説明

粒状物選別機

【課題】原料の粒状物と類似した色彩を示す原料以外の粒状物を高精度に判別する粒状物選別機を提供する。
【解決手段】粒状物選別機は、粒状物の選別処理を制御する制御装置20を備えている。制御装置20においては、CCDカメラ16により撮影された粒状物の画像から、前処理部22により粒状物の画素領域を特定し、制御部26により、特定された画素領域を構成する画素が示す色を、色相及び彩度をパラメータとして示した判別情報に変換する。次に、制御部26において、参照テーブル28に記憶されている所定の粒状物固有の色を、色相及び彩度をパラメータとして示した粒状物色情報と判別情報とを用いて、粒状物が所定の粒状物か否かを判別し、所定の粒状物以外の粒状物を噴風装置18により除外し選別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原料となる粒状物に混入した異種植物種子の粒状物を判別し選別する粒状物選別機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、収穫地から輸送される原料の粒状物、例えば、原料小麦には、収穫時や搬送時に混入した夾雑物が含まれている。この夾雑物は、草、石、異種植物の種子や茎などであり、これらの夾雑物は、小麦の加工工程に先立って除去される。この夾雑物の除去方法としては、大きさの差により選別する方法、比重の差により選別する方法、形状の差により選別する方法、色の差により選別する方法などがあり、夾雑物の種類に応じて適した方法が用いられる。各種の方法に対応する選別機としては、例えば、篩い分け機、比重選別機、転選機などの形状選別機、色彩選別機などが存在する。
【0003】
ここで、夾雑物のうち、異種植物の種子には、大きさや比重が小麦に類似しているものがあり、篩い分け機や比重選別機のみでは十分な選別を行うことが困難な場合がある。また、搬送時などに小麦や異種植物の種子が破砕することがあり、この場合には、形状の差により異種植物の種子を選別することも困難になる。特に、双子葉植物種子、例えば、ラッカセイ、ナタマメ、フジマメ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ハッショウマメ、ソラマメ、リョクトウ、ササゲ、ヒヨコマメ、レンズマメ、キントキマメ、ウズラマメ、トラマメ、ムラサキハナマメ、ダイズ、コーヒーマメ等は、2つ又はそれ以上に割れ易く、本来の大きさは、大きさの差により小麦と分離可能な程度に小麦より大きな粒であっても、2つ以上に割れた結果、大きさが小麦と近くなり、大きさの差により小麦と分離することが困難になる場合がある。そのため、小麦と異種植物種子とを高い精度で選別するためには、色の差により粒状物の選別を行う色彩選別機が有効である。
【0004】
色彩選別機としては、特許文献1に、原料の粒状物を良品、原料の粒状物に混入した粒状物を不良品とし、球状のしきい値及び面状しきい値を用いて良品の中から不良品を選別する粒状物色彩選別機が記載されている。
【特許文献1】特開2005−230703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原料の粒状物と原料以外の粒状物とを色彩により選別する場合、原料の粒状物の色彩を示すデータを球状や面状のしきい値として設定するのみでは、十分な精度で選別を行うことが困難な場合がある。例えば、上述の特許文献1記載の粒状物色彩選別機においては、L*a*b表色系又はL*u*v表色系の均等色空間においてほぼ球状に示される原料である粒状物の色彩をしきい値とし、この球状のしきい値に含まれる原料以外の粒状物の色彩を示す部分を面状のしきい値で除外することによって選別を行っている。この場合、原料の粒状物の中から、原料の粒状物と非常に類似した色彩を示す原料以外の粒状物を選別することは困難である。また、原料以外の粒状物が部分的に原料の粒状物と略同一の色彩を示している場合もあり、このような場合にも原料以外の粒状物を選別することは困難である。
【0006】
この発明の課題は、原料の粒状物と類似した色彩を示す原料以外の粒状物を高精度に判別し選別することができる粒状物選別機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の粒状物選別機は、粒状物を移送する移送装置と、前記移送装置により移送される粒状物と対向する位置に配設され、移送される粒状物に光を照射して該粒状物の画像を撮影する撮影装置と、色相及び彩度をパラメータとして所定の粒状物固有の色を示した粒状物色情報を記憶した参照テーブルと、前記撮影装置において撮影された画像を用いて、前記粒状物を構成する画素が示す色を、色相及び彩度をパラメータとする判別情報に変換する変換手段と、前記参照テーブルに記憶されている前記粒状物色情報と、前記変換手段により変換された判別情報とを用い、前記粒状物が前記所定の粒状物か否かを判別する判別手段と、前記判別手段による判別結果を記憶するデータ記憶部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この請求項1記載の粒状物選別機は、色相及び彩度をパラメータとして所定の粒状物の色を示した粒状物色情報を記憶し、移送されている粒状物の色を色相及び彩度をパラメータとして示した判別情報と、記憶されている粒状物色情報とを用いて、移送されている粒状物が所定の粒状物であるか否かを判別し、判別結果を出力している。即ち、粒状物の色の特徴を的確に示す色相及び彩度をパラメータとすることにより、粒状物固有の色を的確に示した粒状物色情報を記憶し、記憶されている粒状物色情報と判別情報とを比較して粒状物の判別を行っている。従って、例えば、所定の粒状物に混入している所定の粒状物以外の粒状物を色の差により高い精度で判別することができる。
【0009】
また、請求項2記載の粒状物選別機は、粒状物を移送する移送装置と、前記移送装置により移送される粒状物と対向する位置に配設され、移送される粒状物に光を照射して該粒状物の画像を撮影する撮影装置と、色相及び彩度をパラメータとして所定の粒状物固有の色を示した粒状物色情報を記憶した参照テーブルと、前記撮影装置において撮影された画像を用いて、前記粒状物を構成する画素が示す色を、色相及び彩度をパラメータとする判別情報に変換する変換手段と、前記参照テーブルに記憶されている前記粒状物色情報と、前記変換手段により変換された判別情報とを用い、前記粒状物が前記所定の粒状物か否かを判別する判別手段と、前記判別手段により前記所定の粒状物でないと判別された粒状物を除外する選別手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この請求項2記載の粒状物選別機は、色相及び彩度をパラメータとして所定の粒状物の色を示した粒状物色情報を記憶し、移送されている粒状物の色を色相及び彩度をパラメータとして示した判別情報と、記憶されている粒状物色情報とを用いて、移送されている粒状物が所定の粒状物であるか否かを判別し、所定の粒状物でないと判別された粒状物を除外し選別している。即ち、粒状物の色の特徴を的確に示す色相及び彩度をパラメータとすることにより、粒状物固有の色を的確に示した粒状物色情報を記憶し、記憶されている粒状物色情報と判別情報とを比較して粒状物の判別を行い、所定の粒状物以外の粒状物を除外している。従って、高い精度で色の差を判別し、高精度な選別を行うことができると共に、粒状物の色を色相及び彩度の2つをパラメータとして示しているため、粒状物の色を判別情報に変換する際の計算量を減らすことができ、迅速な選別処理を行うことができる。
【0011】
また、請求項3記載の粒状物選別機は、前記選別手段が、前記移送装置の終端部から放出される粒状物の落下軌跡から、前記所定の粒状物でないと判別された粒状物を除外することを特徴とする。この請求項3記載の粒状物選別機によれば、粒状物の落下軌跡から所定の粒状物以外の粒状物を除外しているため、粒状物の移送過程において迅速に粒状物の選別処理を行うことができる。
【0012】
また、請求項4記載の粒状物選別機は、前記撮影装置が、移送される前記粒状物に光を照射する照射手段と、前記照射手段により光が照射された粒状物の画像を撮影する撮影素子とを備えることを特徴とする。
【0013】
この請求項4記載の粒状物選別機によれば、粒状物に光を照射して粒状物の画像を撮影しているため、粒状物の色を適切に示した鮮明な画像を撮影することができる。従って、撮影された画像から粒状物の色を適切に示した情報を取得することができ、高い精度で粒状物の判別を行うことができる。
【0014】
また、請求項5記載の粒状物選別機は、前記変換手段が、前記撮影素子により撮影された画像において、前記粒状物の背景部材の色と該粒状物の色との差から個々の粒状物の画素領域を特定し、該画素領域を構成する各画素が示す色を判別情報に変換することを特徴とする。
【0015】
この請求項5記載の粒状物選別機は、粒状物の背景部材の色と粒状物の色との差から個々の粒状物の画素領域を特定し、画素領域を構成する各画素が示す色を判別情報に変換している。即ち、背景部材の色として粒状物の色と全く異なる色を用いることにより、粒状物の画素領域を適切に特定することができる。また、画素領域を構成する画素毎の色を判別情報に変換しているため、粒状物の色を所定の表色系で示した場合と比較して、高い精度で色の差を判別することができる。
【0016】
また、請求項6記載の粒状物選別機は、前記判別手段が、前記粒状物の画素領域を構成する各画素の前記判別情報毎に、前記参照テーブルに記憶されている前記粒状物色情報を用い、前記所定の粒状物の色を示しているか否かの判別を行い、前記粒状物の画素領域を構成する画素数のうち、前記所定の粒状物の色を示していると判別された判別情報の数が所定割合以上である場合に、該粒状物が前記所定の粒状物であると判別することを特徴とする。
【0017】
この請求項6記載の粒状物選別機は、粒状物の画素領域を構成する各画素の判別情報毎に、所定の粒状物の色を示しているか否かを判別し、所定の粒状物の色を示していると判別された判別情報の数が、粒状物の画素領域を構成する画素数のうち、所定の割合以上である場合に、粒状物が所定の粒状物であると判別している。即ち、所定の粒状物固有の色を示す画素数の割合を基準として判別することにより、部分的に所定の粒状物と類似する色を有する粒状物であっても、高い精度で色の差を判別し、高精度に粒状物の選別を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明においては、粒状物の色の特徴を的確に示す色相及び彩度をパラメータとして所定の粒状物の色を示した情報を用いて、移送される粒状物が所定の粒状物であるか否かの判別を行っている。従って、粒状物固有の色を的確に示した粒状物色情報及び判別情報を用いて判別を行うことにより、例えば、原料粒状物である小麦に混入している小麦以外の粒状物を高い精度で判別することができる。
【0019】
また、この発明においては、粒状物の色の特徴を的確に示す色相及び彩度をパラメータとし所定の粒状物の色を示した情報を用いて移送される粒状物の判別を行い、所定の粒状物ではないと判別された粒状物を除外している。従って、原料粒状物、例えば、小麦に混入している小麦以外の粒状物の色が小麦と類似している場合であっても、色の特徴を的確に示す色相及び彩度をパラメータとして小麦の色を示した情報を用いることによって、高い精度で粒状物が小麦か否かを判別し、小麦以外の粒状物を高い精度で的確に除外することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態に係る粒状物選別機について説明する。図1は、実施の形態に係る粒状物選別機2の概略を示す縦断面図である。粒状物選別機2は、原料の粒状物を移送する移送装置である無端ベルトコンベア4を備え、該無端ベルトコンベア4の移送始端側には原料供給部6が配設されている。無端ベルトコンベア4は、64cm/秒の速度で図1において矢印で示す方向に駆動される。原料供給部6は、原料ホッパー8及び振動フィーダ10により構成されている。そして、この原料供給部6から供給された粒状物は、無端ベルトコンベア4上に落下し、図1において矢印で示す方向に移送される。
【0021】
また、無端ベルトコンベア4において粒状物を載せて移送する面(移送面)と対向する位置に、移送される粒状物に照明光を照射して粒状物のカラー画像(以下、単に「画像」とする。)を撮影する撮影装置12が配設されている。撮影装置12は、無端ベルトコンベア4により移送される粒状物に光を照射する照射部14、照射部14により光が照射された粒状物を撮影するCCDカメラ16により構成されている。
【0022】
ここで、CCDカメラ16としては、64cm/秒で駆動される無端ベルトコンベア4により移送される粒状物を所定の画素単位、例えば、無端ベルトコンベア4の進行方向(図1において矢印で示す方向)を縦、進行方向に直交する方向を横とした場合に、縦×横=480×640画素単位で32回/秒の撮影を行うことができるものであれば、どのようなカメラを用いてもよい。なお、無端ベルトコンベア4は64cm/秒で駆動されているため、移送される粒状物を確実に撮影すべく、CCDカメラ16による撮影は、前回撮影された範囲と一部重複するように次の撮影が行われる。即ち、1回目の撮影を行い、2回目の撮影を行う場合には、1回目に撮影された範囲と所定範囲が重複するように2回目の撮影が行われる。同様に、2回目に撮影された範囲と所定範囲が重複するように3回目の撮影が行われ、3回目に撮影された範囲と所定範囲が重複するように4回目の撮影が行われる。このように、順次所定範囲が重複するように粒状物の画像を撮影することにより、移送される粒状物の確実な撮影を行うことができる。
【0023】
なお、撮影装置12が備える照射部14としては、RGB光の各波長を有する白色の蛍光灯を用いる。また、無端ベルトコンベア4の移送面(「背景部材」に相当)の色には、CCDカメラ16により撮影された画像において粒状物を明確に識別することができるように、粒状物の色とは全く異なる色、例えば、黒などが用いられる。
【0024】
無端ベルトコンベア4の移送終端側であって、無端ベルトコンベア4の下部には、所定の粒状物以外の粒状物、例えば、原料粒状物以外の粒状物であると判別された粒状物を、無端ベルトコンベア4の終端から放出される粒状物の落下軌跡Gから除外して選別する選別手段として噴風装置18が配設されている。噴風装置18には、噴風装置18を駆動する噴風装置駆動部30(図2参照)が接続されており、この噴風装置駆動部30により噴風装置18の駆動が制御される。即ち、噴風装置18の落下軌跡Gと対向する位置には、格子状に複数のエアーノズルが設けられており、落下軌跡Gに沿って落下する複数の粒状物の中で、除外すべき粒状物(除外対象粒状物)に対応する位置のノズルからのみ高圧エアーを噴風することによって粒状物を選別する。ここで、この実施の形態では高圧エアーを噴風する噴風装置を用いて粒状物を選別しているが、落下軌跡Gから除外対象粒状物を除外することができるものであれば、その他の装置を用いてもよい。なお、噴風装置18のエアー噴風方向には、噴風によって除外され選別された粒状物を収容する収容部19が配設されている。また、図1においては図示を省略しているが、粒状物選別機2には、粒状物選別機2における処理を制御する制御装置20が設けられている。
【0025】
図2は、この発明の実施の形態に係る制御装置20の概略を示すブロック構成図である。制御装置20は、CCDカメラ16と接続された前処理部22、前処理部22を介して制御装置20に入力された粒状物の画像などを記憶するデータ記憶部24、粒状物の画像から各粒状物の画素が示す色を判別情報に変換するなどの処理を行う制御部26及び粒状物色情報を記憶した参照テーブル28を備えている。
【0026】
前処理部22は、CCDカメラ16からの画像データを用いて、各粒状物の画素領域を特定する処理を実行する。なお、前処理部22により特定された各粒状物の画素領域を構成する画素毎の色を示すデータは、データ記憶部24に記憶される。
【0027】
参照テーブル28には、粒状物色情報、即ち、所定の粒状物固有の色を、色相及び彩度をパラメータとして示した情報が記憶されている。例えば、原料粒状物である小麦固有の色を、色相及び彩度をパラメータとして示した小麦色情報が記憶されている。また、原料の粒状物に混入している原料粒状物以外の粒状物(除外対象粒状物)が明らかになっている場合には、除外対象粒状物の固有の色を、色相及び彩度をパラメータとして示した除外対象粒状物の粒状物色情報が記憶されていてもよい。また、原料の粒状物に複数の除外対象粒状物が混入している場合には、混入している除外対象粒状物のそれぞれに対応する粒状物色情報が参照テーブル28に記憶されていてもよい。
【0028】
ここで、原料粒状物を小麦、除外対象粒状物をマイロ(赤マイロ及び白マイロ)とした場合を例として粒状物色情報について説明する。なお、色は色相、彩度及び明度という三属性により表現できることが知られており、色相は赤、青、緑といった色味の違いを表し、彩度は色の鮮やかさを表し、明度は色の明るさを表している。この発明の実施の形態に係る粒状物選別機においては、色相及び彩度をパラメータとして用いているが、色相、彩度及び明度をパラメータとして用いるようにしてもよい。
【0029】
図3は、原料粒状物の粒状物色情報、即ち、小麦の色を色相及び彩度をパラメータとして示した情報(小麦色情報)の一例を示す図である。小麦色情報は、図3に示すように、色相を横軸、彩度を縦軸とし、色相を0〜80までの間で、彩度を0〜252までの間でそれぞれ4刻みの目盛とし小麦の画像を構成する各画素の色を示した表において、指定された領域(斜線で示す領域)により示される情報である。
【0030】
ここで、図3に示す小麦色情報は、実施の形態に係る粒状物選別機において予め小麦のみを移送してCCDカメラ16によって小麦を撮影し、撮影された画像を用いて作成され参照テーブル28に記憶されている。即ち、粒状物の選別を行う前に、試験的に小麦のみを移送して照射部14により光が照射された小麦の画像をCCDカメラ16によって撮影し、撮影された小麦の画像において小麦の画素領域を特定する。そして、特定された画素領域を構成する画素の各々が示す色を色相及び彩度をパラメータとした情報に変換する。具体的には、小麦の画素領域を構成する画素の各々が有しているRGB情報により示される色を、色相及び彩度をパラメータとして示した情報に変換する。次に、同一の色相及び彩度を示す画素数を集計し、図3に示す表形式の集計結果を作成する。ここで、図3の集計結果により示される数字は、小麦の画像を構成する画素の中で、所定の色相及び彩度をパラメータとした色を示す画素数を示すものである。即ち、図3において、例えば、色相と彩度が(28、40)を示す画素数は「8」、色相と彩度が(28、72)を示す画素数が「94」であることを示している。そして、表形式の集計結果において、例えば、粒状物選別機2における選別処理を管理する管理者などが小麦固有の色を示す範囲を、例えば、図3において斜線で示す領域のように指定し、指定された領域により示される情報を小麦色情報として参照テーブル28に記憶させる。なお、小麦色情報となる領域の指定は、制御部26により自動的に行われるようにしてもよい。即ち、例えば、集計された画素数が予め設定された閾値以上か未満かにより制御部26により、小麦色情報となる領域の指定が行われるようにしてもよい。
【0031】
なお、複数の小麦を撮影し、それぞれの小麦について小麦色情報を作成した後、作成された小麦色情報の平均値、即ち、同一の色相及び彩度を示す画素数の平均値を算出して1つの小麦色情報を作成し、参照テーブル28に記憶させるようにしてもよい。また、図3に示す表において、小麦色情報を示す領域は、任意の形状に指定することができ、例えば、連続した領域に限られず、小麦固有の色を表す複数の領域を指定し、指定された全ての領域を小麦色情報としてもよい。更に、例えば、色相及び彩度の値に対応させて、小麦固有の色を示している場合には「○」、小麦固有の色を示していない場合には「×」として、図4に示すような形式で小麦色情報を参照テーブル28に記憶させるようにしてもよい。即ち、色相及び彩度(0、0)〜(80、252)までの全てについて、「○」又は「×」を対応させた表形式として小麦色情報を記憶させるようにしてもよい。
【0032】
図5は、除外対象粒状物の粒状物色情報、即ち、赤マイロ固有の色を、色相及び彩度をパラメータとして示した赤マイロ色情報の一例を示す図である。赤マイロ色情報は、上述の小麦色情報と同様に、図5の表において斜線で示す領域により示される情報である。即ち、図3に示す場合と同様に、図5において斜線で示す領域内の数字は、赤マイロ固有の色を示す画素数を示している。具体的には、図5において、例えば、色相と彩度が(24、116)を示す画素数は「64」であり、色相と彩度が(20、128)を示す画素数は「43」であることを示している。なお、図5に示す赤マイロ色情報も、図3に示す小麦色情報と同様に、実施の形態に係る粒状物選別機において予め赤マイロのみを移送してCCDカメラ16によって赤マイロを撮影し、撮影された画像を用いて作成され参照テーブ28に記憶される。また、赤マイロ色情報についても、図4に示すような形式で参照テーブル28に記憶させるようにしてもよい。
【0033】
また、図6は、他の除外対象粒状物の粒状物色情報、即ち、白マイロ固有の色を色相及び彩度をパラメータとして示した白マイロ色情報を示す図である。白マイロ色情報は、上述の小麦色情報や赤マイロ色情報と同様に、図6の表において斜線で示す領域により示される情報である。即ち、図3及び図5に示す場合と同様に、図6において斜線で示す領域内の数字は、白マイロ固有の色を示す画素数を示している。具体的には、図6において、例えば、色相と彩度が(36、92)を示す画素数は「28」であり、色相と彩度が(36、52)を示す画素数は「34」であることを示している。なお、図6に示す白マイロ色情報も、図3に示す小麦色情報や図5に示す赤マイロ色情報と同様に、実施の形態に係る粒状物選別機において予め白マイロのみを移送してCCDカメラ16によって白マイロを撮影し、撮影された画像を用いて作成され参照テーブ28に記憶される。また、白マイロ色情報についても、図4に示すような形式で参照テーブル28に記憶させるようにしてもよい。
【0034】
なお、参照テーブル28には、例えば、原料粒状物に混入している異種植物の種子が不明の場合には、原料粒状物固有の色を示す粒状物色情報のみが記憶される。また、例えば、原料粒状物に混入している特定の異種植物の種子を判別する必要が有る場合には、当該異種植物の種子固有の色を示す粒状物色情報が記憶される。
【0035】
また、図2に示す制御装置20には、噴風装置18の駆動を制御する噴風装置駆動部30が接続されている。噴風装置駆動部30は、噴風装置18の所定のエアーノズルからのみ高圧エアーを噴風すべく噴風装置18を駆動させると共に、所定の遅延部(図示省略)を備えている。即ち、制御部26は、CCDカメラ16により撮影された画像を用いて原料粒状物以外の粒状物であると判別された粒状物の位置を画像上で特定し、特定した位置を示す情報を含む制御信号を噴風装置駆動部30に対して送信している。従って、噴風装置駆動部30は、CCDカメラ16において撮影された時点から、落下軌跡Gにおいて噴風装置18のエアーノズルと対向する位置に粒状物が到達するまでの時間を遅延部により調整し、所定のエアーノズルからのみ高圧エアーを噴風すべく噴風装置18の駆動を制御している。
【0036】
次に、この発明の実施の形態に係る粒状物選別機における粒状物の選別処理について説明する。なお、以下においては、原料粒状物を小麦とし、参照テーブル28に記憶されている小麦色情報を用いて、小麦以外の粒状物を選別する場合を例として説明する。
【0037】
図1に示す粒状物選別機2においては、原料供給部6の振動フィーダ10から繰り出された原料粒状物(異種植物の種子が混入した小麦)は、無端ベルトコンベア4によって移送される。この時、無端ベルトコンベア4の移送面上に載置され移送されている原料粒状物に対して、照射部14により光が照射され、所定の画素単位で原料粒状物の画像がCCDカメラ16によって撮影される。そして、CCDカメラ16において撮影された粒状物の画像が、CCDカメラ16から前処理部22に入力される。なお、無端ベルトコンベア4上には複数の原料粒状物が載置されているため、CCDカメラ16において撮影される画像には、複数の原料粒状物の画像が含まれている。
【0038】
前処理部22では、まず、CCDカメラ16により撮影された粒状物の画像における、各粒状物の画素領域を特定する。具体的には、CCDカメラ16により撮影された粒状物の画像から粒状物の背景部材の色、即ち、粒状物を移送している無端ベルトコンベア4の移送面の色、例えば、黒を示す領域を除外し、黒以外の色を示す領域を各々の粒状物の画素領域として特定する。なお、前処理部22において特定された各粒状物の画素領域を構成する画素毎の色を示すデータは、データ記憶部24に記憶される。
【0039】
次に、データ記憶部24に記憶された各粒状物の画素領域を構成する画素毎の色を示すデータを用い、画素領域を構成する画素の各々が示す色を色相及び彩度をパラメータとして示した判別情報に変換する。即ち、制御部26においては、粒状物の画素領域を構成する画素の色を示すRGB情報をデータ記憶部24から取り出す。次に、取り出したRGB情報を用い、画素が示す色を色相及び彩度をパラメータとする情報に変換することによって、画素が示す色を判別情報に変換する。同様にして、粒状物の画素領域を構成する全ての画素について、画素が示す色を判別情報に変換する。ここで、RGB情報により示される色を、色相及び彩度をパラーメタとする判別情報に変換する処理は、公知の方法を用いて実行される。なお、ここでは前処理部22及び制御部26により変換手段が構成されている。
【0040】
次に、制御部26は、参照テーブル28に記憶されている小麦色情報を参照し、判別情報が小麦固有の色を示しているか否かの判別を行う。例えば、図3に示すように、判別情報の色相及び彩度が(28、40)であれば、この判別情報は小麦の色を示していると判別され、判別情報の色相及び彩度が(28、116)であれば、この判別情報は小麦の色を示していないと判別される。同様にして、1粒の粒状物の画素領域を構成する全ての判別情報について、小麦色情報を参照してそれら各々が小麦の色を示しているか否かの判別を行なう。
【0041】
次に、1粒の粒状物について、小麦の色を示すと判別された判別情報の数、即ち、小麦の色を示すと判別された画素数を集計し、集計された画素数が該粒状物の画素領域に占める割合を算出する。そして、小麦の色を示すと判別された判別情報の割合が所定以上、例えば、80%以上等となっている場合には、該粒状物は小麦であると判別される。一方、判別情報の割合が所定未満、例えば、80%未満等となっている場合には、該粒状物は小麦以外の粒状物、即ち、小麦に混入している異種植物の種子であると判別される。なお、制御部26において、粒状物が原料粒状物であるか否かを判定する際における、粒状物の画素領域における判別情報の割合は任意に設定することができる。
【0042】
次に、小麦でないと判別された除外対象粒状物は、噴風装置18により無端ベルトコンベア4の移送終端側から落下軌跡Gに沿って落下する際に、落下軌跡Gから除外され選別される。即ち、制御部26において、CCDカメラ16により撮影された画像を用いて、該画像における除外対象粒状物の位置が特定され、除外対象粒状物の位置を示す情報を含む制御信号が噴風装置駆動部30に送信される。噴風装置駆動部30は、制御部26からの制御信号に応じて、噴風装置18が備えるエアーノズルの中で高圧エアーを噴風するエアーノズルを決定する。そして、図示しない遅延部によりタイミングを調整し、CCDカメラ16により撮影された粒状物が落下軌跡G上に到達した時点で噴風装置18を駆動させ、所定のエアーノズルから高圧エアーを噴風することにより、除外対象粒状物を落下軌跡Gから除外し、除外された除外対象粒状物が収容部19に収容される。
【0043】
この実施の形態に係る粒状物選別機によれば、粒状物の色の特徴を的確に示す色相及び彩度をパラメータとして、粒状物固有の色を的確に示した粒状物色情報を参照テーブルに記憶しているため、高い精度で粒状物の選別を行うことができる。即ち、原料粒状物を小麦とした場合、小麦の色を、色相及び彩度をパラメータとして示し(図3参照)、小麦固有の色を示す領域(色相及び彩度の範囲)を指定し、指定された範囲を小麦固有の色を的確に示した小麦色情報(粒状物色情報)として参照テーブルに記憶し、記憶されている小麦色情報を参照して、粒状物の選別を行っているため、例えば、小麦と小麦に混入している粒状物との色が類似している場合であっても、小麦と小麦以外の粒状物とを高い精度で選別することができる。
【0044】
また、上述の実施の形態に係る粒状物選別機においては、撮影された粒状物の色を色相及び彩度をパラメータとする判別情報に変換し、記憶されている粒状物色情報を参照して粒状物の選別を行っている。即ち、粒状物の色を2つのパラメータを用いて示される判別情報に変換しているため、空間領域において色を示す場合と比べて、用いるパラメータの数が少なく、粒状物の色を判別情報に変換する際の計算量を減らすことができ、迅速な選別処理を行うことができる。また、迅速な選別処理を行うことが可能なため、粒状物選別機における選別処理の処理能力を向上させることができる。
【0045】
なお、上述の実施の形態においては、粒状物色情報として小麦色情報が記憶されている場合を例としているが、除外対象粒状物の粒状物色情報を記憶するようにしてもよい。例えば、小麦に赤マイロが混入していることが明らかであり、赤マイロを選別する必要が有る場合には、除外対象となっている赤マイロの色を示す赤マイロ色情報を参照テーブルに記憶させる。そして、赤マイロ色情報を参照して粒状物の色を示す判別情報が赤マイロの色を示しているか否かを判別し、粒状物が赤マイロであると判別された場合にのみ選別を行い、確実に赤マイロのみを除外することができるようにしてもよい。また、赤マイロを選別することなく、例えば、赤マイロと判別された粒状物の数をデータ記憶部に記憶し、データ記憶部に記憶された判別結果を図示しない出力部等を介して出力することにより、小麦に混入している赤マイロの割合を高い精度で示すことができるようにしてもよい。
【0046】
また、除外対象粒状物の粒状物色情報として、複数の粒状物色情報を記憶するようにしてもよい。即ち、小麦に赤マイロ及び白マイロが混入していることが明らかであり、赤マイロ及び白マイロを判別又は選別する必要が有る場合には、除外対象粒状物の粒状物色情報として赤マイロ色情報及び白マイロ色情報を参照テーブルに記憶させる。そして、赤マイロ色情報、白マイロ色情報を参照して、判別情報が赤マイロの色を示すか、白マイロの色を示すかの判別を行い、粒状物が赤マイロか白マイロかを判別し、判別結果を記憶、又は、赤マイロまたは白マイロと判別された場合にのみ選別するようにしてもよい。この場合には、例えば、小麦に混入している複数の粒状物の中から、特定の粒状物の混入状況を適切に調べることができる。また、例えば、小麦に混入している複数の粒状物の中から、除外する必要が有る粒状物を高い精度で除外することができる。
【0047】
また、原料粒状物の粒状物色情報と除外対象粒状物の粒状物色情報とをそれぞれ参照テーブルにおいて記憶させるようにしてもよい。例えば、参照テーブルにおいて、原料粒状物の粒状物色情報として小麦色情報を記憶させ、除外対象粒状物の粒状物色情報として赤マイロ色情報及び白マイロ色情報を記憶させるようにしてもよい。そして、粒状物の判別情報が、小麦の色、赤マイロの色、白マイロの色の何れの色を示すかを判別し、粒状物が小麦か否かを判別するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態に係る粒状物選別機の縦断面図である。
【図2】実施の形態に係る粒状物選別機の制御装置のブロック構成図である。
【図3】実施の形態に係る所定の粒状物の粒状物色情報の一例を示す図である。
【図4】実施の形態に係る所定の粒状物の粒状物色情報の他の例を示す図である。
【図5】実施の形態に係る除外対象粒状物の粒状物色情報の一例を示す図である。
【図6】実施の形態に係る除外対象粒状物の粒状物色情報の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
2・・・粒状物選別機、4・・・無端ベルトコンベア、12・・・撮影部、16・・・CCDカメラ、18・・・噴風装置、20・・・制御装置、22・・・前処理部、26・・・制御部、28・・・参照テーブル、30・・・噴風装置駆動部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物を移送する移送装置と、
前記移送装置により移送される粒状物と対向する位置に配設され、移送される粒状物に光を照射して該粒状物の画像を撮影する撮影装置と、
色相及び彩度をパラメータとして所定の粒状物固有の色を示した粒状物色情報を記憶した参照テーブルと、
前記撮影装置において撮影された画像を用いて、前記粒状物を構成する画素が示す色を、色相及び彩度をパラメータとする判別情報に変換する変換手段と、
前記参照テーブルに記憶されている前記粒状物色情報と、前記変換手段により変換され
た判別情報とを用い、前記粒状物が前記所定の粒状物か否かを判別する判別手段と、
前記判別手段による判別結果を出力する出力部と
を備えることを特徴とする粒状物選別機。
【請求項2】
粒状物を移送する移送装置と、
前記移送装置により移送される粒状物と対向する位置に配設され、移送される粒状物に光を照射して該粒状物の画像を撮影する撮影装置と、
色相及び彩度をパラメータとして所定の粒状物固有の色を示した粒状物色情報を記憶した参照テーブルと、
前記撮影装置において撮影された画像を用いて、前記粒状物を構成する画素が示す色を、色相及び彩度をパラメータとする判別情報に変換する変換手段と、
前記参照テーブルに記憶されている前記粒状物色情報と、前記変換手段により変換された判別情報とを用い、前記粒状物が前記所定の粒状物か否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記所定の粒状物でないと判別された粒状物を除外する選別手段と
を備えることを特徴とする粒状物選別機。
【請求項3】
前記選別手段は、
前記移送装置の終端部から放出される粒状物の落下軌跡から、前記所定の粒状物でないと判別された粒状物を除外することを特徴とする請求項2記載の粒状物選別機。
【請求項4】
前記撮影装置は、
移送される前記粒状物に光を照射する照射手段と、
前記照射手段により光が照射された粒状物の画像を撮影する撮影素子と
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の粒状物選別機。
【請求項5】
前記変換手段は、
前記撮影素子により撮影された画像において、前記粒状物の背景部材の色と該粒状物の色との差から個々の粒状物の画素領域を特定し、該画素領域を構成する各画素が示す色を判別情報に変換することを特徴とする請求項4記載の粒状物選別機。
【請求項6】
前記判別手段は、
前記粒状物の画素領域を構成する各画素の前記判別情報毎に、前記参照テーブルに記憶されている前記粒状物色情報を用い、前記所定の粒状物の色を示しているか否かの判別を行い、
前記粒状物の画素領域を構成する画素数のうち、前記所定の粒状物の色を示していると判別された判別情報の数が所定割合以上である場合に、該粒状物が前記所定の粒状物であると判別することを特徴とする請求項5記載の粒状物選別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−313467(P2007−313467A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147624(P2006−147624)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】