を超えると、固体粒子は繊維表面より脱落し易くなり、繊維表面に固体粒子が融着した状態を保ち難くなる。また、このような固体粒子が融着した熱可塑性繊維を得ようとしても、固体粒子を繊維表面に融着させることが困難になる。本発明では、固体粒子の粒子径D50が前記熱可塑性繊維の平均繊維径の3/4以下であることが好ましく、3/5以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明では、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂によって固体粒子が融着しているが、融着の形態は前記熱可塑性樹脂によって固体粒子が融着している限り特に限定されることはなく、例えば(ア)前記熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートを前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に晒した後、この熱可塑性繊維シートに前記撥水性粒子と前記導電性粒子とを混合した混合粒子を散布して、前記熱可塑性樹脂によってこれらの固体粒子を融着させて得られる形態が可能である。また、例えば(イ)前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記撥水性粒子と前記導電性粒子とを混合した混合粒子を前記熱可塑性繊維シートに接触させ、前記熱可塑性樹脂により前記固体粒子を融着させて得られる形態がある。
【0038】
前述の(ア)の形態の場合、前記熱可塑性樹脂が溶融し流動化した状態で固体粒子が融着するため、前記熱可塑性樹脂に多数の固体粒子が埋没してしまい、このため固体粒子の表面が必要以上に被われてしまい、撥水性や導電性を有効に発揮できない場合があった。これに対して、前述の(イ)の形態の場合、加熱した固体粒子を熱可塑性繊維表面に接触させているので、熱可塑性繊維表面に固体粒子が接触した部分のみが溶融して固体粒子を融着する。そのため、固体粒子の表面の内、接触部分以外又は融着部分以外の表面部分を溶融樹脂が覆ってしまうことが非常に少なくなる。また、熱可塑性繊維表面の樹脂全体が溶融して流動化することによって固体粒子が埋没してしまうことも、非常に少なくなる。しかし、前記撥水性粒子と前記導電性粒子とを混合した混合粒子の状態で前記熱可塑性繊維シートに接触させるため、撥水性粒子の融着のし易さと導電性粒子の融着のし易さの違いにより、撥水性粒子と導電性粒子の融着量が混合比率どおりの融着量とならない場合があった。
【0039】
そこで、本発明では、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂によって固体粒子が融着している形態としては、下記に説明する本発明の製造方法によって得られる形態であることが好ましい。
【0040】
本発明の製造方法は、少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する撥水性粒子及び導電性粒子を融着する粒子融着繊維シートの製造方法であって、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記撥水性粒子を前記熱可塑性繊維シートに接触させ、前記熱可塑性樹脂により前記撥水性粒子を融着させて撥水性粒子融着繊維シートを形成し、次いで、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記導電性粒子を前記撥水性粒子融着繊維シートに接触させて、前記可塑性樹脂により前記導電性粒子を融着させることを特徴とする、粒子融着繊維シートの製造方法である。
【0041】
本発明による粒子融着繊維シートの製造方法の第1工程では、熱可塑性繊維シートに含まれる熱可塑性繊維の表面の熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記撥水性粒子を前記熱可塑性繊維シートに接触させ、前記熱可塑性樹脂により前記撥水性粒子を融着させて撥水性粒子融着繊維シートを形成する。
【0042】
熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した加熱撥水性粒子を熱可塑性繊維シートに接触させる方法は、当該接触によって、熱可塑性繊維の表面に撥水性粒子を融着させることができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、
(1A)加熱撥水性粒子を含有する気流を熱可塑性繊維シートに吹き付ける方法;
(2A)加熱撥水性粒子を熱可塑性繊維シートに対して自然落下させる方法;
(3A)加熱撥水性粒子と熱可塑性繊維シートとを装入した耐熱性容器を振盪する方法;
(4A)加熱撥水性粒子中に熱可塑性繊維シートを浸漬する方法;あるいは、
(5A)加熱撥水性粒子の流動層中に熱可塑性繊維シートを曝す方法
などを挙げることができる。
【0043】
加熱撥水性粒子を熱可塑性繊維シートに接触させる方法として、前記接触方法(1A)、すなわち、加熱撥水性粒子を含有する気流を熱可塑性繊維シートに吹き付ける方法を用いる場合には、熱可塑性繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子と、気流とが混合された混合気流を用いる。このような接触方法(1A)を採用するには、図1または図2に例示する製造装置を利用することが好ましい。
【0044】
図1は本発明の製造方法で使用する装置の一例を模式的に示す構成図であり、被処理物として熱可塑性繊維シート80を使用し、被処理物支持手段として、熱可塑性繊維シート80を支持することのできる繊維シート支持手段70を使用することにより、本発明による粒子融着繊維シートの製造装置として使用することができる。
【0045】
図1に示す製造装置は、気流を発生させる気流発生手段10と;固体粒子を供給する粒子供給手段20と;前記気流発生手段10と前記粒子供給手段20とにそれぞれ連絡し、前記気流発生手段10によって発生した前記気流が送り込まれるとともに、送り込まれた前記気流の中に、粒子供給手段20によって前記固体粒子を供給することにより、前記気流と前記固体粒子とを混合して混合気流を形成することができる粒子混合手段30と;前記粒子混合手段30に連絡され、前記粒子形成手段30によって形成された固体粒子含有気流を噴出する噴出手段40と;前記気流発生手段10、前記粒子供給手段20、前記粒子混合手段30、及び前記噴出手段40に、それぞれ、設けられた加熱手段50,51,52,53と;前記噴出手段40から噴出される固体粒子含有気流が熱可塑性繊維シートと接触可能な位置に熱可塑性繊維シート80を保持することのできる繊維シート支持手段70とを含んでいる。
【0046】
また本発明による製造方法において、図2に示す装置を利用することがより好ましい。図2は本発明の製造方法で使用する装置の一例を模式的に示す概略図であり、図1に示す態様と同様に、被処理物として熱可塑性繊維シート80を使用し、被処理物支持手段として、熱可塑性繊維シート80を支持することのできる繊維シート支持手段70を使用することにより、本発明による粒子融着繊維シートの製造装置として使用することができる。
【0047】
前述のように、記接触方法(1A)、すなわち、加熱撥水性粒子を含有する気流を熱可塑性繊維シートに吹き付ける方法を用いる場合には、熱可塑性繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した撥水性粒子と、気流とが混合された混合気流を用いる。このような混合気流を調製するには、例えば、
(a)気流の中に、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子を供給する方法;
(b)熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した気流の中に、固体粒子を供給する方法;あるいは、
(c)気流の中に固体粒子を供給したものを、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱する方法
などを挙げることができる。この内、混合気流調製方法(b)又は(c)によれば、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱された気流を介して固体粒子が熱可塑性樹脂の融点以上に加熱される。
【0048】
なお、本発明の製造方法では、固体粒子を熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することが必要であるが、もし熱可塑性繊維に過剰に高い温度の固体粒子が融着して熱可塑性繊維の糸切れや収縮を起こすという問題が生じる場合には、熱可塑性樹脂の融点より100℃高い温度を超えない温度に加熱するのが好ましく、熱可塑性樹脂の融点より50℃高い温度を超えない温度に加熱するのがより好ましい。
【0049】
前記混合気流調製方法(a)では、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度に加熱した気流に、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した固体粒子を供給する方法が好ましい。この場合、気流と固体粒子とが混合される際に、固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように予熱する効果がある。また、加熱された固体粒子が繊維に衝突するまでに固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように保温する効果がある。なお、もし気流と固体粒子との混合気流を繊維に吹き付けた際に、繊維に過剰に高い温度の気流が当たり、繊維の糸切れや収縮を起こすという問題が生じる場合は、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度に加熱した気流であり、しかも、加熱した撥水性粒子の温度よりも低い温度に加熱した気流とすることが好ましい。
【0050】
また、前記の各混合気流調製方法(a)、(b)、又は(c)の何れの方法においても、気流と固体粒子とが混合された後の混合気流を、必要に応じて熱可塑性樹脂の融点以上に加熱することが好ましい。この場合、固体粒子が熱可塑性繊維に衝突するまでに固体粒子の温度が熱可塑性樹脂の融点より低くならないように保温する効果がある。
【0051】
加熱した気流を得るには、例えば、図1のように、気流発生手段10(例えば、ブロワー又はコンプレッサーなど)によって気流を発生させ、次いで、公知の加熱手段によって所定温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度、又は熱可塑性樹脂の融点以上の温度)に気流を加熱する方法を用いることができる。また、加熱した固体粒子を得るには、例えば、固体粒子供給手段20(例えば、ホッパー又は供給容器など)の内外にヒーター51を取り付けて、固体粒子供給手段20内の固体粒子を所定温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度、又は熱可塑性樹脂の融点以上の温度)に加熱する方法、あるいは、一般的に粉体の乾燥機として用いられる流動層型乾燥機などの装置を利用して、所定温度(例えば、熱可塑性樹脂の融点より50℃低い温度以上の温度、又は熱可塑性樹脂の融点以上の温度)に固体粒子を加熱する方法などを用いることができる。
【0052】
気流に固体粒子を供給して混合気流を調製する方法としては、例えば、固体粒子供給手段20(例えば、ホッパー又は供給容器など)から固体粒子を気流中に一定量ずつ供給する方法、あるいは、流動層型乾燥機などの装置を利用して熱可塑性樹脂の融点以上の温度まで固体粒子を加熱した後、その流動層型乾燥機より気体中に加熱された固体粒子が分散混合された混合気体を取り出し、該混合気体を気流に供給する方法を挙げることができる。
【0053】
また、これらの方法以外にも、例えば、図2のように、粒子混合手段30はエジェクターとなっており、気流発生手段としてのブロワー11及び加熱管12で生じた気流Aを粒子混合手段30に送り、粒子混合手段30には、粒子供給手段としての供給容器21とその底部に設けた回転式の供給制御ロータ23とを連絡させておき、気流Aによって生じる吸引力によって、粒子供給手段から供給する固体粒子29を吸引して、気流の中に固体粒子を供給する方法を用いることもできる。この場合、粒子混合手段30において、粒子が供給される部分31の気流Cの断面積を、その前後の断面積よりも小さくして気流を高速化すると、吸引力が強く働き、固体粒子の分散混合効果を大きくすることができる。
【0054】
前述のように、加熱撥水性粒子を含有する気流を熱可塑性繊維シートに吹き付けるには、前述のようにして得られた混合気流(すなわち、熱可塑性繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱された撥水性粒子を含む混合気流)を、熱可塑性繊維シートに吹き付ける。吹き付けに先立ち、熱可塑性繊維表面の温度は、熱可塑性樹脂の融点未満で且つ当該融点との温度差が20℃以内の温度としておくのが好ましい。
【0055】
熱可塑性繊維シートに吹き付ける方法としては、例えば、図2に例示するように、固体粒子を含む混合気流を、噴出手段としてのノズル41から噴出させると、固体粒子は、噴出時に与えられた運動エネルギーによる慣性力により熱可塑性繊維表面に衝突する。噴出手段は、例えば、前記粒子混合手段30に直接接続させるか、あるいは、接続管を介して接続させることができる。前記ノズルは、流体が噴出するに適した形状とすることができる。例えば、固体粒子の慣性力を高めるために、流路が絞られたものとすることや、あるいは、固体粒子の噴出角度を広げるために、ノズルの先端を広げた形状とすることができる。また、ノズルから噴出する固体粒子に応じて磨耗などの生じ難いノズル材質とすることも好ましい。
【0056】
また、図1または図2に例示するように、移動可能な繊維シート支持手段によって支持した熱可塑性繊維シートに加熱固体粒子を含有する気流を吹き付けることが好ましい。このような支持手段の好ましい例としては、例えば、加熱固体粒子を含有する気流を吹き付ける処理領域前後で、熱可塑性繊維シートを載置する回転ロール70、熱可塑性繊維シートの両サイドをピンやグリップで把持しながら移動するテンター方式の装置、熱可塑性繊維シートを挟んで支持する対ロール、あるいは、熱可塑性繊維シートを載せながら吹き付けの処理が可能な開孔支持体(例えば、コンベアーネット71等)を挙げることができる。
【0057】
また、熱可塑性繊維シートの巾方向に均一に吹き付けを行なうため、加熱固体粒子を含有する気流の噴出手段を複数設置することも、噴出手段に設けられたノズル孔を複数設けることも可能である。また、ノズル孔をスリット状として、熱可塑性繊維シート全巾までノズルの先端を広げた形状とすることも可能である。また、噴出手段を、熱可塑性繊維シートの巾方向に対してほぼ平行に、進行方向に対して直角またはある角度をつけて往復の移動を可能とすれば、噴出手段が少数であっても熱可塑性繊維シート全体を処理することができる。
【0058】
更に、熱可塑性繊維シートに加熱固体粒子を含有する気流を吹き付けた後で、熱可塑性繊維シートに融着しなかった余剰の固体粒子を回収して、回収した固体粒子を再利用することが好ましい。このような回収方法としては、例えば、図2に例示するように、繊維シート支持手段の加熱固体粒子を含有する気流を吹き付ける側と反対側に粒子回収手段である粒子回収ボックス91を配置して、この粒子回収ボックス91によって余剰の固体粒子を回収する方法を挙げることができる。また、熱可塑性繊維シートに融着しなかった余剰の固体粒子を除去するため、例えば、コンベアーネット71を傾斜させ、振動により落下させる方式や、あるいは、気流で吹き飛ばす方式の粒子回収手段を用いる方法を併用することも可能である。当該気流で吹き飛ばす方式の粒子回収手段としては、熱可塑性繊維シートに融着しなかった余剰の固体粒子を吹き飛ばすブロワー92とエアノズル93とからなる気流吹き付け手段と、繊維シート支持手段の気流吹き付け側とその反対側とに設けられた固体粒子を回収するサクションボックス94、95とから構成されることが好ましい。
【0059】
このようにして、第1工程では、撥水性粒子を前記熱可塑性繊維シートに接触させ、前記熱可塑性樹脂により前記撥水性粒子を前記熱可塑性繊維の表面に融着させて撥水性粒子融着繊維シートを形成することができる。なお第2工程に移行する前に、熱可塑性繊維シートに融着しなかった過剰の固体粒子を除去しておくことが好ましい。
【0060】
また、第2工程に移行する前に第1工程によって形成された撥水性粒子融着繊維シートをドライヤーなどの使用により前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度の雰囲気中に晒すか、または前記熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱した一対のロールやベルトの間を通過させるなどの方法により、撥水性粒子が熱可塑性繊維の表面に埋没しない程度の低圧力下で加熱処理することにより、撥水性粒子を確実に熱可塑性繊維の表面に融着させることも可能である。また、第2工程に移行する前に第1工程によって形成された撥水性粒子融着繊維シートを一旦冷却することも可能であり、冷却することにより、確実に撥水性粒子を前記熱可塑性繊維の表面に融着させることができる。また、第1工程では、必要に応じて熱可塑性繊維シートの表面と裏面に対して撥水性粒子の融着処理を行うことが可能である。
【0061】
本発明による粒子融着繊維シートの製造方法の第2工程では、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記導電性粒子を前記撥水性粒子融着繊維シートに接触させて、前記熱可塑性樹脂により前記導電性粒子を融着させて粒子融着繊維シートを形成する。なお、撥水性粒子融着繊維シートは既に、第1工程によって撥水性粒子が熱可塑性繊維の表面に融着しているため、第2工程では、熱可塑性繊維の表面の撥水性粒子が融着していない部分に導電性粒子を融着させることになる。なお撥水性粒子としてポリテトラフルオロエチレン粒子を選択し、導電性粒子としてポリテトラフルオロエチレン粒子の粒子径よりも小さな粒子径のカーボンブラックを選択した場合は、撥水性粒子の表面に慣性衝突により導電性粒子の一部が固着する場合がある。
【0062】
熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した加熱導電性粒子を撥水性粒子融着繊維シートに接触させる方法は、当該接触によって、熱可塑性繊維の表面に導電性粒子を融着させることができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、
(1B)加熱導電性粒子を含有する気流を撥水性粒子融着繊維シートに吹き付ける方法;
(2B)加熱導電性粒子を撥水性粒子融着繊維シートに対して自然落下させる方法;
(3B)加熱導電性粒子と撥水性粒子融着繊維シートとを装入した耐熱性容器を振盪する方法;
(4B)加熱導電性粒子中に撥水性粒子融着繊維シートを浸漬する方法;あるいは、
(5B)加熱導電性粒子の流動層中に撥水性粒子融着繊維シートを曝す方法
などを挙げることができる。
【0063】
加熱導電性粒子を撥水性粒子融着繊維シートに接触させる方法として、前記接触方法(1B)、すなわち、加熱導電性粒子を含有する気流を撥水性粒子融着繊維シートに吹き付ける方法を用いる場合には、熱可塑性繊維表面を構成する熱可塑性樹脂の内、最も低い融点を有する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した導電性粒子と、気流とが混合された混合気流を用いる。
【0064】
このような混合気流を調製するには、前述の第1工程の説明において説明した、混合気流の調製方法をそのまま適用することができる。また「(1B)加熱導電性粒子を含有する気流を撥水性粒子融着繊維シートに吹き付ける方法」についても、前述の第1工程で説明した「(1A)加熱撥水性粒子を含有する気流を熱可塑性繊維シートに吹き付ける方法」において、加熱撥水性粒子を加熱導電性粒子に置き換え、熱可塑性繊維シートを撥水性粒子融着繊維シートに置き換えて、第1工程での説明をそのまま適用することができる。
【0065】
また、第1工程の後に第2工程を実施するには、例えば図1又は図2に示す装置を用いて、原材ロール81から熱可塑性繊維シートを巻きだして第1工程を実施し、撥水性粒子融着繊維シートを形成し、この撥水性粒子融着繊維シートを一旦巻き上げて仕掛りロール82にしておき、次いでこの仕掛りロール82から撥水性粒子融着繊維シートを巻きだして、第1工程と同じ処理面に加熱固体粒子を吹き付けて、第2工程を実施し、粒子融着繊維シートを形成し、この粒子融着繊維シートを巻き上げて製品ロール83にすることができる。
【0066】
また、例えば図1又は図2に示す装置において、固体粒子含有気流を噴出する噴出手段40を熱可塑性繊維シートの進行方向に対して前後になるように2台設置して、前方に設置した噴出手段40によって第1工程を実施して、次いで後方に設置した噴出手段40’(図示しない)によって、連続的に第2工程を実施することも可能である。
【0067】
このようにして、第2工程では、導電性粒子を撥水性粒子融着繊維シートに接触させて、前記熱可塑性樹脂により前記導電性粒子を融着させて粒子融着繊維シートを形成することができる。
【0068】
本発明の製造方法では、撥水性粒子および導電性粒子の選択の仕方や、固体粒子を熱可塑性繊維の表面に接触させる条件によって、様々な特徴のある粒子融着繊維シートを形成することができる。
【0069】
また例えば、一般的に導電性粒子の粒子径(例えば粒子径D50)よりも撥水性粒子粒子径が大きいため、先に粒子径の大きい撥水性粒子を融着させることで、撥水性粒子と導電性粒子を混合した粒子混合体を融着させた場合と比較して、撥水性粒子の融着量を多くすることができるという効果がある。この効果は、撥水性粒子と導電性粒子を混合した粒子混合体を第1工程と同様にして、熱可塑性繊維の表面に融着させた場合、熱可塑性繊維の表面との接触面積の小さい導電性粒子が優先的に熱可塑性繊維の表面に融着してしまうことが予測されるが、このような現象を防ぐためと考えられる。このように、撥水性粒子および導電性粒子に対して必要とされる量を確実に融着した粒子融着繊維シートを得ることが可能である。
【0070】
なお、撥水性粒子の融着量を少なくしたい場合は、例えば第1工程において、加熱撥水性粒子を含有する気流において加熱撥水性粒子の含有量を少なくするなどの方法を採用することが可能である。このように本発明では、撥水性粒子および導電性粒子の融着比率を自由に設定することが可能である。例えば後述する実施例では撥水性粒子としてPTFEからなる撥水性粒子を用い、導電性粒子としてカーボンブラックからなる導電性粒子を用いて、導電性且つ撥水性の機能を有する粒子融着繊維シートを製造している。ここで、PTFEからなる撥水性粒子は電気絶縁性であり、カーボンブラックからなる導電性粒子は導電性であり、相反する特性を有しているといえるが、このような場合でも、撥水性粒子および導電性粒子の融着比率を自由に設定することが可能である。
【0071】
本発明の製造方法によれば、加熱した固体粒子を熱可塑性繊維表面に接触させているので、熱可塑性繊維表面に固体粒子が接触した部分のみが溶融して固体粒子を融着している。そのため、固体粒子の表面の内、接触部分以外又は融着部分以外の表面部分を溶融樹脂が覆ってしまうことが非常に少なくなっている。また、熱可塑性繊維表面の樹脂全体が溶融して流動化することによって固体粒子が埋没してしまうことも、非常に少なくなっている。また、接触した固体粒子の隙間より溶融樹脂が沁み出し、その固体粒子の外側にある固体粒子をも融着して、熱可塑性繊維表面上で固体粒子が部分的に複層となってしまい、熱可塑性繊維表面に固体粒子が均一に融着されないという問題が発生しない。
【0072】
また、本発明の製造方法によれば、固体粒子が熱可塑性繊維表面のみを溶融するので、熱可塑性繊維が単一の樹脂成分からなる繊維であっても、接触処理時又は融着処理時に熱可塑性繊維が収縮したり、熱可塑性繊維全体が溶融して糸切れが生じて問題となることがない。また、熱可塑性繊維全体の熱劣化や熱可塑性繊維表面の熱劣化が起きないか、もし起きても少なくて済むという有利な効果がある。
【0073】
また、本発明の製造方法において、加熱固体粒子と熱可塑性繊維シートに含まれる熱可塑性繊維とを接触させる方法として、前記接触方法(1A)又は(1B)、すなわち、加熱された固体粒子を含む気流を熱可塑性繊維に吹き付ける方法を用いた場合には、固体粒子の慣性力により固体粒子が熱可塑性繊維表面に衝突して、固体粒子が熱可塑性繊維表面にしっかりと融着することができる。
【0074】
本発明の粒子融着繊維シートの面密度、厚さなどの諸特性も特に限定されるものではないが、面密度は2〜200g/mであることが好ましく、4〜130g/mであることがより好ましく、6〜85g/mであることが更に好ましい。また厚さは0.01〜0.9mmであることが好ましく、0.02〜0.5mmであることがより好ましく、0.03〜0.4mmであることが更に好ましい。なお、厚さはマイクロメータにより測定した5点の厚さの算術平均値を用いることができる。
【0075】
また、撥水性粒子の融着量は0.4〜50g/mであることが好ましく、0.7〜40g/mであることがより好ましく、1〜35g/mであることが更に好ましい。また、導電性粒子の融着量は0.1〜40g/mであることが好ましく、0.1〜30g/mであることがより好ましく、0.2〜20g/mであることが更に好ましい。
【0076】
また、本発明の粒子融着繊維シートの通気度[JIS L1096に規定されるフラジール形法による。]は0.05cm/cm・s以上であることが望ましく、15cm/cm・s以上であることが好ましく、50cm/cm・s以上であることがより好ましく、150cm/cm・s以上であることが更に好ましい。また、700cm/cm・s以下であることが好ましく、600cm/cm・s以下であることがより好ましく、500cm/cm・s以下であることが更に好ましい、
【0077】
また、本発明の粒子融着繊維シートの接触角は142°以上であることが好ましい。なお接触角の測定方法は、Fibro社製の動的接触角計1122DAT MKIIを用い、4μLの純水を、粒子融着繊維シート表面の幅方向に約10点滴下して、それぞれ滴下開始から1秒後、及び5秒後の接触角の値を求め、1秒後と5秒後の接触角の平均値10個につき、これら10個の平均値を算出して、粒子融着繊維シートの接触角とすることができる。
【0078】
本発明によって、導電性に優れると共に撥水性にも優れ、且つ通気性に優れる粒子融着繊維シートを提供することが可能となった。
【0079】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0080】
(実施例1)
(熱可塑性繊維シートの準備)
抄造装置により、芯成分がポリプロピレン樹脂であり、鞘成分が高密度ポリエチレン樹脂(融点=132℃)からなる芯鞘型複合繊維(繊維径=10.5μm、繊維長=5mm)100%からなる抄造シート(熱可塑性繊維シート)を作成した。次に、この抄造シートを金網のコンベアーベルトの上に載置して、エアースルー型のドライヤーの中で、複合繊維の接着成分である高密度ポリエチレン樹脂が溶融するように、140℃の温度で熱接着処理を行ない、湿式法不織布の原材ロールを得た。この湿式法不織布は、厚さが0.060mmであり、面密度が10g/mであった。
【0081】
(第1工程)
図2示す製造装置において、市販のポリテトラフルオロエチレン粒子(ファインテック(株)製のPTFEパウダー、一次粒子径D50:5.6μm)(以下、PTFE粒子と称することがある。)を供給容器21に投入し、ヒーター51によってPTFE粒子を200℃に加熱し、さらに回転式の供給制御ロータ23によりこの加熱したPTFE粒子をエジェクターに供給した。その一方、ブロワー11及び加熱管12で生じた150℃に加熱した気流Aをエジェクターに送り、気流Aによって生じる吸引力によって、供給制御ロータ23から供給したPTFE粒子29を吸引して、気流Aの中にPTFE粒子を混合させてPTFE混合気流を形成し、ノズル41からPTFE混合気流を噴出させた。PTFE混合気流には13g/mのPTFE粒子が含まれていた。
【0082】
ついで、原材ロール81から湿式法不織布をコンベアーネット71上に12m/分の速度で巻きだし、ノズル41の下を通過させ、湿式法不織布にPTFE混合気流を吹き付け、加熱したPTFE粒子により芯鞘型複合繊維の鞘成分である高密度ポリエチレン樹脂を溶融させ、PTFE粒子を芯鞘型複合繊維の表面に融着させて撥水性粒子融着繊維シートを形成した。なお、PTFE混合気流の吹き付けに際して湿式法不織布に融着しなかった余剰のPTFE粒子は、コンベアーネット71の下に配置された粒子回収ボックス91によって吸引により回収した。さらに、ブロワー92とエアノズル93を用いて湿式法不織布に融着しなかった余剰のPTFE粒子を吹き飛ばし、コンベアーネット71の上下に設けたサクションボックス94、95によって余剰のPTFE粒子を回収した。その後、撥水性粒子融着繊維シートを仕掛りロール82として巻き取った。
ついで、湿式法不織布の裏面についても同様の融着処理を行い、再び仕掛りロール82として巻き取った。得られた撥水性粒子融着繊維シートの面密度は12.1g/mであり、融着したPTFE粒子は2.1g/mであった。
【0083】
(第2工程)
図2示す製造装置において、市販のカーボンブラック(電気化学工業(株)製、品名:デンカブラック、一次粒子径:カタログ値30〜40nm、二次粒子径D50:2〜7μm、形状:粒状、材質:アセチレンブラック)(以下、CB粒子と称することがある。)を供給容器21に投入し、ヒーター51によってCB粒子を220℃に加熱し、さらに回転式の供給制御ロータ23によりこの加熱したCB粒子をエジェクターに供給した。その一方ブロワー11及び加熱管12で生じた150℃に加熱した気流Aをエジェクターに送り、気流Aによって生じる吸引力によって、供給制御ロータ23から供給したCB粒子29を吸引して、気流Aの中にCB粒子を混合させてCB混合気流を形成し、ノズル41からCB混合気流を噴出させた。CB混合気流には44g/mのCB粒子が含まれていた。
【0084】
ついで、仕掛りロール82から撥水性粒子融着繊維シートをコンベアーネット71上に4m/分の速度で巻きだし、ノズル41の下を通過させ、撥水性粒子融着繊維シートにCB混合気流を吹き付け、加熱したCB粒子により芯鞘型複合繊維の鞘成分である高密度ポリエチレン樹脂を溶融させ、芯鞘型複合繊維の表面の第1工程においてPTFE粒子が融着していない部分に融着させて粒子融着繊維シートを形成した。なお、CB粒子の一部はPTFE粒子の表面に慣性衝突により固着していた。また、CB混合気流の吹き付けに際して撥水性粒子融着繊維シートに融着または固着しなかった余剰のCB粒子を、コンベアーネット71の下に配置された粒子回収ボックス91によって吸引により回収した。さらに、ブロワー92とエアノズル93を用いて撥水性粒子融着繊維シートに融着しなかった余剰のCB粒子を吹き飛ばし、コンベアーネット71の上下に設けたサクションボックス94、95によって余剰のCB粒子を回収した。その後、粒子融着繊維シートを半製品ロール83として巻き取った。
ついで、撥水性粒子融着繊維シートの裏面についても同様の融着処理を行い、約20cm幅の製品ロール83として巻き取った。得られた粒子融着繊維シートの厚さは0.066mmであり、面密度は12.5g/mであり、第2工程によって融着及び固着したCB粒子は0.4g/mであった。このように、PTFE粒子が2.1g/mとCB粒子が0.4g/m融着及び固着した粒子融着繊維シートを得た。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は400cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で143°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れると共に撥水性にも優れており、且つ通気性に優れていた。
【0085】
(実施例2)
実施例1の第1工程において、ノズル41からPTFE混合気流を噴出するに際して、PTFE混合気流に26g/mのPTFE粒子を含有させたこと、および仕掛りロール82から撥水性粒子融着繊維シートをコンベアーネット71上に5m/分の速度で巻きだしたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性粒子融着繊維シートおよび粒子融着繊維シートを得た。撥水性粒子融着繊維シートの面密度は14.2g/mであり、融着したPTFE粒子は4.2g/mであった。また、粒子融着繊維シートの厚さは0.067mmであり、面密度は14.5g/mであり、第2工程によって融着及び固着したCB粒子は0.3g/mであった。このように、PTFE粒子が4.2g/mとCB粒子が0.3g/m融着及び固着した粒子融着繊維シートを得た。また、実施例1の粒子融着繊維シートと比較して、PTFE粒子の付着量が2.1g/m増加した。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は382cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で144°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れると共に撥水性にも優れており、且つ通気性に優れていた。
【0086】
(実施例3)
実施例1の第2工程において、粒子融着繊維シートを形成した後、CB粒子が融着した撥水性粒子融着繊維シートを130℃に加熱したベルトの間を通過させることによりCB粒子を確実に融着させる工程を追加して、この工程の後で、ブロワー92とエアノズル93を用いて撥水性粒子融着繊維シートに融着しなかった余剰のCB粒子を吹き飛ばし、コンベアーネット71の上下に設けたサクションボックス94、95によって余剰のCB粒子を回収したこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性粒子融着繊維シートおよび粒子融着繊維シートを得た。撥水性粒子融着繊維シートの面密度は12.1g/mであり、融着したPTFE粒子は2.1g/mであった。また、粒子融着繊維シートの厚さは0.065mmであり、面密度は13.9g/mであり、第2工程によって融着及び固着したCB粒子は1.8g/mであった。このように、PTFE粒子が2.1g/mとCB粒子が1.8g/m融着及び固着した粒子融着繊維シートを得た。また、実施例1の粒子融着繊維シートと比較して、CB粒子の融着及び固着量が1.4g/m増加した。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は299cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で145°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れると共に撥水性にも優れており、且つ通気性に優れていた。
【0087】
(実施例4)
実施例1の第1工程において、ノズル41からPTFE混合気流を噴出するに際して、PTFE混合気流に26g/mのPTFE粒子を含有させたこと、仕掛りロール82から撥水性粒子融着繊維シートをコンベアーネット71上に5m/分の速度で巻きだしたこと、および実施例1の第2工程において、粒子融着繊維シートを形成した後、CB粒子が融着した撥水性粒子融着繊維シートを130℃に加熱したベルトの間を通過させることによりCB粒子を確実に融着させる工程を追加して、この工程の後で、ブロワー92とエアノズル93を用いて撥水性粒子融着繊維シートに融着しなかった余剰のCB粒子を吹き飛ばし、コンベアーネット71の上下に設けたサクションボックス94、95によって余剰のCB粒子を回収したこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性粒子融着繊維シートおよび粒子融着繊維シートを得た。撥水性粒子融着繊維シートの面密度は14.2g/mであり、融着したPTFE粒子は4.2g/mであった。また、粒子融着繊維シートの厚さは0.067mmであり、面密度は15.8g/mであり、第2工程によって融着及び固着したCB粒子は1.6g/mであった。このように、PTFE粒子が4.2g/mとCB粒子が1.6g/m融着及び固着した粒子融着繊維シートを得た。また、実施例1の粒子融着繊維シートと比較して、PTFE粒子の付着量が2.1g/m増加し、CB粒子の融着及び固着量が1.2g/m増加した。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は264cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で145°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れると共に撥水性にも優れており、且つ通気性に優れていた。
【0088】
(実施例5)
実施例1の「熱可塑性繊維シートの準備」において、厚さが0.150mmであり、面密度が30g/mである湿式法不織布及び原材ロールを得たこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性粒子融着繊維シートおよび粒子融着繊維シートを得た。撥水性粒子融着繊維シートの面密度は38.7g/mであり、融着したPTFE粒子は8.7g/mであった。また、粒子融着繊維シートの厚さは0.170mmであり、面密度は40.1g/mであり、第2工程によって融着及び固着したCB粒子は1.4g/mであった。このように、PTFE粒子が8.7g/mとCB粒子が1.4g/m融着及び固着した粒子融着繊維シートを得た。また、実施例1の粒子融着繊維シートと比較して、PTFE粒子の付着量が6.6g/m増加し、CB粒子の融着及び固着量が1.0g/m増加した。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は96cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で144°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れると共に撥水性にも優れており、且つ通気性に優れていた。
【0089】
(実施例6)
実施例1の「熱可塑性繊維シートの準備」において、厚さが0.150mmであり、面密度が30g/mである湿式法不織布及び原材ロールを得たこと、および実施例1の第2工程において、粒子融着繊維シートを形成した後、CB粒子が融着した撥水性粒子融着繊維シートを130℃に加熱したベルトの間を通過させることによりCB粒子を確実に融着させる工程を追加して、この工程の後で、ブロワー92とエアノズル93を用いて撥水性粒子融着繊維シートに融着しなかった余剰のCB粒子を吹き飛ばし、コンベアーネット71の上下に設けたサクションボックス94、95によって余剰のCB粒子を回収したこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性粒子融着繊維シートおよび粒子融着繊維シートを得た。撥水性粒子融着繊維シートの面密度は38.7g/mであり、融着したPTFE粒子は8.7g/mであった。また、粒子融着繊維シートの厚さは0.168mmであり、面密度は42.4g/mであり、第2工程によって融着及び固着したCB粒子は3.7g/mであった。このように、PTFE粒子が8.7g/mとCB粒子が3.7g/m融着及び固着した粒子融着繊維シートを得た。また、実施例1の粒子融着繊維シートと比較して、PTFE粒子の付着量が6.6g/m増加し、CB粒子の融着及び固着量が3.3g/m増加した。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は72cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で143°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れると共に撥水性にも優れており、且つ通気性に優れていた。
【0090】
(実施例7)
実施例1の「熱可塑性繊維シートの準備」において、厚さが0.270mmであり、面密度が50g/mである湿式法不織布及び原材ロールを得たこと、および実施例1の第1工程において、ノズル41からPTFE混合気流を噴出するに際して、PTFE混合気流に52g/mのPTFE粒子を含有させたこと、および仕掛りロール82から撥水性粒子融着繊維シートをコンベアーネット71上に4m/分の速度で巻きだしたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性粒子融着繊維シートおよび粒子融着繊維シートを得た。撥水性粒子融着繊維シートの面密度は82.1g/mであり、融着したPTFE粒子は32.1g/mであった。また、粒子融着繊維シートの厚さは0.277mmであり、面密度は94.4g/mであり、第2工程によって融着及び固着したCB粒子は12.3g/mであった。このように、PTFE粒子が32.1g/mとCB粒子が12.3g/m融着及び固着した粒子融着繊維シートを得た。また、実施例1の粒子融着繊維シートと比較して、PTFE粒子の付着量が30g/m増加し、CB粒子の融着及び固着量が11.9g/m増加した。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は45cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で144°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れると共に撥水性にも優れており、且つ通気性に優れていた。
【0091】
(比較例1)
実施例1において、第1工程を実施しなかったこと、および第2工程において撥水性粒子融着繊維シートを用いずに熱可塑性繊維シートを用いたこと、以外は実施例1と同様にして粒子融着繊維シートを得た。
得られた粒子融着繊維シートの厚さは0.060mmであり、面密度は10.8g/mであり、CB粒子が0.8g/m融着した粒子融着繊維シートを得た。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は420cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で141°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れ、且つ通気性に優れているが、撥水性に劣るものであった。
【0092】
(比較例2)
実施例1において、第1工程を実施しなかったこと、第2工程において撥水性粒子融着繊維シートを用いずに熱可塑性繊維シートを用いたこと、および粒子融着繊維シートを形成した後、130℃に加熱したベルトの間を通過させることによりCB粒子を確実に融着させる工程を追加して、この工程の後で、ブロワー92とエアノズル93を用いて熱可塑性繊維シートに融着しなかった余剰のCB粒子を吹き飛ばし、コンベアーネット71の上下に設けたサクションボックス94、95によって余剰のCB粒子を回収したこと以外は実施例1と同様にして粒子融着繊維シートを得た。
得られた粒子融着繊維シートの厚さは0.060mmであり、面密度は12.4g/mであり、CB粒子が2.4g/m融着した粒子融着繊維シートを得た。また、この粒子融着繊維シートの通気度(フラジール形法)は287cm/cm・sであり、接触角は表・裏平均で139°であり、この粒子融着繊維シートは導電性に優れ、且つ通気性に優れているが、撥水性に劣るものであった。
【符号の説明】
【0093】
10 気流発生手段
11 ブロワー
12 加熱管
20 粒子供給手段
21 供給容器
23 回転式の供給制御ロータ
29 固体粒子(撥水性粒子または導電性粒子)
30 粒子混合手段、エジェクター
31 加熱固体粒子が供給される部分
40 噴出手段
41 ノズル
50,51,52,53 加熱手段
70 ロール又は繊維シート支持手段
71 コンベアーネット又は繊維シート支持手段
80 繊維シート
81 原材ロール
82 仕掛りロール
83 半製品ロール、製品ロール
91 粒子回収ボックス
92 ブロワー
93 エアノズル
94,95 サクションボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂によって撥水性粒子及び導電性粒子が融着しており、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の融点又は分解温度が前記熱可塑性樹脂の融点より高く、前記撥水性粒子及び前記導電性粒子の粒子径が前記熱可塑性繊維の平均繊維径以下であることを特徴とする粒子融着繊維シート。
【請求項2】
前記撥水性粒子がフッ素樹脂粒子であり、前記導電性粒子がカーボン粒子であることを特徴とする請求項1に記載の粒子融着繊維シート。
【請求項3】
少なくとも表面が熱可塑性樹脂からなる熱可塑性繊維を含む熱可塑性繊維シートの前記熱可塑性繊維の表面に、前記熱可塑性樹脂の融点より高い融点又は分解温度を有する撥水性粒子及び導電性粒子を融着する粒子融着繊維シートの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記撥水性粒子を前記熱可塑性繊維シートに接触させ、前記熱可塑性樹脂により前記撥水性粒子を融着させて撥水性粒子融着繊維シートを形成し、次いで、前記熱可塑性樹脂の融点より高い温度に加熱した前記導電性粒子を前記撥水性粒子融着繊維シートに接触させて、前記可塑性樹脂により前記導電性粒子を融着させることを特徴とする、粒子融着繊維シートの製造方法。
【請求項4】
前記撥水性粒子がフッ素樹脂粒子であり、前記導電性粒子がカーボン粒子であることを特徴とする請求項3に記載の粒子融着繊維シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−23799(P2013−23799A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162801(P2011−162801)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】