説明

粒状硫加の製造法

【課題】硫加造粒時の製品収率40%以上で、かつ粒硬度1Kgf以上の粒状硫加の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、リン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸を結合剤として使用することを特徴とする硫加を40質量%(K2Oとして)以上含有する粒状硫加の製造法に関する。このように硫加造粒時の結合剤として、リン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸を用いて造粒することにより製品収率40%以上で、かつ粒硬度1Kgf以上の硫加を40質量%(K2Oとして)以上含有する粒状硫加を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状硫加の製造法に関し、殊にリン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸を結合剤とする粒状硫加の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省力化を目的とした肥料、即ち1回の施肥で作物の成長段階に対応して栄養素を補給することができる被覆肥料の需要が急増している。
現在、使用されている被覆肥料の大半は、被覆尿素肥料である。この被覆尿素肥料が急速に普及した理由は、窒素成分を含む肥料、塩安、硫安、硝安、尿素等は、溶解度が大きいため流亡が激しい。そのため、作物の成長段階に対応して適宜、窒素肥料を補給する必要があるが、被覆尿素肥料にあっては、元肥として1回の施肥で良いこと、とりわけ水稲にあっては、その省力効果が大きいこと等である。
【0003】
一方、被覆尿素肥料の普及を製造面からみると、被覆肥料に使用する原料は、適度の硬度を有し、且つ可及的球状に近い粒状であることが必須である。被覆尿素肥料原料の粒状尿素は、この条件を満たしている。
このような被覆尿素肥料は、これ単独で使用されるか、他の粒状肥料と配合(バルクブレンド)して使用される。この被覆尿素肥料に配合される粒状肥料は、リン酸成分のみ含む粒状のリン酸アンモニウムやカリ成分とリン酸成分とを含有する二成分肥料、窒素成分の低い三成分肥料、或いは粒状有機質肥料等である。
【0004】
しかしながら、このような粒状肥料を被覆尿素肥料と配合する場合、農家の要求する、また各作物に対応した厳密に三成分を調整した配合肥料を製造することが困難であることから、カリ成分のみを含有する粒状肥料が強く要求されている。
現在市販されている硫加の形状は、破砕不定形状で配合肥料として使用することはできない。このような破砕不定形状の硫加を配合肥料として用いると側条施肥機、動力散布機等の施肥機を使用した場合、流動性が悪化し、不均一施肥となるばかりでなく、最終的に目詰まりを起こし施肥不能となる。
【0005】
ところで、肥料を造粒する方法としては、パン造粒機などを使用する転動造粒法、ブランジャー(2軸パドル式混合機)等を使用するスラリー式造粒法、押出成型機、ブリケット機等を使用する成型造粒法等がある。これらは主に肥料原料により使い分けされる。しかし、いずれの造粒方法においても原料に適当な粘着性を付与することが必要である。
一般にリン酸質肥料、例えば過リン酸石灰、リン安、リン酸カリ等を原料として使用するときは、少量の水分の存在で、上記造粒法により、ある程度硬度のある粒状肥料を製造することができるが、硫加の場合、少量の水分のみで粒状肥料を製造することはできない。
【0006】
肥料の造粒には結合剤として、廃糖蜜、コーンスティープリカー、ベントナイト、CMC、大麦を糊状にしたもの等が使用され、石膏とフッ化カルシウムを結合剤として使用する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらの結合剤を使用しても本発明の目的とする高い硬度を有し、且つ高い製品収率で単肥配合原料として要求される硫加を40質量%(K2Oとして)以上含有する粒状硫加肥料の造粒は困難であった。
【0007】
【特許文献1】特許第3383224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる現状に鑑み、本発明者らは、配合肥料原料として混合機に耐える高い硬度(1Kgf以上)を有し、且つ製品収率即ち、製品粒径2.0〜4.0mmの製品歩留まりが40%以上であり、硫加を40質量%(K2Oとして)以上含有する粒状硫加の製造法について鋭意検討を重ねた。
その結果、硫加の造粒に於いてリン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸を結合剤として使用することにより、本発明の目的とする粒状硫加肥料が製造可能なることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、リン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸を結合剤として使用することを特徴とする硫加を40質量%(K2Oとして)以上含有する粒状硫加肥料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、硫加造粒の結合剤として、リン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸を使用することにより、製品収率40%以上で、かつ硬度1Kgf以上の粒状硫加、即ち40質量%のKOを含有する粒状硫加肥料が得られることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の粒状肥料の製造方法について更に詳細に説明する。
本発明の硫加原料としては、一般に市販されている硫加であれば使用することができるが、造粒効率の点から望ましくはKSO95%以上の硫加が好ましい。
また、本発明のリン酸アンモニウム原料としては、通常の肥料原料として使用されるリン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム等を用いることができる。
更に酸化マグネシウム原料としては、マグネサイト、水酸化マグネシウム等を600〜800℃で焼成した軽焼マグネシア等を使用することができる。
【0012】
ところで、本発明において、リン酸アンモニウムに換えて過リン酸石灰や重過リン酸石灰等のリン酸源では本発明の効果は期待できず、殊に粒硬度が弱く、使用に耐えないものである。また、本発明において、酸化マグネシウムを用いることなく、リン酸アンモニウム単独使用では、製造時の歩留まりが上がらず、歩留まりを上げようとしてリン酸アンモニウム使用量を増加させると粒硬度が低下し、粒硬度1Kgf以上で、且つ高い製品収率で粒状硫加を工業的に生産することはできない。
【0013】
さて、上記原料は、必要に応じて単独で粉砕した後、混合しても良いが、混合した後粉砕して用いても良い。硫加は通常原料として入手できるサイズは概ね500μm未満であり、そのまま使用することができるが、必要に応じて粉砕して使用すればよい。粉砕方法については、通常肥料原料の粉砕に用いられている奈良式粉砕機、ターボミル、JET粉砕機等を例示することができる。これら原料の粒径に関しては、20〜500μmがよい。
【0014】
本発明の粒状肥料の製造においては、硫加、リン酸アンモニウム及び酸化マグネシウムを後述する量比で均一に混合した後、これに硫酸を添加して造粒する。
本発明に用いる硫酸としては、通常肥料製造に用いられている濃硫酸をはじめ、70質量%硫酸等を用いることができ、使用時適宜水で希釈して用いればよく、その濃度に関しては概ね10〜30質量%で使用すればよい。
【0015】
本発明の粒状肥料の造粒方法に関しては、パン造粒機、ドラム造粒機などを使用する転動造粒法、ブランジャー(2軸パドル式混合機)等を使用するスラリー式造粒法、ブリケット機等を使用する成型造粒法、押出機を使用する押出造粒法等を用いることができるが、転動造粒法によれば、球状に近いものが得られるので特に好ましい。特に被覆肥料原料にあっては真球に近い程好ましい。また、配合肥料の一原料あるいは単肥として使用する場合にあっても配合の容易性、品質均一性の点から、更にまた機械施肥における散布機内での流動性、散布均一性の点から球状に近いことが好ましい。
【0016】
次いで、得られた粒状肥料の乾燥に関しては、通常転動熱風乾燥機等の乾燥機を用いて連続的に乾燥される。その温度に関しては、90〜120℃で乾燥すればよい。乾燥した粒状肥料は、振動スクリーンに通して所望するサイズの製品(本発明の硫加の場合は粒径2.0〜4.0mm)を取り出し、粒径2.0mm以下の細粒品はそのまま、4.0mm以上の粗粒品は粉砕し戻り紛として供給原料に添加・混合し再使用する。
【0017】
次に結合剤の使用割合について詳しく説明する。
結合剤であるリン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸の使用割合について云えば、使用する硫加をはじめリン酸アンモニウム、酸化マグネシウムの種類、粉砕度、造粒方法等により異なるが、結合剤の使用割合が硫加に対してリン酸アンモニウム0.5〜12質量%(Pとして)、酸化マグネシウム0.5〜15質量%(MgOとして)、硫酸2〜14質量%(SOとして)の範囲が好ましい。この範囲を逸脱すると結合剤としての効果が小さくなる。
【0018】
本発明の硫加を40質量%(K2Oとして)以上含有する粒状肥料の製造は、リン酸アンモニウム、酸化マグネシウムの混合物を硫加に均一に混合して硫酸を添加しながら造粒することで、その効果を最もよく発揮するが、必要に応じて更に蛇紋岩粉末、ベントナイト、廃糖蜜、コーンスティープリカー、CMC等の結合剤も使用することができる。
【実施例】
【0019】
以下に実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、特に断らない限り、%は質量%を示す。尚、平均粒硬度については、以下の測定方法で行った。
【0020】
「平均粒硬度測定方法」
製品(粒径2.0〜4.0mm)を105℃の通風静置乾燥機で恒量になるまで乾燥する。次いで製品20粒の硬度を木屋式硬度計にて測定し、その平均値を平均粒硬度とした。
【0021】
[実施例1]
硫加8.53Kgに奈良式粉砕機で300μm以下に粉砕したリン酸二アンモニウム0.82Kg(Pとして0.37Kg)、軽焼マグネシア0.24Kg(MgOとして0.20Kg)を加えニーダで均一混合した後、これをパン造粒機に投入し、70%硫酸と水を混合した28.1%硫酸1.17Kg(SOとして0.32Kg)を噴霧機にて添加しつつ併せて蒸気を噴霧しながら10分間転動造粒を行なった。次いで造粒物を100〜110℃の転動熱風乾燥機にて30分間乾燥した。冷却後、3段振動スクリーン(目篩4.0mm、2.0mmおよび1.5mm:近畿工業製)で篩分けしたところ、製品(粒径2.0〜4.0mm)の製品収率は60.7%であった。この粒状硫加は硫加を45.5%(K2Oとして)含有し、平均粒硬度は2.63Kgfであった。
【0022】
[実施例2]
硫加8.10Kgに奈良式粉砕機で300μm以下に粉砕したリン酸二アンモニウム1.10Kg(Pとして0.50Kg)、軽焼マグネシア0.30Kg(MgOとして0.26Kg)を加えニーダで均一混合した後、これをパン造粒機に投入し、70%硫酸と水を混合した29.4%硫酸1.38Kg(SOとして0.40Kg)を噴霧機にて添加しつつ併せて蒸気を噴霧しながら9分間転動造粒を行なった。次いで造粒物を100〜110℃の転動熱風乾燥機にて30分間乾燥した。冷却後、3段振動スクリーン(目篩4.0mm、2.0mmおよび1.5mm)で篩分けしたところ、製品(粒径2.0〜4.0mm)の製品収率は51.1%であった。この粒状硫加は硫加を43.3%(K2Oとして)含有し、平均粒硬度は1.54Kgfであった。
【0023】
[実施例3]
硫加7.55Kgに奈良式粉砕機で300μm以下に粉砕したリン酸二アンモニウム0.73Kg(Pとして0.33Kg)、軽焼マグネシア0.78Kg(MgOとして0.66Kg)を加えニーダで均一混合した後、これをパン造粒機に投入し、70%硫酸と水を混合した38.7%硫酸1.9Kg(SOとして0.72Kg)を噴霧機にて添加しつつ併せて蒸気を噴霧しながら8.5分間転動造粒を行なった。次いで造粒物を100〜110℃の転動熱風乾燥機にて30分間乾燥した。冷却後、3段振動スクリーン(目篩4.0mm、2.0mmおよび1.5mm)で篩分けしたところ、製品(粒径2.0〜4.0mm)の製品収率は44.8%であった。この粒状硫加は硫加を41.0%(K2Oとして)含有し、平均粒硬度は2.43Kgfであった。
【0024】
[比較例1]
硫加9.00kgに奈良式粉砕機で300μm以下に粉砕したリン酸二アンモニウム0.86kg(Pとして0.39Kg)を加えニーダで均一混合した後、これをパン造粒機に投入し、70%硫酸と水を混合した18.5%硫酸0.68Kg(SOとして0.12Kg)を噴霧機にて添加しつつ併せて蒸気を噴霧しながら8.5分間転動造粒を行なった。次いで造粒物を100〜110℃の転動熱風乾燥機にて30分間乾燥した。冷却後、3段振動スクリーン(目篩4.0mm、2.0mmおよび1.5mm)で篩分けしたところ、製品(粒径2.0〜4.0mm)の製品収率は11.7%であった。この粒状硫加は硫加を47.7%(K2Oとして)含有し、平均粒硬度は2.20Kgfであった。
【0025】
[比較例2]
硫加8.60Kgに奈良式粉砕機で300μm以下に粉砕したリン酸二アンモニウム1.23Kg(Pとして0.56Kg)を加えニーダで均一混合した後、これをパン造粒機に投入し、70%硫酸と水を混合した26.3%硫酸0.72Kg(SOとして0.19Kg)を噴霧機にて添加しつつ併せて蒸気を噴霧しながら8.5分間転動造粒を行なった。次いで造粒物を100〜110℃の転動熱風乾燥機にて30分間乾燥した。冷却後、3段振動スクリーン(目篩4.0mm、2.0mmおよび1.5mm)で篩分けしたところ、製品(粒径2.0〜4.0mm)の製品収率は37.4%であった。この粒状硫加は硫加を45.5%(K2Oとして)含有し、平均粒硬度は0.90Kgfであった。
【0026】
[比較例3]
硫加7.70Kgに奈良式粉砕機で300μm以下に粉砕した過リン酸石灰1.90Kg(Pとして0.34Kg)、軽焼マグネシア0.24Kg(MgOとして0.20Kg)を加えニーダで均一混合した後、これをパン造粒機に投入し、70%硫酸と水を混合した14.9%硫酸1.27Kg(SOとして0.19Kg)を噴霧機にて添加しつつ併せて蒸気を噴霧しながら13分間転動造粒を行なった。次いで造粒物を100〜110℃の転動熱風乾燥機にて30分間乾燥した。冷却後、3段振動スクリーン(目篩4.0mm、2.0mmおよび1.5mm)で篩分けしたところ、製品(粒径2.0〜4.0mm)の製品収率は21.1%であった。この粒状硫加は硫加を40.8%(K2Oとして)含有し、平均粒硬度は0.29Kgfであった。
以下、表1に実施例、比較例の配合割合並びに物性をまとめて示す。
【0027】
【表1】

注・・・結合剤(質量%)は原料硫加に対する使用割合を示す


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸アンモニウム、酸化マグネシウム及び硫酸を結合剤として使用することを特徴とする硫加を40質量%(K2Oとして)以上含有する粒状硫加の製造法。
【請求項2】
硫加、リン酸アンモニウム及び酸化マグネシウムの混合物に硫酸を添加する請求項1記載の粒状硫加の製造法。
【請求項3】
結合剤の使用割合が、硫加に対してリン酸アンモニウム0.5〜12質量%(Pとして)、酸化マグネシウム0.5〜15質量%(MgOとして)及び硫酸2〜14質量%(SOとして)である請求項1または2記載の粒状硫加の製造法。




【公開番号】特開2007−223817(P2007−223817A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43529(P2006−43529)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000203656)多木化学株式会社 (58)
【Fターム(参考)】