説明

粒状物質移送用ポンプ

【課題】乾燥粒状物質押し出しポンプに関する課題を解決すべく創出されたものであり、ポンプにより圧送される乾燥粒状物質のポンプ内での停滞を防ぎ、ポンプ内壁に剪断破壊が生じるのを防ぐように、ポンプ内に複数の移動壁を備えた乾燥粒状物質押し出しポンプを提供する。
【解決手段】粒状物質移送用ポンプ10が、その入口12と、出口16との間の全ての側面に、移動壁20A,20Bによって少なくとも部分的に画定された通路14を備える。これにより、通路の全周部分が可動となる。その通路は、多角形もしくは円形の断面形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省に付与の政府契約番号2007LDA798PWR2007−42のもと、米国政府の補助によりなされた。米国政府は本発明の一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、石炭ガス化用の乾燥石炭押し出しポンプに関し、さらに具体的には、乾燥石炭押し出しポンプ用の複数の移動壁機構に関する。
【背景技術】
【0003】
石炭ガス化処理は、石炭もしくはその他の炭素を含有する固体の、合成ガスへの転化を含む。乾燥石炭と水スラリの両方がガス化処理に用いられるが、現行の水スラリ技術に比べて乾燥石炭ポンピングのほうがより熱効率が高い。処理を合理化し、乾燥石炭ガス化の機械効率を向上させるために、乾燥石炭ガス化における乾燥石炭押し出しポンプの使用が着実に一般化してきている。現在普及している一部の乾燥石炭押し出しポンプには、内部に剪断破壊領域を生じ、流れが停滞する問題がある。破壊領域の存在により、機械効率の低下を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7387197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、上述したような乾燥粒状物質押し出しポンプに関する課題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、ポンプにより圧送される乾燥粒状物質のポンプ内での停滞を防ぎ、ポンプ内壁に剪断破壊が生じるのを防ぐように、ポンプ内に複数の移動壁を備えた乾燥粒状物質押し出しポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
粒状物質移送用ポンプが、その入口と、出口との間の全ての側面に、移動壁によって少なくとも部分的に画定された通路を備える。これにより、通路の全周部分が可動となる。その通路は、多角形もしくは円形の断面形状を有する。
【0007】
以下に開示の限定されない実施例の詳細な説明から、様々な特徴が当業者にとって明らかとなるであろう。詳細な説明に添付の図面を、以下のように簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図2の線1−1に沿って切断した乾燥粒状物質ポンプの概略断面図。
【図2】乾燥粒状物質ポンプの概略上面図。
【図3】乾燥粒状物質ポンプによって画定される流路の概略図。
【図4】2つの移動壁を有する乾燥粒状物質ポンプに対し、4つの移動壁を有する乾燥粒状物質ポンプによって発生される、異なるアスペクト比および異なるL/W比における圧力のグラフを示す図。
【図5】商用ポンプの設計空間およびポンプのコストに対する影響のグラフを示す図。
【図6】一実施例(限定せず)の乾燥粒状物質ポンプの概略上面図。
【図7】別の実施例(限定せず)の乾燥粒状物質ポンプの概略上面図。
【図8】別の実施例(限定せず)の乾燥粒状物質ポンプの概略上面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および図2は、それぞれ、乾燥微粉炭などの乾燥粒状物質を移送するための乾燥石炭押し出しポンプ10(dry coal extrusion pump)の断面図および上面図を概略的に示す。ポンプ10を乾燥微粉炭の移送用として記載するが、ポンプ10は、任意の乾燥粒状物質を移送してもよく、石油化学工業、電気事業、食品産業、農産業などの市場を含む、限定されない様々な産業に用いられうる。
【0010】
ポンプ10は、概して、入口12と、通路14と、出口16と、を含む。通路14は、移動壁20A〜20D(図2)が4つの壁の各々を画定する複数の移動壁機構を含む。当然のことながら、ここで用いられる「移動壁」は、乾燥粒状物質を移送し、移動壁20A〜20Dとその間の物質との間の相互作用により仕事を生じさせるベルトとして機能する。これに限定されない一実施例では、移動壁20A〜20Dの各々は、対応するロードビーム22A〜22D、スクレーパシール24A〜24D、および駆動機構26A〜26E(図1の断面図では2つのみを示す)を含む。各移動壁20A〜20Eのその他の態様を更に理解するには、本出願人に譲渡され、本出願の参照となる特許文献1を参照されたい。
【0011】
乾燥微粉炭が入口12からポンプに投入され、通路で連通して、出口16でポンプ10から排出される。出口16は回転弁28を通して制御される。移動壁20A〜20Dが通路14を通して乾燥微粉炭を移送する。
【0012】
図3を参照すると、通路14のアスペクト比(AR)が高さ/幅(H/W)で定義される。所望のポンプ圧が増大するに従い、アスペクト比は増大する傾向にある。さらに、効率は、概して摩擦損失を制御するように一般的に長さ/幅(L/W)比によって決定される。
【0013】
図4は、典型的な2つの移動壁を有するポンプに対し、4つの移動壁を有するポンプによって発生される、異なるアスペクト比および異なるL/W比における圧力をグラフに示す。図4のグラフでは、4つの移動壁20A〜20Dを有することにより、一定のL/W比においては、任意のアスペクト比で2つの移動壁しか持たないポンプに比べて50%も大きい圧力を促進することを示す。効率を考慮に入れると、4つの移動壁20A〜20Dを有するポンプ10は、3〜4のL/W比を有し、アスペクト比は2つの移動壁機構を有するポンプの2倍となる。これらの関係により、比較では、約35トンの重量を有する2つの移動壁は、たった約20トンの重量しか持たない同等の能力を有する4つの移動壁に置き換えることができるという利点が得られる(図5)。
【0014】
図6を参照すると、一実施例(限定せず)の移動壁20A〜20Dは、それぞれ独立して駆動される。換言すれば、4つの移動壁20A〜20Dの各々は、それぞれ対応する駆動機構26A〜26Dによって駆動される本質的に同等の機構である。
【0015】
図7を参照すると、これに限定されない別の実施例の移動壁20A〜20Dが三次元的配列を含み、4つの移動壁20A〜20Dが、概ねU字形状の断面を有する2つの移動壁20a,20bによって画定される。2つのU字形状の移動壁の各々は、概ね直線的な通路を形成する。ベアリングや駆動スプロケット等なしに概略的に図示するが、移動壁20a,20bの間で噛み合う連結部20iが通路14を形成する。
【0016】
図8を参照すると、これに限定されない別の実施例の移動壁20A〜20Dが、それぞれアイドラ移動壁20C´,20D´を駆動する2つの駆動式移動壁20A´,20B´を含む。換言すれば、アイドラ移動壁20C´,20D´は、ギア機構30A,30Bもしくはその他の伝動装置を通して駆動式移動壁20A´,20B´により駆動される。
【0017】
特許文献1に記載のように2つの駆動式移動壁20A´,20B´間の角度θが0よりも大きい場合、図8の実施例に比べ、図7の実施例のほうが相対的に複雑でない境界面を提供できるため好ましい。当然のことながら、種々の駆動機構が移動壁20A〜20Dに代替的にもしくは追加的に設けられうる。
【0018】
例えば、図7の実施例と、図8の実施例とを交互に繰り返す、その他の機構を代替的に設けてもよいことを理解されたい。
【0019】
さらにこうした機構は、静止した角部などの小さい領域についても考察するが、通路14における全ての側面は本質的に「移動壁」であることを理解されたい。
【0020】
「前」、「後」、「上側」、「下側」、「上」、「下」等の、相対的な位置に関する語句は、乗物(vehicle)の通常の動作姿勢を基準としたものであり、限定的に捉えるべきでないことを理解されたい。
【0021】
図面を通した同様の参照符号は、対応するもしくは同様の構成要素を特定するものであることを理解されたい。また、図示の実施例に特定の構成要素の配置が開示されるが、その他の配置もまた本発明から利益が得られることを理解されたい。
【0022】
特定のステップの順序を示し、記載し、特許請求の範囲に記載するが、特に示されない限り、これらのステップは任意の順序で行われ、分離され、もしくは組み合わせられ、さらに本発明の開示から利益が得られることを理解されたい。
【0023】
上記の記述は限定的なものではなく例示に過ぎない。限定されない種々の実施例を開示したが、上記の教示に照らして種々の変形や修正が付記の特許請求の範囲に含まれることが当業者にとって理解されるであろう。従って、付記の特許請求の範囲内において、本発明が明確に記載されたもの以外になされうることを理解されたい。そのため、本発明の真の範囲および意義を画定するために付記の特許請求の範囲を検討すべきである。
【符号の説明】
【0024】
10…乾燥石炭押し出しポンプ
12…入口
14…通路
16…出口
20A,20B…移動壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物質移送用ポンプであって、
その入口と、出口との間における全ての側面に、移動壁によって少なくとも部分的に画定された通路を備え、これにより前記通路の全周部分が可動であることを特徴とする粒状物質移送用ポンプ。
【請求項2】
前記通路は、断面が多角形であることを特徴とする請求項1に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項3】
前記通路は、断面が円形であることを特徴とする請求項1に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項4】
前記通路は、4つの移動壁によって画定されることを特徴とする請求項1に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項5】
前記通路は、2つのU字形状の移動壁によって画定されることを特徴とする請求項1に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項6】
前記2つのU字形状の移動壁の各々が、少なくとも部分的に相互に作用することを特徴とする請求項5に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項7】
前記2つのU字形状の移動壁の各々が噛み合うことを特徴とする請求項5に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項8】
前記2つのU字形状の移動壁の各々が、直線的な通路を形成することを特徴とする請求項5に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項9】
前記通路が、2つの駆動式移動壁と、該2つの駆動式移動壁によって駆動される2つのアイドラ移動壁と、によって画定されることを特徴とする請求項1に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項10】
前記通路が、4つの同一の移動壁によって画定されることを特徴とする請求項1に記載の粒状物質移送用ポンプ。
【請求項11】
前記通路が、3よりも大きい長さ/幅比を画定することを特徴とする請求項1に記載の粒状物質移送用ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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