粒子解析装置、データ解析装置、X線分析装置、粒子解析方法及びコンピュータプログラム
【課題】特性X線の検出結果に基づいて、試料中の粒子を適切に区分・識別表示することができる粒子解析装置、データ解析装置、X線分析装置、粒子解析方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】本発明のX線分析装置では、試料SのSEM画像をSEM画像処理部14で生成し、試料Sに含まれる複数の粒子をSEM画像に基づいて検出し、各粒子に電子銃11から電子線(放射線ビーム)を照射し、各粒子から発生する特性X線をX線検出器21で検出する。更にX線データ解析部23は、特性X線の検出結果から各粒子に含有される複数の元素の含有量を求め、粒子解析装置3は、各粒子に係る複数の元素の含有量に対して主成分分析を行い、主成分分析により得られた各粒子に係る複数の主成分得点を用いて階層型クラスター分析を行うことにより、試料Sに含まれる多数の粒子を組成に応じた複数のグループに分類する。
【解決手段】本発明のX線分析装置では、試料SのSEM画像をSEM画像処理部14で生成し、試料Sに含まれる複数の粒子をSEM画像に基づいて検出し、各粒子に電子銃11から電子線(放射線ビーム)を照射し、各粒子から発生する特性X線をX線検出器21で検出する。更にX線データ解析部23は、特性X線の検出結果から各粒子に含有される複数の元素の含有量を求め、粒子解析装置3は、各粒子に係る複数の元素の含有量に対して主成分分析を行い、主成分分析により得られた各粒子に係る複数の主成分得点を用いて階層型クラスター分析を行うことにより、試料Sに含まれる多数の粒子を組成に応じた複数のグループに分類する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性X線を用いて元素分析を行うX線分析に関し、より詳しくは、元素分析結果の結果に基づいて、自動粒子解析により検出された試料中の粒子を適切に区分する粒子解析装置、データ解析装置、X線分析装置、粒子解析方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線分析は、電子線又はX線等の放射線を物質に照射し、物質から発生する特性X線を検出し、特性X線のスペクトルから物質に含有される元素を同定する分析手法である。また、放射線をビーム状になした放射線ビームを走査しながら試料に照射し、試料上の各点に放射線ビームが照射されたときの特性X線を夫々に分析することにより、試料に含有される元素の分布を得ることも行われる。特許文献1には、試料に対して電子線を走査することにより、試料に含まれる物質の分布を測定する技術が開示されている。
【0003】
物質に照射する放射線がX線の場合は、特性X線は蛍光X線と呼ばれ、X線分析装置は蛍光X線分析装置として提供される。また、物質に照射する放射線を電子線としたX線分析装置には、電子顕微鏡に付属し、電子線源を電子顕微鏡と共用しているものがある。またX線分析装置には、特性X線を半導体検出器で検出し、特性X線のエネルギーに比例した電流を発生させ、発生した電流を選別して測定するエネルギー分散型X線分析装置と、特性X線を分光器で分光した上で測定する波長分散型X線分析装置とがある。エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X-ray Spectrometer)の略称としてはEDS又はEDXが用いられ、波長分散型X線分析装置(Wavelength Dispersive X-ray Spectrometer)の略称としてはWDS又はWDXが用いられるが、以下では、EDS及びWDSを用いる。
【0004】
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)とEDSとを組み合わせた装置では、SEMとEDSとを組み合わせて測定を行う方法として、自動粒子解析がある。自動粒子解析では、一旦試料のSEM画像を取得し、SEM画像中で周囲と輝度が異なる粒子を検出し、各粒子に再度電子線を照射して各粒子からの特性X線を検出し、各粒子に含有される元素の定性・定量分析を行う。粒子の実体は、試料の表面に付着した微粒子、又は試料中の含有物等である。自動粒子解析の結果としては、各粒子について、粒子の形状(アスペクト比)、粒子から発生した特性X線のスペクトル、粒子に含まれる元素の種類及び含有量等の特性データが得られる。
【特許文献1】特開平8−86762号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動粒子解析では、通常、試料中に多数の粒子が検出され、各粒子に含有される元素として複数の元素が同定される。ここで、粒子の面積又は特定元素の含有量等、注目する特性データを限定すれば、特性データの値に基づいて粒子を区分して判断できるように識別表示することが可能である。しかしながら、複数の特性データの内でどの特性データに注目すれば良いのかは決定していない場合が多く、また試料が多種類の元素を含む場合は、多数の特性データが粒子間で少しずつ異なる結果が得られ、どのような基準で区分・識別表示を行えば良いかを定めることは困難である。従って、実際には、自動粒子解析の結果から試料中の粒子に対して客観的に意味のある区分・識別表示を行うことは困難である。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特性X線の検出結果に対して多変量解析を行うことにより、自動粒子解析の結果から試料中の粒子を適切に区分・識別表示することができる粒子解析装置、データ解析装置、X線分析装置、粒子解析方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粒子解析装置は、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づいて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析装置において、複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に基づいて、クラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類する分類手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る粒子解析装置は、前記記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に対して主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分得点を求める主成分分析手段を更に備え、前記分類手段は、前記主成分分析手段が求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うように構成してあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るデータ解析装置は、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線の検出結果を解析するデータ解析装置において、放射線ビームの照射によって各粒子から発生した特性X線の検出結果を解析することにより、試料に含まれる複数の粒子の夫々に含まれる複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を求める手段と、該手段が求めた前記含有量又は前記カウント数に基づいて複数の粒子を解析する処理を行う本発明に係る粒子解析装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るX線分析装置は、試料に放射線を照射することによって試料から発生する特性X線を利用して試料を分析するX線分析装置において、試料に放射線ビームを照射する照射手段と、試料の画像を取得する手段と、該手段が取得した画像中で周囲と輝度が異なる閉鎖領域に対応する複数の粒子を試料中から検出する手段と、該手段が検出した各粒子に対して、前記照射手段から放射線ビームを照射させる手段と、放射線ビームの照射によって各粒子から発生する特性X線を検出する手段と、該手段による特性X線の検出結果を解析する本発明に係るデータ解析装置とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る粒子解析方法は、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づき、記憶部及び演算部を備えたコンピュータを用いて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析方法において、複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量を記憶部で記憶し、演算部で、記憶部が記憶する複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求め、演算部で、求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析して得られた各粒子における複数の元素の含有量に基づき、試料に含まれる複数の粒子を解析する処理を実行させるコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求めるステップと、求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類するステップとを含む処理を実行させることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を検出し、特性X線を分析することによって各粒子に含有される複数の元素の含有量、又は各元素に対応する特性X線のカウント数を求め、元素の含有量又は元素に対応するカウント数に基づいたクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類する。これにより、注目する特性データや明確な基準がなくとも試料中の複数の粒子を分類することができる。
【0014】
また本発明においては、試料中の複数の粒子に含有される複数の元素の含有量、又は各元素に対応する特性X線のカウント数に対して、主成分分析を行い、主成分分析により得られた各粒子に係る複数の主成分得点を用いてクラスター分析を行う。主成分分析を行うことにより、クラスター分析で利用するための成分として、各元素の含有量よりも粒子の組成の違いを顕著に表すことができる主成分を導くと共に、独立成分の数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、試料中の複数の粒子に含有される複数の元素の含有量に基づいたクラスター分析を行うことにより、試料に含まれる多数の粒子の夫々が多種類の元素を含み、粒子を区分・識別表示する基準が不明である場合であっても、一つのグループ内に組成が近い粒子を集めた複数のグループに多数の粒子を適切に分類することが可能となる。アルミニウム合金等の材料においては、本発明により、材料内に偏在する各種の化合物の分布、又はクラスター分析の結果を示す特性図を求めることが可能となり、材料の製造条件を変えながら本発明により材料を分析することにより、適切な製造条件を求めることも可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明のX線分析装置の構成を示すブロック図である。本発明のX線分析装置は、SEMとEDSとを組み合わせた装置である。X線分析装置は、平面状の試料Sに電子線(放射線ビーム)を照射する電子銃(照射手段)11と、電子線の方向を定める電子線走査コイル12と、電子銃11及び電子線走査コイル12の動作を制御するSEM制御部15とを備えている。SEM制御部15からの制御信号に従って、電子銃11が電子線を放出し、電子線走査コイル12が電子線の方向を順次変更することにより、電子線は試料S上を走査しながら試料Sに照射される。X線分析装置は、試料Sに電子線が照射されることによって発生する反射電子又は二次電子を検出する電子検出器13を備え、電子検出器13はSEM画像を生成するSEM画像処理部14に接続されている。電子線が試料Sを走査することに同期して、電子検出器13は、検出した電子の強度を示す信号をSEM画像処理部14へ順次入力する。SEM画像処理部14は、順次入力された信号に基づいて、試料S上の点に対応する画素の輝度を電子検出器13が検出した電子の強度に応じた値とした試料SのSEM画像を生成する処理を行う。SEM画像処理部14は、液晶ディスプレイ等の表示部を備えており、生成したSEM画像を表示部に表示することができる。またSEM画像処理部14は、SEM画像に対して画像処理を行うことにより、試料Sに含まれる粒子を検出する処理を行い、そして、SEM制御部15は、検出した各粒子に電子線を照射させるための処理を行う。
【0017】
X線分析装置は、試料Sに電子線が照射されることによって試料Sから発生する特性X線を検出するX線検出器21を備え、X線検出器21はマルチチャネルアナライザ(MCA)22に接続されている。X線検出器21は、検出素子としてSi素子等の半導体検出素子を用いた構成となっており、検出した特性X線のエネルギーに比例した電流値のパルス電流を発生し、発生したパルス電流をMCA22へ入力する。MCA22は、X線検出器21からのパルス電流を電流値に応じて選別し、各電流値のパルス電流をカウントする。このMCA22の処理により、特性X線のエネルギーとカウント数との関係、即ち特性X線のスペクトルが得られる。MCA22は、X線データ解析部23に接続されており、特性X線の検出結果である特性X線のスペクトルをX線データ解析部23へ入力する。X線データ解析部23は、MCA22から入力された特性X線のスペクトルに基づいて、特性X線を発生した元素の定性・定量分析を行う。X線分析装置は、更に本発明の粒子解析装置3を備え、粒子解析装置3は、SEM画像処理部14及びX線データ解析部23に接続されている。粒子解析装置3及びX線データ解析部23の組み合わせは、本発明のデータ解析装置に対応する。
【0018】
図2は、本発明の粒子解析装置3の構成を示すブロック図である。粒子解析装置3は、パーソナルコンピュータ(PC)等の汎用コンピュータを用いて構成されており、演算を行うCPU(演算部)31と、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するRAM32と、光ディスク等の記録媒体Dから情報を読み取るCD−ROMドライブ等のドライブ部33と、ハードディスク等の記憶部34とを備えている。CPU31は、記録媒体Dから本発明のコンピュータプログラム30をドライブ部33に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム30を記憶部34に記憶させる。CPU31は、必要に応じてコンピュータプログラム30を記憶部34からRAM32へロードし、ロードしたコンピュータプログラム30に従って粒子解析装置3に必要な処理を実行する。また粒子解析装置3は、X線データ解析部23及びSEM画像処理部14に接続されたインタフェース部35を備えている。更に粒子解析装置3は、使用者が操作することによる各種の処理指示等の情報が入力されるキーボード又はポインティングデバイス等の入力部36と、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ等の表示部37とを備えている。
【0019】
なお、コンピュータプログラム30は、図示しない通信ネットワークを介して粒子解析装置3に接続された図示しない外部のサーバ装置から粒子解析装置3へダウンロードされて記憶部34に記憶される形態であってもよい。また粒子解析装置3は、外部からコンピュータプログラム30を受け付けるのではなく、コンピュータプログラム30を記録したROM等の記録手段を内部に備えた形態であってもよい。
【0020】
次に、以上の構成でなるX線分析装置が行う処理を説明する。図3は、X線分析装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。まずX線分析装置は、試料SのSEM画像を取得する処理を行う(S1)。ステップS1では、SEM制御部15が電子銃11及び電子線走査コイル12の動作を制御することにより、試料Sを走査しながら電子線を試料Sに照射し、電子検出器13は、試料Sからの反射電子又は二次電子を検出し、検出結果をSEM画像処理部14へ入力し、SEM画像処理部14は、電子検出器13からの検出結果に基づいて、2次元状のSEM画像を生成する。
【0021】
SEM画像処理部14は、次に、生成したSEM画像に基づいて、試料Sに含まれる複数の粒子を検出する処理を行う(S2)。ステップS2では、SEM画像処理部14は、所定の閾値を境にしてSEM画像を二値化し、二値化したSEM画像中で輝度が閾値以上である画素が集積した閉鎖領域を抽出することにより、閉鎖領域に対応する試料S上の部分である粒子を検出する。なお、SEM画像中の輝度に所定の範囲を指定し、輝度が当該所定の範囲内である画素が集積した閉鎖領域を抽出することにより、閉鎖領域に対応する試料S上の部分である粒子を検出するようにしてもよい。更に、SEM画像処理部14は、検出した複数の粒子の夫々に粒子番号を付加し、各粒子の形状を測定し、各粒子の形状及び位置情報を粒子番号に関連付けて記憶する。
【0022】
図4は、二値化したSEM画像の例を示す模式図である。図4中でPで示した部分が粒子であり、SEM画像中の他の部分よりも高輝度の画素が集積した部分に対応する。粒子の実体は、試料Sの表面に付着した微粒子、試料Sに含まれる不純物が凝集したもの、又は試料S中の母材と異なる相の部分等である。これらの粒子は、SEM画像中で周囲の母材よりも高輝度となり、高輝度の閉鎖領域を抽出することにより、粒子を検出することができる。なお、二値化を行うための輝度の閾値は、予めSEM画像処理部14が記憶している。SEM画像処理部14は、使用者から受け付けた指示に応じて閾値を変更することができる形態であってもよい。またSEM画像処理部14は、周囲の母材よりも輝度が低い閉鎖領域に対応する粒子を検出する形態であってもよい。
【0023】
X線分析装置は、次に、検出した複数の粒子の夫々に電子線を照射し、各粒子から発生する特性X線を検出する(S3)。ステップS3では、SEM画像処理部14は検出した各粒子の試料S上での位置を示す位置情報をSEM制御部15へ入力し、SEM制御部15は、位置情報に従って電子銃11及び電子線走査コイル12の動作を制御することにより、試料Sに含まれる複数の粒子の夫々に順に電子線を照射させる。電子線の照射の際、SEM制御部15は、電子線で粒子内を走査してもよく、粒子内の代表的な点に電子線を照射してもよい。X線検出器21は、電子線の照射によって各粒子から発生する特性X線を検出し、MCA22は、各粒子から発生した特性X線のスペクトルをX線データ解析部23へ入力する。
【0024】
図5は、特性X線のスペクトルの例を示す特性図である。図中の横軸はX線検出器21が検出した特性X線のエネルギーを示す。図中の縦軸はカウント数を示し、X線検出器21が検出した各エネルギーの特性X線の強度に対応する。スペクトルに含まれるピークに対応するエネルギー値は、特性X線を放出した元素に固有の値であり、ピークに対応するエネルギー値を求めることにより、粒子に含まれる元素を同定することができる。
【0025】
X線データ解析部23は、次に、各粒子から発生した特性X線のスペクトルを解析することによって、各粒子に含まれる元素の同定、及び各元素の含有量の算出を行う元素分析を実行する(S4)。X線データ解析部23は、元素毎に特性X線の標準データを記録したデータベースを予め記憶している。ステップS4では、X線データ解析部23は、データベース中の特性X線の標準データと、得られた特性X線のスペクトルとを比較し、特性X線のスペクトルに含まれるピークに対応するエネルギー値に基づいて、各粒子に含まれる元素を同定する。またX線データ解析部23は、各元素に対応するピークのカウント数に基づいて、各粒子に含有される各元素の含有量を質量%で算出する。X線データ解析部23は、各粒子に含有される各元素の含有量からなる分析結果を粒子解析装置3へ入力する。ステップS2〜S4の処理は、自動粒子解析の処理に相当する。なお、粒子解析装置3へ入力される分析結果は、各元素に対応するピークのカウント数であってもよい。
【0026】
粒子解析装置3は、X線データ解析部23から入力された分析結果をインタフェース部35で受け付け、CPU31は、受け付けた分析結果を記憶部34に記憶させる(S5)。またSEM画像処理部14は、各粒子の形状を示す形状情報及び各粒子の位置情報を粒子解析装置3へ入力し、CPU31は、分析結果と合わせて形状情報及び位置情報を記憶部34に記憶させる。
【0027】
図6は、記憶部34が記憶する分析結果の例を示す図表である。図6には、粒子数がL(Lは自然数)であり、X線データ解析部23が分析した元素の数がM(Mは自然数)である例を示している。複数の粒子の夫々は粒子番号で区別されており、各粒子番号に関連付けて、粒子の形状を示すアスペクト比及び円相当径が記録されている。また各粒子番号に関連付けて、元素1から元素Mまでの各元素が粒子に含まれる含有量が質量%の単位で記録されている。
【0028】
粒子解析装置3のCPU31は、次に、RAM32にロードしたコンピュータプログラム30に従って、記憶部34に記憶した各粒子に係る各元素の含有量に対して主成分分析を行う(S6)。主成分分析は、M種類の元素の含有量であるM個の要素を合成し、新たな成分を生成する処理である。ステップS6では、CPU31は、各元素の含有量の全粒子に亘った平均値を計算し、各元素の含有量の標準偏差を計算し、各粒子に係る各元素の含有量を、(偏差/標準偏差)に変換する。この処理により、低濃度の元素の含有量と高濃度の元素の含有量とを対等に評価することができる。CPU31は、更に、(偏差/標準偏差)に変換したL個の粒子の夫々に係るM個の元素の含有量に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子に係る第1主成分得点から第N主成分得点までの主成分得点を計算する。ここで、NはM以下の自然数である。なお、CPU31は、各元素の含有量を(偏差/標準偏差)に変換せずに主成分分析を行う処理を行ってもよい。この場合は、各元素の含有量の違いに応じた評価を行うことができる。
【0029】
図7は、主成分分析の結果の例を示す図表である。各粒子番号に関連付けて、第1主成分得点から第N主成分得点までの主成分得点が求められている。求められた主成分得点は、粒子中の元素の含有量から求められた量であるので、粒子の組成を表す成分である。ステップS6の主成分分析の目的の一つはM個の元素の含有量よりも成分を減らすことにあるので、NはMよりも小さい値にする。このように、主成分分析を行うことにより、複数の元素の含有量から、粒子の組成の違いをより顕著に表すことができる主成分を導くと共に、粒子の組成を表す独立成分の数を減らすことができる。Nの値は、予め定めてあってもよい。また、主成分として、固有値が1以上である主成分を選択する等、固有値が所定の値以上となる主成分を求めることによって、Nの値を定めても良い。また、主成分として、寄与率が所定の値以上となる主成分を求めることによって、Nの値を定めても良い。また、主成分として、第1主成分からの累積寄与率が所定の値になるまでの主成分を求めることによって、Nの値を定めてもよい。
【0030】
粒子解析装置3のCPU31は、次に、RAM32にロードしたコンピュータプログラム30に従って、L個の粒子に係るN個の主成分得点に対して、クラスター分析を行う(S7)。粒子解析装置3は、ステップS7で、クラスター分析の手法として階層型クラスター分析を使用する。階層型クラスター分析では、L個の粒子の夫々を、N個の主成分得点を夫々独立な座標軸上の座標としたN次元空間上の点として表し、初期状態では各一個の粒子が属するL個のクラスターがあるとし、N次元空間内でのクラスター間の距離を計算し、計算した距離が最も近いクラスターを一つのクラスターに併合し、クラスター数が1になるまで距離の計算及びクラスターの併合を繰り返す。本発明の粒子解析装置3では、階層型クラスター分析のアルゴリズムとしてWard法を使用する。ステップS7では、CPU31は、階層型クラスター分析を行うことにより、N次元空間内で距離が近いクラスターを順に併合する過程を記録したクラスター樹形図を生成し、生成したクラスター樹形図を記憶部34に記憶させる。
【0031】
図8は、クラスター樹形図の例を示す模式図である。図中の縦軸は粒子番号を示し、図中の横軸は、一つのクラスターに併合した二つのクラスター間の距離に対応する。クラスター樹形図中で線が互いにつながっている粒子番号は、N次元上の点で表された粒子が一つのクラスターに含まれていることを示す。一つのクラスターに含まれた複数の粒子は、クラスターに含まれない他の粒子に比べて、N個の主成分得点が互いにより近い粒子であり、また主成分得点は粒子の組成を表す成分であるので、一つのクラスターに含まれた複数の粒子は互いに組成が近い粒子である。即ち、クラスター分析により得られるクラスターは、組成が互いに近い粒子を集めることによって複数の粒子を分類したグループに相当する。例えば、クラスター樹形図上でクラスター数又はクラスター間の距離を指定すれば、夫々に一又は複数の粒子が含まれる複数のクラスターが指定され、組成に応じて複数の粒子を分類した複数のグループが得られる。従って、ステップS7のクラスター分析の処理により、試料Sに含まれる複数の粒子を組成に応じて複数のグループに分類することができる。粒子解析装置3は、例えば、クラスターを順次併合していく各段階における各クラスターに含まれる粒子の粒子番号を記録することにより、クラスター樹形図を記録する。なお、CPU31は、ステップS7で、クラスター数が所定数となった段階でクラスター分析を停止する処理を行ってもよい。ステップS7の処理が終了した後は、X線分析装置は、処理を終了する。
【0032】
(実施例)
次に、本発明を用いて実際の試料を分析した実施例を示す。試料Sとしてアルミニウム合金を用いた。より詳しくは、試料Sは、ダイカスト用アルミニウム合金として知られているAl−Si−Cu系のADC12である。このアルミニウム合金は、自動車部品、機械部品又は家庭用器具等に幅広く利用されており、Si含有量が多すぎると光沢が出にくくなり、茶色に近い色になりやすい。またCuを含有させることにより機械的性質が向上し、Pbを含有させることにより切削性が向上する。またMnを含有させることにより、Al−Si−Fe−Mnの金属間化合物が生成し、伸度、衝撃強度及び切削性が低下する。このように、アルミニウム合金は添加される元素によって特性が変化するので、元素の濃度管理は製品の品質を管理する観点から重要である。
【0033】
試料Sは、アルミニウム合金のインゴットを樹脂に包埋し、切断後、表面を研磨仕上げすることにより形成した。この試料Sに対して、本発明のX線分析装置により、分析を行った。ステップS2〜S4の自動粒子解析により、254×190μmの領域から875個の粒子が検出され、また粒子に含有される元素としてC,O,Mg,Al,Si,V,Cr,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb等の元素が検出された。この内、Alは試料Sの主成分元素であり、その他が添加元素である。検出された粒子は、アルミニウム合金内に偏在する金属間化合物であり、周囲とは異なった組成を有する部分であると考えられる。添加元素の内、含有量の多いMg,Si,V,Cr,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pbの11種類の元素の含有量を用いてステップS6の主成分分析の処理を行った。即ち、本実施例ではL=875、M=11とした。
【0034】
図9は、実施例における主成分分析の結果を示す図表である。図中には、第1主成分から第6主成分までを求めた結果を示す。本実施例では、累積寄与率が70%強となる第6主成分までを求め、変数として用いた。また図9中には、各元素の含有量が各主成分に含まれる割合を示している。第1主成分は、Cr,Mn,Feの割合が高く、Cr−Mn−Feリッチな組成を示す指標であると考えられる。また第2主成分は、Mg,Cuの割合が高く、Mg−Cuリッチな組成を示す指標であると考えられ、第3主成分は、Sn,Pbの割合が高く、Sn−Pbリッチな組成を示す指標であると考えられる。このような第1〜第6主成分に対応する各粒子の主成分得点を用いて、ステップS7のクラスター分析を行った。即ち、本実施例ではN=6とした。
【0035】
図10は、実施例におけるクラスター分析の結果を示すクラスター樹形図を示す模式図である。図中の縦軸は粒子番号を示し、横軸は一つのクラスターに併合した二つのクラスター間の距離に対応する。図中に破線で示すように、本実施例では、クラスター分析の結果から、クラスター数を9とした段階のデータを処理結果として取り出した。即ち、本発明の処理により、875個の粒子を組成の違いによって9個のグループに分類した。
【0036】
図11は、実施例における分類結果を示す図表である。各クラスターをクラスター番号で示し、各クラスターに含まれる粒子数を示している。また各クラスターに分類された粒子のアスペクト比及び円相当径の平均値を示している。更に、各クラスターに分類された粒子に含まれる各元素の含有量の平均値を示している。
【0037】
図12は、実施例におけるクラスター分析の結果を3次元分布で示す特性図である。図12は、6個の主成分得点で座標が定められる6次元上の点で表した粒子を3次元空間に投影した図である。図中のX軸、Y軸、Z軸は夫々第1主成分、第2主成分、第3主成分に対応する。各粒子を表す座標点の形状は、各粒子が分類されたクラスターに応じて異なる形状にしている。図12に示す如きクラスター及び粒子の分布図を得ることにより、各クラスターの分布状態と各粒子の分布状態とに偏りがあることが確認できる。
【0038】
図13は、実施例におけるクラスター分析の結果を2次元分布で示す特性図である。図13は、6個の主成分得点で座標が定められる6次元上の点で表した粒子を、第1主成分及び第3主成分の軸をXY軸とした平面に投影した図である。図中の横軸は第1主成分を示し、右側であるほど粒子がCr−Mn−Feリッチであることを示している。図中の縦軸は第3主成分を示し、上側であるほど粒子がSn−Pbリッチであることを示している。図中に示しように、875個の粒子が、組成の近いものを集めた9個のクラスターに分類されている。なおクラスター2は、図中では他のクラスターに埋もれてはいるが、1個の粒子からなるクラスターである。クラスター5に分類される粒子は元素組成が平均的であり、クラスター4,8に分類される粒子はSn−Pbリッチであり、クラスター6,9に分類される粒子はCr−Mn−Feリッチであり、クラスター2に分類される粒子はVリッチであり、クラスター3に分類される粒子はNiリッチであり、クラスター5に分類される粒子はSiリッチである。
【0039】
以上詳述した如く、本発明においては、試料Sに含まれる多数の粒子に含有される複数の元素の含有量に対して主成分分析を行い、主成分分析により得られた各粒子に係る複数の主成分得点を用いて階層型クラスター分析を行うことにより、試料Sに含まれる多数の粒子を組成に応じた複数のグループに分類することができる。試料Sに含まれる多数の粒子の夫々が多種類の元素を含み、粒子を分類する基準が不明である場合であっても、本発明により、一つのグループ内に組成が近い粒子を集めた複数のグループに多数の粒子を適切に分類することが可能となる。アルミニウム合金等の材料においては、本発明により、材料内に偏在する各種の化合物の材料内での分布とクラスター分布を示す特性図とを求めることができる。材料内に偏在する各種の化合物は、強度又は切削性等の材料の特性に影響する。温度条件等の材料の製造条件を変えながら本発明により材料を分析することにより、製造条件に応じた化合物の分布の変化又はクラスター分布を示す特性図の変化を知ることができ、材料に所望の特性をもたらす化合物の分布又はクラスター分布を示す特性図が得られる材料の製造条件を求めることも可能となる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、階層型クラスター分析のアルゴリズムとしてWard法を使用した形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、階層型クラスター分析のアルゴリズムとしてその他の手法を用いた形態であってもよい。また本実施の形態においては、クラスター分析の方法として階層型クラスター分析を行う形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、階層型クラスター分析以外の方法でクラスター分析を行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、各粒子における各元素の含有量に対して主成分分析を行った上でクラスター分析を行う形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、各元素の含有量に対して直接にクラスター分析を行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、各粒子における各元素の含有量に基づいて粒子を分類する処理を行う形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、各元素に対応する特性X線スペクトルのカウント数に基づいて粒子を分類する処理を行う形態であってもよい。
【0041】
また本実施の形態においては、本発明のX線分析装置はSEMにEDSが付属した形態を示したが、これに限るものではなく、本発明のX線分析装置は、SEMではなく透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にEDSが付属した形態であってもよい。この形態の場合は、X線分析装置は、試料SのTEM画像を取得し、取得したTEM画像に対して画像処理を行うことにより試料S中の粒子を検出する処理を行う。また本発明のX線分析装置は、放射線ビームとして電子線ではなくX線を用いた形態であってもよい。この形態の場合は、X線分析装置は、X線の照射手段及び光学顕微鏡を備え、光学顕微鏡を用いて試料Sを撮影した光学画像を取得し、取得した光学画像に対して画像処理を行うことにより試料S中の粒子を検出し、各粒子にX線ビームを照射することによって、本発明を実行する。また本実施の形態においては、X線分析装置としてEDSを用いた形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、X線分析装置としてWDSを用いた形態であってもよい。
【0042】
また本実施の形態においては、粒子解析装置3は、PCを用いて構成され、元素分析の結果を内部の記憶部34に記憶した上で処理を実行する形態を示したが、これに限るものではなく、粒子解析装置3は、PC外の記憶手段に元素分析の結果を記憶させ、記憶手段の記憶内容に基づいた処理を実行する形態であってもよい。また本実施の形態においては、X線データ解析部23と粒子解析装置3とが分離した構成を示したが、本発明の構成はこれに限るものではない。例えば、本発明の構成は、X線データ解析部23及び粒子解析装置3の機能を、一台のコンピュータで実現したデータ解析装置で実現する構成であってもよい。また本発明の構成は、データ解析装置に更にMCA22の機能をも一体にした構成であってもよい。また本実施の形態においては、本発明の粒子解析装置3又はデータ解析装置は、SEMを用いたX線分析装置に組み込まれた形態を示したが、本発明の構成はこれに限るものではなく、本発明の粒子解析装置3又はデータ解析装置はSEMから独立した構成であってもよい。この形態の場合は、粒子解析装置3又はデータ解析装置は、SEM及びEDSでの測定データを通信ネットワーク又は記録媒体を用いて入力され、入力された測定データを解析する処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のX線分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の粒子解析装置の構成を示すブロック図である。
【図3】X線分析装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】二値化したSEM画像の例を示す模式図である。
【図5】特性X線のスペクトルの例を示す特性図である。
【図6】記憶部が記憶する分析結果の例を示す図表である。
【図7】主成分分析の結果の例を示す図表である。
【図8】クラスター樹形図の例を示す模式図である。
【図9】実施例における主成分分析の結果を示す図表である。
【図10】実施例におけるクラスター分析の結果を示すクラスター樹形図を示す模式図である。
【図11】実施例における分類結果を示す図表である。
【図12】実施例におけるクラスター分析の結果を3次元分布で示す特性図である。
【図13】実施例におけるクラスター分析の結果を2次元分布で示す特性図である。
【符号の説明】
【0044】
11 電子銃
12 電子線走査コイル
13 電子検出器
14 SEM画像処理部
15 SEM制御部
21 X線検出器
22 MCA
23 X線データ解析部
3 粒子解析装置
30 コンピュータプログラム
31 CPU
34 記憶部
35 インタフェース部
S 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性X線を用いて元素分析を行うX線分析に関し、より詳しくは、元素分析結果の結果に基づいて、自動粒子解析により検出された試料中の粒子を適切に区分する粒子解析装置、データ解析装置、X線分析装置、粒子解析方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線分析は、電子線又はX線等の放射線を物質に照射し、物質から発生する特性X線を検出し、特性X線のスペクトルから物質に含有される元素を同定する分析手法である。また、放射線をビーム状になした放射線ビームを走査しながら試料に照射し、試料上の各点に放射線ビームが照射されたときの特性X線を夫々に分析することにより、試料に含有される元素の分布を得ることも行われる。特許文献1には、試料に対して電子線を走査することにより、試料に含まれる物質の分布を測定する技術が開示されている。
【0003】
物質に照射する放射線がX線の場合は、特性X線は蛍光X線と呼ばれ、X線分析装置は蛍光X線分析装置として提供される。また、物質に照射する放射線を電子線としたX線分析装置には、電子顕微鏡に付属し、電子線源を電子顕微鏡と共用しているものがある。またX線分析装置には、特性X線を半導体検出器で検出し、特性X線のエネルギーに比例した電流を発生させ、発生した電流を選別して測定するエネルギー分散型X線分析装置と、特性X線を分光器で分光した上で測定する波長分散型X線分析装置とがある。エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X-ray Spectrometer)の略称としてはEDS又はEDXが用いられ、波長分散型X線分析装置(Wavelength Dispersive X-ray Spectrometer)の略称としてはWDS又はWDXが用いられるが、以下では、EDS及びWDSを用いる。
【0004】
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)とEDSとを組み合わせた装置では、SEMとEDSとを組み合わせて測定を行う方法として、自動粒子解析がある。自動粒子解析では、一旦試料のSEM画像を取得し、SEM画像中で周囲と輝度が異なる粒子を検出し、各粒子に再度電子線を照射して各粒子からの特性X線を検出し、各粒子に含有される元素の定性・定量分析を行う。粒子の実体は、試料の表面に付着した微粒子、又は試料中の含有物等である。自動粒子解析の結果としては、各粒子について、粒子の形状(アスペクト比)、粒子から発生した特性X線のスペクトル、粒子に含まれる元素の種類及び含有量等の特性データが得られる。
【特許文献1】特開平8−86762号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動粒子解析では、通常、試料中に多数の粒子が検出され、各粒子に含有される元素として複数の元素が同定される。ここで、粒子の面積又は特定元素の含有量等、注目する特性データを限定すれば、特性データの値に基づいて粒子を区分して判断できるように識別表示することが可能である。しかしながら、複数の特性データの内でどの特性データに注目すれば良いのかは決定していない場合が多く、また試料が多種類の元素を含む場合は、多数の特性データが粒子間で少しずつ異なる結果が得られ、どのような基準で区分・識別表示を行えば良いかを定めることは困難である。従って、実際には、自動粒子解析の結果から試料中の粒子に対して客観的に意味のある区分・識別表示を行うことは困難である。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特性X線の検出結果に対して多変量解析を行うことにより、自動粒子解析の結果から試料中の粒子を適切に区分・識別表示することができる粒子解析装置、データ解析装置、X線分析装置、粒子解析方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る粒子解析装置は、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づいて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析装置において、複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を記憶する記憶手段と、該記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に基づいて、クラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類する分類手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る粒子解析装置は、前記記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に対して主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分得点を求める主成分分析手段を更に備え、前記分類手段は、前記主成分分析手段が求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うように構成してあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るデータ解析装置は、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線の検出結果を解析するデータ解析装置において、放射線ビームの照射によって各粒子から発生した特性X線の検出結果を解析することにより、試料に含まれる複数の粒子の夫々に含まれる複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を求める手段と、該手段が求めた前記含有量又は前記カウント数に基づいて複数の粒子を解析する処理を行う本発明に係る粒子解析装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るX線分析装置は、試料に放射線を照射することによって試料から発生する特性X線を利用して試料を分析するX線分析装置において、試料に放射線ビームを照射する照射手段と、試料の画像を取得する手段と、該手段が取得した画像中で周囲と輝度が異なる閉鎖領域に対応する複数の粒子を試料中から検出する手段と、該手段が検出した各粒子に対して、前記照射手段から放射線ビームを照射させる手段と、放射線ビームの照射によって各粒子から発生する特性X線を検出する手段と、該手段による特性X線の検出結果を解析する本発明に係るデータ解析装置とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る粒子解析方法は、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づき、記憶部及び演算部を備えたコンピュータを用いて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析方法において、複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量を記憶部で記憶し、演算部で、記憶部が記憶する複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求め、演算部で、求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析して得られた各粒子における複数の元素の含有量に基づき、試料に含まれる複数の粒子を解析する処理を実行させるコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求めるステップと、求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類するステップとを含む処理を実行させることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を検出し、特性X線を分析することによって各粒子に含有される複数の元素の含有量、又は各元素に対応する特性X線のカウント数を求め、元素の含有量又は元素に対応するカウント数に基づいたクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類する。これにより、注目する特性データや明確な基準がなくとも試料中の複数の粒子を分類することができる。
【0014】
また本発明においては、試料中の複数の粒子に含有される複数の元素の含有量、又は各元素に対応する特性X線のカウント数に対して、主成分分析を行い、主成分分析により得られた各粒子に係る複数の主成分得点を用いてクラスター分析を行う。主成分分析を行うことにより、クラスター分析で利用するための成分として、各元素の含有量よりも粒子の組成の違いを顕著に表すことができる主成分を導くと共に、独立成分の数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、試料中の複数の粒子に含有される複数の元素の含有量に基づいたクラスター分析を行うことにより、試料に含まれる多数の粒子の夫々が多種類の元素を含み、粒子を区分・識別表示する基準が不明である場合であっても、一つのグループ内に組成が近い粒子を集めた複数のグループに多数の粒子を適切に分類することが可能となる。アルミニウム合金等の材料においては、本発明により、材料内に偏在する各種の化合物の分布、又はクラスター分析の結果を示す特性図を求めることが可能となり、材料の製造条件を変えながら本発明により材料を分析することにより、適切な製造条件を求めることも可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明のX線分析装置の構成を示すブロック図である。本発明のX線分析装置は、SEMとEDSとを組み合わせた装置である。X線分析装置は、平面状の試料Sに電子線(放射線ビーム)を照射する電子銃(照射手段)11と、電子線の方向を定める電子線走査コイル12と、電子銃11及び電子線走査コイル12の動作を制御するSEM制御部15とを備えている。SEM制御部15からの制御信号に従って、電子銃11が電子線を放出し、電子線走査コイル12が電子線の方向を順次変更することにより、電子線は試料S上を走査しながら試料Sに照射される。X線分析装置は、試料Sに電子線が照射されることによって発生する反射電子又は二次電子を検出する電子検出器13を備え、電子検出器13はSEM画像を生成するSEM画像処理部14に接続されている。電子線が試料Sを走査することに同期して、電子検出器13は、検出した電子の強度を示す信号をSEM画像処理部14へ順次入力する。SEM画像処理部14は、順次入力された信号に基づいて、試料S上の点に対応する画素の輝度を電子検出器13が検出した電子の強度に応じた値とした試料SのSEM画像を生成する処理を行う。SEM画像処理部14は、液晶ディスプレイ等の表示部を備えており、生成したSEM画像を表示部に表示することができる。またSEM画像処理部14は、SEM画像に対して画像処理を行うことにより、試料Sに含まれる粒子を検出する処理を行い、そして、SEM制御部15は、検出した各粒子に電子線を照射させるための処理を行う。
【0017】
X線分析装置は、試料Sに電子線が照射されることによって試料Sから発生する特性X線を検出するX線検出器21を備え、X線検出器21はマルチチャネルアナライザ(MCA)22に接続されている。X線検出器21は、検出素子としてSi素子等の半導体検出素子を用いた構成となっており、検出した特性X線のエネルギーに比例した電流値のパルス電流を発生し、発生したパルス電流をMCA22へ入力する。MCA22は、X線検出器21からのパルス電流を電流値に応じて選別し、各電流値のパルス電流をカウントする。このMCA22の処理により、特性X線のエネルギーとカウント数との関係、即ち特性X線のスペクトルが得られる。MCA22は、X線データ解析部23に接続されており、特性X線の検出結果である特性X線のスペクトルをX線データ解析部23へ入力する。X線データ解析部23は、MCA22から入力された特性X線のスペクトルに基づいて、特性X線を発生した元素の定性・定量分析を行う。X線分析装置は、更に本発明の粒子解析装置3を備え、粒子解析装置3は、SEM画像処理部14及びX線データ解析部23に接続されている。粒子解析装置3及びX線データ解析部23の組み合わせは、本発明のデータ解析装置に対応する。
【0018】
図2は、本発明の粒子解析装置3の構成を示すブロック図である。粒子解析装置3は、パーソナルコンピュータ(PC)等の汎用コンピュータを用いて構成されており、演算を行うCPU(演算部)31と、演算に伴って発生する一時的な情報を記憶するRAM32と、光ディスク等の記録媒体Dから情報を読み取るCD−ROMドライブ等のドライブ部33と、ハードディスク等の記憶部34とを備えている。CPU31は、記録媒体Dから本発明のコンピュータプログラム30をドライブ部33に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム30を記憶部34に記憶させる。CPU31は、必要に応じてコンピュータプログラム30を記憶部34からRAM32へロードし、ロードしたコンピュータプログラム30に従って粒子解析装置3に必要な処理を実行する。また粒子解析装置3は、X線データ解析部23及びSEM画像処理部14に接続されたインタフェース部35を備えている。更に粒子解析装置3は、使用者が操作することによる各種の処理指示等の情報が入力されるキーボード又はポインティングデバイス等の入力部36と、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ等の表示部37とを備えている。
【0019】
なお、コンピュータプログラム30は、図示しない通信ネットワークを介して粒子解析装置3に接続された図示しない外部のサーバ装置から粒子解析装置3へダウンロードされて記憶部34に記憶される形態であってもよい。また粒子解析装置3は、外部からコンピュータプログラム30を受け付けるのではなく、コンピュータプログラム30を記録したROM等の記録手段を内部に備えた形態であってもよい。
【0020】
次に、以上の構成でなるX線分析装置が行う処理を説明する。図3は、X線分析装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。まずX線分析装置は、試料SのSEM画像を取得する処理を行う(S1)。ステップS1では、SEM制御部15が電子銃11及び電子線走査コイル12の動作を制御することにより、試料Sを走査しながら電子線を試料Sに照射し、電子検出器13は、試料Sからの反射電子又は二次電子を検出し、検出結果をSEM画像処理部14へ入力し、SEM画像処理部14は、電子検出器13からの検出結果に基づいて、2次元状のSEM画像を生成する。
【0021】
SEM画像処理部14は、次に、生成したSEM画像に基づいて、試料Sに含まれる複数の粒子を検出する処理を行う(S2)。ステップS2では、SEM画像処理部14は、所定の閾値を境にしてSEM画像を二値化し、二値化したSEM画像中で輝度が閾値以上である画素が集積した閉鎖領域を抽出することにより、閉鎖領域に対応する試料S上の部分である粒子を検出する。なお、SEM画像中の輝度に所定の範囲を指定し、輝度が当該所定の範囲内である画素が集積した閉鎖領域を抽出することにより、閉鎖領域に対応する試料S上の部分である粒子を検出するようにしてもよい。更に、SEM画像処理部14は、検出した複数の粒子の夫々に粒子番号を付加し、各粒子の形状を測定し、各粒子の形状及び位置情報を粒子番号に関連付けて記憶する。
【0022】
図4は、二値化したSEM画像の例を示す模式図である。図4中でPで示した部分が粒子であり、SEM画像中の他の部分よりも高輝度の画素が集積した部分に対応する。粒子の実体は、試料Sの表面に付着した微粒子、試料Sに含まれる不純物が凝集したもの、又は試料S中の母材と異なる相の部分等である。これらの粒子は、SEM画像中で周囲の母材よりも高輝度となり、高輝度の閉鎖領域を抽出することにより、粒子を検出することができる。なお、二値化を行うための輝度の閾値は、予めSEM画像処理部14が記憶している。SEM画像処理部14は、使用者から受け付けた指示に応じて閾値を変更することができる形態であってもよい。またSEM画像処理部14は、周囲の母材よりも輝度が低い閉鎖領域に対応する粒子を検出する形態であってもよい。
【0023】
X線分析装置は、次に、検出した複数の粒子の夫々に電子線を照射し、各粒子から発生する特性X線を検出する(S3)。ステップS3では、SEM画像処理部14は検出した各粒子の試料S上での位置を示す位置情報をSEM制御部15へ入力し、SEM制御部15は、位置情報に従って電子銃11及び電子線走査コイル12の動作を制御することにより、試料Sに含まれる複数の粒子の夫々に順に電子線を照射させる。電子線の照射の際、SEM制御部15は、電子線で粒子内を走査してもよく、粒子内の代表的な点に電子線を照射してもよい。X線検出器21は、電子線の照射によって各粒子から発生する特性X線を検出し、MCA22は、各粒子から発生した特性X線のスペクトルをX線データ解析部23へ入力する。
【0024】
図5は、特性X線のスペクトルの例を示す特性図である。図中の横軸はX線検出器21が検出した特性X線のエネルギーを示す。図中の縦軸はカウント数を示し、X線検出器21が検出した各エネルギーの特性X線の強度に対応する。スペクトルに含まれるピークに対応するエネルギー値は、特性X線を放出した元素に固有の値であり、ピークに対応するエネルギー値を求めることにより、粒子に含まれる元素を同定することができる。
【0025】
X線データ解析部23は、次に、各粒子から発生した特性X線のスペクトルを解析することによって、各粒子に含まれる元素の同定、及び各元素の含有量の算出を行う元素分析を実行する(S4)。X線データ解析部23は、元素毎に特性X線の標準データを記録したデータベースを予め記憶している。ステップS4では、X線データ解析部23は、データベース中の特性X線の標準データと、得られた特性X線のスペクトルとを比較し、特性X線のスペクトルに含まれるピークに対応するエネルギー値に基づいて、各粒子に含まれる元素を同定する。またX線データ解析部23は、各元素に対応するピークのカウント数に基づいて、各粒子に含有される各元素の含有量を質量%で算出する。X線データ解析部23は、各粒子に含有される各元素の含有量からなる分析結果を粒子解析装置3へ入力する。ステップS2〜S4の処理は、自動粒子解析の処理に相当する。なお、粒子解析装置3へ入力される分析結果は、各元素に対応するピークのカウント数であってもよい。
【0026】
粒子解析装置3は、X線データ解析部23から入力された分析結果をインタフェース部35で受け付け、CPU31は、受け付けた分析結果を記憶部34に記憶させる(S5)。またSEM画像処理部14は、各粒子の形状を示す形状情報及び各粒子の位置情報を粒子解析装置3へ入力し、CPU31は、分析結果と合わせて形状情報及び位置情報を記憶部34に記憶させる。
【0027】
図6は、記憶部34が記憶する分析結果の例を示す図表である。図6には、粒子数がL(Lは自然数)であり、X線データ解析部23が分析した元素の数がM(Mは自然数)である例を示している。複数の粒子の夫々は粒子番号で区別されており、各粒子番号に関連付けて、粒子の形状を示すアスペクト比及び円相当径が記録されている。また各粒子番号に関連付けて、元素1から元素Mまでの各元素が粒子に含まれる含有量が質量%の単位で記録されている。
【0028】
粒子解析装置3のCPU31は、次に、RAM32にロードしたコンピュータプログラム30に従って、記憶部34に記憶した各粒子に係る各元素の含有量に対して主成分分析を行う(S6)。主成分分析は、M種類の元素の含有量であるM個の要素を合成し、新たな成分を生成する処理である。ステップS6では、CPU31は、各元素の含有量の全粒子に亘った平均値を計算し、各元素の含有量の標準偏差を計算し、各粒子に係る各元素の含有量を、(偏差/標準偏差)に変換する。この処理により、低濃度の元素の含有量と高濃度の元素の含有量とを対等に評価することができる。CPU31は、更に、(偏差/標準偏差)に変換したL個の粒子の夫々に係るM個の元素の含有量に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子に係る第1主成分得点から第N主成分得点までの主成分得点を計算する。ここで、NはM以下の自然数である。なお、CPU31は、各元素の含有量を(偏差/標準偏差)に変換せずに主成分分析を行う処理を行ってもよい。この場合は、各元素の含有量の違いに応じた評価を行うことができる。
【0029】
図7は、主成分分析の結果の例を示す図表である。各粒子番号に関連付けて、第1主成分得点から第N主成分得点までの主成分得点が求められている。求められた主成分得点は、粒子中の元素の含有量から求められた量であるので、粒子の組成を表す成分である。ステップS6の主成分分析の目的の一つはM個の元素の含有量よりも成分を減らすことにあるので、NはMよりも小さい値にする。このように、主成分分析を行うことにより、複数の元素の含有量から、粒子の組成の違いをより顕著に表すことができる主成分を導くと共に、粒子の組成を表す独立成分の数を減らすことができる。Nの値は、予め定めてあってもよい。また、主成分として、固有値が1以上である主成分を選択する等、固有値が所定の値以上となる主成分を求めることによって、Nの値を定めても良い。また、主成分として、寄与率が所定の値以上となる主成分を求めることによって、Nの値を定めても良い。また、主成分として、第1主成分からの累積寄与率が所定の値になるまでの主成分を求めることによって、Nの値を定めてもよい。
【0030】
粒子解析装置3のCPU31は、次に、RAM32にロードしたコンピュータプログラム30に従って、L個の粒子に係るN個の主成分得点に対して、クラスター分析を行う(S7)。粒子解析装置3は、ステップS7で、クラスター分析の手法として階層型クラスター分析を使用する。階層型クラスター分析では、L個の粒子の夫々を、N個の主成分得点を夫々独立な座標軸上の座標としたN次元空間上の点として表し、初期状態では各一個の粒子が属するL個のクラスターがあるとし、N次元空間内でのクラスター間の距離を計算し、計算した距離が最も近いクラスターを一つのクラスターに併合し、クラスター数が1になるまで距離の計算及びクラスターの併合を繰り返す。本発明の粒子解析装置3では、階層型クラスター分析のアルゴリズムとしてWard法を使用する。ステップS7では、CPU31は、階層型クラスター分析を行うことにより、N次元空間内で距離が近いクラスターを順に併合する過程を記録したクラスター樹形図を生成し、生成したクラスター樹形図を記憶部34に記憶させる。
【0031】
図8は、クラスター樹形図の例を示す模式図である。図中の縦軸は粒子番号を示し、図中の横軸は、一つのクラスターに併合した二つのクラスター間の距離に対応する。クラスター樹形図中で線が互いにつながっている粒子番号は、N次元上の点で表された粒子が一つのクラスターに含まれていることを示す。一つのクラスターに含まれた複数の粒子は、クラスターに含まれない他の粒子に比べて、N個の主成分得点が互いにより近い粒子であり、また主成分得点は粒子の組成を表す成分であるので、一つのクラスターに含まれた複数の粒子は互いに組成が近い粒子である。即ち、クラスター分析により得られるクラスターは、組成が互いに近い粒子を集めることによって複数の粒子を分類したグループに相当する。例えば、クラスター樹形図上でクラスター数又はクラスター間の距離を指定すれば、夫々に一又は複数の粒子が含まれる複数のクラスターが指定され、組成に応じて複数の粒子を分類した複数のグループが得られる。従って、ステップS7のクラスター分析の処理により、試料Sに含まれる複数の粒子を組成に応じて複数のグループに分類することができる。粒子解析装置3は、例えば、クラスターを順次併合していく各段階における各クラスターに含まれる粒子の粒子番号を記録することにより、クラスター樹形図を記録する。なお、CPU31は、ステップS7で、クラスター数が所定数となった段階でクラスター分析を停止する処理を行ってもよい。ステップS7の処理が終了した後は、X線分析装置は、処理を終了する。
【0032】
(実施例)
次に、本発明を用いて実際の試料を分析した実施例を示す。試料Sとしてアルミニウム合金を用いた。より詳しくは、試料Sは、ダイカスト用アルミニウム合金として知られているAl−Si−Cu系のADC12である。このアルミニウム合金は、自動車部品、機械部品又は家庭用器具等に幅広く利用されており、Si含有量が多すぎると光沢が出にくくなり、茶色に近い色になりやすい。またCuを含有させることにより機械的性質が向上し、Pbを含有させることにより切削性が向上する。またMnを含有させることにより、Al−Si−Fe−Mnの金属間化合物が生成し、伸度、衝撃強度及び切削性が低下する。このように、アルミニウム合金は添加される元素によって特性が変化するので、元素の濃度管理は製品の品質を管理する観点から重要である。
【0033】
試料Sは、アルミニウム合金のインゴットを樹脂に包埋し、切断後、表面を研磨仕上げすることにより形成した。この試料Sに対して、本発明のX線分析装置により、分析を行った。ステップS2〜S4の自動粒子解析により、254×190μmの領域から875個の粒子が検出され、また粒子に含有される元素としてC,O,Mg,Al,Si,V,Cr,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pb等の元素が検出された。この内、Alは試料Sの主成分元素であり、その他が添加元素である。検出された粒子は、アルミニウム合金内に偏在する金属間化合物であり、周囲とは異なった組成を有する部分であると考えられる。添加元素の内、含有量の多いMg,Si,V,Cr,Mn,Fe,Ni,Cu,Zn,Sn,Pbの11種類の元素の含有量を用いてステップS6の主成分分析の処理を行った。即ち、本実施例ではL=875、M=11とした。
【0034】
図9は、実施例における主成分分析の結果を示す図表である。図中には、第1主成分から第6主成分までを求めた結果を示す。本実施例では、累積寄与率が70%強となる第6主成分までを求め、変数として用いた。また図9中には、各元素の含有量が各主成分に含まれる割合を示している。第1主成分は、Cr,Mn,Feの割合が高く、Cr−Mn−Feリッチな組成を示す指標であると考えられる。また第2主成分は、Mg,Cuの割合が高く、Mg−Cuリッチな組成を示す指標であると考えられ、第3主成分は、Sn,Pbの割合が高く、Sn−Pbリッチな組成を示す指標であると考えられる。このような第1〜第6主成分に対応する各粒子の主成分得点を用いて、ステップS7のクラスター分析を行った。即ち、本実施例ではN=6とした。
【0035】
図10は、実施例におけるクラスター分析の結果を示すクラスター樹形図を示す模式図である。図中の縦軸は粒子番号を示し、横軸は一つのクラスターに併合した二つのクラスター間の距離に対応する。図中に破線で示すように、本実施例では、クラスター分析の結果から、クラスター数を9とした段階のデータを処理結果として取り出した。即ち、本発明の処理により、875個の粒子を組成の違いによって9個のグループに分類した。
【0036】
図11は、実施例における分類結果を示す図表である。各クラスターをクラスター番号で示し、各クラスターに含まれる粒子数を示している。また各クラスターに分類された粒子のアスペクト比及び円相当径の平均値を示している。更に、各クラスターに分類された粒子に含まれる各元素の含有量の平均値を示している。
【0037】
図12は、実施例におけるクラスター分析の結果を3次元分布で示す特性図である。図12は、6個の主成分得点で座標が定められる6次元上の点で表した粒子を3次元空間に投影した図である。図中のX軸、Y軸、Z軸は夫々第1主成分、第2主成分、第3主成分に対応する。各粒子を表す座標点の形状は、各粒子が分類されたクラスターに応じて異なる形状にしている。図12に示す如きクラスター及び粒子の分布図を得ることにより、各クラスターの分布状態と各粒子の分布状態とに偏りがあることが確認できる。
【0038】
図13は、実施例におけるクラスター分析の結果を2次元分布で示す特性図である。図13は、6個の主成分得点で座標が定められる6次元上の点で表した粒子を、第1主成分及び第3主成分の軸をXY軸とした平面に投影した図である。図中の横軸は第1主成分を示し、右側であるほど粒子がCr−Mn−Feリッチであることを示している。図中の縦軸は第3主成分を示し、上側であるほど粒子がSn−Pbリッチであることを示している。図中に示しように、875個の粒子が、組成の近いものを集めた9個のクラスターに分類されている。なおクラスター2は、図中では他のクラスターに埋もれてはいるが、1個の粒子からなるクラスターである。クラスター5に分類される粒子は元素組成が平均的であり、クラスター4,8に分類される粒子はSn−Pbリッチであり、クラスター6,9に分類される粒子はCr−Mn−Feリッチであり、クラスター2に分類される粒子はVリッチであり、クラスター3に分類される粒子はNiリッチであり、クラスター5に分類される粒子はSiリッチである。
【0039】
以上詳述した如く、本発明においては、試料Sに含まれる多数の粒子に含有される複数の元素の含有量に対して主成分分析を行い、主成分分析により得られた各粒子に係る複数の主成分得点を用いて階層型クラスター分析を行うことにより、試料Sに含まれる多数の粒子を組成に応じた複数のグループに分類することができる。試料Sに含まれる多数の粒子の夫々が多種類の元素を含み、粒子を分類する基準が不明である場合であっても、本発明により、一つのグループ内に組成が近い粒子を集めた複数のグループに多数の粒子を適切に分類することが可能となる。アルミニウム合金等の材料においては、本発明により、材料内に偏在する各種の化合物の材料内での分布とクラスター分布を示す特性図とを求めることができる。材料内に偏在する各種の化合物は、強度又は切削性等の材料の特性に影響する。温度条件等の材料の製造条件を変えながら本発明により材料を分析することにより、製造条件に応じた化合物の分布の変化又はクラスター分布を示す特性図の変化を知ることができ、材料に所望の特性をもたらす化合物の分布又はクラスター分布を示す特性図が得られる材料の製造条件を求めることも可能となる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、階層型クラスター分析のアルゴリズムとしてWard法を使用した形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、階層型クラスター分析のアルゴリズムとしてその他の手法を用いた形態であってもよい。また本実施の形態においては、クラスター分析の方法として階層型クラスター分析を行う形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、階層型クラスター分析以外の方法でクラスター分析を行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、各粒子における各元素の含有量に対して主成分分析を行った上でクラスター分析を行う形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、各元素の含有量に対して直接にクラスター分析を行う形態であってもよい。また本実施の形態においては、各粒子における各元素の含有量に基づいて粒子を分類する処理を行う形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、各元素に対応する特性X線スペクトルのカウント数に基づいて粒子を分類する処理を行う形態であってもよい。
【0041】
また本実施の形態においては、本発明のX線分析装置はSEMにEDSが付属した形態を示したが、これに限るものではなく、本発明のX線分析装置は、SEMではなく透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にEDSが付属した形態であってもよい。この形態の場合は、X線分析装置は、試料SのTEM画像を取得し、取得したTEM画像に対して画像処理を行うことにより試料S中の粒子を検出する処理を行う。また本発明のX線分析装置は、放射線ビームとして電子線ではなくX線を用いた形態であってもよい。この形態の場合は、X線分析装置は、X線の照射手段及び光学顕微鏡を備え、光学顕微鏡を用いて試料Sを撮影した光学画像を取得し、取得した光学画像に対して画像処理を行うことにより試料S中の粒子を検出し、各粒子にX線ビームを照射することによって、本発明を実行する。また本実施の形態においては、X線分析装置としてEDSを用いた形態を示したが、本発明は、これに限るものではなく、X線分析装置としてWDSを用いた形態であってもよい。
【0042】
また本実施の形態においては、粒子解析装置3は、PCを用いて構成され、元素分析の結果を内部の記憶部34に記憶した上で処理を実行する形態を示したが、これに限るものではなく、粒子解析装置3は、PC外の記憶手段に元素分析の結果を記憶させ、記憶手段の記憶内容に基づいた処理を実行する形態であってもよい。また本実施の形態においては、X線データ解析部23と粒子解析装置3とが分離した構成を示したが、本発明の構成はこれに限るものではない。例えば、本発明の構成は、X線データ解析部23及び粒子解析装置3の機能を、一台のコンピュータで実現したデータ解析装置で実現する構成であってもよい。また本発明の構成は、データ解析装置に更にMCA22の機能をも一体にした構成であってもよい。また本実施の形態においては、本発明の粒子解析装置3又はデータ解析装置は、SEMを用いたX線分析装置に組み込まれた形態を示したが、本発明の構成はこれに限るものではなく、本発明の粒子解析装置3又はデータ解析装置はSEMから独立した構成であってもよい。この形態の場合は、粒子解析装置3又はデータ解析装置は、SEM及びEDSでの測定データを通信ネットワーク又は記録媒体を用いて入力され、入力された測定データを解析する処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のX線分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の粒子解析装置の構成を示すブロック図である。
【図3】X線分析装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】二値化したSEM画像の例を示す模式図である。
【図5】特性X線のスペクトルの例を示す特性図である。
【図6】記憶部が記憶する分析結果の例を示す図表である。
【図7】主成分分析の結果の例を示す図表である。
【図8】クラスター樹形図の例を示す模式図である。
【図9】実施例における主成分分析の結果を示す図表である。
【図10】実施例におけるクラスター分析の結果を示すクラスター樹形図を示す模式図である。
【図11】実施例における分類結果を示す図表である。
【図12】実施例におけるクラスター分析の結果を3次元分布で示す特性図である。
【図13】実施例におけるクラスター分析の結果を2次元分布で示す特性図である。
【符号の説明】
【0044】
11 電子銃
12 電子線走査コイル
13 電子検出器
14 SEM画像処理部
15 SEM制御部
21 X線検出器
22 MCA
23 X線データ解析部
3 粒子解析装置
30 コンピュータプログラム
31 CPU
34 記憶部
35 インタフェース部
S 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づいて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析装置において、
複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を記憶する記憶手段と、
該記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に基づいて、クラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類する分類手段と
を備えることを特徴とする粒子解析装置。
【請求項2】
前記記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に対して主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分得点を求める主成分分析手段を更に備え、
前記分類手段は、前記主成分分析手段が求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うように構成してあること
を特徴とする請求項1に記載の粒子解析装置。
【請求項3】
試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線の検出結果を解析するデータ解析装置において、
放射線ビームの照射によって各粒子から発生した特性X線の検出結果を解析することにより、試料に含まれる複数の粒子の夫々に含まれる複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を求める手段と、
該手段が求めた前記含有量又は前記カウント数に基づいて複数の粒子を解析する処理を行う請求項1又は2に記載の粒子解析装置と
を備えることを特徴とするデータ解析装置。
【請求項4】
試料に放射線を照射することによって試料から発生する特性X線を利用して試料を分析するX線分析装置において、
試料に放射線ビームを照射する照射手段と、
試料の画像を取得する手段と、
該手段が取得した画像中で周囲と輝度が異なる閉鎖領域に対応する複数の粒子を試料中から検出する手段と、
該手段が検出した各粒子に対して、前記照射手段から放射線ビームを照射させる手段と、
放射線ビームの照射によって各粒子から発生する特性X線を検出する手段と、
該手段による特性X線の検出結果を解析する請求項3に記載のデータ解析装置と
を備えることを特徴とするX線分析装置。
【請求項5】
試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づき、記憶部及び演算部を備えたコンピュータを用いて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析方法において、
複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量を記憶部で記憶し、
演算部で、記憶部が記憶する複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求め、
演算部で、求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類すること
を特徴とする粒子解析方法。
【請求項6】
コンピュータに、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析して得られた各粒子における複数の元素の含有量に基づき、試料に含まれる複数の粒子を解析する処理を実行させるコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータに、
複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求めるステップと、
求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類するステップと
を含む処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づいて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析装置において、
複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を記憶する記憶手段と、
該記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に基づいて、クラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類する分類手段と
を備えることを特徴とする粒子解析装置。
【請求項2】
前記記憶手段が記憶する複数の粒子の夫々に係る前記含有量又は前記カウント数に対して主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分得点を求める主成分分析手段を更に備え、
前記分類手段は、前記主成分分析手段が求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うように構成してあること
を特徴とする請求項1に記載の粒子解析装置。
【請求項3】
試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線の検出結果を解析するデータ解析装置において、
放射線ビームの照射によって各粒子から発生した特性X線の検出結果を解析することにより、試料に含まれる複数の粒子の夫々に含まれる複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数を求める手段と、
該手段が求めた前記含有量又は前記カウント数に基づいて複数の粒子を解析する処理を行う請求項1又は2に記載の粒子解析装置と
を備えることを特徴とするデータ解析装置。
【請求項4】
試料に放射線を照射することによって試料から発生する特性X線を利用して試料を分析するX線分析装置において、
試料に放射線ビームを照射する照射手段と、
試料の画像を取得する手段と、
該手段が取得した画像中で周囲と輝度が異なる閉鎖領域に対応する複数の粒子を試料中から検出する手段と、
該手段が検出した各粒子に対して、前記照射手段から放射線ビームを照射させる手段と、
放射線ビームの照射によって各粒子から発生する特性X線を検出する手段と、
該手段による特性X線の検出結果を解析する請求項3に記載のデータ解析装置と
を備えることを特徴とするX線分析装置。
【請求項5】
試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析した結果に基づき、記憶部及び演算部を備えたコンピュータを用いて、試料に含まれる複数の粒子を解析する粒子解析方法において、
複数の粒子の夫々について、特性X線を分析することによって得られた複数の元素の含有量を記憶部で記憶し、
演算部で、記憶部が記憶する複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求め、
演算部で、求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類すること
を特徴とする粒子解析方法。
【請求項6】
コンピュータに、試料に含まれる複数の粒子の夫々に放射線ビームを照射することによって各粒子から発生する特性X線を分析して得られた各粒子における複数の元素の含有量に基づき、試料に含まれる複数の粒子を解析する処理を実行させるコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータに、
複数の粒子の夫々に係る複数の元素の含有量、又は複数の元素の夫々に対応する特性X線スペクトルのカウント数に対して、主成分分析を行うことにより、各粒子について複数の主成分の主成分得点を求めるステップと、
求めた複数の粒子の夫々に係る複数の主成分得点に対してクラスター分析を行うことにより、複数の粒子を複数のグループに分類するステップと
を含む処理を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−60389(P2010−60389A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225288(P2008−225288)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
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