説明

粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法

【課題】粗パームオイルの製造過程で排出される廃棄物を効率よく処理可能であり、その廃棄物の有効活用も可能になる粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法の提供。
【解決手段】第1の工程S1において、空果房EFBをスクリュープレス12によって圧搾し、第2の工程S2において、第1の工程S1で圧搾した後に残った空果房EFBの残骸WRCを、ボイラ14の炉15の中で燃やすことによって、粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブラヤシから採取されるパームオイルは、貴重な食品原料となる植物油である。そして、様々な植物油の中で、パームオイルの生産量はきわめて多い。マレーシアとインドネシアがパームオイルの二大生産地となっている。我が国は、これらの国から多量のパームオイルを輸入しており、マーガリン、即席麺やスナック菓子などの揚げ油、調理油、洗剤、石鹸、塗料、インク、化粧品などの原料として消費している。
【0003】
パームオイルはおおよそ以下に示す過程を経て製造される(例えば、特許文献1を参照)。
アブラヤシの果房(Fresh Fruit Bunch)が、農園で収穫され、農園近傍のパームオイル製造工場へ運ばれる。パームオイル製造工場へ運ばれた果房は、蒸気によって消毒される。蒸気で消毒した果房は、回転ドラムの中に投入される。回転ドラムの中で、個々の果実が果房から脱落する。果実が脱落した果房は、空果房(Empty Fruit Bunch)となる。果房から脱落した果実を圧搾することにより、粗パームオイル(Crude Palm Oil)が製造される。そして、粗パームオイルはさらに処理を加えられてパームオイルとなる。
【0004】
果実から粗パームオイルを搾り取った後には、種子が残る。この種子は、殻(Shell)と核(Kernel)とに分けられる。そして、核からパーム核オイル(Kernel Palm Oil)が製造される。
また、パームオイル製造工場で粗パームオイルを製造する過程において、排液(Palm Oil Mill Effluent)や空果房が廃棄物として排出される。廃液は、アブラヤシに由来する固形物、水、粗パームオイルを含んでいる。廃液は、処理池にためられて処理される。また、排出された空果房は、そのままパームオイル製造工場の周囲に野積みされている。
【0005】
なお、以下の説明において、空果房とは、果房のうちの果実を除外した部分のことを指し示すものとする。すなわち、以下の説明では、空果房と果実とが、果房のなかにおいて、それぞれ異なる部分を指し示しており、空果房が指し示す部分と、果実が指し示す部分とが、重複することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−112004号公報(段落0002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粗パームオイルを製造する過程で排出される排液を処理池にためて処理するにあたって、以下に述べる問題点が存在する。
すなわち、処理池において、排液の滞留時間が長期にわたる。このため、処理池に極めて多量の排液をためておかねばならず、広大な処理池が必要である。また、処理池で処理中の排液が、周辺の環境に漏出することを防止しなければならない。このため、相応の管理が必要である。したがって、排液を処理池で処理することは、処理効率の観点から好ましいとはいえない。
【0008】
また、メタンガスが処理池の中の排液から発生する。排液から発生するメタンガスは地球温暖化の一因となる。この点からも、排液を処理池で処理することが好ましいとはいえない。
さらに、粗パームオイルを製造する過程で排出される空果房は、きわめて多量である。多量の空果房をパームオイル製造工場の周囲に野積みしてそのまま放置しておくことは、パームオイル製造工場の周囲の環境を悪化させる要因となる。例えば、野積みした空果房が腐敗し、腐敗した空果房に虫がわく。空果房にわいた虫は、人や動物が病原菌に感染する原因となり得る。
【0009】
また、空果房には、果実が脱落せずにくっついたままとなっていることが多い。このような果実からは、粗パームオイルやパーム核オイルを得ることができるにもかかわらず、空果房に残っている果実は、そのままうち捨てられている。食料資源の不足が問題化している昨今、好ましいこととはいえない。
粗パームオイルを製造する過程において、空果房に粗パームオイルが付着することがある。本発明者が調べたところ、空果房の全重量のうちの1〜2%が、空果房に付着した粗パームオイルであるケースが多く見られた。
【0010】
さらに、本発明者が調べたところ、野積みして放置されている空果房は、6984kJ/kgもの熱量を有していることがわかった。このように大きな熱量を有している空果房を野積みして放置しておくことは、限られた燃料資源の有効利用が叫ばれている昨今、好ましいこととはいえない。
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物を効率よく処理可能であり、その廃棄物の有効活用も可能になる粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、アブラヤシの果肉から粗パームオイルを製造する過程で排出されるアブラヤシの空果房を圧搾する第1の工程と、前記第1の工程で圧搾した後に残った空果房の残骸を、炉の中で燃やす第2の工程と、を有している。
【0012】
粗パームオイルを製造する過程で排出される空果房は、房状をなしている。この房状の空果房を圧搾すると、空果房はばらばらにこわされて、残骸となる。このとき、空果房の硬い芯もこわされてしまう。第2の工程において、このばらばらにこわされた空果房の残骸を燃やすことは容易である。
第1の工程における圧搾は、例えば、従来あるスクリュープレスを用いて行うことができる。なお、本発明者の知見によれば、このスクリュープレスは、70HP(=52199W)かそれ以上の出力を有することが好ましい。
【0013】
第1の工程において、空果房を蒸気によって加熱し、加熱した空果房を圧搾することが可能である。空果房を蒸気によって加熱すれば、空果房が柔らかくなり、第1の工程での圧搾を容易化することができる。
第1の工程において、空果房をすりつぶし、このすりつぶした空果房を圧搾することも可能である。空果房をすりつぶしておけば、第1の工程での圧搾を容易化することができる。
また、第1の工程において、空果房を蒸気によって加熱し、加熱した空果房をすりつぶしてから、このすりつぶした空果房を圧搾することも可能である。空果房を蒸気によって加熱しすりつぶしておくことによって、第1の工程での圧搾をより容易化することができる。
【0014】
第2の工程において、空果房の残骸を燃やす炉から発生する熱は、様々な用途に利用可能である。例えば、この炉をボイラの熱源として利用し、ボイラで蒸気を発生させることができる。
なお、粗パームオイルを製造する過程において、空果房に粗パームオイルが付着することがある。空果房に付着している粗パームオイルを、第1の工程において搾り取って回収することができる。
【0015】
請求項2の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、請求項1に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法であって、前記第2の工程において、空果房の残骸を加熱してから、炉の中で燃やし、前記第2の工程における加熱の熱源が、前記第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉から出る排ガスである。
空果房の残骸は水分を含んでいる。空果房の残骸を加熱することにより、空果房の残骸の含水率を低くすることができ、空果房の残骸が燃えやすくなる。
また、第2の工程において空果房の残骸を燃やす炉から発生する熱が、この工程における加熱の熱源として有効利用される。
【0016】
本発明者が計測したところによれば、粗パームオイルを製造する過程で排出された空果房の含水率はおよそ80重量%であった。この空果房を出力70HP(=52199W)のスクリュープレスで圧搾すると、ばらばらにこわれた空果房の残骸の含水率が、およそ65重量%になった。そして、この空果房の残骸を、第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉から出る排ガスによって加熱すると、空果房の残骸の含水率が、およそ45重量%に減少した。なお、この計測時における炉の排ガス温度は350℃であった。したがって、空果房の残骸を、第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉から発生する排ガスによって加熱すると、空果房の残骸の含水率が非常に低くなり、好ましい。
【0017】
請求項3の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、請求項1または請求項2に記載の粗パームオイルを生産する過程で排出される廃棄物の処理方法であって、粗パームオイルを製造する過程で排出される排液の中から水を分離し、排液の中に含まれていた粗パームオイル及び固形物を取り出す第3の工程と、前記第3の工程で取り出した粗パームオイル及び固形物を、減圧環境の下で加熱することによって、前記第3の工程で取り出した粗パームオイル及び固形物に含まれている水を蒸発させて、水が蒸発した後に残った粗パームオイル及び固形物を混合して第1の混合物とする第4の工程と、を有する。
【0018】
粗パームオイルを製造する過程で排出される排液は、水、固形物及び粗パームオイルを含んでいる。排液の中の固形物及び粗パームオイルは、アブラヤシに由来するものである。特に、固形物は果肉を多く含んでいる。家畜は、排液に含まれている粗パームオイル及び固形物を餌や餌の一部として摂取することができる。
排液の中から粗パームオイル及び固形物を取り出したままの状態では、粗パームオイル及び固形物は多くの水を含んでおり、流動性が高く、取り扱いが煩雑である。排液の中から取り出した粗パームオイル及び固形物から水を蒸発させてしまえば、粗パームオイル及び固形物の取り扱いが容易化される。
【0019】
なお、水が蒸発した後に、粗パームオイル及び固形物が残るが、この粗パームオイルの少なくとも一部あるいは大部分は、固形物の中に含まれた状態になっている。
水が蒸発した後に残った粗パームオイル及び固形物を混合して、第1の混合物とする。この第1の混合物は、飼料として利用可能である。また、第1の混合物を、他の飼料の一部に混ぜて利用することも可能である。
排液の中から水を分離するに際しては、例えば、排液を容器の中に静置しておけばよい。排液を静置することにより、排液の中の水、粗パームオイル及び固形物が重力分離される。粗パームオイルが排液の表面に浮遊し、固形物が排液の底に沈殿する。排液の表面に浮遊する粗パームオイルは、かきとるなどして容易に取り出すことができる。
【0020】
また、排液を容器中に入れ、排液の中にフィルタを沈め、このフィルタによって排液の中の固形物を捕捉して、排液の中から固形物を取り出すことも可能である。本発明者の知見によれば、排液の中にフィルタを沈めることによって、フィルタの目詰まりが起こりにくくなる。すなわち、空気中において、フィルタに排液を通して排液の中から固形物を捕捉する場合と、排液の中にフィルタを沈めて排液の中から固形物を捕捉する場合と、を比較すると、後者の場合の方が、フィルタに目詰まりが起こりにくいのである。
【0021】
請求項4の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、請求項3に記載の粗パームオイルを生産する過程で排出される廃棄物の処理方法であって、前記第4の工程において、前記第1の工程でアブラヤシの空果房に残存していた果実から圧搾して搾り取った粗パームオイルを、前記第3の工程で取り出した粗パームオイル及び固形物と一緒に、減圧環境の下で加熱し、粗パームオイル及び固形物に含まれている水を蒸発させて、水が蒸発した後に残った粗パームオイル及び固形物を混合して第1の混合物とする。
【0022】
粗パームオイルを製造する過程で排出された空果房には、果実が残存している場合がある。このような場合、第1の工程において、空果房に残存していた果実から粗パームオイルをさらに搾り取ることができる。そして、第4の工程において、第1の工程から得られる粗パームオイルを、第3の工程で排液から取り出した粗パームオイル及び固形物と一緒に、減圧環境下で加熱し、混合して第1の混合物とする。第1の工程から得られる粗パームオイルも、第1の混合物の中に含まれることになる。したがって、第1の工程から得られる粗パームオイルを、飼料や飼料の原料として利用することが可能になる。
【0023】
第1の工程において、空果房と空果房に残存していた果実をすりつぶしてから圧搾する場合、果実の中の種を一緒にすりつぶすことができる。すりつぶした種を圧搾すれば、パーム核オイルが得られるので、第1の工程から得られる粗パームオイルの中にはパーム核オイルも混じることになる。パーム核オイルもまたアブラヤシに由来するものである。家畜は、パーム核オイルが混じった粗パームオイルを餌や餌の一部として摂取することができる。
なお、粗パームオイルが空果房に付着している場合がある。このような場合、第1の工程で果実を圧搾して得られる粗パームオイルの中には、空果房に付着していた粗パームオイルが、混入する。この空果房に付着していた粗パームオイルは、第4の工程で、第1の混合物の中に入ることとなる。
【0024】
請求項5の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、請求項3または請求項4に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法であって、前記第4の工程における減圧環境の下での加熱の熱源が、前記第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉を熱源とするボイラから発生する蒸気である。
第2の工程において空果房の残骸を燃やす炉から発生する熱が、第4の工程における加熱の熱源として有効利用される。
【0025】
請求項6の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、請求項3から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法であって、前記第2の工程で空果房の残骸を燃やしてできた灰と、前記第3の工程で排液から分離した水と、前記第4の工程で粗パームオイル及び固形物から蒸発した蒸気を凝縮して得られた水と、珪酸カルシウムと、を混合して第2の混合物とし、第2の混合物に濃硫酸を加えて固形化して第3の混合物とする第5の工程を有する。
【0026】
空果房の残骸は、カリウムを多く含んでいる。このため、第2の工程において空果房の残骸を燃やした炉の中には、カリウムを多く含んでいる灰が残されている。また、第3の工程で排液から分離した水には、アブラヤシに由来する様々な有機成分が含まれている。
第5の工程において、第2の工程で空果房の残骸を燃やしてできた灰と、第3の工程で排液から分離した水と、第4の工程で粗パームオイル及び固形物から蒸発した蒸気を凝縮して得られた水と、珪酸カルシウムと、を、混合して第2の混合物をつくる。この第2の混合物に濃硫酸を加えると、珪酸カルシウムと濃硫酸とが反応し、第2の混合物が固形化して第3の混合物になる。
【0027】
第3の混合物は、空果房の残骸に由来するカリウム、アブラヤシに由来する様々な有機成分、珪酸カルシウムに由来する珪素とカルシウム、濃硫酸に由来する硫黄を含んでいる。第3の混合物が含んでいるこれらの成分は、植物が生育する上で有用な成分である。したがって、第3の混合物を肥料の原料とすることが可能である。また、第3の混合物をそのまま肥料とすることも可能である。
【0028】
請求項7の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、請求項6に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法であって、前記第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉から発生する排ガスの中の粉塵を捕捉して回収し、排ガスから回収したこの粉塵を、前記第5の工程において、第2の混合物の中に混ぜ入れる。
【0029】
第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉から、排ガスが発生する。この排ガス中には、粉塵が含まれている。この粉塵を回収し、回収した粉塵を第2の混合物の中に混ぜ入れる。すなわち、第5の工程において、第2の工程で空果房の残骸を燃やしてできた灰と、第3の工程で排液から分離した水と、第4の工程で粗パームオイル及び固形物から蒸発した水を凝縮して得られた水と、珪酸カルシウムと、空果房の残骸を燃やす炉の排ガス中から回収した粉塵と、を混合して第2の混合物をつくる。
粉塵の中には、空果房に由来する様々な成分が混入して入る。これらの成分を第2の混合物M2の中に混ぜ入れることによって、これまで廃棄されていた空果房を肥料として土壌中に戻すことが可能である。
【0030】
請求項8の発明に係る粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法は、請求項6または請求項7に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法であって、前記第2の工程で空果房の残骸を加熱してから炉の中で燃やし、この加熱された空果房の残骸から蒸発した蒸気を凝縮して得られた水を、前記第5の工程において、第2の混合物の中に混ぜ入れる。
第2の工程で空果房の残骸を加熱してから燃やす場合、加熱された空果房の残骸から蒸気が発生する。空果房の残骸から発生した蒸気を凝縮して液化し、この液化した水を、第2の混合物をつくる際に利用することができる。
【発明の効果】
【0031】
上記のような粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法であるので、粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物を効率よく処理可能であり、その廃棄物の有効活用も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理施設のうち、第1の工程及び第2の工程に関連する装置の説明図である。
【図2】粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理施設のうち、第3の工程及び第4の工程に関連する装置の説明図である。
【図3】粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理施設のうち、第5の工程に関連する装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を実施するための形態を図1から図3を参照しつつ説明する。
図1からに図3に示すように、粗パームオイルCPOの製造過程で排出される廃棄物の処理施設10は、スクリュープレス12、第1の乾燥機13、ボイラ14、分離槽17、貯水槽21、第2の乾燥機23、ポンプ28、コンデンサ30、貯留槽32、混合槽34、反応槽36を有している。
図1及び図2に示すスクリュープレス12は、従来あるものと同様の構成を有している。スクリュープレス12は、スクリュープレス12に供給された物を圧搾し、供給された物の中から液体を搾り取ることを可能に構成されている。
【0034】
図1に示す第1の乾燥機13は、中空容器である。第1の乾燥機13は、後述するボイラ14の炉15に接続されており、炉15で発生する排ガスが第1の乾燥機13に入る構成となっている。
図1から図3に示すボイラ14は、従来あるものと同様の構成を有しており、高温の蒸気を発生可能に構成されている。ボイラ14の燃焼室が、燃料を燃やす炉15となっている。
【0035】
図2に示す分離槽17は、中空容器である。分離槽17は、スキマ18と目の粗いフィルタ19とを有している。スキマ18は、分離槽17の中に投入された液体の表面に浮遊する油をかきとって捕捉可能に構成されている。フィルタ19は、籠状をなし、分離槽17の中に液体を投入した後、液体の中に沈めることができる構成となっている。そして、液体の中に沈めたフィルタ19によって液体の中に含まれている固形物を捕捉可能に構成されている。
【0036】
図2及び図3に示す貯水槽21は、中空容器である。
図1及び図2に示す第2の乾燥機23は、乾燥室24と加熱室25とを有している。乾燥室24と加熱室25とは、隔壁26を介して互いに隣接している。乾燥室24には、ポンプ28の吸引側が接続されている。
加熱室25は、ボイラ14に接続されており、ボイラ14で発生する蒸気が加熱室25に入り、この蒸気の熱が加熱室25から隔壁26を介して乾燥室24に伝わる構成となっている。
【0037】
図2に示すポンプ28は、乾燥室24の中の空気や蒸気を吸引し、乾燥室24の中を減圧可能に構成されている。
図2に示すコンデンサ30の一次側入口は、ポンプ28の吐出側に接続されている。冷却水がコンデンサ30の二次側を流れている。コンデンサ30は、ポンプ28が吸引した乾燥室24の中の蒸気を冷却して凝縮し、液化可能に構成されている。
図2に示す貯留槽32は、中空容器である。貯留槽32は、その中の物を撹拌するためのインペラ(図示略)を有している。
図1から図3に示す混合槽34は、中空容器である。混合槽34は、その中の物を撹拌するためのインペラ(図示略)を有している。
図3に示す反応槽36は、中空容器である。反応槽36は、その中の物を撹拌するためのインペラ(図示略)を有している。
【0038】
処理施設10は、以上に説明した構成を備えている、次に、その作用について説明する。
パームオイル製造工場における粗パームオイルCPOを製造する過程から、空果房EFBと排液POMEが排出される。排出された空果房EFBには果実がいくらかくっついたまま残存している。また、パームオイル製造工場において、空果房EFBには粗パームオイルCPOが付着する。排出された空果房EFBには、この粗パームオイルCPOが付着したままになっている。そして、これらの空果房EFBと排液POMEが、処理施設10に搬入される。
【0039】
以下、処理施設10に搬入された空果房EFBと排液POMEの処理を、順番を追って説明する。
図1に示すように、処理施設10では、まず、空果房EFBがスクリュープレス12に供給される。スクリュープレス12が、空果房EFBとこの空果房EFBにくっついている果実を圧搾する。空果房EFBは、圧搾されてばらばらにこわれてしまい、残骸WRCとなる。
また、空果房EFBにくっついている果実も、スクリュープレス12によって圧搾されてばらばらにこわれてしまう。スクリュープレス12では、圧搾された果実から、粗パームオイルCPOが搾り取られる。
【0040】
また、スクリュープレス12では、パームオイル製造工場で空果房EFBに付着した粗パームオイルCPOも、一緒に搾り取られる。さらに、果実を圧搾する際、果実の中の種子がこわされ、種子の中の核からパーム核オイルが搾り取られる。このパーム核オイルは、スクリュープレス12によって搾り取られる粗パームオイルCPOの中に混入する。
スクリュープレス12が空果房EFBとこれにくっついている果実とを圧搾する工程が、第1の工程S1である。
スクリュープレス12でばらばらになった残骸WRCは、第1の乾燥機13に送られる。また、スクリュープレス12で果実から搾り取られた粗パームオイルCPOは、第2の乾燥機23の乾燥室24に送られる。
【0041】
ボイラ14は、予め、重油を燃料として運転されている。ボイラ14の炉15から高温の排ガスGが発生し、排ガスGが第1の乾燥機13に送られる。排ガスGの熱によって、第1の乾燥機13の中の残骸WRCは、加熱されて乾燥する。第1の乾燥機13で乾燥した残骸WRCは、ボイラ14に送られる。
ボイラ14では、第1の乾燥機13から送られてきた残骸WRCが、炉15の中で燃料の重油とともに燃やされる。高温の蒸気STM1が、ボイラ14から発生する。蒸気STM1は、第2の乾燥機23の加熱室25へ送られる。
【0042】
なお、炉15の中で燃料の重油のみが燃えている場合、重油が燃えるときに発生するガスが、第1の乾燥機13に送られる排ガスGとなる。炉15の中で残骸WRCが燃料の重油とともに燃えている場合、残骸WRCと重油とが燃えるときに発生するガスが、第1の乾燥機13に送られる排ガスGとなる。排ガスGは、第1の乾燥機13を通って外に排出される。
第1の乾燥機13で残骸WRCを加熱して乾燥させ、乾燥した残骸WRCをボイラ14の炉15で燃やし、蒸気STM1を発生させる工程が、第2の工程S2である。
【0043】
図2に示すように、排液POMEが、分離槽17に投入される。排液POMEを分離槽17に投入したら、フィルタ19を排液POMEの中に沈める。排液POMEの中の固形物SLDの少なくとも一部が、フィルタ19によって捕捉される。フィルタ19が固形物SLDを捕捉したら、フィルタ19を分離槽17から引き上げ、フィルタ19から固形物SLDを取り出す。
【0044】
分離槽17の中では、排液POMEの中の粗パームオイルCPOが、排液POMEの表面に浮遊している。スキマ18が、排液POMEの表面に浮遊する粗パームオイルCPOをかきとって捕捉する。また、分離槽17の底には、フィルタ19によって捕捉されなかった排液POMEの中の固形物SLDが、沈殿する。そして、分離槽17の底から、沈殿している固形物SLDを取り出す。
【0045】
フィルタ19から取り出した固形物SLDと、分離槽17の底から取り出した固形物SLDと、スキマ18が捕捉した粗パームオイルCPOと、が、第2の乾燥機23の乾燥室24に送られる。そして、分離槽17の中には、排液POMEの中の水が、水WTR1として分離されて残る。この水WTR1は、貯水槽21に送られる。
なお、フィルタ19から取り出した固形物SLDと、分離槽17の底から取り出した固形物SLDは、粗パームオイルCPOを含んでいる。
【0046】
分離槽17において、排液POMEの中から水WTR1を分離する工程が、第3の工程S3である。
第2の乾燥機23の加熱室25には、蒸気STM1がボイラ14から送られて来る。蒸気STM1の熱が、隔壁26を介して加熱室25から乾燥室24に伝わる。乾燥室24の中の粗パームオイルCPOと固形物SLDは、乾燥室24から伝わる蒸気STM1の熱によって加熱される。
【0047】
乾燥室24の中において、粗パームオイルCPOと固形物SLDとを加熱する際、ポンプ28が乾燥室24内の空気を吸引し、乾燥室24の中は大気圧以下に減圧される。減圧環境となった乾燥室24の中においては、加熱された粗パームオイルCPOと固形物SLDとに含まれている水が、蒸気STM2となって蒸発する。ポンプ28が、蒸気STM2を、乾燥室24の中の空気とともに吸引する。ポンプ28が吸引した乾燥室24の中の空気と蒸気STM2は、コンデンサ30の一次側に流れ込む。
コンデンサ30に流れ込んだ蒸気STM2は、コンデンサ30の二次側を流れる冷却水によって冷却され、凝縮して液化し、水WTR2となる。この水WTR2は、コンデンサ30から貯水槽21に送られる。
貯水槽21には、水WTR3がたまっている。水WTR3は、水WTR1と水WTR2とが一緒になって混ざり合ったものである。
【0048】
第2の乾燥機23において、粗パームオイルCPOと固形物SLDとからの蒸気STM2の蒸発が完了したら、粗パームオイルCPOと固形物SLDは、乾燥室24から取り出され、貯留槽32に送られる。貯留槽32に送られた粗パームオイルCPOと固形物SLDとは、貯留槽32のインペラによって混合されて、第1の混合物M1となる。
第1の混合物M1の主たる成分は、粗パームオイルCPOやアブラヤシの果肉である。また、第1の混合物M1は、スクリュープレス12によって搾り取られたパーム核オイルをも含んでいる。家畜等は、第1の混合物M1が含むこれらの成分を餌として摂取できるので、第1の混合物M1を家畜等の飼料として利用することができる。
【0049】
第2の乾燥機23において、粗パームオイルCPOと固形物SLDに含まれていた水が蒸発して蒸気STM2となり、コンデンサ30において、蒸気STM2が液化して水WTR2となり、水WTR2が貯水槽21に送られるとともに、貯留槽32において、粗パームオイルCPOと固形物SLDとが第1の混合物M1となるまでの工程が、第4の工程S4である。
【0050】
図3に示すように、ボイラ14の炉15から、残骸WRCが燃えてできた灰Aが取り出される。炉15から取り出された灰Aと、貯水槽21の水WTR3と、珪酸カルシウムと、が、混合槽34に投入される。混合槽34に投入されたこれらのものは、混合槽34の中でインペラによって混合されて第2の混合物M2となる。第2の混合物M2は、混合槽34から反応槽36へ送られる。
【0051】
濃硫酸が、反応槽36の中の第2の混合物M2に加えられ、濃硫酸と第2の混合物M2とが反応槽36の中でインペラによって混合される。第2の混合物M2の中の珪酸カルシウムが濃硫酸と反応し、第2の混合物M2が固形化し、第3の混合物M3となる。
混合槽34において、灰Aと、水WTR3と、珪酸カルシウムと、から第2の混合物M2をつくり、反応槽36において、第2の混合物M2に濃硫酸を加えて第3の混合物M3をつくるまでの工程が、第5の工程S5である。
【0052】
第3の混合物M3は、残骸WRCに由来するカリウム、アブラヤシに由来する様々な有機成分、珪酸カルシウムに由来する珪素とカルシウム、濃硫酸に由来する硫黄を含んでいる。これらの成分は、植物が生育する上で有用な成分である。したがって、第3の混合物M3を肥料として施肥することが可能である。また、第3の混合物M3を肥料の原料とすることも可能である。
【0053】
なお、本実施の形態において、第1の乾燥機13から排出される排ガスGの中に含まれる粉塵を捕捉して回収し、回収した粉塵を灰Aとともに混合槽34に投入してもよい。粉塵の中には、空果房EFBが有していた様々な成分が混入して入る。これらの成分を第2の混合物M2の中に入れることができ、最終的には、肥料として土壌中に戻すことが可能である。
【0054】
また、第1の乾燥機13の中で残骸WRCから発生した蒸気をコンデンサ30に送って凝縮して液化し、この液化した水を貯水槽21に送り水WTR3の一部とすることも可能である。
さらに、ボイラ14の炉15の排ガスGの熱によって、第2の乾燥機23の乾燥室24の中の粗パームオイルCPOと固形物SLDを加熱することも可能である。この場合、排ガスGを乾燥室24に直接送ることが可能であるし、排ガスGを加熱室25に送ることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 処理施設
12 スクリュープレス
13 第1の乾燥機
14 ボイラ
15 炉
17 分離槽
18 スキマ
19 フィルタ
21 貯水槽
23 第2の乾燥機
24 乾燥室
25 加熱室
26 隔壁
28 ポンプ
30 コンデンサ
32 貯留槽
34 混合槽
36 反応槽
S1 第1の工程
S2 第2の工程
S3 第3の工程
S4 第4の工程
S5 第5の工程
CPO 粗パームオイル
EFB 粗パームオイルの製造過程から排出された空果房
WRC 空果房の残骸
POME 粗パームオイルの製造過程から排出された排液
SLD 排液中の固形物
G ボイラの炉から発生した排ガス
STM1 ボイラから発生した蒸気
STM2 粗パームオイルと固形物から蒸発した蒸気
WTR1 排液から分離した水
WTR2 コンデンサで凝縮した水
WTR3 貯水槽の水
A 空果房の残骸が燃えてできた灰
M1 第1の混合物
M2 第2の混合物
M3 第3の混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブラヤシの果肉から粗パームオイルを製造する過程で排出されるアブラヤシの空果房を圧搾する第1の工程と、
前記第1の工程で圧搾した後に残った空果房の残骸を、炉の中で燃やす第2の工程と、を有することを特徴とする粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、空果房の残骸を加熱してから、炉の中で燃やし、
前記第2の工程における加熱の熱源が、前記第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉から出る排ガスであることを特徴とする請求項1に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法。
【請求項3】
粗パームオイルを製造する過程で排出される排液の中から水を分離し、排液の中に含まれていた粗パームオイル及び固形物を取り出す第3の工程と、
前記第3の工程で取り出した粗パームオイル及び固形物を、減圧環境の下で加熱することによって、前記第3の工程で取り出した粗パームオイル及び固形物に含まれている水を蒸発させて、水が蒸発した後に残った粗パームオイル及び固形物を混合して第1の混合物とする第4の工程と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粗パームオイルを生産する過程で排出される廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記第4の工程において、前記第1の工程でアブラヤシの空果房に残存していた果実から圧搾して搾り取った粗パームオイルを、前記第3の工程で取り出した粗パームオイル及び固形物と一緒に、減圧環境の下で加熱し、粗パームオイル及び固形物に含まれている水を蒸発させて、水が蒸発した後に残った粗パームオイル及び固形物を混合して第1の混合物とすることを特徴とする請求項3に記載の粗パームオイルを生産する過程で排出される廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記第4の工程における減圧環境の下での加熱の熱源が、前記第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉を熱源とするボイラから発生する蒸気であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記第2の工程で空果房の残骸を燃やしてできた灰と、前記第3の工程で排液から分離した水と、前記第4の工程で粗パームオイル及び固形物から蒸発した蒸気を凝縮して得られた水と、珪酸カルシウムと、を混合して第2の混合物とし、第2の混合物に濃硫酸を加えて固形化して第3の混合物とする第5の工程を有することを特徴とする請求項3から請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法。
【請求項7】
前記第2の工程で空果房の残骸を燃やす炉から発生する排ガスの中の粉塵を捕捉して回収し、排ガスから回収したこの粉塵を、前記第5の工程において、第2の混合物の中に混ぜ入れることを特徴とする請求項6に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法。
【請求項8】
前記第2の工程で空果房の残骸を加熱してから炉の中で燃やし、この加熱された空果房の残骸から蒸発した蒸気を凝縮して得られた水を、前記第5の工程において、第2の混合物の中に混ぜ入れることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の粗パームオイルを製造する過程で排出される廃棄物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−205967(P2012−205967A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164367(P2009−164367)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(503062378)
【Fターム(参考)】