説明

粒状金属酸化物を用いるプリオン排除

ヒュームド金属酸化物および/または粒状二酸化珪素を生物学的物質に加えてヒュームド金属酸化物および/または粒状二酸化珪素並びに生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、そしてヒュームド金属酸化物および/または粒状二酸化珪素を混合物から分離して生ずる溶液を形成せしめることにより生物学的物質を含有する溶液を製造する方法であって、生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を生ずる溶液中で実質的に減少させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的物質からの病原性プリオン蛋白質の分離または排除に関する。生物学的物質を例えばヒュームド(fumed)シリカの如きヒュームド金属酸化物を包含する金属酸化物および/または粒状二酸化珪素に曝すことにより、病原性プリオンが生物学的物質から分離される。
【背景技術】
【0002】
病原性プリオン蛋白質(病原性プリオン)は、ヒト並びに他の哺乳動物種、特に羊、山羊、牛、ミンク、エルク、および鹿における致死的な神経変性疾病である伝搬性海綿形態脳障害(TSE)に関連する。疾病のヒト形態は、クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン−ストラウスラー−シェインカー(GSS)症候群、致死的な家族性不眠症(FFI)、およびクールーを包含する。これらの疾病の症状は、ミオクロヌス、運動失調、および進行性認知症を包含する。これらの疾病の病理学は、脳内のアミロイドプラークの生成を包含する。
【0003】
プリオン疾病の発生は感染性伝播並びに遺伝的および散在的原因に関連していた。例えば、ニューギニアのフォア(Fore)族を苦しめたクールーは儀式的人肉嗜食中の他の部族員の感染された脳組織の摂取により引き起こされた。非特許文献1。より最近では、英国における変種CJD(vCJD)の発生が病原性プリオンが感染した牛からの牛肉の消費の結果であることが前提にされている。非特許文献2、非特許文献3。同様に、医原性CJDは死体の下垂体から由来するヒト成長ホルモンの注射により引き起こされた。非特許文献4。上記のようなプリオンの感染作用の症例は、プリオン感染性が生物学的物質を通して伝播されうることを示唆している。
【0004】
プリオンは、核酸の同時伝播なしに、プリオン蛋白質である蛋白質の伝播により人間および他の哺乳動物に感染することが、信じられている。この感染因子は天然産出性の細胞プリオン蛋白質(PrP)の疾病を引き起こす変種であると仮定されており、その生理学的機能は知られていない。この理論では、プリオン蛋白質の変種形態(PrPSc)がプリオン蛋白質の正常形態(PrP)において構造変化を誘発し、それによりそれを病原性プリオン蛋白質(PrPSc)の疾病を引き起こす形態に転化させる。試料をプロテイナーゼK処理にかけそして試料をプロテイナーゼ耐性ポリペプチド(PrPRES)の存在に関して分析することにより、PrPScを検出することができる。バイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)に譲渡されたLee,et al.の特許文献1および非特許文献5を参照のこと。
【0005】
治療組成物はしばしば生物学的物質から誘導される。例えば、因子VIII、免疫グロブリン類、α−1プロテイナーゼ阻害剤、プラスミノーゲン/プラスミン、およびアルブミンの如き治療的に価値ある蛋白質がヒト血漿から単離される。例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)および肝炎Cウイルス(HCV)の如き他の感染因子が、生成物処理流から因子を効果的に除去する不活性化方法または工程を受けなかった血液または血液生成物の治療使用により伝播されることが知られている。他の生物学的物質を通るTSEの伝播の証明が、血液および血液由来生成物、組み換え生成物、並びに生物起源の他の生成物を通るTSEの可能な伝播より重要性を強める。
【0006】
しかしながら、血液発生性病原体、例えばHIVおよびHCV、からの感染の危険性を減少させる既知の方法は不活性化プリオンでは有効でない。さらに、強塩基を用いる処理および/またはオートクレーブ処理を包含するプリオンからの感染の危険性を減少させる
方法は、治療またはその他の有用な蛋白質の製造工程が蛋白質を変性させるため、そのような工程と共に使用するためには適していない。
【特許文献1】米国特許第6,437,102号明細書
【非特許文献1】Alpers,“Slow Transmissible Diseases of the Nervous System,”Vol.1,S.B.Pruisner and W.J.Hadlow,eds.(New York:Academic Press),pp.66−900(1979)
【非特許文献2】G.Chazot,et al.,Lancet 347:1181(1996)
【非特許文献3】R.G.Will,et al.,Lancet 347:921−25(1996)
【非特許文献4】Brown,et al.,Lancet 340:24−27(1992)
【非特許文献5】Lee,D.C.,et al.,“Monitoring plasma processing steps with a sensitive Western blot assay for the detection of the prion protein,”J Virol Methods,84(1):77−89(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、例えば血液血漿画分および組み換え製造された蛋白質の水溶液の如き生物学的物質からプリオンを分離する方法が要望されている。本発明は治療的に価値ある蛋白質を変性させずにそのような生物学的物質からプリオンを分離する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明は生物学的物質からのプリオンの分離または排除方法を提供する。そのような方法は生物学的物質から発生する生成物が元の物質から由来する病原性プリオン蛋白質で感染され始めたかもしれないヒトまたは動物によるその後の使用にとって確実に安全にするために有用であることは認識されよう。
【0009】
従って、本発明の一面は、金属酸化物を生物学的物質に加えて金属酸化物および生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、そして金属酸化物を混合物から分離して生ずる溶液を形成することにより生物学的物質を含有する溶液を製造する方法に関する。生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を、生ずる溶液中で実質的に減少させる。ある態様では、この方法は、病原性プリオン蛋白質の存在または量に関する生ずる溶液の評価を含んでなる。
【0010】
別の態様では、本発明は、約150m/g〜約300m/gの比表面積により特徴づけられるヒュームドシリカを生物学的物質に加えてヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、混合物を少なくともヒュームドシリカの粒子の実質的部分を保持するフィルターを含んでなる濾過システムを通過させることによりヒュームドシリカを混合物から分離して生ずる溶液を形成し、そして生ずる溶液を病原性プリオン蛋白質の存在または量に関して免疫検定を用いて評価することにより生物学的物質を含有する溶液を製造する方法に関する。生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を、生ずる溶液中で実質的に減少させる。
【0011】
別の面では、本発明は、二酸化珪素粒子を生物学的物質に加えて二酸化珪素粒子および生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、二酸化珪素粒子を混合物から分離して生ず
る溶液を形成し、そして生ずる溶液を病原性プリオン蛋白質の存在または量に関して評価することにより生物学的物質を含有する溶液を製造する方法に関する。生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を、生ずる溶液中で実質的に減少させる。
【0012】
本発明は、また、試料を流動性液体状態で金属酸化物を含んでなる固体基質と接触させ、試料中のプリオンが基質と結合するような時間にわたり試料を基質と接触させたままにし、そして試料を基質から分離することによりプリオンを試料から分離する方法に関する。
【0013】
本発明は、さらに、試料を粒状金属酸化物と接触させ、粒状金属酸化物を試料から分離し、そして粒状金属酸化物と会合したプリオン蛋白質をさらなる分析にかけることによりプリオン蛋白質を試料から分離しそしてそれらをさらなる分析のために濃縮する方法に関する。
図面の簡単な説明
図1は、パネルに隣接して示された濃度におけるCAB−O−SIL(ヒュームドシリカ)を用いる濾過後の病原性プリオン蛋白質(PrPSc)の特異的検出を示すウェスタンブロットを示す。使用された物質および方法は実施例1に示された通りである。
【0014】
図2は、種々の量の加えられたCAB−O−SILを用いるPrPScの排除または除去のグラフ表示である。グラフを作成するために使用されたデータは図1に示されたようにウェスタンブロット実験で示されている。
【0015】
図3は、プラスミノーゲンの精製中のCAB−O−SILの添加により得られたPrPSc排除を示すウェスタンブロットを示す。物質および方法に関する詳細に関しては実施例2を参照のこと。
【0016】
図4は、図3に示された結果を生ずる際にプラスミノーゲンの種々の精製工程の変動におけるCAB−O−SILの添加により得られたPrPSc排除を示すウェスタンブロットを示す。物質および方法に関する詳細に関しては実施例2を参照のこと。
【0017】
図5は、Al(OH)の添加により得られたPrPSc排除を示すウェスタンブロットを示す。レーンは、以下の通りにして加えられたAl(OH)(アンヒドロゲル(ANHYDROGEL)の%v/v)を有する試料の分析を表す:a、0;b、1;c、2;d、5;e、10;およびf、18。物質および方法に関する詳細に関しては実施例3を参照のこと。
詳細な記述
本発明は、可能性として溶液を汚染する病原性プリオン蛋白質を出発溶液に比べて実質的に減少させる溶液の製造方法に関する。本発明は、また、汚染された溶液からのプリオン蛋白質の回収を基にしたさらなる分析のためのそれらの製造も提供する。
【0018】
従って、一面では、本発明は、金属酸化物を生物学的物質に加えて金属酸化物および生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、そして金属酸化物を混合物から分離して生ずる溶液を形成することにより生物学的物質を含有する溶液を製造する方法に関する。ある態様では、この方法は、病原性プリオン蛋白質の存在または量に関する生ずる溶液の評価を含んでなる。
【0019】
特定の態様では、生物学的物質は血液−由来生成物、組織−由来生成物、および組み換え製造された生成物でありうる。ある態様では、生物学的物質は血液−由来生成物である。血液−由来生成物はヒト起源でありうる。血液−由来生成物は免疫グロブリン類、血液凝固因子、プラスミン、プラスミノーゲン、α−1プロテイナーゼ阻害剤、およびアルブ
ミンでありうる。
【0020】
特定の態様では、金属酸化物はヒュームドシリカまたはヒュームドアルミナでありうる。ヒュームド金属酸化物はヒュームドシリカでありうる。ヒュームドシリカは約130m/g〜約380m/gの比表面積により特徴づけられうる。特定の態様では、ヒュームドシリカは約150m/g〜約300m/gの比表面積により特徴づけられうる。ヒュームドシリカは200m/gの比表面積によっても特徴づけられうる。
【0021】
ある態様では、金属酸化物は混合物から濾過により分離される。濾過は、約0.1mmより大きいものから約5mmまでの粒子を保持する濾過システム中の混合物の通過を包含しうる。濾過はまた、約0.8μmより大きい粒子を保持する濾過システム中の混合物の通過も包含しうる。
【0022】
病原性プリオン蛋白質の存在または量に関する生ずる溶液の評価は、病原性プリオン蛋白質に関する動物生物学的検定または免疫検定を用いる感染性に関する試料の評価を包含しうる。免疫検定はウェスタンブロットまたはエリザ(ELISA)検定でありうる。
【0023】
ある態様では、金属酸化物は水酸化アルミニウムでありうる。水酸化アルミニウムは、約2重量%のAlを含んでなるゲル状として、約1〜約10容量%の、約1〜約5容量%の、または約3容量%の濃度で存在しうる。
【0024】
別の態様では、金属酸化物はヒュームドアルミナでありうる。ヒュームドアルミナは約0.1〜約1.0重量%の量で存在しうる。ヒュームドアルミナは約0.25〜約0.75重量%の量でも存在しうる。ヒュームドアルミナは約0.5重量%の量でも存在しうる。
【0025】
さらに別の態様では、本発明は、約150m/g〜約300m/gの比表面積により特徴づけられるヒュームドシリカを生物学的物質に加えてヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、混合物をヒュームドシリカの粒子の少なくとも実質的部分を保持するフィルターを含んでなる濾過システム中に通過させることによりヒュームドシリカを混合物から分離して生ずる溶液を形成し、そして生ずる溶液を病原性プリオン蛋白質の存在または量に関して免疫検定を用いて評価することにより生物学的物質を含有する溶液を製造する方法に関する。
【0026】
ある態様では、ヒュームドシリカは、約200m/gの比表面積、約50g/lのタップ密度(tap density)、および約0.2μm〜約0.3μmの平均集合体粒子長さにより特徴づけられる。ヒュームドシリカはヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の約0.1%〜約1.0%(重量/重量)の量で加えられる。ヒュームドシリカはヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の約0.2%〜約0.8%(重量/重量)の量で加えることができる。ヒュームドシリカはヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の少なくとも約0.25%(重量/重量)の量で加えることができる。特別な態様では、ヒュームドシリカはヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の少なくとも約0.5%(重量/重量)の量で加えることができる。
【0027】
別の面では、本発明は、二酸化珪素粒子を生物学的物質に加えて二酸化珪素粒子および生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、二酸化珪素粒子を混合物から分離して生ずる溶液を形成し、そして生ずる溶液を病原性プリオン蛋白質の存在または量に関して評価することにより生物学的物質を含有する溶液を製造する方法に関する。事によると生物学的物質を汚染する病原性プリオン蛋白質を、生ずる溶液中で実質的に減少させる。
【0028】
ある態様では、混合物からの二酸化珪素粒子の分離は遠心または濾過により行われる。
【0029】
別の面では、本発明は、試料を流動性液体状態で金属酸化物を含んでなる固体基質と接触させ、試料中のプリオンが基質と結合するような時間にわたり試料を基質と接触させたままにし、そして試料を基質から分離することによりプリオンを試料から分離する方法に関する。金属酸化物は二酸化珪素または水酸化アルミニウムでありうる。金属酸化物はヒュームドシリカでありうる。
【0030】
別の面では、本発明は、試料を粒状金属酸化物と接触させ、粒状金属酸化物を試料から分離し、粒状金属酸化物と会合したプリオン蛋白質をさらなる分析にかけることによりプリオン蛋白質を試料から分離しそしてそれらをさらなる分析のために濃縮する方法に関する。プリオン蛋白質のさらなる分析は、免疫検定、動物生物学的検定、分光分析、またはクロマトグラフィー分析を包含しうる。
【0031】
本発明は、生物学的物質からのプリオンの分離または排除方法を提供する。生物学的物質は、生物学的に由来する流体、例えば血液血漿画分、生物学的物質、例えば組織の試料、および組み換え製造された生成物、例えば組み換え蛋白質の水溶液を包含する。一般的に、この方法は、粒状二酸化珪素または金属酸化物を生物学的物質に加えて粒状二酸化珪素または金属酸化物および生物学的物質の混合物を得ることによる生物学的物質からのプリオンの分離を提供する。粒状二酸化珪素または金属酸化物を次に混合物から、例えば濾過または遠心により分離して、元の生物学的物質を汚染したかもしれない病原性プリオン蛋白質における実質的な減少により特徴づけられる精製された生物学的物質を得る。
【0032】
そのような方法は、生物学的物質から発生する生成物が元の物質から生ずる病原性プリオン蛋白質で感染し始めたかもしれないヒトまたは動物によるその後の使用にとって安全を確保するために有用であることは認識されよう。従って、本発明の実施法は、病原性プリオン蛋白質を実際に含んでなっていてもまたは含んでなっていなくてもよい生物学的物質に関して開示された方法を、生物学的物質を可能性として汚染させる処理用の品質確保方法として包含する。
【0033】
ここで使用される際には、下記の用語は断らない限り指示された意味を有する。
【0034】
「動物生物学的検定」は、病原性プリオン蛋白質により引き起こされるかまたは関連する疾病に敏感な生存有機体中への物質の試験試料の導入に関連する物質中の病原性プリオンの検定と、その後の関連疾病症状の進行証拠に関する有機体の監視を意味する。動物生物学的検定は、Brown,P.,et al.,“The distribution
of infectivity in blood components and plasma derivatives in experimental models of transmissible spongiform encephalopathy,”Transfusion,38(9):810−6(1998)に記載されている齧歯動物感染性検定を包含するが、それに限定されるものではない。
【0035】
「血液−由来生成物」は、全血または分画血液起源、一般的には哺乳動物から製造されるいずれかの生成物を意味する。
【0036】
「生物学的物質」は、溶液状で処理できる生存有機体から発生するいずれかの物質を意味する。本発明の方法にかけることができる生物学的物質はいずれの生物学的物質も包含しうるが、一般的にはその起源、処理履歴または他の露呈の理由のために可能性として病原性プリオン蛋白質で汚染される物質であろう。
【0037】
「金属酸化物」は、重量と比べて大きい表面積を有する小粒子形態の金属酸化物を意味する。水素および酸素または空気の火炎中への金属塩化物の注入により一般的に製造されるヒュームド金属酸化物(「ヒュームド」または発熱性(pyrogenic)金属酸化物)が包含される。一般的に、そのような物質は非晶質であるが、種々の結晶性相の混合物を含んでなりうる。粒状二酸化珪素および水酸化アルミニウムが包含される。そのような粒子は主要粒子の三次元集合体を形成しうる。ヒュームド金属酸化物はヒュームドシリカおよびヒュームドアルミナを包含する。
【0038】
「ヒュームドシリカ」は、発熱性の非晶質コロイド状二酸化珪素を意味する。
【0039】
「免疫検定」は、抗体およびプリオン蛋白質の間の特定なそして検出可能な相互作用に基づく検定を意味する。免疫検定自体がプリオン蛋白質の非病原性および病原性イソ形態(isoforms)に関して非特異的である場合には、その使用を例えば非病原性イソ形態の蛋白分解消化によりイソ形態間を実質的に区別する工程と組み合わせることができる。有用な免疫検定の例は、ウェスタンブロット、エリザ、およびドットブロット検定を包含する。
【0040】
「病原性プリオン」または「PrPSc」は、ヒトの伝搬性海綿形態脳炎(例えば、変種クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、クールー、ゲルストマン−ストラウスラー−シェインカー病(GSS)、および致死的な家族性不眠症(FFI)、牛の海綿形態脳炎(「狂牛」病)の最近同定された形態、スクレーピー(羊および山羊を苦しめる)、慢性消耗病(鹿)、並びにプリオン蛋白質の病原性形態(スクレーピーイソ形態−PrPSc)への露呈により広がる他の部分的に同定されたおよびまだ同定されていない疾病を包含するヒトまたは他の哺乳動物を苦しめる種々の伝搬性神経変性疾病のいずれかに関連するいずれかの蛋白質感染因子を意味する(Prusiner,S.B.,“Molecular biology of prion disease,”Science 252:1515−1522(1991)参照)。
【0041】
「組み換え製造された生成物」は、人造核酸構成体(例えば天然有機体において通常は製造されないかまたは特定量で製造されない蛋白質生成物を製造するために変更されたトランスジェニック有機体を発生するために使用される構成体)を用いて製造されるいずれかの生成物を意味する。そのような生成物は、組み換え製造方法でまたはその他の方法で使用される動物に対するいずれかの露呈によって可能性として病原性プリオン蛋白質で汚染されうる。「組み換え体」は元来は組み換え方法による製造を意味すること、並びに組み換え生成物のその後の製造をそれ自体でまたは自然に技術的には非組み換え体(例えば、組み換え技術により元来製造されそしてその後に組み換え生成物の製造のために伝播されるトランスジェニック動物)である方法で実施しうることは認識されよう。
【0042】
「二酸化珪素」は、微細粒子寸法の高表面積の二酸化珪素粒子または粒子の集合体を意味する。
【0043】
「比表面積」は、例えばB.E.T.(ブルナウアー、エメット、およびテラー)方法により測定されるような粒状固体の単位重量当たりの表面積を意味する。
【0044】
「組織−由来生成物」は、生存有機体の組織から製造されるいずれかの生成物を意味し、治療的または栄養的使用のために製造される生成物を包含し、その処理は、少なくとも一面では、製造段階または処理段階である金属酸化物または粒状二酸化珪素または水酸化アルミニウムとの混合物を形成可能な溶液の製造を伴う。
【0045】
本発明の方法における使用のためのヒュームド金属酸化物はヒュームドシリカまたはヒュームドアルミナでありうる。本発明の方法の少なくとも一部の態様に従い使用できる粒状二酸化珪素は非常に微細な主要粒子寸法により特徴づけられる。平均集合体粒子寸法は明確に且ついつも測定することはさらに困難でありうる。本発明のある態様では、使用される二酸化珪素はコロイド状二酸化珪素である。コロイド状二酸化珪素は、珪素化合物、例えば四塩化珪素、の蒸気相加水分解(例えば、1110℃における)により製造されるミクロンより小さいヒュームドシリカである。そのような生成物は、カボット・コーポレーション(Cabot Corporation)、ツスコラ、イリノイ州(商品名CAB−O−SIL)およびデグッサ・インク(Degussa,Inc.)、ピスカタウェイ、ニュージャージー州(商品名AEROSIL)を包含する多くの製造元から市販されている。
【0046】
コロイド状二酸化珪素は、とりわけ、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、弱無水珪酸、無水珪酸、およびヒュームド二酸化珪素としても知られている。製造方法を変えることにより、種々の商業用等級のコロイド状二酸化珪素が製造される。そのような改変は典型的には、シリカ含有量、比重、屈折率、色または非晶質形態に影響を与えない。しかしながら、これらの改変はコロイド状二酸化珪素生成物の粒子寸法、表面積およびかさ密度を変化させうる。
【0047】
本発明の方法の特定態様で使用される二酸化珪素の1種の表面積は約50m/g〜約500m/gの範囲内である。本発明で使用される二酸化珪素の好ましい種類の平均主要粒子直径は約5nm〜約50nmの範囲内である。しかしながら、商業用コロイド状二酸化珪素生成物では、これらの粒子は種々の程度まで集塊化または集合されている。平均集合体粒子寸法(長さ)は約100nm(0.1μm)〜約500nm(0.5μm)でありうる。本発明で使用される二酸化珪素の1種のタップ密度は約20g/l〜約100g/lの範囲内である。
【0048】
市販のコロイド状二酸化珪素生成物は、例えば、約50m/g〜約400m/gの範囲内のBET表面積を有することができる。市販の粒子寸法は約7nmの名目粒子直径〜約40nmの平均主要粒子寸法の範囲内でありうる。これらの市販生成物は二酸化珪素の有用な種類の許容可能な性質の例示目的のためだけに記載されており、そしてこの記述は本発明の範囲を何らかの方法で限定しようとするものではない。
【0049】
本発明の方法は、プリオンを血液血漿画分から分離するために使用できる。プリオンを血液血漿画分から分離するために使用する場合には、本発明の方法は、血液血漿画分からのプリオンの少なくとも約2〜少なくとも約3logの排除をもたらしうる。
【0050】
本発明の方法は、プリオンを組み換え製造された生成物の水溶液から分離するために使用できる。組み換え製造された生成物は組み換え製造された蛋白質でありうる。
【0051】
本発明の方法の特定態様では、粒状二酸化珪素を血液血漿画分に加えて混合物を生成することにより、可能性として血液血漿画分を汚染する病原性プリオン蛋白質を実質的に減少させることができる。特定の態様では、粒状二酸化珪素は混合物の約0.5%(重量/重量)まで加えられる。粒状二酸化珪素を次にこの混合物から除去し、そして生ずる溶液は出発物質と比べて実質的に減少したプリオン汚染を有する。ある態様では、二酸化珪素を濾過により除去することができる。
【0052】
本発明の1つの態様に従い得られる結果は、清澄化されたスクレーピー脳ホモジェネート(SBH)でスパイクされた牛血清アルブミン(BSA)に対するCAB−O−SIL
M−5Pの添加によるPrPScの分配を測定するためのウェスタンブロット検定を使
用することにより、評価することができる。本発明によると、0.5%のCAB−O−SILを添加し、引き続き0.8μm濾過を用いるCAB−O−SILの除去により、検出限度である約4.5logまでの排除が得られうる(約0.5logより多くない排除は0.8μm濾過自体に起因する)。実施例1並びに図1および2を参照のこと。
【0053】
さらに、プラスミノーゲンの精製工程中のCAB−O−SILヒュームドシリカ(約0.25重量/重量%)の添加が病原性プリオン蛋白質の少なくともさらに約2−3logの排除をもたらす。実施例2はこの関係においてプリオン排除を評価するために行われた実験を記載する一方で、図3はこの結果のウェスタンブロット分析を示す。データは、ヒュームドシリカを添加せずに処理された試料と比べて3logの改良された排除を示す。
【0054】
本発明の方法に従うプリオン排除を受けた試料を金属酸化物に対して液体試料中の懸濁液として曝すことができること、或いは液体の流動性試料を金属酸化物に固体基質の形態で曝すことができることは認識されよう。排除された試料は、種々の濾過プロトコールを用いる濾液状、遠心を用いる上澄み液状、または固体基質からの溶離液状を包含する種々の手段により回収することができる。
【0055】
以下の実施例は本発明の特定態様を説明するものであるが、ここで請求された本発明の範囲の限定であるとみなすべきでない。
【実施例】
【0056】
実施例1 種々の濃度のCAB−O−SIL M−5Pを用いるPrPSc排除
牛血清アルブミン(BSA)を燐酸塩緩衝食塩水(PBS)中に溶解させて1mg/mlのBSAの溶液を作成した。BSA溶液をスクレーピー脳ホモジェネート(SBH、263Kハムスター−に適応させた因子を感染させたハムスター脳を用いて製造された)で「スパイク」し、使用前に10,000gにおける10分間にわたる遠心により高度に清澄化して約1%の最終濃度にした。CAB−O−SIL M−5Pシリカ(CAB−O−SIL)を種々の濃度で加え、引き続き攪拌しそして0.8μmフィルターを用いて濾過した(濾過だけはPrPScにおける約0.5log減少を引き起こすと推定された)。CAB−O−SILはフィルターにより実質的に保持された。
【0057】
投入試料、0%、0.1%、0.25%および0.5%CAB−O−SIL濾液のウェスタンブロット分析が図1に示されている。図2はPrPSc排除に対するCAB−O−SILの濃度増加の影響のグラフ表示を示す。(物質および方法の詳細に関しては、バイエル・コーポレーション(Bayer Corporation)に譲渡されたLee,et al.に対する米国特許第6,437,102号明細書、およびプリオン蛋白質の検出に関する敏感性ウェスタンブロット分析に関する詳細事項を与えるLee,D.C.,et al.,“Monitoring plasma processing steps with a sensitive Western blot assay for the detection of the prion protein,” J Virol Methods,84(1):77−89(2000)、並びに人間のプリオンの分配がハムスターのスクレーピーモデルで観察されたものと同様であることを示すStenland,C.J.,et al.,“Partitioning of human and sheep forms of the pathogenic prion protein during the purification of therapeutic proteins from human plasma,” Transfusion,42(11):1497−500(Nov 2002)、および開示された方法により検出されたプリオンが動物感染度に関連することを示すLee,D.C.,et al.,“A direct relationship between the partitioning of the pathogenic prion protein and transmissible spongiform encephalopathy infectivity during the purification of plasma proteins,” Transfusion,41(4):449−55(2001)を参照すべきであり、これらの開示は引用することにより全てが本発明の内容となる)。
【0058】
高度に精製された膜と会合していないスクレーピー脳スパイク(“Bolton preparation,”Bolton et al.,Arch Biochem Biophys,258:579−90(1987)参照)が約0.5%の最終濃度で使用されたこと以外は、上記の実験を繰り返し、図1に示された結果を得た。投入試料、0%CAB−O−SIL、0.1%、0.25%および0.5%のウェスタン分析は実質的に同じ結果を与え、0.5%のCAB−O−SILの使用から生じた検出限度までの排除があった。しかしながら、清澄化されたスクレーピー脳ホモジェネートの0.8μm濾過による(得られた合計5logの中の)0.5log排除とは対照的に、ボルトン調合物の2.5log排除は濾過だけによるものであったことが注目された。
実施例2 プラスミノーゲン精製方法におけるCAB−O−SILを用いるPrPSc排除
本発明の譲渡人に所有権のあるプラスミン/プラスミノーゲン精製方法の詳細は「可逆的に不活性酸性化されたプラスミン組成物の製造方法」の名称の現在出願継続中の米国特許出願(引用することにより本発明の内容となるDadd,et al.の米国特許出願公開番号US20020192794A1)に開示されている。ヒュームドシリカの使用を含む工程段階用の出発物質は、ここでカプリレート・ケーキ(Caprylate Cake)I(CCI)と称するカプリレート沈殿であるコーン(Cohn)画分IIおよびIIIからの免疫グロブリンの精製中に生成するペーストである。
【0059】
CCIを3時間にわたり200mMのL−リシンおよび0.1Mのトリス−HCl緩衝液で抽出した。2%のヒフロ・スーパーセル(HYFLO SUPERCEL)(フィルター助剤−セライト・コーポレーション(Celite Corporation)、ロンポク、カリフォルニア州)を加え、そして懸濁液をフィルター布を通して濾過して消費されたフィルター助剤を除去した。布濾過後に且つ3%のポリエチレングリコール3350(PEG)の添加前に、スクレーピー脳ホモジェネートスパイクを加えた。生じたスパイクされた濾液を3つのアリコートに分割した。一つの部分はCAB−O−SILを受容せず、第二のものは0.25%を受容し、そして第三のアリコートは0.5%(w/w)のCAB−O−SILを受容した。さらに3時間の混合後に、2%(w/w)のフィルター助剤を加え、そして物質をクノ(CUNO)SP−90フィルターパッドを通して濾過した。生じた濾液をPrP含有量に関してウェスタンブロットにより分析した。
【0060】
結果は図3に示されている。結果は0.25%および0.5%CAB−O−SIL濾液中に存在する0.5〜1.0logの信号を示すようである。対照試験を用いるその後の検討で、信号は二次抗体との非特異的IgG反応でありそしてPrP関連性がないことが示された。CAB−O−SILはPrPをCCI抽出物質から除去したが、プラスミノーゲン濃度を包含する匹敵する蛋白質水準が3種全てのCAB−O−SIL添加水準に関して観察された。それ故、CAB−O−SILは所望する蛋白質成分に対する最少の影響だけでPrPを除去した。
【0061】
他の実験では、200mMのL−リシン、4%のPEG、および0.25%のCAB−O−SILを含有する50mMの二塩基性燐酸ナトリウムを用いて、CCIを抽出した。10%の粗製脳ホモジェネートを抽出開始時に加えそして4時間にわたり混合した。フィルターを加えそして溶液をクノSP90を通して濾過した。
【0062】
信号が濾液およびすすぎ液中で出現する(図4)。上記のように、対照試験がこれらの信号がPrP特異的でないことを証明した。PrPはフィルター助剤中およびフィルターパッド上に保持された。
実施例3 プリオン排除用のAl(OH)
実施例1の通りにして、0.1%のBSA/TBSをSBHでスパイクして1%または0.1%の最終濃度にした。水酸化アルミニウム(Al、ゲルまたはスラリー状の1.9−2.2%(w/w)−ここでAl(OH)または水酸化アルミニウムとしても表示される)(アルヒドロゲル(ALHYDROGEL)、スーパーフォス・バイオセクター(Superfos Biosector)A/S、デンマーク)をプリオン排除に有用な因子として評価するために、これらの試料を使用した。以下の容量/容量百分率は加えられたアルヒドロゲル生成物の割合をさす。
【0063】
種々の量のAl(OH)(表1に示されているような0〜18%(v/v)の最終濃度)をSBHを含有する試料に加え、そして試料を実施例1のようにして混合した。試料を次に5100gにおいて5分間にわたり遠心しそして上澄み液およびペレットをPrPScに関して検定した。図5において、レーンは表1の通りにして加えられたAl(OH)(%v/v)を有する試料の分析を表す。
【0064】
【表1】

【0065】
1%SBHに関すると、4.5%(v/v)より多い量で処置された場合には水酸化アルミニウムに関して排除は4logより大きかった。0.1%SBHに関すると、1%(v/v)より多い水酸化アルミニウムに関して排除は3logより大きかった。
実施例4 プラスミノーゲン抽出方法の評価
本発明の特定の態様に従うPrPSc排除を評価するためのモデルシステムを確認するために、カプリレート・ケーキI(CCI)抽出(プラスミノーゲン精製工程に関して以上で論じられている)用の規模縮小モデルがPEG沈殿/深度濾過段階(Precipitation/Depth Filtration Steps)の排除効果に関して同定された。この試験の目的は、標準条件下でのプラスミノーゲン方法におけるCCI抽出およびPEG沈殿/深度濾過段階のベンチ−スケールモデルを設定することであった。設定されたら、工程段階を越えるPrPSc排除を評価するためにこのモデルシステムを使用した。
【0066】
簡単に述べると、CCIを0.1Mのトリズマ(TRIZMA)ベース抽出緩衝液(pH10.5)の中に4℃において2−3時間にわたり混合しながら再懸濁させた。抽出後に、溶液のpHを7.5に調節し、そして抽出の温度が20℃に上昇した。7.5のpHを保ちながら、L−リシンを抽出物に100mMの最終濃度まで加えた。ポリエチレングリコール(PEG)を3%(w/w)の最終濃度まで加え、引き続きヒフロ・スーパーセ
ル・フィルター助剤を4%(w/w)の最終濃度まで加えた。抽出物を次にクノSP−30フィルターパッドを通して濾過しそして濾液を集めた。試料が最初のCCI抽出物、濾液、および抽出物から集められた。合計蛋白質をA280により測定しそしてプラスミノーゲン回収率を免疫比濁法により測定した。回収率分析は、この段階を越えての非常に少量の蛋白質損失を示した。
【0067】
次に、CCIおよびPEG沈殿/深層濾過段階中のPrPSc排除を評価した。この実験の目的は、CCIの抽出およびPEG沈殿/深層濾過段階中に除去されたPrPScの量を測定することであった。
【0068】
CCIの抽出中に1mlの10%粗製SBHを100mlの抽出物に加えて0.1%の最終SBH濃度を生じたこと以外は、プロトコールは上記と同じであった。クノSP−30フィルターにより保持されたペーストをTBS中に元の量となるまで再懸濁させた。プローブ(Prove)(濾過前のスパイクされた抽出物)、濾液およびペースト再懸濁液からの試料をウェスタン分析によりプラスミノーゲンおよびPrPScの両者に関して分析した。
【0069】
上記の段階(水酸化アルミニウムまたはCAB−O−SILなし)は1logのPrPSc排除を生じた。
実施例5 プラスミノーゲン回収率およびPrPSc排除に対するAl(OH)の影響
PEG沈殿/深度濾過中のプラスミノーゲン回収率およびPrPSc排除に対する10%(v/v)のAl(OH)(アルヒドロゲル、スーパーフォス・バイオセクターA/S、デンマーク)の影響を測定した。3%のPEGの添加後に10%のAl(OH)(v/v)を加えたこと以外は、プロトコールは実施例4において以上で記載された通りであった。クノSP−30フィルターにより保持されたペーストをTBS中に再懸濁させて元の容量とした。プローブ(濾過前のスパイクされた抽出物)、濾液およびペースト再懸濁液からの試料をウェスタン分析によりプラスミノーゲンおよびPrPScの両者に関して分析した。
【0070】
以上で示された濃度でのAl(OH)の添加が2logのPrPSc排除における増加(ありの場合の約3log対なしの場合の1log)を生じた。
実施例6 プラスミノーゲン精製工程におけるAl(OH)を用いるPrPSc排除
カプリレート・ケーキI(CCI)の処理中のPrPSc排除に対する3%のAl(OH)の影響を測定した。
【0071】
上記の通りにしてCCIを抽出しそして処理した。1つの実験では、布(多孔性ポリプロピレン)濾過前にSBHスパイクおよび3%のAl(OH)(v/v)の両者を加えた。試料を投入試料(プローブ)および布濾液から除去した。PrPScの存在を各試料においてウェスタン分析により測定した。
【0072】
3%のAl(OH)(v/v)の含有が2logのPrPScの排除を生じた。Al(OH)なしでは、排除は0logであった。
実施例7 ヒュームドシリカおよびヒュームドアルミナの比較
前の実験で使用されたAl(OH)スラリーとは対照的に、ヒュームドアルミナ(スペクトラル(SPECTRAL)、カボット・コーポレーション(Cabot Corporation)、ツスコラ、イリノイ州)もヒュームドシリカ(CAB−O−SIL)に対するその影響を比較する実験において使用した。
【0073】
50ミリリットルのTBS中0.1%牛血清アルブミン(BSA)を0.5mlの清澄化されたハムスターのスクレーピー脳ホモジェネートまたは高度に精製された(ボルトン
)スパイクを用いてスパイクした。スパイク後に、最初の10ml試料(プローブ)を物質の最初の力価を測定するための分析用に取り出した。次に、約0.05gのヒュームドアルミナまたはヒュームドシリカのいずれかを15ml円錐管に加えた。これらの管の各々に、10mlのスパイクされた物質を加え、そして管を15−20回にわたり逆転させた。
【0074】
プランジャーを3個の10ml注射器から除去しそしてそれらを0.8μmの注射器フィルターに装着することにより濾過装置を製造した。スパイキングタイプの各々に関して3回の濾過を行った。第一回の濾過は存在する金属酸化物を有しておらず、第二回の濾過はヒュームドアルミナを有しており、そして第三回の濾過はヒュームドシリカを有していた。プローブおよび生じた濾液をウェスタンブロットにより分析しそして下記の信号を見出した。
【0075】
【表2】

【0076】
両方のスパイキング条件下で両方の金属酸化物に関して検出限度までの排除が観察された。
【0077】
本発明の主題をこれにより開示してきたが、本発明の多くの改変、置換、および変更がそれに照らして可能であることは明らかであるはずである。本発明を具体的な記載以外に実施しうることを理解すべきである。そのような改変、置換、および変更は本出願の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1はパネルに隣接して示された濃度におけるCAB−O−SIL(ヒュームドシリカ)を用いる濾過後の病原性プリオン蛋白質(PrPSc)の特異的検出を示すウェスタンブロットを示す。
【図2】図2は種々の量の加えられたCAB−O−SILを用いるPrPScの排除または除去のグラフ表示である。
【図3】図3はプラスミノーゲンの精製中のCAB−O−SILの添加により得られたPrPSc排除を示すウェスタンブロットを示す。
【図4】図4は図3に示された結果を生ずる際にプラスミノーゲンの種々の精製工程の変動におけるCAB−O−SILの添加により得られたPrPSc排除を示すウェスタンブロットを示す。
【図5】図5はAl(OH)の添加により得られたPrPSc排除を示すウェスタンブロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)金属酸化物を生物学的物質に加えて金属酸化物および生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、そして
b)金属酸化物を混合物から分離して生ずる溶液を形成せしめる
ことを含んでなる生物学的物質を含有する溶液を製造する方法であって、生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を生ずる溶液中で実質的に減少させる方法。
【請求項2】
a)金属酸化物を生物学的物質に加えて金属酸化物および生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、
b)金属酸化物を混合物から分離して生ずる溶液を形成せしめ、そして
c)生ずる溶液を病原性プリオン蛋白質の存在または量に関して評価する
ことを含んでなる生物学的物質を含有する溶液を製造する方法であって、生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を生ずる溶液中で実質的に減少させる方法。
【請求項3】
生物学的物質が血液−由来生成物、組織−由来生成物、および組み換え的に製造された生成物よりなる群から選択される請求項2の方法。
【請求項4】
生物学的物質が血液−由来生成物である請求項2の方法。
【請求項5】
血液−由来生成物がヒト起源のものである請求項4の方法。
【請求項6】
血液−由来生成物が免疫グロブリン類、血液凝固因子、プラスミン、プラスミノーゲン、α−1プロテイナーゼ阻害剤、およびアルブミンよりなる群から選択される請求項4の方法。
【請求項7】
金属酸化物がヒュームド(fumed)シリカおよびヒュームドアルミナよりなる群から選択される、請求項2の方法。
【請求項8】
金属酸化物がヒュームドシリカである請求項2の方法。
【請求項9】
ヒュームドシリカが約130m/g〜約380m/gの比表面積により特徴づけられる請求項8の方法。
【請求項10】
ヒュームドシリカが約150m/g〜約300m/gの比表面積により特徴づけられる請求項8の方法。
【請求項11】
ヒュームドシリカが約200m/gの比表面積により特徴づけられる請求項8の方法。
【請求項12】
混合物からの金属酸化物の分離が濾過を含んでなる請求項2の方法。
【請求項13】
濾過が約0.1μmより大きいものから約5μmまでの粒子を保持する濾過システムの混合物の通過を含んでなる請求項12の方法。
【請求項14】
濾過が約0.8μmより大きい粒子を保持する濾過システムの混合物の通過を含んでなる請求項12の方法。
【請求項15】
病原性プリオン蛋白質の存在または量に関する生ずる溶液の評価が病原性プリオン蛋白質に関する動物生物学的検定または免疫検定よりなる群から選択される検定を用いる感染
性に関する試料の評価を含んでなる請求項2の方法。
【請求項16】
病原性プリオン蛋白質の存在または量に関する生ずる溶液の評価が免疫検定を用いる病原性プリオン蛋白質の存在に関する試料の評価を含んでなる請求項2の方法。
【請求項17】
免疫検定がウェスタンブロットおよびエリザ(ELISA)検定よりなる群から選択される請求項16の方法。
【請求項18】
免疫検定がウェスタンブロットである請求項16の方法。
【請求項19】
金属酸化物が水酸化アルミニウムである請求項2の方法。
【請求項20】
水酸化アルミニウムが約2重量%のAlを含んでなるゲルとして約1〜約10容量%の濃度で存在する請求項19の方法。
【請求項21】
水酸化アルミニウムが約2重量%のAlを含んでなるゲルとして約1〜約5容量%の濃度で存在する請求項19の方法。
【請求項22】
水酸化アルミニウムが約2重量%のAlを含んでなるゲルとして約3容量%の濃度で存在する請求項19の方法。
【請求項23】
a)約150m/g〜約300m/gの比表面積により特徴づけられるヒュームドシリカを生物学的物質に加えてヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、
b)混合物をヒュームドシリカの粒子の少なくとも実質的部分を保持するフィルターを含んでなる濾過システムを通過させることによりヒュームドシリカを混合物から分離して生ずる溶液を形成せしめ、そして
c)生ずる溶液を病原性プリオン蛋白質の存在または量に関して免疫検定を用いて評価する
ことを含んでなる生物学的物質を含有する溶液を製造する方法であって、生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を生ずる溶液中で実質的に減少させる方法。
【請求項24】
ヒュームドシリカが約200m/gの比表面積、約50g/lのタップ密度(tap
density)、および約0.2μm〜約0.3μmの平均集合体粒子長さにより特徴づけられる請求項23の方法。
【請求項25】
ヒュームドシリカがヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の約0.1%〜約1.0%(重量/重量)の量で加えられる請求項23の方法。
【請求項26】
ヒュームドシリカがヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の約0.2%〜約0.8%(重量/重量)の量で加えられる請求項23の方法。
【請求項27】
ヒュームドシリカがヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の少なくとも約0.25%(重量/重量)の量で加えられる請求項23の方法。
【請求項28】
ヒュームドシリカがヒュームドシリカおよび生物学的物質の混合物を含んでなる溶液の少なくとも約0.5%(重量/重量)の量で加えられる請求項23の方法。
【請求項29】
a)二酸化珪素粒子を生物学的物質に加えて二酸化珪素粒子および生物学的物質の混合物を含んでなる溶液を得、
b)二酸化珪素粒子を混合物から分離して生ずる溶液を形成せしめ、そして
c)生ずる溶液を病原性プリオン蛋白質の存在または量に関して評価する
ことを含んでなる生物学的物質を含有する溶液を製造する方法であって、生物学的物質を汚染する可能性のある病原性プリオン蛋白質を生ずる溶液中で実質的に減少させる方法。
【請求項30】
混合物からの二酸化珪素粒子の分離が遠心または濾過を含んでなる請求項29の方法。
【請求項31】
混合物からの二酸化珪素粒子の分離が遠心を含んでなる請求項29の方法。
【請求項32】
a)試料を流動性液体状態で金属酸化物を含んでなる固体基質と接触させ、
b)試料中のプリオンが基質と結合するような時間にわたり試料を基質と接触させたままにし、そして
c)試料を基質から分離する
ことを含んでなるプリオンを試料から分離する方法。
【請求項33】
金属酸化物が二酸化珪素または水酸化アルミニウムである請求項32の方法。
【請求項34】
金属酸化物がヒュームドシリカである請求項32の方法。
【請求項35】
a)試料を粒状金属酸化物と接触させ、
b)粒状金属酸化物を試料から分離し、
c)粒状金属酸化物と会合したプリオン蛋白質をさらなる分析にかける
ことを含んでなる、プリオン蛋白質を試料から分離しそしてそれらをさらなる分析のために濃縮する方法。
【請求項36】
プリオン蛋白質のさらなる分析が免疫検定、動物生物学的検定、分光分析、およびクロマトグラフィー分析よりなる群から選択される少なくとも1種の分析技術を含んでなる請求項35の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−527405(P2007−527405A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526221(P2006−526221)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/029024
【国際公開番号】WO2005/026197
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】