説明

粗トールオイルから得られる自動車燃料およびファインケミカル

トールオイルから脂肪酸アルキルエステルを製造する方法を開示する。かかる製造方法は、工程a:脂肪酸アルキルエステルおよびHOを含んで成る粗生成物ストリームが形成されるように、少なくとも1つのエステル化リアクター内において酸触媒およびC1〜C8アルコールの存在下でトールオイルをエステル化する工程;工程b:脱水脂肪酸アルキルエステルの生成物ストリームが形成されるように、工程a)で形成された粗生成物ストリームからHOおよびアルコールを分離する工程;ならびに 、工程c:工程b)で得られた脱水脂肪酸アルキルエステル生成物ストリームを少なくとも2つの生成物ストリームへと分離する工程であって、2つの生成物ストリームの一方が脂肪酸アルキルエステルに富んでおり、2つの生成物ストリームの他方が樹脂酸化合物に富んでいる、工程を含んで成る。また、かかる方法によって製造される脂肪酸アルキルエステルおよび樹脂酸も開示する。更には、本発明に従って生成される「脂肪酸アルキルエステルを含有する燃料組成物」およびそれを自動車燃料として使用することも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粗トールオイル(または未処理トールオイルもしくは未精製トールオイル:CTO)およびその他の脂肪酸に富んだ原料から脂肪酸アルキルエステルを製造する方法に関する。また、本発明は、かかる製造方法で得られた脂肪酸アルキルエステルおよび樹脂酸にも関する。更には、本発明は、本方法で製造された脂肪酸アルキルエステルを含んで成る自動車燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料のコスト高および温室効果ガス放出が問題となる時代において、木材などの「環境に優しい資源(green sources)」から自動車燃料や化学品を生成することにはますます興味がもたれている。
【0003】
環境の観点および経済的な観点から、「原油から得られる通常の自動車燃料」に取って替わる燃料として「循環再生資源から得られる自動車燃料」を使用することは望ましい。トールオイルは、木材に由来する再生可能な原料である。トールオイルは、燃焼エンジン燃料、たとえば、ディーゼル燃料へと変換できる有機化合物を含有している。また、トールオイル内の他の有用な化合物(例えば樹脂酸およびステロール)を回収して付加価値を付けることもできる。
【0004】
トールオイルはアルカリクラフトパルプ化法(alkaline kraft pulping process)の主たる副生成物である。トールオイルは木材原料の抽出物に由来する。パルプ化法では、遊離酸またはそのエステルとして生じたロジン酸(RA)および脂肪酸(FA)が、アルカリ蒸煮液によって、その対応するナトリウム塩へと鹸化される。これらの塩または石鹸は、中性の有機成分(しばしば“未鹸化物”と称される)と共に、使用済み蒸煮液(ブラック液)内へと溶解させて懸濁させられる。かかる液はその後に濃縮され、石鹸および中性物質がトールオイル石鹸の上澄みとして分離される。多くのパルプ工場はかかる石鹸を回収しており、酸性化の後では、粗トールオイル(CTO:Crude Tall Oil)が得られ、出荷または工場にて品質向上に付されることになる。
【0005】
軟材クラフト工場から回収したトールオイルは、典型的には、約35〜60%の脂肪酸(例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびパルミチン酸)、15〜55%のロジン酸(例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸およびネオアビエチン酸および5〜35%の未鹸化の中性材料(例えば、ベータ−シトステロールなどのステロール)から成っている。硬材には脂肪酸や中性物質(ベータ−シトステロール、ベツリン)を含んだ抽出物が含まれるものの、樹脂酸は含有されない。
【0006】
更に、トールオイルは、ブラック液に起因する少量の不純物、例えば硫黄化合物(Sとしては1000ppm以下の硫黄化合物)、リグニン成分およびファイバを含んで成る。トールオイルは、通常、パルプ工場から中央のトールオイル蒸留プラントへと移送される。
【0007】
バイオディーゼルなどの環境に優しい代替バイオ燃料の製造は、ここ10年で大きく増加している。バイオディーゼルは、通常、植物油から触媒エステル交換を経て脂肪酸アルキルエステル(FAAE)が得られるように製造され、このエステルを、バイオディーゼル燃料に含まれる一部の成分または多くの成分として使用され得る。脂肪酸アルキルエステルは、化石系オイル原料に取って替わるだけでなく、低硫黄ディーゼル燃料において効果的な潤滑剤となる。
【0008】
通常、トールオイル脂肪酸は大量のリノール酸を含有しているので、バイオディーゼルに良好な低温流れ特性がもたらされることになる。酸化安定性(oxidative stability)は、リノール酸およびリノレン酸にそれぞれ含まれるアリル二重結合およびビスアリル二重結合に起因して問題となる場合がある。バイオディーゼル用の原材料としてトールオイルを用いる他の問題は、トールオイル中の硫黄化合物含有量がやや高い(500〜1000ppm)ことである。バイオディーゼルについての欧州および米国の基準によれば、バイオディーゼル中の硫黄の許容可能な最大含有量は10ppmである。
【0009】
長年にわたって、トールオイルから価値のある生成物を回収することについて多くの方法が示されてきた。関連の先行技術特許および特許出願を以下に示す。
【0010】
米国特許第4,992,605号公報では、高圧下で気体水素を用いて脂肪酸を処理することを含んだディーゼル燃料添加剤の製造方法が開示されている。
【0011】
米国特許第5,705,722号公報では、高温でトールオイルと水素とを接触させることを含んだディーゼル燃料セタン価向上剤の製造方法が開示されている。
【0012】
米国特許第2,640,823号公報では、遊離脂肪酸を選択的に低級アルコールでもってエステル化するトールオイル処理法が開示されている。得られた混合物は選択性極性溶媒を用いて抽出し、ロジン酸および脂肪酸のエステルおよび未鹸化物質を分離する。抽残物を蒸留して純粋な形態の脂肪酸を得ている。トールオイル中の他の成分も抽出し回収している。
【0013】
米国特許第2,294,446号公報では、少量のたとえば硫酸を添加することを含んだトールオイル処理法が開示されている。かかる公報では、酸処理から得られたスルホン化生成物が触媒として機能することが記載されている。また、混合物の遠心分離を用いた工程が示されている。次いで、混合物は低級アルコール、たとえば、メタノールを用いてエステル化に付される。
【0014】
国際特許出願第WO2004/080942号公報では、脂肪酸アルキルエステル、ロジン酸およびステロールをトールオイルから得る方法が開示されている。トールオイルを低級アルコールでエステル化し、ステロールをホウ酸でエステル化したり、あるいは、触媒を用いてエステル交換している。脂肪酸エステルおよびロジンエステルはステロールエステルから分離している。脂肪酸エステルおよびロジン酸も分離している。エステル化は酸性条件下で(例えばメタンスルホン酸を触媒として用いて)行っている。
【0015】
国際特許出願第WO2004/074233号公報では、粗トールオイル(CTO)の処理法が開示されている。かかる公報では、CTOを以下のa)およびb)の処理に付している。a)CTO中の遊離脂肪酸と低級アルコールと反応させ、b)脂肪酸アルキルエステルを残留CTOから分離し脂肪酸エステルの第1ストリームを生成する。国際特許出願第WO2004/074233号公報では、CTO以外の成分を回収する後処理工程も開示されている。
【0016】
ドイツ特許第1264058号公報では、少量のトールオイル脂肪酸を含んだ燃料組成物が開示されている。
【0017】
本発明は、本明細書で開示される特定の構成、処理工程および材料に限定されるものでなく、開示される特定の構成、処理工程および材料に対して幾分変更を加えてもよいことを理解されたい。また、本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等の範囲によってのみ限定されるので、ここで使用される専門用語は特定の実施形態を記載する目的のためだけに使用されるものであって、限定することを意図していないと理解されたい。
【0018】
本明細書および添付の請求の範囲で使用されている単数形「a」、「an」および「the」などの冠詞は、本明細書で明確に言及しない限り、複数の対象をも含むものとして解釈されたい。
【発明の開示】
【0019】
本発明の主な目的は、粗トールオイルを高価値のファインケミカル(精製化学製品)および自動車燃料へとグレードアップして(品質向上させて)回収することである。更に、本発明の目的は、先行技術より高い収率で脂肪酸アルキルエステルをエステル化する方法を提供することである。また、別の本発明の目的は、硫黄含有量の低い自動車のバイオディーゼルタイプの燃料を製造する方法を提供することである。そして、更なる本発明の目的は、トールオイルから脂肪酸の選択的エステル化によってファインケミカルを回収する方法を提供することである。更には、本発明による方法で製造される脂肪酸アルキルエステル、および樹脂酸をも提供する。また、本発明の方法で製造される脂肪酸アルキルエステルを含む燃料組成物をも提供する。
【0020】
本発明は、トールオイルから脂肪酸アルキルエステルを高収率かつ非常に低硫黄含有量で製造することができる革新的な反応および分離シーケンスを開示する。さらに、他の価値のあるファインケミカル、たとえば、樹脂酸およびベータ−シトステロールを、本発明が開示する逐次的手順で回収することができる。エステル化中に形成される水を連続的に除去することによって、脂肪酸アルキルエステルの収率を増加させる。低硫黄含有量の脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼル燃料の成分として効果的に使用することができ、反応の副生成物を価値のあるファインケミカルへとグレードアップすることができる。モノ不飽和/飽和脂肪酸を含有する原材料をエステル化リアクターの供給ストリームに添加すると、CTOに基づく脂肪酸アルキルエステル/バイオディーゼルの酸化安定性が向上する。
【0021】
本発明では、トールオイルから脂肪酸アルキルエステルを製造する方法であって、
工程a:脂肪酸アルキルエステルおよびHOを含んで成る粗生成物ストリームが形成されるように、少なくとも1つのエステル化リアクター内において酸触媒およびC1〜C8アルコールの存在下でトールオイルをエステル化する工程;
工程b:脱水脂肪酸アルキルエステルの生成物ストリームが形成されるように、工程a)で形成された粗生成物ストリームからHOおよびアルコールを分離する工程;ならびに
工程c:工程b)で得られた脱水脂肪酸アルキルエステル生成物ストリームを少なくとも2つの生成物ストリームへと分離する工程であって、2つの生成物ストリームの一方が脂肪酸アルキルエステルに富んでおり、2つの生成物ストリームの他方が樹脂酸化合物に富んでいる、工程
を含んで成る製造方法が提供される。
【0022】
本発明のさらなる実施の形態は、以下にて説明すると共に、特許請求の範囲の従属請求項に規定されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に記載される特定の実施の形態を説明する。脱水および熱処理されたトールオイル(この熱処理によって揮発性硫黄化合物を除去する)を、ライン6を通じて連続操作攪拌槽リアクターであるCSTR(2)へと送る。また、少なくとも70%の遊離脂肪酸を含有する椰子油脂肪酸蒸留物をライン(7)を介してCSTR(2)へと供給する。CSTRに供給される椰子油脂肪酸供給物とトールオイル供給物との割合は1:1である。乾燥メタノールをライン(8)を介してCSTR(2)へと導入する。CSTRへの全脂肪酸供給量の0.5重量%に相当する量の酸性エステル化触媒PTSA(パラトルエンスルホン酸)をライン(9)を介してCSTR(2)へと導入する。脂肪酸メチルエステルと未反応脂肪酸、樹脂酸、メタノールおよびHOを含有する反応混合物は、CSTR(2)から排出されることになり、それを反応蒸留カラム(3)(または蒸留塔(3))へとライン(13)を介して送る。次に反応蒸留カラム(3)へとライン(13)を通じて供給された全ての脂肪酸は、反応蒸留カラム内を脂肪酸材料が下方へと通過するに際して脂肪酸メチルエステルへと変換される。エステル化触媒はライン(9)を介して反応蒸留カラムへと添加される。反応蒸留カラム(3)内の温度および圧力は、未反応メタノールおよびHOが蒸発してカラムからライン(14)を介して排出されるように選択される。ライン(14)を介してカラムから排出された蒸気(HO)とメタノールとの混合物は冷却器(19)で冷却された後、メタノール・ストリッパー(4)へと送られる。メタノール・ストリッパー(4)では、HOおよびメタノールが2つのストリームへと分けられる。ライン(15)を介してストリッパー(4)から排出されるメタノールは、リサイクルすべく気体の状態で反応蒸留カラム(3)へと戻される。一方、HOはライン(11)を介してメタノール・ストリッパー(4)から排出される。気体ストリーム(14)内に存在する揮発性硫黄化合物は、吸着、分留(または蒸留もしくは精留)またはアルカリ・スクラビング(図示せず)によって除去され得る。
【0024】
反応蒸留カラム(3)から得られる「粗脂肪酸メチルエステルに富んだ生成物ストリーム」は、ライン(18)を介して「真空(0.05bar)下で操作される蒸発/蒸留カラム(5)」へと送られる。粗脂肪酸メチルエステルの一部は、熱交換器(20)で加熱した後、リサイクルすべく反応蒸留カラムへと戻される。蒸発/蒸留カラム(5)では、「粗脂肪酸メチルエステルに富んだ生成物」が2つの最終生成物ストリームへと分割される。実質的に純粋な脂肪酸メチルエステル(FAME)を含んで成る第1生成物ストリームは、ライン(12)を介して蒸発/蒸留カラムの上方セクションから排出される。FAMEは、更に精製された後、バイオディーゼル自動車燃料へと混合すべく出荷されることになる。「樹脂酸および中性の高沸点成分を含んで成る第2生成物ストリーム」は、ライン(16)を介して蒸発/蒸留カラムの下方セクションから排出される。下方(または底部)から取り出される留分の一部はリサイクルすべく戻される。尚、蒸発/蒸留カラム(5)に戻すに先だっては加熱器(15)で予め加熱される。「樹脂酸および中性成分に富んだストリーム(16)」は、バイオ燃料として直接使用することができる。あるいは、「樹脂酸および中性成分に富んだストリーム(16)」は、純粋な樹脂酸およびベータ−シトステロールを回収すべく処理に付してもよい。蒸発/蒸留カラム(5)の内部は、真空ポンプ・システム(1)に接続されているライン(17)によって真空にされている。
【0025】
不要な「微量(または少量)の硫黄化合物」は、蒸発カラム(5)で揮発させて、真空システム・ライン(17)を通じて除去する。ライン(12)を通じて排出される脂肪酸アルキルエステル生成物に残存する不要な硫黄は、苛性処理(NaOH)で除去し、生成物脂肪酸アルキルエステルの全硫黄含有量を10ppm以下にまで減少させる。
【0026】
本発明は、上述した特定の実施形態に限定されるものではないと理解されたい。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等の範囲によってのみ限定される。
【0027】
発明の詳細な説明
本発明の発明者は、トールオイル中に存在する脂肪酸から純粋な脂肪酸アルキルエステル(脂肪酸アルキルエステル)を高収率で生成する新規で効果的な方法を見出した。更に、樹脂酸を含んで成る価値のある副生成物ストリームも回収する。必要に応じて、中性成分のストリームを更に別の価値のある副生成物ストリームとして回収してもよい。
本発明の供給材料は、アルカリパルプ工場で通常回収される粗トールオイル石鹸(crude tall oil soap)に由来するトールオイルである。粗トールオイル石鹸は、脂肪酸、樹脂酸石鹸、中性有機成分および「少量のエントレインされた混入ブラック液成分(リグニン、硫黄化合物およびファイバ)」を含んで成る。第1工程では、粗トールオイル石鹸に含まれる混入ブラック液成分の大部分が、機械的/物理的な分離(例えばデカンタ遠心分離機を用いた分離)によって除去され得る。次いで、機械的/物理的に精製された粗トールオイル石鹸は、少なくとも幾分かの中性成分を除去する溶媒抽出工程に付されることで更に精製され、それによって、精製トールオイル石鹸が形成される。必要に応じて、トールオイル石鹸混合物は、粗トールオイルの形成に先だって溶剤抽出によって精製してよく、その場合、酸を加えてトールオイル石鹸混合物のpHを低下させる。
【0028】
粗トールオイルは、典型的には、パルプ工場でトールオイル石鹸を硫酸で酸性化することによって形成される。トールオイルは、工場から出荷される前に、しばしば脱水器で乾燥に付され、実質的に乾燥したトールオイルを形成し得る。
【0029】
上述のような手法で回収された粗トールオイル(CTO)は、本発明のエステル化リアクター(または複数のエステル化リアクター)に用いられる原料供給物である。その他の脂肪酸含有材料をエステル化リアクターに仕込んでもよい。エステル化の目的は、脂肪酸アルキルエステル(脂肪酸アルキルエステル)を高収率で形成することである。エステル化プラントは、触媒エステル化段階を有する少なくとも1つのリアクターを有して成る。かかる触媒エステル化段階では、CTO中に存在する脂肪酸が、触媒およびC1〜C8アルコール(例えばメタノール、エタノールまたはイソ−プロパノール)の存在中で選択的にエステル化される。好ましくは、アルコールはメタノールまたはエタノールである。
【0030】
リアクター(または複数のリアクター)の物理的条件および触媒は、好ましくは、トールオイル中の脂肪酸が樹脂酸よりも優先してエステル化されるように選択される。第1級カルボン酸基を有する脂肪酸は、樹脂酸に比べて穏やかな条件でエステル化される(かかる事項は、例えば、トールオイル中の脂肪酸部分を定量するための分析手法に利用されている)。
【0031】
脂肪酸エステル化に伴って生じる問題はHOの形成である。HOは、エステル化平衡反応を逆向きに進行させる作用を有している。それゆえ、脂肪酸アルキルエステルを高収率で得るには、反応混合物からHOを除去する必要がある。脂肪酸エステル化反応の初期工程においては、オキソニウムイオンが生じるように酸がプロトン化される。プロトン化では、アルコールを用いて交換反応が行われ、中間反応物が生じる。中間反応物は、次に、プロトンを失ってエステルとなる。この方法の各工程は可逆的であるが、極めて過剰のアルコールの存在下では、反応平衡は、エステル化が進行して実質的に完了する方向に移動する。しかしながら、HOの存在中では、HOは脂肪族アルコールよりも強力な電子ドナーであるので、中間体の形成が助力されずエステル化が十分に進行しない。従って、高いエステル化収率を達成するためには、HOを反応混合物から除去する必要がある。リアクター(または複数のリアクター)へと送られる供給ストリーム中の脂肪酸に関して算出される脂肪酸アルキルエステルの全収率は80%以上、好ましくは90%以上である。ある好ましい実施の形態では、HOを連続的に効果的に反応混合物から除去することにより、98%程度の高い収率を得ることができる。ある実施形態では、エステル化反応に際して、水よりも沸点の低いアルコールが、粗生成物ストリームから得られるアルコールと共に除去される。HOおよびアルコールの蒸気は、集められた後、HOに富んだストリームとアルコールに富んだストリームとに分けられる。ある好ましい実施形態では、アルコールに富んだストリームは、リサイクルすべくエステル化リアクター(または複数のエステル化リアクター)へと戻される。
【0032】
ある実施形態では、HOおよびアルコールの分離に際して、硫黄化合物を粗生成物ストリームから分離する。
【0033】
CTO中に存在する遊離脂肪酸は、エステル化反応用のアルカリ触媒の使用の妨げとなる。植物油のエステル交換を通じてバイオディーゼルまたは脂肪酸アルキルエステルを製造する現在技術では、アルカリ触媒が通常使用される。アルカリ成分は、脂肪酸をその石鹸に変換するので、エステル化の問題を引き起こす。エステル化に際して物質移動を抑制してエマルジョンを形成することは望ましいことではなく、反応収率を低下させる。従って、本発明では、酸触媒の使用(触媒は均質でも不均質でもよい)を開示している。
【0034】
硫酸または他の強い鉱酸を触媒として使用することができるものの、有機スルホン酸が本発明での使用に特に好適とされる均質な酸触媒である。プロセス内にてリサイクルされない使用済み酸触媒は、適宜分離することができ、クラフトパルプ工場の液サイクルへとリサイクルすることができる。特に好ましい有機スルホン酸としては、パラ−トルエンスルホン酸およびメタン酸がある。不均質脂肪酸エステル化触媒は知られている。特に固形の樹脂触媒には「官能基として有機酸を有するメソポーラス・シリカ触媒(または「有機スルホン酸官能化メソポーラスシリカ」)」があり、かかる触媒を本発明の実施に際して使用することができる。使用できる他の固形の不均質酸触媒としては、硫酸化ジルコニウム(SZ)、タングステン化ジルコニウム(WZ)ならびに市販のエステル化触媒(例えば、アンバリスト(Amberlyst)−15(A−15)およびシリカ上に担持されたナフイオン(Nafion)(SAC−13))がある。好ましくは、酸触媒には、硫酸、有機酸(例えば、パラ−トルエンスルホン酸およびメタン酸)、メタンスルホン酸に基づく固体樹脂触媒、有機スルホン酸官能化メソポーラスシリカ、硫酸化ジルコニウム(sulphated zirconium)、タングステン化ジルコニウム(tungstated zirconium)およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種類以上の化合物が含まれる。
【0035】
上述の手法に従って行われる「CTO中の脂肪酸を変換するエステル反応」は、バッチ式リアクター(または回分式リアクター)で行ってもよく、あるいは、セミバッチ式リアクター(半回分式リアクター)で行ってもよい。しかしながら、連続式リアクター、例えば連続攪拌槽型リアクター(CSTR)でエステル化反応の少なくとも一部を実施するのが好ましい。エステル化反応を実施する特に好ましいリアクター・システムは、反応蒸留技術に基づいているものであり、あるいは、そのような反応蒸留技術を少なくとも1つのCSTRと組み合わせて用いられるものである。過剰のアルコールを還流するための装置(arrangement)を反応蒸留の代わりに使用してもよい。本発明の好ましい実施形態では、相互に直列に設けた「少なくとも1つの連続攪拌槽型リアクター(CSTR)」と「少なくとも1つの反応蒸留リアクター」とを用いてエステル化反応を実施する。
【0036】
反応蒸留とは、1つ容器において化学反応と蒸留とを組み合わせたものである。装置の一区画で反応と分離とを組み合わせると、通常の一連の手法を上回る有利な効果が明確に供される。特にエステル化およびエステル加水分解反応のような平衡に制限される反応では、反応領域から反応生成物を連続的に取り除くことによって、変換(転換)が増すことになり得、化学平衡変換率を遥かに越えることになる。
【0037】
化学反応と分離との間の複雑な相互作用に起因して、反応蒸留カラムの性能は、いくつかのパラメータによって左右される。例えば、反応カラム部および非反応カラム部のサイズや位置、還流比、供給位置、または流量などは反応蒸留カラムの性能に影響を及ぼす。CSTR等の予備リアクター(pre-reactor)を設けてもよく、それによって、反応物を反応蒸留カラムに供給する前に反応物CTOとアルコール(場合によっては触媒を含む)とを混合することができる。予備リアクターおよび反応蒸留カラム内の反応温度は、より安定な樹脂酸のエステルへの変換を最小限にしつつ、CTO中に存在する脂肪酸のアルキルエステルへの変換が最適になるように選択される。また、このような温度(通常約50〜約250℃の範囲の温度)は、不要な副反応(例えば、脂肪酸の二量化)が最小限になるように選択される。反応蒸留カラム内の圧力は、1〜50barの範囲、好ましくは3〜30barの範囲である。それゆえ、トールオイルエステル化反応は、好ましくは約50〜約250℃の温度、より好ましくは65〜140℃の温度で行われる。
【0038】
均質触媒を用いてエステル化反応を触媒する場合、カラムは構造化された充填物(インターナル)を備えていることが好ましい。不均質触媒を用いる場合、触媒は、好ましくは、カラム充填構造、たとえば、サルザー・ケムテック(Sulzer Chemtec)によるカタパック(Katapak)によって固定化される。
【0039】
C2〜C8の範囲にあるアルコール(たとえば、エタノール)はHOと共沸混合物を形成する。従って、「HOが含まれないアルコールのエステル化反応領域」のリサイクルは複雑となる。反応物として「共沸混合物を形成するアルコール」を使用する場合、共留剤(entrainer)を添加してエステル化反応時に共留剤を存在させることができる。ある実施形態では、共留剤が反応混合物に添加されることによって、過剰のアルコールおよびHOの分離が促進される。共留剤は、共沸蒸留の分野では支持添加剤として使用されることで知られている。共留剤が存在しない場合では、反応蒸留カラム内においてCTOアルコール混合物の物理特性を温度および圧力でしか変化させることができない。温度および/または圧力の変化は、常に可能というわけではない。特に、CTOとアルコールとの混合物などの非理想混合物の場合では、温度および/または圧力の変化が常に可能ではない。更には、温度および/または圧力の変化は反応条件にそぐわない場合がある。重要なことは、常套的な蒸留プロセスの場合のように、共留剤のリサイクルが外部を介して行われるのではなく内部で行われるように、反応蒸留プロセスを設計できることである。本発明のCTOエステル化法で使用するのに適当な溶解性および共沸形成特性を備えた好適な共沸剤化学物質としては、アルカン(例えばヘキサン)、アルケン(例えば、1−ヘキセン)および他の有機化合物(例えばシクロヘキサジエン、プロピルアセテート、ペンタノンおよびジ−プロピルエーテル)を挙げることができる。
【0040】
CTO供給物中に存在する中性成分は、選択された条件下ではアルコールと反応せず、中性成分が高沸点留分(脂肪酸アルキルエステル/樹脂酸の混合物)と共にエステル化リアクターから排出される。使用済み均質触媒が、排出される高沸点留分中に存在することもあり得る。
【0041】
化学量論的に過剰のアルコールを通常用いることによって、CTOの脂肪酸アルキルエステルへの変換を促進させて完了させる。供給物中に存在するアルコールの脂肪酸に対する化学量論比は、1.1:1〜3:1程度である。CTOと反応しない低沸点アルコールは、気体としてHO蒸気と共に反応蒸留カラムを通って上方へと移動する。必要に応じて、還流部をカラムの上方部分に設置してもよい。未反応アルコールは、反応蒸留カラムの外において、パーベーパレイション(または浸透気化法)またはストリッピングによってHOから分離することができる。このように回収されたアルコールは、リサイクルされるべく反応蒸留カラムまたはカラムの予備リアクター(pre-reactor)へと戻すことが好ましい。CTO、均質触媒およびアルコールの供給ポイントは、アルコール、特定の「触媒およびCTO」組成について選択する必要があるが、このような最適供給ポイントは当業者にとって容易に決定できる。
【0042】
予備リアクターを用いない場合、大部分のアルコールは気体状態で反応蒸留カラムの下方セクションに供給される。CTOおよび(均質触媒法ならば用いられる)触媒は、好ましくはカラムの上方セクションに供給されるので、反応物は気体アルコールとは向流状態でカラム内を移動することになる。少量のアルコールは、高沸点脂肪酸アルキルエステル/樹脂酸留分と共に、カラムの下方セクションに設けられた液だめリサイクル装置へと送られてもよい。カラムの下部にアルコールが存在することは、不要な副反応を最小限にする点で有効である。
【0043】
スチームおよび過剰のアルコールは、連続的に蒸発または蒸留に付すことによってエステル化反応混合物から除去される。アルコールは、「スチーム/アルコールの混合物」からストリッピングまたはパーベーパレイションによって回収し、リサイクルすべくアルコール貯留部へと送られたり、あるいは、直接的にエステル化リアクターへと送られる。脂肪酸アルキルエステルに富んだ粗生成物ストリームは、樹脂酸と高沸点中性成分(例えばステロールおよびスクアレン)の一部とを含んで成る。
【0044】
脂肪酸アルキルエステルから成る十分に純粋なストリームは、樹脂酸および中性成分よりも蒸気圧が非常に高く沸点が低いことを利用して得られるものである。典型的には、蒸留カラム、短い経路の蒸発器または真空下で操作される他の効果的な蒸発器を用いることによって、脂肪酸アルキルエステルを、より沸点の高い樹脂酸および中性成分から分離することができる。真空圧力は、供給物のトールオイル組成物(特に脂肪酸/樹脂酸の比)を考慮して選択されるべきであり、1bar以下0.0005bar以上、好ましくは0.8以下0.005bar以上の範囲となる。本方法のこの単位操作時においても、不要な有機硫黄化合物を除去することができ、それによって、第3処理ストリームが形成される。硫黄に富んだ第3処理ストリームは、脂肪酸アルキルエステル生成物ストリームとは別に蒸留または蒸発器から排出される。ある実施形態では、揮発性硫黄化合物に富んだ第3ストリームは、前記粗生成物ストリームから分離される。ある実施形態では、かかる分離が、硫黄化合物と脂肪酸アルキルエステルと樹脂酸と間の蒸気圧差を用いて行われる。
【0045】
脂肪酸アルキルエステルは本方法の主たる生成物であるものの、「樹脂酸/中性成分の混合物」もまた価値があり様々な用途に使用される。「樹脂酸/中性成分の混合物」は、ファインケミカルを回収すべく効果的に更に分留に付してもよい。中性成分は、アルカリ水溶液洗浄で樹脂酸を石鹸の形態で溶解させることによって、樹脂酸から分離できる。中性成分はアルカリ水溶液に溶解しない。中性成分と樹脂酸石鹸との2相分離を妨げることになる乳化、ミセルおよび他のコロイド構造体の形成は、高分子電解質および界面活性剤などの添加剤を加えることによって防止できる。次いで、水性石鹸ストリームを酸性化することによって、適度に純粋な形態の樹脂酸を得ることができる。大部分の樹脂酸が高融点であるために、酸性化は70℃よりも高い温度で行う。中性成分に富んだストリームを除去した後で精製することによって、有用なファインケミカルが得られる。中性成分に富んだストリームに含まれる成分の例としては、限定するわけではないが、ベータ−シトステロールを挙げることができる。
【0046】
また、適度に純粋な樹脂酸も、エステル化段階から直接的に得られる生成物ストリームをアルカリ洗浄水溶液で洗浄することによって得られる場合もある。樹脂酸は洗浄液に溶解する一方、脂肪酸アルキルエステルは中性成分と共に脂溶性相(疎水相)を形成する。ここでも、上述のように、樹脂酸はアルカリ洗浄液の酸性化後に得ることができる。脂肪酸アルキルエステルは、中性成分と脂肪酸アルキルエステルとの間の大きな蒸気圧差および沸点差を利用することによって、蒸発により中性成分から精製できる。
【0047】
上述した手法によって、CTOから3つの有用な生成物を製造することができる。即ち、「脂肪酸アルキルエステルに富んだストリーム」、「樹脂酸に富んだストリーム」および「中性成分に富んだストリーム」がCTOから製造される。
【0048】
FAAEに富んだストリームは、更に、精製、水素化および二量化から選択される少なくとも1つの方法によって処理してもよい。また、FAAEは、バイオディーゼル燃料における成分として、または界面活性剤および潤滑剤へのファインケミカル合成における原材料として使用してよい。
【0049】
上記トールオイルまたは反応混合物ストリームから有機硫黄化合物をストリッピングすることによって、あるいは、FAAEに富んだ生成物ストリームを精製することによって、「硫黄含有量が非常に低い脂肪酸アルキルエステル」に関する現在の要求を満たすことができる。かかる手法の例としては、アルカリ処理および選択的硫黄吸着を挙げることができる。それによって、脂肪酸アルキルエステルの硫黄は、約300ppm未満、好ましくは約50ppm未満、最も好ましくは約10ppm未満の硫黄レベルまで減じられる。
【0050】
上述した脂肪酸アルキルエステル生成方法は、脂肪酸原料として粗トールオイルを用いることに基づいているものの、その他の脂肪酸に富んだ原料をエステル化リアクターへの供給物として添加することで使用できる。かかる「脂肪酸に富んだ原料」としては、例えば、椰子油脂肪酸蒸留物(palm oil fatty acid distillate)またはオレイン酸、パルミチン酸またはステアリン酸などを含んだ他の脂肪酸に富んだ材料を挙げることができる。大量のトリグリセリドがこのような原料中に存在する場合、かかるトリグリセリドはエステル化リアクターにて脂肪酸アルキルエステルへとエステル交換される。本発明のある実施形態では、トールオイルの他に少なくとも1つの脂肪酸を含んで成るストリームがエステル化工程に加えられる。そのような脂肪酸は、好ましくは、椰子油脂肪酸蒸留物、ステアリン酸、パルミチン酸またはオレイン酸から成る群から選択される少なくとも1種類の脂肪酸である。飽和またはモノ不飽和脂肪酸に富んだ材料(例えば、椰子油脂肪酸)をトールオイルと共にエステル化リアクターに供給する利点としては、生成物脂肪酸アルキルエステルの酸化安定性が向上することである。更には、脂肪酸に富んだ供給物をエステル化リアクターに加える場合、製造業者は生成物脂肪酸アルキルエステルのヨウ素価を制御することができる。
【0051】
脂肪酸アルキルエステルの調製のために本明細書で説明する手法は、粗トールオイル石鹸中性成分の精製法と組み合わせることができる。このような方法は、業界では周知であって、粗トールオイル石鹸のHOエマルジョンを破壊すべく非乳化剤を添加して溶媒抽出を行うことに基づいている場合が多い。食品材料や薬剤の原材料としての中性成分の価値に加えて、精製トールオイル材料はより高い酸価(acid value)を有している。酸価は粗トールオイルに対する品質のパラメータであり、トールオイル供給物の酸価がより高いことは、本発明の方法の利点でもある。本発明のいずれかの処理段階から回収した「中性成分に富んだストリーム」は、たとえば、蒸発、蒸留または結晶化によってさらに処理されると、粗トールオイル石鹸中に元々存在するステロールおよび他の有機ファインケミカルが回収される。ある実施形態では、トールオイルの酸価を増加させトールオイル石鹸混合物中に存在する中性成分を回収するために、トールオイル石鹸を精製する。
【0052】
一方のトールオイルに存在する脂肪酸と、他方のトールオイルに存在する脂肪アルコールおよびさらにはステロールと間の不要なエステル化反応を防止するために、触媒エステル化工程に先立って、C1〜C8アルコールをトールオイルに添加してもよい。このような添加により、触媒エステル化工程が行われる前、たとえば、貯留時にて所定量の所望の脂肪酸アルキルエステルが形成されるといった利点がもたらされる。ステロールと脂肪酸と間の不要なエステル化反応も抑制される。
【0053】
ある実施形態では、エステル化工程を行う前に、揮発性硫黄化合物を蒸発させてトールオイルから分離する。
【0054】
ある実施形態では、HOおよびアルコールの除去後、脂肪酸アルキルエステルと樹脂酸/中性成分との沸点差を用いて真空下で蒸発分離を行うことによって、脂肪酸アルキルエステル生成物ストリームを2つの別々の処理ストリームへと分割する。
【0055】
ある実施形態では、アルカリ水性混合溶媒中で樹脂酸を石鹸として溶解させることによって、樹脂酸および中性成分に富んだストリームを「樹脂酸に富んだストリーム」と「中性成分に富んだストリーム」とに分ける。好ましい実施形態では、酸を用いて処理することによって樹脂酸を樹脂酸石鹸から回収する。
【0056】
また、本発明の別の要旨では、脂肪酸アルキルエステルを含有するバイオディーゼル燃料組成物が提供される。このような燃料組成物は、実質的に純粋な脂肪酸アルキルエステルか、あるいは、脂肪酸アルキルエステルの他に化石燃料および他の任意の添加剤をも含有する混合バイオディーゼル燃料組成物である。このような混合燃料の典型的な例は通常、B5またはB20と呼ばれるものである。尚、B5およびB20は、標準ディーゼル燃料中のバイオディーゼルの割合(パーセント)を表している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は本発明のエステル化法の実施の形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トールオイルから脂肪酸アルキルエステルを製造する方法であって、
工程a:脂肪酸アルキルエステルおよびHOを含んで成る粗生成物ストリームが形成されるように、少なくとも1つのエステル化リアクター内において酸触媒およびC1〜C8アルコールの存在下でトールオイルをエステル化する工程;
工程b:脱水脂肪酸アルキルエステルの生成物ストリームが形成されるように、工程a)で形成された粗生成物ストリームからHOおよびアルコールを分離する工程;ならびに
工程c:工程b)で得られた脱水脂肪酸アルキルエステル生成物ストリームを少なくとも2つの生成物ストリームへと分離する工程であって、2つの生成物ストリームの一方が脂肪酸アルキルエステルに富んでおり、2つの生成物ストリームの他方が樹脂酸化合物に富んでいる、工程
を含んで成る製造方法。
【請求項2】
工程a)のエステル化に先立って、揮発性硫黄化合物を蒸発させてトールオイルから分離する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程b)のHOおよびアルコールの分離と共に、粗生成物ストリームから揮発性硫黄化合物を分離する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程c)で得られる脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームを更に処理して10ppm未満の硫黄レベルにまで硫黄化合物を除去する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
アルカリ処理および吸着から成る群から選択される少なくとも1つの手法によって硫黄化合物を除去する、請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
硫黄化合物と脂肪酸アルキルエステルと樹脂酸との間の蒸気圧差を利用することによって、工程c)において硫黄化合物に富んだ第3ストリームを分離する、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の工程a)を実施するに先立って、C1〜C8アルコールをトールオイルに加える、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記トールオイルの形成に先立って、請求項1に記載の工程a)に供されるトールオイルをトールオイル石鹸の溶媒抽出によって精製する、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記C1〜C8アルコールがメタノールまたはエタノールである、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのエステル化リアクターが連続攪拌槽型リアクター(CSTR)である、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのエステル化リアクターが、反応蒸留リアクター、および、過剰アルコールを還流するリアクター配列から成る群から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
直列に設けた少なくとも1つの連続攪拌槽型リアクター(CSTR)および少なくとも1つの反応蒸留リアクターを用いてトールオイルのエステル化を行う、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
工程a)を約50〜約250℃の温度で行う、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
工程c)を約1bar〜約0.0005barの圧力で行う、請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
工程b)において反応混合物から除去されたHOおよびアルコールが、HO除去のために分離され、アルコールは少なくとも1つのエステル化リアクターへとリサイクルされる、請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
共留剤を反応混合物に添加して過剰なアルコールおよびHOの分離を促進する、請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の工程a)で存在することになるように、トールオイルの他に少なくとも1つの脂肪酸を含んで成るストリームを加える、請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
前記脂肪酸が、椰子油脂肪酸蒸留物、ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸から成る群から選択される少なくとも1種類の脂肪酸である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記酸触媒が、硫酸、有機酸(パラ−トルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸など)、スルホン酸に基づく固体樹脂触媒、有機スルホン酸官能化メソポーラスシリカ、硫酸化ジルコニウム、タングステン酸化ジルコニウムおよびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含んで成る、請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
脂肪酸アルキルエステルと樹脂酸/中性成分との間の沸点差を用いる真空蒸発蒸留によって、工程b)から得られる脱水脂肪酸アルキルエステル生成物ストリームを2つの別個のプロセス・ストリームへと分ける、請求項1〜19のいずれかに記載の製造方法。
【請求項21】
アルカリ水性混合物に石鹸として樹脂酸を溶解させることによって、樹脂酸成分および中性成分に富んだストリームを、樹脂酸に富んだストリームと中性成分に富んだストリームとに分離する、請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
酸を用いた処理によって樹脂酸を樹脂酸石鹸から回収する、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法に従って製造される脂肪酸アルキルエステル。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法に従って製造される樹脂酸。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれかに記載の製造方法に従って製造される脂肪酸アルキルエステルを含んで成る燃料組成物。
【請求項26】
自動車燃料としての請求項25に記載の燃料組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−513771(P2009−513771A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537647(P2008−537647)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/SE2006/050414
【国際公開番号】WO2007/050030
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(308028717)サンパイン・アクチボラゲット (1)
【氏名又は名称原語表記】SunPine AB
【Fターム(参考)】