説明

粒状多孔性化成肥料およびその製造方法

【課題】優れた即溶性を有し、かつ機械施肥に好適な粒状多孔性化成肥料の提供。
【解決手段】窒素成分、燐酸成分、加里成分を含有し、粒径が2〜8mmであり、かさ比重が0.65〜0.90であり、かつ水中溶解時間が5分未満であることを特徴とする粒状多孔性化成肥料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌水分により容易に溶解し、施肥後すぐに肥効を発現でき、かつ機械施肥時に粉塵が生じにくく均一に散布できる粒状多孔性化成肥料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における農作物の生産の主眼は、多収量を得ることから、市場が求める品質を満たす作物を得ることへシフトしている。そのためには緻密な肥培管理が必要であり、施肥体系で言えば追肥の重要度が増している。追肥は作物がある程度成長した時点で施用され、作物が必要とする養分を適当なタイミングで供給するため、追肥に用いられる肥料としては即効性すなわち即溶性であることが求められる。
【0003】
このような肥料としては、特許文献1に開示の多孔性化成肥料が知られている。この肥料は、硫酸、硝酸、燐酸、硝酸加里等からなる酸性溶液をアンモニア気流中に噴霧することで酸とアンモニアの反応熱が生じ、液滴中の水分が水蒸気となり膨張して中空構造が形成され多孔性となる。その多孔性ゆえに、多孔性化成肥料は比表面積が大きくなり、水に容易に溶解する。すなわち即溶性という特長を有する。即溶性を有する多孔性化成肥料は、圃場に散布された際に土壌表面の水分によって迅速に溶解し、その肥効を発現することができる。即効性の追肥肥料としては、NK化成肥料等の粒状化成肥料が使用されているが、即溶性という点においては、多孔性化成肥料は粒状化成肥料よりもはるかに優れている。
【0004】
また、農業生産技術の発達により施肥作業も機械化が進んでおり、ブロードキャスタ、条施肥機、背負い式動力散布機などが市販されている。しかし、これらの施肥機は一般の粒状化成肥料や粒状有機肥料用に開発されたものである。一方、多孔性化成肥料は中空構造を有しているため一般の粒状肥料と比較して粒硬度が低く、かつかさ比重が小さい。そのため、一般に使用されている施肥機にて多孔性化成肥料を施肥すると、粒が崩壊して粉塵が生じて施肥機の各部で詰まりを生じたり、比重が小さいため肥料粒の飛び距離が短くなって散布面積が小さくなったり、散布ムラが生じるという問題点があった。手撒き施肥時においても細粒が風で飛散し、施肥ムラの問題が生じた。また、肥料粉末が作物、特に葉野菜の葉に付着するとその部分が褐変してしまい、市場価値が下がるという問題も生じた。
【0005】
上述のとおり、優れた即溶性を有し即効性である肥料として多孔性化成肥料が既に知られている。しかし、多孔性化成肥料は粒硬度が低く、かさ比重が小さいため、機械施肥に供した場合に問題を有するものであった。すなわち、優れた即溶性を有し、かつ機械施肥に好適な粒状肥料はこれまで市場に存在しなかったのである。
【特許文献1】特開2000−143378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた即溶性を有し、かつ機械施肥に好適な粒状多孔性化成肥料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、多孔性化成肥料粉末を造粒機にて粒径が2〜8mmの大きさに成型することにより、散布後土壌表面の水分によって容易に溶解して迅速に肥効を発現でき、かつ機械施肥時に粉塵が生じることなく均一に散布できる粒状多孔性化成肥料を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1)窒素成分、燐酸成分、加里成分を含有し、粒径が2〜8mmであり、かさ比重が0.65〜0.90であり、かつ水中溶解時間が5分未満であることを特徴とする粒状多孔性化成肥料。
2)窒素成分として、硝酸態窒素を1〜10%含有することを特徴とする上記1)に記載の粒状多孔性化成肥料。
3)粒硬度が2kg以上であることを特徴とする上記1)または2)に記載の粒状多孔性化成肥料。
4)粒硬度が3kg以上であり、かつ粒表面が滑らかで、機械施肥時に粉塵が生じにくいことを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の粒状多孔性化成肥料。
5)窒素成分、燐酸成分、加里成分を含む多孔性化成肥料粉末をブリケットロール造粒機にて成型することを特徴とする粒状多孔性化成肥料の製造方法。
6)窒素成分、燐酸成分、加里成分を含むブリケット成型体を整粒機にて整粒することを特徴とする粒状多孔性化成肥料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粒状多孔性化成肥料は、即溶性であるため散布後直ちに肥効を発現することができ、かつ機械施肥にて均一な散布が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について、特に好ましい形態を中心に、詳細に説明する。
本発明でいうところの多孔性化成肥料とは、発泡により生ずる中空構造を有する化成肥料である。その製造方法としては、アンモニア気流を生じさせた反応塔上部から燐酸、硫酸、硫酸加里、硝酸加里などからなる酸性溶液を噴霧することにより製造する方法が従来から知られている。噴霧された酸性溶液がアンモニアガス気流中を液滴として落下中、アンモニアとの中和反応によって生じる反応熱により水分が蒸発する際に、液滴表面に均一な薄い被膜が形成され内部の水分が水蒸気となり膨張することで、外側に薄い殻を有する中空構造が形成されると考えられている。
【0011】
多孔性化成肥料の肥料成分としては、植物の3大栄養素である窒素成分、燐酸成分および加里成分が含有される。これら3成分の含有量は目的に応じて自由に設定することが可能であるが、成分値が高い方が散布量を減らすことができ、施肥作業の負荷を軽減することができる。なお、本発明における窒素成分、燐酸成分および加里成分の成分値とは、各々N換算、P換算、KO換算した場合の各成分の多孔性化成肥料の重量に対する重量%のことである。多孔性化成肥料の安定製造を妨げない程度であれば、これら3成分以外の肥料成分あるいはその他の添加剤を必要に応じて含有させてもかまわない。
【0012】
本発明では、多孔性化成肥料粉末を造粒機にて粒状に成型するわけであるが、その肥料粒の大きさは直径2〜8mmである。肥料粒子の粒径がこの範囲を上回る場合は、単位面積あたりに散布される粒数が少なくなり、小面積施肥の際に撒きムラが生じやすくなる。また、肥料粒子の粒径がこの範囲を下回る場合は、機械施肥を実施する際に、粒径の小さい粒子が施肥機の各部位で詰まりを生じて均一な散布が困難になることがある。
【0013】
本発明の粒状多孔性化成肥料のかさ比重としては、0.65〜0.90の範囲である。この範囲を上回ると、成型時に多孔性化成肥料の中空構造が失われていることになり、即溶性を示さなくなる。この範囲を下回ると、機械施肥時に肥料粒の飛び距離が安定せず、肥料の撒きムラが生じる。また、比重が小さいと散布時に作物の葉柄上に肥料粒が落下せずに残ってしまうことがあり、葉野菜の場合は肥料粒の付着部位が褐変して商品価値が下がってしまう。
【0014】
追肥用の肥料としては即効性すなわち即溶性であることが求められるが、水中溶解時間を比較することで肥料の即溶性を評価することができる。本課題を達成するためには水中溶解時間は5分未満であり、好ましくは4分未満である。実際に肥料が追肥として圃場に散布された場合、肥料粒は地表面に落下し、地表面付近の土壌水分を吸湿して崩壊し、肥料成分が溶解する。よって、実際の圃場においては、肥料が散布された後、溶解して肥効を発現するまでにはタイムラグが生じる。水中崩壊時間が5分以上になると、実際の圃場において、その肥料が肥効を発現するまでに時間がかかってしまい、即効性肥料とは言えなくなる。
【0015】
本発明の粒状多孔性化成肥料は硝酸態窒素を1〜10%含有することが好ましい。硝酸塩は溶解度が高く土壌水分により速やかに溶解するため、硝酸態窒素は作物に速やかに吸収される。また吸収された硝酸態窒素は作物体内で速やかにアミノ酸態窒素に変換される。そのため硝酸態窒素は即効性である。化成肥料に含有される窒素成分としては、硝酸態窒素以外に尿素態窒素およびアンモニア態窒素がある。尿素態窒素は土壌中のウレアーゼの作用でアンモニア態窒素に変換される。アンモニア態窒素は土壌微生物である硝酸化成菌の作用で硝酸態窒素に変換される。つまり、尿素態窒素およびアンモニア態窒素は作物が吸収・利用できる形態に変化するまでに時間がかかる。それゆえ、即効性の追肥用肥料には硝酸態窒素が含有されていることが好ましい。硝酸態窒素含有率が1%未満になると即効性を得ることが困難になる。硝酸態窒素含有率が10%を超えると吸湿性の高い硝酸アンモニウムの含有量が多くなるため、製造工程中で乾燥不良となり固結しやすくなる。また同様に、製品保管中においても吸湿によりしばしば固結することがある。
【0016】
本発明の粒状多孔性化成肥料の粒硬度としては、2kg以上が好ましい。この範囲であれば、機械施肥時に粒が崩壊しにくく、均一な散布が容易となる。
本発明の粒状多孔性化成肥料は多孔性化成肥料粉末を造粒機にて成型して得られるわけであるが、原料となる多効性化成肥料粉末の粒径は目的とする粒状多孔性化成肥料の粒径以下であり、0.5mm以下であることが好ましい。従来の製法にて得られた多孔性化成肥料をそのまま、または粉砕して篩に通すことで容易に得られる。
【0017】
本発明で使用する造粒機としては、回転ドラム造粒機、パン造粒機等の転動式造粒機、流動層造粒機、ヘンシェル造粒機等の攪拌式造粒機、回転バー、回転ナイフなどの解砕造粒機、圧縮ロール、ブリケットロール、打錠機等の圧縮式造粒機等、一般に市販されているものが使用できる。中でも圧縮ロール、ブリケットロール、打錠機等の圧縮式造粒機が好ましい。圧縮式造粒機は、原料粉体を乾燥状態のまま、またはわずかに湿らせた状態で圧縮力で成型するため、成型機構が単純で運転管理が容易であるためである。圧縮式造粒機としては圧縮ロール、ブリケットロール、打錠機等が知られているが、圧縮ロールはシート状の中間製品を解砕造粒機にかけるため工程が長くなり、打錠機は一粒ずつ造粒する構造のため生産性が低い等の課題を有している。ブリケットロール造粒機が本発明には最も好適である。ブリケットロール造粒機の特長としては、(1)形状のそろった粒が得られる、(2)密度の大きい粒が得られる、(3)粒の表面が比較的きれいである、などが挙げられる。
【0018】
ブリケットロール造粒機とは、同速で互いに反対方向に回転する2本のロール間で原料粉体を圧縮し成型する圧縮式造粒機の1つであり、このロール表面にはブリケット成型体の母型であるポケットが刻まれている。そのポケットの形状や大きさによって、種々の形状や大きさのブリケット成型体を得ることが可能となる。ブリケット成型体の形状としては、ピロー状、レンズ状、アーモンド状、プリズム状、棒状などの形状を作ることができ、大きさとしては0.3mlから20ml程度のブリケットの製造が可能である。通常ブリケット製造においては、ロール間のクリアランスの大きさやロール同士の押さえ圧、フィードスクリューの押し圧力などを調整することによりシート状一次成型体が得られる。複数のブリケット粒子が連結部を介してシート状に成型されたシート状一次成型体を軽く解砕することにより、ブリケット成型体を得ることができる。
【0019】
本発明の粒状多孔性化成肥料をブリケットロール造粒機にて製造する際、原料の多孔性化成肥料粉末の水分含量や製造現場の雰囲気によってブリケットロール造粒機のロールポケットへの付着や詰まりが生じることがある。この場合、ロール面を超硬クロムめっきやフッ素樹脂ブレンド金属表面処理等の表面加工を施したり、ロール面に剥離剤を付着させることにより、ロールポケットへの肥料粒の付着を防ぐことができる。剥離剤としては、タルク、クレー、カオリン、ベントナイト、ステアリン酸マグネシウム等の微粉末が挙げられる。
剥離剤をロールに付着させる方法としては噴霧や塗布があるが、生産効率を鑑みると原料に混合するのが最も好ましい。剥離剤の添加量としては、原料の多孔性化成肥料粉末重量に対して、3.0〜6.0重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは3.5〜4.5重量%である。
【0020】
また、本発明の粒状多孔性化成肥料をブリケットロール造粒機にて製造する際、多孔性化成肥料ブリケット成型体の粒子間の連結部は「バリ」として肥料粒に残るが、整粒工程を経ることで「バリ」が除去され均一な形状を有する粒状多孔性化成肥料が得られる。整粒機としては市販の装置を使用することができるが、マルメライザや転動パン造粒機が好適である。多孔性化成肥料のブリケット成型体を整粒する際に、整形しやすくするために水分を添加して肥料粒表面部の可塑性を増加させるが、その水分添加量は粒状多孔性化成肥料重量に対して2.0〜4.5重量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは3.0〜4.0重量%の範囲である。この範囲を上回ると整粒作業中に肥料粒同士の接着や、その後の乾燥工程において乾燥不足が生じることがある。この範囲を下回ると肥料粒表面部に充分な可塑性が得られず、整粒効果が小さくなる。また、この整粒工程を経ることにより肥料粒表面が滑らかになり、粉塵が生じにくくなると同時に粒硬度が向上する利点もある。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考例]多孔性化成肥料粉末の製造
表1に示した組成に従って各原料を混合し、90℃にて攪拌して酸性溶液を調整した。この酸性溶液を供給量3100kg/hrで反応塔に移送し、高さ10mの反応塔上部より圧力噴霧ノズルにて噴霧し、平均粒径700μmの液滴とした。同時に、反応塔下部よりアンモニアガス(アンモニア80容量%、水蒸気15容量%、空気5容量%)を風量4000Nm/hrで供給して、反応塔内部で酸性溶液液滴と反応させた。反応後、反応塔上部より排ガス(アンモニア55容量%、水蒸気40容量%、空気5容量%)を風量4600Nm/hrで排出した。反応塔の温度は135℃とした。得られた多孔性化成肥料を篩に通して、0.5mm以下の粒子を多孔性化成肥料粉末とした。以上の製造方法にて多孔性化成肥料粉末1および2を得た。得られた多孔性化成肥料粉末の成分値を表1に示した。
【0022】
[実施例1]
ブリケットロール造粒機により、粒状多孔性化成肥料の製造を実施した。前述の製造方法にて得られた多孔性化成肥料粉末1および、多孔性化成肥料粉末重量に対して4.0重量%のタルク(商品名:FT−2 福岡タルク工業所製 平均粒径:11.45μm)を回転式混合機に投入し、5分間混合した。この混合粉体をブリケットロール造粒機(商品名:BSS−IV 新東工業(株)製 ロール寸法:φ160mm×315mm ポケットサイズ:φ5.0mm×1.3mm ポケット数:96個/周×65列=6240個)に投入し、ロール圧力:7.6t/cm、ロール回転数:48rpm、ロール間隙:0.3mm、粉体処理量:800kg/hrの運転条件で成型を実施した。得られたシート状一次成型体を解砕篩分機(商品名:KGO−1200−3D 新東工業(株)製 上、中、下段篩目開きはそれぞれ、10.00mm、6.97mm、3.01mm)にて解砕し、6.97〜3.01mmの大きさの製品を得た。このブリケットロール造粒機による製造方法において、投入した多孔性化成肥料粉末に対する粒状多孔性化成肥料の回収率を計算したところ、82.6%であった。
【0023】
[実施例2]
実施例1の製造方法にて得られた製品に付着している「バリ」を除去するために、整粒を実施した。転動パン造粒機(パン直径φ1800mm、パンの深さ250mm)に「バリ」が付着した製品50kgを投入し、傾斜角度:49度、パン回転数:12rpm、水分添加量:投入した粒状多孔性化成肥料重量の4.0重量%の運転条件で5分間整粒処理を実施した。得られた整粒品を80℃の乾燥機で10分間乾燥させた。乾燥後の水分率は0.42重量%であった。乾燥させた整粒品を篩分機(上段目開き:7.3mm、下段目開き:3.3mm)に通して、7.3〜3.3mmの大きさの粒状多孔性化成肥料を得た。得られた製品は、「バリ」がほとんど除去されており、表面が滑らかで均一な形状を有していた。ブリケットロール造粒機のポケットと同形かつほぼ同サイズ、すなわちレンズ状であり、直径5.0±0.5mmかつ厚さ2.9±0.3mmの粒子重量が全粒子重量の95%以上を占め、きわめて粒径が揃っていた。この製造方法において、投入した多孔性化成肥料粉末に対する粒状多孔性化成肥料の回収率を計算したところ、75.6%であった。
【0024】
[実施例3]
原料に前述の多孔性化成肥料粉末2を用いたこと以外は全て実施例1と同様の方法にて粒状多孔性化成肥料を製造した。粒状多孔性化成肥料の回収率は77.8%であった。
【0025】
[実施例4]
実施例3の製造方法にて得られた製品に付着している「バリ」を除去するために、実施例2と同様の方法で整粒を実施した。得られた製品は表面が滑らかで均一なレンズ形状を有しており、直径5.0±0.5mmかつ厚さ2.9±0.3mmの粒子重量が全粒子重量の95%以上を占めた。粒状多孔性化成肥料の回収率は63.7%であった。
【0026】
[実施例5]
原料に前述の多孔性化成肥料1を用いて、転動パン造粒機にて粒状多孔性化成肥料の製造を実施した。多孔性化成肥料粉末30kgを転動パン造粒機の転動パン(パン直径φ1800mm、パンの深さ250mm)に投入した。傾斜角度:49度、パン回転速度:12rpmの条件でパンを回転させながら、多孔性化成肥料粉末重量に対して8重量%の水をスプレーにて添加し、5分間パンを回転させることにより造粒を実施した。得られた造粒品を、80℃の乾燥機で20分間乾燥させた。乾燥後の水分率は0.57重量%であった。乾燥させた整粒品を篩に通して、4.5〜1.5mmの大きさの粒状多孔性化成肥料を得た。得られた製品の表面には凹凸が見られた。このパン造粒機による製造方法による粒状多孔性化成肥料の回収率は27.5%であった。
【0027】
[比較例1および2]
比較例1として、多孔性化成肥料(商品名:あさひポーラス660 旭化成ケミカルズ(株)製 保証成分値:N16%、P16%、KO10%)を用い、比較例2として化成肥料(商品名:くみあい燐硝安加里S604号 旭化成ケミカルズ(株)製 保証成分値:N16%、P10%、KO14%)を用いた。比較例1の多孔性化成肥料の粒径は3.35mm〜1.00mmの範囲であり、比較例2の化成肥料の粒径は4.00〜2.36mmの範囲であった。
上記の実施例1〜4および比較例1,2について、以下の試験方法に従い評価を行った。
【0028】
[試験1]水中溶解時間の測定
実施例1〜4および比較例1,2について、下記の方法に従い水中溶解時間を測定した。粒状肥料10gを25℃の1Lの蒸留水に浸漬し、すばやく攪拌羽にて回転数150rpmで攪拌した。このとき攪拌羽が直接肥料粒子に接触しないように、水の上部を攪拌した。30秒ごとに肥料溶解液を1mLずつ採取し、その溶液中の窒素含有率を測定し、供試した肥料からの窒素成分の溶解割合を算出した。窒素成分の溶解割合が90%を超えた時間を水中溶解時間とした。実施例1〜4および比較例1,2の水中溶解時間の測定結果を表2に示した。
【0029】
[試験2]かさ比重の測定
容積100cmの円筒状ステンレス容器(内径5.0cm)に、実施例1〜4および比較例1,2の肥料粒を静かに入れ、ステンレス製のスパチュラの柄ですりきった。このとき容器に入った肥料粒重量を測定し、その数値を100で叙して、かさ比重とした。実施例1〜4および比較例1,2のかさ比重測定結果を表2に示した。
【0030】
[試験3]粒硬度の測定
木屋式硬度計(木屋製作所(株)製)にて、実施例1〜4および比較例1,2の肥料粒の硬度を測定した。各肥料につき、50粒の粒硬度を測定した。その粒硬度平均値を表2に示した。
【0031】
[試験4]背負い式動力散布機による散布試験
コマツナ栽培圃場において、動力散布機による肥料散布試験を実施した。背負い式動力散布機(商品名:DMC800 共立(株)製)のホッパーに実施例1〜4および比較例1,2の肥料粒20kgを入れ、エンジンスロットル:5、開口部開度:7にて肥料粒を散布した。肥料粒の散布状態を以下の5段階の評価基準に照らし合わせて評価した。また、コマツナ葉柄上への肥料粒の残留の有無を目視にて確認した。実施例1〜4および比較例1,2の背負い式動力散布機による散布試験評価結果および肥料粒残留の有無を表2に示した。
【0032】
(評価基準)
5:散布時にほとんど粉塵が立たず、散布状態は極めて良好。4:粉塵が多少立つが、散布状態は良好。3:粉塵が立ち、散布状態にばらつきが見られる。2:多量の粉塵が立ち、散布のばらつきが大きい。1:肥料粒が崩壊し、散布困難。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
多孔性化成肥料粉末をブリケット造粒機にて成型した実施例1は、水に迅速に溶解し、多少粉塵が生じたものの背負い式動力散布機により均一に散布することができた。コマツナ葉柄上への肥料粒の残留は見られなかった。
多孔性化成肥料粉末をブリケット造粒機にて成型した後、転動パン造粒機にて整粒をして得た実施例2および3は、即溶性であり、かつ背負い式動力散布機により粉塵がほとんど生じることなく散布作業に何ら支障はなかった。実施例2および3は粒径がきわめて揃っているため、飛び距離が安定し、きわめて均一な散布が可能であった。コマツナ葉柄上への肥料粒の残留は見られなかった。
【0036】
多孔性化成肥料粉末を転動パン造粒機にて造粒して製造された実施例4については、即溶性であったが、粒硬度が小さく機械散布時に多少粉塵が生じたが均一に散布することができた。コマツナ葉柄上への肥料粒の残留は見られなかった。
市販の多孔性化成肥料である比較例1は、水に極めて迅速に溶解したが、機械施肥に耐えうる粒硬度を有しておらず、機械施肥時に多量の粉塵が発生し、散布ムラが生じた。また、コマツナ葉柄上に比重の小さい肥料粒が残留していた。
市販の粒状化成肥料である比較例2については、粒硬度が大きく機械施肥による散布には好適であったが、水中溶解時間が長く即溶性でなかった。
すなわち、本発明の粒状多孔性化成肥料は、水に迅速に溶解し、かつ機械施肥に好適な肥料であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の粒状多孔性化成肥料は、即溶性であるため散布後直ちに肥効を発現することができ、かつ機械施肥にて均一な散布が可能である。すなわち本発明の粒状多孔性化成肥料は、機械化の進んだ栽培体系における追肥として有用であり、高品質の作物の栽培が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素成分、燐酸成分、加里成分を含有し、粒径が2〜8mmであり、かさ比重が0.65〜0.90であり、かつ水中溶解時間が5分未満であることを特徴とする粒状多孔性化成肥料。
【請求項2】
窒素成分として、硝酸態窒素を1〜10%含有することを特徴とする請求項1に記載の粒状多孔性化成肥料。
【請求項3】
粒硬度が2kg以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の粒状多孔性化成肥料。
【請求項4】
粒硬度が3kg以上であり、かつ粒表面が滑らかで機械施肥時に粉塵が生じにくいことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の粒状多孔性化成肥料。
【請求項5】
窒素成分、燐酸成分、加里成分を含む多孔性化成肥料粉末をブリケットロール造粒機にて成型することを特徴とする粒状多孔性化成肥料の製造方法。
【請求項6】
窒素成分、燐酸成分、加里成分を含むブリケット成型体を整粒機にて整粒することを特徴とする粒状多孔性化成肥料の製造方法。

【公開番号】特開2006−169064(P2006−169064A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366096(P2004−366096)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】