説明

粒状物質密度測定装置及び粒状物質密度測定方法

【課題】 より感度が高く廉価な粒状物質密度測定装置及びその実施に適用する粒状物質密度測定方法を提供する。
【解決手段】 一対の電極と、被測定液を両電極間に供給する供給器と、両電極に所要の電圧を印加する電源部20と、該電源部20の動作を制御する制御手段14と、両電極間のインピーダンスを測定する測定部50と、測定されたインピーダンスに基づいて前記被測定液に含有される粒状物質の密度を求める演算手段15とを備え、電源部20には、各粒状物質を両電極間に誘電泳動させるための交流電圧を出力する誘電泳動用電源回路21と、両電極間のインピーダンスの値が周波数に依存しない所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を出力する測定用電源回路23とが設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物又は血球等、生物に係る粒状物質の密度を測定する装置、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品産業では衛生管理が行われているが、衛生管理にあっては細菌数を正確に検出することが重要である。かかる細菌数を検出する方法として、数段階に希釈した被測定液を複数の平板培地に各別に塗抹し、各平板培地上に生育した細菌のコロニーを計数するコロニー計数法が広く実施されているが、コロニーとして計数できるまで細菌を培養するのに1日から2日程度と長時間を要するため、迅速に細菌数を検出し得る装置の開発が要求されていた。
【0003】
そのため、発明者らの一人は、例えば後記する特許文献1に次のような微生物測定装置を開示している。すなわち、微生物測定装置は、センサ基板上に櫛歯状の一対の電極を相互に所定距離隔てた状態で噛み合わしたように配設し、両電極に被測定液を供給するとともに、両電極間に100kHz程度の周波数の交流電圧を印加することによって、両電極間のギャップ内に被測定液に含まれる細菌を誘電泳動させるように構成してある。
【0004】
両電極のギャップ内に誘電泳動された細菌はそこに捕集されるので、両電極間に細菌細胞のチェーンによる架橋が形成される。かかる架橋の数は被測定液に含まれる細菌の密度に応じて定まる一方、架橋の数によって両電極間のインピーダンスが変化する。そこで、インピーダンスの変化量と細菌密度との関係から求めた関数を予め設定しておき、両電極間に前記周波数と同じ周波数の交流電圧を印加することによって、前記インピーダンスの変化量を検出し、検出した値及び前記関数を用いて被測定液の細菌密度を求めるようになしてある。
【0005】
ここで、検出されたインピーダンスの値には、両電極間に介在する液体の静電容量に起因する成分も含まれているため、例えばロックインアンプを用いることによって、前述したインピーダンスの検出周波数における位相角を計測し、得られた位相角に基づいてコンダクタンス成分を抽出することによって、電極間に捕集された細菌数に相関するようにしていた。
【0006】
更に、後記する非特許文献1には次のような微生物測定装置を開示している。すなわち、本微生物測定装置は、前同様、一対の電極に100kHz程度の周波数の交流電圧を印加することによって、両電極間のギャップ内に被測定液に含まれる細菌を誘電泳動させた後、適宜のパルス電圧を両電極間に印加することによって、捕集された細菌の細胞壁を破壊させて細胞内物質を放出させるように構成してある。
【0007】
このようにして、細胞内物質を放出させた後、前同様、両電極間に100kHz程度の周波数の交流電圧を印加して検出されたインピーダンスから前述した如くコンダクタンスを抽出し、得られたコンダクタンス及び前記係数を用いて被測定液の細菌密度を求める。
【0008】
細胞内物質には多量のイオンが含まれるため、細胞内物質を放出させることによって、両電極間のインピーダンスの変化量を増大させることができ、これによって細菌密度が3×102CFU(Colony Formation Unit)/ml程度の被測定液について、その細菌密度を3時間程度で測定することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−223
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Suehiro,T.Htatano,M.Shutou,M.Hara“Improvement of electric pulse shape for electropermeabilization-assisted dielectrophoretic impedance measurement for hight sensitive bacteria detection”,Sens.Actuators B.Chem.,Vol.109,pp.209-215(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述した両微生物測定装置にあっても、コンダクタンス成分を抽出するためにロックインアンプを用いなければならず、装置コストが嵩むという問題があった。また、より細菌密度が低い被測定液の測定に対応できる高感度な装置の開発も要求されている。
【0012】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、より感度が高く廉価な粒状物質密度測定装置、及びより感度が高く装置構成を廉価にすることができる粒状物質密度測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る粒状物質密度測定装置は、互いに所定距離を隔てて配置された一対の電極と、生物に係る複数の粒状物質を含有する被測定液を両電極間に供給する供給器と、両電極に所要の電圧を印加する電圧電源部と、該電圧電源部の動作を制御する制御部と、両電極間のインピーダンスを測定する測定部と、測定されたインピーダンスに基づいて前記被測定液に含有される粒状物質の密度を求める演算部とを備え、前記電圧電源部は、各粒状物質を両電極間に誘電泳動させるための交流電圧を出力する誘電泳動用電源手段と、両電極間のインピーダンスの値が周波数に依存しない所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を出力する測定用電源手段とを具備し、前記制御部は、前記誘電泳動用電源手段を所定時間動作させた後、前記測定用電源手段を動作させるようになしてあり、前記演算部は、測定されたインピーダンスを予め設定された関数に代入して前記密度を求めるようになしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明の粒状物質密度測定装置にあっては、互いに所定距離を隔てて配置された一対の電極と、生物に係る複数の粒状物質を含有する被測定液を両電極間に供給する供給器と、両電極に所要の電圧を印加する電圧電源部と、該電圧電源部の動作を制御する制御部と、両電極間のインピーダンスを測定する測定部と、測定されたインピーダンスに基づいて前記被測定液に含有される粒状物質の密度を求める演算部とを備えている。
ここで、生物に係る粒状物質には、細菌、胞子、ウィルス、血球等が含まれる。
このような粒状物質を含有する被測定液中の前記粒状物質の密度を測定すべく、被測定液を供給器によって両電極間に供給する。
【0015】
前述した電圧電源部は、各粒状物質を両電極間に誘電泳動させるための交流電圧を出力する誘電泳動用電源手段と、両電極間のインピーダンスの値が周波数に依存しない所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を出力する測定用電源手段とを具備しており、誘電泳動用電源手段は、例えば粒状物質が細菌である場合は100kHz程度の周波数の交流電圧を出力して、両電極間に粒状物質を誘電泳動させるようになっている。
【0016】
かかる誘電泳動用電源手段の動作は制御部によって制御されており、制御部は、予め設定された所定時間だけ誘電泳動用電源手段を作動させた後、測定用電源手段を作動させる。
【0017】
前述したように測定用電源手段は、両電極間のインピーダンスを測定すべく、所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を出力するようになしてあり、かかる周波数帯域は、被測定液が同一であれば周波数に拘らず両電極間のインピーダンスの値が略一定となるように定めてあるので、測定部によって測定されたインピーダンスから被測定液に含有される粒状物質の密度を直接求めることができる。
【0018】
これによって、従来の如く測定されたインピーダンスからコンダクタンスを抽出する操作が不要となり、従ってロックインアンプを配設する必要がないので、装置コストを廉価にすることができる。
【0019】
一方、前述した周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧によって測定されるインピーダンスの値は、それ以外の周波数の交流電圧にて測定されるインピーダンスの値より大きい。従って、測定感度が向上し、より密度が低い被測定液の測定に対応することができる。
【0020】
前述した制御部は、誘電泳動用電源手段を所定時間動作させて、被測定液中の粒状物質を両電極間に十分に誘電泳動させた後、測定用電源手段を動作させて両電極間のインピーダンスを測定させる。
そして、演算部は、測定されたインピーダンスを予め設定された関数に代入することによって、被測定液に含有される粒状物質の密度を直接求める。
【0021】
(2)本発明に係る粒状物質密度測定装置は必要に応じて、前記測定用電源手段は、略100Hz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を出力するようになしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明の粒状物質密度測定装置にあっては、測定用電源手段は、略100Hz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を出力するようになしてある。
略100Hz以上略30kHz以下の周波数帯域においては、被測定液が同一であれば周波数の値に拘らず両電極間のインピーダンスの値が略一定となる。
【0023】
これによって前同様、ロックインアンプを用いることなく、測定部によって測定されたインピーダンスから被測定液に含有される粒状物質の密度を直接求めることができる。従って、装置コストを廉価にすることができるのに加え、測定感度を向上させることができる。
【0024】
(3)本発明に係る粒状物質密度測定装置は必要に応じて、前記測定用電源手段は、略10kHz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を出力するようになしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明の粒状物質密度測定装置にあっては、測定用電源手段は、略10kHz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を出力するようになしてある。
【0026】
測定用電源手段から出力される交流電圧の周波数が略10kHz未満である場合、前述した電極が例えばクロムというように電気化学的な安定度が比較的低い材料で形成してあると、当該電極が交流電圧の印加によって劣化する場合あが、本発明の如く略10kHz以上略30kHz以下の適宜値になした場合、電気化学的な安定度が低い材料で形成した電極であっても、当該電極が交流電圧の印加によって劣化する虞がない。
従って、クロムというように、電気化学的な安定度が比較的低いものの廉価な材料で電極を形成することができ、製造コストを可及的に低くすることができる。
【0027】
なお、金若しくは白金等又はそれらを含有する合金というように、電気化学的な安定度が高い材料を用いて電極を形成した場合、測定用電源手段から出力される交流電圧を略100Hz以上略10kHz未満になした場合であっても当該電極が劣化することを防止することができる。
【0028】
(4)本発明に係る粒状物質密度測定装置は必要に応じて、前記測定用電源手段が出力する交流電圧の周波数を含む適宜周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを更に備え、前記測定部は前記バンドパスフィルタを通過した信号を用いて両電極間のインピーダンスを測定するようになしてあることを特徴とする。
【0029】
本発明の粒状物質密度測定装置にあっては、測定用電源手段が出力する交流電圧の周波数を含む適宜周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを更に備え、前記測定部は前記バンドパスフィルタを通過した信号を用いて両電極間のインピーダンスを測定する。
【0030】
このように、バンドパスフィルタを通過した測定用信号を用いて求めたインピーダンスの値から被測定液に含まれる粒状物質の密度を直接的に求めるため、演算部は、測定用の交流電圧の印加を開始してからら非常に短い時間を経過後のインピーダンスの値を取り込むこができる。
【0031】
両電極間のインピーダンスの値は、測定用の交流電圧の印加を開始してから漸次減衰して行くが、測定用の交流電圧の印加を開始してから可及的に短い時間内のインピーダンスの値を用いることができるので、前述した減衰を可及的に回避することができ、従って測定感度が向上する。
【0032】
これに対して、ロックインアンプを用いる従来の測定装置にあっては、それまでとは異なる周波数である測定用の交流電圧の印加を開始してから、当該周波数にロックインするまでに比較的長時間を要するため、より減衰したインピーダンスの値しか用いることができず、測定感度は相対的に低い。
【0033】
(5)本発明に係る粒状物質密度測定装置は必要に応じて、前記粒状物質は内部物質を膜で包んでなり、前記電圧電源部は、内部物質を膜外へ放出させるパルス電圧を出力するパルス電圧用電源手段を更に備え、前記制御部は、前記誘電泳動用電源手段を所定時間動作させた後、前記パルス電圧用電源手段を所定時間作動させ、次いで前記測定用電源手段を動作させるようになしてあることを特徴とする。
【0034】
本発明の粒状物質密度測定装置にあっては、前記粒状物質は内部物質を膜で包んでなり、電圧電源部は、内部物質を膜外へ放出させるパルス電圧を出力するパルス電圧用電源手段を更に備え、制御部は、前記誘電泳動用電源手段を所定時間動作させた後、前記パルス電圧用電源手段を所定時間作動させ、次いで前記測定用電源手段を動作させるようになしてある。
【0035】
粒状物質は、細菌、胞子、ウィルス、血球等、内部物質を膜で包んでなる。かかる内部物質はイオン濃度が高く、膜の外に放出された場合、電極間のインピーダンスがより大きく変化するので、粒状物質の密度をより高感度に測定することができる。
【0036】
かかる粒状物質からその内部物質を放出させるべく、パルス電圧用電源手段はパルス電圧を出力する。
そして、前述した制御部は、誘電泳動用電源手段を所定時間動作させて、粒状物質を両電極間に誘電泳動させた後、パルス電圧用電源手段を所定時間作動させて、誘電泳動させた粒状物質から内部物質を放出させる。この状態で、制御部は測定用電源手段を動作させ、両電極間のインピーダンスを測定部に測定させる。
これによって、より低い被測定液に含有される粒状物質の密度を高感度に測定することができる。
【0037】
(6)本発明に係る粒状物質密度測定方法は、互いに所定距離を隔てて配置された一対の電極間に生物に係る複数の粒状物質を含有する被測定液を供給し、両電極に適宜の交流電圧を印加して各粒状物質を両電極間に誘電泳動させた後、両電極に所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を印加して両電極間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを予め設定された関数に代入して前記被測定液に含まれる粒状物質の密度を求めることを特徴とする。
【0038】
本発明の粒状物質密度測定方法にあっては、互いに所定距離を隔てて配置された一対の電極間に生物に係る複数の粒状物質を含有する被測定液を供給し、両電極に適宜の交流電圧を印加して各粒状物質を両電極間に誘電泳動させた後、両電極に所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を印加して両電極間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを予め設定された関数に代入して前記被測定液に含まれる粒状物質の密度を求める。
【0039】
前述した所定周波数帯域は、被測定液が同一であれば周波数の値に拘らず両電極間のインピーダンスの値が略一定となるように定めてあり、従って前同様、測定部によって測定されたインピーダンスから被測定液に含有される粒状物質の密度を直接求めることができる。
【0040】
これによって前同様、ロックインアンプを配設する必要が無くなり、装置コストを廉価にすることができる。また、前述した周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧によって測定されるインピーダンスの絶対値は、それ以外の周波数の交流電圧にて測定されるインピーダンスの絶対値より大きいため、測定感度が向上し、より密度が低い被測定液の測定に対応することができる。
【0041】
(7)本発明に係る粒状物質密度測定方法は必要に応じて、両電極間のインピーダンスを測定すべく、両電極に略100Hz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を印加することを特徴とする。
【0042】
本発明の粒状物質密度測定方法にあっては、両電極間のインピーダンスを測定すべく、両電極に略100Hz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を印加する。
【0043】
前述したように略100Hz以上略30kHz以下の周波数帯域においては、被測定液が同一であれば周波数の値に拘らず両電極間のインピーダンスの値が略一定となる。従って、ロックインアンプを用いることなく、測定部によって測定されたインピーダンスから被測定液に含有される粒状物質の密度を直接求めることができるので、装置コストを廉価にすることができるのに加え、測定感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る密度測定装置の一例をその模式図及び模式的部分拡大図と共に示すブロック図である。
【図2】図1に示した本体の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示したセンサ部の等価回路図である。
【図4】0.1Mマンニトール溶液を用いてセンサ部の電極に10kHz〜300kHzの第2交流電圧を印加した場合の両電極間のインピーダンスを示すグラフである。
【図5】図1及び図2に示した密度測定装置によって被測定液に含有される粒状物質の密度を測定する手順を示すフローチャートである。
【図6】図1及び図2に示した密度測定装置によって被測定液に含有される粒状物質の密度を測定する手順を示すフローチャートである。
【図7】導電率が異なる複数の試験液について、第2交流電圧の周波数を異ならせて規格化インピーダンスを測定した結果を示すグラフである。
【図8】図1に示した本発明に係る装置の測定感度と、ロックインアンプを備える従来の装置の測定感度を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(本発明の実施形態)
図1は、本発明に係る密度測定装置の一例をその模式図及び模式的部分拡大図と共に示すブロック図であり、図中、1は本体、3は細菌密度を検出するためのセンサ部である。また、図2は、図1に示した本体1の構成を示すブロック図である。
【0046】
センサ部3は、硝子製の基板30の略中央にクロムといった導電性材料をフォトリソグラフィー技術を用いて所要のパターンに形成してなる一対の電極32,32が相互に適宜の距離を隔てて設けてある。図1に示した場合にあっては、電極32,32は、例えば平面視が略U字の櫛歯状になしてあり、互いに当該電極32の1歯部を他の電極32を構成する両歯部の間内へ挿入し、相互に適宜の間隙を隔てた状態で歯合させてある。かかる電極32,32にあっては一方の電極32の端部と他方の電極32の端部との間に電界が集中されるため、比較的低い印加電圧であっても所要の誘電泳動を行わせることができる。
【0047】
ここで、電極32,32の幅寸法及び長さ寸法は適宜に設定することができるが、例えば電極32の歯部の幅寸法を50μm程度に、歯部の長さ寸法を12mm程度になすことができる。また、両電極32,32の側縁間の寸法は適宜に設定することができ、例えば5μm程度になすことができる。
【0048】
なお、本実施の形態では2本の歯部を具備する電極32,32を用いた場合について示したが、本発明はこれに限らず、複数の歯部を具備する電極を用いてもよい。また、両電極32,32の側縁間の寸法は、少なくとも被測定液に含まれる細菌といった測定対象の直径以上に設定すればよい。
【0049】
ところで、基板30の両電極32,32の周囲に環状壁材を固着して被測定液を一時的に貯留するチャンバ31になしてあり、該チャンバ31の開口はカバー部材で封止してある。
なお、チャンバ31の容量は適宜に設定することができるが、例えば数μl〜数十μl程度になせばよい。
【0050】
カバー部材の適宜箇所には該カバー部材を貫通する一対の貫通孔が開設してあり、両貫通孔にはそれぞれ被測定液を通流させるためのチューブ9,9の一端が連結してある。両チューブ9,9の他端は被測定液Lを貯留する貯留槽6内にそれぞれ挿入させてあり、貯留槽6内に貯留された被測定液Lはマグネチックスターラ又はスクリューといった撹拌機5によって撹拌されるようになっている。
【0051】
また、一方のチューブ9の中途位置にはポンプ8が介装してあり、該ポンプ8によって貯留槽6内の被測定液Lが一方のチューブ9からセンサ部3のチャンバ31内へ導入され、それに伴ってチャンバ31内の被測定液Lは、他方のチューブ9内を通って前記貯留槽6内へ排出されるようになっている。
【0052】
このようなセンサ部3の電極32,32には、図2に示した如く、チャンバ31内に導入された被測定液L中の細菌を両電極32,32間へ誘電泳動させる際に作動される誘電泳動用電源回路(誘電泳動用電源手段)21、誘電泳動によって両電極32,32間に捕集した細菌の細胞壁を破壊して細胞内物質を放出させる際に作動されるパルス電圧用電源回路(パルス電圧用電源手段)22、及び、細胞内物質が放出された後の両電極32,32間のインピーダンスを測定する際に作動される測定用電源回路(測定用電源手段)23からこの順に、所定の時間間隔でそれぞれ電圧が印加されるようになっており、かかる誘電泳動用電源回路21、パルス電圧用電源回路22及び測定用電源回路23を具備する電源部20の動作は演算制御部10に設けられた制御手段14によって制御される。
【0053】
前述した誘電泳動用電源回路21は、誘電泳動を行うのに至適な周波数になした第1交流電圧を出力するようになしてあるが、測定対象が細菌である場合は、周波数を略100kHzになし、振幅を略5Vppになしたときが好適である。かかる周波数の第1交流電圧を両電極32,32に印加することによって、測定対象たる細菌を両電極32,32間へ迅速に誘電泳動させて、そこに捕集することができる。
なお、かかる条件になした場合、第1交流電圧の印加時間たる誘電泳動時間TDは、5分程度から3時間程度までの所定時間に設定するとよい。
【0054】
この誘電泳動時間TDは本体1の演算制御部10に備えられた記憶手段13に予め設定されている。また、演算制御部10には時間を計測する計時手段12、及び後述するように細菌(粒状物質)の密度を演算する演算手段15も設けてあり、これら計時手段12、演算手段15及び前述した制御手段14の動作はCPU11によって制御されている。
【0055】
制御手段14は記憶手段13から誘電泳動時間TDを読み出して誘電泳動用電源回路21を作動させると共に、計時手段12が計測した時間が誘電泳動時間TDに達した場合、誘電泳動用電源回路21の動作を停止させる。
【0056】
また、前述したパルス電圧用電源回路22は、細胞壁といった内部物質を内包する膜の破壊を行うために至適な矩形波状のパルス電圧を出力するようになしてあるが、測定対象が細菌である場合、周波数を略100kHzになし、振幅を略20Vppになして、印加時間を略10msになしたときが好適である。これによって、両電極32,32間に捕集された粒状物質たる細菌の細胞壁を確実に破壊して細胞内物質を放出させることができる。
なお、かかる条件になした場合、パルス電圧の印加時間は、10m秒程度の所定時間に設定するとよい。
【0057】
かかるパルス電圧の印加時間も記憶手段13に予め設定されており、制御手段14は記憶手段13からパルス電圧の印加時間を読み出して、誘電泳動時間TD経過後にパルス電圧用電源回路22を作動させると共に、計時手段12が計測した時間がパルス電圧印加時間に達した場合、パルス電圧用電源回路22の動作を停止させる。
【0058】
一方、前述した測定用電源回路23は、両電極32,32間のインピーダンスの測定に至適な周波数になした第2交流電圧を出力するようになしてあるが、かかる第2交流電圧としては後述するように、測定されるインピーダンスの値が両電極32,32間に印加する第2交流電圧の周波数に依存しない周波数帯域内の適宜値になしてある。なお、第2交流電圧の振幅は5Vpp程度であればよい。
【0059】
前述した制御手段14は、パルス電圧印加時間が経過した後に測定用電源回路23を作動させ、後述する適宜のタイミングで測定用電源回路23の動作を停止させる。
【0060】
第2交流電圧の印加によってセンサ部3の電極32から出力された測定用信号は、本体1に備えられたバンドパスフィルタ(BPF)40に与えられるようになっている。BPF40は、前述した第2交流電圧の周波数を含む所定周波数帯域の測定用信号を通過させるようになっており、BPF40を通過した測定用信号はインピーダンスを測定する測定部50に与えられる。
【0061】
測定部50は与えられた測定用信号を用いて両電極32,32間のインピーダンスの値を求めてそれを演算制御部10の演算手段15に与える。一方、演算手段15は両電極32,32間に第2交流電圧が印加され始めてから例えば30m秒程度の所定時間経過後に測定部50から与えられたインピーダンスの値を取込むようになっており、後述するように取込んだインピーダンスの値から直接、被測定液に含有された細菌の密度を求めるようになっている。
ところで、前述した記憶手段13には次の(1)式、比例定数K及び前述した誘電泳動時間TDが予め設定してある。
【0062】
【数1】

【0063】
演算手段15は、記憶手段13から(1)式、比例定数K及び誘電泳動時間TDを予め読み出しており、測定部50から出力されたインピーダンスの値を取り込むと、(1)式に比例定数K及び誘電泳動時間TD、並びに前記インピーダンスの値を代入して、被測定液に含まれる細菌の密度を算出し、得られた密度を表示部60に表示させるようになっている。
【0064】
このように本発明にあっては、BPF40を通過した測定用信号を用いて求めたインピーダンスの値から被測定液に含まれる細菌の密度を算出するため、前述した如く演算手段15は、パルス電圧の印加が終了してから非常に短い時間を経過後のインピーダンスの値を取り込むこができる。両電極32,32間のインピーダンスの値は、パルス電圧の印加によって極大となり、その後は漸次減衰して行くが、本発明にあってはパルス電圧の印加が終了してから可及的に短い時間内のインピーダンスの値を用いることができるので、前述した減衰を可及的に回避することができ、従って測定感度が向上する。
【0065】
一方、前述した如きロックインアンプを用いる従来の測定装置にあっては、パルス電圧の印加が終了してから新たな周波数にロックインするまでに比較的長時間を要するため、より減衰したインピーダンスの値しか用いることができず、測定感度は相対的に低い。
ここで、第2交流電圧の好適な周波数帯域について説明する。
【0066】
図3は図1に示したセンサ部3の等価回路図である。
図3に示した如く、センサ部3は、直列接続した一方の電極の表面に形成される二重層容量Cd、両電極間のバルク抵抗Rs、他方の電極の表面に形成される二重層容量Cdが直列接続しており、これらに両電極間のバルク静電容量Csが並列接続した構成になっている。
かかる等価回路において2Cd=Cd´とすると、電極系のインピーダンスZの絶対値は次の(2)式で表すことができる。
【0067】
【数2】

【0068】
ここで、Rs=k/(σ0+Δσ)、ω=2πfとし、Cd´及びCsが一定であると仮定すると、次の(3)式で示すように、電極系のインピーダンスZの絶対値は導電率変化Δσと周波数fとの関数として表される。なお、kは定数を、σ0はバルク導電率の初期値をそれぞれ表している。
【0069】
【数3】

【0070】
そして、センサ部3の電極32,32に印加する第2交流電圧の周波数と両電極32,32間のインピーダンスとの関係を検討した。
図4は、0.1Mマンニトール溶液を用いてセンサ部の電極に10kHz〜300kHzの第2交流電圧を印加した場合の両電極間のインピーダンスを示すグラフであり、縦軸はインピーダンスの絶対値を、横軸は周波数を示している。また、図4中、実線は前述した(2)式を用いてシミュレーションした結果を、×印は図1に示したセンサ部3を用いて実測した結果をそれぞれ示している。
【0071】
なお、測定に用いた電極32,32の歯部の幅寸法は50μmであり、歯部の長さ寸法は12mmであり、対向する歯部間のギャップは5μmである。また、チャンバ31はアクリル樹脂材料を用いて、15μlの容量になしてある。
【0072】
図4から明らかなように、シミュレーションの結果と実測した結果とは略一致しており、いずれの結果もインピーダンスの絶対値には、異なる周波数によってその値が異なる第1領域RIと、異なる周波数であってもその値が略一定である第2領域RIIとが存在しているという知見が得られた。
【0073】
第2交流電圧として従来用いていた周波数は100kHz程度であり、かかる周波数は図4から明らかな如く第1領域RIであるので、インピーダンスの絶対値にはバルク抵抗値RS及びバルク静電容量Csの両成分が寄与することとなる。そのため、電極系のインピーダンスの絶対値のみならずその位相角をも測定し、得られた結果に基づいて両成分を分離しなければならなかった。
【0074】
一方、本発明にあっては、第2交流電圧として第2領域RII内の周波数を設定してある。すなわち、第2交流電圧の周波数は略100Hz以上略30kHz以下の適宜値になしてある。
【0075】
かかる周波数帯域にあっては、電極系のインピーダンスの絶対値にはバルク抵抗値RS成分が寄与する一方、バルク静電容量Csは殆ど寄与していないので、両成分を分離する必要がなく、従ってインピーダンスの絶対値をそのまま用いて被測定液に含まれる細菌の密度を直接算出することができる。
【0076】
このように本発明にあっては、インピーダンスの絶対値をそのまま用いて被測定液に含まれる細菌の密度を直接算出することができるため、従来の装置の如きロックインアンプを必要とせず、従って装置構成を簡単にすることができるので装置コストを低減させることができる。
【0077】
また、図4から明らかな如くインピーダンスの絶対値は、第2交流電圧を第1領域RIの周波数に設定したときより、第2領域RIIの周波数に設定したときの方が大きいので、本発明にあっては測定感度も向上する。
【0078】
図1に示した装置にあっては、大腸菌であれば5×101CFU/mlの密度の被測定液を3時間で定量的に測定することができた。
このとき、第2交流電圧の周波数を略10kHz以上略30kHz以下の適宜値に設定するのがより好適である。
【0079】
第2交流電圧の周波数が略10kHz未満である場合、電極32,32が例えばクロムというように電気化学的な安定度が比較的低い材料で形成してあると、当該電極32,32が第2交流電圧の印加によって劣化する場合ある。一方、第2交流電圧の周波数を略10kHz以上略30kHz以下の適宜値になした場合、電気化学的な安定度が低い材料で形成した電極32,32であっても、当該電極32,32が第2交流電圧の印加によって劣化する虞がない。
【0080】
従って、クロム、アルミニウムというように、電気化学的な安定度が比較的低いものの廉価な材料で電極32,32を形成することができ、センサ部3の製造コストを可及的に低くすることができる。
【0081】
ところで、金若しくは白金等又はそれらを含有する合金というように、電気化学的な安定度が高い材料を用いて電極32,32を形成した場合、第2交流電圧を略100Hz以上略10kHz未満になした場合であっても当該電極32,32が劣化することを防止することができる。なお、電極32,32は、電気化学的な安定度が高い材料でメッキしたものであってもよいことはいういまでもない。
【0082】
次に、図1及び図2に示した装置によって被測定液に含有される粒状物質の密度を測定する手順について説明する。
図5及び図6は、図1及び図2に示した密度測定装置によって被測定液に含有される粒状物質の密度を測定する手順を示すフローチャートである。
【0083】
粒状物質が懸濁される媒体であり、当該粒状物質を含有しない液体のみのブランク液がセンサ部3のチャンバ31内に供給されると(ステップS1)、制御手段14は測定用電源回路23を作動させて第2交流電圧をセンサ部3の電極32,32に印加させ(ステップS2)、測定部50から与えられた測定結果を演算手段15が取込むと(ステップS3)、CPU11はそれをインピーダンスZ0として記憶手段13に与えてそこに記憶させる(ステップS4)。なお、ブランク液がセンサ部3のチャンバ31に供給されたことは、例えば本体1に予め設けたスイッチ部からの信号によって検知させることができる。
【0084】
次に、ブランク液に細菌(粒状物質)が懸濁された被測定液Lがチャンバ31に供給されると(ステップS10)、制御手段14は誘電泳動用電源回路21を作動させて第1交流電圧を両電極32,32に印加させる(ステップS11)とともに、CPU11によって作動された計時手段12が計測した時間を逐次取込み(ステップS12)、取込んだ時間が予め設定された誘電泳動時間に達したか否かを判断する(ステップS13)。制御手段14は取込んだ時間が誘電泳動時間に達したと判断するまで第1交流電圧を両電極32,32に印加させ続けることによって、被測定液Lに含有される細菌を両電極32,32間に泳動捕集させ、誘電泳動時間に達したと判断した場合、誘電泳動用電源回路21の動作を停止させて第1交流電圧の出力を停止させる(ステップS14)。
【0085】
引き続いて制御手段14は、パルス電圧用電源回路22を作動させてパルス電圧を両電極32,32に印加させる(ステップS20)とともに、CPU11によって作動された計時手段12が計測した時間を逐次取込み(ステップS21)、取込んだ時間が予め設定されたパルス電圧印加時間に達したか否かを判断する(ステップS22)。制御手段14は取込んだ時間がパルス電圧印加時間に達したと判断するまでパルス電圧を両電極32,32に印加させ続けることによって、泳動捕集された細菌から内部物質を放出させ、パルス電圧印加時間に達したと判断した場合、パルス電圧用電源回路22の動作を停止させてパルス電圧の出力を停止させる(ステップS23)。
【0086】
引き続いて制御手段14は、測定用電源回路23を作動させて第2交流電圧を両電極32,32に印加させ(ステップS30)る一方、演算手段15はCPU11によって作動された計時手段12が計測した時間を逐次取込み(ステップS31)、取込んだ時間が予め設定された測定時間に達したか否かを判断する(ステップS32)。演算手段15は取込んだ時間が測定時間に達したと判断した場合、測定部50から与えられた測定結果をインピーダンスZTPとして取込む(ステップS33)。演算手段15には前述した(1)式が設定されており、演算手段15は取込んだインピーダンスZTP及び記憶手段13に記憶されたインピーダンスZ0を(1)に代入して、細菌の密度ρを算出し(ステップS40)、算出した密度ρを表示部60に出力する(ステップS50)。
【0087】
なお、本実施の形態では、被測定液に含まれる細菌の密度の検出に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ウィルス、単細胞動植物、血球又は血小板等、生物に係る粒状物質の密度測定に適用できる。この場合、測定対象物に対応する比例定数Kを予め求めておき、それを演算制御部10の記憶手段13に設定しておく。
【0088】
また、本実施の形態では、パルス電圧用電源回路22を配設して、電極32,32間に誘電泳動された細菌にパルス電圧を印加し、細菌の内部物質を放出させた後、前記電極32,32に第2交流電圧を印加してインピーダンスを測定するようになしてあるが、本発明はこれに限らず、パルス電圧用電源回路22を配設することなく、インピーダンスを測定するようになしてもよい。
【0089】
この場合、電極32,32間に第1交流電圧を所定時間印加して誘電泳動を行い、次いで電極32,32間に略100Hz以上略30kHz以下の適宜周波数の第2交流電圧を印加することによってインピーダンスを測定し、第2交流電圧の印加開始から例えば10msから30ms程度経過に測定されたインピーダンスから被測定液に含有される細菌の密度を直接求める。
【0090】
これによって、前同様、インピーダンスからコンダクタンスを抽出する操作が不要となり、従ってロックインアンプを配設する必要がないので、装置コストを廉価にすることができる。
【0091】
また、前述した周波数帯域内の適宜周波数の第2交流電圧によって測定されるインピーダンスの値は、それ以外の周波数の第2交流電圧にて測定されるインピーダンスの値より大きいため、測定感度が向上する。
【実施例1】
【0092】
次に、第2交流電圧の好適な周波数について検討した結果について説明する。
図7は、導電率が異なる複数の試験液について、第2交流電圧の周波数を異ならせて規格化インピーダンスを測定した結果を示すグラフであり、縦軸は規格化インピーダンスの変化量(ΔZ/Z0)を、横軸は第2交流電圧の周波数をそれぞれ示している。また、試験液の導電率は、0.11μS/cm(図中a)、1μS/cm(図中b)、2.5μS/cm(図中c)である。
【0093】
図7から明らかなように、いずれの試験液を用いた場合でも、略100Hz以上略30kHz以下の周波数帯域にあっては、第2交流電圧の周波数に拘らず規格化インピーダンスの変化量は略一定であった。
【0094】
従って、略100Hz以上略30kHz以下の適宜の周波数になした第2交流電圧を用いることによって、前述したようにインピーダンスの値をそのまま用いて被測定液に含まれる粒状物質の密度を直接算出することができる。
【0095】
これによって、従来の如く測定されたインピーダンスからコンダクタンスを抽出する操作が不要となり、従ってロックインアンプを配設する必要がないので、装置コストを廉価にすることができる。
【0096】
一方、図7から明らかなように、前述した周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧によって測定される規格化インピーダンスの変化量は、それ以外の周波数の交流電圧にて測定される規格化インピーダンスの変化量より大きい。従って、測定感度が向上し、より密度が低い被測定液の測定に対応することができる。
【実施例2】
【0097】
次に、比較試験を行った結果について説明する。
図8は、図1に示した本発明に係る装置の測定感度と、ロックインアンプを備える従来の装置の測定感度を比較した結果を示すグラフであり、縦軸は規格化インピーダンスの変化量(ΔZ/Z0)を、横軸は被測定液に含有される大腸菌の密度(ρ)と誘電泳動時間(TD)との積(s・CFU/ml)をそれぞれ示している。また、図中、aは図1に示した本発明に係る装置による結果を、bは従来の装置による結果をそれぞれ示している。
【0098】
なお、従来の装置にあっては、第2交流電圧の周波数を100kHzとし、ロックインアンプを用いてインピーダンスを測定した以外は、本発明に係る装置と同じ構成、同じ条件とした。ただし、位相差データを用いたコンダクタンス抽出は行っていない。
【0099】
図8から明らかなように、大腸菌の密度と誘電泳動時間との積(ρ・TD)がいずれの値においても、規格化インピーダンスの変化量(ΔZ/Z0)は本発明に係る装置による結果の方が、従来の装置による結果より略6倍高かった。
つまり、本発明に係る装置の測定感度は従来の装置の測定感度より略6倍高いものであった。
【符号の説明】
【0100】
1 本体
3 センサ部
5 撹拌機
10 演算制御部
14 制御手段
15 演算手段
20 電源部
21 誘電泳動用電源回路
22 パルス電圧用電源回路
23 測定用電源回路
31 チャンバ
32 電極
40 バンドパスフィルタ(BPF)
L 被測定液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定距離を隔てて配置された一対の電極と、生物に係る複数の粒状物質を含有する被測定液を両電極間に供給する供給器と、両電極に所要の電圧を印加する電圧電源部と、該電圧電源部の動作を制御する制御部と、両電極間のインピーダンスを測定する測定部と、測定されたインピーダンスに基づいて前記被測定液に含有される粒状物質の密度を求める演算部とを備え、
前記電圧電源部は、各粒状物質を両電極間に誘電泳動させるための交流電圧を出力する誘電泳動用電源手段と、両電極間のインピーダンスの値が周波数に依存しない所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を出力する測定用電源手段とを具備し、
前記制御部は、前記誘電泳動用電源手段を所定時間動作させた後、前記測定用電源手段を動作させるようになしてあり、
前記演算部は、測定されたインピーダンスを予め設定された関数に代入して前記密度を求めるようになしてある
ことを特徴とする粒状物質密度測定装置。
【請求項2】
前記測定用電源手段は、略100Hz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を出力するようになしてある請求項1記載の粒状物質密度測定装置。
【請求項3】
前記測定用電源手段は、略10kHz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を出力するようになしてある請求項2記載の粒状物質密度測定装置。
【請求項4】
前記測定用電源手段が出力する交流電圧の周波数を含む適宜周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを更に備え、
前記測定部は前記バンドパスフィルタを通過した信号を用いて両電極間のインピーダンスを測定するようになしてある
請求項1から3のいずれかに記載の粒状物質密度測定装置。
【請求項5】
前記粒状物質は内部物質を膜で包んでなり、
前記電圧電源部は、内部物質を膜外へ放出させるパルス電圧を出力するパルス電圧用電源手段を更に備え、
前記制御部は、前記誘電泳動用電源手段を所定時間動作させた後、前記パルス電圧用電源手段を所定時間作動させ、次いで前記測定用電源手段を動作させるようになしてある
請求項1から4のいずれかに記載の粒状物質密度測定装置。
【請求項6】
互いに所定距離を隔てて配置された一対の電極間に生物に係る複数の粒状物質を含有する被測定液を供給し、両電極に適宜の交流電圧を印加して各粒状物質を両電極間に誘電泳動させた後、両電極に所定周波数帯域内の適宜周波数の交流電圧を印加して両電極間のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスを予め設定された関数に代入して前記被測定液に含まれる粒状物質の密度を求めることを特徴とする粒状物質密度測定方法。
【請求項7】
両電極間のインピーダンスを測定すべく、両電極に略100Hz以上略30kHz以下の適宜周波数の交流電圧を印加する請求項6記載の粒状物質密度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−204013(P2010−204013A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52041(P2009−52041)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年9月10日 電気関係学会九州支部連合会発行の「平成20年度電気関係学会九州支部連合大会(第61回連合大会)講演論文集」(CD)に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、九州経済産業局、地域イノベー ション創出研究開発事業「食品衛生管理用自動細菌数迅速計測システムの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000156581)日鉄環境エンジニアリング株式会社 (67)
【出願人】(509065333)有限会社スカイ・ブルー (2)
【Fターム(参考)】