説明

粒状ゲルの製造方法及び該粒状ゲルを含む塗料組成物

【課題】貯蔵安定性に優れた粒状ゲルを簡易な方法で安定に生産することができる方法及び該粒状ゲルを含む塗料組成物を提供すること。
【解決手段】水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)と、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)とを接触させることを含んでなる粒状ゲル(C)の製造方法であって、金属化合物(d)が、その成分の一部として有機酸金属塩(d1)を含むことを特徴とする粒状ゲル(C)の製造方法、ならびに該製造方法により得られる粒状ゲル(C)に塗膜形成成分(D)を配合してなる塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒状ゲルの製造方法及び該粒状ゲルを含む塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子多糖類を塩化カルシウム水溶液等の金属イオン含有水溶液と接触させることにより、液状粒子をゲル化膜でカプセル化する方法は公知であり、食品、化学、バイオ等の分野で広く利用されている。
【0003】
このようなカプセル化手法として、例えば、特許文献1には、親水性光硬化性樹脂、光重合開始剤、水溶性高分子多糖類及び無機質粉粒体を含んでなる水性液状組成物を、アルカリ金属イオン又は多価金属イオンを含有する水性媒体中に滴下して該組成物を粒状にゲル化させ、次いで得られる粒状ゲルに活性光線を照射して該粒状ゲル中の光硬化性樹脂を硬化させることからなる酵素又は微生物菌体固定化用粒状成形物の製造方法が開示されている。
【0004】
また、水溶性高分子多糖類の金属イオンによるゲル化手法は、塗料分野でも利用されており、その利用例として、多彩模様塗料がある。多彩模様は、一回の塗装で2色以上の多彩な模様をもつ塗膜を形成することができる塗料であり、例えば、分散媒体中に複数の着色粒状ゲルを安定に分散させてなる塗料が挙げられ、主として建築物等の塗装に使用されている。
【0005】
多彩模様塗料として、例えば、特許文献2には、エマルジョン樹脂等の塗膜形成成分を水溶性高分子化合物のゲル化膜でカプセル化した液状着色粒子を含有する着色塗料組成物が開示されている。該組成物によれば、変化に富んだ意匠性に優れた外観の塗膜を形成せしめることができるが、塗膜の耐水性等の塗膜物性に難点がある。
【0006】
さらに、特許文献3には、水性媒体中に分散した着色骨材として鱗片状ゲル着色粒子と有色の又は着色された球状微細粒子の組み合わせを使用した水性多彩被覆組成物が開示されている。該組成物を用いれば、多彩模様を容易に視認することができ且つ平滑で凹凸の少ない塗膜を形成せしめることができるが、鱗片状ゲル着色粒子の製造のために煩雑な工程を必要とし、また、ゲル着色粒子の製造において塩化カルシウム、硫酸アルミニウム等の化合物が使用されるために製造装置の金属部が腐食することがあり、さらに、該被覆組成物から形成される塗膜の耐水性が十分ではないという問題がある。
【0007】
このような問題に対して、特許文献4には、該文献で定義されている「化学的安定性」が3重量%以下である合成樹脂エマルションを含む着色水性塗料を多価金属塩を含有する水性媒体に分散することによって着色ゲル粒子を製造する方法が開示されている。この方法により製造される着色ゲル粒子を含む多彩模様塗料組成物は、平滑性、耐水性、耐候性などに優れた塗膜を形成しうるが、合成樹脂エマルションの化学的安定性が低いことに起因して配管に残渣が詰まるなどの問題が生じ、塗料製造工程において安定な生産ができないことがあるという欠点がある。
【0008】
【特許文献1】特開平10−152511号公報
【特許文献2】特開昭64−16879号公報
【特許文献3】特開平07−247450号公報
【特許文献4】特開2004−182788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、貯蔵安定性に優れた粒状ゲルを簡易な方法で安定に生産することができる方法及び該粒状ゲルを含む塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、今回、水性樹脂、着色剤及び水溶性多糖類を含む水性液状組成物を、特定の金属化合物を含む水性媒体と接触させることによって、貯蔵安定性に優れた粒状ゲルを容易に製造することができ、また、該粒状ゲルを多彩模様塗料などの塗料組成物において有利に利用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)と、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)とを接触させることを含んでなる粒状ゲル(C)を製造する方法であって、金属化合物(d)が、その成分の一部として有機酸金属塩(d1)を含むことを特徴とする粒状ゲル(C)の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明は、また、上記製造方法により得られる粒状ゲル(C)に塗膜形成成分(D)を配合してなる塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、水溶性多糖類と特定の金属化合物をゲル化剤として使用することにより、貯蔵安定性に優れた粒状ゲルを容易にしかも安定に製造することができ、また、本発明の製造方法は、環境や製造装置に対する負荷も少ないという利点を有する。しかも、本発明の方法により得られる粒状ゲルを含む塗料組成物は、塗面の凹凸感が少なく、鮮映性などの仕上がり性が良好であり、耐水性等の塗膜物性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の粒状ゲルの製造方法及び該粒状ゲルを含む塗料組成物について、さらに詳細に説明する。
【0015】
水性液状組成物(A)
本発明の方法において使用される水性液状組成物(A)は、水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含んでなるものである。
【0016】
水性樹脂(a):
水性樹脂(a)は、本発明の方法により製造される粒状ゲル(C)の耐久性に貢献するものであり、水性樹脂(a)としては、一般に、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。水性樹脂(a)の樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂は、例えば、ウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、或いはグラフト重合されたものであってもよい。
【0017】
水性樹脂(a)は、分散粒子の形態である場合には、その分散粒子は単層状であることができ又はコア・シェル型等の多層状であることもできる。また、水性樹脂(a)は、粒状ゲルの製造安定性等の観点から、親水性基としてアニオン性基、特にカルボキシル基を
有する樹脂であることが好ましい。この場合、該樹脂は塩基で中和されていてもよく、その際に使用し得る中和剤としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、2−メチル−2−アミノ−1−プロパノール、アンモニア等のアミン類などを例示することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
水性樹脂(a)は、粒状ゲル(C)の耐久性、耐候性等の観点から、中でも、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0019】
かかるアクリル系樹脂としては、アクリル系モノマーを必須モノマー成分とし、該モノマーを適宜他の重合性不飽和モノマーと(共)重合させることにより得られるものが挙げられ、該(共)重合に供し得るアクリル系モノマー及び他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状炭化水素基含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなど)、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアリルエステル、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリル
グリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナート基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0020】
水性樹脂(a)としてのアクリル系樹脂は、粒状ゲル(C)の製造安定性などの観点から、カルボキシル基含有アクリル系樹脂であることが望ましく、そのようなカルボキシル基含有樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部としてカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを使用することにより製造することができる。かかるカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、粒状ゲル(C)の製造安定性と貯蔵安定性の点から、(共)重合に供される重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして、通常0.05〜30質量%、特に0.1〜5質量%、さらに特に0.3〜4質量%の範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、上記水性樹脂(a)は、粒状ゲル(C)中における着色剤(b)との親和性などの観点から、カルボニル基含有アクリル系樹脂であることができ、該カルボニル基含有アクリル系樹脂はさらにカルボキシル基を含有することが望ましい。そのようなカルボニル基含有アクリル系樹脂は、例えば、モノマー成分の少なくとも一部として前述の如きカルボニル基含有重合性不飽和モノマーを使用し、その他の重合性不飽和モノマーと(共)重合することにより製造することができる。かかるカルボニル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、(共)重合に供される重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして、通常0.2〜30質量%、好ましくは0.2〜20質量%、さらに好ましくは0.3〜15質量%の範囲内であることができる。
【0022】
上記モノマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、例えば、一般的な乳化重合法に従い、乳化剤の存在下に、上記モノマーを(共)重合することによりアクリル系樹脂を容易に製造することができる。
【0023】
上記アクリル系樹脂の製造において使用される乳化剤としては、それ自体既知の界面活性剤を使用することができ、使用可能な界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0024】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジアンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;脂肪酸ナトリウム塩、オレイン酸カリウム等の脂肪族カルボン酸塩;ポリオキシアルキレン単位含有硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテ
ル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩など);ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム等のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、モノアルキルサクシネートスルホン酸ジナトリウム等のアルキルサクシネートスルホン酸塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン単位含有エーテル化合物(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル化合物;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル等のポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル化合物など);ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレンアルキルエステル化合物;ポリオキシエチレンアルキルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタン化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記両イオン性界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルベタイン類、ジメチルアルキルラウリルベタイン類、アルキルグリシン類などを挙げることができる。
【0027】
上記乳化剤として、また、重合性不飽和基とアニオン性基又はノニオン性基の両者を分子中に含有する反応性乳化剤などを使用することもできる。
【0028】
上記乳化剤の使用量は、重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして、通常0.5〜6質量%、好ましくは1〜4質量%の範囲内であることができる。
【0029】
水性樹脂(a)は、製造される粒状ゲル(C)の耐久性などの点から、水性液状組成物(A)の質量(固形分)を基準にして、一般に10〜90質量%、好ましくは15〜80質量%、さらに好ましくは25〜70質量%の範囲内で使用することができる。
【0030】
着色剤(b)
本発明の方法において使用される着色剤(b)は、粒状ゲル(C)の比重を調整するのに役立ち、また、本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜に意匠性、鮮映性、隠蔽性などを付与するために使用されるものであり、それ自体既知のものを制限なく使用することができる。
【0031】
着色剤(b)としては顔料及び/又は染料を使用することができ、特に顔料が好適である。顔料の具体例としては、例えば、ニ酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック等の黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フ
タロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料;バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等の体質顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
上記白色顔料としての二酸化チタンには、平均粒子径が10〜80nmのマイクロチタンや光触媒活性を有するアナターゼ型二酸化チタン等の機能性二酸化チタンも包含される。
【0033】
他方、染料としては、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料等のアゾ染料;アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等のアントラキノン染料;インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体等のインジゴイド染料;フタロシアニン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料等のカルボニウム染料;アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料等のキノンイミン染料;ポリメチン(又はシアニン)染料、アジメチン染料等のメチン染料;キノリン染料;ニトロ染料;ニトロン染料;ベンゾキノン及びナフチキノン染料;ナフタルイミド染料;ペリノン染料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
着色剤(b)の使用量は、粒状ゲル(C)による着色力、比重、耐久性、耐水性等の観点から、水性樹脂(a)の質量(固形分)を基準にして、通常0.01〜500質量%、特に0.05〜400質量%、さらに特に0.1〜300質量%の範囲内であることが好適である。
【0035】
また、着色剤(b)は、水性液状組成物(A)の質量(固形分)を基準にして、一般に0.1〜80質量%、好ましくは0.5〜70質量%、さらに好ましくは1〜60質量%の範囲内で使用することができる。
【0036】
水溶性多糖類(c)
本発明の方法において使用される水溶性多糖類(c)は、水性媒体(B)に含まれる金属化合物(d)に由来する金属イオンと接触して、水性樹脂(a)及び着色剤(b)を含む水性液状組成物を内包する水に不溶性又は難溶性の金属塩ゲルを形成せしめるために使用されるものである。
【0037】
水溶性多糖類(c)としては、一般に10,000〜約2,000,000、好ましくは10,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有し且つ約5g/L(25℃)以上、好ましくは10g/L(25℃)以上の溶解度を示す多糖類が好適に使用でき、具体的には、例えば、アルギン酸もしくはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
水溶性多糖類(c)は、水性液状組成物(A)の質量(固形分)を基準にして、一般に0.5〜10質量%、好ましくは0.7〜9質量%、さらに好ましくは1.0〜8.0質量%の範囲内で使用することができ、これによって、粒状ゲル(C)の貯蔵安定性や、粒状ゲルを含む塗料を用いて形成される塗膜の鮮映性などを良好なものとすることができ、また、塗膜の凹凸感(ざらつき感)を少なくすることができる。
【0039】
また、水溶性多糖類(c)の使用量は、粒状ゲル(C)による着色性、比重、耐久性、耐水性等の観点から、水性樹脂(a)の質量(固形分)を基準にして、通常0.6〜30質量%、特に0.8〜29質量%、さらに特に1.1〜23質量%の範囲内であることが好適である。
【0040】
増粘剤
また、上記水性液状組成物(A)は、粒状ゲル(C)中の着色剤(b)の均一分布を容易にするなどの点から、増粘剤をさらに含むことが好ましい。
【0041】
該増粘剤としては、それ自体既知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、例えば、水溶性ケイ酸アルカリ、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系化合物;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体系化合物;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルウレタン変性物、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系化合物;ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルアルコール共重合物等のポリビニル系化合物;カゼイン酸ナトリウム、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質誘導体;ビニルメチルエーテルー無水マレイン酸共重合物の部分エステル、乾性油脂肪酸アリルアルコールエステルー無水マレイン酸の反応物のハーフエステル等の無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。該増粘剤の使用量は、水性樹脂(a)の質量を基準にして、通常0.01〜20質量%、好ましくは0.03〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜5質量%の範囲内であることができる。
【0042】
上記水性液状組成物(A)は、さらに、必要に応じて、バルーン等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを適宜含有することができる。
【0043】
水性媒体(B)
本発明の方法において使用される水性媒体(B)は、金属化合物(d)を含有し、上記の水性液状組成物(A)と接触した際に、水性液状組成物(A)中の水溶性多糖類(c)が、水性媒体(B)中の金属化合物(d)に由来する金属イオンと水に不溶性又は難溶性の塩を形成し、水性液状組成物(A)を粒状ゲル化させるものである。
【0044】
金属化合物(d):
本発明の方法において、上記金属化合物(d)はその成分の一部として有機酸金属塩(d1)を含むことを特徴とする。
【0045】
金属化合物(d)の一部として有機酸金属塩(d1)を使用することによって、内包物の流出のない貯蔵安定性に優れた粒状ゲル(C)を容易に形成せしめることができ、また、粒状ゲルを含む塗料から形成される塗膜の耐水性などの塗膜物性を良好なものとすることができ、しかも、粒状ゲルの製造において生成する廃液や粒状ゲル懸濁液が製造装置や環境に与える負荷を少なくすることが可能である。
【0046】
かかる有機酸金属塩(d1)における金属種としては、形成される粒状ゲル(C)の強度などの観点から、多価金属、特に二価金属が好適であり、二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モ
リブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2族元素、特にカルシウムが好適である。
【0047】
上記有機酸金属塩(d1)における有機酸としては、上記例示したごとき金属と塩を形成しうる化合物であれば制限なく使用することができ、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸等を例示することができる。中でも、分子量が50〜1000、特に50〜400、さらに特に170〜400の範囲内の有機酸が、粒状ゲルの易製造性、得られる粒状ゲルの貯蔵安定性などの点から適している。
【0048】
本発明においては、有機酸金属塩(d1)として、上記した中でも特に酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸カルシウムが粒状ゲル(C)の製造安定性、貯蔵安定性などの点から適している。
【0049】
また、本発明における金属化合物(d)としては、有機酸金属塩(d1)に加えて、金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩より選ばれる金属化合物(d2)を併用することができ、それにより、粒状ゲル(C)の貯蔵安定性、製造安定性に加えて、粒状ゲル(C)を含む塗料から形成される塗膜の凹凸感が少なくなるとともに、鮮映性を良好なものとすることができる。
【0050】
このような目的で使用される金属化合物(d2)中の金属の具体例としては、有機酸金属塩(d1)について上述したものに加え、周期表1族元素に属するアルカリ金属類を挙げることができる。
【0051】
金属化合物(d2)としては、粒状ゲル(C)の製造安定性などの点から、水酸化物を使用することが好適である。
【0052】
金属化合物(d)において、有機酸金属塩(d1)と金属化合物(d2)を併用する場合、その使用割合は、粒状ゲル(C)の貯蔵安定性と粒状ゲル(C)を含む塗料から形成される塗膜の凹凸感が少なくなるとともに鮮映性が良好であること、さらには粒状ゲル(C)の製造において生成する廃液や粒状ゲル懸濁液が製造装置や環境に与える負荷が少なくなることなどの理由から、有機酸金属塩(d1)/金属化合物(d2)のモル比で、一般に99/1〜10/90、特に90/10〜15/85、さらに特に80/20〜15/85の範囲内にあることが好適である。
【0053】
金属化合物(d)は、水などの水性媒体中に、その少なくとも一部を溶解させることにより、金属イオンを含有する水性媒体(B)を調製することができる。その際、金属化合物(d)は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。水性媒体(B)中における金属化合物(d)の濃度は、厳密に制限されるものではないが、通常0.05〜20質量%、好ましくは0.05〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%の範囲内であることができる。
【0054】
水性媒体(B)は、粒状ゲル(C)の貯蔵安定性や製造安定性などの点から、pHが4.0〜13.7、特に6.0〜13.5、さらに特に7.0〜13.5の範囲内にあることが好ましい。
【0055】
粒状ゲル(C)の調製
本発明に従えば、水性液状組成物(A)を、金属化合物(d)由来の金属イオンを含有する水性媒体(B)と接触させることにより、粒状ゲル(C)を形成せしめることができる。この接触は、例えば、注射器の先端から水性液状組成物(A)を水性媒体(B)中に滴下する方法;水性液状組成物(A)を遠心力を利用して飛散させ、水性媒体(B)中に滴下する方法;スプレーノズルの先端から水性液状組成物(A)を霧化させ、水性媒体(B)中に滴下する方法;水性液状組成物(A)を水性媒体(B)中に加え、分散機で攪拌混合する方法などの方法により行うことができる。
【0056】
本発明において、水性液状組成物(A)と水性媒体(B)は、水性液状組成物(A)に含まれる水溶性多糖類(c)が有するカルボキシル基に由来する基1molに対して、水性媒体(B)に含まれる金属化合物(d)の量が一般に0.2〜3mol、特に0.3〜2.5mol、さらに特に0.4〜2molの範囲内となるような割合で使用することが、形成される粒状ゲル(C)の貯蔵安定性が向上し、また、粒状ゲル(C)を含む塗料から形成される塗膜の凹凸感が少なくなり且つ塗膜の鮮映性、耐水性などが良好となるので好適である。
【0057】
上記カルボキシル基に由来する基としては、カルボキシル基、カルボン酸金属塩基及びカルボン酸イオン性基(−COO)を挙げることができる。
【0058】
また、水性液状組成物(A)に対する水性媒体(B)の使用割合は、水性媒体(B)/水性液状組成物(A)の質量比で、通常少なくとも1/2、特に1/2〜100/1、さらに特に1/1〜20/1の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0059】
上記方法により、水性樹脂(a)及び着色剤(b)ならびにさらに場合によりその他の添加剤成分を含んでなる水性液状組成物(A)を多糖類(c)の金属塩ゲル化膜中に内包してなる粒状ゲル(C)を得ることができる。
【0060】
上記の如くして形成される粒状ゲル(C)の大きさ(長径)は、特に限定されるものではなく、その用途などに応じて適宜変えることができ、例えば、水性液状組成物(A)の組成、攪拌速度、水性液状組成物(A)の水性媒体(B)への滴下の仕方等により調整することができる。
【0061】
得られる粒状ゲル(C)は、例えば、適当な大きさの網目をもつ金網などを用いて水性媒体(B)から濾別することができ、それによって、金属イオンや残渣は水性媒体(B)に随伴するため、粒状ゲル(C)を利用した塗料組成物への混入を防ぐことができ、形成される塗膜の耐水性などの物性を向上させることができる。また、必要に応じて、ろ過後の粒状ゲル(C)を水等で洗浄することにより、さらに不純物等を取り除くことができる。
【0062】
塗料組成物
以上に述べた本発明の方法により得られる粒状ゲル(C)は、貯蔵安定性が良好であり、多彩模様塗料などの塗料組成物に配合することにより、塗面の凹凸感が少なく、塗膜の鮮映性などの仕上がり性が良好であり、耐水性等の塗膜物性に優れた塗膜を形成し得る塗料組成物を調製することができる。
【0063】
したがって、本発明によれば、また、粒状ゲル(C)を含む塗料組成物が提供される。
【0064】
本発明の塗料組成物において、色調の異なった複数の粒状ゲル(C)を含ませることにより、いわゆる多彩模様塗料を調製することができ、それによって、形成塗膜の意匠性をより一層向上させることができる。
【0065】
上記塗料組成物は、粒状ゲル(C)に加えて、塗膜形成成分(D)を含むことが望ましい。
【0066】
塗膜形成成分(D)にはそれ自体成膜性を有する樹脂が包含され、該樹脂は非架橋型又は架橋型のいずれであってもよく、また、水性型、粉体型、有機溶剤型等のいずれであってもよい。
【0067】
塗膜形成成分(D)は、粒状ゲル(C)との親和性や塗料組成物としての貯蔵安定性などの観点から、水性樹脂(e)を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
【0068】
水性樹脂(e)としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを同様に使用することができ、例えば、水性樹脂(a)について前述したものの中から適宜選んで使用することができる。
【0069】
また、粒状ゲル(C)と塗膜形成成分(D)が、それぞれ、互いに反応し得る官能基(x)及び(y)を含有することが、本発明の塗料組成物から形成される塗膜の耐水性をより一層向上させることができるので好適であり、粒状ゲル(C)が反応性官能基(x)を含有し且つ塗膜形成成分(D)が反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を含有するものであることが望ましい。
【0070】
粒状ゲル(C)に含まれる反応性官能基(x)と塗膜形成成分(D)中に含まれる反応性官能基(y)の組み合わせとしては、塗膜の乾燥条件下に相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、カルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせが挙げられ、特に、カルボニル基とヒドラジド基の組み合わせが、常温一液架橋型の塗料組成物とすることができ、好適である。
【0071】
また、本発明の塗料組成物は、粒状ゲル(C)及び塗膜形成成分(D)が共に反応性官能基(x)を有する樹脂を含有し、さらに粒状ゲル(C)及び/又は塗膜形成成分(D)が反応性官能基(x)と反応し得る反応性官能基(y)を有する架橋剤を含有する形態であることもできる。
【0072】
本発明においては、形成される塗膜の耐水性、塗料組成物としての貯蔵安定性、常温一液架橋が可能であるなどの点から、粒状ゲル(C)及び塗膜形成成分(D)が、共にカルボニル基含有水性樹脂を含有し、粒状ゲル(C)及び/又は塗膜形成成分(D)が架橋剤としてヒドラジン誘導体を含有することが望ましい。
【0073】
粒状ゲル(C)及び/又は塗膜形成成分(D)に含まれ得るカルボニル基と反応させるためのヒドラジン誘導体の具体例としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステ
ル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラート)と反応させてなるポリヒドラジド等;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
また、粒状ゲル(C)及び/又は塗膜形成成分(D)が水酸基含有水性樹脂を含んでなる場合、塗膜形成成分(D)は、架橋剤としてポリイソシアネート架橋剤を含むことができる。
【0075】
上記ポリイソシアネート架橋剤としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;これらジイソシアネートのイソシアヌレート体やビュウレット体等の類似の化合物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
また、上記ポリイソシアネート架橋剤は、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2個含有するポリイソシアネート化合物にノニオン性乳化剤を反応させてなる水分散性ポリイソシアネートであってもよい。上記ポリイソシアネート化合物と反応させ得る該ノニオン性乳化剤としては、ノニオン性乳化剤として前述したものと同様のものを使用することができ、特に、イソシアネート基と反応する活性水素基を有し且つオキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を有するものが好適である。
【0077】
また、上記水分散性ポリイソシアネートには、必要に応じて、一端に活性水素基を有し且つ他端にアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤を反応させて変性したものであってもよい。該シランカップリング剤としては、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0078】
そのような水分散性ポリイソシアネートの市販品としては、例えば、「バイヒジュール
3100」、「VPLS2319」(商品名、以上Bayer社製)等を挙げることができる。
【0079】
塗膜形成成分(D)がポリイソシアネート架橋剤を含む場合には、該ポリイソシアネート架橋剤は塗料組成物の使用直前に混合することが好ましい。
【0080】
また、粒状ゲル(C)及び/又は塗膜形成成分(D)が、水酸基含有水性樹脂を含んでなる場合、粒状ゲル(C)及び/又は塗膜形成成分(D)は、架橋剤としてメラミン樹脂を含むことができる。
【0081】
上記メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとホルムアルデヒドと必要に応じて水及び/又はアルコールを反応させて得られる、分子中にアルキルエーテル基及び/又はイミノ基を有する樹脂を挙げることができ、具体的には、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロールメラミン;該メチロールメラミンのアルキルエーテル化合物;メチロールメラミン又はそのアルキルエーテル化合物の縮合物などが挙げられる。メチロールメラミンのアルキルエーテル化物におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。
【0082】
架橋剤としてメラミン樹脂を使用する場合には、必要に応じて、触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸、これらスルホン酸とアミンとの塩などを使用することができる。
【0083】
また、本発明において、塗膜形成成分(D)は、有機酸金属塩(d1)及び/又は金属化合物(d2)を含んでいることが望ましい。これにより、本発明の塗料組成物の製造段階又は貯蔵中における粒状ゲル(C)の内包物の滲み出しを抑制することができ、しかも、凹凸感の少ない塗膜を形成することが可能となる。
【0084】
このような目的で使用される有機酸金属塩(d1)及び/又は金属化合物(d2)の使用量は、粒状ゲル(C)の貯蔵安定性、最終的に形成される塗膜の耐水性などの点から、塗膜形成成分(D)に含まれる樹脂固形分を基準として、一般に10質量%以下、特に0.01〜7.5質量%、さらに特に0.01〜5.0質量%の範囲内にあることが好ましい。
【0085】
塗膜形成成分(D)に配合し得る有機酸金属塩(d1)及び金属化合物(d2)の具体例としては前述のものが挙げられるが、粒状ゲルの易製造性などの点から、有機酸金属塩、中でも分子量が50〜1000、特に50〜400、さらに特に170〜400の範囲内にある有機酸金属塩を使用することが望ましい。
【0086】
塗膜形成成分(D)は、着色塗膜を形成するものであっても或いはクリヤー塗膜を形成するものであってもよく、着色塗膜を形成するものである場合には必要に応じて着色剤を含むことができる。
【0087】
塗膜形成成分(D)に含ませることができる着色剤としては、粒状ゲル(C)に含ませ得る着色剤として前記で例示したものの中から適宜選択して使用することができる。
【0088】
本発明の塗料組成物を多彩模様塗料として使用する場合、多彩模様塗膜の乾燥性向上、適度な艶、触感向上などの観点から、該塗料組成物に体質顔料を配合することが望ましい。
【0089】
上記体質顔料としては、着色剤(b)の説明で列記したものを挙げることができ、例えば、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト等が挙げられる。
【0090】
塗膜形成成分(D)に体質顔料を配合する場合、その配合量は、塗膜形成成分(D)中に含まれる樹脂固形分を基準にして、通常5〜300質量%、好ましくは10〜200質量%、さらに好ましくは15〜150質量%の範囲内であることができる。
【0091】
本発明の塗料組成物における粒状ゲル(C)と塗膜形成成分(D)の配合割合は、塗料組成物の用途などに応じて変えることができるが、粒状ゲル(C)/塗膜形成成分(D)の固形分質量比で、一般に1/99〜80/20、好ましくは10/90〜75/25、さらに好ましくは20/80〜50/50の範囲内であることができる。
【0092】
また、本発明の塗料組成物は、本発明の塗料組成物の固形分質量を基準にして、粒状ゲル(C)及び塗膜形成成分(D)を合計で、通常50〜99質量%、好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは70〜99質量%の範囲内で含有することができる。
【0093】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて、中和剤、増粘剤、界面活性剤、沈降防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、香料、pH調整剤、調湿剤、水性撥水剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、硬化促進剤、ホルムアルデヒド吸着剤、ワックス、アルキルシリケート縮合物又は該アルキルシリケート縮合物をポリアルキレングリコール等で変性してなる変性アルキルシリケート等の低汚染化剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などの塗料用添加剤を含むことができる。
【0094】
塗装方法
本発明の塗料組成物は、基材表面に塗装することにより、塗膜外観、耐水性等の性能に優れた塗膜を形成せしめることができる。
【0095】
本発明の塗料組成物を適用することができる基材表面としては、例えば、石膏ボード、コンクリート壁、モルタル壁、スレート板、PC板、ALC板、セメント珪酸カルシウム板、木材、石材、プラスチック成形物、金属加工材等の基材の表面、これら基材上に設けられたアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フッ素樹脂系、シリコンアクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系等の塗膜面、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の材質からなる壁紙面などを挙げることができる。
【0096】
本発明の塗料組成物の塗布量は、使用する塗料組成物の組成や塗布すべき基材の種類などに応じて変えることができるが、1回あたり通常50〜1,000g/m、好ましくは100〜700g/mの範囲内であることができる。また、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねてもよい。
【0097】
本発明の塗料組成物の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテ、ロールコーターなど用途等に応じて適宜選択することができる。
【0098】
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0099】
本発明の塗料組成物は、基材表面に、予め下塗り塗料を塗装した後、形成される下塗り塗面上に塗装することができる。
【0100】
上記下塗り塗料としては、基材表面の種類や状態などに応じて適宜選択することができ、例えば、シーラー、下地調整材等の下塗り塗料を使用することができる。また、通常の上塗り塗料を本発明の塗料組成物の下地形成用塗料として塗装することも可能である。
【0101】
かかる下地形成用の上塗り塗料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ
エステル系樹脂、アルキッド系樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる塗料を使用することが好ましい。
【0102】
下塗り塗料を塗装する場合、必要に応じて、2種以上の下塗り塗装を重ねて行うこともできる。
【0103】
上記下塗り塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、コテ、ロールコーターなど用途等に応じて適宜選択することができる。
【0104】
上記下塗り塗料の塗布量は、塗装する基材の種類などに応じて変えることができるが、1回あたり通常50〜2,000g/m、好ましくは70〜1,000g/mの範囲内とすることができる。また、塗膜外観を損なわない範囲で複数回塗り重ねてもよい。
【0105】
形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0107】
エマルションの製造
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に、下記の組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部とをそれぞれ添加し、添加20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液とを4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 413部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 20部
アクリル酸 2部
「ニューコール707SF」(注1) 66部。
【0108】
滴下後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の平均粒子径は170nm、pHは8.3であった。
【0109】
(注1) 「ニューコール707SF」: 商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレ
ン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
【0110】
白顔料ペーストの製造
製造例2
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、白顔料ペースト(b1)を得た。
水 225部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 30部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
「TITANIX JR−605」(注5) 500部。
【0111】
(注2) 「スラオフ72N」: 商品名、武田薬品工業(株)製、防腐剤。
(注3) 「DISPER BYK−190」: 商品名、BYKケミー社製、顔料分散
剤。
(注4) 「SNデフォーマー380」: 商品名、サンノプコ社製、消泡剤。
(注5) 「TITANIX JR−605」: 商品名、テイカ社製、チタン白。
【0112】
赤錆顔料ペーストの製造
製造例3
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて60分間攪拌混合することにより、赤錆顔料ペースト(b2)を得た。
水 400部
「スラオフ72N」(注2) 15部
「DISPER BYK−190」(注3) 48部
「SNデフォーマー380」(注4) 15部
酸化鉄 240部。
【0113】
粒状ゲル用水性液状組成物の製造
製造例4
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、粒状ゲル用水性液状組成物(A−1)を得た。
【0114】
55%エマルション(a1) 250部
白顔料ペースト(b1) 154部
10%アジピン酸ジヒドラジド水溶液 4部
「TEXANOL」(注6) 20部
「SNデフォーマー380」(注4) 2部
「アデカノールUH−438」(注7) 2部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部。
【0115】
(注6) 「TEXANOL」: 商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−ト
リメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤。
(注7) 「アデカノールUH−438」: 商品名、アデカ社製、ポリエーテルウレタ
ン変性物、粘性調整剤。
【0116】
製造例5〜7
上記製造例4において、配合組成を下記表1に示す配合組成に変える以外は製造例4と同様にして、粒状ゲル用水性液状組成物(A−2)〜(A−4)を製造した。
【0117】
【表1】

【0118】
粒状ゲル用水性媒体の製造
製造例8
4リットルステンレス容器に、酢酸カルシウム一水和物を7.0部及び脱イオン水を2,000部仕込み、均一になるまで攪拌することにより、酢酸カルシウムを含有する水性媒体(B−1)を製造した。
【0119】
製造例9〜17
上記製造例8において、配合組成を下記表2とする以外は製造例8と同様にして、水性媒体(B−2)〜(B−10)を製造した。
【0120】
【表2】

【0121】
塗膜形成成分用水性クリヤー塗料の製造
製造例18
2リットルのステレンス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、水性クリヤー塗料(C−1)を得た。
55%エマルション(a1) 750部
「TEXANOL」(注6) 50部
水 279部
「タルク SS」(注8) 250部
「SNデフォーマー380」(注4) 10部
「アデカノールUH−438」(注7) 6部。
【0122】
(注8) 「タルク SS」: 商品名、日本タルク社製、タルク。
【0123】
カルシウム塩を含有する塗膜形成成分用クリヤー塗料の製造例
製造例19、20
上記製造例18において、配合組成を下記表3とする以外は製造例18と同様にして、水性クリヤー塗料(C−2)、(C−3)を得た。
【0124】
【表3】

【0125】
粒状ゲルの製造
実施例1
4リットルステンレス容器に、上記製造例8で得られた水性媒体(B−1)を1,300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数2,500rpmで攪拌しながら、上記製造例4で得られた水性液状組成物(A−1)650部を徐々に容器内に滴下し、粒状ゲルを生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、粒状ゲル(D−1)を得た。得られた粒状ゲルは固形分が20%であった。
【0126】
実施例2〜20及び比較例1〜4
上記実施例1において、水性媒体と滴下する水性液状組成物の配合を下記表4に示すとおりとする以外は上記実施例1と同様にして、粒状ゲル(D−2)〜(D−24)を製造し、粒状ゲルの貯蔵安定性を評価した。なお、比較例1及び2では、生成した粒状ゲルの貯蔵安定性は良好であるが、製造装置の金属部の腐食が若干認められた。また、表4には、アルギン酸ナトリウムのカルボキシル基に由来する基1モルに対する水性媒体中に含まれる金属化合物のモル数(金属化合物として複数の化合物を併用している場合は合計のモル数)を示す。ここで、アルギン酸ナトリウムの分子量は90,000である。
【0127】
【表4】

【0128】
(*1)粒状ゲルの貯蔵安定性
表4に示した粒状ゲルを容量が1Lの内面コート缶に500部入れ、気温40℃、相対湿度60%の条件下で7日間貯蔵した。その後、室温に戻し、55%エマルション(a1)500部に粒状ゲル500部を加え、均一になるまで攪拌し、目視にて状態を観察し、次の基準で評価した。
◎:粒状ゲルがはっきりと識別でき、色の滲み出しがない、
○:粒状ゲルが識別できるが、わずかに色の滲み出しが認められる、
△:色の滲み出し及び粒状ゲルの潰れが認められる、
×:粒状ゲルが全く識別できない。
【0129】
多彩模様塗料の製造
実施例21〜36及び比較例5〜6
500ミリリットルのステンレス容器に、下記表5に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、その後、均一になるまで攪拌することにより、多彩模様塗料(E−1)〜(E−18)を製造した。得られた塗料の塗膜性能評価も併せて表5に示す。
【0130】
【表5】

【0131】
(注9) 「バイヒジュール3100」: 商品名、バイエル社製、水分散性ポリイソシ
アネート硬化剤。
(注10) 「サイメル327」: 商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メ
ラミン樹脂。
【0132】
試験塗板の作製
スレート板(150×70×3mm)上に、「EPシーラー透明」(商品名、関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し乾燥させた後、「ビニデラックス300」(商品名、関西ペイント社製、JIS K5663 1種適合アクリルエマルション系塗料)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させたものを被塗板とし、この上に各多彩模様塗料を塗布量が300g/mになるようにスプレーで塗装した。
【0133】
その後、実施例32以外の塗板については、気温23℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥して、各試験板を得た。実施例32のメラミン樹脂を使用した塗板については、電気乾燥機にて80℃で10分乾燥させた後、140℃で30分焼き付けを行い、各試験塗板を下記性能試験に供した。
【0134】
(*2)仕上がり性
各試験塗板の塗膜を目視で観察し、次の基準で評価した。
◎:鮮映性があり、凹凸感がない
○:鮮映性はあるが、やや凹凸感がある
○△:鮮映性はあるが、凹凸感がある
△:色の滲み出しが認められ、手で触った時、引っ掛かるざらつき感がある
×:著しい色の滲み出しや手で触ったとき、引っ掛かるざらつき感がある。
【0135】
(*3)耐水性
各試験塗板を23℃の上水に7日間浸漬し、引き上げた後、目視にて観察し、次の基準で評価した。
○:良好、
△:艶引け、白化、フクレのいずれか1つが認められる、
×:著しいフクレが認められる、又は塗膜が軟化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性樹脂(a)、着色剤(b)及び水溶性多糖類(c)を含有する水性液状組成物(A)と、金属化合物(d)を含有する水性媒体(B)とを接触させることを含んでなる粒状ゲル(C)を製造する方法であって、金属化合物(d)が、その成分の一部として有機酸金属塩(d1)を含むことを特徴とする粒状ゲル(C)の製造方法。
【請求項2】
水性樹脂(a)がアクリル系樹脂である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶性多糖類(c)がアルギン酸もしくはそのアルカリ金属塩、ジェランガム及びカラギーナンより選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水溶性多糖類(c)を、水性液状組成物(A)の質量(固形分)を基準にして、0.5〜10質量%の範囲内で含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
有機酸金属塩(d1)が酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム及び乳酸カルシウムより選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属化合物(d)が金属水酸化物、金属酸化物及び金属炭酸塩より選ばれる少なくとも1種の金属化合物(d2)をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
金属化合物(d)中における有機酸金属塩(d1)と金属化合物(d2)の使用割合が、有機酸金属塩(d1)/金属化合物(d2)のモル比で、99/1〜10/90の範囲内にある請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水性液状組成物(A)及び水性媒体(B)を、水性液状組成物(A)に含まれる水溶性多糖類(c)が有するカルボキシル基に由来する基1molに対して、水性媒体(B)に含まれる金属化合物(d)の量が0.2〜3molの範囲内となるような割合で使用する請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により得られる粒状ゲル(C)及び塗膜形成成分(D)を含んでなる塗料組成物。
【請求項10】
塗膜形成成分(D)が有機酸金属塩(d1)及び/又は金属化合物(d2)を含む請求項9に記載の塗料組成物。
【請求項11】
粒状ゲル(C)及び塗膜形成成分(D)を、粒状ゲル(C)/塗膜形成成分(D)の固形分質量比で、1/99〜80/20の範囲内となる割合で含んでなる請求項9又は10に記載の塗料組成物。
【請求項12】
基材表面に、請求項9〜11のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法。

【公開番号】特開2008−202037(P2008−202037A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11380(P2008−11380)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】