説明

粒度分布を有する粒状物の洗浄方法

【課題】粒度分布を有する粒状物であっても、粒状物の洗浄ロスを効果的に低減でき、かつ洗浄効率を犠牲にしない洗浄方法を提供する。
【解決手段】粒度分布を有する粒状物(1)および不純物(2)を含んで成る洗浄対象物(10)を洗浄媒体(3、3’)により洗浄して不純物(2)を除去する方法であって、洗浄対象物(10)が容器(5)内で洗浄媒体(3’)と接触し、かつ、洗浄媒体(3’)の上昇速度が容器(5)内で変化するように、容器(5)に洗浄媒体(3’)を下方(5a)から上方(5b)へ流通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度分布を有する粒状物の洗浄方法に関し、より詳細には、粒度分布を有する粒状物および不純物を含んで成る洗浄対象物を洗浄媒体により洗浄して不純物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状物に不純物が付着または混在したような洗浄対象物は、洗浄媒体の流れ(相対的な流れ)に曝すことで洗浄されており、これにより不純物が洗浄媒体に溶解または同伴されて除去され、その後に残った粒状物が回収される。
【0003】
このような洗浄方法としては、粒状物を通過させず、かつ、不純物および洗浄媒体は、不純物を洗浄媒体に溶解または同伴させて通過させるスクリーンを有する容器を用い、この容器に洗浄対象物を入れ、粒状物をスクリーンで保持しながら、洗浄媒体を容器に流通させる方法が一般的に利用されている。
【0004】
洗浄媒体を流す方向は、粒状物が容器内に維持される限り特に限定されない。例えば、スクリーンを底部に有する容器に洗浄対象物を入れ、粒状物をスクリーン上に維持しながら、洗浄媒体をその上から流下させても、その下から上昇させてもよい。あるいは、2つのスクリーンを有する容器に洗浄対象物を入れ、これらスクリーンの間に粒状物を維持しながら、洗浄媒体をこれに通過させてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来一般的な洗浄方法により、粒度分布を有する粒状物を洗浄すると、粒状物のうち比較的粒径の小さい粒子は、洗浄媒体に同伴されて容器外へ流出するため、その分、洗浄後に回収される粒状物の量が損なわれるという問題がある。粒状物の粒度分布が広いほど、粒状物の洗浄ロスは大きくなる。
【0006】
スクリーンを底部に有する容器に洗浄対象物を入れ、粒状物をスクリーン上に維持しながら、洗浄媒体をその上から流下させる場合、および2つのスクリーンを有する容器に洗浄対象物を入れ、これらスクリーンの間に粒状物を維持しながら、洗浄媒体をこれに通過させる場合には、スクリーンの孔径またはメッシュ間隔を小さくすることにより、粒状物の損失を低減させることが可能である。しかしながら、このような方策では、洗浄媒体の流量が低下し、または洗浄媒体を高圧で流す必要が生じ、よって、洗浄効率が悪くなるので好ましくない。
【0007】
また、スクリーンを底部に有する容器に洗浄対象物を入れ、粒状物をスクリーン上に維持しながら、洗浄媒体をその下から上昇させる場合には、粒状物のうち比較的粒径の小さい粒子は、洗浄媒体に同伴されて、そのまま一緒にかなりの量で、容器外へ流出してしまい、粒状物の洗浄ロスが特に著しい。この場合には、洗浄媒体の上昇速度を落とすことにより、洗浄媒体に同伴されて容器外へ流出する粒子をある程度減らすことが可能である。しかしながら、このような方策では、洗浄媒体の流量が低下し、よって、洗浄効率が悪くなるので好ましくない。
【0008】
本発明の目的は、粒度分布を有する粒状物であっても、粒状物の洗浄ロスを効果的に低減でき、かつ洗浄効率を犠牲にしない洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述したような従来の洗浄方法では、容器が管状であり、これを流れる洗浄媒体の線速度が一定であることに着目し、鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の1つの要旨によれば、粒度分布を有する粒状物および不純物を含んで成る洗浄対象物を洗浄媒体により洗浄して不純物を除去する方法であって、洗浄対象物が容器内で洗浄媒体と接触し、かつ、洗浄媒体の上昇速度(より詳細には、上昇方向の線速度)が容器内で変化するように、容器に洗浄媒体を下方から上方へ流通させることを特徴とする方法が提供される。
【0011】
粒状物の各粒子は、その自重による沈降速度が、洗浄媒体の上昇速度と釣り合ったところで留まることとなる。そして、これら粒子の沈降速度は、概略的にはその粒径に応じて異なり得る。本発明の上記方法によれば、洗浄媒体の上昇速度を容器内で変化させているので、粒状物の各粒子は、その沈降速度と洗浄媒体の上昇速度とが釣り合ったところで、それぞれ留まることとなり、比較的粒径の小さい粒子であっても上昇速度が小さい領域に捕捉できるので、洗浄媒体に同伴されて容器外へ流出するのを効果的に防止でき、かつ、それほど粒径が小さくない粒子は上昇速度がより大きい領域で効率的に洗浄できる。よって、本発明の上記方法によれば、粒状物の洗浄ロスを低減しつつ、かつ、洗浄効率の高い洗浄方法が提供される。
【0012】
本発明に用いる容器は、その下部から上部に向かって連続的または段階的に増加する水平断面積を有するものであってよい。その下部から上部に向かって連続的に増加する水平断面積を有する容器の例としては、逆円錐形、逆円錐台形、逆角錘形、逆角錐台形(例えば三角錐や四角錐など)などの形状を有するものが挙げられる。その下部から上部に向かって段階的に増加する水平断面積を有する容器の例としては、容器の鉛直断面が略階段状に成っている容器(その階段部の横方向部および/または縦方向部が傾斜していてもよい)が挙げられる。しかし、これらの例に限定されず、例えば、下部から上部に向かって水平断面積が鉛直非対照に、連続的または段階的に増加するものであってもよい。
【0013】
本発明に用いる容器は、上記のような水平断面積の特徴に代えて、またはこれに加えて、その内部に邪魔板を有するものであってよい。邪魔板は、例えば板状、らせん状、編目(またはフィルタ)状などであってよい。
【0014】
本発明の方法が適用される洗浄対象物のうち、その本来の洗浄目的は「粒度分布を有する粒状物」であり、これは洗浄後に回収すべきものである。かかる粒状物は、粒径分布を有する固体粒子群であればよく、任意の材料から成り得る。粒状物は、特に限定されないが、無機化合物および有機化合物のいずれから成っていてもよい。無機化合物としては、例えばヨウ素、アルミナ、ジルコニア、アパタイト、硝石などが挙げられる。有機化合物としては、例えばアルカン類、アルケン類、アルキン類、芳香族化合物、カルボン酸類、エーテル類、ケトン類、ハロゲン系化合物などが挙げられる。一例において、粒状物はヨウ素から成り得る。
【0015】
また、洗浄対象物のうち、不純物は、上記粒状物から洗浄によって分離除去すべきものである。かかる不純物は、洗浄後に回収すべき粒状物に付着し、またはこれと混在しているものであればよく、任意の形態および材料から成り得る。不純物は、特に限定されず、種々の無機物および/または有機物であってよい。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属(例えばCu、Fe、Cr、Zn、Ni、Co、Mn、Moなどが挙げられるが、それらに限定されない)、それらの塩および/またはイオンなどであってよい。一例において、不純物は塩化カリウムおよび/またはカリウムイオンである。
【0016】
本発明に用いる洗浄媒体は、洗浄後に回収すべき粒状物および/または除去すべき不純物などに応じて適宜選択され得るが、洗浄後に回収すべき粒状物を実質的に溶解させないものが好ましい。
【0017】
また、洗浄媒体は、不純物を溶解させるものであることが好ましい。しかしながら、これに限定されず、不純物が極めて小さいものである場合(例えば、不純物の最大粒径が、洗浄後に回収すべき粒状物の最小粒径より小さい場合)には、不純物が実質的に溶解しない洗浄媒体を用いてもよい。
【0018】
洗浄媒体は、液体および気体のいずれであってもよい。液体の洗浄媒体としては、例えば水、硫酸、硝酸、低級アルコール、低級アミン、ニトリル系化合物、フロン系化合物などが挙げられる。気体の洗浄媒体としては、例えば空気、窒素、二酸化炭素、酸素、フロン系化合物、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどが挙げられる。代表的な洗浄媒体は水であり、安価かつ容易に入手可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、洗浄媒体の上昇速度が容器内で変化させているので、粒度分布を有する粒状物であっても、粒状物の各粒子は、その沈降速度と洗浄媒体の上昇速度と釣り合ったところで、それぞれ留まることとなり、これにより、粒状物の洗浄ロスを効果的に低減でき、かつ洗浄効率を犠牲にしない洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1つの実施形態における洗浄方法を説明するための概略断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の1つの実施形態における洗浄方法について、図1を参照しながら以下に詳述する。
【0022】
まず、洗浄対象物10、洗浄媒体3、および容器5を準備する。
【0023】
洗浄対象物10は、粒度分布を有する粒状物1(その各粒子を、図中、白丸にて示す)および不純物2(図中、黒三角にて示す)を含んで成るものであればよい。
【0024】
粒度分布を有する粒状物は、より具体的には、粒状物の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した場合に、標準偏差が、例えば20000μm以下、好ましくは10000μm以下、代表的には0.1μm〜7000μmであるものが好適に用いられ得る。粒状物の体積平均粒径は、例えば10μm〜19990μmの範囲内にあり得る。尚、本明細書において「標準偏差」は、分布幅の目安として以下の式により定義される。
標準偏差=(d84%−d16%)/2
(式中、d84%は、累積カーブが84%の粒子数となる点の粒径を意味し、d16%は、累積カーブが16%の粒子数となる点の粒径を意味する。)
しかし、上記の数値範囲はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されないことに留意されるべきである。
【0025】
洗浄媒体3は、粒状物1を実質的に溶解させないものであればよい。本実施形態においては、洗浄媒体3として、粒状物1を実質的に溶解させないが、不純物2を溶解させ得る液体の洗浄媒体を用いるものとする。
【0026】
また、本実施形態においては、容器5として逆円錐台形のものを用いるものとする。この容器5は、下方入口5aおよび上方出口5bを備え、下部から上部に向かって水平断面積が鉛直対称に連続的に増加する。
【0027】
次に、洗浄媒体3をポンプ4により容器5へ下方入口5aから供給し、上方出口5bからオーバーフローにより排出させる。また、洗浄対象物10を容器5へその上方から投入する。洗浄対象物10を容器5に投入する際、容器5内に洗浄媒体3’が既に存在していても、存在していなくてもよい。投入する洗浄対象物10は、粒状物1に不純物2が付着または混在して成る乾燥物の形態であっても、これらが液体中に含まれて成る液状物の形態であってもよい。
【0028】
これにより、容器5内において洗浄対象物10が洗浄媒体3’と接触する。容器5に洗浄媒体3’を下方から上方へ流通させている間(即ち、連続流通操作の間)、粒状物1の各粒子は、上昇してくる洗浄媒体3’と向流接触する。洗浄媒体3’の上昇速度(より詳細には、上昇方向の線速度)は、容器5の下方から上方に向かって水平断面積が大きくなるにつれて小さくなる。他方、粒状物1の各粒子は、その自重により沈降速度を有し、その沈降速度と洗浄媒体3’の上昇速度とがほぼ釣り合ったところに留まることになる。各粒子の自重は、その粒径に依存するものと考えて差し支えないので、容器5に洗浄媒体3’を下方から上方へ流通させ続けて定常状態に達すると、粒径の大きい粒子は容器5の下部に留まり、粒径が小さくなるにつれて容器5のより上部に留まるようになる(図中、模式的に、大粒径の粒子、中粒径の粒子、小粒径の粒子を示しているが、粒状物の粒子が粒径サイズに従ってほぼ連続的に分布することとなる)。尚、粒状物1の各粒子は、定常状態で互いに実質的に干渉しない程度に分散していることが好ましい。ここで、各粒子が「実質的に干渉しない程度に分散している」とは、粒子が密に充填されたような状態を除く趣旨であり、粒子間に生じるファンデルワールス力などの比較的弱い力が働いていてもよいことを意図する。
【0029】
換言すれば、洗浄媒体3’の上昇速度が、洗浄後に回収すべき粒状物の粒子の沈降速度と釣り合い、粒径の小さい粒子が洗浄媒体3’に同伴されて容器5の外部へ流出することを実質的に防止するように、洗浄媒体3の容器5への供給流量を調節することが好ましい。
【0030】
洗浄媒体3’の連続流通操作の間、粒状物1に付着または混在していた不純物2は、洗浄媒体3’の流れと接触することにより、洗浄媒体3’中に溶解する。この場合、不純物2が洗浄媒体3’の流れの中で溶解するのに要する時間よりも長い時間、洗浄媒体3’を容器5に流通させ続け、容器5内に粒状物1を維持する(または滞留させる)ことが好ましい。
【0031】
洗浄媒体3’は、容器5の上方出口5bから、不純物が溶解した洗浄媒体7として排出され、これにより不純物が連続的に除去される。この不純物を含む洗浄媒体7は、任意の適切な処理(例えば活性炭やイオン交換樹脂などを用いた吸着操作、析出などの化学反応を利用した化学処理操作など)により不純物を除去した後、洗浄媒体3として再利用してもよい。
【0032】
以上のような洗浄媒体3’の連続流通操作の後、容器5への洗浄媒体3の供給を停止し、容器5内の接触混合物を容器5の底部からスラリー13として抜き出す。このスラリーは、粒状物と洗浄媒体とを含んで成り、好ましくは不純物を実質的に含まない。
【0033】
得られたスラリー13を任意の適切な固液分離操作(例えば濾過、遠心分離、沈降、液体蒸発など)に付して、液体の洗浄媒体を、固体の粒状物から分離する。分離した洗浄媒体は、好ましくは不純物を実質的に含まないのでそのまま、または必要に応じて上記と同様の不純物除去を行った後、洗浄媒体3として再利用できる。
【0034】
これにより、スラリー13から洗浄媒体が分離された回収物15が得られる。回収物15は、実質的に粒状物1から成り、高純度の粒状物を得ることができる。
【0035】
本実施形態によれば、広い粒度分布を有する粒状物であっても、洗浄ロスを少なくし、効率良く不純物を除去し、目的物質である粒状物を低損失かつ高純度で回収することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明について上述したように、種々の改変が可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態においては、容器として、その水平断面積が下部から上部に向かって連続的に変化するものを用いるものとしたが、これに代えて、容器の水平断面積が下部から上部に向かって段階的に変化する容器を用いてもよい。この場合、定常状態において、容器内で粒状物の粒子は、粒径サイズに従って段階的に分布することとなる。
【0038】
また例えば、上記実施形態においては、容器として、その内部に邪魔板を有しないものを用いるものとしたが、1つまたは複数の邪魔板を有するものを用いてもよい。邪魔板を設けることにより、洗浄媒体の上昇速度を容器内で変化させることが可能である。
【0039】
また例えば、上記実施形態においては、洗浄媒体として、不純物を溶解させるものを用いるものとしたが、不純物が実質的に溶解しないものを用いてもよい。この場合、粒状物の粒子は容器内で維持され、かつ不純物は洗浄媒体に同伴されて容器外に排出し得るように、洗浄媒体の供給流量を設定することにより、洗浄ロスを小さくしつつ、不純物を連続的に除去することができる。
【0040】
また例えば、上記実施形態においては、洗浄媒体として、液体のものを用いるものとしたが、気体のものを用いてもよい。この場合、洗浄媒体の連続流通操作の後、例えば(必要に応じて空気または不活性気体を容器にパージして)容器内の粒状物を抜き出すだけで、洗浄媒体を粒状物からより簡便に分離することができる。
【実施例】
【0041】
図1を参照して上述した実施形態に従って本発明を実施した。
この実施例では、水中にてヨウ化カリウムに塩素を反応させて得た反応液(2KI+Cl→2KCl+I↓)から、デカンテーションにより水相の大部分を除去して得られたスラリーを洗浄対象物として用いた。この洗浄対象物(スラリー)において、粒度分布を有する粒状物は、ヨウ素(I)から成る固体粒子であり、塩化カリウム(KCl)が不純物である。
【0042】
この洗浄対象物(スラリー)のヨウ素濃度は52重量%であり、カリウム濃度は40526重量ppm(KCl換算濃度 7700重量ppm)であった。
ヨウ素濃度は、洗浄対象物(スラリー)からサンプルを採取し、サンプルをチオ硫酸ナトリウム滴定することにより測定した。カリウム濃度は、この滴定後の液を希釈して原子吸光分析することにより測定した。KCl換算濃度は、得られたカリウム濃度から、カリウムが全てKClであるものと仮定して換算することにより求めた(以下も同様とする)。尚、この洗浄対象物(スラリー)中には、KIOも含まれ得るが、微量であるので無視して差し支えない。
【0043】
また、この洗浄対象物(スラリー)中の粒状物の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラック9310HRA−X100)によって測定したところ、標準偏差は22.17μmであり、体積平均粒径は50.46μmであった。
【0044】
洗浄媒体には純水を用いた。尚、塩化カリウムは水溶性である。
【0045】
容器には、上方内径21mm(上方出口の水平断面における内径)、下方内径2mm(下方入口の水平断面における内径)、これらの間の高さ100mmの逆円錐台形の容器を用いた。
【0046】
洗浄媒体である純水を容器の下方入口から86cm/minで供給し、上方出口からオーバーフローにより排出させて、容器の下方から上方へ流通させた。洗浄媒体の上昇速度は容器内の洗浄媒体液面にて最小となり、上方出口の水平断面における線速度は25cm/hrと求められた。そして、上記の洗浄対象物(スラリー)を容器へその上方から7g投入した。投入してから1分後、洗浄媒体の供給を停止して、容器の底部からスラリーを抜き出した。(滞留時間1分、その間の純水の流通量86cc)
【0047】
容器の底部から抜き出したスラリーを濾過して液相と固体粒子(I)とに分離した。
【0048】
濾過により分離した固体粒子(I)中のカリウム濃度は184重量ppm(KCl換算濃度 351重量ppm)であった。このカリウム濃度は、容器の底部から抜き出したスラリーからサンプルを採取し、サンプルを濾過して固体粒子(I)を得、得られた固体粒子(I)をチオ硫酸ナトリウム水溶液に溶解させて原子吸光分析することにより測定した。
【0049】
洗浄ロスは、濾過により分離した液相に含まれるヨウ素量、およびオーバーフロー液に含まれるヨウ素量を合わせたものであり、これは投入した全ヨウ素量の0.5重量%であった(よって、ヨウ素回収率は95.5重量%であった)。これらヨウ素量は、チオ硫酸ナトリウム滴定により測定した。
【0050】
本発明に必須ではないが、容器の底部から抜き出したスラリーは、水分を完全に除去するために溶融分離操作に付され得る。そこで、上述した実施例と同様にして容器の底部から抜き出したスラリーを(濾過せずにそのまま)130℃に加熱して水相(上層)とヨウ素相(下層)の2層に分液させ(ヨウ素の融点113.5℃)、下層のヨウ素相を抜き出し、冷却固化させて、水を含まないヨウ素固体粒子(I)を得た。得られた無水ヨウ素固体粒子(I)中のカリウム濃度は23重量ppm(KCl換算濃度44重量ppm)であった。このカリウム濃度は、無水ヨウ素固体粒子を白金皿に載せてヨウ素を昇華させ、その残分を0.1N塩酸に溶解させて原子吸光分析することにより測定した。
【0051】
以上より、粒度分布を有するヨウ素の粒状物を洗浄して、ヨウ素を低損失かつ高純度で回収できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の方法は、例えば、反応後に得られる反応生成物より成る粒状物(固体粒子)に副反応生成物が不純物として付着または混在しており、これを分離精製する場合、また例えば、工場廃液中に製品粒状物(固体粒子)が含まれており、これから製品を回収する場合などに適用され得る。しかしながら、本発明の方法は、これに限定されず、粒状物の洗浄に広範に利用され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 粒状物(粒子)
2 不純物
3、3’ 洗浄媒体
4 ポンプ
5 容器
5a 下方入口
5b 上方出口
7 不純物を含む洗浄媒体
10 洗浄対象物
13 スラリー
15 回収物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布を有するヨウ素から成る粒状物および不純物を含んで成る洗浄対象物を洗浄媒体により洗浄して不純物を除去し、ヨウ素を分離する方法であって、
洗浄対象物が容器内で洗浄媒体と接触し、かつ、洗浄媒体の上昇速度が容器内で変化するように、容器に洗浄媒体を下方から上方へ流通させ、
これにより得られる粒状物を含むスラリーを溶融分離操作に付してヨウ素を溶融分離して得ることを特徴とする方法。
【請求項2】
容器が、その下部から上部に向かって連続的または段階的に増加する水平断面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
洗浄媒体は、不純物を溶解させるものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
容器が、その内部に邪魔板を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
洗浄媒体が水である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
粒状物が、0.1〜20000μmの標準偏差を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
粒状物が、10〜19990μmの体積平均粒径を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−107077(P2013−107077A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287217(P2012−287217)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2009−81277(P2009−81277)の分割
【原出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】