粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定方法及び光学測定装置
【課題】 固体の粗面の屈折率と、粗面を固体とそれに接触している気体の混合層とみなしたときの、前記混合層における固体と気体の体積比γを測定することが可能な光学測定方法及び光学測定装置を提供すること。
【解決手段】 p偏光を気体が接触した試料30の粗面32に入射させ、粗面32から反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminに基づき気体が接触した粗面32の見掛けの屈折率ncsを測定する第1ステップと、p偏光を液体が接触した粗面32に入射させ、粗面32から反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiに基づき液体が接触した粗面32の見掛けの屈折率nciを測定し、屈折率ncs、nciに基づいて、粗面32を固体と気体の混合層とみなしたときの混合層における固体と気体の体積比γと、試料30の屈折率nmとを求める第2ステップとを有することを特徴とする。
【解決手段】 p偏光を気体が接触した試料30の粗面32に入射させ、粗面32から反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminに基づき気体が接触した粗面32の見掛けの屈折率ncsを測定する第1ステップと、p偏光を液体が接触した粗面32に入射させ、粗面32から反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiに基づき液体が接触した粗面32の見掛けの屈折率nciを測定し、屈折率ncs、nciに基づいて、粗面32を固体と気体の混合層とみなしたときの混合層における固体と気体の体積比γと、試料30の屈折率nmとを求める第2ステップとを有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定方法及び光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、代表的な屈折率測定法として、最小偏角法、臨界角法、エリプソメトリー(偏光解析法)、液浸法などが知られている。最小偏角法(非特許文献1参照)は、プリズムに加工された試料の頂角と、最小偏角を測定して屈折率を求めるもので、最も精密に屈折率を測定することができる。臨界角法(非特許文献2参照)は、液体の屈折率測定に適している。試料液の屈折率は、参照プリズムに対する相対値として求められる。エリプソメトリー(非特許文献3参照)は、既知の屈折率をもつ基板上の試料薄膜にP偏光とS偏光を入射し、反射による偏光状態の変化から、薄膜の厚さ、屈折率および消衰係数などを求める手法である。液浸法(非特許文献4参照)は、粉末状の試料と屈折率が段階的に変化した多数の透明液体を用いて、これらの液体に粉末試料を混ぜ、試料の輪郭が最も見にくい液体を選択することで、屈折率を求める方法である。この方法では、試料を鏡面加工せずに屈折率を測定できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Everitt Charles, "Refraction." The Encyclopedia Britannica, 11th Ed. vol. 23, The Encyclopedia Britannica Company, New York (1911) 26-27.
【非特許文献2】Tilton, Leroy W., and John K. Taylor,"Refractive Index Measurement," in Physical Methods in Chemical Analysis Vol. 1, 2nd ed. ; Walter G. Berl, editor (1961) 411-62. (E ABBE, "Carl's Repertorium der Physik", Vol. 15, 643 (1879). C. PULFRICH, "Zeitschrift fuer Instrumentenkunde", Vol. 18, 107 (1898))
【非特許文献3】藤原裕之,分光エリプソメトリー,丸善株式会社2003,7-124.
【非特許文献4】都城秋穂,久城育夫,「岩石学I」,共立出版 2000,pp.90-93.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最小偏角法には、試料をプリズムに加工するため、非破壊測定を行うことができないという問題点がある。また、臨界角法には、固体試料の屈折率を測定できない、最小偏角法ほどの測定精度が得られない、参照プリズムの屈折率より大きな屈折率を測定できないといった問題点がある。また、エリプソメトリーは、光学研磨や蒸着などにより表面をフラットにした固体あるいは液体を測定試料とする方法であり、粗面を有する固体試料の測定には適さない。また、液浸法は、破壊検査であること、浸液の屈折率(1.44〜1.88)の範囲内の素材に限られること、測定精度が先の3つの方法に比べて劣るといった問題点を抱えている。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固体の粗面になんらの加工を施すことなく、粗面を有する固体の屈折率を測定することが可能な光学測定方法及び光学測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定方法において、
前記固体の粗面に気体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率ncsを測定する第1ステップと、
前記固体の粗面に吸収係数又は散乱係数の大きな液体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率nciを測定し、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを求める第2ステップとを有することを特徴とする。
【0007】
ここで、固体粗面に入射した光が粗面において反射もしくは屈折する際に実際に感じる屈折率を見掛けの屈折率と呼ぶ。見掛けの屈折率は、固体本来の屈折率とは異なり、固体の屈折率とそれを取り巻く雰囲気の屈折率や粗面の凹凸状態から定められる。また、屈折率が異なる2つの媒質の界面からの戻り光のうち、反射の法則に従う光を反射光と呼び、それ以外の戻り光を散乱光と呼ぶことにする。また、屈折率が異なる2つの媒質の界面を透過する光のなかで、スネルの法則に従う光を透過光と呼び、それ以外の光を散乱光と呼ぶことにする。さらに、入射光の電界と反射光の電界の比を、電界反射率と定義し、入射光パワーと反射光パワーの比を、パワー反射率と定義する。
【0008】
本発明によれば、粗面を有する固体の屈折率を非破壊で測定することができる。
【0009】
(2)また本発明において、
前記第1ステップでは、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記気体が接触した粗面に入射角度φ1で入射させ、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射角度φ1で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminを求め、前記入射角度φminと、前記固体の粗面と接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求めるようにしてもよい。
【0010】
(3)また本発明において、
前記第1ステップでは、
【数1】
に基づいて前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求めるようにしてもよい。
【0011】
(4)また本発明において、
前記第2ステップでは、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させ、直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記透明プリズムに入射させ、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiを求め、前記入射角度φiと、前記透明プリズムの屈折率ngと、前記透明プリズムの出射面と対峙する頂角δと、前記透明プリズムと接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めるようにしてもよい。
【0012】
ここで、前記透明プリズムは、光の入射面、出射面及び反射面を光学研磨した透明プリズムであることが好ましい。
【0013】
(5)また本発明において、
前記第2ステップでは、
【数2】
に基づいて前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めるようにしてもよい。
【0014】
(6)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとに基づいて、前記混合層における固体と気体の体積比γを求めるようにしてもよい。
【0015】
(7)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記混合層における固体の体積Vmと気体の体積Vsの体積比をγ=Vs/Vmとすると、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとを、
【0016】
【数3】
で表し、
【0017】
【数4】
に基づいて前記体積比γを求めるようにしてもよい。
【0018】
(8)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記体積比γと、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsとに基づいて、前記固体の屈折率nmを求めるようにしてもよい。
【0019】
(9)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記固体の屈折率nmを、
【0020】
【数5】
で表し、
【0021】
【数6】
に基づいて前記固体の屈折率nmを求めるようにしてもよい。
【0022】
(10)本発明は、
粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定装置において、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記固体の粗面に入射させる光照射部と、
気体或いは液体を接触させた前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度を検出する光検出部と、
前記固体を回転させることで前記p偏光の入射角度を変化させる回転駆動部と、
前記p偏光を前記気体が接触した粗面に入射させた場合に、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを算出し、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させて前記p偏光を前記透明プリズムに入射させた場合に、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを算出し、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを算出する演算処理を行う演算処理部とを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、粗面を有する固体の屈折率を非破壊で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】気体が接触した固体表面における光の反射及び散乱の様子を模式的に示す図。
【図2】気体が接触した固体の粗面を、固体と気体の混合層とみなしたモデルを示す図。
【図3】気体が接触した粗面固体における入射角度φminと、混合層の散乱係数αの関係を示す図。
【図4】液体が接触した粗面固体の見掛けの屈折率測定について説明するための図。
【図5】液体が接触した粗面固体の見掛けの屈折率測定について説明するための図。
【図6】本実施形態の光学測定装置の構成の一例を示す図。
【図7】試料台を回転させる第1の回転機構と、光検出器台を回転させる第2の回転機構の構成の一例を示す側面図。
【図8】光学測定装置の変形例を示す図。
【図9】光学測定装置の変形例を示す図。
【図10】光学測定装置の変形例を示す図。
【図11】試料と透明プリズムを固定する一方法を示す図。
【図12】試料と試料台の位置関係を示す図。
【図13】透明プリズム、透明ダブプリズムおよびその他のプリズムの構成図。
【図14】図14(A)は、軽度粗面で反射した反射光を撮像した画像であり、図14(B)は、重度粗面で反射した反射光を撮像した画像である。
【図15】入射光と試料面の角度を決定する初期設定について説明するための図。
【図16】入射光と試料面の角度を決定する初期設定について説明するための図。
【図17】吸収係数の大きな液体の屈折率測定について説明するための図。
【図18】空気中に置かれたLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φ1との関係を示す図。
【図19】吸収係数の大きな液体に接触したLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φiとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0026】
1.測定原理
本実施形態の光学測定方法及び光学測定装置が採用する測定原理を説明する。
【0027】
1−1.粗面の凹凸に気体が接触した固体粗面(固体と気体からなる混合層)の見掛けの屈折率の測定(第1ステップ)
図1(A)に、気体雰囲気中に置かれた固体の粗面における光の反射と散乱の様子を模式的に示す。図1に示すように、すりガラスやアズカット結晶などの表面は、微細凹凸を有する粗面となっており、固体とそれを取り囲む雰囲気である気体(例えば、空気)が複雑に入り組んだ構造となっている。この粗面の構造の微細部分が入射光の波長と同程度かそれよりも小さい場合、図1(B)に示すように、固体の粗面は、固体と気体の混合層と看做すことができる。この混合層は、例えば、粗面の最も高い部分に接する面を上面とし、粗面の最も低い部分に接する面であって上面と平行な面を下面とするとき、上面と下面の間に存在する固体(粗面を構成する固体)と気体(粗面に接触している気体)とを構成要素とする層である。
【0028】
本実施形態における第1ステップでは、固体の粗面を、固体と気体の混合層とみなしたモデルを用いて、気体が接触した固体の粗面の見掛けの屈折率を測定する。
【0029】
図2に示すように、混合層(固体の粗面)に入射するp偏光(電界成分が入射面内で振動する直線偏光)の入射角度をφ1とし、混合層の屈折角度をφ2とし、固体の屈折角度をφ3とし、混合層の散乱係数と厚さをそれぞれα、dとすると、p偏光の入射光に対する混合層のパワー反射率Rpφ1は、次式のように表される。
【0030】
【数7】
【0031】
式(1)において、r1は、気体から混合層に光が入射するときのフレネル反射による振幅反射率(光の電界の反射率)であり、r2は、混合層と固体の境界で光が反射するときのフレネル反射による振幅反射率であり、それぞれ次式のように表される。
【0032】
【数8】
【0033】
ここで、nsは、気体の屈折率であり、ncsは、混合層の見掛けの屈折率であり、nmは、固体の屈折率である。
【0034】
また式(1)において、Lは、光が混合層を1往復するときの物理的光路長であり、Ψは、隣接する反射光間の位相差であり、それぞれ次式のように表される。ただし、λは入射光の波長である。
【0035】
【数9】
【0036】
ここで、散乱係数αと混合層内の光路長Lの積αLが非常に小さい場合、混合層表面の反射光(図2に示す光線100)だけでなく、混合層内部から反射の法則に従って反射する反射光の存在も無視できないため、反射光のパワー反射率Rpφ1は、式(1)にしたがって、φ1の変化とともに周期的な変化を示す。一方、前記αLが非常に大きい場合、混合層に入射した光は、様々な方向に散乱し、混合層内部からの反射光は極めて小さくなる。このとき、混合層表面の反射光(図2に示す光線100)が、混合層からの反射光のパワー反射率Rpφ1を支配することになり、反射光のパワー反射率Rpは、
【0037】
【数10】
となる。
【0038】
ここで、図1に示すように散乱光は全方位に放射されるのに対して、反射光は、入射角度と同じ反射角度を保つため、後述する図6〜図10に示す光学系を用いれば、殆どの散乱光を遮断して、反射光を選択的に取り出すことができる。図6〜図10に示す光検出器40に入射する光の主成分が反射光になれば、ブリュースター(Brewster)の法則を利用して混合層(すなわち粗面)の見掛けの屈折率ncsを求めることができる。混合層と気体の界面のブリュースター角をφBとすると、混合層の屈折率ncsは、次式のように表される。
【0039】
【数11】
【0040】
このとき、ブリュースターの法則よりr1=0であるから、式(1)から、ブリュースター角φBにおけるパワー反射率RpφBは、次式のように表される。
【0041】
【数12】
【0042】
式(8)が成立する条件を探るため、式(1)に式(2)〜(5)を代入し、変数φ1に関する偏導関数∂Rpφ1)/φ1を求め、これがゼロとなるときの入射角度を求める。ここでは、固体の屈折率nm=2.5とし、気体の屈折率ns=1とし、混合層の屈折率ncs=1.6〜2.4とし、混合層の厚さd=1000nmとし、p偏光の入射光の波長λ=632.8nmとする条件で計算を行った。
【0043】
図3は、パワー反射率Rpφ1が最小値になる入射角度φminと、混合層の散乱係数αの関係を示す解析結果を示す図である。図3は、αd>2のときに、入射角度φminが一定値になることを示している。混合層の屈折率ncsを、1.6〜2.4の範囲で変化させて、入射角度φminを求めた結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示した、入射角度φminは、それぞれ、式(7)で表されるブリュースター角φBと一致している。図3や表1の解析結果は一例であり、ns、ncs、nm、d及びλを変化させても、混合層がαd>2の条件を満たす限り、φmin=φBが成立する。従って、本解析から、αd>2を満たす混合層の屈折率ncsは、次式により求められることが明らかである。
【0046】
【数13】
【0047】
従って、p偏光を気体に接触している固体の粗面に入射させ、粗面で反射した反射光の強度(すなわち、パワー反射率Rpφ1)が最小になる入射角度φminを測定し、測定した入射角度φminと、気体の屈折率nsを式(9)に代入することで、固体の粗面を固体と気体の混合層とみなしたときの混合層の屈折率ncs(すなわち、固体の粗面の見掛けの屈折率)を求めることができる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、固体の粗面を固体と気体雰囲気の混合層とみなして、粗面の見掛けの屈折率を測定することができる。
【0049】
1−2.粗面の凹凸に気体が接触した固体粗面(固体と気体からなる混合層)における固体と気体の体積比γと固体の屈折率nmを未知数とする方程式の導出
次に、αd>2を満たす混合層における固体と気体の体積比γと固体の屈折率nmとを関係付ける方程式の導出について説明する。
【0050】
固体の密度をρmとし、気体の密度をρsとし、混合層の密度をρcsとすると、固体、気体及び混合層のそれぞれの密度と屈折率の間には、ローレンツ-ローレンツ(Lorentz-Lorenz)の公式から、次式に示す関係が成立する。
【0051】
【数14】
【0052】
ここで、βは、混合層中での気体の重量(%)である。
【0053】
また、固体の体積をVmとし、気体の体積をVsとし、混合層の体積をVcsとすると、次式が成立することも明白である。
【0054】
【数15】
【0055】
式(11)〜(13)から、次式を得る。
【0056】
【数16】
【0057】
ここで、γは、混合層における固体の体積Vmと気体の体積Vsの比である。
【0058】
式(13)を書き直すと、
【数17】
となり、式(12)を書き直すと、
【0059】
【数18】
となる。式(17)を式(16)に代入すると、次式を得る。
【0060】
【数19】
【0061】
式(14)を式(18)に代入すると、次式を得る。
【0062】
【数20】
【0063】
ここで、固体の屈折率nm、気体の屈折率ns及び混合層の屈折率ncsのそれぞれの関数fm、fs、fcsを、
【0064】
【数21】
と定義し、式(20)と式(14)を、式(10)に代入すると、次式を得る。
【0065】
【数22】
【0066】
式(21)に式(19)を代入すると、次式を得る。
【0067】
【数23】
【0068】
ここで、気体の屈折率nsは凡そ1(例えば、空気ならば、0℃、1気圧の条件でns=1.000292)であるから、式(20)より屈折率nsの関数fsは凡そ0となる。そこで、fs=0を式(22)に代入することで、次式に示すように、混合層における固体と気体の体積比γと固体の屈折率nmの関数fmを関係付けても良い。
【0069】
【数24】
【0070】
1−3.吸収係数又は散乱係数の大きな液体が、粗面に接触した固体粗面(固体と前記液体から成る混合層)における固体と前記気体の体積比γと固体の屈折率nmを未知数とする方程式の導出、および前記体積比γと固体の屈折率nmの導出(第2ステップ)
次に、粗面を有する固体の屈折率nm(固体の真の屈折率)と体積比γを同時に測定する原理を説明する。
【0071】
式(22)および式(23)は、どちらも2つの変数γとfmを含む。これらの変数を決定するためには、空気以外の別の雰囲気(例えば液体)を粗面の凹凸に接触させ、式(22)に相当する新たな見掛けの屈折率nciと前記体積比γを関係付ける方程式を求め、この方程式と式(22)あるいは式(23)との連立方程式を解くことが必要である。
【0072】
空気以外のもう1種類の雰囲気として、(a)真空、(b)空気と屈折率の異なる同一圧力の気体、(c)圧力の異なる空気あるいはそれ以外の気体、(d)透明度の高い液体、(e)大きな吸収係数と大きな散乱係数のうちどちらか一方を少なくとも有する液体、が考えられる。
【0073】
(a)と(b)は、第1ステップにおける気体(例えば、空気)との屈折率差が非常に小さいため適当でない。(c)は、2種類の気体の気圧差を非常に大きくすれば屈折率差を大きくできるため測定可能であるが、装置が大掛かりになり適当でない。(d)は、混合層における固体と液体の屈折率差が、固体と空気の屈折率差よりも小さくなるため、αd<2になる可能性があり適当でない。(e)は、混合層における固体と液体の反射率は低下するが、その代わりに混合層を伝播する光は、液体に吸収される効果、あるいは液体中で散乱される効果、あるいはこれら二つの効果により、大きく減衰するため、混合層内部からの反射光を無視して差し支えない。すなわち、ウエット状態を厭わない試料の場合、大きな吸収係数と大きな散乱係数のうちどちらか一方を少なくとも有する液体が最も適している。
【0074】
ここでは、空気以外のもう1種類の雰囲気として、高吸収率の液体(吸収係数の大きな液体)を用いる方法について説明する。液体の吸収係数をηとすると、図3の解析結果から、吸収係数ηは以下の値が望ましい。
【0075】
【数25】
【0076】
図4に示すように、高吸収率の液体を、固体の粗面に均一に塗布し、その上から透明プリズム(光の入射面、出射面及び反射面を光学研磨した透明プリズム)を圧着して、厚さdの混合層を形成する。混合層は、固体と吸収係数ηの液体で構成される。
【0077】
図5に示すように、固体と透明プリズムで挟まれた混合層にp偏光を照射し、混合層からの反射光の強度が最小値になる混合層の入射角度φ’minを求める。入射角度φ’minを直接測定することはできないが、反射光の強度が最小値になる透明プリズムの入射角度φiを測定して、スネルの法則よりφiとφ’minを関係付ければよい。
【0078】
透明プリズム、固体および混合層の屈折率を、それぞれng、nm、nciとすると、式(24)が成立する場合には、反射光の強度が最小になるとき、次式が近似的に成り立つ。
【0079】
【数26】
【0080】
また、透明プリズムと、屈折率nsの気体(空気)の間には、次式のスネルの法則が成立する。
【0081】
【数27】
【0082】
ここで、φgは、図5に示すように透明プリズムと気体の界面における屈折角度である。
【0083】
式(25)、式(26)より、混合層の屈折率nciは、次式により求めることができる。
【0084】
【数28】
【0085】
ここで、δは、図5に示すように、透明プリズムの出射面と対峙する頂角(透明プリズムの入射面と反射面とがなす角度)である。
【0086】
従って、p偏光を透明プリズムの入射面に入射させ、固体の粗面(透明プリズムと固体の粗面との界面)で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiを測定し、測定した入射角度φiと、透明プリズムの屈折率ngと、透明プリズムの頂角δと、気体の屈折率nsを式(27)に代入することで、固体と高吸収率の液体とで構成される混合層の屈折率nci(すなわち、高吸収率の液体と接触している固体粗面の見掛けの屈折率)を求めることができる。
【0087】
ここで、固体の屈折率nm、高吸収率の液体の屈折率ni及び混合層の屈折率nciのそれぞれの関数fm、fi、fciを、
【0088】
【数29】
【0089】
と定義すると、混合層は固体と液体で構成されるから、式(22)から、次式が成立する。
【0090】
【数30】
【0091】
式(23)を式(29)に代入して整理すると、次式を得る。
【0092】
【数31】
【0093】
従って、高吸収率の液体の屈折率ni(すなわち、niの関数fi)が明らかな場合には、第1ステップの測定値である混合層の屈折率ncs(すなわち、ncsの関数fcs)と、第2ステップの測定値である混合層の屈折率nci(すなわち、nciの関数fci)とを式(30)に代入することで、混合層における固体と前記気体の体積比γを求めることができる。
【0094】
すなわち、式(9)により求めた混合層の屈折率ncs(気体と接触している固体粗面の見掛けの屈折率)を、式(20)に代入することでfcsを求め、式(27)により求めた混合層の屈折率nci(高吸収率の液体と接触している固体粗面の見掛けの屈折率)を、式(28)に代入することでfciを求め、求めたfcsとfciとfiを式(30)に代入することで、固体の粗面を固体と気体の混合層とみなしたときの混合層における固体と気体の体積比γを求めることができる。
【0095】
また、式(30)により求めた体積比γと、第1ステップの測定値である混合層の屈折率ncs(すなわち、ncsの関数fcs)とを式(23)(或いは、式(22))に代入することで、固体の屈折率nmの関数fmを求め、求めたfmを式(20)に代入することで、固体の真の屈折率nmを求めることができる。
【0096】
このように本実施形態によれば、第1ステップで気体雰囲気での粗面の見掛けの屈折率ncsを測定し、第2ステップで高吸収率の液体雰囲気での粗面の見掛けの屈折率nciとを測定することにより、粗面を有する固体の屈折率nmと混合層の体積比γとを非破壊で測定することができる。また、本実施形態によれば、反射光強度を測定するため、吸収の大きな物質の屈折率も測定することができる。また従来の臨界角法や液浸法では、測定可能な屈折率の範囲が限られているが、本実施形態によれば、混合層がαd>2の条件を満たす限り、あらゆる範囲の屈折率を測定することができる。
【0097】
2.構成
図6は、本実施形態の光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【0098】
本実施形態の光学測定装置1は、測定対象である試料30(粗面を有する固体)の粗面32の見掛けの屈折率ncs、及び混合層における固体と気体の体積比γを測定する装置である。光学測定装置1は、レーザダイオードからなる光源10と、ビームスプリッタ12と、円形の開口を有するアパーチャ14と、p偏光を透過させる偏光子20及び検光子22と、光電センサ(フォトディテクタ)からなる第1及び第2の光検出器40、42と、連続光をチョッピングするチョッパー50と、チョッパー制御部52と、ロックインアンプ54と、試料30が載置される試料台60と、第1の光検出器40が載置される光検出器台62と、試料台60を回転軸RAを中心に回転させる第1の回転機構(図示せず)と、光検出器台62を回転軸RAを中心に回転させる第2の回転機構(図示せず)と、演算装置70とを含む。回転軸RAはZ軸と平行で、試料30の粗面32の面内あるいはその近傍に存在し、粗面32の法線33と直交する。
【0099】
光源10から出射した光は、偏光子20を透過して、水平面(図6のX軸とY軸を含む面)内で振動するp偏光になる。すなわち、p偏光の電界は、試料30の粗面32の法線33を含む水平面で振動する。このp偏光は、チョッパー50によりパルス変調され、試料30の粗面32の面内に入射する。入射光と反射光の交点は、回転軸RAに一致する、あるいは、少なくとも回転軸RAの近傍であることが望ましい。
【0100】
粗面32で反射したp偏光の反射光は、図6に示すように入射角φと等しい反射角φの方向に進む。一方、散乱光は、入射光と反射光の交点から全方向に放射される。反射光と散乱光の強度を測定するために、光検出器台62に、入射光のビーム径とほぼ同一径の開口を有するアパーチャ14、検光子22および第1の光検出器40が設置されている。
【0101】
第1の光検出器40(光検出部)は、光検出器台62の回転にともない粗面32で反射した反射光および散乱光を受光し、受光した光の強度を電流もしくは電圧に変換(光電変換)して、光強度情報(検出信号)としてロックインアンプ54に出力する。
【0102】
また、チョッパー制御部52は、チョッパー50に制御信号(駆動信号)を出力して、チョッパー50の駆動を制御するとともに、当該制御信号を参照信号としてロックインアンプ54に出力する。ロックインアンプ54は、第1の光検出器40から出力された検出信号のうち、チョッパー制御部52から出力された参照信号と等しい周波数成分を検出し、演算装置70に出力する。チョッパー50、チョッパー制御部52、ロックインアンプ54を用いることで、測定精度を向上させることができる。
【0103】
ビームスプリッタ12は、光源10から出射された光の一部を反射する。第2の光検出器42は、ビームスプリッタ12で反射した光を受光し光電変換し、検出信号を演算装置70に出力する。ビームスプリッタ12と、第2の光検出器42を用いて、光源10からの出射光強度の変動を検出することで、出射光強度の変動に伴う第1の光検出器40によって検出される光強度の変動を補償することができ、測定精度を向上させることができる。
【0104】
なお、ここでは半導体レーザを光源とする一例を示したが、半導体レーザの代わりにガスレーザ、色素レーザ、固体レーザを用いることもできる。また、ハロゲンランプやキセノンランプなどのいわゆるインコヒーレント光源を用いることも可能である。ただし、インコヒーレント光は一般に非常に広い発光スペクトルを有しているため、光源10とビームスプリッタ12の間にスペクトルを狭める光バンドパスフィルタを挿入する必要がある。
【0105】
図7(A)は、試料台60を回転させる第1の回転機構61と、光検出器台62を回転させる第2の回転機構63の構成の一例を示す側面図である。
【0106】
図7(A)に示すように、試料台60は、試料台60を回転させる第1の回転機構61、試料台60のあおり角を調整するあおり機構64(ゴニオ)、及び試料台60をXYZ軸方向に空間移動させるXYZ移動機構65の上に設けられている。XYZ移動機構65は、第1の支持ポール67によって支持されている。
【0107】
光検出器台62は、光検出器台62を回転させる第2の回転機構63に取り付けられている。光検出器台62には、アパーチャ14を支持する支持ポール(図示せず)と、検光子22を支持する第2の支持ポール68と、第1の光検出器40を垂直移動させる垂直移動機構66が設けられ、垂直移動機構66には、第1の光検出器40を支持する第3の支持ポール69が設けられている。第1及び第2の回転機構61、63は、手動回転ステージや自動回転ステージ等により構成することができる。
【0108】
第1の回転機構61と第2の回転機構63の回転軸RAは一致しており、また、回転軸RAは円形の試料台60の中心と一致している。試料台60は、第1の回転機構61によって回転軸RAを中心に回転し、光検出器台62、アパーチャ14、検光子22及び第1の光検出器40は、第2の回転機構63によって回転軸RAを中心に回転する。
【0109】
上述したように本実施形態では、試料30の粗面で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φmin(或いは、入射角度φi)を求める。そのため、第1の回転機構61により試料台60を回転することで、p偏光の入射角度φ(図6参照)を変化させ、p偏光の入射角度φの変化に応じて、第2の回転機構63により光検出器台62を回転することで、試料30の粗面32で反射した反射光がアパーチャ14及び検光子22を介して第1の光検出器40に入射するように構成している。
【0110】
図7(B)は、試料台60の上面図と側面図である。図7(B)に示すように、円形の試料台60には、回転軸RAを示す点とそれを通る直線が示されている。この直線と粗面32の表面が同一平面になるように、試料30は載置される(設置に必要な装置については図示を省略する)。
【0111】
再び図6を参照すると、演算装置70は、演算処理部72と、記憶部74とを含む。演算処理部72は、ロックインアンプ60から出力された光強度情報に基づいて、試料30の粗面32で反射した反射光の強度が最小になるp偏光の入射角度φminを求め、入射角度φminと気体の屈折率nsとに基づいて、気体と接触している試料30の粗面32の見掛けの屈折率ncsを算出する演算処理(第1ステップの演算処理)を行う。
【0112】
また、演算処理部72は、試料30の粗面32に吸収係数ηの液体を介して透明プリズムを圧着させた状態において、p偏光を前記透明プリズムに入射させたときに、ロックインアンプ60から出力された光強度情報に基づいて、試料30の粗面32で反射した反射光の強度が最小になるp偏光の入射角度φiを求め、前記入射角度φiと、前記透明プリズムの屈折率ngと、前記透明プリズムの頂角δと、前記透明プリズムと接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記液体と接触している試料30の粗面32の見掛けの屈折率nciを求め、前記気体と接触している粗面32の見掛けの屈折率ncsと、前記液体と接触している粗面32の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとに基づいて、試料30の粗面32を固体と気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γを算出する演算処理(第2ステップの演算処理)を行う。また、演算処理部72は、前記体積比γと、気体と接触している粗面32の見掛けの屈折率ncsとに基づいて、試料30の屈折率nmを算出する演算処理(第2ステップの演算処理)を行う。
【0113】
なお、光学測定装置1が、チョッパー50、チョッパー制御部52及びロックインアンプ54を備えない場合には、演算処理部72は、第1の光検出器40から出力された光強度情報に基づき前記演算処理を行う。
【0114】
記憶部74は、種々のデータを一時記憶する機能を有し、例えばロックインアンプ60から出力された光強度情報を、p偏光の入射角度φと対応付けて記憶する。
【0115】
図8〜図10は、光学測定装置1の変形例を示す図である。
【0116】
図8に示す光学測定装置1では、試料台60とアパーチャ14との間に凸レンズ16を設けている。ここで、凸レンズ16とアパーチャ14間の距離は、凸レンズ16の焦点距離fと一致する。従って、平行光である試料30からの反射光は、アパーチャ14の開口を通過して、第1の光検出器40に入射する。一方、試料30と凸レンズ16間の距離aは、凸レンズ16の焦点距離f以下となっており、試料30からの散乱光は、アパーチャ14により遮断される。また、図8に示す構成によれば、図6に示す構成と比べて、光検出器台62の光路に沿った方向の長さを短くすることができる。
【0117】
図9に示す光学測定装置1では、光源10と試料台60との間にビームエクスパンダ18を設けて、光源10から出射された光のビーム径を大きくしている。試料30に入射するp偏光のビーム径を大きくすることで、平行光である試料30からの反射光は、凸レンズ16によってより小さなスポットに集光されるため、図8に示す構成と比較してアパーチャ14の開口をより小さくすることができ、試料30からの散乱光の影響をより小さくすることができる。
【0118】
図10に示す光学測定装置1では、チョッパー50に代えて光変調器51(例えば、光弾性変調器)が設けられ、チョッパー制御部52に変えて信号発生器53及び増幅器55が用いられている。光変調器51を用いることで、光源10から出射された光の強度を、矩形波状ばかりでなく正弦波状にも変化させることができ、また、変調周波数を低周波から高周波まで自在に選択することができる。
【0119】
図6〜図10は、粗面が気体に接触する第1ステップにおける構成である。第2ステップでは、前記透明プリズムを吸収係数の大きな前記液体を介して試料30の粗面32に圧着することで試料30の粗面32に前記液体を接触させること以外は、第1ステップと同じ構成で計測を行うことができる。
【0120】
試料30と透明プリズムを接触させる手法の1例を図11に示す。試料30と透明プリズム110は、V溝ブロック111と台座112の間に設置され、ねじ113とばね114を用いて、試料30、透明プリズム110、V溝ブロック111及び台座112が一体となって保持される。これらは、図12に示すように、試料台60の回転軸RAを通る直線と粗面32が一致するように調整される。ここでは、試料30やそれを支持するV溝ブロック111などを試料台60に設置する装置の図示を省略している。
【0121】
透明プリズムに与えられる条件は、図13(A)に示すように、入射面、反射面および出射面が鏡面であり、かつ、出射面と対峙する頂角δが、δ<90°である。
【0122】
図13(B)に、透明ダブプリズムを示し、図13(C)に、その他のプリズムを示す。いずれも透明プリズムに代わる光学部品であり、反射面と対峙する面が反射面と平行になっているため、図11のV溝ブロックを用いずに、平行平板ブロックを用いて試料30とそれに接触したプリズムを安定、かつ容易に保持することができるという特徴をもつ。
【0123】
3.測定方法
第1ステップの測定に先立って、入射光と試料面(試料30の粗面32)の角度を決定する初期設定を行う。まず、試料30の粗面32を含む無限平面内に、試料台60の回転軸RAを通る直線が含まれるように、試料30を設置する。厳密には粗面は微細な凹凸を有するが、これを平面とみなしても、測定精度に影響を及ぼすことはない。
【0124】
試料30が軽度な粗面を有する場合には、図14(A)に示すように、散乱光に混じって反射光の存在(図14(A)に示す画像の中央付近の明るい部分)が認められる。この場合には、図15(A)に示すごく一般的な方法で入射光の光軸と試料面の法線を一致させることができる。すなわち、レーザ光の直径とほぼ一致した開口をもつアパーチャを光源10と試料30の間に設け、試料30からの反射光がこの開口を通過するように試料台60の角度を調整すればよい。この状態を0度として、図15(B)に示すように、試料台60を回転軸RAを中心に角度φだけ回転させれば、φが入射角度になる。このとき、試料30からの反射光がアパーチャ14及び検光子22を介して第1の光検出器40に入射するように光検出器台62を回転軸RAを中心に回転させるようにすると、入射角度φの場合における試料30からの反射光の強度を測定することができる。
【0125】
また、試料30が重度な粗面を有する場合には、図14(B)に示すように、肉眼では散乱光と反射光を区別することはできない。この場合には、図16に示すように、アパーチャと試料30の間とビームスプリッタと第2の光検出器42の間に、それぞれ凸レンズ101、102を設け、試料30からの反射光を凸レンズ101を介してビームスプリッタにより反射させ、ビームスプリッタからの反射光を別の凸レンズ102を介して第2の光検出器42に入射させる。第2の光検出器42によって検出された光強度が最大になるように、試料台60の角度を調整することで、入射光の光軸と試料面の法線を一致させることができる。
【0126】
以上の初期設定が終了したら、初期設定用のアパーチャや凸レンズを光路から外して第1ステップの測定を行う。すなわち、試料台60を回転させることでp偏光の入射角度φを変化させ、且つ光検出器台62を回転させて、第1の光検出器40により、試料30の粗面32で反射した反射光の強度IRを測定する。このとき、光源10から出射された光の強度Iiも第2の光検出器42により測定し、次式の規格化されたパワー反射率Rpを算出する。
【0127】
【数32】
【0128】
反射光強度を入射光強度で割ることにより、入射光強度の変動をキャンセルすることができ、パワー反射率Rpの測定精度を向上させることができる。そして、パワー反射率Rpが最小になるp偏光の入射角度φminを求め、入射角度φminに基づき、気体が接触した粗面32の見掛けの屈折率ncs(固体と気体からなる混合層の屈折率)を算出する。
【0129】
第2ステップの測定に先立って、まず、透明プリズムと大きな吸収係数をもつ液体の屈折率を予め測定しておく。
【0130】
透明プリズムの屈折率測定に最も適した方法は、従来の最小偏角法であり、その測定方法はよく知られているため、ここではその説明を省略する。
【0131】
次に、図17を用いて、吸収係数の大きな液体の屈折率niを測定する手法について説明する。前記液体を容器に入れ、前記透明プリズムで蓋をする。このとき、液体と基板の間に空気が入らないように、液体と透明プリズムを完全に接触させる。図11と同様に台座とV溝ブロックで透明プリズムと容器を軽く圧着し、これを図6〜図10に示すいずれかの光学系に、試料(液体)の表面を含む無限平面内に試料台60の回転軸RAを通る直線が含まれるように、試料30を設置する。
【0132】
そして、第2ステップの測定手順で測定すれば、前記液体の屈折率niを求めることができる。すなわち、反射光の強度が最小になる入射角度をξmin(図17参照)とすれば、式(24)が成立する場合には、次式が近似的に成り立つ。
【0133】
【数33】
【0134】
また、透明プリズムと屈折率nsの気体(空気)との間には、次式のスネルの法則が成立する。
【0135】
【数34】
【0136】
ここで、φgは、図17に示すように屈折角度である。
【0137】
式(32)、式(33)より、吸収係数の大きな液体の屈折率niは、次式により求めることができる。
【0138】
【数35】
【0139】
ここで、δは、図17に示すように、透明プリズムの出射面と対峙する頂角である。
【0140】
前記透明プリズムと前記液体の屈折率測定が終了したら、試料30である粗面固体に前記液体を十分に垂らし、透明プリズムを粗面に密着させる。固体と透明プリズムを図11に示す台座とV溝ブロックで軽く圧着し、試料30の粗面32を含む無限平面内に試料台60の中心RAを通る直線が含まれるように、試料30を設置する。つぎに図6〜図10に示すいずれかの光学系にセットし、第1ステップと同様の測定手順で測定すれば、前記液体に接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めることができる。すなわち、反射光の強度が最小になる入射角度φi(図5参照)を測定し、式(27)に代入すれば、前記液体に接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めることができる。
【0141】
本実施形態では、透明プリズムとしてアクリル製プリズムを用いた。また、大きな吸収係数をもつ液体として、インクジェット式プリンターに用いられる黒色インク液を用いた。
【0142】
4.測定結果
図18及び表2に、本実施形態の光学測定装置及び光学測定方法における第1ステップでの測定結果を示す。ここでは、図6に示す光学測定装置1において、試料としてアズカットのLiTaO3結晶(LT結晶)を用い、光源として632.8nm波長のHe−Neレーザを用いて測定を行った。
【0143】
図18に、軽度の粗面を有するLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φ1との関係を示す。これらの測定結果から得られる入射角度φminに基づいて、軽度の粗面を有するLT結晶の粗面の見掛けの屈折率ncs(粗面を固体(結晶)と気体(空気)の混合層とみなしたときの混合層の屈折率)を求めた。測定結果を表2に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
次に図19及び表3に本実施形態の光学測定装置及び光学測定方法における第2ステップでの測定結果を示す。ここでは、第1ステップでの測定結果と同様に図6に示す光学測定装置1において、試料として軽度粗面のLT結晶を用い、光源として632.8nm波長のHe−Neレーザを用いて測定を行った。
【0146】
図19に、軽度の粗面を有するLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φiとの関係を示す。この測定結果から得られる出射光が最小になる入射角度φ’min=52.7°に基づいて、軽度の粗面を有するLT結晶の前記黒色インク液に接触した粗面の見掛けの屈折率nci(粗面を固体(結晶)と黒色インク液の混合層とみなしたときの混合層の屈折率)を求めた。測定結果を表3に示す。
【0147】
【表3】
【0148】
表2及び表3に示す見掛けの屈折率ncs、nciより、LT結晶の屈折率nmと、混合層における固体と気体の体積比γを求めた。測定結果を表4に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
公表されているLT結晶の常光線屈折率は、実験と同じ632.8nmでは、2.1774であることが良く知られている(K. -H. Hellwege, Editor in chief, LANDOLT BOERNSTEIN, Numerical Data and Functional Relationships in Science and Technology, New Series, Group III: Crystal and Solid State Physics, Vol.11, Elastic, Piezoelectric, Pyroelectric, Piezooptic, Electrooptic Constants, and Nonlinear Dielectric Susceptibilities of Crystals (Springer-Verlag Berlin, Heidelberg, New York 1979) p.616.を参照)。表4の結果は、公表値より、0.75%ほど小さいだけである。また、空気と接触した粗面LT結晶の体積比γの測定値は、0.230であった。表2の結果とLT結晶の公知の屈折率(2.1774)とを用いて求めた前記体積比γは、0.241であり、両者の差異(4.6%)は小さかった。これらの結果は、本実施形態の光学測定装置及び光学測定方法が、粗面を有する固体試料の屈折率nm及び体積比γを高精度に測定できることを示している。
【0151】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
高価な物質、化石、美術品など加工の許されない試料の屈折率測定や、化粧品(ファンデーションやパウダー)の定量的光学評価などに利用することができる。また、粗面の屈折率を正確に知ることが出来るため、分光画像処理で多用されるフォンモデル(三宅洋一,「分光画像処理入門」,東京大学出版会 2006,pp.37-61.を参照)の解析に利用することができる。このモデルは、コンピュータグラフィックス(CG)技術に繋がっているため、CG画像やアニメーションなどの高画質化に寄与できる。
【符号の説明】
【0153】
10 光源、12 ビームスプリッタ、14 アパーチャ、16 凸レンズ、18 ビームエクスパンダ、20 偏光子、22 検光子、30 試料、32 粗面、33 粗面の法線、40 第1の光検出器、42 第2の光検出器、50 チョッパー、51 光変調器、52 チョッパー制御部、53 信号発生器、54 ロックインアンプ、55 増幅器、60 試料台、61 第1の回転機構、62 光検出器台、63 第2の回転機構、70 演算装置、72 演算処理部、74 記憶部、100 混合層からの最初の反射光線、101 凸レンズ、102 凸レンズ、110 透明プリズム、 111 V溝ブロック、112 台座、113 ねじ、114 ばね
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定方法及び光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、代表的な屈折率測定法として、最小偏角法、臨界角法、エリプソメトリー(偏光解析法)、液浸法などが知られている。最小偏角法(非特許文献1参照)は、プリズムに加工された試料の頂角と、最小偏角を測定して屈折率を求めるもので、最も精密に屈折率を測定することができる。臨界角法(非特許文献2参照)は、液体の屈折率測定に適している。試料液の屈折率は、参照プリズムに対する相対値として求められる。エリプソメトリー(非特許文献3参照)は、既知の屈折率をもつ基板上の試料薄膜にP偏光とS偏光を入射し、反射による偏光状態の変化から、薄膜の厚さ、屈折率および消衰係数などを求める手法である。液浸法(非特許文献4参照)は、粉末状の試料と屈折率が段階的に変化した多数の透明液体を用いて、これらの液体に粉末試料を混ぜ、試料の輪郭が最も見にくい液体を選択することで、屈折率を求める方法である。この方法では、試料を鏡面加工せずに屈折率を測定できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Everitt Charles, "Refraction." The Encyclopedia Britannica, 11th Ed. vol. 23, The Encyclopedia Britannica Company, New York (1911) 26-27.
【非特許文献2】Tilton, Leroy W., and John K. Taylor,"Refractive Index Measurement," in Physical Methods in Chemical Analysis Vol. 1, 2nd ed. ; Walter G. Berl, editor (1961) 411-62. (E ABBE, "Carl's Repertorium der Physik", Vol. 15, 643 (1879). C. PULFRICH, "Zeitschrift fuer Instrumentenkunde", Vol. 18, 107 (1898))
【非特許文献3】藤原裕之,分光エリプソメトリー,丸善株式会社2003,7-124.
【非特許文献4】都城秋穂,久城育夫,「岩石学I」,共立出版 2000,pp.90-93.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最小偏角法には、試料をプリズムに加工するため、非破壊測定を行うことができないという問題点がある。また、臨界角法には、固体試料の屈折率を測定できない、最小偏角法ほどの測定精度が得られない、参照プリズムの屈折率より大きな屈折率を測定できないといった問題点がある。また、エリプソメトリーは、光学研磨や蒸着などにより表面をフラットにした固体あるいは液体を測定試料とする方法であり、粗面を有する固体試料の測定には適さない。また、液浸法は、破壊検査であること、浸液の屈折率(1.44〜1.88)の範囲内の素材に限られること、測定精度が先の3つの方法に比べて劣るといった問題点を抱えている。
【0005】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固体の粗面になんらの加工を施すことなく、粗面を有する固体の屈折率を測定することが可能な光学測定方法及び光学測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定方法において、
前記固体の粗面に気体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率ncsを測定する第1ステップと、
前記固体の粗面に吸収係数又は散乱係数の大きな液体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率nciを測定し、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを求める第2ステップとを有することを特徴とする。
【0007】
ここで、固体粗面に入射した光が粗面において反射もしくは屈折する際に実際に感じる屈折率を見掛けの屈折率と呼ぶ。見掛けの屈折率は、固体本来の屈折率とは異なり、固体の屈折率とそれを取り巻く雰囲気の屈折率や粗面の凹凸状態から定められる。また、屈折率が異なる2つの媒質の界面からの戻り光のうち、反射の法則に従う光を反射光と呼び、それ以外の戻り光を散乱光と呼ぶことにする。また、屈折率が異なる2つの媒質の界面を透過する光のなかで、スネルの法則に従う光を透過光と呼び、それ以外の光を散乱光と呼ぶことにする。さらに、入射光の電界と反射光の電界の比を、電界反射率と定義し、入射光パワーと反射光パワーの比を、パワー反射率と定義する。
【0008】
本発明によれば、粗面を有する固体の屈折率を非破壊で測定することができる。
【0009】
(2)また本発明において、
前記第1ステップでは、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記気体が接触した粗面に入射角度φ1で入射させ、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射角度φ1で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminを求め、前記入射角度φminと、前記固体の粗面と接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求めるようにしてもよい。
【0010】
(3)また本発明において、
前記第1ステップでは、
【数1】
に基づいて前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求めるようにしてもよい。
【0011】
(4)また本発明において、
前記第2ステップでは、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させ、直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記透明プリズムに入射させ、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiを求め、前記入射角度φiと、前記透明プリズムの屈折率ngと、前記透明プリズムの出射面と対峙する頂角δと、前記透明プリズムと接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めるようにしてもよい。
【0012】
ここで、前記透明プリズムは、光の入射面、出射面及び反射面を光学研磨した透明プリズムであることが好ましい。
【0013】
(5)また本発明において、
前記第2ステップでは、
【数2】
に基づいて前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めるようにしてもよい。
【0014】
(6)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとに基づいて、前記混合層における固体と気体の体積比γを求めるようにしてもよい。
【0015】
(7)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記混合層における固体の体積Vmと気体の体積Vsの体積比をγ=Vs/Vmとすると、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとを、
【0016】
【数3】
で表し、
【0017】
【数4】
に基づいて前記体積比γを求めるようにしてもよい。
【0018】
(8)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記体積比γと、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsとに基づいて、前記固体の屈折率nmを求めるようにしてもよい。
【0019】
(9)また本発明において、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記固体の屈折率nmを、
【0020】
【数5】
で表し、
【0021】
【数6】
に基づいて前記固体の屈折率nmを求めるようにしてもよい。
【0022】
(10)本発明は、
粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定装置において、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記固体の粗面に入射させる光照射部と、
気体或いは液体を接触させた前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度を検出する光検出部と、
前記固体を回転させることで前記p偏光の入射角度を変化させる回転駆動部と、
前記p偏光を前記気体が接触した粗面に入射させた場合に、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを算出し、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させて前記p偏光を前記透明プリズムに入射させた場合に、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを算出し、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを算出する演算処理を行う演算処理部とを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、粗面を有する固体の屈折率を非破壊で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】気体が接触した固体表面における光の反射及び散乱の様子を模式的に示す図。
【図2】気体が接触した固体の粗面を、固体と気体の混合層とみなしたモデルを示す図。
【図3】気体が接触した粗面固体における入射角度φminと、混合層の散乱係数αの関係を示す図。
【図4】液体が接触した粗面固体の見掛けの屈折率測定について説明するための図。
【図5】液体が接触した粗面固体の見掛けの屈折率測定について説明するための図。
【図6】本実施形態の光学測定装置の構成の一例を示す図。
【図7】試料台を回転させる第1の回転機構と、光検出器台を回転させる第2の回転機構の構成の一例を示す側面図。
【図8】光学測定装置の変形例を示す図。
【図9】光学測定装置の変形例を示す図。
【図10】光学測定装置の変形例を示す図。
【図11】試料と透明プリズムを固定する一方法を示す図。
【図12】試料と試料台の位置関係を示す図。
【図13】透明プリズム、透明ダブプリズムおよびその他のプリズムの構成図。
【図14】図14(A)は、軽度粗面で反射した反射光を撮像した画像であり、図14(B)は、重度粗面で反射した反射光を撮像した画像である。
【図15】入射光と試料面の角度を決定する初期設定について説明するための図。
【図16】入射光と試料面の角度を決定する初期設定について説明するための図。
【図17】吸収係数の大きな液体の屈折率測定について説明するための図。
【図18】空気中に置かれたLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φ1との関係を示す図。
【図19】吸収係数の大きな液体に接触したLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φiとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0026】
1.測定原理
本実施形態の光学測定方法及び光学測定装置が採用する測定原理を説明する。
【0027】
1−1.粗面の凹凸に気体が接触した固体粗面(固体と気体からなる混合層)の見掛けの屈折率の測定(第1ステップ)
図1(A)に、気体雰囲気中に置かれた固体の粗面における光の反射と散乱の様子を模式的に示す。図1に示すように、すりガラスやアズカット結晶などの表面は、微細凹凸を有する粗面となっており、固体とそれを取り囲む雰囲気である気体(例えば、空気)が複雑に入り組んだ構造となっている。この粗面の構造の微細部分が入射光の波長と同程度かそれよりも小さい場合、図1(B)に示すように、固体の粗面は、固体と気体の混合層と看做すことができる。この混合層は、例えば、粗面の最も高い部分に接する面を上面とし、粗面の最も低い部分に接する面であって上面と平行な面を下面とするとき、上面と下面の間に存在する固体(粗面を構成する固体)と気体(粗面に接触している気体)とを構成要素とする層である。
【0028】
本実施形態における第1ステップでは、固体の粗面を、固体と気体の混合層とみなしたモデルを用いて、気体が接触した固体の粗面の見掛けの屈折率を測定する。
【0029】
図2に示すように、混合層(固体の粗面)に入射するp偏光(電界成分が入射面内で振動する直線偏光)の入射角度をφ1とし、混合層の屈折角度をφ2とし、固体の屈折角度をφ3とし、混合層の散乱係数と厚さをそれぞれα、dとすると、p偏光の入射光に対する混合層のパワー反射率Rpφ1は、次式のように表される。
【0030】
【数7】
【0031】
式(1)において、r1は、気体から混合層に光が入射するときのフレネル反射による振幅反射率(光の電界の反射率)であり、r2は、混合層と固体の境界で光が反射するときのフレネル反射による振幅反射率であり、それぞれ次式のように表される。
【0032】
【数8】
【0033】
ここで、nsは、気体の屈折率であり、ncsは、混合層の見掛けの屈折率であり、nmは、固体の屈折率である。
【0034】
また式(1)において、Lは、光が混合層を1往復するときの物理的光路長であり、Ψは、隣接する反射光間の位相差であり、それぞれ次式のように表される。ただし、λは入射光の波長である。
【0035】
【数9】
【0036】
ここで、散乱係数αと混合層内の光路長Lの積αLが非常に小さい場合、混合層表面の反射光(図2に示す光線100)だけでなく、混合層内部から反射の法則に従って反射する反射光の存在も無視できないため、反射光のパワー反射率Rpφ1は、式(1)にしたがって、φ1の変化とともに周期的な変化を示す。一方、前記αLが非常に大きい場合、混合層に入射した光は、様々な方向に散乱し、混合層内部からの反射光は極めて小さくなる。このとき、混合層表面の反射光(図2に示す光線100)が、混合層からの反射光のパワー反射率Rpφ1を支配することになり、反射光のパワー反射率Rpは、
【0037】
【数10】
となる。
【0038】
ここで、図1に示すように散乱光は全方位に放射されるのに対して、反射光は、入射角度と同じ反射角度を保つため、後述する図6〜図10に示す光学系を用いれば、殆どの散乱光を遮断して、反射光を選択的に取り出すことができる。図6〜図10に示す光検出器40に入射する光の主成分が反射光になれば、ブリュースター(Brewster)の法則を利用して混合層(すなわち粗面)の見掛けの屈折率ncsを求めることができる。混合層と気体の界面のブリュースター角をφBとすると、混合層の屈折率ncsは、次式のように表される。
【0039】
【数11】
【0040】
このとき、ブリュースターの法則よりr1=0であるから、式(1)から、ブリュースター角φBにおけるパワー反射率RpφBは、次式のように表される。
【0041】
【数12】
【0042】
式(8)が成立する条件を探るため、式(1)に式(2)〜(5)を代入し、変数φ1に関する偏導関数∂Rpφ1)/φ1を求め、これがゼロとなるときの入射角度を求める。ここでは、固体の屈折率nm=2.5とし、気体の屈折率ns=1とし、混合層の屈折率ncs=1.6〜2.4とし、混合層の厚さd=1000nmとし、p偏光の入射光の波長λ=632.8nmとする条件で計算を行った。
【0043】
図3は、パワー反射率Rpφ1が最小値になる入射角度φminと、混合層の散乱係数αの関係を示す解析結果を示す図である。図3は、αd>2のときに、入射角度φminが一定値になることを示している。混合層の屈折率ncsを、1.6〜2.4の範囲で変化させて、入射角度φminを求めた結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示した、入射角度φminは、それぞれ、式(7)で表されるブリュースター角φBと一致している。図3や表1の解析結果は一例であり、ns、ncs、nm、d及びλを変化させても、混合層がαd>2の条件を満たす限り、φmin=φBが成立する。従って、本解析から、αd>2を満たす混合層の屈折率ncsは、次式により求められることが明らかである。
【0046】
【数13】
【0047】
従って、p偏光を気体に接触している固体の粗面に入射させ、粗面で反射した反射光の強度(すなわち、パワー反射率Rpφ1)が最小になる入射角度φminを測定し、測定した入射角度φminと、気体の屈折率nsを式(9)に代入することで、固体の粗面を固体と気体の混合層とみなしたときの混合層の屈折率ncs(すなわち、固体の粗面の見掛けの屈折率)を求めることができる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、固体の粗面を固体と気体雰囲気の混合層とみなして、粗面の見掛けの屈折率を測定することができる。
【0049】
1−2.粗面の凹凸に気体が接触した固体粗面(固体と気体からなる混合層)における固体と気体の体積比γと固体の屈折率nmを未知数とする方程式の導出
次に、αd>2を満たす混合層における固体と気体の体積比γと固体の屈折率nmとを関係付ける方程式の導出について説明する。
【0050】
固体の密度をρmとし、気体の密度をρsとし、混合層の密度をρcsとすると、固体、気体及び混合層のそれぞれの密度と屈折率の間には、ローレンツ-ローレンツ(Lorentz-Lorenz)の公式から、次式に示す関係が成立する。
【0051】
【数14】
【0052】
ここで、βは、混合層中での気体の重量(%)である。
【0053】
また、固体の体積をVmとし、気体の体積をVsとし、混合層の体積をVcsとすると、次式が成立することも明白である。
【0054】
【数15】
【0055】
式(11)〜(13)から、次式を得る。
【0056】
【数16】
【0057】
ここで、γは、混合層における固体の体積Vmと気体の体積Vsの比である。
【0058】
式(13)を書き直すと、
【数17】
となり、式(12)を書き直すと、
【0059】
【数18】
となる。式(17)を式(16)に代入すると、次式を得る。
【0060】
【数19】
【0061】
式(14)を式(18)に代入すると、次式を得る。
【0062】
【数20】
【0063】
ここで、固体の屈折率nm、気体の屈折率ns及び混合層の屈折率ncsのそれぞれの関数fm、fs、fcsを、
【0064】
【数21】
と定義し、式(20)と式(14)を、式(10)に代入すると、次式を得る。
【0065】
【数22】
【0066】
式(21)に式(19)を代入すると、次式を得る。
【0067】
【数23】
【0068】
ここで、気体の屈折率nsは凡そ1(例えば、空気ならば、0℃、1気圧の条件でns=1.000292)であるから、式(20)より屈折率nsの関数fsは凡そ0となる。そこで、fs=0を式(22)に代入することで、次式に示すように、混合層における固体と気体の体積比γと固体の屈折率nmの関数fmを関係付けても良い。
【0069】
【数24】
【0070】
1−3.吸収係数又は散乱係数の大きな液体が、粗面に接触した固体粗面(固体と前記液体から成る混合層)における固体と前記気体の体積比γと固体の屈折率nmを未知数とする方程式の導出、および前記体積比γと固体の屈折率nmの導出(第2ステップ)
次に、粗面を有する固体の屈折率nm(固体の真の屈折率)と体積比γを同時に測定する原理を説明する。
【0071】
式(22)および式(23)は、どちらも2つの変数γとfmを含む。これらの変数を決定するためには、空気以外の別の雰囲気(例えば液体)を粗面の凹凸に接触させ、式(22)に相当する新たな見掛けの屈折率nciと前記体積比γを関係付ける方程式を求め、この方程式と式(22)あるいは式(23)との連立方程式を解くことが必要である。
【0072】
空気以外のもう1種類の雰囲気として、(a)真空、(b)空気と屈折率の異なる同一圧力の気体、(c)圧力の異なる空気あるいはそれ以外の気体、(d)透明度の高い液体、(e)大きな吸収係数と大きな散乱係数のうちどちらか一方を少なくとも有する液体、が考えられる。
【0073】
(a)と(b)は、第1ステップにおける気体(例えば、空気)との屈折率差が非常に小さいため適当でない。(c)は、2種類の気体の気圧差を非常に大きくすれば屈折率差を大きくできるため測定可能であるが、装置が大掛かりになり適当でない。(d)は、混合層における固体と液体の屈折率差が、固体と空気の屈折率差よりも小さくなるため、αd<2になる可能性があり適当でない。(e)は、混合層における固体と液体の反射率は低下するが、その代わりに混合層を伝播する光は、液体に吸収される効果、あるいは液体中で散乱される効果、あるいはこれら二つの効果により、大きく減衰するため、混合層内部からの反射光を無視して差し支えない。すなわち、ウエット状態を厭わない試料の場合、大きな吸収係数と大きな散乱係数のうちどちらか一方を少なくとも有する液体が最も適している。
【0074】
ここでは、空気以外のもう1種類の雰囲気として、高吸収率の液体(吸収係数の大きな液体)を用いる方法について説明する。液体の吸収係数をηとすると、図3の解析結果から、吸収係数ηは以下の値が望ましい。
【0075】
【数25】
【0076】
図4に示すように、高吸収率の液体を、固体の粗面に均一に塗布し、その上から透明プリズム(光の入射面、出射面及び反射面を光学研磨した透明プリズム)を圧着して、厚さdの混合層を形成する。混合層は、固体と吸収係数ηの液体で構成される。
【0077】
図5に示すように、固体と透明プリズムで挟まれた混合層にp偏光を照射し、混合層からの反射光の強度が最小値になる混合層の入射角度φ’minを求める。入射角度φ’minを直接測定することはできないが、反射光の強度が最小値になる透明プリズムの入射角度φiを測定して、スネルの法則よりφiとφ’minを関係付ければよい。
【0078】
透明プリズム、固体および混合層の屈折率を、それぞれng、nm、nciとすると、式(24)が成立する場合には、反射光の強度が最小になるとき、次式が近似的に成り立つ。
【0079】
【数26】
【0080】
また、透明プリズムと、屈折率nsの気体(空気)の間には、次式のスネルの法則が成立する。
【0081】
【数27】
【0082】
ここで、φgは、図5に示すように透明プリズムと気体の界面における屈折角度である。
【0083】
式(25)、式(26)より、混合層の屈折率nciは、次式により求めることができる。
【0084】
【数28】
【0085】
ここで、δは、図5に示すように、透明プリズムの出射面と対峙する頂角(透明プリズムの入射面と反射面とがなす角度)である。
【0086】
従って、p偏光を透明プリズムの入射面に入射させ、固体の粗面(透明プリズムと固体の粗面との界面)で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiを測定し、測定した入射角度φiと、透明プリズムの屈折率ngと、透明プリズムの頂角δと、気体の屈折率nsを式(27)に代入することで、固体と高吸収率の液体とで構成される混合層の屈折率nci(すなわち、高吸収率の液体と接触している固体粗面の見掛けの屈折率)を求めることができる。
【0087】
ここで、固体の屈折率nm、高吸収率の液体の屈折率ni及び混合層の屈折率nciのそれぞれの関数fm、fi、fciを、
【0088】
【数29】
【0089】
と定義すると、混合層は固体と液体で構成されるから、式(22)から、次式が成立する。
【0090】
【数30】
【0091】
式(23)を式(29)に代入して整理すると、次式を得る。
【0092】
【数31】
【0093】
従って、高吸収率の液体の屈折率ni(すなわち、niの関数fi)が明らかな場合には、第1ステップの測定値である混合層の屈折率ncs(すなわち、ncsの関数fcs)と、第2ステップの測定値である混合層の屈折率nci(すなわち、nciの関数fci)とを式(30)に代入することで、混合層における固体と前記気体の体積比γを求めることができる。
【0094】
すなわち、式(9)により求めた混合層の屈折率ncs(気体と接触している固体粗面の見掛けの屈折率)を、式(20)に代入することでfcsを求め、式(27)により求めた混合層の屈折率nci(高吸収率の液体と接触している固体粗面の見掛けの屈折率)を、式(28)に代入することでfciを求め、求めたfcsとfciとfiを式(30)に代入することで、固体の粗面を固体と気体の混合層とみなしたときの混合層における固体と気体の体積比γを求めることができる。
【0095】
また、式(30)により求めた体積比γと、第1ステップの測定値である混合層の屈折率ncs(すなわち、ncsの関数fcs)とを式(23)(或いは、式(22))に代入することで、固体の屈折率nmの関数fmを求め、求めたfmを式(20)に代入することで、固体の真の屈折率nmを求めることができる。
【0096】
このように本実施形態によれば、第1ステップで気体雰囲気での粗面の見掛けの屈折率ncsを測定し、第2ステップで高吸収率の液体雰囲気での粗面の見掛けの屈折率nciとを測定することにより、粗面を有する固体の屈折率nmと混合層の体積比γとを非破壊で測定することができる。また、本実施形態によれば、反射光強度を測定するため、吸収の大きな物質の屈折率も測定することができる。また従来の臨界角法や液浸法では、測定可能な屈折率の範囲が限られているが、本実施形態によれば、混合層がαd>2の条件を満たす限り、あらゆる範囲の屈折率を測定することができる。
【0097】
2.構成
図6は、本実施形態の光学測定装置の構成の一例を示す図である。
【0098】
本実施形態の光学測定装置1は、測定対象である試料30(粗面を有する固体)の粗面32の見掛けの屈折率ncs、及び混合層における固体と気体の体積比γを測定する装置である。光学測定装置1は、レーザダイオードからなる光源10と、ビームスプリッタ12と、円形の開口を有するアパーチャ14と、p偏光を透過させる偏光子20及び検光子22と、光電センサ(フォトディテクタ)からなる第1及び第2の光検出器40、42と、連続光をチョッピングするチョッパー50と、チョッパー制御部52と、ロックインアンプ54と、試料30が載置される試料台60と、第1の光検出器40が載置される光検出器台62と、試料台60を回転軸RAを中心に回転させる第1の回転機構(図示せず)と、光検出器台62を回転軸RAを中心に回転させる第2の回転機構(図示せず)と、演算装置70とを含む。回転軸RAはZ軸と平行で、試料30の粗面32の面内あるいはその近傍に存在し、粗面32の法線33と直交する。
【0099】
光源10から出射した光は、偏光子20を透過して、水平面(図6のX軸とY軸を含む面)内で振動するp偏光になる。すなわち、p偏光の電界は、試料30の粗面32の法線33を含む水平面で振動する。このp偏光は、チョッパー50によりパルス変調され、試料30の粗面32の面内に入射する。入射光と反射光の交点は、回転軸RAに一致する、あるいは、少なくとも回転軸RAの近傍であることが望ましい。
【0100】
粗面32で反射したp偏光の反射光は、図6に示すように入射角φと等しい反射角φの方向に進む。一方、散乱光は、入射光と反射光の交点から全方向に放射される。反射光と散乱光の強度を測定するために、光検出器台62に、入射光のビーム径とほぼ同一径の開口を有するアパーチャ14、検光子22および第1の光検出器40が設置されている。
【0101】
第1の光検出器40(光検出部)は、光検出器台62の回転にともない粗面32で反射した反射光および散乱光を受光し、受光した光の強度を電流もしくは電圧に変換(光電変換)して、光強度情報(検出信号)としてロックインアンプ54に出力する。
【0102】
また、チョッパー制御部52は、チョッパー50に制御信号(駆動信号)を出力して、チョッパー50の駆動を制御するとともに、当該制御信号を参照信号としてロックインアンプ54に出力する。ロックインアンプ54は、第1の光検出器40から出力された検出信号のうち、チョッパー制御部52から出力された参照信号と等しい周波数成分を検出し、演算装置70に出力する。チョッパー50、チョッパー制御部52、ロックインアンプ54を用いることで、測定精度を向上させることができる。
【0103】
ビームスプリッタ12は、光源10から出射された光の一部を反射する。第2の光検出器42は、ビームスプリッタ12で反射した光を受光し光電変換し、検出信号を演算装置70に出力する。ビームスプリッタ12と、第2の光検出器42を用いて、光源10からの出射光強度の変動を検出することで、出射光強度の変動に伴う第1の光検出器40によって検出される光強度の変動を補償することができ、測定精度を向上させることができる。
【0104】
なお、ここでは半導体レーザを光源とする一例を示したが、半導体レーザの代わりにガスレーザ、色素レーザ、固体レーザを用いることもできる。また、ハロゲンランプやキセノンランプなどのいわゆるインコヒーレント光源を用いることも可能である。ただし、インコヒーレント光は一般に非常に広い発光スペクトルを有しているため、光源10とビームスプリッタ12の間にスペクトルを狭める光バンドパスフィルタを挿入する必要がある。
【0105】
図7(A)は、試料台60を回転させる第1の回転機構61と、光検出器台62を回転させる第2の回転機構63の構成の一例を示す側面図である。
【0106】
図7(A)に示すように、試料台60は、試料台60を回転させる第1の回転機構61、試料台60のあおり角を調整するあおり機構64(ゴニオ)、及び試料台60をXYZ軸方向に空間移動させるXYZ移動機構65の上に設けられている。XYZ移動機構65は、第1の支持ポール67によって支持されている。
【0107】
光検出器台62は、光検出器台62を回転させる第2の回転機構63に取り付けられている。光検出器台62には、アパーチャ14を支持する支持ポール(図示せず)と、検光子22を支持する第2の支持ポール68と、第1の光検出器40を垂直移動させる垂直移動機構66が設けられ、垂直移動機構66には、第1の光検出器40を支持する第3の支持ポール69が設けられている。第1及び第2の回転機構61、63は、手動回転ステージや自動回転ステージ等により構成することができる。
【0108】
第1の回転機構61と第2の回転機構63の回転軸RAは一致しており、また、回転軸RAは円形の試料台60の中心と一致している。試料台60は、第1の回転機構61によって回転軸RAを中心に回転し、光検出器台62、アパーチャ14、検光子22及び第1の光検出器40は、第2の回転機構63によって回転軸RAを中心に回転する。
【0109】
上述したように本実施形態では、試料30の粗面で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φmin(或いは、入射角度φi)を求める。そのため、第1の回転機構61により試料台60を回転することで、p偏光の入射角度φ(図6参照)を変化させ、p偏光の入射角度φの変化に応じて、第2の回転機構63により光検出器台62を回転することで、試料30の粗面32で反射した反射光がアパーチャ14及び検光子22を介して第1の光検出器40に入射するように構成している。
【0110】
図7(B)は、試料台60の上面図と側面図である。図7(B)に示すように、円形の試料台60には、回転軸RAを示す点とそれを通る直線が示されている。この直線と粗面32の表面が同一平面になるように、試料30は載置される(設置に必要な装置については図示を省略する)。
【0111】
再び図6を参照すると、演算装置70は、演算処理部72と、記憶部74とを含む。演算処理部72は、ロックインアンプ60から出力された光強度情報に基づいて、試料30の粗面32で反射した反射光の強度が最小になるp偏光の入射角度φminを求め、入射角度φminと気体の屈折率nsとに基づいて、気体と接触している試料30の粗面32の見掛けの屈折率ncsを算出する演算処理(第1ステップの演算処理)を行う。
【0112】
また、演算処理部72は、試料30の粗面32に吸収係数ηの液体を介して透明プリズムを圧着させた状態において、p偏光を前記透明プリズムに入射させたときに、ロックインアンプ60から出力された光強度情報に基づいて、試料30の粗面32で反射した反射光の強度が最小になるp偏光の入射角度φiを求め、前記入射角度φiと、前記透明プリズムの屈折率ngと、前記透明プリズムの頂角δと、前記透明プリズムと接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記液体と接触している試料30の粗面32の見掛けの屈折率nciを求め、前記気体と接触している粗面32の見掛けの屈折率ncsと、前記液体と接触している粗面32の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとに基づいて、試料30の粗面32を固体と気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γを算出する演算処理(第2ステップの演算処理)を行う。また、演算処理部72は、前記体積比γと、気体と接触している粗面32の見掛けの屈折率ncsとに基づいて、試料30の屈折率nmを算出する演算処理(第2ステップの演算処理)を行う。
【0113】
なお、光学測定装置1が、チョッパー50、チョッパー制御部52及びロックインアンプ54を備えない場合には、演算処理部72は、第1の光検出器40から出力された光強度情報に基づき前記演算処理を行う。
【0114】
記憶部74は、種々のデータを一時記憶する機能を有し、例えばロックインアンプ60から出力された光強度情報を、p偏光の入射角度φと対応付けて記憶する。
【0115】
図8〜図10は、光学測定装置1の変形例を示す図である。
【0116】
図8に示す光学測定装置1では、試料台60とアパーチャ14との間に凸レンズ16を設けている。ここで、凸レンズ16とアパーチャ14間の距離は、凸レンズ16の焦点距離fと一致する。従って、平行光である試料30からの反射光は、アパーチャ14の開口を通過して、第1の光検出器40に入射する。一方、試料30と凸レンズ16間の距離aは、凸レンズ16の焦点距離f以下となっており、試料30からの散乱光は、アパーチャ14により遮断される。また、図8に示す構成によれば、図6に示す構成と比べて、光検出器台62の光路に沿った方向の長さを短くすることができる。
【0117】
図9に示す光学測定装置1では、光源10と試料台60との間にビームエクスパンダ18を設けて、光源10から出射された光のビーム径を大きくしている。試料30に入射するp偏光のビーム径を大きくすることで、平行光である試料30からの反射光は、凸レンズ16によってより小さなスポットに集光されるため、図8に示す構成と比較してアパーチャ14の開口をより小さくすることができ、試料30からの散乱光の影響をより小さくすることができる。
【0118】
図10に示す光学測定装置1では、チョッパー50に代えて光変調器51(例えば、光弾性変調器)が設けられ、チョッパー制御部52に変えて信号発生器53及び増幅器55が用いられている。光変調器51を用いることで、光源10から出射された光の強度を、矩形波状ばかりでなく正弦波状にも変化させることができ、また、変調周波数を低周波から高周波まで自在に選択することができる。
【0119】
図6〜図10は、粗面が気体に接触する第1ステップにおける構成である。第2ステップでは、前記透明プリズムを吸収係数の大きな前記液体を介して試料30の粗面32に圧着することで試料30の粗面32に前記液体を接触させること以外は、第1ステップと同じ構成で計測を行うことができる。
【0120】
試料30と透明プリズムを接触させる手法の1例を図11に示す。試料30と透明プリズム110は、V溝ブロック111と台座112の間に設置され、ねじ113とばね114を用いて、試料30、透明プリズム110、V溝ブロック111及び台座112が一体となって保持される。これらは、図12に示すように、試料台60の回転軸RAを通る直線と粗面32が一致するように調整される。ここでは、試料30やそれを支持するV溝ブロック111などを試料台60に設置する装置の図示を省略している。
【0121】
透明プリズムに与えられる条件は、図13(A)に示すように、入射面、反射面および出射面が鏡面であり、かつ、出射面と対峙する頂角δが、δ<90°である。
【0122】
図13(B)に、透明ダブプリズムを示し、図13(C)に、その他のプリズムを示す。いずれも透明プリズムに代わる光学部品であり、反射面と対峙する面が反射面と平行になっているため、図11のV溝ブロックを用いずに、平行平板ブロックを用いて試料30とそれに接触したプリズムを安定、かつ容易に保持することができるという特徴をもつ。
【0123】
3.測定方法
第1ステップの測定に先立って、入射光と試料面(試料30の粗面32)の角度を決定する初期設定を行う。まず、試料30の粗面32を含む無限平面内に、試料台60の回転軸RAを通る直線が含まれるように、試料30を設置する。厳密には粗面は微細な凹凸を有するが、これを平面とみなしても、測定精度に影響を及ぼすことはない。
【0124】
試料30が軽度な粗面を有する場合には、図14(A)に示すように、散乱光に混じって反射光の存在(図14(A)に示す画像の中央付近の明るい部分)が認められる。この場合には、図15(A)に示すごく一般的な方法で入射光の光軸と試料面の法線を一致させることができる。すなわち、レーザ光の直径とほぼ一致した開口をもつアパーチャを光源10と試料30の間に設け、試料30からの反射光がこの開口を通過するように試料台60の角度を調整すればよい。この状態を0度として、図15(B)に示すように、試料台60を回転軸RAを中心に角度φだけ回転させれば、φが入射角度になる。このとき、試料30からの反射光がアパーチャ14及び検光子22を介して第1の光検出器40に入射するように光検出器台62を回転軸RAを中心に回転させるようにすると、入射角度φの場合における試料30からの反射光の強度を測定することができる。
【0125】
また、試料30が重度な粗面を有する場合には、図14(B)に示すように、肉眼では散乱光と反射光を区別することはできない。この場合には、図16に示すように、アパーチャと試料30の間とビームスプリッタと第2の光検出器42の間に、それぞれ凸レンズ101、102を設け、試料30からの反射光を凸レンズ101を介してビームスプリッタにより反射させ、ビームスプリッタからの反射光を別の凸レンズ102を介して第2の光検出器42に入射させる。第2の光検出器42によって検出された光強度が最大になるように、試料台60の角度を調整することで、入射光の光軸と試料面の法線を一致させることができる。
【0126】
以上の初期設定が終了したら、初期設定用のアパーチャや凸レンズを光路から外して第1ステップの測定を行う。すなわち、試料台60を回転させることでp偏光の入射角度φを変化させ、且つ光検出器台62を回転させて、第1の光検出器40により、試料30の粗面32で反射した反射光の強度IRを測定する。このとき、光源10から出射された光の強度Iiも第2の光検出器42により測定し、次式の規格化されたパワー反射率Rpを算出する。
【0127】
【数32】
【0128】
反射光強度を入射光強度で割ることにより、入射光強度の変動をキャンセルすることができ、パワー反射率Rpの測定精度を向上させることができる。そして、パワー反射率Rpが最小になるp偏光の入射角度φminを求め、入射角度φminに基づき、気体が接触した粗面32の見掛けの屈折率ncs(固体と気体からなる混合層の屈折率)を算出する。
【0129】
第2ステップの測定に先立って、まず、透明プリズムと大きな吸収係数をもつ液体の屈折率を予め測定しておく。
【0130】
透明プリズムの屈折率測定に最も適した方法は、従来の最小偏角法であり、その測定方法はよく知られているため、ここではその説明を省略する。
【0131】
次に、図17を用いて、吸収係数の大きな液体の屈折率niを測定する手法について説明する。前記液体を容器に入れ、前記透明プリズムで蓋をする。このとき、液体と基板の間に空気が入らないように、液体と透明プリズムを完全に接触させる。図11と同様に台座とV溝ブロックで透明プリズムと容器を軽く圧着し、これを図6〜図10に示すいずれかの光学系に、試料(液体)の表面を含む無限平面内に試料台60の回転軸RAを通る直線が含まれるように、試料30を設置する。
【0132】
そして、第2ステップの測定手順で測定すれば、前記液体の屈折率niを求めることができる。すなわち、反射光の強度が最小になる入射角度をξmin(図17参照)とすれば、式(24)が成立する場合には、次式が近似的に成り立つ。
【0133】
【数33】
【0134】
また、透明プリズムと屈折率nsの気体(空気)との間には、次式のスネルの法則が成立する。
【0135】
【数34】
【0136】
ここで、φgは、図17に示すように屈折角度である。
【0137】
式(32)、式(33)より、吸収係数の大きな液体の屈折率niは、次式により求めることができる。
【0138】
【数35】
【0139】
ここで、δは、図17に示すように、透明プリズムの出射面と対峙する頂角である。
【0140】
前記透明プリズムと前記液体の屈折率測定が終了したら、試料30である粗面固体に前記液体を十分に垂らし、透明プリズムを粗面に密着させる。固体と透明プリズムを図11に示す台座とV溝ブロックで軽く圧着し、試料30の粗面32を含む無限平面内に試料台60の中心RAを通る直線が含まれるように、試料30を設置する。つぎに図6〜図10に示すいずれかの光学系にセットし、第1ステップと同様の測定手順で測定すれば、前記液体に接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めることができる。すなわち、反射光の強度が最小になる入射角度φi(図5参照)を測定し、式(27)に代入すれば、前記液体に接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求めることができる。
【0141】
本実施形態では、透明プリズムとしてアクリル製プリズムを用いた。また、大きな吸収係数をもつ液体として、インクジェット式プリンターに用いられる黒色インク液を用いた。
【0142】
4.測定結果
図18及び表2に、本実施形態の光学測定装置及び光学測定方法における第1ステップでの測定結果を示す。ここでは、図6に示す光学測定装置1において、試料としてアズカットのLiTaO3結晶(LT結晶)を用い、光源として632.8nm波長のHe−Neレーザを用いて測定を行った。
【0143】
図18に、軽度の粗面を有するLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φ1との関係を示す。これらの測定結果から得られる入射角度φminに基づいて、軽度の粗面を有するLT結晶の粗面の見掛けの屈折率ncs(粗面を固体(結晶)と気体(空気)の混合層とみなしたときの混合層の屈折率)を求めた。測定結果を表2に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
次に図19及び表3に本実施形態の光学測定装置及び光学測定方法における第2ステップでの測定結果を示す。ここでは、第1ステップでの測定結果と同様に図6に示す光学測定装置1において、試料として軽度粗面のLT結晶を用い、光源として632.8nm波長のHe−Neレーザを用いて測定を行った。
【0146】
図19に、軽度の粗面を有するLT結晶のパワー反射率Rpと入射角度φiとの関係を示す。この測定結果から得られる出射光が最小になる入射角度φ’min=52.7°に基づいて、軽度の粗面を有するLT結晶の前記黒色インク液に接触した粗面の見掛けの屈折率nci(粗面を固体(結晶)と黒色インク液の混合層とみなしたときの混合層の屈折率)を求めた。測定結果を表3に示す。
【0147】
【表3】
【0148】
表2及び表3に示す見掛けの屈折率ncs、nciより、LT結晶の屈折率nmと、混合層における固体と気体の体積比γを求めた。測定結果を表4に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
公表されているLT結晶の常光線屈折率は、実験と同じ632.8nmでは、2.1774であることが良く知られている(K. -H. Hellwege, Editor in chief, LANDOLT BOERNSTEIN, Numerical Data and Functional Relationships in Science and Technology, New Series, Group III: Crystal and Solid State Physics, Vol.11, Elastic, Piezoelectric, Pyroelectric, Piezooptic, Electrooptic Constants, and Nonlinear Dielectric Susceptibilities of Crystals (Springer-Verlag Berlin, Heidelberg, New York 1979) p.616.を参照)。表4の結果は、公表値より、0.75%ほど小さいだけである。また、空気と接触した粗面LT結晶の体積比γの測定値は、0.230であった。表2の結果とLT結晶の公知の屈折率(2.1774)とを用いて求めた前記体積比γは、0.241であり、両者の差異(4.6%)は小さかった。これらの結果は、本実施形態の光学測定装置及び光学測定方法が、粗面を有する固体試料の屈折率nm及び体積比γを高精度に測定できることを示している。
【0151】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
高価な物質、化石、美術品など加工の許されない試料の屈折率測定や、化粧品(ファンデーションやパウダー)の定量的光学評価などに利用することができる。また、粗面の屈折率を正確に知ることが出来るため、分光画像処理で多用されるフォンモデル(三宅洋一,「分光画像処理入門」,東京大学出版会 2006,pp.37-61.を参照)の解析に利用することができる。このモデルは、コンピュータグラフィックス(CG)技術に繋がっているため、CG画像やアニメーションなどの高画質化に寄与できる。
【符号の説明】
【0153】
10 光源、12 ビームスプリッタ、14 アパーチャ、16 凸レンズ、18 ビームエクスパンダ、20 偏光子、22 検光子、30 試料、32 粗面、33 粗面の法線、40 第1の光検出器、42 第2の光検出器、50 チョッパー、51 光変調器、52 チョッパー制御部、53 信号発生器、54 ロックインアンプ、55 増幅器、60 試料台、61 第1の回転機構、62 光検出器台、63 第2の回転機構、70 演算装置、72 演算処理部、74 記憶部、100 混合層からの最初の反射光線、101 凸レンズ、102 凸レンズ、110 透明プリズム、 111 V溝ブロック、112 台座、113 ねじ、114 ばね
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定方法において、
前記固体の粗面に気体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率ncsを測定する第1ステップと、
前記固体の粗面に吸収係数又は散乱係数の大きな液体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率nciを測定し、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを求める第2ステップとを有する光学測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1ステップでは、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記気体が接触した粗面に入射角度φ1で入射させ、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射角度φ1で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminを求め、前記入射角度φminと、前記固体の粗面と接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求める光学測定方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1ステップでは、
【数1】
に基づいて前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求める光学測定方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記第2ステップでは、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させ、直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記透明プリズムに入射させ、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiを求め、前記入射角度φiと、前記透明プリズムの屈折率ngと、前記透明プリズムの出射面と対峙する頂角δと、前記透明プリズムと接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求める光学測定方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2ステップでは、
【数2】
に基づいて前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求める光学測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとに基づいて、前記混合層における固体と気体の体積比γを求める光学測定方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2ステップでは、
前記混合層における固体の体積Vmと気体の体積Vsの体積比をγ=Vs/Vmとすると、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとを、
【数3】
で表し、
【数4】
に基づいて前記体積比γを求める光学測定方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記第2ステップでは、
前記体積比γと、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsとに基づいて、前記固体の屈折率nmを求める光学測定方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記固体の屈折率nmを、
【数5】
で表し、
【数6】
に基づいて前記固体の屈折率nmを求める光学測定方法。
【請求項10】
粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定装置において、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記固体の粗面に入射させる光照射部と、
気体或いは液体を接触させた前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度を検出する光検出部と、
前記固体を回転させることで前記p偏光の入射角度を変化させる回転駆動部と、
前記p偏光を前記気体が接触した粗面に入射させた場合に、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを算出し、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させて前記p偏光を前記透明プリズムに入射させた場合に、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを算出し、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを算出する演算処理を行う演算処理部とを含む光学測定装置。
【請求項1】
粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定方法において、
前記固体の粗面に気体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率ncsを測定する第1ステップと、
前記固体の粗面に吸収係数又は散乱係数の大きな液体を接触させて、前記固体の粗面の見掛けの屈折率nciを測定し、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを求める第2ステップとを有する光学測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1ステップでは、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記気体が接触した粗面に入射角度φ1で入射させ、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射角度φ1で反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminを求め、前記入射角度φminと、前記固体の粗面と接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求める光学測定方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1ステップでは、
【数1】
に基づいて前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを求める光学測定方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記第2ステップでは、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させ、直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記透明プリズムに入射させ、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiを求め、前記入射角度φiと、前記透明プリズムの屈折率ngと、前記透明プリズムの出射面と対峙する頂角δと、前記透明プリズムと接触している気体の屈折率nsとに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求める光学測定方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2ステップでは、
【数2】
に基づいて前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを求める光学測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとに基づいて、前記混合層における固体と気体の体積比γを求める光学測定方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2ステップでは、
前記混合層における固体の体積Vmと気体の体積Vsの体積比をγ=Vs/Vmとすると、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciと、前記液体の屈折率niとを、
【数3】
で表し、
【数4】
に基づいて前記体積比γを求める光学測定方法。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記第2ステップでは、
前記体積比γと、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsとに基づいて、前記固体の屈折率nmを求める光学測定方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記第2ステップでは、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記固体の屈折率nmを、
【数5】
で表し、
【数6】
に基づいて前記固体の屈折率nmを求める光学測定方法。
【請求項10】
粗面を有する固体の屈折率を測定する光学測定装置において、
直線偏光の電界成分が入射面内で振動するp偏光を前記固体の粗面に入射させる光照射部と、
気体或いは液体を接触させた前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度を検出する光検出部と、
前記固体を回転させることで前記p偏光の入射角度を変化させる回転駆動部と、
前記p偏光を前記気体が接触した粗面に入射させた場合に、前記固体の粗面から反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φminに基づいて、前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsを算出し、
透明プリズムを前記液体を介して前記固体の粗面に圧着することで前記固体の粗面に前記液体を接触させて前記p偏光を前記透明プリズムに入射させた場合に、前記透明プリズムと前記固体の粗面との界面で反射の法則に従って反射した反射光の強度が最小になる入射角度φiに基づいて、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciを算出し、
前記気体が接触した粗面の見掛けの屈折率ncsと、前記液体が接触した粗面の見掛けの屈折率nciとに基づいて、前記固体の粗面を固体と前記気体の混合層とみなしたときの前記混合層における固体と気体の体積比γと、前記固体の屈折率nmとを算出する演算処理を行う演算処理部とを含む光学測定装置。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図3】
【図14】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図3】
【図14】
【公開番号】特開2012−52998(P2012−52998A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197613(P2010−197613)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:社団法人応用物理学会 刊行物名:第57回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(第19a−J−2ページ) 発行日:平成22年3月3日
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:社団法人応用物理学会 刊行物名:第57回応用物理学関係連合講演会講演予稿集(第19a−J−2ページ) 発行日:平成22年3月3日
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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