説明

粒状化爆薬の装填方法

【課題】 装薬孔内へ粒状化爆薬を装填する際に、適切な装薬長の確保及び装薬量の低減を図ると共に、過装薬の防止及びデカップリング効果の発揮することにより岩盤の損傷を抑制し、周辺地山の緩み領域の低減と周辺環境に対する影響を低減することが可能な粒状化爆薬の装填方法を提供する。
【解決手段】 装薬孔10内の最奥部から順に親ダイ20及びスペーサー30を装入する工程と、装薬孔10内へ装填ノズル40を装入し、当該装填ノズル40から粒状化爆薬50をエアブローして装填する工程とを含む。粒状化爆薬をエアブローする工程では、スペーサー30の後端部と装填ノズル40の前端部とを離隔して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発破作業において、装薬孔内へ粒状化爆薬を装填するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の発破作業では、紙巻包装爆薬と電気雷管を人力装填する方法、ANFO爆薬(Anmonium Nitrate Fuel Oil explosive/硝安油剤爆薬)と電気雷管を人力装填する方法、バルクエマルジョン爆薬と導火管付雷管を機械装填する方法、粒状含水爆薬と導火管付雷管を機械装填する方法等が用いられている。このような装薬方法に関して、作業性及び安全性の向上等を目的として、種々の技術が開発されている。
【0003】
例えば、発破作業における爆薬の装填時間の短縮及び作業効率の向上を目的とした爆薬の装填方法が開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された技術は、爆薬装填機を使用して装薬孔内に油中水滴型エマルジョン爆薬を装填する際に、同時に、無機質中空体又は有機質中空体のような威力調整剤を装填するようにしたものである。また、使用される威力調整剤は、シラスバルーン、パーライト、発泡スチロール、樹脂バルーン等からなるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−30710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発破作業を行う際には、爆薬の爆発力を破壊対象物にだけ作用させたり、発破時に発生する振動や騒音を低減させたり、破壊後の岩石等の大きさを調整したりするために、制御発破が行われる。
【0006】
例えば、粒状含水爆薬と導火管付雷管を機械装填する方法では、紙巻包装爆薬に雷管を取り付けた親ダイに加えて、増しダイとして粒状化爆薬をエアブローにより機械装填する。この際、装填時のエアブローの力が強いと、従来の発破方法と比較して装薬長が短くなるという特徴がある。
装薬長が短くなると、薬量は同じであっても装薬孔内において爆薬が存在する範囲が短くなるため、1孔当たりの装填比重が大きくなり、過装薬となってしまう。その結果、周辺地山の緩み領域が拡大したり、周辺環境へ与える影響が増大したりするという問題が発生するため、適切な制御発破を行う必要が生じる。
【0007】
なお、上述した特許文献1に記載された技術は、容易に制御発破を行うために開発された技術であるが、爆薬に混合する威力調整剤の添加量は、爆薬及び威力調整剤の嵩比重等により変化し、一概に決定することはできないとされている。すなわち、特許文献1に記載された技術は、発破作業を行う現場毎に、威力調整剤の材質及び装填量を調整する必要があり、汎用な技術とは言い難い。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、装薬孔内へ粒状化爆薬を装填する際に、適切な装薬長の確保及び装薬量の低減を図ると共に、過装薬の防止及びデカップリング効果を発揮することにより岩盤の損傷を抑制し、周辺地山の緩み領域の低減と周辺環境に対する影響を低減することが可能な粒状化爆薬の装填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る粒状化爆薬の装填方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る粒状化爆薬の装填方法は、装薬孔内へ粒状化爆薬を装填するための方法であって、装薬孔内の最奥部から順に親ダイ及びスペーサーを装入する工程と、装薬孔内へ装填ノズルを装入し、当該装填ノズルから粒状化爆薬をエアブローして装填する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、粒状化爆薬をエアブローする工程において、スペーサーの後端部と装填ノズルの前端部とを離隔して配置することが好ましい。
【0011】
さらに、装薬孔内に装入するスペーサーは、紙製の円筒体とすることが可能である。
【0012】
このような構成からなる粒状化爆薬の装填方法では、装薬孔内の最奥部に親ダイを装入し、この親ダイの手前側にスペーサーを装入する。そして、装薬孔内へ装填ノズルを装入し、公知のエアブロー装置を用いて粒状化爆薬を装薬孔内へ装填する。この際、スペーサーと装填ノズルとの間に空間を設けておき、親ダイ及びスペーサーの周囲と、スペーサーの手前側に粒状化爆薬を装填する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る粒状化爆薬の装填方法によれば、装薬孔内にスペーサーを装入することにより、適切な装薬長を確保して装薬量の低減を図ることができ、過装薬を防止することが可能となる。このため、デカップリング効果の発揮により岩盤の損傷が抑制され、周辺地山の緩み領域が低減し、さらには周辺環境に対する影響を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る粒状化爆薬の装填方法の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る粒状化爆薬の装填方法を適用する装薬孔の断面模式図である。
【0015】
<粒状化爆薬の装填方法の概要>
本発明の実施形態に係る粒状化爆薬の装填方法では、図1に示すように、装薬孔10の最奥部に親ダイ20を装入すると共に、親ダイ20の手前側にスペーサー30を装入する。そして、装薬孔10内へ装填ノズル40を装入し、当該装填ノズル40から粒状化爆薬50をエアブローして装填する。なお、親ダイ20には導火管付き雷管60が接続されている。
エアブローに使用する機器は、従来から使用されている公知の爆薬装填機を用いることができる。爆薬装填機の具体例は、例えば、特開平5−322500号公報、特開2005−201611号公報等に詳細に記載されている。
【0016】
<スペーサー>
スペーサー30は紙巻の筒状体からなり、本実施形態では、内径19mm、外径21mm、長さ300mm〜500mmのものを使用した。なお、スペーサー30の材質、内径及び外径、長さは、装薬孔10の長さ、装薬量、薬長、装填比重等に応じて、最適なものが選択される。本実施形態における具体的な削孔長、1孔あたりの薬量、薬長、装填比重の関係は、後に詳述する(表4参照)。
【0017】
<装填比重>
従来のスペーサー30を用いない装填方法においては、粒状化爆薬50の装填比重が0.9g/cm3程度であり、1孔あたりの装填比重という点において過装薬となっていた。そこで、本実施形態では、装填比重の目標値を0.7g/cm3程度に設定した。すなわち、装填比重の目標値を0.7g/cm3程度とすることにより、適切な装薬長を確保すると共に装薬量を低減することができる。
【0018】
<スペーサーと装填ノズルとの間隔>
本発明の発明者等は、本発明に係る粒状化爆薬の装填方法に想到するに際して、スペーサー30と装填ノズル40との間隔について鋭意実験を重ねた。この実験過程において、スペーサー30と装填ノズル40を接近させた状態で、粒状化爆薬50をエアブローして装填した。
【0019】
下記表1、表2、表3に実験結果を示す。表1はスペーサー30を用いないで粒状化爆薬50を装填した場合の実験結果、表2は300mmのスペーサー30を用い、スペーサー30と装填ノズル40とを接近させた状態で粒状化爆薬50を装填した場合の実験結果、表3は500mmのスペーサー30を用い、スペーサー30と装填ノズル40を接近させた状態で粒状化爆薬50を装填した場合の実験結果を示すものである。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
表1、表2、表3から明らかなように、スペーサー30と装填ノズル40を接近させた状態で、粒状化爆薬50をエアブローして装填した場合には、スペーサー30を用いなかった場合と比較して、爆薬の装填比重を低減することができたが、目標値である0.7g/cm3程度とすることができなかった。
このような実験結果となった原因として、薬量に対してスペーサー30の長さが短く、また、スペーサー30内に粒状化爆薬50が入り込んで軽装薬の効果を発揮できなかったことが推察される。
【0024】
そこで、スペーサー30と装填ノズル40を離隔して配置し、粒状化爆薬50をエアブローして装填する実験を行った。下記表4に実験結果を示す。表4は500mmのスペーサー30を用い、親ダイ20とスペーサー30とを離隔した状態で粒状化爆薬50を装填した場合の実験結果を示すものである。なお、離隔距離は500mmとした。
【0025】
【表4】

【0026】
表4から明らかなように、スペーサー30と装填ノズル40を離隔した状態で粒状化爆薬50を装填することにより、粒状化爆薬50の装填比重を平均0.65g/cm3とすることができ、目標値である0.7g/cm3を達成することができた。また、装薬長においても、100gあたり1.3cm(500gあたり6.5cm)の薬長の伸びが確認され、起砕状況も良好であった(表1と表4とを比較すると、表4では100gあたり2.4cm程度の薬長の伸びが確認された)。
【0027】
<最適な適用例>
本発明に係る粒状化爆薬の装填方法では、500mmのスペーサー30を使用し、スペーサー30と装填ノズル40を500mm以上離隔させて、表4に示すような削孔長、1孔あたりの薬量、薬長の関係を満足することにより、適切な装薬長を確保して装薬量の低減を図ることができた。なお、先に説明したように、スペーサー30の材質、内径及び外径、長さは、適宜変更して実施することができるが、この場合には、上述した具体例(表4)に示す数値に準じて、最適な値を決定すればよい。
【0028】
また、本発明に係る粒状化爆薬の装填方法は、平行削孔する最外周孔の間隔を狭め、動的効果の少ない爆薬を長く装填することにより、地山の損傷を最小限に止めて余掘りを減少させ、設計線に近似した掘削面を得るようにしたスムースブラスティング工法に対して、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る粒状化爆薬の装填方法を適用する装薬孔の断面模式図。
【符号の説明】
【0030】
10 装薬孔
20 親ダイ
30 スペーサー
40 装填ノズル
50 粒状化爆薬
60 導火管付き雷管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装薬孔内へ粒状化爆薬を装填するための方法であって、
装薬孔内の最奥部から順に親ダイ及びスペーサーを装入する工程と、
前記装薬孔内へ装填ノズルを装入し、当該装填ノズルから粒状化爆薬をエアブローして装填する工程と、
を含むことを特徴とする粒状化爆薬の装填方法。
【請求項2】
前記装薬孔内に粒状化爆薬をエアブローする工程において、前記スペーサーの後端部と前記装填ノズルの前端部とを離隔して配置することを特徴とする請求項1記載の粒状化爆薬の装填方法。
【請求項3】
前記装薬孔内に装入するスペーサーは、紙製の円筒体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粒状化爆薬の装填方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−117035(P2010−117035A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288319(P2008−288319)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)