説明

粒状肥料組成物及びその使用方法

【課題】本発明は、亜リン酸及び/又はその塩の有する肥料効果を最大限発揮させると共に、薬害等の悪影響を生じさせずに必要量を一度に施肥する肥料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の肥料組成物は、粒状の肥料組成物であって、亜リン酸又はその塩を含有する。本発明の粒状肥料組成物には、亜リン酸又はその塩の他、結合剤及び固体担体が含まれる。本発明の粒状肥料組成物を使用するに当たっては、作物の定植前又は定植時、あるいは追肥時に栽培土壌又は培地に施肥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状肥料組成物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンは、窒素及びカリウムと共に肥料の三大栄養素の一つであり、作物の全生長ステージを通じて大量に使用することが必要とされる。近年、亜リン酸及びその塩を水溶液として、作物に散布することで作物の増収や品質向上等の効果が得られることが報告され(特許文献1)、今日では亜リン酸塩及びその塩の水溶液が葉面散布肥料として農業従事者に使用されている。
【0003】
しかしながら、亜リン酸塩及びその塩の水溶液からなる葉面散布肥料は、気象条件(降雨、風等) に影響されて適時適期に散布ができなかったり、ドリフト(飛散)により近隣住宅地等への環境汚染が懸念される。また、亜リン酸塩が本質的に有している、作物に対する薬害等の障害の懸念から、使用時期及び施肥量(濃度)に制限があり、所望の肥料効果を得るためには一定の期間に亘って何回も散布する必要があり、煩雑さの点で問題がある。更に、亜リン酸塩を散布するに当たっては、比較的低濃度の散布液とする必要があるため、使用に当たり大量の水で希釈しなければならず、それに伴い多量の水溶液を散布しなければならず、作業者への負荷の問題が生じている。
【0004】
また、特許文献1においては、亜リン酸塩を土壌に処理することが示唆されているが、水溶液の形態での土壌処理は、亜リン酸の塩が易溶性であるため降雨によって流亡しやすく、作物が亜リン酸の塩を有効に利用することができない。一方、流亡して損失する量を考慮して必要量(高濃度の亜リン酸塩水溶液)を一度に施肥すると、やはり作物に薬害が生じ(後記比較例参照)、前記した問題を解消することができない。
【0005】
以上のことから、亜リン酸又はその塩を土壌に使用することは、当業者にとっては不適当であると考えられていた。
【特許文献1】米国特許第5514200号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、亜リン酸又はその塩を含有する肥料であって、優れた肥料効果を発揮させると共に、薬害等の悪影響を生じさせずに必要量を一度に施肥することを可能とする肥料組成物を提供することを課題とする。
【0007】
本発明は、基肥又は追肥として使用でき、長期にわたる肥料効果の発現によって、作業者への負荷を軽減できる肥料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて来た。その結果、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸又は亜リン酸のカリウム塩とを併用することで、優れた肥料効果を発現することを見い出した。これら亜リン酸及び/又はその塩を散布肥料ではなく、粒状肥料組成物とすることにより、施肥量を増加させても薬害を生じず、長期にわたる肥料効果を実現でき、作業者の手間、コスト等を軽減することができることを見い出した。
このような知見に基づき完成されたものである。
【0009】
本発明は、下記項1〜8に示す粒状肥料組成物及びその使用方法を提供する。
項1.(成分A)亜リン酸、亜リン酸水素カリウム及び亜リン酸カリウムの群から選ばれる少なくとも1種及び(成分B)亜リン酸のカルシウム塩を含有する粒状肥料組成物。
項2.成分A、成分B、結合剤及び固体担体を含有してなる項1に記載の粒状肥料組成物。
項3.成分Bが亜リン酸水素カルシウム又は亜リン酸カルシウムである項1又は2に記載の粒状肥料組成物。
項4.固体担体がベントナイト、クレー、硫酸カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種である項2に記載の粒状肥料組成物。
項5.成分Aと成分Bとの配合割合が、成分B 1重量部に対して、成分Aが0.1〜10重量部である項1〜4のいずれかに記載の粒状肥料組成物。
項6.成分A、成分B、結合剤及び固体担体を混練し、押し出し造粒して得られる粒状肥料組成物。
項7.項1〜6のいずれかに記載の粒状肥料組成物を作物の定植前又は定植時に栽培土壌又は培地に施肥する、粒状肥料組成物の使用方法。
項8.項1〜6のいずれかに記載の粒状肥料組成物を作物生育過程で追肥として栽培土壌又は培地に施肥する、粒状肥料組成物の使用方法。
【0010】
更に本発明は、以下の態様も含む。
項9.亜リン酸及び亜リン酸のカルシウム塩を含有する粒状肥料組成物。
項10.亜リン酸水素カリウム及び亜リン酸のカルシウム塩を含有する粒状肥料組成物。
項11.亜リン酸カリウム及び亜リン酸のカルシウム塩を含有する粒状肥料組成物。
項12.亜リン酸水素カリウム、亜リン酸カリウム及び亜リン酸のカルシウム塩を含有する粒状肥料組成物。
項13.亜リン酸のカルシウム塩が亜リン酸カルシウムである項9乃至12に記載の粒状肥料組成物。
項14.更に結合剤及び固体担体を含有してなる項9乃至13に記載の粒状肥料組成物。
項15.固体担体がベントナイトと炭酸カルシウムである項2又は14に記載の粒状肥料組成物。
項16.固体担体がベントナイトと硫酸カルシウムである項2又は14に記載の粒状肥料組成物。
項17.結合剤がα化デンプンである項2又は14に記載の粒状肥料組成物。
【0011】
本発明の粒状肥料組成物は、亜リン酸、亜リン酸水素カリウム(KHPHO3)及び亜リン酸カリウム(K2PHO3)から選ばれる少なくとも1種(成分A)と亜リン酸のカルシウム塩(成分B)とを含有する。
【0012】
本発明において使用される亜リン酸のカルシウム塩としては、亜リン酸水素カルシウム(CaH2(PHO32)又は亜リン酸カルシウム(CaPHO3)であり、亜リン酸カルシウムが好ましい。
【0013】
本発明においては、亜リン酸のカルシウム塩(成分B)を必須成分とし、亜リン酸、亜リン酸水素カリウム及び亜リン酸カリウムから選ばれる少なくとも1種(成分A)と組み合わせて使用する。組み合わせとしては、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸水素カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸と亜リン酸水素カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸と亜リン酸カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸水素カリウムと亜リン酸カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸と亜リン酸水素カリウムと亜リン酸カリウムが挙げられるが、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸水素カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸水素カリウムと亜リン酸カリウムの組み合わせが肥料効果、粒状肥料組成物の安定性の観点から好ましく、中でも亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸水素カリウム、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸水素カリウムと亜リン酸カリウムの組み合わせがより好ましく、亜リン酸のカルシウム塩と亜リン酸水素カリウムの組み合わせが特に好ましい。
【0014】
成分Aと成分Bとの配合割合は、成分B 1重量部に対して、成分Aが0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、更に好ましくは0.5〜1重量部とすればよい。
【0015】
成分A及び成分Bの配合量は、それらの合計量が粒状肥料組成物全量に対して1〜70重量%、好ましくは10〜50重量%とすればよい。
【0016】
本発明の粒状肥料組成物は、成分A、成分B、結合剤及び固体担体を含有する。
【0017】
本発明において使用される結合剤としては、この分野で使用されている公知の結合剤を広く使用することができ、例えば、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプン、カルボキシメチルデンプン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、デキストラン、マンナン、ペクチン、トラガントガム、マンニット、ソルビトール、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、キサンタンガム等の糖質類;ゼラチン、カゼイン等の蛋白質類;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の合成ポリマー類等が挙げられる。また、デンプンの加水分解によって得られるデキストリン、各種の転化糖ないし異性化糖、具体的にはグルコース、フラクトース、マルトース、シュークロース、更にはラクトース等の単糖類、二糖類、オリゴ糖類等の糖類も、結合剤として使用できる。
【0018】
これら結合剤の中では、糖質類又は合成ポリマー類が好ましい。糖質類としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン等が好ましく、合成ポリマーとしては、ポリビニルアルコール等が好ましく、これらの中でもα化デンプンが特に好ましい。
【0019】
これらの結合剤は、1種単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0020】
結合剤は、粒状肥料組成物全量に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%になるように配合される。
【0021】
本発明において使用される固体担体としては、この分野で使用されている公知の固体担体を広く使用することができ、例えば、ベントナイト、クレー、タルク、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジークライト、セリサイト、硫酸カルシウム(石膏)、酸性白土、珪石、珪藻土、軽石、ゼオライト、バーミキュライト、ホワイトカーボン等の無機担体;及び鋸屑、藁、パルプ、籾殻、糠、ふすま、コーンコブ等の有機担体が挙げられる。これらの中でも無機担体が好ましく、無機担体の中でもベントナイト、クレー、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムが好ましく、肥料効果の観点から炭酸カルシウム及び硫酸カルシウムが特に好ましい。また、粒状肥料組成物の造粒性及び性状の観点からベントナイトを使用するのが特に好ましい。これらの固体担体は、1種単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0022】
固体担体は、粒状肥料組成物全量に対して、通常10〜90重量%、好ましくは30〜80重量%になるように配合される。
【0023】
本発明の粒状肥料組成物には、必要に応じてその他の成分を配合してもよい。その他の成分としては、硫安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料、有機肥料、動物排泄物発酵産物、堆肥等の公知の肥料成分、ワックス等の徐放性向上剤、アルキル硫酸エステル塩類、アリールスルホン酸塩類、ポリオキシエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、ジアルキルスルホサクシネート類、ポリカルボン酸類等の界面活性剤、防腐防黴剤、安定化剤、効力増強剤、香料、染料、顔料、着色剤、滑り剤等の各種添加剤を例示できる。
【0024】
また、本発明の粒状肥料組成物には、本発明で使用する成分A及び成分B以外の亜リン酸塩を肥料効果及び粒状肥料組成物の性状を損なわない限り、肥料成分又は微量元素の供給源として配合してもよい。このような亜リン酸塩としては、例えば、亜リン酸水素ナトリウム(NaHPHO3)、亜リン酸水素マグネシウム(MgH2(PHO32)、亜リン酸水素アンモニウム((NH4)HPHO3)、亜リン酸ナトリウム(Na2PHO3)、亜リン酸マグネシウム(MgPHO3)、亜リン酸アンモニウム((NH42PHO3)、亜リン酸マンガン(MnPHO3)、亜リン酸鉄(II)(FePHO3)、亜リン酸鉄(IIIs)(Fe2(PHO33)、亜リン酸銅(CuPHO3)等を挙げることができる。
【0025】
本発明の粒状肥料組成物は、例えば、以下に示す方法で製造される。
【0026】
本発明の粒状肥料組成物は、特に限定されないが、例えば、圧縮造粒法、押し出し造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等の通常の造粒方法に従い製造される。これらの造粒方法の中では、操作の簡便性、経済性等の観点から押し出し造粒法が好ましい。
【0027】
押し出し造粒法の具体例を以下に示す。
【0028】
成分A、成分B、結合剤、固体担体及び必要に応じてその他の成分を、必要に応じてピンミル、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕した後、ニーダー等に加えて混合する。なお、成分Aは、水溶液の状態で添加してもよい。得られた混合物に適量の水を加え、混練して混練物を作製する。混練時間は、混練物の量にもよるが、通常数分から数十分程度である。該混練物を、例えばバスケット型押し出し機、スクリュー型押し出し機等の押し出し造粒機を用いて造粒し、粒状肥料組成物を作製する。造粒時に用いられるスクリーンの開口径は通常0.3〜5mm程度であり、工業的生産、作業性等の観点から0.5〜3mm程度が好ましい。次いで該粒状肥料組成物を、例えば流動層乾燥機等の乾燥機を用いて、通常室温〜150℃で乾燥することにより、本発明の粒状肥料組成物が製造できる。
【0029】
このようにして得られた本発明の粒状肥料組成物の形状は、円筒であり、その大きさは、特に制限されるものではないが、直径は、通常0.3〜5mm、好ましくは0.5〜3mm、長さは、通常0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mmである。
【0030】
本発明の粒状肥料組成物は、そのまま使用することができ、作物の栽培土壌又は培地に施用すればよく、基本的には作物の根圏域に存在するように施用すればよい。
【0031】
本発明の粒状肥料組成物の施肥方法(使用方法)としては、作物の生長状態によって適宜株元に適量を施肥する方法が挙げられるが、基肥として作物の定植前又は定植時に栽培土壌又は培地に施肥する方法を好ましく挙げることができる。
【0032】
本発明の粒状肥料組成物を、定植前又は定植時に栽培土壌又は培地の全面に施用した後、面積が広い場合にはトラクター等を用いて土壌又は培地と混和させるのが好ましい。
【0033】
本発明の粒状肥料組成物の使用量としては、亜リン酸又はその塩の含有量等によって適宜設定されるが、P25換算で1000m2当たり1〜12kg、好ましくは1000m2当たり3〜6kgとなる量とすればよい。
【0034】
本発明の粒状肥料組成物は、一般のリン酸質肥料よりも肥料効果の点で優れており、かつ生育が良好で作物に対する薬害を抑制できるという極めて優れた効果を有している。
【発明の効果】
【0035】
本発明の粒状肥料組成物は、これまで土壌用処理用肥料として実質的に不適当と考えられた亜リン酸又はその塩を、土壌用処理用肥料として使用することが可能になり、作物の優れた生長効果及び長期にわたる肥料効果を発現できる。
【0036】
また、本発明の粒状肥料組成物は、取扱い性に優れ、施肥作業を容易にすることができる。
【0037】
本発明の粒状肥料組成物は、土壌中及び水中において良好な崩壊性を有しており、使用した亜リン酸又はその塩のリン成分を適度に作物に提供することができる。この良好な崩壊性は、粒状肥料組成物を長期保管しても損なわれることがない。また、本発明の粒状肥料組成物は、長期にわたる保管期間中に凝結やブロック化も生じない。そのため、本発明の粒状肥料組成物の長期保存が可能になり、流通においても有利である。
【0038】
本発明の粒状肥料組成物は、固体であり、公知の亜リン酸類の水溶液肥料に比較して、作業者の施肥作業の省力化、即ち水に溶解させる作業を省略できること、水希釈による肥料重量及び体積の増加がないこと、更に必要量を一度に施肥することが可能になり、施肥回数も低減できる等、多大な貢献が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
製造例1
亜リン酸又はその塩、結合剤及び固体担体として、以下のものを使用した。
成分A;
(A−1):亜リン酸(H3PO3
(A−2):亜リン酸水素カリウム(KHPHO3
(A−3):亜リン酸カリウム(K2PHO3
成分B;
(B−1):亜リン酸カルシウム(CaHPO3
結合剤;
(C−1):α化澱粉
固体担体;
(D−1):ベントナイト
(D−2):カオリンクレー
(D−3):炭酸カルシウム
(D−4):硫酸カルシウム
表1〜表2に記載した配合割合(重量%)で、ニーダーに亜リン酸又はその塩(必要に応じてピンミル、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕して使用した。)、結合剤および固体担体を加えて混合し得られた混合物に適量の水を加え、さらに混練して混練物を作製した。得られた混練物を0.8mm径のスクリーンを付けたシングルドームグラン(不二パウダル製の押し出し造粒機)にて造粒した後、60℃で1時間乾燥、篩別し、粒径が0.8mmの粒状肥料組成物1〜12(以下、それぞれ粒状肥料1〜12と称す)を得た。
また、表3〜4に記載した配合割合で、上記と同様に操作して比較粒状肥料1〜15を得た。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
試験例1(薬害試験1)
栽培培地(ヤシガラ(60%):砂(20%):パーライト(10%):鹿沼土(10%))10リットルと粒状肥料12の18g(P25換算で72g/m2に相当)を混和し、ワグネルポット(1/200000m2、表面積500cm2)に入れ、小松菜幼苗(品種:夏楽天、タキイ種苗株式会社)1株を定植し、十分に潅水させて培地を湿らせた。
【0046】
一方、比較試験として粒状肥料12の施肥を行なわず、小松菜幼苗を移植後、市販の亜リン酸液肥(P25換算32%)を7.5ml(P25換算で72g/m2に相当)株元に与え、同様に静置した。
【0047】
その結果、本発明の粒状肥料12を使用した場合には、苗に何ら薬害を認めなかったが、比較試験の市販亜リン酸液肥を使用した場合には萎れて倒伏した。
【0048】
試験例2(薬害試験2)
トマト幼苗(品種:桃太朗ヨーク、タキイ種苗株式会社)を用いて試験例1と同様に試験した。
【0049】
その結果、試験例1と同様に、本発明の粒状肥料12を使用した場合には、何ら薬害が認められなかったが、比較試験の市販の亜リン酸液肥を使用した場合には、試験例1の小松菜と同様に萎れて、倒伏した。
【0050】
試験例3(肥料効果試験1)
栽培培地(ヤシガラ(60%):砂(20%):パーライト(10%):鹿沼土(10%))10リットルに、粒状肥料1〜12、比較粒状肥料1〜15をP25換算で3kg/1000m2、6kg/1000m2又は12kg/1000m2となるように加えて混和し、ワグネルポット(1/200000m2、表面積500cm2、252φ×300mm)に入れた。小松菜(品種:夏楽天、タキイ種苗株式会社)の苗1株を定植し、根が活着するまで適宜水を与えた。活着後は液肥を潅水し、30日間生育させた。
対象として、市販のリン酸質肥料(粒状過リン酸石灰:P25換算17.5%)を用い、P25換算で同量を施肥し、同条件で生育させた。
【0051】
生育した小松菜の茎葉部と根部のそれぞれの乾物重を測定し、市販のリン酸質肥料での結果を100としたときの比率を求めた。
【0052】
結果を表5及び表6に示す。
【0053】
また、粒状肥料1と比較粒状肥料1、粒状肥料2と比較粒状肥料2、粒状肥料3と粒状肥料3、粒状肥料4と比較粒状肥料4のそれぞれの肥料効果を比較するため、P25換算6kg/1000m2での試験結果(茎葉部乾物重及び根部乾物重)を図1に表した。
更に、粒状肥料2、6、及び10のP25換算6kg/1000m2での試験結果(茎葉部乾物重及び根部乾物重)を図2に表した。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
試験例4(肥料効果試験2)
栽培培地(ヤシガラ(60%):砂(20%):パーライト(10%):鹿沼土(10%))10リットルに、粒状肥料1〜12、比較粒状肥料1〜15をP25換算で3kg/10a、6kg/1000m2又は12kg/1000m2となるように加えて混和し、ワグネルポット(1/200000m2、表面積500cm2、252φ×300mm)に入れた。ネギ(品種:鴨頭ネギ、中原採種場株式会社)の苗3株を定植し、根が活着するまで適宜水を与えた。活着後は液肥を潅水し、40日間生育させた。
対象として、市販のリン酸質肥料(粒状過リン酸石灰:P25換算17.5%)を用い、P25換算で同量を施肥し、同条件で生育させた。
【0057】
生育したネギの茎葉部と根部のそれぞれの乾物重を測定し、市販のリン酸質肥料での結果を100としたときの比率を求めた。
【0058】
結果を表7及び表8に示す。
【0059】
また、粒状肥料1と比較粒状肥料1、粒状肥料2と比較粒状肥料2、粒状肥料3と粒状肥料3、粒状肥料4と比較粒状肥料4のそれぞれの肥料効果を比較するため、P25換算6kg/10aでの試験結果(茎葉部乾物重及び根部乾物重)を図3に表した。
更に、粒状肥料2、6、及び10のP25換算6kg/10aでの試験結果(茎葉部乾物重及び根部乾物重)を図4に表した。
【0060】
【表7】

【0061】
【表8】

【0062】
試験例5(肥料効果試験3)
栽培培地(ヤシガラ(60%):砂(20%):パーライト(10%):鹿沼土(10%))10リットルに、粒状肥料1〜12、比較粒状肥料1〜15をP25換算で3kg/1000m2、6kg/10a又は12kg/1000m2となるように加えて混和し、ワグネルポット(1/200000m2、表面積500cm2、252φ×300mm)に入れた。トマト(品種:桃太郎ヨーク、タキイ種苗株式会社)の苗1株を定植し、根が活着するまで適宜水を与えた。活着後は液肥を潅水し、30日間生育させた。
対象として、市販のリン酸質肥料(粒状過リン酸石灰:P25換算17.5%)を用い、 P25換算で同量を施肥し、同条件で生育させた。
生育したトマトの茎葉部と根部のそれぞれの乾物重を測定し、市販のリン酸質肥料での結果を100としたときの比率を求めた。
【0063】
結果を表9及び表10に示す。
【0064】
また、粒状肥料1と比較粒状肥料1、粒状肥料2と比較粒状肥料2、粒状肥料3と粒状肥料3、粒状肥料4と比較粒状肥料4のそれぞれの肥料効果を比較するため、P25換算6kg/10aでの試験結果(茎葉部乾物重及び根部乾物重)を図5に表した。
更に、粒状肥料2、6、及び10のP25換算6kg/1000m2での試験結果(茎葉部乾物重及び根部乾物重)を図6に表した。
【0065】
【表9】

【0066】
【表10】

【0067】
試験例6(健全生育試験)
ベントグラスの種子1gを200ml容の三角フラスコに入れ、水を5ml加えて一様に分散させた後、高圧滅菌(120℃、20分)した。これに供試菌(Pythium irregulare)を接種し5日間培養(25℃)し、菌叢が種子全面を覆った後取り出し、滅菌乳鉢を用いて滅菌土(120℃、60分)50mlと混和して25℃の恒温器に1日保存して、接種源とした。作製した接種源を、その20倍量の培土と混和して汚染土とした。
【0068】
12cmシルバービニールポット(径12cm、深さ10cm)に培土(愛菜2号)250mlを詰め、その上に汚染土200mlを詰め(深さ6cmとなる)、軽く灌水した後、ネギ(鴨頭ネギ、中原採種場株式会社)の種子を27粒(0.054g)播種した。
【0069】
播種後、供試肥料(粒状肥料1〜12又は比較剤として粒状過リン酸石灰)をP25換算で6kg/1000m2又は12kg/1000m2となるように表面処理した処理区と、供試肥料を処理しない汚染土無処理区を用意し、播種21日後の各処理区又は汚染土無処理区の健全苗数を調査した。
【0070】
健全苗は、汚染土を含まない培土で且つ供試肥料を処理しない無病土無処理区での正常生育苗と同等の生育状態のものとし、下記式に従って健全苗率を算出した。
【0071】
【数1】

【0072】
結果を表11に示した。
【0073】
【表11】

【0074】
以上の結果から、本発明の粒状肥料組成物は、作物の成長に優れた効果を有していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の粒状肥料組成物は優れた肥効を有し、本粒状肥料組成物を施用することにより栽培された作物は生育が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、試験例3で得られた試験結果を示すグラフである。
【図2】図2は、試験例3で得られた試験結果を示すグラフである。
【図3】図3は、試験例4で得られた試験結果を示すグラフである。
【図4】図4は、試験例4で得られた試験結果を示すグラフである。
【図5】図5は、試験例5で得られた試験結果を示すグラフである。
【図6】図6は、試験例5で得られた試験結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)亜リン酸、亜リン酸水素カリウム及び亜リン酸カリウムの群から選ばれる少なくとも1種及び(成分B)亜リン酸のカルシウム塩を含有する粒状肥料組成物。
【請求項2】
成分A、成分B、結合剤及び固体担体を含有してなる請求項1に記載の粒状肥料組成物。
【請求項3】
成分Bが亜リン酸水素カルシウム又は亜リン酸カルシウムである請求項1又は2に記載の粒状肥料組成物。
【請求項4】
固体担体がベントナイト、クレー、硫酸カルシウム及び炭酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の粒状肥料組成物。
【請求項5】
成分Aと成分Bとの配合割合が、成分B 1重量部に対して、成分Aが0.1〜10重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の粒状肥料組成物。
【請求項6】
成分A、成分B、結合剤及び固体担体を混練し、押し出し造粒して得られる粒状肥料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の粒状肥料組成物を作物の定植前又は定植時に栽培土壌又は培地に施肥する、粒状肥料組成物の使用方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の粒状肥料組成物を作物生育過程で追肥として栽培土壌又は培地に施肥する、粒状肥料組成物の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−184874(P2009−184874A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26401(P2008−26401)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】