説明

粒状組成物

A)有機相変化物質と、B)水不溶性ポリマーマトリックスであって、B1)ポリマー材料であって、i)少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及びii)ペンダント官能基を有するポリマー材料を提供する少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマーから形成される繰り返しモノマー単位を含有するポリマー材料、及びB2)ポリマー材料の前記ペンダント官能基と反応した架橋化合物から誘導される架橋成分を含む、水不溶性ポリマーマトリックスと、を含む粒状組成物であって、前記有機相変化物質(A)が分離相として前記水不溶性ポリマーマトリックス(B)全体に分散される、前記粒状組成物。本発明は更に、粒状組成物を提供する方法であって、1)溶解したポリマー材料を含有する水相を提供する工程であって、前記ポリマー材料が、i)少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及びii)ペンダント官能基を有するポリマー材料を提供する、少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマーの繰り返しモノマー単位を含有する、前記工程、2)有機相変化物質を水相中に乳化して有機相変化物質の分散相及び連続的な水相を含む水中油型エマルションを形成する工程、3)架橋化合物を導入する工程、4)水中油型エマルションを噴霧乾燥にかけて水を蒸発させ且つ粒状組成物を形成する工程を利用する、前記方法に関する。粒状組成物は、多様な熱エネルギーの調節又は蓄積用途、例えば、織物、発泡体、建築物及び電気機器に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水不溶性ポリマーマトリックス全体に分散された有機相変化物質(PCM)を含有する粒状組成物に関する。本発明はまた、噴霧乾燥工程を利用するかかる粒状組成物を得るための新規な方法にも関する。望ましくは、粒状組成物は、織物、発泡体、建築物及び電気機器などの多様な用途における熱エネルギーの調節又は蓄積に使用されている。
【0002】
先行技術に記載された多様なカプセル化方法によって相変化物質をカプセル化することは周知である。この方法は一般に、外側のポリマーシェルによって囲まれた相変化物質のコアを含有するマイクロカプセルを形成することを含む。しばしば、該マイクロカプセルのシェルは、アミノプラスト、例えば、メラミンホルムアルデヒドポリマーである。他のポリマーのシェルとして、例えば、WO2005/105291号に記載されたアクリルポリマーが挙げられる。ポリマーシェルによって囲まれた相変化物質のコアを含有するマイクロカプセルの多様な他の製造技術は、US2008318048号、US6220681号、JP2006213914号、US2007248824号、JP2009084363号に記載されている。これらの刊行物の全てが、単一のコアとしての相変化物質及び外側のシェルのみを形成するポリマー材料を含有する粒子に言及している。
【0003】
一般にカプセル化された生成物は、マイクロカプセルの水性分散液の形で生成される。粉末状(即ち、粒状)生成物が要求される場合、まずマイクロカプセル化技術によって水性媒体で分散液を形成し、次いで濾過又は噴霧乾燥などの他の技術によって水性媒体の分散液からマイクロカプセルを単離することが必要である。それにもかかわらず、更なる直接法によって粉末状生成物を得ることが望ましい。
【0004】
噴霧乾燥は、粉末を生産するために食品加工産業において利用されてきた公知の方法である。例えば、液体製品、例えば、牛乳は、ノズルを通して熱いガスの流れの中に噴霧されて粉末を生産することができる。噴霧ミストに曝されて増大した表面積は、高温の熱いガスと共に、液体製品からの水の急速な除去による乾燥効果を与える。
【0005】
噴霧乾燥法によって放出されることが意図される他の疎水性活性成分をカプセル化することが公知である。しかしながら、これらの技術は、化工デンプンなどの親水性のカプセル化ポリマーを利用しており、これは水と接触した時にカプセル化材を放出する。かかる噴霧乾燥技術に使用される他のカプセル化ポリマーとしてゼラチン又はアラビアゴムが挙げられる。これらのポリマーも親水性であり、従って水と接触した時に溶解する。従って、かかる技術は、該材料が永続的にカプセル化されるべき場合、例えば、熱エネルギーの蓄積用途に使用される相変化物質の場合に不適切である。
【0006】
スペイン国の特許文献2306624号は、噴霧乾燥による相変化物質のマイクロカプセル化の手順に関する。有機相変化物質は、疎水性ポリエチレンベースのポリマーを含有する有機溶媒中に溶解されている。有機混合物は噴霧乾燥されて相変化物質の生成物を生成する。生成された生成物は、ポリエチレンベースのポリマーに溶解された相変化物質を含有する。更に、かかる方法は、特殊な閉ループの溶媒噴霧乾燥機を要求し、かかる装置は容易に入手できず且つ不経済になりやすい。
【0007】
Hawladerらによる文献Applied Energy 74 (2003) 第195頁〜202頁には、噴霧乾燥による相変化物質のカプセル化が概説されているが、カプセル化材については記載されていない。本発明者らは、カプセル化材は恐らくゼラチン又はアラビアゴムである可能性が高いが、これらの材料が親水性で且つ水溶性であるため、永続的にカプセル化された相変化物質を提供しないと考えている。
【0008】
相変化物質が永続的に閉じ込められる、粒状カプセル化相変化物質生成物を提供することが望ましい。更に、経済的に有用な簡便な方法によって、特に従来の装置を使用して、これを提供することが望ましい。
【0009】
マイクロカプセル化した有機相変化物質は、カプセル化されていない形の有機相変化物質と比較した場合、遥かに低い温度で固体化する傾向がある。この効果は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して示された。例えば、約2ミクロンの体積平均径(VMD)を有するマイクロカプセル化されたオクタデカンは、5℃/分の加熱及び冷却速度にて示差走査熱量測定(DSC)によって、約28℃のピーク融解温度及び約12℃のピーク凝固温度、即ち、約16℃の温度差を示す。この現象は、過冷却として知られており、大きなカプセルと比較して、非常に小さいカプセル(マイクロカプセル)において更に顕著である。前述の先行技術はいずれも過冷却の問題について対処していない。
【0010】
この過冷却の問題を克服するために、マイクロカプセル中で成核剤と有機相変化物質とを組み合わせて使用して、マイクロカプセル化された有機相変化物質を冷却する際に結晶化を誘導することが公知である。
【0011】
U.S.5456852号は、相転移を受けることができる蓄熱化合物及び蓄熱化合物の過冷却を防ぐために蓄熱化合物の融点よりも高い融点を有する化合物を含有する蓄熱材のためのマイクロカプセルを開示している。高融点化合物の特殊な例として、脂肪族炭化水素化合物、芳香族化合物、エステル、例えば、脂肪及び油脂、脂肪酸、アルコール及びアミドが挙げられる。脂肪酸、アルコール及びアミドが好ましい。
【0012】
成核剤を、過冷却を防ぐ際に特に効果的であるものとして見なす多くの先行技術文献が存在している。ある物質、例えば、極性の化合物は成核剤として使用されて改善された過冷却の低減をもたらし得るが、かかる物質はその反応性のためにある欠点をもたらし得る。場合によっては、これらは、他の成分とマイクロカプセル中で反応して悪影響を与え得る。
【0013】
更なる目的は、成核剤の悪影響を回避する低減された過冷却を示す又は過冷却を示さないマイクロカプセル化された有機相変化物質を提供することである。
【0014】
本発明によれば、本発明者らは、
A)有機相変化物質と、
B)水不溶性ポリマーマトリックスであって、
B1)ポリマー材料であって、
i)少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及び
ii)ペンダント官能基を有するポリマー材料を提供する少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマー
から形成される繰り返しモノマー単位を含有するポリマー材料、及び
B2)ポリマー材料の前記ペンダント官能基と反応した架橋剤から誘導される架橋成分
を含む、水不溶性ポリマーマトリックスと
を含む粒状組成物であって、前記有機相変化物質(A)が分離相として前記水不溶性ポリマーマトリックス(B)全体に分散される、粒状組成物を提供する。
【0015】
本発明は更に、
A)有機相変化物質、及び
B)水不溶性ポリマーマトリックス
を含む粒状組成物の製造方法であって、以下の工程
1)溶解したポリマー材料を含有する水相を提供する工程であって、前記ポリマー材料が
i)少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及び
ii)ペンダント官能基を有するポリマー材料を提供する、少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマー
の繰り返しモノマー単位を含有する、前記工程、
2)有機相変化物質を水相中に乳化して有機相変化物質の分散相及び連続的な水相を含む水中油型エマルションを形成する工程、
3)架橋剤を導入する工程、
4)水中油型エマルションを噴霧乾燥にかけて水を蒸発させ且つ粒状組成物を形成する工程
を含み、前記有機相変化物質(A)が分離相として前記水不溶性ポリマーマトリックス(B)全体に分散される、前記製造方法に関する。
【0016】
一般に、これらの工程は1から4まで順次行う。この場合、架橋剤が水中油型エマルションに導入される。しかしながら、架橋剤が水中油型エマルションの形成前に含まれるように、工程2と工程3を逆にすることが望ましいこともある。この場合一般に、架橋剤が、ポリマー材料を含有する水相中に導入される。
【0017】
本発明の粒状組成物は乾燥したさらさらした粉末であることが望ましい。
【0018】
この方法では、相変化物質のカプセル化又は閉じ込めは、乾燥粒子の製造工程と同時に起こり易い。本発明者らは、この直接的アプローチは、例えば、アミノプラスト又はアクリルポリマーによる最初のカプセル化段階に続いて乾燥工程を利用することと比較して、更に効率的且つ経済的に粒状の相変化物質の生成物を得る手法を提供すると考えている。
【0019】
過冷却を防ぐための有機相変化物質を有する成核剤、例えば、U.S.5456852号に記載されたそれらの成核剤を含むことが可能であるが、本発明者らは予想外に本発明の組成物が成核剤の不在下でも低減された過冷却を示すことを見出した。本発明者らは、粒状組成物の有機相変化物質が、示差走査熱量測定(DSC)分析を使用して測定された融点及び凝固点ピークを示し、これが成核剤の不在下で実質的に同じ温度又は非常に近い温度であることを見出した。一般的に、融点ピークは、凝固点ピークを20%下回る、好ましくは15%下回る。従って好ましくは、成核剤は、本発明の粒状組成物中の有機相変化物質と一緒に存在しない。
【0020】
好適には、粒状組成物は、
A)1〜90質量%の相変化物質、及び
B)10〜99質量%のポリマーマトリックス
を含んでよい。
【0021】
好ましくは、相変化物質(A)の量は、粒状組成物の全質量を基準として50〜80質量%の間であり、ポリマーマトリックス(B)の量は20〜50質量%の間である。更に好ましくは、相変化物質は60〜70質量%の間の量で存在し、ポリマーマトリックスの量は30〜40質量%の間である。
【0022】
典型的には相変化物質は、例えば、−30〜150℃の間の温度で融解する公知の炭化水素であってよい。一般的に、物質はワックス又はオイルであり、好ましくは20〜80℃の間、しばしば約40℃の融点を有する。
【0023】
好ましくは、有機相変化物質は、パラフィン系炭化水素、天然ワックス、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪エステル及び脂肪アミドからなる群から選択される。望ましくは、相変化物質はC8−40アルカン又はシクロアルカンであってよい。好適な相変化物質は、アルカン又はシクロアルカンの全ての異性体を含む。更に、これらのアルカン又はシクロアルカンの混合物を使用することも望ましい。相変化物質は、例えば、n−オクタデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ウンコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−ヘキサコサン、n−ヘプタコサン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン及び更にそれらの異性体及び/又は混合物から選択される任意の化合物であってよい。相変化物質として使用するのに適した物質ワックスの例は、密ろう、カンデリラろう、カルナウバろう、シュロろう、昆虫ろうを含む。
【0024】
相変化物質として使用される典型的な脂肪酸は、炭素数8〜40のカルボン酸を含む。脂肪酸の好ましい例は、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、炭素数13〜27の間の他の脂肪酸を含む。好適な脂肪アルコールは、炭素数8〜40の間のアルカノール、特にラウリルアルコール、ステアリルアルコール及び炭素数13〜27の間の他の脂肪アルコールであってよい。この用途に使用できる脂肪エステルは、炭素数8〜40の間のエステル、好適にはメチルステアレート、メチルシンナメート、メチルラウレート、メチルオレアート及び炭素数8〜39の間の脂肪酸部分及び低級アルキルアルコール部分、例えば、炭素数1〜5を有する他の脂肪エステル又は代替的に炭素数8〜39の間の脂肪アルコール部分及び炭素数1〜5の低級アルカノエート部分を有する脂肪エステルを含む。好適な脂肪アミドは、炭素数8〜40の間のアミド、好ましくはステアルアミド、ラウラミド、オレアミド及び炭素数13〜27の間の他のアミドを含む。
【0025】
粒状組成物の水不溶性ポリマーマトリックスは、
B1)ポリマー材料であって、
i)少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及び
ii)ペンダント官能基を有するポリマー材料を提供する少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマー
から形成される繰り返しモノマー単位を含有するポリマー材料、及び
B2)ポリマー材料の前記ペンダント官能基と反応した架橋化合物から誘導される架橋成分
を含み、有機相変化物質(A)は分離相として水不溶性ポリマーマトリックス(B)全体に分散されている。
【0026】
ポリマー材料B1は、望ましくは、
i)50〜95質量%の少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及び
ii)5〜50質量%の少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマー
を含んでよい。
【0027】
好ましくは少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマーの量は、全モノマーを基準として60〜90質量%の間、更に好ましくは70〜90質量%の間、特に75〜90質量%の間、最も好ましくは80〜85質量%の間である。好ましくは少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマーの量は、全モノマーを基準として10〜40質量%の間、更に好ましくは10〜30質量%の間、特に10〜25質量%の間、最も好ましくは15〜20質量%の間であるべきである。
【0028】
一般に、エチレン性不飽和疎水性モノマー対エチレン性不飽和親水性モノマーの質量比は、50:50〜95:5、好ましくは90:10〜60:40、特に好ましくは90:10〜75:25、特に85:15〜80:20であるべきである。
【0029】
疎水性のエチレン性不飽和モノマーは水不溶性の傾向がある。これは、モノマーの水への溶解度が25℃で水100mlにつきモノマー5gを下回ることを意味する。通常、モノマーの溶解度は水100mlにつき2g又は3gを下回る。望ましい疎水性のエチレン性不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和カルボン酸のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ビニルアセテート、ビニルクロリド及びビニリデンクロリドからなる群から選択される。モノエチレン性不飽和カルボン酸の好適な疎水性エステルの特別な例は、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルを含む。特に好適なエステルは、C−Cアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−又はイソ−プロピル(メタ)アクリレート又はn−、イソ−又は第3級ブチル(メタ)アクリレート;フェニルメタクリレート;C−C12シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、シクロヘキシルメタクリレート又はイソボルニルメタクリレートを含む。
【0030】
好適なエチレン性不飽和疎水性モノマーの1群は、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成することが可能なものである。
【0031】
好適には、親水性のエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも25℃で水100mlにつきモノマー5gの水への溶解度を有する。通常、親水性モノマーは、例えば、100mlにつき少なくとも7g、8g又は10gよりも高い水への溶解度を有する。親水性モノマーは非イオン性、アニオン性、又はカチオン性であってよい。それにもかかわらず、親水性モノマーは架橋剤と反応し得る官能基を有するべきである。望ましい親水性のエチレン性不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、モノエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル、アミノアルキルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択されてよい。
【0032】
好ましい親水性モノマーは、アニオン性モノマー、例えば、カルボン酸の無水物などの潜在的なアニオン性モノマーを含む。好適なアニオンモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物、クロトン酸、ビニル酢酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を含む。好ましいアニオン性モノマーはカルボン酸又は酸無水物、例えば、(メタ)アクリル酸である。
【0033】
ポリマー材料B1を形成するために使用される特定のモノマー及びその相対量は、ポリマー材料が、少なくともアンモニウム又は好適な揮発性アミン化合物で中和される時に、水溶性であるようにしなければならない。水溶性とは、ポリマーが25℃で100mlにつき少なくとも5gの水への溶解度を有することを意味する。モノマーは、架橋剤と反応した時に、形成されるポリマーマトリックスが水不溶性である、即ち、100mlにつき5gを下回る溶解度を有するように選択されるべきである。
【0034】
特に好ましいポリマー材料B1は、メチルメタクリレートとアンモニウムアクリレートとのコポリマーである。
【0035】
ポリマー材料B1は、好適な重合プロセスによって製造されてよい。例えば、ポリマーは水性エマルション重合、例えば、EP−A−697423号又はU.S.5,070,136号に記載されたものによって製造され得る。典型的には、親水性モノマーは遊離酸としてのアニオン性モノマーであってよく且つ重合される水性エマルションを形成する水に乳化されてよい。次に、得られたポリマーが、水性媒体に溶解して水溶液を形成するように、アニオン性基を中和するために好適な塩基の添加によって中和されてよい。あるいは、アニオン性モノマーを最初に中和し、次いで疎水性モノマーで共重合してよい。
【0036】
ポリマー材料を形成するために使用される親水性モノマーがアニオン性である時、塩基が中和する対イオンを与えることが好ましく、これは高温の条件下で容易に除去できる。これは揮発性の対イオン成分と呼ばれてよい。更に好ましくは、塩基はアンモニア、水酸化アルミニウム又は揮発性アミン成分である。揮発性アミン成分は、低温〜中温で、例えば、200℃までの温度で揮発できる液体である。好ましくは、100℃未満の温度で減圧下にて揮発性アミンを揮発させることが可能である。ポリマーは遊離酸の形で製造されて、次いで水酸化アンモニウム又は揮発性アミンの水溶液、例えば、エタノールアミン、メタノールアミン、1−プロパノールアミン、2−プロパノールアミン、ジメタノールアミン又はジエタノールアミンで中和されてよい。あるいはポリマーは、アニオン性モノマーのアンモニウム又は揮発性アミン塩と疎水性モノマーとの共重合によって製造されてよい。
【0037】
典型的な重合プロセスでは、疎水性モノマーとアニオン性モノマーとのブレンドは、適量の乳化剤を含有する水相中に乳化される。乳化剤は、水性エマルションの形成に適した市販の乳化剤であってよい。これらの乳化剤は、水非混和性モノマー相中よりも水相中に溶解し易く、従って高い親水性疎水性バランス(HLB)を示す傾向がある。モノマーの乳化は、モノマー/水相を激しい撹拌又は剪断にかけるか又は代替的にモノマー/水相をふるい又はメッシュに通すことを含む、公知の乳化技術によって行ってよい。次に重合を、好適な開始剤系、例えば、UV開始剤又は熱開始剤の使用によって行ってよい。好適な重合開始技術は、70℃又は80℃を上回るまでモノマーの水性エマルションの温度を上昇させて、次いでモノマー質量の50〜1000ppmの間の過硫酸アンモニウムを添加することである。
【0038】
エチレン性不飽和親水性モノマーは、潜在的にカチオン性を含む、カチオン性の、例えば、エチレン性不飽和アミンであることが可能である。
【0039】
本発明のこの形態で、揮発性の対イオン成分が利用される時、これは揮発性の酸成分であってよい。重合性材料B1は、アニオン性モノマーがカチオン性又は潜在的にカチオン性のモノマーによって置換されることを除いて、前述のアニオン性ポリマー材料と同様に形成され得る。ポリマーが遊離アミンと疎水性モノマーとのコポリマーの形で製造される場合、これは好適な揮発性酸、例えば、酢酸又はギ酸を含むことによって中和される。好ましくは、ポリマーは揮発性カルボン酸によって中和される。
【0040】
好適なカチオン性モノマーは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド又はアリルアミン及び他のエチレン性不飽和アミン及びそれらの酸添加塩を含む。好適なジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートは、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート、ジメチルアミノブチルメタクリレート、ジエチルアミノブチルアクリレート及びジエチルアミノブチルメタクリレートを含む。典型的なジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドは、ジメチルアミノメチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジエチルアミノエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミノブチルメタクリレート、ジエチルアミノブチルアクリレート及びジエチルアミノブチルメタクリルアミドを含む。典型的なアリルアミンはジアリルアミン及びトリアリルアミンを含む。
【0041】
ポリマー材料B1は、望ましくは200000までの質量平均分子量(標準的な工業パラメータを用いてGPCによって測定)を有する。好ましくはポリマーは50000未満、例えば、2000〜30000の質量平均分子量を有する。好ましい実施態様によれば、最適なマトリックスポリマーの分子量は約6000〜25000である。
【0042】
架橋剤は、ポリマー材料のエチレン性不飽和モノマー単位の官能基と反応可能でなければならない。例えば、ポリマー鎖がアニオン性基を含有する場合、好適な架橋剤は、アジリジン、ジエポキシド、カルボジアミド、シラン又は多価金属、例えば、アルミニウム、亜鉛又はジルコニウムを含む。更に好ましくは架橋剤は、多価金属化合物、例えば、アルミニウム、亜鉛又はジルコニウムの酸化物、水酸化物、炭酸エステル又は塩である。特に好ましい架橋剤は炭酸アンモニウムジルコニウム又は酸化亜鉛である。別の特に好ましい種類の架橋剤は、ポリマー鎖の間で共有結合を形成する化合物、例えば、シラン又はジエポキシドを含む。
【0043】
架橋プロセスは望ましくは、噴霧乾燥段階の間の脱水工程の間に起こる。好ましくは、架橋化合物は、親水性のモノマー単位の十分な官能基と反応して、ポリマー材料を水不溶性にする。望ましくは、架橋剤は、噴霧乾燥段階の前に有意な量まで官能基と反応してはならない。
【0044】
望ましくは本発明の方法の工程3)において、十分な架橋化合物を添加してポリマー材料の官能基の実質的に少なくとも60%と反応させる。好ましくは架橋剤の量は、ポリマー材料の官能基の少なくとも80%、更に好ましくは90%と反応するのに十分でなければならない。更に好ましくは、架橋剤は官能基の少なくとも95%、特に少なくとも98%又は99%、場合により更に100%となお反応するべきである。
【0045】
好ましくは親水性モノマーの官能基は、その塩を含む、カルボン酸単位であり、架橋剤は高温下で、例えば、噴霧乾燥装置に生じる温度下で、カルボン酸と反応する物質である。好適には架橋剤は、エステル結合を形成するために反応し得る多ヒドロキシ化合物であってよい。典型的には多ヒドロキシ化合物は、ヒドロキシ官能性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコールであってよい。
【0046】
架橋剤の量は、ポリマー材料B1の90質量%までであってよい。一般的に要求される架橋剤の量は、ポリマー材料B1における親水性モノマー単位の濃度が増加するにつれて増加する。望ましくは架橋剤の量は、ポリマー材料の70質量%までであってよい。望ましくは架橋剤の量は、ポリマー材料の50質量%未満であり、通常、1〜30質量%の間である。良好な結果は、架橋剤として多価金属化合物を、好適には5〜20%の間、更に好ましくは10〜20%の間で使用する時に得られる。更に望ましい結果が、時には、ヒドロキシ官能性ポリマー材料に加えて、多価金属化合物の組み合わせを使用する時に得られる。この場合、多価金属化合物の量は、上に定義される通り、特に5〜20%の間、更に好ましくは10〜20%の間であってよい。ヒドロキシ官能性ポリマー材料の量は、上に定義される通り全て典型的には5〜20%の間、更に好ましくは10〜20%の間の多価金属化合物に等しい。
【0047】
ポリマー材料B1を形成するためのモノマーの選択及び比並びに架橋剤の選択及び量もまた、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有するポリマーマトリックスを提供するようにされてよい。望ましくは、マトリックスポリマーは、粘着性になって噴霧乾燥機のチャンバの壁に付着するので、低すぎるTgを有するべきではない。本発明の粒状組成物が乾燥したさらさらした粉末として形成されることが望ましいので、噴霧乾燥機のチャンバ内部に粘着する及び/又は互いに粘着してアグロメレートを形成し得る粘着性の粒子の形成を防ぐためにTgが比較的高いことが好ましい。好ましくは粒状組成物のポリマーマトリックスのガラス転移温度は、50℃を超える、更に好ましくは60℃を超える、特に80℃より高い、とりわけ100℃より高い、最も好ましくは110℃より高い。一般に、ポリマー材料B1及び架橋剤B2の特性とポリマーマトリックスの別の特性とを併せ持たずに最高のガラス転移温度は存在しない。ガラス転移温度は200℃程度又は250℃以上の高さであってよい。
【0048】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、Kirk - Othmer、工業化学百科事典(Encyclopaedia of Chemical Technology)、第19巻、第4版、第891頁において、(1)分子全体の転移運動、及び(2)らせん状及びらせん状ではない、鎖の40〜50個の炭素原子セグメントの両方が凍結するより低い温度として定義されている。従って、そのTg未満ではポリマーは流動性又はゴム弾性を示さない。ポリマーのTgは示差走査熱量測定法(DSC)を使用して測定してよい。
【0049】
粒状組成物を得る方法は、ポリマー材料B1の水溶液を都合よく利用する。好ましくは溶液のポリマー材料は、架橋剤と容易に反応する遊離酸を生じさせるために中和する対イオンが除去されるように、噴霧乾燥工程の間に分解する塩として存在する。
【0050】
従って、工程1)においてポリマー材料が、モノエチレン性不飽和カルボン酸及びモノエチレン性不飽和疎水性モノマーの繰り返し単位を含むポリマーのアンモニウム又は揮発性アミン塩であることが好ましい。
【0051】
そのため、アンモニウム又は揮発性アミン塩を含むポリマー材料の好ましい塩の場合、噴霧乾燥工程の間、アンモニアは、アンモニウム塩又は揮発性アミンの場合に放出されて、それによって架橋剤と自由に反応する遊離酸基を与える。
【0052】
噴霧乾燥工程の間、相変化物質が分離相として全体に分散されているポリマーマトリックスBを含有する粒子を形成するために、エマルション中の水の液滴は望ましくは脱水されるべきである。ポリマーマトリックスが望ましくは水不溶性にされるべきであったので、噴霧乾燥工程の間、相変化物質はポリマーマトリックスによって永続的にカプセル化されるべきである。
【0053】
本方法の工程2)における水性エマルションの形成は、例えば、通常の均質化装置を使用する、任意の通常のエマルション技術によって達成され得る。小規模では、これはSilversonホモジナイザー又はMoulinexブレンダーを使用して達成され得る。大規模では、より大きなサイズの工業装置、例えば、Ultra Turraxを使用することが望ましい。あるいは、水相と相変化物質の混合物をふるいに通すことによって水性エマルションを形成することが可能である。ポリマー材料が親水性部分と疎水性部分の両方を含有するので、これはエマルションを形成し且つ安定化させる乳化界面活性剤として作用する。望ましくは相変化物質を含有するエマルションの分散された相は、5μm未満、好ましくは2μm未満の体積平均粒径を有するべきである。これはSympatec HELOS粒径分析器又はMalvern Mastersizer Model 1002などの差動光散乱技術によって測定できる。
【0054】
本発明の方法において使用される噴霧乾燥装置は、水性液を噴霧乾燥するのに適した通常の噴霧乾燥装置であってよい。一般に、噴霧乾燥装置は、例えば、通常の温度、通常の流量及び通常の滞留時間を使用して、通常の方法で使用される。好ましくは本発明の工程4において、油状の水エマルションは、少なくとも120℃、更に好ましくは少なくとも150℃、更に一層好ましくは少なくとも180℃の温度を有する噴霧乾燥装置に通される。一般に温度は180℃〜220℃の間であり、通常、120℃未満になってはならない。
【0055】
好ましくは、本発明の方法の工程4)において、水中油型エマルションは噴霧乾燥装置に通され、その際、水中油型エマルションの流量と噴霧乾燥装置の噴霧出口は、所望の粒径を有する粒状組成物を提供するために適合される。一般に、粒子の体積平均粒径は約100μm(ミクロン、マイクロメートル)未満である。好ましくは、体積平均粒径は、約1〜60μm、例えば、1〜40μm、とりわけ1〜30μmの間、特に10〜30μmの間の範囲である。体積平均粒径は、文献に明確に記載された標準的な手順に従ってSympatec HELOS社の粒径測定器によって測定される。
【0056】
本発明の粒状組成物は、温度の制御又は蓄積を提供するために種々の熱エネルギー蓄積用途に使用されてよい。望ましくは、粒状組成物は、例えば、織物、織物物品、発泡体、建築物及び電気機器のためのコーティングにおける、種々の物品に使用されてよい。建築物の例は、壁パネル及び天井パネルなどを含む建築業に使用される種々の建築材料を含む。電気機器の場合、粒状組成物は、過熱を防ぐために熱エネルギーの調節を提供しなければならない。
【0057】
次の例は、限定することを決して意図しないで、本発明を説明するものである。
【0058】
実施例1
この実施例は、67%のパラフィンろう及び33%のカプセル化ポリマーを含有するポリマー粒子の製造を説明する。
【0059】
水性供給材料を、88.8gの16.9%のメチルメタクリレートアクリル酸コポリマーアンモニウム塩(82.5/17.5質量%のモノマー比率、分子量20000)を、41.4gの脱イオン水で希釈することによって調製する。この希釈された混合物を過熱されたホモジナイザー(Silverson L4R)の下に置き、次いで30gのKenwax19(30℃の融点を有するex−Witcoパラフィンろう)を高剪断混合下で添加する。得られた水中油型エマルションを15分の全時間にわたり均質化して均一で平滑なワックスエマルションを形成する。次に1.9gの酸化亜鉛(ex−Norkem Chemicals)をホモジナイザーミキサーの下でワックスエマルションに添加する。
【0060】
水性ワックスエマルションを次いで、実験室噴霧乾燥機(Buchi Model B191)を使用して3ml/分の供給速度で180℃の入口温度で噴霧乾燥させる。最終生成物は、18.9ミクロンの平均粒径を有する閉じ込められたパラフィンろうを含有するさらさらした白色粉末である。カプセル化されたパラフィンろうは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されて、33.2℃の融点ピーク及び29.2℃の凝固点ピーク及び62J/gのエンタルピーを有していた。
【0061】
実施例2
この実施例は、ポリビニルアルコールを追加のヒドロキシル官能性ポリマー架橋材料として使用する、61%のパラフィンろう及び39%のカプセル化ポリマーを含有するポリマー粒子の製造を説明する。
【0062】
水性供給材料を、88.8gの16.9%のメチルメタクリレートアクリル酸コポリマーアンモニウム塩(82.5/17.5質量%のモノマー比率、分子量20000)を、41.4gの脱イオン水で希釈し、次いで40gの5.3%のポリビニルアルコール溶液(Gohsenol GL05)を添加することによって調製する。この水相に30gのKenwax19を高剪断ミキサーの下で添加してワックスエマルションを形成し、次いで1.9gの酸化亜鉛を分散させる。得られた水性混合物を、実施例1に記載された手順に従って噴霧乾燥すると、10.6ミクロンの平均粒径を有する白色の粉末状生成物が得られる。カプセル化されたパラフィンろうは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されて、32.9℃の融点ピーク及び28.9℃の凝固点ピーク及び55J/gのエンタルピーを有していた。
【0063】
実施例3
実施例1〜2のカプセル化されたPCM試料を2つの特性試験にかけた:
1.水への安定性:1gの試料を50gの水に分散し、5時間後にカプセル化された粒子の物理的な崩壊又は溶解について試験試料を光学顕微鏡の下で検査する。
2.Perkin Elmer TGAを用いて熱重量分析(TGA)を110℃〜500℃の温度範囲で行う。
【0064】
実施例1及び2の両方のポリマー粒子は、ばらばらで無傷のまま水と接触するが、これは粒子がそれらの意図される最終用途に使用するために不活性のままであること、即ち、生成物は建築及び織物用途に使用するために水性配合物に配合できることを示す。
【0065】
熱重量分析の結果を表1にまとめる。
【表1】

【0066】
カプセル化の質は半分高さ値の比較によって見ることができ、半分高さが高いほど、内部圧力の増大による破壊に対してマイクロカプセルの耐性が高くなる、即ち、壁の頑強性がより高い。カプセル化されていないパラフィンろう(Kenwax19)は、247℃で加熱した時にその質量の50%を失うが、本発明のマトリックスポリマーでカプセル化した時に、これは実質的に320℃を上回って上昇させることができ、同時に質量損失は約30%まで低減される。これは本発明のポリマー粒子内に閉じ込められたろうの効果的な保持を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)有機相変化物質と、
B)水不溶性ポリマーマトリックスであって、
B1)ポリマー材料であって、
i)少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及び
ii)ペンダント官能基を有するポリマー材料を提供する少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマー
から形成される繰り返しモノマー単位を含有するポリマー材料、及び
B2)ポリマー材料の前記ペンダント官能基と反応した架橋化合物から誘導される架橋成分
を含む、水不溶性ポリマーマトリックスと
を含む粒状組成物であって、前記有機相変化物質(A)が分離相として前記水不溶性ポリマーマトリックス(B)全体に分散される、前記粒状組成物。
【請求項2】
A)1〜90質量%の相変化物質、及び
B)10〜99質量%のポリマーマトリックス
を含む、請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項3】
前記ポリマー材料B1が、
i)50〜95質量%の少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及び
ii)5〜50質量%の少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマー
を含む、請求項1又は2に記載の粒状組成物。
【請求項4】
疎水性のエチレン性不飽和モノマーが、モノエチレン性不飽和カルボン酸のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、アラルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ビニルアセテート、ビニルクロリド及びビニリデンクロリドからなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の粒状組成物。
【請求項5】
親水性のエチレン性モノマーが、モノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、モノエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル、アミノアルキルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の粒状組成物。
【請求項6】
架橋成分が多価金属化合物である架橋化合物から誘導される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の粒状組成物。
【請求項7】
A)有機相変化物質、
B)水不溶性ポリマーマトリックス
を含む粒状組成物の製造方法であって、以下の工程
1)溶解したポリマー材料を含有する水相を提供する工程であって、前記ポリマー材料が
i)少なくとも1種の疎水性のエチレン性不飽和モノマー、及び
ii)ペンダント官能基を有するポリマー材料を提供する、少なくとも1種の親水性のエチレン性不飽和モノマー
の繰り返しモノマー単位を含有する、前記工程、
2)有機相変化物質を水相中に乳化して有機相変化物質の分散相及び連続的な水相を含む水中油型エマルションを形成する工程、
3)架橋化合物を導入する工程、
4)水中油型エマルションを噴霧乾燥にかけて水を蒸発させ且つ粒状組成物を形成する工程
を含み、前記有機相変化物質(A)が分離相として前記水不溶性ポリマーマトリックス(B)全体に分散される、前記製造方法。
【請求項8】
工程1)においてポリマー材料が、モノエチレン性不飽和カルボン酸及びモノエチレン性不飽和疎水性モノマーの繰り返し単位を含むポリマーのアンモニウム又は揮発性アミン塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程2)において相変化物質の分散された相が5μm未満、好ましくは2μm未満の体積平均粒径を有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
工程3)において、十分な架橋化合物を添加してポリマー材料の官能基の実質的に少なくとも90%と反応させる、請求項7から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程4)において、水中油型エマルションを、少なくとも100℃の入口温度を有する噴霧乾燥装置に通す、請求項7から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程4)において、水中油型エマルションを噴霧乾燥装置に通し、その際、水中油型エマルションの流量及び噴霧乾燥装置の噴霧出口を、5μmより大きい、好ましくは10〜100μmの間の体積平均粒径を有する粒状組成物を提供するように適合させる、請求項7から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に規定された粒状組成物を、熱エネルギーの調節又は蓄積を提供するための物品に用いる使用。
【請求項14】
物品が、織物、織物物品、発泡体、建築物及び電気機器のためのコーティングからなる群から選択される、請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2012−531510(P2012−531510A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518858(P2012−518858)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058368
【国際公開番号】WO2011/000688
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】