説明

粒状でんぷんからエタノールへの転化方法

本願発明は、粒状でんぷん基質からグルコースを生成する方法であって、植物原料から得られた粒状でんぷんを含むスラリーとアルファ−アミラーゼとを、粒状でんぷんのでんぷんゼラチン化温度未満の温度で接触させ、オリゴ糖を生成し、そして前記オリゴ糖を加水分解させ、少なくとも20%のグルコースを含むマッシュを生成する工程、さらにマッシュを発酵し、エタノールを得る工程を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、粒状でんぷんからアルコール(例えば、エタノール)を生成する方法であって、粒状でんぷんのゼラチン化温度未満の温度で植物原料からの粒状でんぷんを含むスラリーをアルファ−アミラーゼに暴露した後、発酵微生物を用いて発酵する工程を含む方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
農作物から燃料源としてのエタノールを生成する方法の効果的商業化は、限られた石油供給に対する継続的、かつ拡大した依存を含む様々な理由から、及びエタノール生産が再生可能なエネルギー源であることから、世界的関心を改めて呼び起こすに至っている。
【0003】
アルコール発酵生成方法、及び特にエタノール生産方法は、一般的に湿式粉砕方法又は乾式粉砕方法で特徴付けられる。これらの方法の概要は、Bothast他、2005年、Appl.Microbiol.Biotechnol.67:19−25ページ及びアルコールテキストブック(THE ALCOHOL TEXTBOOK)、第3版(K.A.Jacques他編集)1999年、ノッティンガム大学発行、イギリスに述べられている。
【0004】
一般に、前記湿式粉砕方法は、穀物を軟らかくする一連の浸透処理(ふやかし)の間に、可溶性でんぷんが除去され、その後、胚芽、繊維(ふすま)及びグルテン(タンパク質)の回収が続く工程を含む。残留でんぷんは、さらに乾燥処理、化学的及び/又は酵素処理される。前記でんぷんはその後、アルコール生成、高果糖コーンシロップ又は商業用純度でんぷんに使用することが出来る。
【0005】
一般に、乾式穀物粉砕は、アルコール及び他の副生成物の生成のために、研削、加熱、液状化、糖化、発酵及び液体と固形の分離を含む多くの基本工程が含まれる。一般的に、コーン穀粒等の全穀粒は、微粒子径に粉砕された後、スラリータンクで液体と混合される。前記スラリーは、液化酵素(例えば、アルファ−アミラーゼ)と共にジェット加熱器で高温にさらされ、穀粒中のでんぷんをデキストリンに可溶化及び加水分解する。前記混合物は、冷却され、さらに糖化酵素(例えば、グルコアミラーゼ)と共に処理され、発酵性グルコースを生成する。前記グルコース含有マッシュはその後、およそ24から120時間、エタノール生産微生物の存在下で発酵される。マッシュ中の前記固形は、液体層から分離され、エタノール及び蒸留用穀物等の有益な副生成物が得られる。
【0006】
前記発酵方法の改善は、同時糖化・発酵又は同時糖化・酵母増殖・発酵と称される方法で糖化工程と発酵工程との結合により達成される。これらの改善された発酵方法は、従来から記述される乾式粉砕発酵方法又は湿式粉砕発酵方法に対しても有利である。改善された発酵器では、糖濃度が有意に産生されず、酵母成長の糖阻害を避けるからである。さらに、容易に生じやすいグルコースの欠乏により、細菌性成長は減少される。よって、同時糖化・発酵方法の使用により、エタノール生産の増大が結果として起こりえる。
【0007】
最近になって、加熱工程を削減する発酵方法又は高温で穀物を処理する必要性を減らした発酵方法が導入されている。しばしば、非加熱、低温加熱又は温加熱と称されるこれらの発酵方法は、穀物の粉砕及び液体と粉砕した穀物との混合によるスラリーの形成、さらに、1以上の粒状でんぷん加水分解酵素、さらに、随意に酵母を、粒状でんぷんのゼラチン化温度未満の温度で混合する工程を含み、エタノール及び他の副生成物を生成する(米国特許第4,514,496号、WO03/066826、WO04/081193、WO04/106533、WO04/080923及びWO05/069840)。
【0008】
粒状でんぷん加水分解酵素と組み合わせた粉砕穀物スラリーを用いた上述の発酵方法は、従来の方法に対して特定の改善を提供する一方で、より高いエネルギー効率及び最終生成物の高生産性をもたらす追加的発酵方法の改善が、粒状でんぷんの転化における産業で必要とされる。本願発明の目的は、粒状でんぷんからアルコール(例えば、エタノール)及び他の最終生成物への転化に用いられる改善された方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本願発明は、粒状でんぷんとアルファ−アミラーゼとを接触させること、及び可溶でんぷんを加水分解し、グルコースを生成する内生植物加水分解酵素に適した条件を提供することにより、粒状でんぷんからアルコール(例えば、エタノール)を生成する方法を提供する。前記グルコースはその後、アルコールを生成するための発酵で供給原料として使用され得る。
【0010】
一態様において、本願発明は、粒状でんぷん基質からグルコースを生成する方法に関連し、
a)植物原料から得られる粒状でんぷんを含むスラリーとアルファ−アミラーゼとを、前記粒状でんぷんのでんぷんゼラチン化温度未満の温度で接触させ、オリゴ糖を生成する工程、及び内生植物の糖質加水分解酵素によりオリゴ糖を加水分解する工程、及び
b)少なくとも10%のグルコースを含むマッシュを生成する工程を含む。
【0011】
さらにこの態様の実施形態において、前記マッシュは、発酵微生物及びでんぷん加水分解酵素の存在下、10℃及び40℃間の温度で、10時間から250時間発酵され、アルコール、特にエタノールを生成する。
【0012】
他の態様において、本願発明は、エタノールを生成する方法に関連し、
a)粒状でんぷんを含むスラリーと、粒状でんぷんを可溶化するアルファ−アミラーゼとを接触させる工程であって、前記接触がpH3.5からpH7.0、前記粒状でんぷんのでんぷんゼラチン化温度未満の温度で、5分間から24時間行われ、20%より多いグルコースを含むマッシュ基質を得る工程、及び
b)発酵微生物及びでんぷん加水分解酵素の存在下、10℃から40℃の温度で、10時間から250時間基質を発酵し、エタノールを生成する工程
を含む。さらに上述のいずれかの態様の実施形態において、当該方法は、エタノールの回収を含む。またさらに上記態様の別の実施形態において、当該方法は、列挙される工程の最初、途中、又は最後のいずれの段階で行われるか特定されない追加的な工程を含むことが出来る。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本明細書で別段の定義がされない限り、本明細書中の全ての技術及び化学的用語は、本願発明が属する技術分野の当業者により共通して理解されるものと同一の意味を有する。
【0014】
本願発明の好ましい方法及び構成物質を本明細書中に記載するが、本明細書で記載される任意の方法及び構成物質と類似又は同等の方法及び構成物質が、本願発明の実務又は試験で使用され得る。
【0015】
本願発明は、参考までに下記の定義及び実施例を用いた方法により詳細に記載される。本明細書で参照される全ての特許及び公表物、それら全ての特許及び公表物に含まれる全ての配列は、参照により明確に本明細書に含まれる。
【0016】
定義:
「発酵」の語は、微生物による有機物質の酵素的及び嫌気的分解を示し、それにより、より単純な有機化合物が生成される。発酵は嫌気的条件下で起こる一方、厳密な嫌気的条件にその語が専ら限定されることは意図されず、酸素存在下でも発酵は起こる。
【0017】
本明細書で使用される「でんぷん」の語は、化学式(C10(ここでXは、任意の数で表される)を有するアミロース及びアミロペクチンを含む植物の複合多糖から成る任意の構成物質を示す。
【0018】
「粒状でんぷん」の語は、生の(非加熱の)でんぷんを示し、植物原料(例えば、穀物及び塊茎)でその自然形態で見られるでんぷんである。
【0019】
本明細書で使用される「乾燥固形含有量(DS)」の語は、スラリー中の全固形量のパーセントを乾燥重量基準で示す。
【0020】
「スラリー」の語は、不溶性固形、(例えば、粒状でんぷん)を含む水性混合物を示す。
【0021】
「デキストリン」の語は、グルコースの短鎖ポリマー(例えば、2から10単位)を示す。
【0022】
「オリゴ糖」の語は、グリコシド結合で結合された2から10の単糖単位を有する任意の化合物を示す。これらの単糖の単鎖ポリマーは、デキストリンを含む。
【0023】
「可溶性でんぷん」の語は、不溶性でんぷん(例えば、粒状でんぷん)の加水分解に起因するでんぷんを示す。
【0024】
「マッシュ」の語は、発酵生成物の生成に使用される液体中の発酵性基質の混合物を示し、発酵性基質と1以上のでんぷん加水分解酵素及び発酵微生物との初期混合から発酵処理終了までの任意の発酵段階を示すのに使用される。
【0025】
「糖化酵素」及び「でんぷん加水分解酵素」の語は、でんぷんから単糖又はオリゴ糖(例えば、ヘキソース又はペントース)へ転化が可能な任意の酵素を示す。
【0026】
「粒状でんぷん加水分解(GSH)酵素」及び「粒状でんぷん加水分解(GSH)能を有する酵素」の語は、粒状のでんぷんを加水分解する能力を有する酵素を示す。
【0027】
「でんぷんの加水分解」の語は、水分子の追加によるグルコシド結合の切断を示す。
【0028】
「アルファ−アミラーゼ(例えば、E.G.クラス3.2.1.1)」の語は、アルファ−1,4−グルコシド結合の加水分解を触媒する酵素を示す。これらの酵素は、1,4−α−結合D−グルコース単位を含有する多糖での1,4−α−D−グルコシド結合の外部(exo)又は内部(endo)加水分解をもたらす酵素としても記載されてきた。
【0029】
「ゼラチン化」の語は、加熱によりでんぷん分子を可溶し、粘性懸濁液を形成することを意味する。
【0030】
「ゼラチン化温度」の語は、基質を含有するでんぷんのゼラチン化が起こる最低温度を示す。ゼラチン化の正確な温度は、特定のでんぷんに依存し、植物種並びに環境及び成長条件等の要因に依存して変化し得る。従って、本明細書で記載されるゼラチン化温度の範囲は、前記変化を包括するように提供される。
【0031】
「ゼラチン化温度未満」の語は、ゼラチン化温度未満の温度を示す。
【0032】
「グルコアミラーゼ」の語は、酵素のアミログルコシダーゼクラス(例えば、E.G.3.2.1.3、グルコアミラーゼ、1,4−アルファ−D−グルカングルコヒドロラーゼ)を示す。これらは、アミロース及びアミロペクチン分子の非還元末端からグルコシル残基を放出する外部作用(exo−acting)酵素である。前記酵素は、アルファ−1,6及びアルファ−1,3結合も加水分解するが、アルファ−1,4結合よりも非常に遅い速度である。
【0033】
「同時糖化・発酵(SSF)」の語は、エタノール生産微生物等の発酵微生物及び少なくとも1の糖化酵素等の酵素が、同一の容器中で同一の工程において組み合わされる最終生成物の生成における方法を示す。
【0034】
「糖化」の語は、直接使用不可能な多糖から単糖又はオリゴ糖へ、最終生成物への発酵転化に用いられる酵素的な転化を示す。
【0035】
「粉砕」の語は、より細かい粒子への穀物の破壊を示す。いくつかの実施形態において、前記語は、研削と置換可能に使用される。
【0036】
「乾式粉砕」の語は、胚芽及びふすま等の穀物の部分が、意図的に除去されていない、乾燥全穀の粉砕を示す。
【0037】
「液状化」の語は、ゼラチン化でんぷんが加水分解され、低分子量可溶性デキストリンを生じさせるでんぷん転化の工程を示す。
【0038】
「希薄蒸留液」の語は、溶解構成物質及び懸濁された微粒子を含有し、発酵の結果として生じた固形状部分から分離される、発酵の結果として生じた液状部分を示す。産業用発酵方法における再利用される希薄蒸留液はしばしば「逆流(back−set)」として参照される。
【0039】
「容器」の語は、タンク、バット、瓶、フラスコ、袋、バイオリアクター等を含むが、これらに限られない。1つの実施形態において、前記語は、本願発明によって包含される糖化及び/又は発酵方法の実施に適した任意のレセプタクルを示す。
【0040】
「最終生成物」の語は、発酵性基質から酵素的に転化された任意の炭素源由来生成物を示す。いくつかの好ましい実施形態において、前記最終生成物は、エタノール等のアルコールである。
【0041】
本明細書で使用される「発酵微生物」の語は、最終生成物の直接的又は間接的生成に用いられる発酵に使用するに適した任意の微生物又は細胞を示す。
【0042】
本願発明で使用される「エタノール生産物」又は「エタノール生産微生物」の語は、単糖又はオリゴ糖からエタノールを生成可能な発酵微生物を示す。
【0043】
「由来する」の語は、「を起源とする」、「得られる」又は「から得られえる」、及び「から単離される」の語を包含し、本願発明で使用されるいくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドは、ヌクレオチドが自然に存在するか又はヌクレオチドが挿入された細胞から生成されることを当該語は意味する。
【0044】
タンパク質又はポリヌクレオチドに関して「異種」の語は、宿主細胞で自然に起こらないタンパク質又はポリヌクレオチドを示す。
【0045】
タンパク質又はポリヌクレオチドに関して「内因性」の語は、宿主細胞で自然に起こるタンパク質又はポリヌクレオチドを示す。
【0046】
「可溶性でんぷんを加水分解可能な内生植物の加水分解酵素」の語は、植物で発現され、生成される加水分解酵素を示し、内因性又は異種遺伝子の発現により生成されることが出来る。いくつかの実施形態において、内因性酵素は、植物で自然に発現される酵素である。
【0047】
「外因性」酵素の語は、植物又は植物細胞で生成されない酵素を示す。
【0048】
「酵素的転化」の語は、一般に酵素作用による基質の修飾を示す。本願発明で使用される当該語は、酵素作用により基質を含有する粒状でんぷん等の発酵性基質の修飾も示す。
【0049】
本願発明で使用される「回収される」、「単離される」、及び「分離される」の語は、自然に関連付けられる少なくとも1の成分から移動される化合物、タンパク質、細胞、核酸又はアミノ酸を示す。
【0050】
本願発明で使用される「酵素単位」の語は、特定の分析条件下で、1分当たり1マイクロモルの生成物を生成する酵素量を示す。例えば、1つの実施形態において、当該語は、「グルコアミラーゼ活性単位」(GAU)は、60℃及びpH4.2の分析条件下で可溶性でんぷん基質(DS4%)から1時間当たり1gのグルコースを生成するのに必要な酵素量として定義される。
【0051】
「収率」の語は、本願発明に係る方法を用いて生成された最終生成物量を示す。いくつかの実施形態において、当該語は、最終生成物の容積を示し、他の実施形態においては、当該語は、最終生成物の濃度を示す。
【0052】
「DE」又は「デキストロース当量」の語は、全還元糖の濃度の測定に用いられる業界基準であり、乾燥重量基準を基にD−グルコースとして計算される。非加水分解の粒状でんぷんは、本質的にDEが0であり、D−グルコースは、DEが100である。スラリー又は溶液中のDEを決定するのに用いられる有益な方法は、シュクロール法(Schroorl’s method、フェーリングの分析滴定)に記載される。
【0053】
本願発明で使用される「を含む(comprising)」の語及びその同類語は、それらの包括的意義(すなわち、当該語は、「を含む(including)」の語及びその対応する同類語と同等である)で使用される。
【0054】
「a」、「an」及び「the」は、文脈で明確に指示されない限り、複数の場合を含む。
【0055】
数値範囲は、その範囲を定める数値も包括する。
【0056】
本明細書の上述の記載は、本願発明の様々な態様又は実施形態の限定ではなく、全体として明細書に参照されることにより含有される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本願発明の実施形態を図解する概略図であり、ここで粒状でんぷんを含有する粉砕された穀物を含み、20%から40%のDSを有するスラリーと、アルファ−アミラーゼとは、55℃から70℃の温度、pH4.0からpH6.0で、2時間から24時間接触される。グルコースを含む結果として得られたマッシュは、発酵器に移送され、pH3.0からpH5.0、25℃から35℃の温度で、24時間から72時間、酵母、栄養素、酸及びでんぷん加水分酵素の存在下発酵され、エタノールを生成する。
【発明を実施するための形態】
【0058】
(A)原材料:
粒状でんぷん−
粒状でんぷんは、小麦、コーン、ライムギ、ソルガム(ミロ)、米、キビ、大麦、ライ小麦、キャッサバ(タピオカ)、ジャガイモ、サツマイモ、サトウダイコン、サトウキビ、及び大豆及びエンドウ豆等のマメ科植物を含むが、限定されない植物原料から得られることが出来る。好ましい植物原料は、コーン、大麦、小麦、米、ミロ及びそれらの組み合わせを含む。特に好ましい植物原料は、コーン(トウモロコシ)から得られる。植物原料は、ハイブリッド品種及び遺伝仕組み換えの品種(例えば、異種遺伝子を含む遺伝子組み換えコーン、大麦又は大豆)を含み得る。葉、幹、殻、外皮、塊茎、穂軸、粒等の植物部位を含むがこれらに限られない植物のいずれの部分も粒状でんぷんの提供に使用され得る。いくつかの実施形態において、例えば、コーンわらの全体が使用され得るように、本質的に植物全体が使用され得る。1つの実施形態において、全穀は粒状でんぷん源として使用され得る。好ましい全穀は、コーン、小麦、ライムギ、大麦、ソルガム及びそれらの組み合わせを含む。他の実施形態において、粒状でんぷんは、繊維、内胚乳及び/又は胚芽成分を含む細分化された穀物部分から得られることが出来る。コーン及び小麦等の植物原料を細分化する方法は、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、異なる資源から得られた植物原料は、本願発明に係る方法で使用される粒状でんぷん(例えば、コーン及びミロ又はコーン及び大麦)を得るために同時に混合され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、粒状でんぷんを含む植物原料は、粉砕等の方法により準備され得る。特に、全穀の粉砕方法は、公知であり、ハンマーミル及びローラーミルの使用を含む。
【0060】
アルファ−アミラーゼ−
アルファ−アミラーゼは、単一酵素、ハイブリッド酵素、又はアルファ−アミラーゼの混合物とすることが出来る。本願発明に包含されるいくつかの実施形態において、前記アルファ−アミラーゼは、E.C.番号、E.C.3.2.1.1−3及び特にE.C.3.2.1.1を有する微生物酵素である。任意の適したアルファ−アミラーゼが、本願発明に係る方法に使用され得る。いくつかの実施形態において、前記アルファ−アミラーゼは、細菌株に由来し、他の実施形態において前記アルファ−アミラーゼは、真菌株から由来する。別の実施形態において、前記好ましいアルファ−アミラーゼは、細菌性アルファ−アミラーゼである。他の実施形態において、前記アルファ−アミラーゼは、酸安定性アルファ−アミラーゼである。適したアルファ−アミラーゼは、組み換え(ハイブリッド及び変異体)及び変種アルファ−アミラーゼ(WO99/19467及びWO97/41213)と同様に自然発生のアルファ−アミラーゼとすることが出来る。特に好ましい実施形態において、前記アルファ−アミラーゼは、バチルス属に由来する。好ましいバチルス属は、バチルス・ズブチリス(B.subtilis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)、バチルス・レンタス(B.lentus)、バチルス・リシェニフォルミス(B.licheniformis)、バチルス・コアグランス(B.coagulans)、及びバチルス・アミロリクエファシエンス(B.amyloliquefaciens)を含む(米国特許第5,093,257号、米国特許第5,763,385号、米国特許第5,824,532号、米国特許第5,958,739号、米国特許第6,008,026号、米国特許第6,361,809号、米国特許第6,867,031号、WO96/23874、WO96/39528及びWO05/001064)。特に好ましいアルファ−アミラーゼは、バチルス属バチルス・ステアロサーモフィラス、バチルス・アミロリクエファシエンス及びバチルス・リシェニフォルミスに由来する(米国特許第6,187,576号、米国特許第6,093,562号、米国特許第5,958,739号、US2006/0014265及びWO99/19467)。
【0061】
最も好ましいアルファ−アミラーゼは、野生型、ハイブリッド及び変異体アルファ−アミラーゼ酵素を含むバチルス・ステアロサーモフィラス及びバチルス・リシェニフォルミスに由来するアミラーゼである。鈴木他(1989年)J.Biol.Chem.264:18933−18938ページ及びUS2006/0014265、特に配列番号3、4及び16を参照にされたい。アメリカン−タイプ−カルチャー−コレクション(American Type Culture Collection、ATCC)番号−ATCC39709、ATCC11945、ATCC6598、ATCC6634、ATCC8480、ATCC9945A及びNCIB8059を有する株も参照にされる。
【0062】
さらに、細菌性アルファ−アミラーゼ、真菌アルファ−アミラーゼは、本願発明に係る方法での使用に意図される。適した真菌アルファ−アミラーゼは、A.oryzae及びA.niger(例えば、FUNGAMYL及びCLARASE L)等のアスペルギルス属、及びトルコデルマ属、クモノスカビ属、ケカビ属、及びペニシリウム属等の繊維状真菌株に由来する。
【0063】
本願発明に係る方法の使用に意図される市販のアルファ−アミラーゼは、SPEZYME AA、SPEZYME FRED、SPEZYME ETHYL、GZYME G997、CLARASE L(ジェネンコー−インターナショナル−インク)、TERMAMYL 120−L、LC、SC及びSUPRA(Novozymes Biotech)、LIQUOZYME X及びSAN SUPER(Novozymes A/S)及びULTRA THIN(Valley Research)を含む。
【0064】
植物酵素−
植物は、アルファ−アミラーゼ(EC3.1.1.1);ベータ−アミラーゼ(EC3.1.1.2)、アミログルコシダーゼ(グルコアミラーゼ)(EC3.1.1.3)及びでんぷんホスホリラーゼ(EC2.4.1.1)等の自然発生のでんぷん分解酵素を有する。さらに、植物はアミラーゼ、グルコアミラーゼ等のでんぷん分解酵素をコードする異種遺伝子を含むように遺伝子操作されていることが出来る(WO03/018766及びWO05/096804)。自然発生又は挿入ポリヌクレオチドからの発現に関わらず、内因性でんぷん分解植物酵素は、ジェット加熱の温度又はさらに粒状でんぷんのゼラチン化温度を超える温度等の上昇された温度に暴露することにより不活化される。しかし、本願発明の方法で実施される温度において、内因性でんぷん分解酵素は、不活性化されず、実際に粒状でんぷんの加水分解に寄与することが考えられている。理論には結びつかないものの、発明者は、接触工程で提供されるアルファ−アミラーゼが、植物原料の粒状でんぷん構造を修飾し、デキストリンを含むオリゴ糖の生成を可能にすると考える。前記オリゴ糖は、接触工程によって包括される温度(例えば45℃から70℃)で植物でんぷん分解酵素によりさらに分解される。前記植物でんぷん分解酵素は、部分的に加水分解されたでんぷんからグルコースの生成に作用する。グルコアミラーゼの外因性供給源が接触工程で含まれることが出来る一方、その後のアルコール発酵への供給体として随意に使用されるグルコースの供給に外因性グルコアミラーゼの追加が必要とされない。従って1つの実施形態において、本願発明に係る前記接触工程は、微生物供給源に由来するグルコアミラーゼの追加を含まない。別の実施形態において、前記接触工程は、外因性酵素、特に外因性グルコアミラーゼ又は他のオリゴ糖加水分解酵素の追加なしに実施される。別の実施形態において、前記オリゴ糖は、植物の属によって特定、或いは植物の属及び種によって特定される自然発生の内生植物酵素によってのみ加水分解される。しかし、外因性グルコアミラーゼの追加及び/又は他のフィターゼ及びプロテアーゼ等の酵素は、可溶化粒状でんぷんの生成を増大する。
【0065】
発酵微生物−
発酵微生物の例は、アルコールデヒドロゲナーゼ及びピルビン酸デヒドロゲナーゼを発現し、Zymomonas moblisから得ることが出来る(例えば米国特許第5,000,000号、米国特許第5,028,539号、米国特許第5,424,202号、米国特許第5,514,583号及び米国特許第5,554,520号を参照にされたい)エタノール生産(ethanologenic)細菌等のエタノール生産(ethanologenic)微生物又はエタノール生産(ethanol producing)微生物である。追加的実施形態において、前記エタノール生産(ethanologenic)微生物は、キシロース還元酵素及びキシリトールデヒドロゲナーゼ、キシロースからキシルロースに転化する酵素を発現する。別の実施形態において、キシロース異性体は、キシロースからキシルロースへの転化に使用される。特に好ましい実施形態において、ペントース及びヘキソースの両方からエタノールへの発酵が可能な微生物が利用される。例えば、いくつかの実施形態において、前記微生物は、天然の又は遺伝子操作されていない微生物とすることができ、また他の実施形態において、前記微生物は、組み換え微生物とすることが出来る。例えば、いくつかの実施形態において、好ましい発酵微生物は、バチルス属、乳酸菌、大腸菌、エルウィニア属、パントエア属(例えば、P.citrea)及びクレブシエラ属(例えばK.oxytoca)からの細菌株を含む(例えば、米国特許第5,028,539号、米国特許第5,424,202号及びWO95/13362を参照にされたい)。
【0066】
さらに好ましい実施形態において、前記エタノール生産(ethanol producing)微生物は、酵母等の真菌微生物及び特にS.cerevisiae株等のサッカロマイセス属(米国特許第4,316,956号)である。多様なS.cerevisiaeが市販され、これらにはFALI(Fleischmann’s Yeast)、SUPERSTART(Alltech)、FERMIOL(DSM Specialties)、RED STAR(Lesaffre)及びAngel alcohol yeast(Angel Yeast会社、中国)が含まれるがこれらに限定されない。
【0067】
第二酵素−
1つの実施形態において、追加的でんぷん加水分解酵素を必要とせず、よって、接触工程で前記酵素を含まないことを意図する一方で、追加的酵素は、本願発明によって包含される接触工程及び発酵工程の両方で含まれることが出来る。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、粒状でんぷんスラリーと、アルファ−アミラーゼ及び1以上の第二酵素とを接触することを含む接触工程において、1以上の第二酵素として含まれる。他の実施形態において、前記追加的酵素は、酵母及び他の成分と共に発酵工程で含まれる。
【0068】
いくつかの実施形態において、アルファ−アミラーゼとの接触工程の間、前記第二酵素は、グルコアミラーゼ、粒状でんぷん加水分解酵素、プロテアーゼ、フィターゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プルラナーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ベータ−グルカナーゼ、ベータ−アミラーゼ、サイクロデキストリン−トランスグリコシルトランスフェラーゼ及びそれらの組み合わせを含むことが出来る。いくつかの好ましい実施形態において、前記接触工程は、アルファ−アミラーゼ、フィターゼ及び随意にプロテアーゼの組み合わせを含む。他の実施形態において、前記接触工程は、アルファ−アミラーゼ、グルコアミラーゼ及び随意にプロテアーゼの組み合わせを含む。さらに他の実施形態において、前記接触工程は、アルファ−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、フィターゼ及び随意にプロテアーゼの組み合わせを含む。
【0069】
グルコアミラーゼ(GA)(E.C.3.2.1.3.)異種又は細菌、植物及び菌源を発現する内因性タンパク質に由来することが出来る。本願発明に係る組成物及び方法に有用な好ましいグルコアミラーゼは、繊維状菌及び酵母の数株によって生成される。特に、アスペルギルス属及びトリコデルマ属の株から分泌されたグルコアミラーゼは、商業的に重要である。適したグルコアミラーゼは、変異体及び遺伝子操作された変種グルコアミラーゼと同様に自然発生の野生型グルコアミラーゼを含む。下記のグルコアミラーゼは、本願発明によって包含される方法に使用され得るグルコアミラーゼの非限定的例である。すなわち、Aspergillus niger G1及びG2グルコアミラーゼ(Boel他、(1984年)EMBO J.3:1097−1102ページ、WO92/00381、WO00/04136及び米国特許第6,352,851号)、Aspergillus awamoriグルコアミラーゼ(WO84/02921)、Aspergillus oryzaeグルコアミラーゼ(Hata他、(1991年)Agric.Biol.Chem.55:941−949ページ)及びAspergillus shirousamiである。(Chen他、(1996年)Prot.Eng.9:499−505ページ、Chen他、(1995年)Prot.Eng.8:575−582ページ、及びChen他、(1994年)Biochem J.302:275−281ページを参照にされたい)。
【0070】
グルコアミラーゼは、タラロマイセス属に由来するT.emersonii、T.leycettanus、T.duponti及びT.thermophilus(WO99/28488、米国特許第RE:32,153号、米国特許第4,587,215号)等のタラロマイセス属株、T.reesei等のトリコデルマ属株及び特に米国特許公開番号第2006−0094080号に開示される配列番号4と少なくとも80%、85%、90%及び95%の配列同一性を有するグルコアミラーゼ、R.niveus及びR.oryzae等のクモノスカビ属株、ケカビ属株及びH.grisea等のフミコーラ属株(Boel他、(1984年)EMBO J.3:1097−1102ページ、WO92/00381、WO00/04136、Chen他、(1996年)Prot.Eng.9:499−505ページ、Taylor他、(1978年)Carbohydrate Res.61:301−308ページ、米国特許第4,514,496号、米国特許第4,092,434号及びJensen他、(1988年)Can.J.Microbiol.34:218−223ページを参照にされたい)からも得られる。本願発明で有用な他のグルコアミラーゼは、Athelia rolfsii及びそれらの変異体から得られるグルコアミラーゼを含む(WO04/111218)。
【0071】
商業的に使用されるグルコアミラーゼ活性を有する酵素は、例えば、Aspergillus niger(商標名DISTILLASE、OPTIDEX L−400及びG ZYME G990 4X、ジェネンコー−インターナショナル−インク)又はクモノスカビ種(商標名CU.CONC、新日本ケミカルズ、日本)から生成される。さらに商業用消化酵素、商標名GLUCZYME、アマノ・ファーマシューティカルズ、日本(高橋他、(1985年)J.Biochem.98:663−671ページ)である。追加的酵素は、クモノスカビ種のグルコアミラーゼ(E.G.3.2.1.3)の3型、すなわち「Gluc1」(分子量74,000)、「Gluc2」(分子量58,600)及び「Gluc3」(分子量61,400)を含む。さらに酵素製剤GC480(ジェネンコー−インターナショナル−インク)も本願発明で使用される。
【0072】
粒状でんぷん加水分解酵素(GSHE)は、粒状でんぷんを加水分解することができ、及びこれらの酵素は、バチルス属種、ペニシリウム属種、フミコーラ属種、トルコデルマ属種、アスペルギルス属種、ケカビ属種、及びクモノスカビ属種等の真菌、細菌及び植物細胞から回収される。1つの実施形態において、GSH活性を有する酵素の特定のグループは、グルコアミラーゼ活性及び/又はアルファ−アミラーゼ活性を有する酵素を含む(Tosi他、(1993年)Can.J.Microbiol.39:846−855ページを参照にされたい)。Rhizopus oryzae GSHEは、芦刈他、(1986年)Agric.Biol.Chem.50:957−964ページ及び米国特許第4,863,864号に開示される。Humicola grisea GSHEは、Allison他、(1992年)Curr.Genet.21:225−229ページ、WO05/052148及び欧州特許第171218号に開示される。Aspergillus awamori var. kawachi GSHEは、林田他、(1989年)Agric.Biol.Chem.53:923−929ページに開示される。Aspergillus shirousami GSHEは、渋谷他、(1990年)Agric.Biol.Chem.54:1905−1914ページによって開示されている。
【0073】
一つの実施形態において、GSHEはグルコアミラーゼ活性を有し、Humicola grisea株、特にHumicola grisea var. thermoidea株(米国特許第4,618,579号を参照されたい)に由来することが可能である。いくつかの好ましい実施形態において、GSH活性を有する前記フミコーラ属酵素は、WO05/052148の配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の配列同一性を有する。
【0074】
他の実施形態において、GSHEはグルコアミラーゼ活性を有し、Aspergillus awamori株、特にA.awamori var.kawachi株に由来することが可能である。いくつかの好ましい実施形態において、GSH活性を有するA.awamori var.kawachi酵素は、WO05/052148の配列番号6のアミノ酸配列に少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の配列同一性を有する。
【0075】
他の実施形態において、GSHEは、グルコアミラーゼ活性を有し、R.niveus又はR.oryzae等のクモノスカビ株に由来することが可能である。麹株R.niveusに由来する前記酵素は、商標名「CU CONC」として、又は前記クモノスカビからの酵素は、商標名GLUZYMEとして売られる。
【0076】
グルコアミラーゼ活性を有する他の有用なGSHEは、SPIRIZYME Plus(Novozymes A/S)であり、酸性真菌アミラーゼ活性も含む。
【0077】
他の実施形態において、GSHEはアルファ−アミラーゼ活性を有し、A.awamori、A.niger、A.oryzae、又はA.kawachi株等、特にA.kawachi株であるアスペルギルス株に由来することが可能である。
【0078】
いくつかの好ましい実施形態において、GSH活性を有する前記A.kawachi酵素は、WO05/118800及びWO05/003311の配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の配列同一性を有する。
【0079】
いくつかの実施形態において、GSH活性を有する酵素は、例えば、Aspergillus nigerアルファ−アミラーゼ、Aspergillus oryzaeアルファ−アミラーゼ又はAspergillus kawachi−アルファ−アミラーゼの触媒ドメイン等のアルファ−アミラーゼの触媒ドメインと、Aspergillus kawachi又はHumicola griseaでんぷん結合ドメイン等の異なる真菌アルファ−アミラーゼ又はグルコアミラーゼのでんぷん結合ドメインとを含有する等のハイブリッド酵素である。他の実施形態において、GSH活性を有するハイブリッド酵素は、アスペルギルス属種、タラロマイセス属種、アルテア属種、トルコデルマ属種又はクモノスカビ属種の触媒ドメイン等のグルコアミラーゼの触媒ドメインと、異なるグルコアミラーゼ又はアルファ−アミラーゼのでんぷん結合ドメインとを含み得る。GSH活性を有するいくつかのハイブリッド酵素は、WO05/003311、WO05/045018、渋谷他、(1992年)Biosci.Biotech.Biochem56:1674−1675ページ及びCornett他、(2003年)Protein Engineering16:521−520ページに開示される。
【0080】
適したプロテアーゼは、例えば、酸性真菌プロテアーゼNSP24及びGC106(ジェネンコー−インターナショナル−インク)等の真菌プロテアーゼ及び細菌性プロテアーゼのような微生物プロテアーゼを含む。好ましい真菌プロテアーゼは、アスペルギルス属(例えば、A.niger及びA.oryzaeからのプロテアーゼ)、ケカビ属(例えばM.miehei)、トルコデルマ属、クモノスカビ属、及びカンジダ属株に由来する。好ましい細菌性プロテアーゼは、バチルス・アミロリクエファシエンス等のバチルス属に由来する。発酵に添加されたプロテアーゼは、遊離アミノ窒素レベルを増大し、酵母の代謝率を増大させ、さらにより高い発酵効率を与えることが可能である。
【0081】
本願発明に係る方法で使用され得る酵素は、ベータ−アミラーゼ(E.C.3.2.1.2)を含む。これらはアミロース、アミロペクチン及び関連したグルコースポリマーで1,4−アルファ−グルコシド結合の加水分解を触媒する外部作用マルトジェニック(exo−acting maltogenic)アミラーゼがある。市販のベータ−アミラーゼは、ジェネンコー−インターナショナル−インクから入手可能であり、例として、SPEZYME BBA及びOPTIMALT BBAを含む。
【0082】
エンド−グルカナーゼ等のセルラーゼ(E.C.3.2.1.4)は、本願発明に係る方法で使用され得る。セルラーゼの例は、トルコデルマ属、フミコーラ属、フザリウム属、及びアスペルギルス属等の繊維状真菌からのセルラーゼを含む。市販のセルラーゼは、SPEZYME CP及びLAMINEX(ジェネンコー−インターナショナル−インク)及びCELLUZYME及びULTRAFLO(Novozymes A/S)として入手可能である。
【0083】
本願発明に係る方法で有用なキシラナーゼは、アスペルギルス属、トルコデルマ属、ニューロスポラ属(Neurospora)、及びフザリウム属等の細菌又は真菌源由来とすることが出来る。市販の製剤は、SPEZYME CP及びLAMINEX(ジェネンコー−インターナショナル−インク)及びULTRAFLO(Novozymes A/S)を含む。
【0084】
多くの細菌及び真菌フィターゼ(E.C.3.1.3.8及び3.1.3.26)が知られ、いくつかの実施形態においてフィターゼの添加は、本願発明の方法で特に有用である。酵母フィターゼは、サッカロマイセス属株(例えばS.cerevisiae)及びシュワニオマイセス属(Schwanniomyces、例えば、S.occidentalis)(Wodzinski他、Adv.Apple.Microbiol.、42:263−303ページ)に由来し得る。他の真菌フィターゼは、文献に開示され、Wyss他、(1999年)Appl.Environ.Microbiol.65:367−373ページ、Berka他、(1998年)Appl.Environ.Microbiol.64:4423−4427ページ、山田他、(1986年)Agric.Biol.Chem.322:1275−1282ページ、PCT国際公開番号WO98/28408、WO98/28409、WO97/38096及びWO9844125及び米国特許第6,734,004号、第6,350,602号及び第5,863,533号)が参照にされる。真菌フィターゼは、アスペルギルス属(例えば、A.niger、A.awamori、A.terreus、A.oryzea及びA.fumigatus)、Thermomyces(Humicola)lanuginousus、フザリウム属(F.javanicum及びF.versillibodes)に由来する。細菌性フィターゼも本願発明に使用される(Greiner R.他、(1993年)Arch.Biochem.Biophys.303:107−113ページ、Yoon S.J.他、(1996年)Enzyme and Microbial Technol.18:449−454ページ及びWO06/043178)。
【0085】
本願発明に従って使用される市販の入手可能なフィターゼは、PHYZYME XP 5000(Danisco A/S)、FINASE(Altech)、GC491、FINASE、SPEZYME HPA(ジェネンコー)、BIO−FEED PHYTASE及びPHYTASE NOVO(Novozymes)及びNATUPHOS(DSM)を含む。
【0086】
当業者は、本願発明で包含される工程段階で使用される酵素の有効量を容易に決定できる。
【0087】
(B)工程段階−
前記処理される粒状でんぷん(例えば、粉砕された穀物)は、水溶液と混合され、スラリーを得る。前記水溶液は、例えば、水、希薄蒸留液及び/又は逆流から得られることが出来る。
【0088】
スラリーは、5−60%、10−50%、15−45%、15−30%、20−45%、20−30%及び25−40%間のDSを有することが出来る。前記アルファ−アミラーゼとの接触工程は、pH3.5から7.0の範囲、pH3.5から6.5の範囲、好ましくはpH4.0から6.0の範囲、及びより好ましくはpH4.5から5.5の範囲で実施される。前記スラリーは、粒状でんぷんのでんぷんゼラチン化温度未満の温度でアルファ−アミラーゼとの接触が保たれる。いくつかの実施形態において、この温度は、45℃及び70℃の間、他の実施形態において、前記温度は、50℃及び70℃の間、55℃及び70℃の間、60℃及び70℃の間、60℃及び65℃の間、55℃及び65℃の間及び55℃及び68℃の間に保たれる。別の実施形態において、前記温度は、少なくとも45℃、48℃、50℃、53℃、55℃、58℃、60℃、63℃、65℃及び68℃である。他の実施形態において、前記温度は、65℃、68℃、70℃、73℃、75℃及び80℃より高くない。
【0089】
本明細書の方法に従って使用される多くの粒状でんぷんに対する初期でんぷんゼラチン化温度の範囲は、大麦(52℃から59℃)、小麦(58℃から64℃)、ライムギ(57℃から70℃)、コーン(62℃から72℃)、高アミロースコーン(67℃から80℃)、米(68℃から77℃)、ソルガム(68℃から77℃)、ジャガイモ(58℃から68℃)、タピオカ(59℃から69℃)及びサツマイモ(58℃から72℃)(J.J.M.Swinkels、32−38ページ、でんぷん転化技術(STARCH CONVERSION TECHNOLOGY)、Van Beynun他編集、(1985年)Marcel−Dekker社、ニューヨーク州及びアルコールテキスト(The Alcohol Textbook)、第3版、飲料、燃料及び工業用アルコール産業のための参考書、Jacques他編集、(1999年)ノッティンガム大学発行、イギリス)を含む。
【0090】
接触工程において、前記スラリーは、5分間から48時間、或いは5分間から24時間アルファ−アミラーゼとの接触が保たれ得る。いくつかの実施形態において、前記反応時間は、15分間及び12時間の間、15分間及び6時間の間、15分間及び4時間の間及び30分間及び2時間の間である。
【0091】
接触工程で使用されるアルファ−アミラーゼの有効濃度は、使用される具体的な工程条件及び粒状でんぷんに従って変化する。しかし、一般に使用されるアルファ−アミラーゼの量は、0.001から50AAU/gDS、0.01から30AAU/gDS、0.01から10AAU/gDS及び0.05から5.0AAU/gDSの範囲である。
【0092】
いくつかの実施形態において、接触工程及び/又は発酵工程でのアルファ−アミラーゼの有効量は、0.01から15SSU/gDS、0.05から10SSU/gDS、0.1から10SSU/gDS及び0.5から5SSU/gDSである。
【0093】
いくつかの実施形態において、接触工程及び/又は発酵工程に用いられるグルコアミラーゼの有効量は、0.01から15GAU/gDS、0.05から10GAU/gDS、0.1から10GAU/gDS及び0.5から5GAU/gDSの範囲である。
【0094】
いくつかの実施形態において、接触工程及び/又は発酵工程で使用されるフィターゼの有効量は、0.001から15FTU/gDS、0.005から10FTU/gDS、0.05から5FTU/gDSの範囲である。1フィターゼ単位(FTU)は、0.0051モル/リットル、37℃及びpH5.0でフィチン酸ナトリウムから1分間当たり1マイクロモルの無機リンを遊離する酵素の量である。
【0095】
いくつかの実施形態において、接触工程及び/又は発酵工程で使用されるプロテアーゼの有効量は、0.01から15SAPU/gDS、0.01から10SAPU/gDS、0.05から5SAPU/gDSの範囲である。SAPUは、分光学的酸性プロテアーゼ単位を示し、1SAPUは、分析条件下でカゼイン基質から1分間当たり1マイクロモルのチロシンを遊離するプロテアーゼ酵素活性の量である。
【0096】
接触工程において、25−90%の粒状でんぷんは、可溶化され、デキストリンを含むオリゴ糖を生成する。いくつかの実施形態において、より多い20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%及び90%の粒状でんぷんが可溶化される。
【0097】
上記反応時間の粒状でんぷんとアルファ−アミラーゼとの接触の後、より多い10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%及び80%のグルコースを含む可溶性でんぷん基質(マッシュ)が得られる。
【0098】
接触工程のいくつかの好ましい実施形態において、20−40%のDSを有する粒状コーンでんぷんを含むスラリーは、55℃から70℃の間の温度で1から6時間、バチルス・ステアロサーモフィラス又はバチルス・リシェニフォルミスに由来するアルファ−アミラーゼと接触され、少なくとも30%のグルコースを含む可溶性でんぷん基質を得る。接触工程の他の好ましい実施形態において、20−40%のDSを有する粒状ミロでんぷんを含むスラリーは、55℃から70℃の間の温度で1から6時間、バチルス・ステアロサーモフィラス又はバチルス・リシェニフォルミスに由来するアルファ−アミラーゼと接触され、少なくとも50%のグルコースを含む可溶性でんぷん基質を得る。
【0099】
グルコースを含むマッシュの生成を終えた接触工程の後、前記マッシュは、発酵微生物(例えば、エタノール生産(ethanol−producing)微生物)を用いて発酵させられる。
【0100】
しかし、少なくとも10%のグルコースを含むマッシュを発酵させる前に、前記マッシュはさらに、例えば逆流及び/又はコーンスティープ(corn steep)を含む水溶液にさらされ、pH3.0から6.0、pH3.5から5.5、又はpH4.0から5.5の範囲にpHを調製され得る。本願発明に係るこの実施形態において、マッシュのDS(%)は、希釈され得る。例えば、希釈されるマッシュのDSは、5から35%、5から30%、5から25%、5から20%、5から15%及び5から10%より低い接触工程でのスラリーのDS(%)とすることが出来る。1つの非限定的な例において、接触工程でのスラリーのDS(%)がおよそ32%であり、前記マッシュがさらに、DSを5から10%希釈する希釈水溶液にされされる場合、前記発酵されるマッシュのDSは、22%及び27%の間になる。いくつかの好ましい実施形態において、接触するスラリーのDSが、30から35%の間の場合、希釈されるスラリーのDSは、約20から30%になる。
【0101】
好ましい実施形態において、少なくとも10%のグルコースを含むマッシュはその後、上述の発酵微生物を用いた発酵工程に移される。これらの発酵工程は、アルコールテキスト(第3版、飲料、燃料及び工業用アルコール産業のための参考書、Jacques他編集、(1999年)ノッティンガム大学発行、イギリス)に記載されている。
【0102】
いくつかの好ましい実施形態において、前記マッシュは、pH3.0から6.5、pH3.0から6.0、pH3.0から5.5、pH3.5から5.0、pH3.5から4.5の範囲のpHで、12から240時間、好ましくは12から120時間、及びより好ましくは24から90時間、15から40℃及び25から35℃の範囲の温度で酵母を用いて発酵され、アルコール生成物、好ましくはエタノールを生成する。
【0103】
酵母細胞は、発酵もろみ液1ml当たり10から1012、好ましくは10から1010の酵母生細胞の量で一般的に供給される。酵母細胞に加え前記発酵はさらに、発酵微生物(例えば酵母)栄養素、随意に酸及び追加的酵素を含む。
【0104】
1つの好ましい実施形態において、接触工程は発酵工程からの分離容器内で実施される。接触工程及び発酵工程は、同一の容器内でSSF法による実施が可能であることが意図される。
【0105】
いくつかの実施形態において、上述の原材料に加えて、発酵培地は、ビタミン(例えば、ビオチン、葉酸、ニコチン酸、リボフラビン)、補酵素、及びマクロ及びマイクロ−栄養素及び塩(例えば、(NH4)SO、KHPO、NaCl、MgSO、HBO、ZnCl及びCaCl)を含むがこれらに限定されない栄養補助食品を含有する。
【0106】
発酵工程に含まれる追加的酵素は、接触工程で使用される酵素と同一又は異なることが出来る。いくつかの実施形態において、前記酵素は、粒状でんぷん加水分解酵素を含むアルファ−アミラーゼ及びグルコアミラーゼを含有する。いくつかの好ましい実施形態において、前記グルコアミラーゼ及びアルファ−アミラーゼは、配合され得る。特に好ましい酵素配合は、A.kawachiからのアルファ−アミラーゼと、A.nigerからのグルコアミラーゼとの配合であるSTARGEN 001(ジェネンコー−インターナショナル−インク)を含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記グルコアミラーゼは、Trichoderma reeseiグルコアミラーゼ、Athelia rolfiグルコアミラーゼ、タラロマイセス属グルコアミラーゼ、アスペルギルス属グルコアミラーゼ及びハイブリッドグルコアミラーゼ及びそれらに由来する変異体グルコアミラーゼに由来する。いくつかの好ましい実施形態において、前記酵素は、セルラーゼ、フィターゼ及びプロテアーゼから選択される。
【0107】
アルコール及び他の最終生成物の回収−
本願発明に係る発酵方法の好ましい最終生成物は、アルコール生成物、好ましくはエタノールである。前記方法により生成された最終生成物は、発酵培地から分離及び/又は精製されることが出来る。分離及び精製に用いる方法は知られており、例えば、前記培地を抽出、蒸留及びカラム・クロマトグラフィー処理することである。いくつかの実施形態において、前記最終生成物は、培地を高圧液体クロマトグラフ(HPLC)分析に直接処理することで単離される。
【0108】
別の実施形態において、前記マッシュは、例えば、液体層と固形層とに遠心分離することにより分離され、アルコール等の最終生成物と固形が回収される。前記アルコールは、蒸留及び分子シーブ脱水又は限外ろ過法等の方法により回収され得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、前記エタノールの収率は、体積で8%、10%、12%、14%、16%及び18%より多くなる。本願発明に係る方法に従って得られたエタノールは、燃料エタノール、飲用エタノール又は工業用エタノールとして使用され得る。
【0110】
別の実施形態において、前記最終生成物は、動物飼料として使用され得る蒸留乾燥穀物(DDG)及び蒸留乾燥穀物プラス可溶分(DDGS)等の発酵副生成物を含むことが出来る。
【実施例】
【0111】
実験
下記の実施例は、特定の好ましい実施形態及び本願発明に係る態様の実証及びさらに具体化を目的として供給され、それらの範囲を限定するようには解釈されない。実際に、これらの教示は、本明細書で記載されるプロセスシステムの更なる最適化に使用される。
【0112】
下記の開示及び実験の項では、下記の略語が適用される。すなわち、GA(グルコアミラーゼ)、wt%(重量パーセント)、℃(摂氏)、HO(水)、dHO(脱イオン水)、dIHO(脱イオン水、Milli−Qろ過)、g又はgm(グラム)、μg(マイクログラム)、mg(ミリグラム)、kg(キログラム)、μL(マイクロリットル)、ml及びmL(ミリリットル)、mm(ミリメートル)、μm(マイクロメートル)、M(モル)、mM(ミリモル)、μM(マイクロモル)、U(単位)、MW(分子量)、sec(秒)、min(分)、hr(時間)、DO(溶解酸素)、W/V(体積当たりの重量)、W/W(重量当たりの重量)、V/V(体積当たりの体積)、ジェネンコー(ジェネンコー−インターナショナル−インク、パロ・アルト、カルフォルニア州)、MT(メートルトン)、及びETOH(エタノール)である。
【0113】
以下の実施例で下記の酵素製剤を使用した:
SPEZYME Ethyl(ジェネンコーから入手可能)−バチルス・リシェニフォルミスの遺伝子組み換え株から得られた細菌性アルファ−アミラーゼである。
【0114】
GC100−US2006/0014265で開示される実験的細菌性アルファ−アミラーゼである。
【0115】
WO2005/052148の配列番号3として開示されるアミノ酸配列を有するHumicola griseaグルコアミラーゼ(HGA)。
【0116】
STARGEN 001(ジェネンコーから入手可能)−Aspergillus nigerグルコアミラーゼとAspergillus kawachiアルファ−アミラーゼとの配合である。
【0117】
以下の実施例で下記の分析を使用した:
前記アルファ−アミラーゼの活性を、アルファ−アミラーゼ単位(AAU)として表現し、酵素活性は、分光光度法で測定したヨウ素染色能力の減少率に反映されるでんぷん加水分解の割合によって決定した。細菌性アルファ−アミラーゼ活性の1AAUは、標準状態で1分間当たり10mgのでんぷんを加水分解するのに必要な酵素量である。
【0118】
アルファ−アミラーゼ活性は、可溶性でんぷん単位(SSU)としても決定され、pH4.5、50℃で酵素試料の一定分量による可溶性ジャガイモでんぷん基質(DS4%)の加水分解の程度に基づく。前記還元糖の含有量を、Miller,G.L.(1959年)Anal.Chem.31:426−428ページに記載されるDNS法を用いて測定した。酵素活性(SSU)の1単位は、1分間当たり特定のインキュベーション条件で放出されるグルコース1mgの還元力と等価である。
【0119】
グルコアミラーゼ活性を、p−ニトロフェニル−アルファ−D−グルコピラノシド(PNPG)からグルコース及びp−ニトロフェノールへの加水分解を触媒するグルコアミラーゼの機能に基づいた公知の分析法を用いて測定した。アルカリpHで、グルコアミラーゼ活性と比例する黄色を形成したニトロフェノールを、400nmで測定し、GAUとして測定された酵素基準と比較した。
【0120】
1「グルコアミラーゼ活性単位」(GAU)は、pH4.2及び60℃で1時間当たり、可溶性でんぷん基質(DS4%)からグルコースとして算出される還元糖1gmを生成する酵素量である。
【0121】
与えられた温度での全可溶固形含有量の測定であるブリックス(Brix)を、屈折計を用いた測定で決定した。
【0122】
全でんぷん含有量の測定:酵素−酵素でんぷん液状化及び糖化方法を、全でんぷん含有量の決定に使用した。典型的分析において、2gの乾燥試料を100mlコールラウシュフラスコに入れ、pH7.0MOPS緩衝液45mlを加えた。前記スラリーは、30分間十分に攪拌された。(水で1:50に希釈された)SPEZYME FRED(ジェネンコー)1.0mlを加え、加熱し、3−5分間煮沸した。前記フラスコを、オートクレーブに置き、121℃で15分間維持した。加圧滅菌の後、前記フラスコを95℃で水浴させ、1:50で希釈されたSPEZYME FRED1mlを加え、45分間インキュベートした。pHをpH4.2に調製し、60℃まで温度を下げた。その後、20ml緩衝酢酸溶液pH4.2を加えた。1:100で希釈したOPTIDEX L−400(ジェネンコー)1.0mlを加え、18時間60℃でインキュベーションすることで糖化を行った。酵素反応は、95℃で10分間加熱し終了した。基準としてのグルコースを用いたHPLC分析で全糖組成を決定した。酵素処理を用いず、試料を室温で水抽出し、全糖から可溶性でんぷん加水分解物を除去した。
【0123】
可溶固形分(%)の測定−試料7mlを小さいスクリューキャップテストチューブに入れ(pHを5.0から6.0に調製し)、SPEZYME Fred0.007mlを前記チューブに加えた。前記テストチューブを10分間煮沸水槽に入れ、インキュベーション中幾度か緩やかに混合した。10分間後前記チューブは回収され、1時間80℃の水浴に入れた。前記チューブを、冷却し、遠心分離にかけた。上清のブリックスを決定し、コントロール試料と比較した。可溶固形分(%)=コントロールブリックス×100/試料ブリックスである。
【0124】
試料のエタノール及び糖質の測定は、以下のHPLC法を用いて決定した。
【0125】
1.5mLエッペンドルフ遠心分離チューブを発酵マッシュで満たし、10分間氷上で冷却した。試料チューブをエッペンドルフ卓上遠心分離機で1分間遠心分離した。1.1N HSO0.05mLを含むテストチューブに上清サンプル0.5mLを移し、5分間静置した。水5.0mLをテストチューブに加え、その後試料を0.2μmナイロンシリンジフィルターを通してHPLCバイアルにろ過し、HPLCに流した。前記HPLC条件は以下を含む。
【0126】
エタノール系:カラム:フェノメネックス−レゼックス(Phenomenex Rezex)有機酸カラム(RHM−単糖)#00H−0132−KO(バイオラッド87Hと同等)、カラム温度:60℃、移動相:0.01N HSO、流量:0.6mL/分、検出方法:RI、及び注入量:20μLである。
【0127】
糖質系:カラム:フェノメネックス−レゼックス−カーボハイドレイト(RCM−単糖)#00H−0130−KO(バイオラッド87Hと同等)、カラム温度:70℃、移動相:ナノピュア(Nanopure)DI水、流量:0.8mL/分、検出方法:RI、注入量:10μL(3%DS物質)である。
【0128】
サッカリドの分子量に基づいて分離されたカラム−前記カラムは、DP1(グルコース)、DP2(二糖)、DP3(三糖)及びDP>3(3より多い重合の程度を有するオリゴ糖)として指定される。
【0129】
実施例1
全粉末コーン及び細分化コーンの粒状でんぷんからの可溶化及びエタノール生産
この実施例では、(A)13.3%の含水率を有する全粉末コーン370g、(B)9.2%の含水率を有するコーン内胚乳354.2g及び(C)11.8%の含水率を有する精製コーンでんぷんの3つの異なるコーン粒状でんぷん基質について行った。各基質を、秤量した後、ステインレス−スチール容器に移し、水でDS32%に対応した最終1000gスラリーを作成した。
【0130】
前記スラリーのpHは、6N HSOを用いてpH5.5に調製した。GC100(4.0AAU/gDS)を加えた。温度を60℃に維持した。インキュベーション中前記スラリーをオーバーヘッドミキサーで緩やかに混ぜた。2、4、6、12及び24時間後に、ブリックス、可溶でんぷん分(%)及び糖組成(%重量/重量)を決定し、その結果を表1に示した。24時間後に、全粉末コーン、内胚乳及び精製糖からそれぞれ79.1%、71.1%及び60.0%の粒状でんぷんを、接触工程で可溶化した。24時間後の加水分解物のグルコース分は、全粉末コーンで65.22%、内胚乳で49.64%及び精製でんぷんで5.79%のみであった。

【表1】

【0131】
24時間後、全粉末コーン(DS32%)からの試料を用いて、酵母発酵を125mlフラスコ中、pH4.2、32℃で400ppm尿素、レッドスター(Red Star)Red yeast(Fermentus)、STARGEN001、及び0.1SAPU/gDSプロテアーゼの存在下で実施した。HPLCデータを表2に示した。

【表2】

【0132】
実施例2
ミロ粒状でんぷんからの可溶化及びエタノール生産
2つの前処理を行った。(A)11.6%の含水率及び53.3%の全でんぷん含有量を有する全粉末ミロ160gを秤量し、340gの水を有するステインレススチール容器に移した。スラリーのpHを6N硫酸を用いてpH5.5に調製した。SPEZYME Ethyl(1.0AAU/gDS)を加えた。温度を62℃及びDS32%に維持した。(B)HGAを0.1GAU HGA/gDSと当量で上述の(A)に記載された前処理に加えた。可溶固形分(%)及びグルコース分(%)を表3に示した。

【表3】

【0133】
上述のHGA前処理からの原料(マッシュ)を、125mlフラスコ中、通常の酵母発酵条件下(例えば、レッドスター酵母、pH4.2、32℃で400ppm尿素、STARGEN 001及び0.05SAPU/gDSの存在下)で評価した。HPLCの結果を表4に示した。

【表4】

【0134】
実施例3
全粉末ミロからのグルコース生成における温度の効果
pH5.5でGC100(4.0AAU/gDS)を有する全粉末ミロの30%DS水性スラリーのインキュベーションを、60℃、65℃及び70℃で行った。6時間のインキュベーションの後、試料を回収し、遠心分離で不溶性物質を分離した。透明な上清のブリックス及びHPLC組成を測定した。可溶でんぷん分(%)及びグルコース分(%)を決定し、結果を表5に示した。

【表5】

【0135】
全粉末ミロとの接触工程でインキュベーション温度を60℃から70℃に上昇するに伴い、でんぷんの可溶化及びグルコース含有量が減少した。これはアルファ−アミラーゼが70℃で不活化した可能性を示唆した。50%を上回る可溶でんぷんが65℃でグルコースに加水分解されたことは、内生植物でんぷん加水分解酵素が可溶性オリゴ糖からグルコースに加水分解出来ることを示唆している。
【0136】
上述の65℃における前処理からの原料を、DSが30%であったこと以外、本質的に実施例2で記載される通常の発酵条件下で評価した。その結果を表6に示した。

【表6】

【0137】
実施例4
米粒状でんぷんからの可溶化及びエタノール生産
14%の含水率及び30メッシュスクリーンを通る粒径を有する81.5%のでんぷん含有量を有する米穀物(116g)を、284gの水と混合し、25%DSスラリーを作成した。その後、GC100(4.0AAU/gDS)をスラリーに加えた。温度を65℃で維持し、pHをpH5.5に調製した。ブリックスを2、4、6、及び24時間後に測定した。可溶でんぷん分(%)及びグルコース分(%)を決定し、その結果を表7に示した。

【表7】

【0138】
24時間後に、酵母発酵をpH4.2、30℃で0.75GAU/gDS STARGEN 001、400ppm尿素、及び0.4%エンジェル−イースト(江西省、中国)の存在下で実施した。HPLC試料を24、48及び67時間(表8)後に採取した。

【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状でんぷん基質からグルコースを生成する方法であって、
a)植物原料から得られた粒状でんぷんを含むスラリーとアルファ−アミラーゼとを、粒状でんぷんのでんぷんゼラチン化温度未満の温度で接触させ、オリゴ糖を生成し、そして前記オリゴ糖を内生植物でんぷん加水分解酵素に加水分解させる工程、及び
b)少なくとも10%のグルコースを含むマッシュを生成する工程
を含み、前記接触工程が5分間から48時間、pH3.5から7.0で実施される方法。
【請求項2】
さらにc)10℃から40℃の間の温度で、10時間から250時間、発酵微生物及びでんぷん加水分解酵素の存在下でマッシュを発酵し、アルコールを生成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルファ−アミラーゼがバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
接触工程で供給されるアルファ−アミラーゼの量が、0.01から10.0AAU/gDSの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記温度が50℃から70℃の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マッシュが少なくとも30%のグルコースを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記植物原料がコーン、ミロ、大麦、小麦、米又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記植物原料が細分化されたコーンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコールがエタノールである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
さらにエタノールを回収する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エタノールを生成する方法であって、
a)植物原料から得られた粒状でんぷんを含むスラリーと、粒状でんぷんを可溶化するアルファ−アミラーゼとを接触させる工程であって、前記接触がpH3.5からpH7.0、粒状でんぷんのでんぷんゼラチン化温度未満の温度で、5分間から24時間である工程、
b)20%より多いグルコースを含む基質を得る工程、及び
c)10℃から40℃の間の温度で10時間から250時間、発酵微生物及びでんぷん加水分解酵素の存在下で基質を発酵し、エタノールを生成する工程
を含む方法。
【請求項12】
さらにエタノールを回収する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルファ−アミラーゼが細菌性アルファ−アミラーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記アルファ−アミラーゼがバチルス・ステアロサーモフィラス、バチルス・リシェニフォルミス又はバチルス・アミロリクエファシエンスに由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接触工程が50℃から70℃の間の温度で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記温度が60℃から70℃の間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記接触工程がpH5.0から6.0の間で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記接触の時間が15分間から12時間である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記基質が15分間から6時間の間の接触の後、30%より多いグルコースを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記基質が15分間から6時間の間の接触の後、40%より多いグルコースを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに発酵工程の前に基質を清浄する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
さらに接触工程で追加的酵素を加えることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記追加的酵素がグルコアミラーゼ、フィターゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ及び/又はヘミセルラーゼの群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記追加的酵素がフィターゼである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記追加的酵素がプロテアーゼである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記スラリーが5−60%DS粒状でんぷんを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
前記粒状でんぷんのDSが20−40%の間である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
さらに前記基質と、逆流を含む水溶液とを接触させ、発酵工程の前にDSを希釈する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項29】
前記粒状でんぷんがコーン、ミロ、大麦、小麦、米又はそれらの組み合わせから得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項30】
6時間後のグルコース分(%)が30%である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
6時間後のグルコース分(%)が40%である、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−539375(P2009−539375A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514331(P2009−514331)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/013189
【国際公開番号】WO2007/145912
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】