説明

粒度分布の狭いトナーの製造方法

本発明の乳化凝集によるトナーの製造方法では、セルロース誘導体を添加して反応初期段階の粘度を調節することで、トナー粒子の粒度分布を改善させてトナー使用による環境汚染を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化凝集によるトナーの製造方法に係り、さらに詳細には、環境にやさしくて粒度分布の狭いトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にトナーは、結着樹脂として作用する熱可塑性樹脂に着色剤、帯電制御剤、または離型剤などを添加することで製造される。また、トナーに流動性を付与するか、帯電制御またはクリーニング性などの物性を向上させるために、シリカや酸化チタンなどの無機金属微粉末が外添剤としてトナーに添加されうる。このようなトナーの製造方法には、粉砕法などの物理的な方法と懸濁重合法及び乳化凝集法などの化学的な方法がある。
【0003】
このうち、乳化凝集法(米国登録特許第5,916,725号、第6,268,103号など参照)は、乳化重合反応を通じて微細エマルション樹脂粒子組成物を製造した後、前記組成物を別途の分散液で顔料などと共に凝集させる過程で構成される。かかる方法は、前記粉砕法における高コスト、広い粒度分布などの問題点を改善し、凝集条件を調節することでトナー粒子を球形に作ることができるという利点がある。
【0004】
乳化凝集トナーの品質は、使われる原料、すなわち、ラテックス分散液、着色剤分散液及びワックス分散液の安定性により影響される。前記各分散液は、反応初期混合過程で不安定になり得、分散液混合時の時間、温度またはせん断力により相分離が起きることがある。各分散液が混合された混合液が不安定な場合、粒径がさらに大きくて粒度分布がさらに広く、かつ沈降率が相対的にさらに高くて分子量分布がさらに広いトナーが製造される。このようなトナーは画像定着性及び品質が劣って消費者が好まず、トナーの粒度分布が広くて最終製品として使われうるトナーの生産量が製造過程で減少して、製造収率が低くなるという問題も共に発生する。
【0005】
一方、最近、密閉された空間である事務室と室内での生活時間が増加するにつれて、室内環境の重要性が益々大きくなっている。室内空気の汚染が大気汚染よりさらに深刻な理由は、大気汚染は自然的な希釈率が大きく、気候の変化と共に自然浄化が可能であり、最近は大気汚染に対する社会的認識の増加及び各種規制によって抑制されているが、室内空気は限定された空間の中で人工的な設備を通じて汚れた空気を循環させ続けるか、またはその設備自体がないことにより、密閉空間で長時間生活する場合、各種汚染物質に無防備状態で露出されうるため、さらに深刻である。したがって、地下施設空間、事務室、病院などの室内環境での汚染が深刻な社会的問題として台頭されており、特定環境での室内環境基準の設定が活発に議論されつつある。
【0006】
また、最近、技術の発達でレーザープリンタの値段が安くなり、これによって家庭、事務室、病院などの場所でレーザープリンタの使用が増加する勢いである。従来の乳化凝集トナーは合成ポリマーをラテックス樹脂として使用するため、レーザープリンタで画像現像時、高熱によって合成ポリマーから多様な種類の揮発性有機化合物(VOC)が発生する。これは室内空気汚染をさらに深刻にさせる原因になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、乳化凝集によるトナーの製造方法において、揮発性有機化合物の発生を抑制して原料分散液の安定性を高めて、粒度分布が狭くて環境にやさしいトナーを製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような課題を解決するために、本発明は、ラテックス分散液、着色剤分散液、ワックス分散液、及びセルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体とのうち1種以上の水溶液を混合する段階と、その混合物に凝集剤を添加して凝集させてトナー粒子を形成する段階と、前記トナー粒子を融合する段階と、を含むトナーの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の一具現例によれば、前記セルロース誘導体は、下記化学式1の化合物である。
[化1]

【0010】
前記式で、R、R、及びRはそれぞれ独立してヒドロキシ基、炭素数1ないし10の置換もしくは非置換アルキル基、炭素数2ないし10の置換もしくは非置換アシル基、または炭素数6ないし10の置換もしくは非置換アリール基であり、ただし、R、R、及びRがいずれもヒドロキシ基である場合は除外され;nは、2ないし2,000,000の整数である。
【0011】
本発明の他の具現例によれば、前記セルロース誘導体は、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース、(ヒドロキシエチル)メチルセルロース及びベンジルセルロースからなる群から選択されたいずれか一つである。
【0012】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記シクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンである。
【0013】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記セルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体との総使用量は、総反応混合物中0.5ないし10重量%である。
【0014】
本発明の他の具現例によれば、前記セルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体との総使用量は、ラテックス分散液中ラテックス樹脂100重量部に対して、0.5ないし10重量部である。
【0015】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記トナーは、コアシェル構造を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい具現例について詳細に説明する。
【0017】
本発明によるトナーの製造方法は、ラテックス分散液、着色剤分散液、ワックス分散液、及びセルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体とのうち1種以上の水溶液を混合する段階;その混合物に凝集剤を添加して凝集させてトナー粒子を形成する段階;及び前記トナー粒子を融合する段階を含むことを特徴とする。
【0018】
前記セルロース誘導体及びシクロデキストリン誘導体のうち1種以上の水溶液を反応物として使用することで、ラテックス分散液、着色剤分散液及びワックス分散液の混合時に分散液の安定性を高め、これにより製造されるトナー粒子の粒度分布が狭くなる。それだけでなく、トナー製造時に揮発性有機化合物の総含有量(Total Volatile Organic Compounds;TVOC)を低減させることができる。
【0019】
前記セルロース誘導体は、セルロース化合物の1次ヒドロキシ基と2次ヒドロキシ基のうち1個以上を、エステル化、エーテル化、酸化、ハロゲン化またはグラフト反応を通じて製造できる。
【0020】
前記セルロース誘導体としては、下記化学式1の化合物を含むことができる。
[化1]

【0021】
前記式で、R、R、及びRは、それぞれ独立してヒドロキシ基、炭素数1ないし10の置換もしくは非置換アルキル基、炭素数2ないし10の置換もしくは非置換アシル基、または炭素数6ないし10の置換もしくは非置換アリール基であり、ただし、R、R、及びRがいずれもヒドロキシ基である場合は除外され;nは、2ないし2,000,000の整数である。
【0022】
さらに具体的には、前記セルロース誘導体は、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース、(ヒドロキシエチル)メチルセルロース及びベンジルセルロースからなる群から選択されたいずれか一つでありうる。
【0023】
前記シクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、またはγ−シクロデキストリンでありうる。
【0024】
前記セルロース誘導体またはシクロデキストリン誘導体は、反応物の混合時に粘度を高めて分散液を安定化させることで、粒度分布の狭いトナー粒子を製造できるようになる。それだけでなく揮発性有機化合物(VOC)を吸着して揮発性有機化合物(TVOC)の総含有量を低減させて、室内空気の汚染を低減させることができる。
【0025】
セルロース誘導体水溶液またはシクロデキストリン誘導体を反応混合物に含めることで、反応混合物全体の粘度は80ないし200cPs(25℃で測定)に維持できる。
【0026】
前記セルロース誘導体及びシクロデキストリン誘導体の総使用量は、総トナー反応物中0.005ないし1重量%でありうる。0.005重量%より少ない場合には、所望の効果が微小であり、1重量%を超過する場合には分散液混合物のゲル化を発生させることがある。また前記セルロース誘導体及びシクロデキストリン誘導体の総使用量は、ラテックス分散液中ラテックス樹脂100重量部基準に0.5ないし10重量部でありうる。0.5重量部より少なければ、所望の効果が微小であり、10重量部より多ければ、トナーの定着特性を害する。
【0027】
前記セルロース誘導体またはシクロデキストリン誘導体の水溶性を高めるために、必要に応じて酸性または塩基性物質及び界面活性剤などをセルロース誘導体またはシクロデキストリン誘導体水溶液に添加できる。
【0028】
本発明のトナーの製造方法は、ラテックス分散液、着色剤分散液、ワックス分散液、及びセルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体とのうち1種以上の水溶液の混合物に凝集剤を添加、均質化した後、凝集段階を経ることでトナー粒子を製造する。すなわち、ラテックス分散液、着色剤分散液、ワックス分散液及びセルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体とのうち1種以上の水溶液を反応器に投入混合した後、凝集剤を投入して10ないし100分間pH1.5ないし2.3及び20ないし30℃で1.0ないし2.0m/sの攪拌線速度で均質化した後、反応器を48ないし53℃に昇温させて1.5ないし2.5m/sの攪拌線速度で攪拌して凝集を行う。
【0029】
前記凝集されたトナー粒子は、トナー粒子成長を中止(Freezing)させる段階;前記成長が中止されたトナー粒子を融合(Fusing)する段階;及び前記融合されたトナー粒子を冷却及び乾燥段階を経て、これにより所望のトナー粒子を得る。乾燥されたトナー粒子は、シリカなどを使用して外添処理し、帯電電荷量などを調節して最終レーザープリンタ用トナーを製造できる。
【0030】
本発明のトナーの製造方法は、コアシェル構造を持つトナーにも適用できるが、コアシェル構造のトナーを製造する場合には、コア用ラテックス分散液、着色剤分散液、ワックス分散液、及びセルロース誘導体とデキストリン誘導体のうち1種以上の水溶液の混合物に凝集剤を添加、均質化した後、凝集段階を経ることで1次凝集トナーを製造し、得られた1次凝集トナーにシェル用ラテックス分散液を添加してシェル層を形成した後、融合段階を経る。
【0031】
本発明のトナーの製造方法に使われうるラテックス分散液に含まれる結着樹脂は、ビニル系単量体、カルボキシ基を持つ極性単量体、不飽和ポリエステル基を持つ単量体、及び脂肪酸基を持つ単量体から選択された1種または2種以上の重合性単量体を重合して製造できる。
【0032】
前記の重合を進めるためには一般的に重合開始剤が使われ、このような重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル系とアゾ系重合開始剤がある。
【0033】
前記結着樹脂の数平均分子量とガラス転移温度(Tg)を調節するために添加されるマクロモノマーとしては、ポリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルアクリレートなどが使われ、鎖移動剤としては、ジビニルベンゼン、1−ドデカンチオールなどが使われうる。
【0034】
また、前記マクロモノマーの添加量は、前記結着樹脂100重量部に対してそれぞれ0.3ないし30重量部であることが望ましい。
【0035】
前記結着樹脂のうち一部を選別して架橋剤とさらに反応させることができるが、このような架橋剤としては、イソシアネート化合物とエポキシ化合物などが使われうる。
【0036】
前記結着樹脂と前記架橋剤との架橋反応により架橋樹脂が形成されるが、トナーに含まれる架橋樹脂の含有量は、一般的に架橋化していない結着樹脂の100重量部に対して5ないし30重量部である。前記架橋樹脂の含有量が5重量部未満の場合には、分子量が小さくなって定着温度範囲が狭くなるので望ましくなく、30重量部を超過する場合には、樹脂が過度に硬くなって低温定着性の点から望ましくない。
【0037】
着色剤は顔料それ自体として使われることもあり、顔料が樹脂内に分散された顔料マスターバッチ形態で使われることもある。
【0038】
前記着色顔料は、商業的によく使われる顔料であるブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料及びこれらの混合物から適当に選択されて使われうる。
【0039】
前記着色剤の含有量は、トナーを着色して現像により可視画像を形成するのに十分な程度ならばよいが、例えば、前記結着樹脂100重量部を基準として1ないし20重量部であることが望ましい。
【0040】
一方、添加剤としては帯電制御剤などが使われうる。
【0041】
帯電制御剤としては、負帯電性帯電制御剤及び正帯電性帯電制御剤がいずれも使われ、負帯電性帯電制御剤としては、有機金属錯体またはキレート化合物;金属含有サリチル酸化合物;及び芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の有機金属錯体が使われ、公知のものならば特に制限されない。また、正帯電性帯電制御剤としては、ニグロシンとその脂肪酸金属塩などで改質された生成物、4級アンモニウム塩を含むオニウム塩などが単独、または2種以上が混合されて使われうる。かかる帯電制御剤は、静電気力によりトナーを安定的かつ速い速度で帯電させて、前記トナーを現像ローラ上に安定して支持させる。
【0042】
トナーに含まれる帯電制御剤の含有量は、一般的にトナー組成物全体100重量部に対して0.1重量部ないし10重量部の範囲以内である。
【0043】
ワックスは、トナー画像の定着性を向上させうるものであって、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレンなどのポリアルキレンワックス、エステルワックス、カルナウバ(carnauba)ワックス、パラフィンワックスなどが使われうる。トナーに含まれるワックスの含有量は、一般的にトナー組成物全体の100重量部に対して0.1重量部ないし30重量部の範囲内である。前記ワックスの含有量が0.1重量部未満の場合には、オイルを使用せずにトナー粒子を定着させることができるオイレス(oilless)定着を実現し難くて望ましくなく、30重量部を超過する場合には、保管時にトナーの塊り現象が誘発されて望ましくない。
【0044】
また、前記添加剤は外添剤をさらに含むことができる。外添剤は、トナーの流動性を向上させるか、または帯電特性を調節するためのものであって、大粒径シリカ、小粒径シリカ、及びポリマービーズを含む。
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
(ラテックス分散液の製造)
攪拌器、温度計及びコンデンサーが設置された体積3リットルの反応器を熱伝逹媒体であるオイル槽内に設置した。このように設置された反応器内に蒸溜水及び界面活性剤(Dowfax 2A1)をそれぞれ660g及び3.2g投入して、反応器温度を70℃まで高めて100rpmの速度で攪拌させた。次いで、13.5gの過硫酸カリウムを開始剤として添加した。次いで、モノマー、すなわち、スチレン838g、ブチルアクリレート322g、2−カルボキシエチルアクリレート37g及び1,10−デカンジオールジアクリレート22.6gと、蒸溜水507.5g、界面活性剤(Dowfax 2A1)22.6g、マクロモノマーとしてポリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート53g、鎖移動剤として1−ドデカンチオール18.8gの乳化混合物を、ディスクタイプインペラで400〜500rpmで30分間攪拌した後、前記反応器に1時間徐々に投入した。次いで、約8時間反応を進めた後、常温まで徐々に冷却させつつ反応を完了した。
【0047】
反応完了後、示差走査熱量計(DSC)を用いて結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記温度は60℃であった。ポリスチレン基準試料を使用してGPC(ゲル浸透クロマトグラフ:gel
permeation chromatography)により結着樹脂の数平均分子量を測定し、その結果、前記数平均分子量は70,000であった。
【0048】
(着色剤分散液の製造)
攪拌器、温度計及びコンデンサーが設置された体積3リットルの反応器にシアン顔料(大日精化工業株式会社製、ECB303)540g、界面活性剤(Dowfax 2A1)27g、蒸溜水2,450gを入れた後、約10時間徐々に攪拌しつつ予備分散を行った。10時間の予備分散を行った後、アルティマイザー(Amstek社)を用いて1500barで粒径が200nm以下になるまで4回分散させた。結果として、シアン顔料分散液を得た。
【0049】
分散完了後、マルチサイザー2000(Malvern社製品)を使用してシアン顔料粒子の粒度を測定した結果、D50(v)が170nmであった。ここで、D50(v)は、体積平均粒径を基準に50%に該当する粒径、すなわち、粒径を測定して小さな粒子から体積を累積する場合、総体積の50%に該当する粒径を意味する。
【0050】
(ワックス分散液の製造)
攪拌器、温度計及びコンデンサーが設置された体積5リットルの反応器に界面活性剤(Dowfax 2A1)65g及び蒸溜水1、935gを投入した後、前記混合液を高温で約2時間徐々に攪拌しつつワックス(NOF社、WE−5)1,000gを前記反応器に投入した。前記混合液をホモジナイザー(IKA社、T−45)を使用して30分間分散させた。結果として、ワックス分散液を得た。
【0051】
分散完了後、マルチサイザー2000(Malvern社製品)を使用して分散された粒子の粒度を測定した結果、D50(v)が320nmであった。
【0052】
(セルロース誘導体水溶液の製造)
攪拌器、温度計及びコンデンサーが設置された体積2リットルの反応器に蒸溜水1,500gを投入した後、10℃まで温度を低めた。これに、20gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(Anycoat−C、(株)三星精密化学)を投入し、徐々に攪拌してセルロース誘導体水溶液を用意した。この時、水溶液の粘度は300cPsないし400cPsである。粘度は、ブルックフィールド粘度計LV
set 3番スピンドルを使用して、スピンドル回転速度200rpmで測定した。
【0053】
(シクロデキストリン誘導体水溶液の製造)
攪拌器、温度計及びコンデンサーが設置された体積2リットルの反応器に蒸溜水1,500gを投入した後、20℃まで温度を低めた。これに20gのβ−シクロデキストリン(Corn Proudct)を投入し、徐々に攪拌してシクロデキストリン誘導体水溶液を用意した。この時、水溶液の粘度は100cPsないし150cPsである。粘度は、ブルックフィールド粘度計LV
set 3番スピンドルを使用してスピンドル回転速度200rpmで測定した。
【0054】
(トナー粒子の製造)
20リットルの反応器に前記で製造したセルロース誘導体水溶液1,500gを入れた後、前記で製造したラテックス分散液4,300g、着色剤分散液490g及びワックス分散液550gを添加し、これに蒸溜水を添加して総14,000gになるように作った。前記混合液を常温で120rpmで攪拌して混合した。凝集剤としては、0.3N HNOとPSI(ポリシリケート鉄:Poly Silicato Iron)との2:1(質量比)混合物1,000gを投入した。反応器の温度を57℃に昇温した後、140rpmで攪拌して凝集を行った。D50が6.45〜6.50μmになるまで凝集を続けた後、1N水酸化ナトリウム水溶液1,000gを反応器に投入して、pH4になるまでは120rpmで、pH7になるまでは100rpmで攪拌した。80rpmで攪拌速度を低めながら反応器の温度を96℃に昇温させてトナー粒子が融合されるようにした。円形度が0.970になるまで融合を続けた。
【0055】
次いで、反応器の温度を40℃まで冷却し、ろ過装置(装置名:フィルタープレス)を使用してトナーを分離させた後、分離されたトナーを1N HNO水溶液で洗浄し、蒸溜水で5回再洗浄して界面活性剤などをいずれも除去した。次いで、洗浄が完了したトナー粒子を流動層乾燥器で40℃の温度で5時間乾燥し、乾燥されたトナー粒子を得た。
【0056】
<実施例2>
20リットルの反応器に前記で製造したラテックス分散液4,300g、着色剤分散液490g及びワックス分散液550gを添加し、これに蒸溜水を添加して総13,250gになるように作った。前記混合物を10分間攪拌した後、前記で製造したセルロース誘導体水溶液750gを入れることを除いては、前記実施例1と同じ方法でトナー粒子を得た。凝集剤としては0.3N HNOとPSI(ポリシリケート鉄:Poly Silicato Iron)との2:1(質量比)混合物1,000gを投入した。
【0057】
<実施例3>
セルロース誘導体水溶液の代わりに前記で製造したシクロデキストリン誘導体水溶液を使用することを除いては、前記実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0058】
<比較例1>
前記で製造したラテックス分散液4,500g、着色剤分散液490g及びワックス分散液550gを添加し、これに蒸溜水を添加して総14,000gになるように作った後、前記実施例1と同じ方法でトナー粒子を得た。
【0059】
<評価方法>
前記実施例及び比較例で製造したトナー粒子に対して、次のように物性を測定した。
【0060】
(1)初期粘度
ブルックフィールド粘度計LV set 3番スピンドルを使用して測定した。粘度の測定はあらゆる分散液とセルロース水溶液とを反応器に投入した後、凝集剤を投入して10分ないし100分間25℃ないし30℃で均質化した後、混合液の一部を減らして測定する。混合液の温度を25℃に調整した後、スピンドルを200rpmで1分間回転した時の粘度値を読み取って測定する。
【0061】
(2)TVOC(揮発性有機化合物の総含有量)
前記各実施例及び比較例で得られたトナーに関して、Agilent 6890N GC−MSとGerstel TDS 3とを使用して、下記のような方法で揮発性有機化合物(TVOC)の発生量を評価した。
【0062】
まず、トナー10mgを秤量して脱着チューブ(desorption tube)に入れた。このチューブをTSD(熱脱離システム:thermal desorption system)に入れて300℃に加熱した。加熱したトナーで発生するガスをCIS(クライオ注入システム:cryo injection system)に送って凝縮させた後、ガスクロマトグラフィーに注入して測定した。これを通じて得られたグラフで、へキサンとヘキサデカン間のあらゆるピークの面積を求め、これをトルエン定量曲線に代入してTVOCを求め、その結果を下記の表1に表した。
【0063】
(3)粒度分布
前記実施例及び比較例でトナー粒子のGSDp及びGSDvは、ベックマン社(Beckman Coulter Inc.)のマルチサイザー(MultisizerTM
3 Coulter Counter(登録商標))を使用して平均粒径を測定して、下記数式1及び2により得られる。前記マルチサイザーでアパチャー(開口)は100μmを用い、電解液であるISOTON−II(Beckman Coulter社)50〜100mlに界面活性剤を適量添加して、これに測定試料10〜15mgを添加した後、超音波分散器で5分間分散処理することでサンプルを製造した。測定結果は下記の表1に表した。
【0064】
[数1]

【0065】
[数2]

【0066】
【表1】

【0067】
前記表から分かるように、本発明の製造方法による反応初期混合物の粘度が、従来の製造方法による反応初期混合物の粘度に比べて高いということが分かる。これにより、分散液の安定性がさらに優秀であることが分かる。また本発明の製造方法で製造されたトナーは、従来の製造方法で製造されたトナーに比べて30%〜60%ほどTVOCが低減したことが分かる。それだけでなく、本発明の方法で製造されたトナー粒子は、従来の方法で製造されたトナー粒子に比べて粒度分布の狭いことが分かる。
【0068】
(4)円形度
円形度(circularity)は、FPIA−3000(Sysmex社製品、日本所在)を用いて測定した。FPIA−3000を用いた円形度測定において、測定試料の製造は、蒸溜水50〜100mlに界面活性剤を適量添加し、これにトナー粒子10〜20mgを添加した後、超音波分散器で1分間分散処理することで行われた。
【0069】
円形度は、下記の数式3によりFPIA−3000で自動で求められる。
【0070】
[数3]
円形度(circularity)=2×(面積×π)1/2/周囲長
【0071】
前記式で面積(area)は、投影されたトナーの面積を意味し、周囲長(perimeter)は、投影されたトナーの円周長を意味する。この値は0〜1値を持つことができ、1に近いほど球形を意味する。
【0072】
(5)帯電性
帯電量は、ブローオフ粉体帯電量測定装置としてVertex Charge Analyzer150(Vertex Image Products、ペンシルベニア州のユーコン所在)を使用して測定した。
【0073】
ブローオフ法では、両端に網を施した円筒容器中に粉体とキャリアとの混合体を入れて、一端から高圧ガスを吹き込めて粉体とキャリアとを分離して、網の目から粉体のみブローオフ(吹き飛ばし)する。この時、粉体が容器外部に持って行った帯電量と等量でありつつ逆の極性を持つ帯電量がキャリアに残る。また、この電荷による電束のすべてがファラデー箱によりコンデンサーに集まって、その分量だけコンデンサーが充電される。コンデンサー両端の電位を測定することで粉体の電荷量Qを、下記の式により求める。
【0074】
[数4]
Q=CV
【0075】
ここで、Cはコンデンサー容量であり、Vはコンデンサー両端の電圧であり、Qは粉体の電荷量である。
【0076】
帯電速度は、キャリアとトナー粒子とを混合しつつ、両物質間に発生する電荷量を、混合にかかる時間で割って測定される。初期帯電速度は、電荷量がトナー上に形成される速度を意味するが、本発明における初期帯電速度は、キャリアとトナーとの混合時間が1分を経過した後で測定した電荷量で計算した。
【0077】
(6)凝集性
凝集性は、Micron Powder Characteristics Tester(ホソカワ社製品)を使用してトナーサンプルをそれぞれN/N条件及びH/H条件で放置してから測定し、値が大きいほど流動性がよくないということが分かる。
−N/N条件:2hr、25℃、湿度55%
−H/H条件:15hr、50℃、湿度80%+2hr、25℃、湿度55%
【0078】
(7)クリーニング性
クリーニング性評価方法は、クリーニング工程を通過した感光体上のトナーをスコッチテープ(3M)で粘着して白紙に移し、それをMacbath反射濃度計RD514型を測定して、何の汚染もないものとの差が0.01以下である場合には良好、超過する場合には不良と判定した。
【0079】
(8)光沢性
光沢測定法は、BYK GARDNER micro TRI gloss機器で20°角度で測定した値であって、測定方法は、ASTM D 523/D 2457による。測定値が20以下の場合に高と判定した。
【0080】
【表2】

【0081】
前記表2から分かるように、本発明によって製造されたトナーの場合、帯電性、円形度及びクリーニング性は、従来の方法で製造されたトナーと類似またはさらに優秀であった。
【0082】
【表3】

【0083】
前記表3から分かるように、本発明によって製造されたトナーの場合、流動性は、従来の方法で製造されたトナーと類似または若干劣るほどに過ぎなかった。
【0084】
以上、本発明による望ましい実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定められねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックス分散液、着色剤分散液、ワックス分散液、及びセルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体とのうち1種以上の水溶液を混合する段階と、
その混合物に凝集剤を添加して凝集させてトナー粒子を形成する段階と、
前記トナー粒子を融合する段階と、を含むトナーの製造方法。
【請求項2】
前記セルロース誘導体は、下記化学式1の化合物である請求項1に記載のトナーの製造方法:
[化1]

前記式で、
、R、及びRはそれぞれ独立してヒドロキシ基、炭素数1ないし10の置換もしくは非置換アルキル基、炭素数2ないし10の置換もしくは非置換アシル基、または炭素数6ないし10の置換もしくは非置換アリール基であり、ただし、R、R、及びRがいずれもヒドロキシ基である場合は除外され;
nは、2ないし2,000,000の整数である。
【請求項3】
前記セルロース誘導体は、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース、(ヒドロキシエチル)メチルセルロース及びベンジルセルロースからなる群から選択されたいずれか一つである請求項2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記シクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンである請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
前記セルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体との総使用量は、総反応混合物中0.5ないし10重量%である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項6】
前記セルロース誘導体とシクロデキストリン誘導体との総使用量は、ラテックス分散液中ラテックス樹脂100重量部に対して、0.5ないし10重量部である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項7】
前記ラテックス分散液はラテックス樹脂を含み、前記ラテックス樹脂がスチレン残基を含む請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項8】
前記トナーは、コアシェル構造を持つ請求項1に記載のトナーの製造方法。

【公表番号】特表2012−514232(P2012−514232A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544364(P2011−544364)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/KR2009/007760
【国際公開番号】WO2010/077012
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】