説明

粗い表面を保護する半透明フィルム

例えば、ドア、壁などのような建築構造物上にしばしば見られる塗装された表面などの、比較的粗い表面を保護するために好適な半透明表面保護フィルム。半透明表面保護フィルムは、感圧性接着剤を含む接着層が裏打ちされたポリマー層を含む。接着層はフィルムの主要表面の1つを規定し、フィルムの他の主要表面は約15以下の60度光沢度を示す表面性状を持つ。接着層が少なくとも250ピーク/メートルのピークカウント(PC)を持つ表面粗さを有する表面上に適用される場合、接着剤のレオロジー特性は、接着層が少なくとも約70%の湿潤を達成できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤が裏打ちされた表面を保護するための半透明フィルム、特に、比較的粗い性状を有する表面を保護するために適したフィルム、更にとりわけ、比較的粗い塗装された表面を保護するために接着されることに適したフィルム、及びこのようなフィルムとこのような粗い表面の基材との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体部品(例えば、ボンネット、グリルの等の前縁)の外側の塗装された表面を保護するための、接着剤が裏打ちされた透明フィルムはよく知られている。ほとんどの自動車の外側の塗装された表面は、非常に滑らかで高い光沢度を示す。例えば、自動車の車体部品の塗装された表面は、典型的に、60度において少なくとも85の光沢の高光沢度を呈する。このような表面を保護するために使用される既知の塗装保護フィルムは、自動車の表面上ではほとんど見えないように、光に対して高度に透明(すなわち、90%を超す可視光線の透過を有する)で、かつ高い光沢の上層表面(例えば、60度において少なくとも約85の光沢)を有するように設計されている。
【0003】
接着剤が裏打ちされた表面保護フィルムが、例えば、ドアや壁の塗装した表面のような建築構造物上にしばしば見られる物などの粗い表面の保護に使用されることは、知られていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、自動車の車体部品(例えば、ボンネット等)の塗装された表面を保護するために典型的に使用される物のような、従来の透明な塗装保護フィルムは、粗い表面には適していないことを、見いだした。このような従来の透明な塗装保護フィルムの接着に典型的に使用される感圧接着剤は、このような粗い表面を十分に湿潤し、これに接着するには、薄すぎかつ堅すぎることが見いだされた。接着剤のレオロジーを調節することにより、得られる接着剤の表面は、より粗い表面をより容易に、より高度に、湿潤することができる。
【0005】
本発明の1つの態様においては、例えば、ドアや壁などのような建築構造物上にしばしば見られる塗装した表面などの比較的粗い表面の保護に適した、半透明表面保護フィルムが提供される。半透明表面保護フィルムは、主要表面を反対側に有し、接着性材料を含む接着層が裏打ちされたポリマー層を含む。接着剤は感圧性接着剤を含む。接着層はフィルムの主要表面の1つを規定し、フィルムの他の主要表面は約15以下の60度光沢度を示す表面性状を有する。接着材料は、少なくとも250ピーク/メートルのピークカウント(PC)を持つ表面粗さを有する表面上に接着層が適用される場合に、接着剤に少なくとも70%の湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を有する。所望により、表面保護フィルムは、少なくとも部分的に架橋され、フィルムの他の主要な、規定の表面性状を有する表面を規定する、透明な被膜層を更に含むことができる。
【0006】
本明細書に開示される表面プロファイル測定技術を使用して測定される、約13μm未満の平均表面粗さ(Ra)を有する粗い表面上などに適用される場合、接着剤がこのような湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を、本発明の表面保護フィルムの接着剤が有することも、また望ましいことがある。これに加えて、本明細書に開示される表面プロファイル測定技術を使用して測定される、約200μm未満の谷に対する最大ピーク高さ(Rt)を有する粗い表面などの上に適用される場合、接着剤がこのような湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を、本発明の表面保護フィルムの接着剤が有することもまた望ましいことがある。少なくとも250ピーク/メートルのピークカウント(PC)、約13μm未満の平均表面粗さ(Ra)、及び/又は約200μm未満の谷に対する最大ピーク高さ(Rt)の表面粗さの、2つまたはそれ以上の組み合わせを有する粗い表面などの上に適用される場合、接着剤がこのような湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を、接着剤が有することが更に望ましいことがある。
【0007】
接着剤が示すレオロジー特性は、(a)23℃において1ラジアン/秒で動的せん断弾性率により測定した場合に約0.65以上の、(b)23℃において0.1ラジアン/秒で動的せん断弾性率により測定した場合に約0.40以上の、又は(a)と(b)との組み合わせの、損失タンジェントデルタ値を、包含する。損失タンジェントデルタは、接着性材料の損失せん断弾性率(G”)の貯蔵せん断弾性率(G’)に対する比である。接着剤により示されるレオロジー特性は、(a)tが500秒でtが0.1秒である場合に約0.1未満の、(b)tが500秒でtが1.0秒である場合に約0.25未満の、又は(c)(a)及び(b)の両方の組み合わせの、式G’(t)/G’(t)による応力緩和比、もまた包含することあがる。応力緩和は、一定の歪みの下でいかに迅速にポリマーが応力を緩和することができるかを測る。
【0008】
本発明の他の態様においては、基材及び本発明による任意の表面保護フィルムを含む、組み合わせが提供される。基材は、本明細書に開示される表面プロファイル測定技術により測定される、少なくとも250ピーク/メートルのピークカウント(PC)を持つ表面粗さを有する表面を、含む。接着層は、表面保護フィルムが、粗い表面の少なくとも一部、ほとんど(すなわち、50%を超えて)、又は実質的にすべてを覆うように、基材に接着結合される。
【0009】
本発明は、例えば、ドア、壁などのような建築構造物上にしばしば見いだされる物などの、比較的粗い表面を保護することができる表面保護フィルムを、提供する。本表面保護フィルムは、現状の透明な塗装保護フィルムを使用して粗い表面上に得られる湿潤度合いと比較して、これらの粗い表面上に比較的高い湿潤度合いを達成することができる。
【0010】
これらの及び他の本発明の利点は、図及び本発明の発明を実施するための形態において示し、説明した構造の特徴に見いだすことができる。しかし、図及び説明は説明のみを目的とするものであり、本発明の範囲を不当に制限するように読み取られるべきではない。
【0011】
上記の本発明の概要は、開示される本発明の実施形態のそれぞれ又はすべての実施の態様を説明することを目的としたものではない。以下の説明は、実例となる実施形態をより詳細に例示するものである。本明細書にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通してガイダンスを提供するが、実施例は様々な組合せにおいて使用できる。それぞれの場合において記載される一覧はあくまで代表的な群として与えられるものであって、排他的な一覧として解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面において、
【図1】建築構造物と組み合わせた、本発明による半透明表面保護フィルムの1つの実施形態の断面透視図。
【図2】基材の粗い表面に接着した、図1の表面保護フィルムの断面側面図。
【図3】図2の円で囲んだ領域Aの拡大断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態を説明する際、明瞭化のために特定の専門用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図せず、そのように選択された各用語は、同様に作動するすべての技術的相当物を含む。
【0014】
本明細書及び附属の特許請求の範囲において使用されるとき、以下に示す用語は定義された意味を有する。
【0015】
他に指示がないかぎり、例えば、本明細書及び特許請求の範囲で使用される、特性の大きさ、量、及び物理的性質を示す数を修飾するために使用される「約」と言う用語の使用は、このような修飾された数字パラメータは、本明細書に開示された教示を使用して当業者が獲得しようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値であることを示していると理解される。
【0016】
終点による数の範囲の記述は、その範囲内(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲に包含される、すべての数を含む。
【0017】
本明細書において使用するとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」は、相互に交換し得るように使用され、用語「及び/又は」は記載された要素の1つ又はすべてを、若しくは記載された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味し、そして用語「又は」は、内容が明確にそれ以外を指図しないかぎり、一般的に「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0018】
「含む」なる用語及びその変化形は、これらの用語が説明文及び「特許請求の範囲」において用いられている場合に限定的な意味を有するものではない。
【0019】
用語「ポリマー」は用語「ポリマー性」と同義語であり、ポリマー、コポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーを使用して形成されるポリマー)、オリゴマー及びこれらの組み合わせ、並びに混和性ブレンド中に形成され得るポリマー、オリゴマー、又はコポリマーを包含するとして理解されるであろう。
【0020】
「好ましい」及び「好ましくは」なる用語は、特定の状況下で特定の利点をもたらしうる本発明の実施形態のことを指す。しかしながら、同じ、又は他の状況下において、他の実施形態もまた好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用ではないという意味を含むものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図しない。
【0021】
本明細書において使用するとき、「高交通量表面」は、多数の人々の履物(例えば、靴、ブーツなど)、衣類(例えば、手袋、上着など)又は体の部分(例えば、毛、皮膚など)、若しくは動物の体の部分(例えば、毛皮)との、比較的短期間における接触(例えば、毎月、週、日、又は実に毎時数百回のこのような接触)を経験する可能を少なくとも有する、任意の表面を言う。
【0022】
本明細書において使用するとき、本発明の保護フィルムが「半透明」であるとの言及は、下にある塗装された又は塗装されない粗い表面が表面保護フィルムを通して見える状態を言う。フィルムを通して下にある粗い表面が見える程度は、望みに応じてフィルムの露出面に関して相当する性状を選ぶことにより、また、例えば、フィルムに顔料を混ぜることにより、更に調節することもできる可能性がある。
【0023】
本明細書において使用するとき、用語「湿潤」は接着剤と表面(例えば、建築構造物上の粗い表面)との間の表面接触の量に言及する。通常、湿潤が強いほど接着剤のより広い面積が表面と接触するので、表面に対する接着剤の結合がよりよい。透明な基材/フィルムの適用に関しては、より強い湿潤は接着剤中の見えるボイド又は空気バブルがより少ない結果ももたらすこともあり、これはより満足な審美的外観をもたらすことができる。
【0024】
本発明の実施においては、例えば、建築構造物上にしばしば見られる比較的粗い表面の保護には、半透明表面保護フィルムが適している。図1に言及すると、このような半透明表面保護フィルム10の1つの実施形態は、反対側にある主要表面12及び14を有し、接着性材料を含む接着層18が裏打ちされたポリマー層16を含む。接着層18は、好ましくは、例えば、アクリル感圧性接着剤などの感圧性接着剤の層である。接着層18は、フィルム10の主要表面12の1つを規定する。
【0025】
ポリマー層16は、任意の好適なポリマー材料から作られていてもよい。ポリマー層16は、例えば、ポリマー材料の次の群から選択される1つ以上のポリマー材料を含んでもよい。ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、金属イオンで中和されたエチレン−アクリル酸コポリマー、金属イオンで中和されたエチレン−メタクリル酸コポリマー、ポリエステル、アクリルポリマー、及びこれらの組み合わせ。好ましくは、ポリマー層は熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。
【0026】
図2及び3を参照すると、接着層18は、基材22の粗い表面20に接着結合している。接着層18は、表面保護フィルム10が粗い表面20の少なくとも一部、大部分(すなわち、50%超)又はすべてを覆うように、基材22に接着結合している。基材22は、粗い表面を含む任意の構造物であってもよい。粗い表面20は、塗装されていても、いなくてもよい。基材22は、例えば、木材、金属(例えば、ステンレス鋼)、又はプラスチックスなどの、任意の好適な材料から作られていてもよい。このような基材は、例えば、ドア(例えば、表面保護フィルムはドア全体を覆うように、又はドアのキック板として機能するような寸法にされてもよい)、壁、手摺、床の縁飾、壁の縁飾、及び階段の垂直部分、又は粗い表面を有する、好ましくは高交通量の粗い表面を有する、任意の他の構造物などの、建築構造物の粗い表面から選択されてもよく、表面保護フィルムはその形状に寸法されてもよい。このような建築構造物の表面は、例えば、ディープナップローラーを含むナップローラーによりしばしば塗装されており、これは比較的粗い性状を有する塗装表面となる。
【0027】
本発明者らは、自動車の車体部品(例えば、ボンネット等)の塗装された表面を保護するために典型的に使用されるフィルムのような、従来の透明な塗装保護フィルムはこのような粗い表面には適していないことを、見いだした。このような従来の透明な塗装保護フィルムの裏打ちに典型的に使用される感圧接着剤は、このような粗い表面を適切な程度(例えば、少なくとも70%超、少なくとも90%以上)に湿潤しこれに接着するには、薄すぎかつ堅すぎることが見いだされた。この問題に取り組むため、接着剤のキャリパー(すなわち、厚さ)を増やし(例えば、約51マイクロメートルから少なくとも76マイクロメートルへ)、かつよりや柔らかい(すなわち、より低い分子量及び固有粘度)接着剤を製造するために、接着剤のレオロジーを調節することにより、接着剤の堅さを低下させた。得られる接着剤表面は、より粗い表面をより容易に湿潤することができる。
【0028】
従来技術(例えば、比較的低い分子量の樹脂、より少量の架橋剤、及び/又はより低い反応性の架橋剤を使用することにより)を使用して、接着層18が粗い表面20の上に適用される場合に、接着剤が、少なくとも約70%、75%、80%、又は85%、好ましくは、少なくとも約90%、95%、又は99%の湿潤を達成できるようになる、レオロジー特性を示すように、接着層18の接着性材料を処方した。表面20は、少なくとも250ピーク/メートル、少なくとも300ピーク/メートル、少なくとも350ピーク/メートル、又は少なくとも400ピーク/メートルの本明細書に開示された表面プロファイル測定技術を使用して測定されるピークカウント(PC)を持つ、表面粗さを示す。
【0029】
接着層18は、少なくとも約76μm(3.0mil)、及び好ましくは、少なくとも約89μm(3.5mil)、又は少なくとも約102μm(4.0mil)の厚さを有することが、望ましい。自動車の塗装車体部品の保護に使用される、従来の塗装代替フィルムの接着層の厚さは、典型的には、約51μm(2mil)の厚さである。レオロジーの変更に加えて接着層を厚くすることにより、接着層は本明細書に開示したような粗い表面の上により容易にぴったりと合い、湿潤することができる。
【0030】
接着剤が示すレオロジー特性は、(a)動的せん断弾性率により23℃において1ラジアン/秒で測定した場合、約0.65又は約0.70以上の、(b)動的せん断弾性率により23℃において0.1ラジアン/秒で測定した場合、約0.40又は約0.50以上の、又は(a)及び(b)の両方の組み合わせの、損失タンジェントデルタ値を含む。損失タンジェントデルタは、接着性材料の損失せん断弾性率(G”)の貯蔵せん断弾性率(G’)に対する比である。接着剤により示されるレオロジー特性は、(a)tが500秒でtが0.1秒である場合に、約0.1未満の、(b)tが500秒でtが1.0秒である場合に、約0.25未満の、又は(c)(a)及び(b)の両方の組み合わせの、式G’(t)/G’(t)による、応力緩和比もまた包含することができる。応力緩和は、一定の歪みの下でいかに迅速にポリマーが応力を緩和することができるかを測る。
【0031】
約950ピーク/メートル(例えば、約250ピーク/メートルから約950ピーク/メートルの範囲)までの表面粗さのピークカウントを有する粗い表面などに、本発明の表面保護フィルムが使用されることが望ましいことがある。本明細書に開示される表面プロファイル測定技術を使用して測定される、約13μm、約12.5μm、約12μm、約11.5μm、約11μm、又は約10.5μm未満の平均表面粗さ(Ra)を有するような粗い表面上に適用する場合、接着剤がこのような湿潤割合を達成できるようになるレオロジー特性を、本発明の表面保護フィルムの接着剤が有することも、望ましいことがある。本明細書に開示される表面プロファイル測定技術を使用して測定される、約200μm、約170μm、約160μm、約150μm、約140μm、又は約130μm未満の、谷に対する最大ピーク高さ(Rt)を有する粗い表面上などに適用した場合に、接着剤がこのような湿潤割合を達成できるようになるレオロジー特性を、本発明の表面保護フィルムの接着剤が有することが、更に望ましいことがある。
【0032】
本表面保護フィルムは、建築構造物の上に見られるような粗い表面の塗装、取替え、ないしは別の方法による修復の間の期間を延長する、有効な方法であることもまた見いだされた。従来の塗装保護フィルムの高光沢表面の外観を傷つけるのは、比較的容易であることが見いだされている(例えば、フィルム表面が引っ掻かれる又は別の方法で損なわれることによる)。表面14(図1参照)の性状を選択することにより、表面14が引っ掻き又は他の損傷に耐えることになれば、本発明の保護フィルムの外観をより傷つき難くなし得る。フィルム10の主要表面14が、例えば、Columbia,MD,USAのByk−Gardner光沢計などを用いる、従来の表面光沢測定技術の使用による、約15、14、13、12、又は11未満の、及び、好ましくは、約10、9、8、7、又は6未満の、60度光沢度を示す表面性状を有する場合に、望ましい結果が得られている。任意に、表面保護フィルム10は更に、少なくとも部分的に架橋された透明な被膜層19を含むことができる。これが含まれる場合、透明被膜層19はフィルム10の他の主要表面14を規定し、特定の表面性状を含む。好ましくは、透明な被膜層は少なくとも部分的に架橋されたポリウレタン材料を含む。少なくとも部分的に架橋されたポリウレタンは、例えば、ポリエステル系ポリウレタン又はポリカーボネート系ポリウレタンの1つを、少なくとも含むことができる。
【0033】
以下の実施例は、あくまで本発明の特徴、利点、及び他の詳細を更に説明する目的で選択されたものである。しかしながら、実施例はこの目的を果たすものではあるが、使用される特定の成分及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明の範囲を必要以上に限定するものとして解釈されるべきではない点は明確に理解されるはずである。
【0034】
試験方法
動的せん断弾性率の測定
接着剤の損失タンジェント、せん断貯蔵弾性率及びせん断損失弾性率は、TA Instruments,New Castle,Delaware,USA製の、ARES Rheometerを使用して測定した。接着剤試料を、25mmの直径で、1.0mmの間隔の2枚の平行した丸いプレートの間に充填し、動的せん断弾性率について試験し、せん断速度を毎秒1.0ラジアンとして、20℃と80℃の間の温度の関数として、測定した。23℃における損失タンジェント(タンデルタ)を報告した。
【0035】
表面プロファイルの測定
フィルム試料の表面トポグラフィーを、Dektak 8 Stylus表面計(Veeco Inc,Plainview,NY,USA製)を使用して、直径が2.5マイクロメートルのチップにより3mgの力で、測定した。分析は、ビジョンソフトウェア(Veeco Inc製)により行った。ピークカウント(PC)は、単位長さ当たりのピーク数として報告した。ピークは、平均線を超える閾値より大きいプロファイルの高さとして定義される。高いピークカウントは、単位面積中において多数回表面が「立ち上がり、そして下りる」ピークである。この装置を、平均粗さ(Ra)及び谷に対する最大ピーク高さ(Rt)の測定にもまた使用した。
【0036】
応力緩和試験方法
応力緩和は、米国のTA Instruments,New Castle,Delaware製の、ARESレオメーターを使用して測定した。接着剤試料を、25mmの直径で、1.0mmの間隔の2枚の平行した丸いプレートの間に充填した。せん断応力緩和は、23℃において3%の歪みで500秒まで測定した。G(t)/G(t)のせん断弾性率比を報告した。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
透明な被膜材料は、0.35グラムのチヌビン−123(Ciba Chemicals,Tarrytown,New York製)、0.05グラムのAMP−95(Dow Chemical,Midland,Michigan製)、0.20グラムのTriton GR−7M(Dow Chemical,Midland,Michigan製)、8.5グラムのブチルカルビトール(Eastman Chemical Company,Kingsport,Tennessee製)、及び1.16グラムのUvinul N3039(BASF製)を、89.71グラムのNeorez−933(Neoresins,Inc,Wilmington,Massachusetts製)に加えて作製した。脱イオン化水を重量で約8%加え、粘度を70cpsと200cpsの間に保った。被覆する前に、1.78グラムのNeocryl CX−100(Massachusetts州WilmingtoのNeoresins,Inc製)を透明な被覆溶液に加え、5分間撹拌した。
【0038】
透明な被覆溶液を、低光沢ライナー上に、75マイクロメートルの湿潤厚さに被覆した(これは約6の60°光沢度を提供する)。得られた透明被膜を次いで熱硬化し、約12マイクロメートルの乾燥厚さとした。60°光沢の測定値は約6.4であった。一方低光沢ライナー上に、硬化した透明な被膜の露出面に、単純なポリエステル支持ウェブ上に押し出しされたTecoflex CLA−93A−V熱可塑性ポリウレタン(Lubrizol,Wickliffe,Ohio製)層を、152μm(6mil)の厚さに、250°F(121℃)で、熱的にラミネートした。ラミネーションの線速度は、毎分10フィート(毎分3メートル)とした。熱可塑性ポリウレタンに接しているポリエステル支持ウェブを、取り除いた。
【0039】
感圧性接着剤組成物を、約300マイクロメートルの厚さに、紙剥離ライナー上に湿式コーティングした。接着剤組成物は、重量比で90%のイソオクチルアクリラート、10%のアクリル酸、及び20%の酢酸ブチルにより事前に薄めた1.25%の架橋剤、1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)ビス[2−メチルアジリジン](IUPAC)を、互いに混合して処方した。このIUPACは、総称的にポリアジリジンと称されることがある。ぬれた状態の層状接着剤を、ジェットエアーオーブン中で、125°F(52℃)で1分間、次いで150°F(66℃)で1分間、その後225°F(107℃)で1分間架橋した。架橋した接着剤は、約0.8の固有粘度と約50マイクロメートルの厚さを有した。架橋した感圧性接着剤層を、熱可塑性ポリウレタン層の露出面に、200°F(93℃)の温度で、ラミネーション線速度を毎分約10フイート(毎分3メートル)で、熱ラミネートした。
【0040】
(実施例2)
接着剤組成物を10重量%のイソプロピルアルコール及び20重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートにより事前に薄めた以外は、実施例1における物と同じフィルムをこの実施例において使用した。事前に薄めた接着剤を、0.875重量%の架橋剤、1,1’−(1,3−ポリフェニレンジカルボニル)ビス[2−メチルアジリジン](IUPAC)と混合し、紙剥離ライナーの上に500マイクロメートルの湿潤厚さに、コーティングした。その後、ぬれた状態の接着層をジェットエアーオーブン中で、100°F(38℃)で1.2分、次いで150°F(66℃)で1.2分、その後225°F(107℃)で1.2分架橋した。架橋した接着剤の厚さは約88マイクロメートルであった。次いで、架橋した感圧性接着剤の層を、実施例1で作った物と同じような熱可塑性ポリウレタン層の露出面に、250°F(121℃)の温度で、ラミネーション線速度を毎分約10フィート(毎分3メートル)として、熱ラミネートした。
【0041】
比較実施例1
感圧性接着剤組成物を、約450マイクロメートルの厚さに、紙剥離ライナー上に、湿式コーティングした。接着剤組成物は、重量比で90%のイソオクチルアクリラート、10%のアクリル酸、及び0.25%の架橋剤、1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)ビス[2−メチルアジリジン](IUPAC)を、互いに混合して処方した。ぬれた状態の層状接着剤をジェットエアーオーブン中で、150°F(66℃)で1分、次いで200°F(93℃)で2分間、架橋した。架橋した接着剤は、約1.8の固有粘度と50マイクロメートルの厚さを有した。次いで、得られた架橋した感圧性接着剤の層を、200°F(93℃)の温度で、毎分10フィート(毎分3メートル)のラミネーション速度で、実施例1で作られた物と同じような、熱可塑性ポリウレタンの露出面に熱ラミネートした。
【0042】
比較実施例2
接着剤の厚さが100マイクロメートルである以外は、比較実施例1において使用された同じ接着剤を使用した。2倍の接着剤の厚さは、50マイクロメートルの接着剤層を2つ互いにラミネートして達成した。次いで、架橋した感圧性接着剤の2倍の層を、200°F(93℃)の温度で、毎分10フィート(毎分3メートル)のラミネーション速度で、実施例1で作ったものと同じような熱可塑性ポリウレタンの露出面に、熱ラミネートした。
【0043】
実施例2の接着剤が裏打ちされたフィルムの、異なる粗さの度合いを有するさまざまな粗い表面への接着により得られる湿潤度は、実施例1の接着剤が裏打ちされたフィルムで得られた程度より大きかった。比較実施例1の接着剤が裏打ちされたフィルムは、最悪の湿潤度を有していた。接着剤の厚さを2倍にすることにより、比較実施例2の接着剤が裏打ちされたフィルムは、比較実施例1に比べて改善された湿潤を示したが、しかし、湿潤度は、本発明による粗い表面に関する粗さのスケールの下方部に対してようやく辛うじて受け入れ得るものであった。
【0044】
本発明には、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更を行うことができる。したがって本発明は上記の記載によって限定されるものではないが、以下の「特許請求の範囲」及びそのあらゆる均等物において記載される限定条件によって規制されるものである。
【0045】
本発明は、本明細書に詳細に開示されていない要素を欠いても適宜実施されうる。
【0046】
上記に引用したすべての特許及び特許出願は、「背景技術」の項目において記載されるものを含め、その全容にわたって本文書に援用するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反対側の主要表面を有し、かつ前記主要表面の1つを規定する接着性材料を含む接着層が裏打ちされたポリマー層を含み、前記主要表面の他方が約15以下の60度光沢度を示す表面性状を有し、前記接着剤が感圧性接着剤を含み、かつ前記接着層が少なくとも250ピーク/メートルのピークカウントを持つ表面粗さを有する粗い表面上に適用された場合に、前記接着剤が少なくとも約70%の湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を前記接着剤が有する、半透明表面保護フィルムであって、
前記接着剤により示されるレオロジー特性が、(a)23℃において1ラジアン/秒で動的せん断弾性率により測定された場合に、約0.65以上の、(b)23℃において0.1ラジアン/秒で動的せん断弾性率により測定された場合に、約0.40以上の、又は(a)と(b)との組み合わせの損失タンジェントデルタ値を包含する、半透明表面保護フィルム。
【請求項2】
前記接着剤が、少なくとも250ピーク/メートルのピークカウントを持つ表面粗さを有する粗い表面上に適用された場合、前記接着剤が少なくとも約85%の湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を前記接着剤が有する、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記接着剤層が、約950ピーク/メートルまでのピークカウントを持つ表面粗さを有する粗い表面上に適用された場合、前記接着剤が前記湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を前記接着剤が有する、請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記接着剤層が、約13μm未満の平均表面粗さ(Ra)を持つ粗い表面上に適用された場合、前記接着剤が前記湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を前記接着剤が有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
前記接着剤層が、約200μm未満の谷に対する最大ピーク高さ(Rt)を持つ粗い表面上に適用された場合、前記接着剤が前記湿潤を達成できるようになるレオロジー特性を前記接着剤が有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
前記接着剤により示されるレオロジー特性が、23℃において1ラジアン/秒で動的せん断弾性率により測定される約0.70以上の損失タンジェントデルタ値を包含する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
前記接着剤により示されるレオロジー特性が、23℃において0.1ラジアン/秒で動的せん断弾性率により測定される約0.50以上の損失タンジェントデルタ値を包含する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項8】
前記接着剤により示されるレオロジー特性が、(a)tが500秒でtが0.1秒である場合に、約0.1未満の、(b)tが500秒でtが1.0秒である場合に、約0.25未満の、又は(c)(a)及び(b)の両方の組み合わせの、式G’(t)/G’(t)による、応力緩和比を包含する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項9】
少なくとも部分的に架橋され、かつ前記表面性状を有する前記主要表面の他方を規定する透明な被膜層を前記表面保護フィルムが更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の、表面保護フィルム。
【請求項10】
前記接着層が少なくとも約76μm(3.0mil)の厚さを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の表面保護フィルム。
【請求項11】
少なくとも
250ピーク/メートルのピークカウントを持つ表面粗さを有する粗い表面を含む基材、及び
前記表面保護フィルムが少なくとも前記の粗い表面の一部を覆うように、前記接着層が前記基材に接着結合している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の前記表面保護フィルムを含む、組み合わせ。
【請求項12】
前記基材が、建築ドア、壁、手摺、床の縁飾、壁の縁飾、及び階段の垂直部分から選択される、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項13】
前記粗い表面が、少なくとも400ピーク/メートルのピークカウント(PC)を持つ表面粗さを有する、請求項11又は12に記載の組み合わせ。
【請求項14】
前記粗い表面が、約12μm未満の平均表面粗さ(Ra)を有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項15】
前記粗い表面が、約170μm未満の谷に対する最大ピーク高さ(Rt)を有する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521378(P2013−521378A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556148(P2012−556148)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/026572
【国際公開番号】WO2011/109323
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】