説明

粒状ゲルの製造方法、この方法により製造された粒状ゲル、及び粒状ゲルの製造装置

【課題】多彩模様等を付与するために用いられる着色粒子を効率良く連続して製造できる粒状ゲルの製造方法を提供する。
【解決手段】水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)と、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)とを接触させる粒状ゲルの製造方法であって、該水性液状組成物(A)を第1の吐出口から吐出すると共に水性媒体(B)を第2の吐出口から吐出し、該第1の吐出口と第2の吐出口の外側から圧縮空気を噴射して、該水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を圧縮空気により接触混合させることを特徴とする粒状ゲルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多彩模様等を付与するために用いられる着色粒子を効率良く連続して製造できる粒状ゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子多糖類を、塩化カルシウム水溶液等の金属イオン含有水溶液と接触させることにより、液状粒子をゲル化膜でカプセル化する方法は公知であり、食品、化学、バイオ等の分野で広く利用されている。
【0003】
このようなカプセル化手法として、例えば、特許文献1には、次のような酵素又は微生物菌体を固定化する粒状成形物の製造方法が開示されている。
(1)親水性光硬化性樹脂、光重合開始剤、水溶性高分子多糖類及び無機質粉粒体を含む水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下し、この組成物を粒状にゲル化させる。
(2)得られた粒状ゲルに活性光線を照射し、その粒状ゲル中の光硬化性樹脂を硬化させる。
【0004】
また、水溶性高分子多糖類の金属イオンによるゲル化の応用例として例えば多彩模様塗料がある。
【0005】
多彩模様塗料は、一回の塗装で2色以上の多彩な模様をもつ塗膜を形成することができる塗料である。例えば、分散媒体中に複数の着色粒状ゲルを安定に分散させる塗料が挙げられ、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0006】
多彩模様塗料として、例えば特許文献2には、エマルジョン樹脂や着色剤等の塗膜形成成分を、水溶性高分子化合物のゲル化膜でカプセル化した液状着色粒子を含有する着色塗料組成物が開示されている。また、製造方法としては、次の方法が開示されている。つまり、水性液状組成物をアルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体などのゲル化液中に滴下し、この組成物をゲル化膜で被覆することによって着色粒子を製造することが記載されている。また、特許文献3には、水性媒体中に分散した着色骨材として鱗片状ゲル着色粒子及び有色又は着色された球状微細粒子の組み合わせを使用した水性多彩被覆組成物が記載されている。また、製造方法としては、次のような方法が開示されている。まず、樹脂成分、着色骨材及び水溶性高分子を含む水性液状組成物を、平滑な面に粒子ガンを用いて粒子状に吹付ける。その後、乾燥しないうちに、これをゲル化液に浸漬し、この組成物粒子をゲル化膜で被覆することによって着色粒子を製造する。
【特許文献1】特開平10−152511号公報
【特許文献2】特開平1−16879号公報
【特許文献3】特開平07−247450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2や特許文献3に開示の方法では、ゲル化膜で覆われた着色粒子の製造のために、非常に煩雑な工程を必要とする問題がある。また、小粒径の着色粒子になるほど濾別に時間を要し、濾別後のゲル化液が廃液として大量に発生するという問題があった。また、上記方法ではバッチのゲル化液に滴下や浸漬する必要があるため、連続製造が困難であった。
【0008】
本発明の目的は、多彩模様等を付与するために用いられる着色粒子を、簡易な方法で効率良く連続して製造でき、しかも廃液の処理を軽減できる粒状ゲルの製造方法、この方法により製造された粒状ゲル、及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粒状ゲルの製造方法は、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を、第1の吐出口から吐出するステップと、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を、前記第1の吐出口と近接する第2の吐出口から吐出するステップと、前記第1の吐出口から吐出される水性液状組成物、及び前記第2の吐出口から吐出される水性媒体に圧縮空気を噴射して、前記水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を接触混合させるステップと、を備えている。
また、本発明に係る粒状ゲルの製造装置は、水性樹脂(a)、着色剤(b)、及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を収容する第1タンクと、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を収容する第2タンクと、圧縮空気を供給する空気供給手段と、前記第1タンクの水溶性組成物を吐出する第1の吐出口、前記第2タンクの水性媒体を吐出する第2の吐出口、及び前記空気供給手段からの圧縮空気を吐出する第3吐出口を有するノズル部と、を備え、前記第1及び第2の吐出口は近接し、前記第3の吐出口から供給される圧縮空気は、前記第1の吐出口から吐出される水性組成物及び前記第2の吐出口から吐出される水性媒体に、噴射される。
【0010】
本発明に係る粒状ゲルの製造方法は、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)と、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)とを接触させる粒状ゲルの製造方法であって、該水性液状組成物(A)を第1の吐出口から吐出すると共に水性媒体(B)を第2の吐出口から吐出し、該第1の吐出口と第2の吐出口の外側から圧縮空気を噴射して、該水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を圧縮空気により接触混合させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る粒状ゲル製造装置は、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を収容するタンクAと、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を収容するタンクBと、コンプレッサーと、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を夫々定量的に送液するポンプを設けてなる送液経路と、第1、第2及び第3の吐出口を有するノズル部とを具備してなる粒状ゲル製造装置であって、該ノズル部が、第1の吐出口から水性液状組成物(A)を吐出すると共に第2の吐出口から水性媒体(B)を吐出し、第3の吐出口が第1の吐出口及び第2の吐出口の外側に位置し、第3の吐出口から圧縮空気を噴射して、該水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を圧縮空気により接触混合可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る方法によれば、多彩模様等を付与するために用いられる着色粒子を簡易な方法で効率良く連続して製造できる。また、水性液状組成物(A)と水性媒体(B)とを効率よく接触させることができるので廃液の処理を軽減できる。特に、従来最も時間のかかった水性媒体(B)から着色粒子を濾別する工程を不要とすることができる。従って、本発明に係る方法は、短納期で少量多品種の着色粒子の製造に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本願発明の一実施形態をさらに詳しく説明する。図1は本実施形態に係る方法で用いる粒状ゲル製造装置のノズル部の一例を示す断面図であり、図2はノズル部の正面図である。また図3は粒状ゲル製造装置の一例を示す概略図である。
【0014】
本実施形態に係る図1のノズル部は、3重管で構成され、1は水性液状組成物導入口、2は水性媒体導入口、3は気体導入口、4は水性液状組成物流路、5はノズルチップ、6はノズルボディー、7は第1吐出口A、8は第2吐出口B、9は第3吐出口C、をそれぞれ示す。
【0015】
このノズル部では、第1吐出口Aから水性液状組成物(A)が吐出されると共に第2吐出口Bから水性媒体(B)が吐出される。第3吐出口Cは、第1吐出口A及び第2吐出口Bを囲んでいる。そして、第3吐出口Cから圧縮空気が噴射され、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を圧縮空気により接触混合させる。
【0016】
図1では第1吐出口A、第2吐出口B及び第3吐出口Cは、図2の通り、同心円状に配置されている。つまり、断面円形の第1吐出口Aの周囲に、環状の第2吐出口が配置されている。そして、第2吐出口Bの周囲に、環状の第3吐出口Cが配置されている。なお、第3吐出口Cが、第1吐出口A及び第2吐出口Bの外側を囲むように配置されれば、吐出口A及び吐出口Bが同心円状に限定されることない。例えば、図3(a)に示すように、第1吐出口と第2吐出口とが並列に配置されるものであっても良く、また第2吐出口Bから水性液状組成物(A)が吐出されると共に第1吐出口Aから水性媒体(B)が吐出するように各液体の流路を設定することも可能である。
【0017】
さらに、第3吐出口Cからの圧縮空気が、第1吐出口Aからの水性液状組成物及び第2吐出口Bからの水性媒体に噴射されるように構成されていれば、特には限定されない。したがって、図3(b)に示すように、第1及び第2吐出口の周囲の一部を囲むように第3吐出口を配置したり、或いは、平面的な配置にかかわらず、図3(c)に示すように、第1吐出口Aからの水性液状組成物、及び第2吐出口Bからの水性媒体に向けて、第3吐出口Cからの圧縮空気が噴射されるように各吐出口が配置されていれば、特には限定されない。
【0018】
図4に示すように、水性液状組成物(A)及び、水性媒体(B)は、隔離された第1、及び第2タンクにそれぞれ収容されている。そして、各タンクから延びる供給流路が上述したノズルに連結されている。すなわち、第1タンクの供給流路は水性液状組成物導入口1、第2タンクの供給流路は水性媒体導入口2に連結されている。各液体は、タンク内での加圧または図示を省略するポンプによってノズルへ送られる。そして、各供給経路にはそれぞれ供給量(すなわち吐出量)を測定制御できる制御装置(図示せず)が設置されている。また、ノズルの気体導入口3には、気体供給路を介して図示を省略するエアコンプレッサー(空気供給手段)が連結されており、圧縮空気がノズルに供給される。図3に示すように、ノズル部から下方に向けて、水性液状組成物(A)、水性媒体(B)、及び圧縮空気が吐出されると、粒状ゲルは空気中で直ちに形成される。そして、形成された粒状ゲルは、ノズル部の下方に配置された回収容器に回収される。より詳細には、水性液状組成物及び水性媒体は、圧縮空気が噴射されることによって微粒化する。そして、これらの表面積(接触面積)が大きくなった状態で、水性液状組成物及び水性媒体が接触し、混合される。したがって、このように混合されるように、各吐出口が配置されていればよい。また、水性液状組成物、水性媒体、圧縮空気の少なくとも1つを、旋回流にして噴射することもできる。
【0019】
本発明に係る方法では、形成される粒状ゲルの大きさ(長径)や形状は、用途などに応じて適宜変えることができ、通常、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)の吐出量や、圧縮空気の噴射量、ノズル寸法などによって制御される。そのような例としては、水性液状組成物に関して、例えば、吐出量 1〜500cc/min、噴射量 1〜50NL/min、ノズル径1〜10mmとすることができる。また、第1吐出口と第2吐出口との距離は、例えば、0.01〜10mmとすることができる。
【0020】
本発明に係る方法において水性樹脂(a)は、形成される粒状ゲルの耐久性に貢献するものであり、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。その樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えばウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0021】
上記水性樹脂(a)は、分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。また、水性樹脂(a)は、粒状ゲルの製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、特にカルボキシル基を有する樹脂であることができ、この場合、該樹脂は中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール、アンモニア等のアミン類などを例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
水性樹脂(a)は、粒状ゲルの耐久性、耐候性等の観点から、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0023】
このようなアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを必須モノマー成分とし、該モノマーを適宜他の重合性不飽和モノマーと(共)重合させることにより得られるものが挙げられ、該(共)重合に供し得るモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状炭化水素基含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
水性樹脂(a)としてのアクリル系樹脂は、粒状ゲルの製造安定性などの観点から、カルボキシル基含有アクリル系樹脂であることが望ましく、そのようなカルボキシル基含有樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部としてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用することにより製造することができる。かかるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、(共)重合に供される全重合性不飽和モノマーの重量を基準にして、通常0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.3〜4重量%の範囲内であることが粒状ゲルの製造安定性と貯蔵安定性の点から適している。
【0025】
また、上記水性樹脂(a)は、粒状ゲル中における着色剤(b)との親和性などの観点から、カルボニル基含有アクリル系樹脂であることができ、このカルボニル基含有アクリル系樹脂はさらにカルボキシル基を含有することが望ましい。そのようなカルボニル基含有アクリル系樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部としてカルボニル基含有重合性不飽和モノマーを使用し、その他の重合性不飽和モノマーと(共)重合することにより製造することができる。かかるカルボニル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、(共)重合に供される全重合性不飽和モノマーの重量を基準にして、通常1〜30重量%、好ましくは1.5〜25重量%の範囲内であることができる。
【0026】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0027】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の界面活性剤を使用することができ、適用可能な界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0028】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
両イオン性界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルベダイン類、ジメチルアルキルラウリルベダイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0031】
上記乳化剤として、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
【0032】
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計重量を基準にして通常0.5〜6重量%、好ましくは1〜4重量%の範囲内であることができる。
【0033】
本発明に係る方法において使用される着色剤(b)は、粒状ゲルの比重を調整するのに役立つ。また、本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜に意匠性、鮮映性、隠蔽性などを付与するために使用されるものであり、それ自体既知のものを制限なく使用することができる。
【0034】
着色剤(b)としては顔料及び染料を使用することができ、特に顔料が好適である。顔料の具体例としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック等の黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料;バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等の体質顔料;などを挙げることができ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0036】
他方、染料としては、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾ−ルアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノ染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(またはシアニン)染料、アジメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフチキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
着色剤(b)の使用量は、粒状ゲルによる着色性、比重、耐久性、耐水性等の観点から、水性樹脂(a)の重量(固形分)を基準にして、通常0.01〜500重量%、好ましくは0.05〜400重量%の範囲内であることが好適である。
【0038】
本発明の方法において使用される水溶性多糖類(c)は、水性媒体(B)に含まれる金属化合物(d)に由来する金属イオンと接触して、水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含む水性液状組成物を内包する水に不溶性または難溶性の金属塩ゲルを形成せしめるために使用されるものである。
【0039】
水溶性多糖類(c)としては、一般に10,000〜約2,000,000の範囲内の重量平均分子量を有し且つ約5.0g/L(25℃)以上の溶解度(水に対する)を示す多糖類が好適に使用できる。具体的には、例えば、アルギン酸もしくはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
水溶性多糖類(c)は、水性液状組成物(A)の固形分中0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜9重量%、さらに好ましくは1.0〜7.0重量%の範囲内で使用すると、粒状ゲルの貯蔵安定性と、粒状ゲルを含む塗料を用いて形成される塗膜の鮮映性を良好なものとすることができる。また、塗膜の凹凸感(ざらつき感)を少なくすることができ、好ましい。
【0041】
また、上記水性液状組成物(A)は、粒状ゲル中の着色剤(b)の均一分布を容易にするなどの点から増粘剤をさらに含むことが適している。
【0042】
この増粘剤としては、それ自体既知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、水溶性ケイ酸アルカリ、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルー無水マレイン酸の反応物のハーフエステル等の無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。該増粘剤の使用量は、水性樹脂(a)の固形分重量を基準にして、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%の範囲内であることができる。
【0043】
上記水性液状組成物(A)は、さらに、必要に応じて、バルーン等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0044】
本発明の方法において使用される水性媒体(B)は、金属化合物(d)を含有し、上記の水性液状組成物(A)と接触した際に、水性液状組成物(A)中の水溶性多糖類(c)が水性媒体(B)中の金属化合物(d)に由来する金属イオンと水に不溶性または難溶性の塩を形成し、水性液状組成物(A)を粒状ゲル化させるものである。
【0045】
本発明方法において上記金属化合物(d)は、その成分の一部として有機酸金属塩(d1)を含むことができる。
【0046】
金属化合物(d)の一部として有機酸金属塩(d1)を使用することによって貯蔵安定性に優れた粒状ゲルを容易に形成でき、また、粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の耐水性などの塗膜物性が良好とすることができ、しかも粒状ゲルの製造において生成する廃液や粒状ゲル懸濁液が製造装置や環境に与える負荷を少なくさせることが可能である。
【0047】
かかる有機酸金属塩(d1)における金属種としては、形成される粒状ゲルの強度などの観点から、多価金属、特に二価金属が好適であり、二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2族元素、特にカルシウムが好適である。
【0048】
上記有機酸金属塩(d1)における有機酸としては、上記例示したごとき金属と塩を形成しうる化合物であれば従来公知のものを制限なく使用でき、例えば、蟻酸、酢酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルコン酸等を例示することができる。
【0049】
本発明においては、有機酸金属塩(d1)として上記した中でも酢酸カルシウムが粒状ゲルの製造安定性の点から適している。
【0050】
また、上記金属化合物(d)は、その成分の一部として金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩より選ばれる金属化合物(d2)を含むことができる。
【0051】
上記金属化合物(d2)における金属種としては、有機酸金属塩(d1)における金属種として列記のものから適宜選択して使用することができる。
【0052】
本発明では金属化合物(d)として、上記有機酸金属塩(d1)と金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩より選ばれる金属化合物(d2)を併用すると粒状ゲルの貯蔵安定性、製造安定性に加えて粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の凹凸感を少なくさせるとともに、鮮映性を良好なものとすることができ、適している。
【0053】
このような目的で使用される金属化合物(d2)の金属の具体例としては上述したものに加え、周期表1族元素に属するアルカリ金属類を挙げることができる。
【0054】
本発明において上記金属化合物(d2)としては、粒状ゲルの製造安定性の点から水酸化物を使用することが好適である。
【0055】
上記金属化合物(d)において、有機酸金属塩(d1)と金属化合物(d2)を併用する場合、その使用割合が、有機酸金属塩(d1)/金属化合物(d2)のモル比で99/1〜10/90、特に90/10〜15/85の範囲内にあることが、粒状ゲルの貯蔵安定性と粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の凹凸感を少なくさせるとともに鮮映性が良好であること、さらには粒状ゲルの製造において生成する廃液や粒状ゲル懸濁液が製造装置や環境に与える負荷を少なくさせることもでき、適している。
【0056】
上記金属化合物(d)は、水などの水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより金属イオンを含有する水性媒体(B)を調製することができる。その際、金属化合物(d)は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。
【0057】
上記水性媒体(B)は、粒状ゲルの貯蔵安定性および製造安定性の点から、pHを4.0〜13.7、好ましくは6.0〜13.5、さらに好ましくは7.0〜13.5の範囲内とすることが適している。
【0058】
本発明において、上記水性液状組成物(A)と水性媒体(B)は、水性液状組成物(A)に含まれる水溶性多糖類(c)が有するカルボキシル基に由来する基1molに対して、水性媒体(B)に含まれる金属化合物(d)の量が0.2〜3mol、特に0.4〜2molの範囲内となるような割合で使用されることが、形成される粒状ゲルの貯蔵安定性と粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の凹凸感を少なくさせ、また、鮮映性、耐水性が良好であり、好ましい。
【0059】
上記カルボキシル基に由来する基としては、カルボキシル基、カルボン酸金属塩基及びカルボン酸イオン性基(−COO)を挙げることができる。
【0060】
上記の如くして形成される粒状ゲルは、水性樹脂(a)、着色剤(b)、その他の添加剤成分を含んでなる水性液状組成物を多糖類(c)の金属塩ゲル中に内包してなる着色粒子であり、その大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、用途などに応じて適宜選択することができる。
【0061】
上記の通り得られる粒状ゲルは、必要に応じて水等で洗浄することにより不純物等を取り除き、所望の模様を付与したい塗料やインク、成型材料等へ所望量配合することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
【0063】
エマルションの製造
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記の組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加した。添加20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 2部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の平均粒子径は170nm、pHは8.3であった。
(注1)「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%
白顔料ペーストの製造
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、白顔料ペースト(b1)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3)
30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「TITANIX JR−605」(注5) 500部
(注2)「スラオフ72N」:商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤、
(注3)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、顔料分散剤、
(注4)「SNデフォーマー380」:商品名、サンノプコ社製、消泡剤
(注5)「TITANIX JR−605」:商品名、テイカ社製、チタン白
粒状ゲル用水性液状組成物の製造
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、粒状ゲル用水性液状組成物(A)を得た。
55%エマルション(a1) 250部
白顔料ペースト(b1) 154部
10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液 4部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注7) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部
(注6)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、
(注7)「アデカノールUH−438」:商品名、アデカ社製、ポリエーテルウレタン変性物、粘性調整剤
粒状ゲル用水性媒体の製造
4リットルステンレス容器に、酢酸カルシウム一水和物を7.0部、脱イオン水を2,000部仕込み、均一になるまで攪拌し、酢酸カルシウムを含有する粒状ゲル用水性媒体(B)を製造した。pHは7.4であった。
【0064】
粒状ゲルの製造
図1に示すノズルを用いて表1に示す吐出量(g/min)で、上記の通り製造した粒状ゲル用水性液状組成物(A)を吐出口Aから、粒状ゲル用水性媒体(B)を吐出口Bから吐出した。また、同時に圧縮空気を表1に示す気体流量(NL/min)で噴射し、水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を接触混合させて、サンプル−1〜サンプル−4の各粒状ゲルを製造した。得られた粒状ゲルは表1に示す平均粒サイズ(長さ)を有するものであった。各サンプルの粒状ゲルの顕微鏡写真を図5に示す。
【0065】
【表1】

上記のように製造された粒状ゲルの貯蔵安定性、良好であった。すなわち、40℃で7日間貯蔵後に塗料化・塗装しても形成塗膜は粒状ゲルがはっきりと識別でき、色の滲み出しや潰れもなく良好な仕上りが得られている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明方法で用いる粒状ゲル製造装置のノズル部の一例を示す断面図である。
【図2】ノズル部の正面図である。
【図3】ノズル部の形状の他の例である。
【図4】粒状ゲル製造装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明方法で得られる粒状ゲルの一例を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0067】
1 ・・・ 水性液状組成物導入口
2 ・・・ 水性媒体導入口
3 ・・・ 気体導入口
4 ・・・ 水性液状組成物流路
5 ・・・ ノズルチップ
6 ・・・ ノズルボディー
7 ・・・ 吐出口A(水性液状組成物出口)
8 ・・・ 吐出口B(水性媒体出口)
9 ・・・ 吐出口C(気体出口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を、第1の吐出口から吐出するステップと、
金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を、前記第1の吐出口と近接する第2の吐出口から吐出するステップと、
前記第1の吐出口から吐出される水性液状組成物、及び前記第2の吐出口から吐出される水性媒体に圧縮空気を噴射して、前記水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を接触混合させるステップと、
を備えている、粒状ゲルの製造方法。
【請求項2】
前記第1の吐出口、第2の吐出口、及び圧縮空気の噴射口が同心円状に配置される請求項1に記載の粒状ゲルの製造方法。
【請求項3】
前記金属化合物(d)が、その成分の一部として有機酸金属塩(d1)を含む、請求項1に記載の粒状ゲルの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の製造方法により得られる粒状ゲル。
【請求項5】
水性樹脂(a)、着色剤(b)、及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)を収容する第1タンクと、
金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)を収容する第2タンクと、
圧縮空気を供給する空気供給手段と、
前記第1タンクの水溶性組成物を吐出する第1の吐出口、前記第2タンクの水性媒体を吐出する第2の吐出口、及び前記空気供給手段からの圧縮空気を吐出する第3吐出口を有するノズル部と、を備え、
前記第1及び第2の吐出口は近接し、
前記第3の吐出口から供給される圧縮空気は、前記第1の吐出口から吐出される水性組成物及び前記第2の吐出口から吐出される水性媒体に、噴射される、粒状ゲルの製造装置。
【請求項6】
前記第1、第2、及び第3吐出口が同心円状に配置されている、請求項5に記載の粒状ゲルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−24166(P2009−24166A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136802(P2008−136802)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】